説明

加熱調理器

【課題】出し入れの際には底面同士の摩擦音を発生させることがなく、かつ底面の表面の傷つきも発生させず、なおかつ、完全に収納した際には、従来通り調理室底面からの熱的接続により、加熱効率を高く保つことができること。
【解決手段】グリル皿11にグリル皿凸部19を設けて、グリル加熱室底面13にグリル皿凸部19と相対する位置にグリル室底面凹部22を設けて嵌め込むことにより、グリル皿11の摺動時にはグリル皿未摺動面17はグリル加熱室底面13と接触せずにグリル皿凸部19のみがグリル加熱室底面13と接触しており、グリル皿11の収納時にはグリル皿の凸部がグリル室凹部に嵌りこむことで、グリル皿未摺動面17とグリル加熱室底面13が密着して、調理性能と耐磨耗性を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭で使用する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器は、調理室底面を加熱するヒーターを有し、調理室底面と調理物を載置する載置皿とを熱的に接続することにより、載置皿を必要十分に加熱することができ調理物に必要な熱量を与えることで食味を向上させるものである。
【0003】
また、調理物を収納する調理室と、調理物を載置する載置皿と、調理室底面を加熱するヒーターを有し、載置皿と調理室底面が熱的に接続されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−207378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、調理室底面に載置皿を載置することができ、底面の熱的接続させることができるものの、載置皿を出し入れする際に載置皿の底面と調理室底面が直接触れることによる摩擦によって、載置皿や調理室底面の表面が傷つき耐磨耗性が低下するという課題を有するとともに、載置皿の摺動時には耳障りな摩擦音が発生するという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、載置皿を出し入れする際には、載置皿底面と調理室底面に隙間を設けて、載置皿を完全に収納した際には、載置皿底面と調理室底面の隙間を狭くするあるいは接触させるものである。これによって、出し入れの際には底面同士の摩擦音を発生させることがなく、かつ底面の表面の傷つきも発生させない。なおかつ、完全に収納した際には、従来通り調理室底面からの熱的接続により、加熱効率を高く保つことができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、調理物を収納するグリル室と、前記グリル室底面下方に配設された加熱手段と、前記グリル室底面上に載置し前記調理物を載置するグリル皿と、前記グリル室前面を覆うグリル扉と、を備え、前記グリル皿底面の裏側及び前記グリル室底面の表側は前記グリル皿が引き出されている際に前記グリル皿と前記グリル室底面とが摺動することができる摺動面及び摺動することができない未摺動面を有し、前記グリル皿底面の裏側または前記グリル室底面の表側のいずれか一方に前記摺動面が前記未摺動面に対して突出した凸部を有し、他方に前記摺動面より奥まったところに凹部を設けて、前記グリル皿が引き出されている際には前記凸部が他方の摺動面と接することにより他方の摺動面と前記凸部側の前記未摺動面との隙間を設け、前記グリル皿が庫内に完全に収納される時には前記凸部が前記凹部に嵌まりこむことにより、前記隙間が摺動時に比べて狭くなる構成としたものである。
【0008】
これによって、グリル皿が引き出されている際には、グリル皿の未摺動面は、グリル室底面と隙間を設けているため、表面に傷がつくのを防止するとともに摩擦音を軽減し、グリル皿が収納されたときには凸部が他方の凹部に嵌り込むことにより、未摺動面と摺動面
との隙間が摺動時に比べて狭くなることで、グリル皿はグリル室底面からの熱的接続を可能にし、熱伝達効率を高く保つことができるのである。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0009】
また、本発明の加熱調理器は、調理物を収納するグリル室と、前記グリル室底面下方に配設された加熱手段と、前記グリル室底面上に載置し前記調理物を載置するグリル皿と、前記グリル室前面を覆うグリル扉と、を備え、前記グリル室底面は前記グリル室の前方から後方にかけて前方が低くなるグリル室底面傾斜面を形成し、前記グリル皿底面は前記グリル室底面と同様のグリル皿底面傾斜面を備え、前記グリル皿が引き出されている際に前記グリル室底面傾斜面と前記グリル皿底面傾斜面との隙間を設け、庫内に完全に収納される時には、前記隙間が摺動時に比べて狭くなる構成としたものである。
