説明

加熱調理器

【課題】ファンの羽根に油脂等の汚れが付着することによる送風能力の低下を抑制すると共に、安価な構成で調理庫外に油脂等の汚れが排出されるのを抑制する加熱調理器を提供する。
【解決手段】調理庫1と、調理・消煙兼用加熱手段20を具備する消煙部2と、調理庫1内の気体を消煙部2に送り込む吸入路3と、調理・消煙兼用加熱手段20により加熱された加熱空気を消煙部2から調理庫1内に送り込む導風路4とを備え、調理庫1から吸入路3、消煙部2、導風路4を経由し調理庫1に戻る循環路5を形成する。消煙部2と導風路4の間に送風手段51を備え、加熱空気の一部を排出する排出口50と、外気を取り入れる外気取り入れ口10とを備え、導風路4から調理庫1内に送り込まれた加熱空気を焙焼用熱風として該焙焼用熱風にて被調理物9を加熱し、取り入れられた外気が消煙部2に供給されると共に、循環路5を流れる加熱空気の一部が排出口50から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理庫内に魚や肉等の被調理物を収容して加熱調理する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚や肉等の被調理物を収容する調理庫と、調理用加熱手段と、調理庫内の気体を調理用加熱手段に送るとともに調理用加熱手段で加熱された焙焼用熱風を被調理物に送るファンからなる送風手段と、調理庫内の気体の一部を庫外に排出する排出口と、を備えた加熱調理器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−57847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の加熱調理器にあっては、被調理物から分離し調理庫内に溜まっている焼汁や滓から発生した油煙等が、調理庫内の気体に混ざって送風手段の吸引力により調理用加熱部に送られる途中で送風手段のファンを通過するが、この時、ファンの羽根に油脂等の汚れが付着するものであった。ファンの羽根に汚れが付着すると、焙焼用熱風の送風能力が低下して加熱調理に悪影響を与えてしまうものであった。
【0005】
また、調理庫内で発生した油煙や臭い成分等が庫外に排出されないようにするためには、触媒等の消煙部材を別途備える必要があり、製造コストがかさむものであった。
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、ファンの羽根に油脂等の汚れが付着することによる送風能力の低下を抑制すると共に、安価な構成で調理庫外に油煙や臭い成分が排出されるのを抑制する加熱調理器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る加熱調理器は、被調理物9を収容する調理庫1と、調理・消煙兼用加熱手段20を具備する消煙部2と、調理庫1内の気体を消煙部2に送り込む吸入路3と、調理・消煙兼用加熱手段20により加熱された加熱空気を消煙部2から調理庫1内に送り込む導風路4とを備え、調理庫1内から吸入路3と消煙部2と導風路4とを経由して調理庫1内に戻る気体の循環路5を形成し、消煙部2と導風路4の間の循環路5に、該循環路5内の気体を循環させる送風手段51を備え、加熱空気の一部を循環路5外に排出する排出口50と、調理庫1内に外気を取り入れる外気取り入れ口10とを備え、導風路4から調理庫1内に送り込まれた加熱空気を焙焼用熱風として該焙焼用熱風にて被調理物9を加熱し、外気取り入れ口10から取り入れられた外気が消煙部2に供給されると共に、循環路5を流れる加熱空気の一部が排出口50から排出されることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、調理庫1内で発生した油煙や臭い成分は吸入路3を通って消煙部2に送り込まれ、調理・消煙兼用加熱手段20によって加熱され、導入された外気の酸素と反応して浄化可能となるものであり、これにあたり、油煙や臭い成分の分解のための触媒や別の加熱手段を用いる必要がないものであり、また、送風手段51が消煙部2の下流側に配置されているため、送風手段51が油煙等により汚れることがないものである。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、調理庫1内を、隔壁8により、外気取り入れ口10から取り入れた外気を消煙部2に導く外気導通路18と、被調理物9が位置する焙焼部19とに仕切ることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、調理庫1内へ取り込まれた低温の外気が被調理物9に接触することなく消煙部2へと導かれるため、効率良く調理物を加熱できる。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、調理庫1は前方側の面が開口して該前面開口に開閉自在に扉6が設けられ、調理庫1内から吸入路3へ導入する導入口12が調理庫1の後部に設けられ、調理庫1内の下部に被調理物9から落下する焼汁や滓を受ける受け皿16が設けられて該受け皿16が隔壁8の一部を構成し、外気取り入れ口10が調理庫1の前部に形成され、外気取り入れ口10から取り入れられた外気が受け皿16の下側に形成される外気導通路18を通って導入口12に至ることを特徴とする。
