説明

加熱調理器

【課題】上下に加熱手段をもつ加熱室において、下部加熱手段の発熱状態を視認することが出来きるようにすること。
【解決手段】調理物14を収納し加熱する調理室11と、調理物14を載置する調理用加熱プレート18と、調理物14を上方から加熱する第1の加熱手段9と、調理室底面17を下方から加熱する第2の加熱手段10とを備え、調理室底面17には光透過性の高耐熱材料を用いることにより、第2の加熱手段10の発熱時の光が透過して見えるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般家庭の台所や業務用の厨房等で使用される、グリル装置を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器のグリル装置の概略構成は、グリル装置内に調理室を配し、調理物を載せる焼き網を載置した受け皿を収納し、加熱体としてはシーズヒーターと呼ばれる電熱線のジュール熱を用いて、調理物を加熱調理、特に両面を同時に加熱するものが一般的である。しかし、このような構成では、調理室下方に設けられた加熱体に調理物から油脂や水分が滴下し、煙が多量に発生するとともに調理物に再付着し食味を損なう恐れがある。また、稀に油脂分に引火する恐れがあった。さらに、下方に配置された加熱体が邪魔になり、調理室底面の清掃性に欠く。これらの課題を解決する方法として、下方に設けられた加熱体の上方に、均熱加熱プレートを配し、均熱加熱プレート上に調理用加熱プレートを載置して調理するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は従来の加熱調理器の概略図である。調理物14を収納する調理室11と調理物14を載置する調理用加熱プレート18と、調理物14を上方から加熱する第1の加熱手段9と、調理室底面17を加熱する第2の加熱手段10を有し、調理用加熱プレート18と調理室底面17は熱的に接続され、調理物14を上下から加熱調理する構成としている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記構成にすることで、第2の加熱手段は調理室底面によって覆い隠されているため、清掃時に、第2の加熱手段に手があたることがなく、清掃性が向上し、油脂分が、第2の加熱手段に滴下することがないため、煙や引火の発生は極めて少ない。また、第2の加熱手段からの熱を調理室底面によって、均熱に分布させる工夫を行うことができ、調理室底面に載置される調理用加熱プレートの加熱分布の均熱性を高めることができる。
【0005】
しかしながら、上記のような構成では調理室底面によって下部加熱手段の発する光が遮られる為、下部加熱手段の発熱状態を視認できないという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−115473号公報
【特許文献2】特開2010−207378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、下部加熱手段の発熱状態を視認することが出来きる加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
調理物を収納し加熱する調理室と、前記調理物を載置する調理用加熱プレートと、前記調理物を上方から加熱する第1の加熱手段と、調理室底面を下方から加熱する第2の加熱手段とを備え、前記調理室底面は光透過性の高耐熱材料として第2の加熱手段の光が見える構成としたものである。
【0009】
これによって、第2の加熱手段が発熱時に発する光が調理室底面を透過することができ
るようになり、発熱状態を視認することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱調理器は、調理物両面を同時に加熱調理するグリル装置を備えたものに対して、調理室上面上方に第1の加熱手段が、調理室底面の下方に第2の加熱手段が配されているため、調理室に手を入れても、その手を遮るようなものがなく、調理室内を清掃する際、調理室内に手をいれて清掃することが容易であり、清掃性能の高いものとすることができる。また、調理室底面は光透過性の高耐熱材料であるため、下部加熱手段の発熱状態を視認することが出来きる。さらに、調理室内や調理用加熱プレートの温度を検知するためのセンサに赤外線センサなどの光を用いる温度センサを使用することができるため、より、精度の高い温度制御調理が可能な加熱調理器にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の断面図
【図2】本発明の実施形態2における加熱調理器の断面図
【図3】本発明の実施形態3における加熱調理器の断面図
【図4】本発明の実施形態4における加熱調理器の断面図
【図5】本発明の実施形態5における加熱調理器の断面図
【図6】本発明の実施形態6における加熱調理器の断面図
【図7】本発明の実施形態7における加熱調理器の断面図
【図8】本発明の実施形態6における加熱調理器の断面図
【図9】従来の加熱調理器の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、調理物を収納し加熱する調理室と、調理物を載置する調理用加熱プレートと、前記調理物を上方から加熱する第1の加熱手段と、調理室底面を下方から加熱する第2の加熱手段とを備え、前記調理室底面は光透過性の高耐熱材料として第2の加熱手段の光が見える構成としたことにより、調理室に手を入れても、その手を遮るようなものがなく、調理室内を清掃する際、調理室内に手をいれて清掃することが容易であり、清掃性能の高いものとすることができる。また、調理室底面は光透過性の高耐熱材料であるため、第2の加熱手段の発熱状態を視認することが可能となる。
【0013】
第2の発明は、特に、第1の発明の調理室底面に可視光の透過率を低減する遮光層と、前記遮光層の一部を切り抜かれて形成される透明窓を有してなる構成としたことにより、調理室底面における光透過領域を任意に設定することが可能になり、調理室底面の下方を場所によって見えやすくしたり見えにくくしたりすることができる。