【0010】
これによって、グリル皿が引き出されている際には、グリル皿傾斜面はグリル室底面傾斜面と隙間を設けているために、表面に傷がつくのを防止するととともに摩擦音を軽減し、グリル皿が収納されたときには、互いの傾斜面の隙間が狭くなり、効率的に熱伝達をすることができる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱調理器は、載置皿を出し入れする際には、載置皿底面と調理室底面に隙間を設けて、載置皿を完全に収納した際には、載置皿底面と調理室底面の隙間を狭くすることで、底面の表面塗装の傷つき及び耳障りな摩擦音を発生させず、加熱効率はそのままとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における構成の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における構成の内部斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における構成の内部断面図
【図4】本発明の実施の形態1における構成の断面図
【図5】本発明の実施の形態1における構成の断面図
【図6】本発明の実施の形態1における構成の上方矢視図
【図7】本発明の実施の形態1における構成の断面図
【図8】本発明の実施の形態1における構成の断面図
【図9】本発明の実施の形態1における構成の断面図
【図10】本発明の実施の形態1における構成の断面図
【図11】本発明の実施の形態2における構成の断面図
【図12】本発明の実施の形態2における構成の断面図
【図13】本発明の実施の形態2における構成の断面図
【図14】本発明の実施の形態2における構成の断面図
【図15】本発明の実施の形態3における構成の断面図
【図16】本発明の実施の形態3における構成の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、調理物を収納するグリル室と、前記グリル室底面下方に配設された加熱手段と、前記グリル室底面上に載置し前記調理物を載置するグリル皿と、前記グリル室前面を覆うグリル扉と、を備え、前記グリル皿底面の裏側及び前記グリル室底面の表側は前記グリル皿が引き出されている際に前記グリル皿と前記グリル室底面が摺動することができる摺動面及び摺動することができない未摺動面を有し、前記グリル皿底面の裏側または前記グリル室底面の表側のいずれか一方に前記摺動面が前記未摺動面に対して突出した凸部を有し、他方に前記摺動面より奥まったところに凹部を設けて、前記グリル皿が引き出
されている際には前記凸部が他方の摺動面と接することにより前記他方の摺動面と前記凸部側の前記未摺動面との隙間を設け、前記グリル皿が庫内に完全に収納される時には前記凸部が前記凹部に嵌まりこむことにより、前記隙間が摺動時に比べて狭くなる構成としたことにより、摺動時のグリル皿底面とグリル室底面の磨耗等を防止するとともに、耳障りな摩擦音を軽減し、なおかつグリル皿が庫内に収納されて調理する時にはグリル室底面とグリル皿底面との距離を狭くして、効率的に熱伝達をすることができる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0014】
第2の発明は、調理物を収納するグリル室と、前記グリル室底面下方に配設された加熱手段と、前記グリル室底面上に載置し前記調理物を載置するグリル皿と、前記グリル室前面を覆うグリル扉と、を備え、前記グリル室底面は前記グリル室の前方から後方にかけて前方が低くなるグリル室底面傾斜面を形成し、前記グリル皿底面は前記グリル室底面と同様のグリル皿底面傾斜面を備え、前記グリル皿が引き出されている際に前記グリル室底面傾斜面と前記グリル皿底面傾斜面との隙間を設け、庫内に完全に収納される時には、前記隙間が摺動時に比べて狭くなる構成としたことにより、摺動時のグリル皿底面とグリル室底面の磨耗等を防止するとともに、耳障りな摩擦音を軽減し、なおかつグリル皿が庫内に収納されて調理する時にはグリル室底面とグリル皿底面との距離を狭くして、効率的に熱伝達をすることができる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0015】
第3の発明は、特に、第2の発明において、グリル皿底面の裏側に一箇所以上の摺動部材を有し、前記グリル皿が引き出されている際には前記摺動部材がグリル室底面と接することが可能となり、グリル室底面傾斜面とグリル皿底面傾斜面との前記傾斜面同士の隙間を設けて、庫内に完全に収納される時には、前記隙間が摺動時に比べて狭くなることにより、グリル皿が摺動する際に傾いてグリル皿後方が傾斜面と接触する場合であっても、摺動部材がグリル室底面と接することにより、グリル皿底面の耐摩耗性を保つことができる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0016】
