説明

加熱調理器

【課題】アンテナの外周部からのマイクロ波の放射を抑制すること。
【解決手段】アンテナ23はケーブル軸20の上端部から外周側へ遠ざかることに応じてケーシング11の底板に接近する曲状に構成されている。このため、アンテナ23の外周部でのアンテナ23および底板相互間の隙間寸法がアンテナ23の中央部での同寸法に比べて小さくなるので、アンテナ23の外周部からのマイクロ波の放射を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施例は加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器には調理室内にアンテナからマイクロ波を放射することで調理室内の調理物を加熱する構成のものがある。このアンテナはケーブル部材の一端部に設けられたものである。このケーブル部材の他端部は導波管の内部に配置されており、マイクロ波発振器からマイクロ波が発振された場合にはマイクロ波が導波管を通してケーブル部材の他端部に伝わる。このマイクロ波はケーブル部材の他端部から一端部に向けて進行し、ケーブル部材の一端部からアンテナを通して調理室内に放射される。特許文献1および特許文献2のそれぞれは調理室の底板の下方にアンテナを配置したものであり、特許文献1には2枚の金属板を相互に隙間を介して対向配置してなるアンテナが開示され、特許文献2には中心部から径方向へ遠ざかることに応じて調理室の底板に接近する曲板状のアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−26738号公報
【特許文献2】特開2007−123073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2のそれぞれには隔壁が開示されている。これら両隔壁のそれぞれはアンテナに調理室の底板とは反対側の下方から隙間を介して対向するものであり、マイクロ波が透過することが不能な金属板から構成されている。これら特許文献1および特許文献2のそれぞれの場合にはアンテナの外周部でのアンテナおよび隔壁相互間の隙間寸法がアンテナの中央部での同寸法に比べて大きくなるので、アンテナの外周部からのマイクロ波の放射を抑制できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例の加熱調理器は、調理物をマイクロ波で加熱調理するための調理室と、前記調理室の外部に設けられたものであってマイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、前記調理室の外部に設けられたものであって前記マイクロ波発振器から発振されたマイクロ波が通る導波管と、一端部が前記導波管の内部に配置され且つ他端部が前記導波管の外部に配置されたものであって前記導波管の内部のマイクロ波が伝わるケーブル部材と、前記ケーブル部材の他端部に設けられたものであって前記ケーブル部材を伝わるマイクロ波を前記調理室内に放射する板状のアンテナと、前記アンテナに前記調理室とは反対側から隙間を介して対向するものであってマイクロ波が透過することが不能な隔壁を備え、前記アンテナは前記ケーブル部材の他端部から外周側へ遠ざかることに応じて前記隔壁に接近する曲状をなしているところに特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施例1を示す図(aは加熱調理器の外観を示す図、bはXb線に沿う断面図)
【図2】電気的な構成を示す図
【図3】図1のX3部を拡大して示す図
【図4】アンテナの外観を示す図
【図5】制御回路のレンジ調理処理を示すフローチャート
【図6】実施例2を示す図4相当図
【図7】実施例3を示す図4相当図
【図8】実施例4を示す図(内箱を示す図)
【発明を実施するための形態】
【0007】
【実施例1】
【0008】
外箱1の内部には、図1に示すように、内箱2が固定されている。これら外箱1および内箱2のそれぞれは使用者側である前面が開口する四角箱状をなすものであり、左側板と右側板と底板と天板と後板を有している。この内箱2は前方から外箱1の前面および内箱2の前面のそれぞれを通して調理物が出し入れされるものであり、内箱2の左側板と右側板と天板と後板のそれぞれはマイクロ波が透過不能な金属板等の材料から構成され、内箱2の底板はマイクロ波が透過可能なセラミック板等の材料から構成されている。
【0009】