【0012】
このような構成とすることで、調理庫1の前面開口から被調理物9や受け皿16を出し入れできるため出し入れがし易く、また、低温の外気が外気導通路18を通る際に受け皿16を冷却するため、受け皿16に溜まった焼汁や滓からの油煙等の発生を抑制することできる。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3に係る発明において、調理庫1の上部に上側加熱手段14が設けられると共に、被調理物9が載置される網部が調理庫1の底面よりも上方に設置される焼網15が調理庫1内に設けられ、導風路4から加熱空気噴出口41、42を介して加熱空気を調理庫1内の網部の下側に噴出させるようにすることを特徴とする。
【0014】
このような構成とすることで、被調理物9の上側を上側加熱手段14により加熱すると共に、被調理物9の下側を加熱空気(焙焼用熱風)により加熱することができて、加熱調理の仕上がりを一層良好にすることができ、また、使用者が調理途中で被加熱物9を裏返す手間が省けるとともに調理時間が短縮できる。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明において、導風路4に、噴出方向が上向きとなる加熱空気噴出口41および噴出方向が下向きとなる加熱空気噴出口42を、導風路4の長手方向において混在させることを特徴とする。
【0016】
このような構成とすることで、被調理物9の下側に焼きムラが生じないようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にあっては、調理庫内で発生した油煙や臭い成分は浄化された後、排出口から調理庫外に排出されるため、加熱調理器が設置される室内が油煙や臭い成分によって汚れるのが防止されるものであり、また、油煙や臭い成分の分解のための触媒や別の加熱手段を用いる必要がないため、安価な構成で排出口から調理庫外に排出される気体の無煙・無臭化が可能になるものであり、また、送風手段が油煙等により汚れることがないため、送風手段の油煙等による汚れに起因する風量の低下が生じず、風量の低下により焼きムラ等の加熱調理器の性能劣化がなく、長期に亘り良好な加熱調理が可能になる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の加熱調理器を前後方向に切断した縦断面の前斜め上方から見た斜視図である。
【図2】同上の加熱調理器の前斜め上方から見た斜視図である。
【図3】同上の加熱調理器の扉を省略した状態の前斜め上方から見た斜視図である。
【図4】同上の加熱調理器の扉、焼網、受け皿を省略した状態の前斜め上方から見た斜視図である。
【図5】同上の加熱調理器の扉、焼網、受け皿を省略した状態の前斜め下方から見た斜視図である。
【図6】同上の加熱調理器を左右方向に切断した縦断面の前斜め上方から見た斜視図である。
【図7】同上の加熱調理器を前後方向に切断した縦断面の後斜め上方から見た斜視図である。
【図8】同上の加熱調理器の後斜め上方から見た斜視図である。
【図9】同上の調理・消煙兼用加熱手段の斜視図である。
【図10】同上の加熱調理器の基本的な構成を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0020】
本発明の加熱調理器は、被調理物を収容する調理庫を備えた所謂グリルであるが、グリルに加えコンロを備えたものであってもよい。
【0021】
加熱調理器は、図1、図7、図10等に示すように、調理庫1と、調理・消煙兼用加熱手段20を具備する消煙部2と、循環路5とで主体が構成される。調理庫1は、本実施形態では、外殻が金属板で形成されているが、材質は特に限定されない。また、調理庫1の前方側の面は開口していると共に、この前面開口に開閉自在に扉6が設けられるもので、扉6については後述する。なお本実施形態では便宜上、加熱調理器に対して使用者が通常位置する方を前方とすると共にその反対側を後方(背方)とし、左右は後方を向いた時の左右をいうものとする。
【0022】
調理・消煙兼用加熱手段20は、本実施形態では電熱線ヒータであるが、電力をエネルギー源とする電熱線ではないものや、ガスバーナ等の燃焼手段であってもよく、特に限定されない。この調理・消煙兼用加熱手段20は、消煙チャンバー7内に設けられる。
【0023】