第4の発明は、特に、第3の発明において、グリル皿は、グリル皿保持部を有し、前記グリル皿保持部は前記グリル皿とグリル扉を締結することで、前記グリル皿はグリル庫内上下方向に保持部を支点として回動自在とする構成としたことにより、グリル皿が摺動する際にある回動範囲で傾くことが可能となり、摺動時に摺動部材をグリル室底面傾斜面に当てつつ、摺動させることが可能となり、さらには庫内に収納される際にグリル室手前側に傾けることで調理物からの油などを集めることが可能になり、清掃性がよくなる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0017】
第5の発明は、特に、第4の発明において、グリル皿の回動範囲は、前記グリル皿表面の略水平から所定の角度とする構成とすることにより、グリル皿上の調理物は落とすことなく、グリル皿底面に溜まった油分や炭化物などをグリル室前方の温度が低い場所に集めることができ、利便性が高まる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0018】
第6の発明は、特に、第5の発明において、グリル皿保持部は、グリル皿とグリル扉とを蝶番により保持してなる構成とすることにより、グリル皿の回動を蝶番部の回動によって構成することができるため、回動部の信頼性が高まる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0019】
第7の発明は、特に、第1または第3の発明において、凸部及び摺動部材は、グリル室底面を上方から見て前記グリル室底面下方の加熱手段より外側に配設される構成としたことにより、凸部および摺動部材は、ヒーター直上の熱伝達を受けることなく、摺動部材の
熱負荷を軽減することができるため、部材の材料の耐熱性を考慮して、金属や樹脂などさまざまなパターンを選択することが可能となり、グリル皿との接触時の騒音値を軽減することが可能となる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0020】
第8の発明は、特に、第7の発明において、凸部及び摺動部材は、耐熱性を有する樹脂とする構成としたことにより、金属の場合に比べて、グリル室底面との摺動時のこすれ音を低減することができる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0021】
第9の発明は、特に、第8の発明において、凸部及び摺動部材は、フッ素系樹脂である構成としたことにより、耐熱性をもちつつ、摺動性を改善することができる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0022】
第10の発明は、特に、第1の発明において、凸部の接触形状は曲率R1を有し、凹部は曲率R2を有し、R1<R2の関係となる構成としたことにより、グリル皿を庫内に収納する際に、凸部は除々に凹部に嵌ることになり、そのためグリル皿が急激に下がることがなく、庫内収納時にグリル皿上部の調理物が衝撃により落ちる可能性が低くなる。さらには、凹部の曲率を凸部の曲率よりも大きくとっているために、調理物から出るくずや炭化物がグリル室底面の凹部にたまったとしても、清掃性が容易となる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0023】
第11の発明は、特に、第1の発明において、グリル室底面における凹部は、前記グリル室底面をロール成形して厚み一定において形成する構成としたことで、グリル室底面の材質を結晶化ガラスにすることができるため、摺動部材との摩擦において摩擦音を軽減することができる。さらには、ロール成形することで、ガラスの表面に凹部加工を切削などで施す場合に比べて、凹部の強度を保つことができる。よって、使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0024】
第12の発明は、特に、第1の発明において、グリル室は、グリル室底面と分離し前記グリル室底面とは別材質で設けたグリル室底面分離部を備え、前記グリル室底面分離部が凹部を形成した構成としたことにより、グリル室底面の材質を結晶化ガラスとし、凹部を別材質で形成するため、凹部の成形がしやすく、結晶化ガラスの熱負荷を軽減することができる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0025】