内箱2の底板は、図1に示すように、調理物をマイクロ波で加熱調理する場合に調理物が載置されるものであり、内箱2の内部空間は調理物をマイクロ波で加熱調理するための調理室3として機能し、外箱1の前面は調理室3内に対して調理物を出し入れするための出入口として機能する。この外箱1には扉4が装着されている。この扉4は水平な開放状態および垂直な閉鎖状態相互間で下端部の水平な軸5を中心に回動可能にされたものであり、調理室3の出入口は扉4の閉鎖状態で調理室3内に対して調理物を出し入れすることが不能に閉鎖され、扉4の開放状態で調理室3内に対して調理物を出し入れすることが可能に開放される。
【0010】
内箱2の後端部には、図1に示すように、天井部に位置してセンサ台6が固定されており、センサ台6にはセンサモータ7が固定されている。このセンサモータ7は前後方向へ指向する回転軸を有するものであり、センサモータ7の回転軸にはセンサケース8が回転不能に固定されている。このセンサケース8内にはセンサ基板が固定されており、センサ基板はセンサモータ7の回転軸が回転操作されることでセンサモータ7の回転軸を中心に初期角および限度角相互間で円周方向へ移動する。このセンサ基板には温度センサ9(図2参照)が搭載されている。この温度センサ9は複数の赤外線素子からなるものであり、複数の赤外線素子のそれぞれは前後方向へ指向する1本の仮想的な直線上に配列されている。
【0011】
内箱2には貫通孔状の窓部が形成されており、複数の赤外線素子のそれぞれはセンサ基板の初期角および限度角の範囲内で内箱2の窓部を介して内箱2の底板に対向する。これら複数の赤外線素子は内箱2の窓部を介して内箱2の底板上に前後方向へ直線的に並ぶ複数の温度検出領域を形成するものであり、複数の温度検出領域のそれぞれはセンサ基板の初期角で内箱2の底板の左端部に設定され、センサ基板の限度角で内箱2の底板の右端部に設定される。即ち、複数の赤外線素子はセンサモータ7の回転軸が回転操作されることで内箱2の底板を左右方向へ走査するものであり、内箱2の底板上に調理物が載せられた状態では調理物の表面温度に応じた大きさの電気信号を出力する。
【0012】
外箱1内には、図2に示すように、制御回路10が固定されている。この制御回路10は調理室3の外部に配置されたものであり、CPUとROMとRAMを有している。この制御回路10のROMには制御プログラムが予め記録されており、制御回路10のCPUはROMの制御プログラムに応じて温度検出処理を行う。この温度検出処理は内箱2の底板の左右方向および前後方向のそれぞれの全域で温度を検出するものであり、制御回路10のCPUは温度検出処理でA1)複数の赤外線素子のそれぞれからの電気信号を検出し、A2)複数の電気信号のそれぞれの検出結果をRAMに座標データと共に記録する。この座標データは赤外線素子の走査方向(左右方向)をX軸とし、赤外線素子の配列方向(前後方向)をY軸とするものであり、CPUは複数の電気信号のそれぞれの検出結果をRAMに座標データと共に記録した場合にはA3)センサモータ7の回転軸を正方向へ単位角度だけ回転操作する。このセンサモータ7の回転操作はセンサ基板の初期角で開始されるものであり、CPUはセンサモータ7を正方向へ回転操作した場合にはセンサ基板が限度角に到達するまでA1)とA2)とA3)のそれぞれの処理を順に繰返し、センサ基板が限度角に到達した場合にはセンサモータ7を逆方向へ回転操作することでセンサ基板を初期角に戻す。
【0013】
外箱1の内部には、図1に示すように、調理室3の下方に位置してケーシング11が収納されている。このケーシング11は水平な底板および底板を取り囲む周板を有するものであり、上面が開口する容器状をなしている。このケーシング11の周板は内箱2の底板に固定されており、ケーシング11の上面は内箱2の底板によって閉鎖されている。このケーシング11はマイクロ波が透過不能で導電性を有するアルミニウム等の材料からなるものであり、ケーシング11の底板は隔壁に相当する。このケーシング11の底板には、図3に示すように、マイクロ波通過口12が形成されている。このマイクロ波通過口12は円形状の貫通孔からなるものであり、内箱2の底板の左右方向および前後方向のそれぞれの中心部に配置されている。
【0014】
外箱1の内部には、図1に示すように、ケーシング11の下方に位置して導波管13が収納されている。この導波管13は前後方向へ指向するものであり、ケーシング11の底板に固定されている。この導波管13はマイクロ波が透過不能で導電性を有するアルミニウム等の材料からなるものであり、導波管13の内部空間はマイクロ波通過口12を介してケーシング11の内部空間に通じている。この導波管13には、図3に示すように、軸挿入口14が形成されている。この軸挿入口14はマイクロ波が通過不能な大きさの円形状の貫通孔からなるものであり、マイクロ波通過口12の中心を通る鉛直線に対して同心となるように配置されている。