【0014】
第3の発明は、特に、第2の発明の透明窓は調理室底面に調理用加熱プレートを載置した際に隠れる位置に形成してなる構成としたことにより、調理用加熱プレートが載置されている状態において、調理室底面の下方を見えなくし、調理用加熱プレートが載置されていない状態においてのみ、第2の発熱手段の発熱状態を視認することが可能となる。
【0015】
第4の発明は、特に、第2の発明の透明窓は調理室底面に調理用加熱プレートを載置した際に隠れない位置に形成してなる構成としたことにより、調理用加熱プレートが載置されている状態においても、第2の発熱手段の発熱状態を視認することが可能となる。
【0016】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の調理室底面の下方に通電時のみ発光する素子を配してなる構成としたことにより、第2の発熱手段が発熱時に発する光に頼ることなく、第2の発熱手段の発熱状態を視認することが可能となる。
【0017】
第6の発明は、特に、第1から第4のいずれか1つの発明の調理室底面の下方に温度を検知するセンサを配し、検知した温度が設定温度を超えている時のみ発光する素子を配した構成としたことにより、通電終了後であっても設定温度を超えている場合に注意喚起することが出来る。
第7の発明は、特に、第1から第4のいずれか1つの発明の調理室底面の下方に温度を検知するセンサを配し、検知した温度によって異なる色が発光する素子を配してなる構成としたことにより、調理室内の温度状態を色によって識別することが出来る。
第8の発明は、特に、第5から第7のいずれか1つの発明の発光素子は調理用加熱プレートを載置すると消灯する構成としたことにより、注意喚起が必要なくなった際に消費電力をおさえることが出来る。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における加熱調理器の断面図を示すものである。
【0020】
図1において、調理室11から調理物14を出し入れするための、加熱調理器前方に設けられた開口を覆う調理室扉8が設けられ、調理室上面16上方には、第1の加熱手段9と、調理室底面17下方には、第2の加熱手段10が配設されている。調理室底面17上方には、調理物14の載置部と調理物14から出る油等を受ける受け皿機能部を一体形成した調理用加熱プレート18が載置される構成としている。このとき、調理室底面17は光透過性の高耐熱材料、特に代表的な材料として、結晶化ガラスを用いるのがよい。
【0021】
上記構成にすることにより、調理室上面16上方に第1の加熱手段9が、また調理室底面17の下方に第2の加熱手段10が配されており、調理室11内には加熱体がなく、調理室11内に手を入れても、その手を遮るようなものがないため、調理室11内を清掃する際、手をいれて清掃することが容易であり、清掃性能の高いものとすることができる。また、調理室底面17は光透過性の高耐熱材料であるため、第2の加熱手段が発熱した際に発する可視光は調理室底面17を上方へと透過するので、発熱状態を視認することが可能となる。
【0022】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における加熱調理器の断面図を示すものであり、第1の実施の形態と異なるところを主に説明する。尚、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
図2において、調理室底面17に可視光の透過率を低減する遮光層20と、遮光層20の一部が切り抜かれて形成される透明窓19を有してなる構成としている。このとき、遮光層20は、遮光性材料を調理室底面17の下面に塗布し、焼成することにより形成することができる。遮光性材料としては、チタン酸アルミニウム、低膨張ガラスフラックス及び無機顔料を有機バインダーでペースト化したものを用いることができる。
【0024】
上記構成にすることにより、調理室底面17における光透過領域を任意に設定することが可能になり、調理室底面17の下方を場所によって見えやすくしたり見えにくくしたりすることができる。また、透明窓19を形成する際に、文字、記号、絵文字または幾何学形状を切り抜いて形成することで発熱時に注意喚起することもできる。
【0025】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における加熱調理器の断面図を示すものであり、第2の
実施の形態と異なるところを主に説明する。尚、第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
図3において、透明窓19は調理室底面17に調理用加熱プレート18を載置した際に隠れる位置に形成してなる構成としている。
【0027】
上記構成にすることにより、調理用加熱プレート18が載置されている状態において、調理室底面17の下方を見えなくし、調理用加熱プレート18が載置されていない状態においてのみ、第2の加熱手段10の発熱状態を視認することが可能となる。したがって、調理用加熱プレート18が載置されていない状態での注意喚起ができる。
【0028】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4における加熱調理器の断面図を示すものであり、第2の実施の形態と異なるところを主に説明する。尚、第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
図4において、透明窓19は調理室底面17に調理用加熱プレート18を載置した際に隠れない位置に形成してなる構成としている。
【0030】
上記構成にすることにより、調理用加熱プレート18が載置されている状態、例えば、調理中、においても、第2の加熱手段10の発熱状態を視認することが可能となる。
【0031】
(実施の形態5)