第13の発明は、特に、第12の発明において、グリル室底面分離部は、アルミダイキャストで構成したことにより、グリル室底面分離部は、熱伝導がよくグリル皿に熱を効率よく伝えることができ、調理性能が向上する。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0026】
第14の発明は、特に、第12の発明において、グリル室底面分離部は、ホーロー処理鋼板で構成したことにより、グリル室底面分離部は、耐摩耗性に優れ、グリル皿に熱を効率よく伝えることができ、調理性能が向上する。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0027】
第15の発明は、特に、第1の発明において、凹部よりグリル室前方にグリル底面に乗り越え凸部を設ける構成としたことにより、使用者がグリル皿を庫内に収納する際に、グリル皿凸部が乗り越え凸部と接触して乗り上げてから、凹部に嵌り込む。よって、使用者はグリル皿を収納できたかどうかやグリル皿の定位置を感触で知ることができる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0028】
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱調理器である誘導加熱調理器の主要構成部品を示すものである。但し、実施の形態の説明に不要な構成部分については、主要構成であっても省略している。
【0030】
誘導加熱調理器は、本体1の天面に被加熱調理器具(被加熱物)を載置するトッププレート2が配されている。トッププレート2は高耐熱のガラス等の電磁誘導によって加熱されない材質で構成されている。
【0031】
トップフレーム3は、トッププレート2の外周を囲み本体の天面の一部もしくは殆ど全部を構成しており、トッププレート2を介して伝わる、被加熱物からの熱に十分耐え、且つ外観部品として見栄えのよく、腐食にも強いステンレスやホーロー処理鋼板等の金属から成っている。
【0032】
さらに内部を、図2の本発明の第1の実施の形態における加熱調理器の構成の内部斜視図に示す。図2において、トップフレーム3に形成された天面操作部4の内部には、操作部ユニット等が配設されている。トッププレート2の下方には誘導加熱コイル5が近接して設けられている。誘導加熱コイル5はコイルケース6に収納され、本体1内の所定の位置に保持されている。誘導加熱コイル5には電源回路7によって高周波電力が供給されトッププレート2に載置された鍋を誘導加熱する。誘導加熱コイル5及び電源回路7は冷却ファン8の送風によって冷却される。
【0033】
本体1内には略箱形状のグリル加熱室10が配設されており、グリル加熱室10内に、調理物を載せる焼き網機能と調理物から出る油などを受ける受け皿機能とを備えたグリル皿11を収納している。また、グリル加熱室10の開口部を覆うグリル扉12がグリル皿11に嵌着されており、グリル扉12とグリル皿11は連動して前後に摺動し、グリル使用時にはグリル扉12が開口部を覆いグリル皿11はグリル加熱室10の内部に収納される。
【0034】
ここで、本発明に第1の実施の形態におけるグリル加熱室10の断面図を図3に示す。グリル加熱室10は、グリル加熱室底面13上に、グリル皿11を載置し、グリル皿11上に調理物14が載置される。また、グリル加熱室底面13下方には加熱手段下15を設けており、加熱手段下15の熱をグリル加熱室底面13が受けて、その熱をグリル皿11に伝えて、調理物14に必要十分な熱量を加えて調理するのである。このようにすることで、従来の加熱手段が庫内にある場合に比べて、加熱手段に調理物や炭化物が付着して発火することなどがないため、グリル皿に十分な熱を加えることができる。さらには、グリル加熱室内の清掃時には、障害物となるものがないために清掃性を向上させることが可能となる。なお、調理物に十分な熱を上方から加えるために、グリル室上方にも加熱手段上16があっても構わない。
【0035】
次に、本発明における摺動時のグリル皿11とグリル加熱室底面13の位置関係について図4に示す。
【0036】
グリル皿11底面の裏側には、出し入れする際に摺動しないグリル皿未摺動面17と、グリル皿摺動面18を有している。グリル皿摺動面18は、グリル皿未摺動面17より突出しておりグリル皿凸部19の一部となっている。
【0037】
一方、グリル室底面13表側にも、グリル皿11と同じくグリル室底面摺動面20とグリル室底面未摺動面21を有しており、グリル室底面未摺動面21はグリル室底面摺動面20より奥まったところで形成されたグリル室底面凹部22の一部である。
【0038】