【0015】
外箱1の内部には、図1に示すように、導波管13の下方に位置してアンテナモータ15が固定されている。このアンテナモータ15は、図3に示すように、上下方向へ指向する円柱の回転軸16を有するものであり、回転軸16は導波管13の軸挿入口14を通して導波管13内に挿入されている。このアンテナモータ15内に位置センサ17が固定されている。この位置センサ17はロータリーエンコーダからなるものであり、アンテナモータ15の回転軸16が単位角度(θ°)だけ回転する毎に1つのパルス信号を出力する。このアンテナモータ15の回転軸16には操作軸18が回転不能に固定されている。この操作軸18は導波管13内に配置されたものであり、上下方向へ指向する四角柱状をなしている。
【0016】
制御回路10のCPUは位置センサ17からパルス信号が出力される毎に割込み処理を起動する。この割込み処理はセンサモータ15の回転軸16の現在位置を計測するものであり、CPUは割込み処理でRAMのカウンタNの値をROMに予め記録された限度値Max(360−θ)と比較する。このカウンタNの値が限度値Maxに到達していると判断した場合にはカウンタNの値をROMに予め記録された初期値(0)にリセットし、カウンタNの値が限度値Maxに到達していないと判断した場合にはカウンタNの値にROMに予め記録された一定値(θ)を加算する。
【0017】
ケーシング11には、図3に示すように、マイクロ波通過口12の内周面に位置してアンテナホルダ19が固定されている。このアンテナホルダ19は上面および下面のそれぞれが開口する円筒状をなすものであり、アンテナホルダ19の上端部はケーシング11内に配置され、アンテナホルダ19の下端部は導波管13内に配置されている。このアンテナホルダ19はマイクロ波が透過可能で電気的な絶縁性を有するテフロン(登録商標)等の材料からなるものであり、アンテナホルダ19内には上下方向へ指向する円柱状のケーブル軸20が挿入されている。このケーブル軸20はケーブル部材に相当するものであり、ケーブル軸20の軸心線CLがアンテナモータ15の回転軸16の軸心線に重なるように配置されている。このケーブル軸20はマイクロ波が透過不能で導電性を有するアルミニウム等の材料からなるものであり、ケーブル軸20の下半部は導波管13内に配置され、ケーブル軸20の上半部はケーシング11内に配置されている。
【0018】
ケーブル軸20の下端部には、図3に示すように、キー溝21が形成されている。このキー溝21は下面が開口するものであり、キー溝21内には下方から操作軸18が挿入されている。このケーブル軸20は操作軸18の表面がキー溝21の内面に接触することで操作軸18に回転不能に連結されたものであり、アンテナモータ15の電気的なオン状態でアンテナモータ15の回転軸16および操作軸18のそれぞれと共に回転する。
【0019】
外箱1内には、図1に示すように、調理室3の外部に位置してマグネトロン22が収納されている。このマグネトロン22は導波管13の後端部に固定されたものであり、マグネトロン22の電気的なオン状態ではマグネトロン22から導波管13内にマイクロ波が発振される。このマイクロ波は調理室3内の調理物を加熱調理するものであり、導波管13内を後から前に向けて進行し、アンテナホルダ19を透過することでケーブル軸20の表面に沿って下から上に向けて進行する。即ち、ケーシング11のマイクロ波通過口12はケーブル軸20が挿入された状態でマイクロ波が通過可能となる大きさに設定されたものである。
【0020】
ケーシング11内には、図1に示すように、アンテナ23が収納されている。このアンテナ23は、図4に示すように、上方および下方のそれぞれから見た場合の輪郭形状が円形に設定されたものであり、アンテナ23には貫通孔24が形成されている。この貫通孔24は上方および下方のそれぞれから見た場合にアンテナ23に対して同心な円形に設定されたものであり、貫通孔24内には、図3に示すように、ケーブル軸20が挿入されている。このアンテナ23はケーブル軸20に回転不能に固定されたものであり、アンテナ23の中心がケーブル軸20および回転軸16のそれぞれの軸心線CLに重なるように配置されている。
【0021】
アンテナ23はマイクロ波が透過不能で導電性を有するアルミニウム板等の材料からなるものであり、図3に示すように、アンテナ23の上下方向の厚さ寸法は一定に設定されている。このアンテナ23はケーブル軸20の軸心線CLに対して平行でアンテナ23の中心を通る平面でアンテナ23を破断した場合の上面および下面のそれぞれが放物線となるものであり、アンテナ23の上面および下面のそれぞれは放物線をケーブル軸20の軸心線CLを中心に回転させた回転放物面から構成されている。このアンテナ23はアンテナ23の中心から径方向へ遠ざかることに応じてケーシング11の底板に接近するドーム形状をなすものであり、アンテナ23およびケーシング11の底板相互間の隙間寸法はアンテナ23の中心から径方向へ遠ざかることに応じて小さく設定されている。