消煙チャンバー7は、本実施形態では、調理庫1の外殻の背板11を介して隣接して設けられており、外殻が金属板で形成されているが、材質は特に限定されない。調理庫1内と消煙チャンバー7内とは、前記背板11の上部に形成された導入口12を介して連通するものである。また、消煙チャンバー7内が更に、調理・消煙兼用加熱手段20が設けられる主要部とファンチャンバー70とに仕切られており、主要部とファンチャンバー70とは連通口74を介して連通している。ファンチャンバー70には、連通口74とは別に、導出口71と開口72とが形成され、導出口71に後述する導風路4が接続されると共に、開口72に排気ダクト73が接続され、ファンチャンバー70内に送風手段51としてのファン52が設けられる。このファン52はファンモータ53により回転駆動され、ファンチャンバー70内の気体を導入口12側から調理・消煙兼用加熱手段20を通って導出口71側へと搬送し、搬送された加熱空気の一部は導出口71を通って導風路4へと流入すると共に、残りは開口72から排気ダクト73を介して加熱調理器外へと排出される。前記開口72が、加熱空気の一部を循環路5外に排出する排出口50となる。このように、消煙チャンバー7内の導入口12と導出口71との間の部分が消煙部2となり、この部分に調理・消煙兼用加熱手段20が配置される。そして前記導入口12が、調理庫1内の気体を前記消煙部2に送り込む吸入路3となると共に、前記導出口71には導風路4が接続される。
【0024】
なお、本実施形態ではファンチャンバー70に形成された開口72が加熱空気の一部を循環路5外に排出する排出口50となるが、排出口50は特にこれに限定されず、例えば導風路4の途中から管等により加熱調理器外に排出されるようにしてもよく、この場合、ファンチャンバー70の構造が簡単になる。また、ファンモータ53はファンチャンバー70外に設けられているが、ファンチャンバー70内に設けられてもよく特に限定されない。
【0025】
導風路4は、調理・消煙兼用加熱手段20により加熱された加熱空気を消煙部2から調理庫1内に送り込むものである。本実施形態では導風路4は断面円形状の管からなり、その一端が導出口71に接続されると共に他端は閉塞され、調理庫1の左右の側壁13に沿って長手方向が前後方向となるようにそれぞれ設けられているが、長手方向は前後方向に限定されない。図中左側の導風路を4a、右側の導風路を4bで示している。
【0026】
導風路4の側壁には加熱空気噴出口41、42が穿設してあり、該加熱空気噴出口41、42を介して導風路4内と調理庫1内とが連通している。本実施形態では、前後方向に並設された加熱空気噴出口41、42の列を上下に二列形成してあり、上側の加熱空気噴出口41は導風路4の管の中心よりも上側に形成されて噴出方向が上向きとなり、下側の加熱空気噴出口42は管の中心よりも下側に形成されて噴出方向が下向きとなる。
【0027】
なお本実施形態では、導風路4は調理庫1の側壁13の外側の面に沿って配置してあり、導風路4の側壁13に穿設された開口13a(図1、図4等参照)と前記加熱空気噴出口41、42を介して導風路4内と調理庫1内とが連通しているが、導風路4を調理庫1の側壁13の内側の面に沿って配置してもよく、また管の断面が円形状でなく他の形状でもよい。また、導風路4を管で形成せず導風路用仕切り等により調理庫1内を仕切って形成してもよく、導風路4の形態は特に限定されない。また、導風路4内にも、電力をエネルギー源とする電熱線ではないものや、ガスバーナ等の燃焼手段を備えてもよく、この場合、調理庫1内に供給する熱量を増加させることができる。
【0028】
調理庫1の上部には、上側加熱手段14が設けられるもので、本実施形態では調理庫1の天井面に上側加熱手段14として電熱線ヒータが設けられるが、上側加熱手段14は、電力をエネルギー源とする電熱線ではないものや、ガスバーナ等の燃焼手段であってもよく、特に限定されない。なお、上側加熱手段14は必ずしも調理庫1に設けられなくてもよいものである。
【0029】
上記調理庫1、吸入路3、消煙部2、導風路4により、調理庫1から吸入路3、消煙部2、導風路4を順に経由して調理庫1内に戻る循環路5が形成される。そして、循環路5の消煙部2と導風路4との間の部分に、該循環路5内の気体を循環させる送風手段51(本実施形態ではファン52およびファンモータ53)を備えている。
【0030】
また、加熱調理器は調理庫1内に加熱調理器外の空気を取り入れる外気取り入れ口10を備えるもので、本実施形態では扉6に外気取り入れ口10を形成することで、調理庫1の前部に形成している。扉6は、本実施形態では前側に位置する表板61と、該表板61の背方に位置し調理庫1内に露出する裏板62とで主体が構成され、表板61と裏板62との間の周囲は閉塞されて内部の空間が略密閉される。そして、底板に外気取り入れ口10が形成されると共に、裏板62の下部に開口部63が形成され、加熱調理器外の空気は外気取り入れ口10および開口部63を介して調理庫1内に取り入れられる。
【0031】