グリル皿11はグリル庫内前方にあるグリル扉12により保持されてグリル庫内を摺動する際、接触する部分は、グリル皿凸部19のグリル皿摺動面18とグリル室底面摺動面20であり、グリル皿未摺動面17は接触せずにグリル室底面摺動面20と一定の摺動時隙間23を設けている。この隙間は、グリル皿凸部19によって設定することが可能であるので、グリル皿11が調理時の熱負荷により経年変化する場合を見越しておいて突出部を設計することで、経時変化を起こしても接触しないようにできることはいうまでもない。また、十分な隙間を取ることで、グリル皿が傾いたりする場合であっても、接触しにくくすることが可能となる。このことにより、グリル皿11のグリル皿未摺動面17は一般的に表面処理を施してあるが、摺動時のグリル加熱室底面13との摩擦により、表面処理層が傷つくことが少なくなり、グリル皿11の耐摩耗性を改善することができる。
【0039】
図5には、本発明におけるグリル皿11を庫内に収納した際のグリル皿11とグリル加熱室底面13の位置関係について示す。
【0040】
図4の状態からグリル庫内後方へ摺動したグリル皿11のグリル皿凸部19は、グリル室底面凹部22の前方に差し掛かると次第にグリル室底面凹部22のグリル室底面未摺動面21近傍に嵌り込む。その結果、グリル皿未摺動面17とグリル室底面摺動面20の嵌着時隙間24は、摺動時隙間23に比べて狭くなる。嵌着時隙間24は、グリル加熱室底面13とグリル皿11が面接触するように設定することも可能であるし、適当なクリアランスを設けておいて設計することも可能である。このことにより、グリル室底面下方の加熱手段からの熱を受けたグリル室底面からの熱接続の効率を高めることができ、摺動時の耐摩耗性と調理性能を兼ね備えた加熱調理器を提供できるである。
【0041】
図6に、摺動部となるグリル皿凸部19およびグリル室底面凹部22の配置位置を示す。図6は、グリル庫内を上方から見た矢視図であるが、グリル皿凸部19および相対する凹部は、複数の加熱手段下15よりも加熱手段外側26に配置されている。そして、収納時にグリル皿凸部19は、凸部配置位置25に配置される。このことにより、加熱手段下15からの熱伝達による影響を少なくすることが可能となり、凸部の部材を金属のように耐熱性の高いものから、樹脂のように一般的に耐熱性の低いものまで採用可能とすることができる。金属ではなく樹脂を使用することで、一般的にグリル室底面との摩擦音が軽減できることはいうまでもない。また、凸形状の製造に関しても、樹脂部品であれば、設計が容易となり、安価に作成することができる。フッ素樹脂を用いることで耐摩擦性を向上させることができることはいうまでもない。
【0042】
このことにより、凸部によるグリル加熱室底面13への機械的摩擦を低減することができ、摺動時の摩擦音の低減と調理性能を兼ね備える加熱調理器を提供でき、使用者にとって利便性が高まるのである。
【0043】
図7に、グリル皿凸部19の曲率がR1として、グリル室底面凹部22の曲率をR2とすると、本発明では、R1<R2の関係となっていることを示す。
【0044】
このことにより、グリル皿凸部19は、除々にグリル室底面凹部22に嵌るため、グリル皿11が急激に下がることがなく、グリル皿11がグリル室に収納される際にグリル皿11上部の調理物が衝撃により落ちる可能性が低くなる。さらには、R1<R2の関係により、調理物から出るくずや炭化物がグリル室底面凹部22に溜まったとしても、凹部の
角が立っている場合に比べて清掃が容易となる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0045】
図8には、グリル加熱室底面13を一体で形成した場合を示す。グリル加熱室底面13は、結晶化ガラスを採用することで、底面の熱を効率的にグリル皿11に伝えることが可能であるし、強度的にも問題ないが、本発明のように凹部加工を施すことで、ガラスの強度が落ちてしまいかねない。本発明では、ロール成形により凹部を形成することにより、厚みを一定で凹部を形成できる。その結果、ガラスの強度を保つことができ、摺動性の改善と摩擦音の低減およびグリル皿収納時の調理性能を兼ね備え、かつグリル室内の清掃性を保つことができるのである。
【0046】
図9には、グリル加熱室底面13を分離し、グリル加熱室底面13とは別材質で設けたグリル室底面分離部27を備え、グリル室底面分離部27が凹部28を形成した構成を示す。
【0047】
このことによって、グリル加熱室底面13を結晶化ガラスなどで形成し、グリル室底面分離部27は金属などで形成し、凹部28の成形性が容易となるため、清掃性能を改善しやすくなるとともに、凹部の結晶化ガラス部の熱負荷を低減することが可能となる。このことにより、使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。グリル室底面分離部27はアルミダイキャストで構成することで、グリル皿11への熱伝導をよくすることができる。また、グリル室底面分離部27は、アルミダイキャストに替えてホーロー処理鋼板で構成することで、耐摩耗性に優れ、熱伝導率をよくすることができる。