【0022】
アンテナ23はケーブル軸20に沿って下から上に向けて進行するマイクロ波を表面から放射するものであり、アンテナ23の表面から調理室3内に向けて放射されたマイクロ波は内箱2の底板を透過して調理室3内に進入する。このマイクロ波はB1)内箱2の左側板と右側板と後板と天板の1つ以上で反射されることで内箱2の底板に向けて逆行する。このマイクロ波の一部はB2)内箱2の底板を透過した後にケーシング11の底板または周板で反射されることで調理室3内に向けて順行し、マイクロ波の残りはB3)内箱2の底板を透過した後にアンテナ23の表面で反射されることで調理室3内に向けて順行する。これら両マイクロ波のそれぞれは内箱2の底板を透過した後にB1)内箱2の左側板と右側板と後板と天板の1つ以上で反射されることで内箱2の底板に向けて再び逆行し、B2)およびB3)のいずれかの挙動で調理室3内に向けて再び順行する。
【0023】
アンテナ23には、図4に示すように、1つのマイクロ波放射部25が形成されている。このマイクロ波放射部25は回りが全て壁面で囲まれた貫通孔からなるものであり、上方および下方のそれぞれから見た場合に相互に対向する円弧状の2つの辺および相互に対向する直線状の2つの辺を有する扇形状をなしている。このマイクロ波放射部25の最大寸法Maxはマイクロ波の波長の1/2(約60mm)に設定されており、アンテナ23はマイクロ波放射部25からもマイクロ波を放射する。このマイクロ波放射部25はマイクロ波の放射に図4の矢印方向への指向性を付与するものであり、マイクロ波が調理室3内の残りの部分に比べて集中する集中領域をアンテナ23の静止状態で調理室3内に形成する。このマイクロ波放射部25は開口部に相当する。
【0024】
アンテナ23には、図4に示すように、1つの放射突部26が形成されている。この放射突部26はマイクロ波放射部25の内面に配置されたものであり、放射突部26の外周面に沿う沿面距離はマイクロ波放射部25の内側の円弧状の1つの辺に沿う沿面距離に比べて短く設定されている。この放射突部26は電界を集中させるためのものであり、マイクロ波はマイクロ波放射部25のうち放射突部26から強く放射される。この放射突部26はマイクロ波放射部25の内面から矢印方向へ突出するものであり、マイクロ波放射部25が生成するマイクロ波の指向性を高める。この放射突部26は突部に相当する。
【0025】
アンテナ23には、図4に示すように、2つの放射調整部27および2つの放射調整部28が形成されている。これら2つの放射調整部27および2つの放射調整部28の4つのそれぞれは回りが全て壁面で囲まれた貫通孔からなるものであり、2つの放射調整部27はアンテナ23の中心を通る基準線BLに対して線対象な形状に設定され、2つの放射調整部28のそれぞれは基準線BLに対して線対象な形状に設定されている。これら2つの放射調整部27および2つの放射調整部28の4つのそれぞれは最大寸法がマイクロ波の波長の1/2未満に設定されたものであり、アンテナ23での電流の流れを遮蔽または規制することでアンテナ23から放射されるマイクロ波の分布を目標の分布に調整する。これら2つの放射調整部27および2つの放射調整部28の4つのそれぞれはスリット部に相当する。
【0026】
図2のスタートスイッチ29は外箱1に固定されたものである(図1参照)。このスタートスイッチ29は電気的な状態がオン状態およびオフ状態相互間で変化するものであり、操作力が加えられていない場合にオフ状態となる。このスタートスイッチ29は使用者が前方から手指で操作可能なものであり、操作力が加えられることでオン状態となる。図2のマグネトロン駆動回路30はマグネトロン22に駆動電源を供給するものであり、制御回路10はスタートスイッチ29が操作された場合にマグネトロン駆動回路30を電気的に制御することでマグネトロン22から一定出力でマイクロ波を発振する。図2のモータ駆動回路31はセンサモータ7にパルス状の駆動電源を供給するものであり、制御回路10はスタートスイッチ29が操作された場合にモータ駆動回路31を電気的に制御することでセンサモータ7を回転操作する。図2のモータ駆動回路32はアンテナモータ15に駆動電源を供給するものであり、制御回路10はスタートスイッチ29が操作された場合にモータ駆動回路32を電気的に制御することでアンテナモータ15の回転軸16を一定方向へ一定速度で回転操作する。