また、調理庫1内には、焼網15の網部および導風路4の下側で且つ開口部63の上側に、被調理物9から落下する焼汁や滓を受ける受け皿16が設けられる。受け皿16は、調理庫1の底面および背板11から隙間をあけた状態で取り付けられ、後端部からは上方に導入口12にかけて仕切り17が設けられる。これにより、外気取り入れ口10および開口部63を介して調理庫1内に取り入れられた加熱調理器外の空気は、受け皿16と底面の間および背板11と仕切り17の間を通って導入口12に流入することとなり、受け皿16と底面の間および背板11と仕切り17の間が外気導通路18となると共に、受け皿16および仕切り17が、調理庫1内を被調理物9が位置する焙焼部19と外気導通路18とに仕切る隔壁8となる。
【0032】
以下、加熱調理器の動作について説明する。被調理物9を焙焼するには、扉6を開けて被調理物9を焼網15の網部に載置する等して調理庫1内に収容し、上側加熱手段14および調理・消煙兼用加熱手段20と、送風手段51とを作動させる。送風手段51により循環路5内の気体が循環し、消煙部2において調理・消煙兼用加熱手段20により加熱空気が生成され、この加熱空気を焙焼用熱風として導風路4を介して調理庫1内に送り込んで、被調理物9を加熱する。調理庫1内で加熱された被調理物9から生じる煙や臭い成分は、取り入れられた外気と共に導入口12から消煙部2に導入されて調理・消煙兼用加熱手段20により焼かれ、油煙や臭い成分が外気中の酸素と反応して浄化されて、油煙や臭い成分が大幅に低減される。調理庫1内は、隔壁8により外気導通路18と焙焼部19とに仕切られているため、調理庫1内へ取り込まれた低温の外気が被調理物9に接触することなく消煙部2へと導かれるため、効率良く調理物を加熱できる。
【0033】
消煙部2で焼かれた加熱空気は、一部が排出口50から排出されると共に残りが導出口71を介して導風路4へと導出され、前記一部の排出された量に見合う量の外気が外気取り入れ口10から取り入れられる。
【0034】
左右の導風路4に導入された焙焼用熱風は、一部が上側の加熱空気噴出口41から上向きに噴出され、正面視で網部の左右両端部の下面あたりにそれぞれ噴き込まれて、被調理物9の左右両端部近傍を加熱する。そして焙焼用熱風の残りが下側の加熱空気噴出口42から下向きに噴出されるが、噴出口42から噴出される熱風の比重が周囲の空気の比重より小さいため、流れの方向を漸次上方に偏向されることで、正面視で網部の中央部の下面あたりに噴き込まれて、被調理物9の中央部近傍を加熱する。このように、上側の加熱空気噴出口41と下側の加熱空気噴出口42とで、被調理物9の下面側において左右方向に焼きムラが生じないようにしている。本実施形態では、後述する、加熱空気噴出口41、42からの噴出方向調節用のルーバーを設けることなく加熱空気噴出口41、42からの噴出方向を調節しているため、ルーバーを拭き掃除する必要がなくお手入れ性がよいものである。
【0035】
また、噴出方向が上向きとなる加熱空気噴出口41および噴出方向が下向きとなる加熱空気噴出口42を、導風路4の長手方向において混在させるもので、本実施形態では、上側の加熱空気噴出口41となる小孔を前後に複数(本実施形態では五個)連続して並設した孔群と、下側の加熱空気噴出口42となる小孔を前後に複数(本実施形態では五個)連続して並設した孔群とを、前後に交互に並設している。これにより、噴出方向が上向きの加熱空気噴出口41と下向きの加熱空気噴出口42とをともに前後方向において万遍なく設けることができて、被調理物9の下面側において前後方向においても焼きムラが生じないようにしている。なお、本実施形態は上向きの加熱空気噴出口41と下向きの加熱空気噴出口42を前後方向において混在させる一例であり、上向きの加熱空気噴出口41と下向きの加熱空気噴出口42とを一個ずつ交互に設けたり、上向きの加熱空気噴出口41と下向きの加熱空気噴出口42とを二個または三個または四個以上ずつ交互に設けたり、あるいは規則性のない個数ずつ交互に設けてもよく、特に限定されない。
【0036】
また、電熱線ヒータからなる上側加熱手段14により、被調理物9の上面側を主に輻射熱により加熱する。
【0037】
また本実施形態では、調理庫1内が負圧となるように、排気ダクト73の通気抵抗を調節している。すなわち、排気ダクト73の通気抵抗が大きいとファン52の吐出部における圧力が高くなるため、排気ダクト73の通路の通気抵抗があまり大きくならないように形成している。調理庫1内を負圧にすることで、加熱空気噴出口41、42から噴出する加熱空気や、消煙部2で焼かれる前の油煙や臭い成分が調理庫1外に漏れ出すことを防止している。また、排気ダクト73の通気抵抗を調節することで、油煙や臭い成分を焼いて充分に低減するために要する外気の量と略同量の加熱空気が排出されるように設定される。
【0038】