【0048】
図10には、凹部近傍で乗り越え凸部29があることを示す。このことにより、使用者がグリル皿を収納する際の位置が明確になり、収納したかどうかを判断するクリック感を得ることができ、より使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0049】
(実施の形態2)
図11には、本発明の実施の形態2を示す。グリル加熱室底面13は一定の傾斜角度を有するグリル室底面傾斜面30を有しており、それに相対するグリル皿11のグリル皿底面32は、同様の角度を有するグリル皿底面傾斜面31を有している。グリル皿11は、グリル室前方で保持されたグリル扉12によりグリル室後方へ摺動される。その際、お互いの傾斜面は傾斜面隙間33を設けており触れることがなく、庫内後方に摺動されるに連れて、傾斜面隙間33が狭くなっていく。最終的には、グリル皿11を収納した時点で、傾斜面同士が接触することができる。
【0050】
このことにより、グリル皿底面32とグリル加熱室底面13の耐摩耗性が改善されるとともに、摺動時に接触による摩擦音も発生しない構成となる。さらに、収納された際には傾斜面同士が熱接続されることにより、熱伝達の効率を保つことが可能となる。このことにより、使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0051】
図12には、グリル皿底面の後方に摺動部材34を配置した状態を示す。その際には、摺動途中でグリル皿11が何らかの事情によりグリル皿後方を下方にして傾いた場合に、摺動部材34がグリル加熱室底面13と接触し、摺動部材34を樹脂などで形成しておけば、摩擦音やグリル皿底面を傷つけることなく摺動が可能となる。このことにより、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0052】
図13には、グリル皿11がグリル皿保持部36に支持されて、回動範囲37を回動する状態を示す。グリル皿は、グリル皿保持部36により固定されており、回動する。そのことによって、グリル皿が摺動する際にある回動範囲で傾くことが可能となり、摺動時に
摺動部材をグリル室底面傾斜面に当てつつ、摺動させることが可能となり、さらには庫内に収納される際にグリル室手前側に傾けることで調理物からの油などを集めることが可能になり、清掃性がよくなる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0053】
なお、グリル皿保持部36としては、図14に示すように、グリル皿11の一部をグリル皿アーム嵌合部39としてグリル扉12に取り付けられたグリル皿保持アーム38に着脱自在に差し込む方法であってもよいし(36部詳細(1))、グリル皿11にグリル扉締結部40を設けて、グリル扉12と直接嵌合させてもよいし(36部詳細(2))、グリル扉12とグリル皿11にグリル扉蝶番部41を設けて回動させてもよい。これによって、回動の信頼性を向上させることが可能となり、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0054】
また、グリル扉蝶番部41などを用いて回動の範囲を所定の角度とすることで、グリル皿上の調理物は落とすことなく、グリル皿底面に溜まった油分や炭化物などをグリル室前方の温度が低い場所に集めることができ、清掃性が高まる。よって、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【0055】
(実施の形態3)
図15には、本発明の実施の形態3を示す。実施の形態3は、実施の形態1に対して、凹凸部を他方に載置した場合であり、発揮できる作用効果は実施の形態1と同様である。この場合、グリル皿は、グリル皿摺動面18を複数備え、グリル室底面もグリル室底面凸部35を複数備えて、摺動面も同様に複数備えることとなる。摺動時隙間23が保持されて、未摺動面同士の耐摩耗性が向上する。
【0056】
図16には、嵌着時を示す。嵌着時には、それぞれの凹凸部の隙間が狭くなり、下方からの熱接続を可能とし、加熱手段の配設を変更することで更なる調理性能向上が可能となる。グリル室底面凸部35を樹脂で成形することで摩擦音を低減できることはいうまでのないし、形状を実施の形態2のように曲率を持たせることで清掃性、クリック感向上を果たすことができることは同様にして可能である。
【0057】