【0027】
図5のレンジ調理処理は制御回路10のCPUがROMの制御プログラムに基づいて行うものであり、CPUはステップS1でスタートスイッチ29がオン状態にあるか否かを判断する。ここでスタートスイッチ29がオン状態にあると判断した場合にはステップS2でRAMのカウンタNの値を(0)に初期設定し、ステップS3でマグネトロン22をオン状態にすることでマグネトロン22から一定出力でマイクロ波を発振開始し、ステップS4でアンテナモータ15をオン状態にすることでアンテナ23を一定方向へ一定速度で回転開始する。このアンテナ23はマイクロ波放射部25の径方向の中心線(=BL)が予め決められた仮想的な初期線に重なる初期角に静止するものであり、アンテナ23の回転操作は一定の初期角から開始される。
【0028】
CPUはステップS4でアンテナ23の回転操作を開始すると、ステップS5の温度検出処理へ移行する。この温度検出処理はA1)〜A3)の処理を繰返すことで内箱2の底板の左右方向および前後方向のそれぞれの全域で温度を検出するものであり、CPUはステップS5の温度検出処理を終えた場合にはステップS6でステップS5の温度検出結果から最高温度を検出し、ステップS7で最高温度の検出結果がROMに予め記録された判定値に到達しているか否かを判断する。ここで最高温度の検出結果が判定値に到達していないと判断した場合にはステップS8でRAMからステップS5の温度検出結果を消去し、ステップS5の温度検出処理に復帰する。
【0029】
CPUはステップS7で最高温度の検出結果が判定値に到達していると判断すると、ステップS9でステップS5の温度検出結果から調理物の最低温度を検出する。この調理物の最低温度はステップS5の温度検出結果を内箱2の底板の温度および調理物の温度に分け、調理物の温度のうちから最低値を選択することで行われるものであり、ステップS5の温度検出結果のうちROMに予め記録された最も低いグループに属するものは内箱2の底板の温度であると認識され、残りのものは調理物の温度であると認識される。
【0030】
CPUはステップS9で調理物の最低温度を検出する。ステップS10の加熱角度演算処理で加熱角度を演算する。この加熱角度は調理物のうち加熱が最も進行していない部分がアンテナ23の中心から見てどのような角度にあるかをアンテナ23の初期角を基準に示すものであり、座標データ(Xo,Yo)と座標データ(Xo,Yi)と座標(X,Y)に基づいて演算される。座標データ(Xo,Yo)はROMに予め記録されたものであり、アンテナ23の中心に相当する。座標データ(Xo,Yi)はROMに予め記録されたものであり、ステップS4でアンテナ23の回転操作を開始する場合の初期線上の1つの点に相当する。座標データ(X,Y)は直前のステップS5でRAMに記録されたものであり、調理物の最低温度の検出結果に対応するものである。
【0031】
CPUはステップS10の加熱角度演算処理を終えると、ステップS11のアンテナ停止処理でアンテナモータ15をオフ状態にすることでアンテナ23を回転停止状態にする。このアンテナ停止処理はRAMのカウンタNの値がステップS10の加熱角度の演算結果で更新停止されるように行われるものであり、ステップS11でアンテナ23が回転停止状態にされた場合にはマイクロ波放射部25によるマイクロ波の集中領域が調理物のうち加熱が最も進行していない部分に設定され、調理物のうち加熱が最も進行していない部分にマイクロ波が集中的に照射される。
【0032】
CPUはステップS11のアンテナ停止処理を終えると、ステップS12の温度検出処理でA1)〜A3)の処理を繰返す。そして、ステップS13でステップS12の温度検出結果からステップS9での座標データ(X,Y)の検出結果に対応する特定温度を選択し、ステップS14で特定温度の選択結果が判定値に到達しているか否かを判断する。ここで特定温度の選択結果が判定値に到達していないと判断した場合にはステップS15でRAMからステップS12の温度検出結果を消去し、ステップS12に復帰する。
【0033】
CPUはステップS14で特定温度の選択結果が判定値に到達していると判断すると、ステップS16でマグネトロン22をオフ状態にし、ステップS17でアンテナモータ15をオフ状態にする。このアンテナモータ15のオフは割込み処理でのカウンタNの値が初期値(0)となるように行われるものであり、レンジ調理が終了する場合にはアンテナ23が初期角に静止する。
【0034】
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