図5は、本発明の実施の形態5における加熱調理器の断面図を示すものであり、第1から第4の実施の形態と異なるところを主に説明する。尚、第1から第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
図5において調理室底面17の下方に第2の加熱手段10の通電時のみ発光する発光素子21を配してなる構成としている。このとき、発光素子21はLEDを用いると良い。
【0033】
上記構成にすることにより、第2の加熱手段10が発熱時に発する可視光に頼ることなく、第2の加熱手段10の発熱状態を視認することが可能となる。また、第2の加熱手段10が発熱時に発する可視光だけのときよりも輝度を上げることができるため、透明窓19を形成する際に、文字、記号、絵文字または幾何学形状を切り抜いて形成することで視認性の高い注意喚起をすることもできる。
【0034】
(実施の形態6)
図6は、本発明の実施の形態6における加熱調理器の断面図を示すものであり、第1から第4の実施の形態と異なるところを主に説明する。尚、第1から第4の実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
図6において、調理室底面17の下方に温度を検知するセンサ22を配し、検知した温度が設定温度を超えている時のみ発光する素子を配した構成としている。
【0036】
上記構成にすることにより、通電終了後であっても設定温度を超えている場合に注意喚起することが出来る。また、調理室底面17に光透過性の高耐熱材料の代表である結晶化ガラスを使用することで、温度を検知するためのセンサ22に赤外線センサなどの光を用いる温度センサを使用して調理用加熱プレート18が発する赤外線を検知のすることができるため、より、精度の高い温度検知が可能となる。
【0037】
(実施の形態7)
図7は、本発明の実施の形態7における加熱調理器の断面図を示すものであり、第1から第4の実施の形態と異なるところを主に説明する。尚、第1から第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
図7において、調理室底面の下方に温度を検知するセンサ22を配し、検知した温度によって異なる色が発光する発光素子21を配してなる構成としている。
【0039】
上記構成にすることにより、調理室内の温度状態を色によって識別することが出来る。また、温度を検知するためのセンサ22に赤外線センサなどの光を用いる温度センサを使用して調理用加熱プレート18が発する赤外線を検知することにより、調理用加熱プレート18の温度状態をお知らせすることもできるため、高温時に調理用加熱プレート18に手を触れないよう注意喚起することにより安全性も確保できる。
【0040】
(実施の形態8)
図8は、本発明の実施の形態8における加熱調理器の断面図を示すものであり、第5から第7の実施の形態と異なるところを主に説明する。尚、第5から第7の実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
図8において、発光素子21は調理用加熱プレート18を載置すると消灯する構成としている。調理用加熱プレート18が載置されたかどうかはセンサ22を用いて載置していない時と載置している時の温度により検知すると良い。
【0042】
上記構成により、注意喚起が必要なくなった際に発光素子21消灯させることが出来るため消費電力をおさえることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、調理室を備えたもの全般に関して適用することができ、調理室内部に発熱状態の視認性のほか、清掃性や安全性を付与させたいもの、あるいは、精度よい温度制御調理を要するものに適する。
【符号の説明】
【0044】
8 調理室扉
9 第1の加熱手段
10 第2の加熱手段
11 調理室
14 調理物
16 調理室上面
17 調理室底面
18 調理用加熱プレート
19 透明窓
20 遮光層
21 発光素子
22 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を収納し加熱する調理室と、調理物を載置する調理用加熱プレートと、前記調理物を上方から加熱する第1の加熱手段と、調理室底面を下方から加熱する第2の加熱手段とを備え、前記調理室底面は光透過性の高耐熱材料として第2の加熱手段の光が見えるようにしてなる加熱調理器。
【請求項2】
調理室底面に可視光の透過率を低減する遮光層と、前記遮光層の一部を切り抜かれて形成される透明窓を有してなる請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
調理用加熱プレートを載置した際に隠れる位置に透明窓を形成してなる請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
調理用加熱プレートを載置した際に隠れない位置に透明窓を形成してなる請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
調理室底面の下方に通電時のみ発光する素子を配してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
調理室底面の下方に温度を検知するセンサを配し、検知した温度が設定温度を超えている時のみ発光する素子を配した1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
調理室底面の下方に温度を検知するセンサ配し、検知した温度によって異なる色が発光する素子を配してなる1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
調理用加熱プレートを載置すると発光素子が消灯してなる請求項5〜7のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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