本発明においては、調理庫1内で発生した油煙や臭い成分は、調理・消煙兼用加熱手段20によって加熱され、導入された外気の酸素と反応して浄化された後、排出口50から調理庫1外に排出されるため、加熱調理器が設置される室内が油煙や臭い成分によって汚れるのが防止される。また、被調理物9を調理するための加熱手段により油煙や臭い成分を分解して浄化できるため、油煙や臭い成分の分解のための触媒や別の加熱手段を用いる必要がなく、安価な構成で加熱調理器による加熱調理時の無煙・無臭化が可能になる。
【0039】
また、循環路5の気体を循環させる送風手段51は消煙部2の下流側に配置されているため、油煙や臭い成分が分解され浄化された加熱空気のみが送風手段51により循環されることになり、送風手段51が油煙等により汚れることがないため、送風手段51の油煙等による汚れに起因する風量の低下が生じないものとなり、風量の低下により焼きムラが生じる等の加熱調理器の性能劣化がなく、長期に亘り良好な加熱調理が可能になる。
【0040】
また本実施形態では、調理庫1に取り入れられる外気は、送風手段51の吸引力によって取り入れられて調理庫1内を負圧に保つため、扉6の隙間等から調理庫1外への加熱空気や油煙や臭い成分の漏出が防止される。
【0041】
また、図示しないが、加熱空気噴出口にルーバーを設けることで、加熱空気噴出口からの噴出方向を調節するようにしてもよい。これにより、ルーバーを拭き掃除する手間が生じるものの、上記実施形態のように、加熱空気噴出口の導風路4の側壁への形成の仕方に工夫を凝らす必要がない。
【符号の説明】
【0042】
1 調理庫
10 外気取り入れ口
12 導入口
14 上側加熱手段
15 焼網
16 受け皿
18 外気導通路
2 消煙部
20 調理・消煙兼用加熱手段
3 吸入路
4(4a、4b) 導風路
41 上側の加熱空気噴出口
42 下側の加熱空気噴出口
5 循環路
50 排出口
51 送風手段
6 扉
63 開口部
7 消煙チャンバー
71 導出口
72 開口
73 排気ダクト
8 隔壁
9 被調理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収容する調理庫と、調理・消煙兼用加熱手段を具備する消煙部と、前記調理庫内の気体を前記消煙部に送り込む吸入路と、前記調理・消煙兼用加熱手段により加熱された加熱空気を前記消煙部から前記調理庫内に送り込む導風路とを備え、前記調理庫内から前記吸入路と前記消煙部と前記導風路とを経由して前記調理庫内に戻る気体の循環路を形成し、
前記消煙部と前記導風路の間の前記循環路に、該循環路内の気体を循環させる送風手段を備え、
前記加熱空気の一部を前記循環路外に排出する排出口と、前記調理庫内に外気を取り入れる外気取り入れ口とを備え、
前記導風路から前記調理庫内に送り込まれた前記加熱空気を焙焼用熱風として該焙焼用熱風にて前記被調理物を加熱し、前記外気取り入れ口から取り入れた外気が前記消煙部に供給されると共に、前記循環路を流れる前記加熱空気の一部が前記排出口から排出されることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記調理庫内を、隔壁により、前記外気取り入れ口から取り入れた外気を前記消煙部に導く外気導通路と、被調理物が位置する焙焼部とに仕切ることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記調理庫は前方側の面が開口して該前面開口に開閉自在に扉が設けられ、前記調理庫内から前記吸入路へ導入する導入口が前記調理庫の後部に設けられ、前記調理庫内の下部に被調理物から落下する焼汁や滓を受ける受け皿が設けられて該受け皿が前記隔壁の一部を構成し、前記外気取り入れ口が前記調理庫の前部に形成され、前記外気取り入れ口から取り入れられた外気が前記受け皿の下側に形成される前記外気導通路を通って前記導入口に至ることを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記調理庫の上部に上側加熱手段が設けられると共に、前記被調理物が載置される網部が前記調理庫の底面よりも上方に設置される焼網が前記調理庫内に設けられ、前記導風路から加熱空気噴出口を介して加熱空気を前記調理庫内の前記網部の下側に噴出させるようにすることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記導風路に、噴出方向が上向きとなる前記加熱空気噴出口および噴出方向が下向きとなる前記加熱空気噴出口を、前記導風路の長手方向において混在させることを特徴とする請求項4記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−154601(P2012−154601A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16426(P2011−16426)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)
【Fターム(参考)】