アンテナ23をケーブル軸20の上端部から外周側へ遠ざかることに応じてケーシング11の底板に接近する曲状に構成した。このため、アンテナ23の外周部でのアンテナ23および底板相互間の隙間寸法がアンテナ23の中央部での同寸法に比べて小さくなるので、アンテナ23の外周部からのマイクロ波の放射を抑制できる。このアンテナ23にマイクロ波放射部25を設けたので、アンテナ23のうちマイクロ波放射部25からマイクロ波が強く放射される。このため、板状のアンテナ23が導波管アンテナのようになるので、アンテナ23からのマイクロ波の放射に指向性ができる。このアンテナ23に放射突部26を設けたので、マイクロ波の放射の指向性が高まる。
【0035】
アンテナ23の上面を回転放物面から構成した。このため、アンテナ23から調理室3内に放射されたマイクロ波が反射を繰返すことでアンテナ23の中央部に相当する調理室3内の中央部に集まるので、アンテナ23からのマイクロ波の放射に指向性を持たせながらも調理室3内の中央部の調理物を効率的に加熱できる。
【0036】
アンテナ23に2つの放射調整部27および2つの放射調整部28を設けたので、アンテナ23からのマイクロ波の放射分布を目標の放射分布に調整できる。即ち、アンテナ23では導波管13からケーブル軸20を通して調理室3内にマイクロ波を放射する場合にケーブル軸20からアンテナ23の端部までの距離に応じてマイクロ波の放射分布が変動するので、アンテナ23に放射調整部27または放射調整部28を設けることでケーブル軸20からアンテナ23の端部までの距離を短縮できる。
【0037】
レンジ調理処理で調理物のうち加熱が最も進行していない部分を検出し、加熱が最も進行していない部分にアンテナ23のマイクロ波放射部25が指向するようにアンテナ23を回転停止させた。このため、調理物のうち加熱が最も進行していない部分にマイクロ波の集中領域が設定されるので、レンジ調理が終了した時点での調理物の最高温度および最低温度相互間の差を縮小できる。
【実施例2】
【0038】
アンテナ23には、図6に示すように、マイクロ波放射部25に換えてマイクロ波放射部41が形成されている。このマイクロ波放射部41は外周部が開口する切欠状をなすものであり、切欠部に相当する。このマイクロ波放射部41はマイクロ波の放射に図6の矢印方向への指向性を付与するものであり、図5のステップS11のアンテナ停止処理では調理物のうち加熱が最も進行していない部分にマイクロ波が集中照射される。
【0039】
アンテナ23には、図6に示すように、1つの放射突部26に加えて2つの放射突部42が形成されている。これら2つの放射突部42のそれぞれはマイクロ波放射部41の内面から突出するものであり、マイクロ波は1つの放射突部26に加えて2つの放射突部42のそれぞれからも強く放射される。これら2つの放射突部42のそれぞれは突部に相当する。
【0040】
上記実施例2によれば次の効果を奏する。
アンテナ23にマイクロ波放射部41を設けたので、アンテナ23のうちマイクロ波放射部41からマイクロ波が強く放射される。このため、板状のアンテナ23が導波管アンテナのようになるので、アンテナ23からのマイクロ波の放射に指向性ができる。このアンテナ23に1つの放射突部26および2つの放射突部42を設けたので、マイクロ波の放射の指向性が高まる。
【実施例3】
【0041】
アンテナ23には、図7に示すように、1つの放射突部26と2つの放射突部42に加えて2つの放射突部51が形成されている。これら2つの放射突部51のそれぞれはマイクロ波放射部41の内面から突出するものであり、マイクロ波は1つの放射突部26および2つの放射突部42の3つのそれぞれに加えて2つの放射突部51のそれぞれからも強く放射される。これら2つの放射突部51のそれぞれは突部に相当する。
【0042】
上記実施例3によれば次の効果を奏する。
アンテナ23に1つの放射突部26と2つの放射突部42と2つの放射突部51を設けた。このため、アンテナ23の径方向に沿って電界の強い部分が並ぶので、レンジ調理処理で調理物にアンテナ23の回転状態でマイクロ波を照射する場合に調理物のアンテナ23の径方向に沿う加熱分布が平準化する。
【実施例4】
【0043】
内箱2の天板は、図8に示すように、下面および上面のそれぞれが回転放物面から構成されている。これら両回転放物面のそれぞれは放物線をケーブル軸20の軸心線CLを中心に回転させたものであり、中心から外側へ遠ざかることに応じてケーシング11の底板に接近するドーム形状をなしている。この内箱2の天板の下面はマイクロ波反射面に相当するものであり、アンテナ23に上方から対向すると共にアンテナ23と同一の上方に向けて凸となる曲状をなしている。
【0044】
上記実施例4によれば次の効果を奏する。
内箱2の天板の下面を回転放物面から構成した。このため、アンテナ23から調理室3内に放射されたマイクロ波が調理室3内の中央部に集まるので、アンテナ23からのマイクロ波の放射に指向性を持たせながらも調理室3内の中央部の調理物を効率的に加熱できる。図8の矢印はマイクロ波の垂直成分であり、内箱2の天板に入射するマイクロ波の垂直成分が天板の下面で反射した場合にはアンテナ23に向けて進行するので、アンテナ23で反射したマイクロ波の経路が軸心線CLの付近に集中する。このため、マイクロ波が調理室3内の中央部を通る頻度が増えるので、調理室3内の中央部にマイクロ波の集中領域が形成される。
【0045】
上記実施例4においては、内箱2の天板の下面のうちアンテナ23に対向する部分のみを回転放物面に設定しても良い。
上記実施例4においては、内箱2の天板の下面を一次元方向だけに放物面となる蒲鉾面(内箱2の天板を1つの平面で破断した場合の断面形状が放物線で当該平面に対して直交する平面で破断した場合の断面形状が直線となる形状)に設定しても良い。この構成の場合には内箱2の天板の下面のうちアンテナ23に対向する部分のみを蒲鉾面に設定しても良い。
【0046】
上記実施例1〜4のそれぞれにおいては、アンテナ23の上面および下面のそれぞれを球面から構成しても良い。
【符号の説明】
【0047】
3は調理室、13は導波管、20はケーブル軸(ケーブル部材)、22はマグネトロン(マイクロ波発振器)、23はアンテナ、25はマイクロ波放射部(開口部)、26は放射突部(突部)、27は放射調整部(スリット部)、28は放射調整部(スリット部)、41はマイクロ波放射部(切欠部)、42は放射突部(突部)、51は放射突部(突部)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物をマイクロ波で加熱調理するための調理室と、
前記調理室の外部に設けられたものであって、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、
前記調理室の外部に設けられたものであって、前記マイクロ波発振器から発振されたマイクロ波が通る導波管と、
一端部が前記導波管の内部に配置され且つ他端部が前記導波管の外部に配置されたものであって、前記導波管の内部のマイクロ波が伝わるケーブル部材と、
前記ケーブル部材の他端部に設けられたものであって、前記ケーブル部材を伝わるマイクロ波を前記調理室内に放射する板状のアンテナと、
前記アンテナに前記調理室とは反対側から隙間を介して対向するものであって、マイクロ波が透過することが不能な隔壁を備え、
前記アンテナは、前記ケーブル部材の他端部から外周側へ遠ざかることに応じて前記隔壁に接近する曲状をなしていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記調理室内には、前記アンテナに対向すると共に前記アンテナと同一の方向に向けて凸となる曲状をなすものであってマイクロ波を反射することが可能なマイクロ波反射面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記アンテナのうち前記隔壁とは反対側の一面は、放物線を基準線を中心に回転させた形状の回転放物面から構成されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記アンテナには、前記アンテナを厚さ方向に貫通すると共に外周部が開口する切欠部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記アンテナには、前記アンテナを厚さ方向に貫通すると共に回りが壁面で囲まれたものであって最大寸法がマイクロ波の波長の1/2よりも大きな開口部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記アンテナには、前記切欠部の内面または前記開口部の内面から突出するものであってマイクロ波を放射することが可能な突部が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記アンテナには、前記アンテナを厚さ方向に貫通すると共に回りが壁面で囲まれたものであって最大寸法がマイクロ波の波長の1/2よりも小さなスリット部が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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