このようにして、摩擦音やグリル皿底面を傷つけることなく摺動が可能であり、使用者にとって使い勝手のよい加熱調理器を提供できるのである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、安全で使い勝手の良い加熱調理器であり、システムキッチンなどに組み込まれて使用されるその他の機器についても適用できるものである。また、組込式以外のものについても適用できるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 本体
2 トッププレート
3 トップフレーム
4 天面操作部
5 誘導加熱コイル
6 コイルケース
7 電源回路
8 冷却ファン
9 操作部ユニット
10 グリル加熱室
11 グリル皿
12 グリル扉
13 グリル加熱室底面(グリル室底面)
14 調理物
15 加熱手段下
16 加熱手段上
17 グリル皿未摺動面
18 グリル皿摺動面
19 グリル皿凸部
20 グリル室底面摺動面
21 グリル室底面未摺動面
22 グリル室底面凹部
23 摺動時隙間
24 嵌着時隙間
25 凸部配置位置
26 加熱手段外側
27 グリル室底面分離部
28 凹部
29 乗り越え凸部
30 グリル室底面傾斜面
31 グリル皿底面傾斜面
32 グリル皿底面
33 傾斜面隙間
34 摺動部材
35 グリル室底面凸部
36 グリル皿保持部
37 回動範囲
38 グリル皿保持アーム
39 グリル皿アーム嵌合部
40 グリル扉締結部
41 グリル扉蝶番部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を収納するグリル室と、前記グリル室底面下方に配設された加熱手段と、前記グリル室底面上に載置し前記調理物を載置するグリル皿と、前記グリル室前面を覆うグリル扉と、を備え、前記グリル皿底面の裏側及び前記グリル室底面の表側は前記グリル皿が引き出されている際に前記グリル皿と前記グリル室底面とが摺動することができる摺動面及び摺動することができない未摺動面を有し、前記グリル皿底面の裏側または前記グリル室底面の表側のいずれか一方に前記摺動面が前記未摺動面に対して突出した凸部を有し、他方に前記摺動面より奥まったところに凹部を設けて、前記グリル皿が引き出されている際には前記凸部が他方の摺動面と接することにより前記他方の摺動面と前記凸部側の前記未摺動面との隙間を設け、前記グリル皿が庫内に完全に収納される時には前記凸部が前記凹部に嵌まりこむことにより、前記隙間が摺動時に比べて狭くなる加熱調理器。
【請求項2】
調理物を収納するグリル室と、前記グリル室底面下方に配設された加熱手段と、前記グリル室底面上に載置し前記調理物を載置するグリル皿と、前記グリル室前面を覆うグリル扉と、を備え、前記グリル室底面は前記グリル室の前方から後方にかけて前方が低くなるグリル室底面傾斜面を形成し、前記グリル皿底面は前記グリル室底面と同様のグリル皿底面傾斜面を備え、前記グリル皿が引き出されている際に前記グリル室底面傾斜面と前記グリル皿底面傾斜面との隙間を設け、庫内に完全に収納される時には、前記隙間が摺動時に比べて狭くなる加熱調理器。
【請求項3】
グリル皿底面の裏側に一箇所以上の摺動部材を有し、前記グリル皿が引き出されている際には前記摺動部材がグリル室底面と接することが可能となり、グリル室底面傾斜面とグリル皿底面傾斜面との隙間を設けて、庫内に完全に収納される時には、前記隙間が摺動時に比べて狭くなる請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
グリル皿は、グリル皿保持部を有し、前記グリル皿保持部は前記グリル皿とグリル扉を締結することで、前記グリル皿はグリル庫内上下方向に保持部を支点として回動自在とする請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
グリル皿の回動範囲は、前記グリル皿表面の略水平から所定の角度とする請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
グリル皿保持部は、グリル皿とグリル扉とを蝶番により保持してなる請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
凸部及び摺動部材は、グリル室底面を上方から見て前記グリル室底面下方の加熱手段より外側に配設される請求項1または3に記載の加熱調理器。
【請求項8】
凸部及び摺動部材は、耐熱性を有する樹脂である請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
凸部及び摺動部材は、フッ素系樹脂である請求項8に記載の加熱調理器。
【請求項10】
凸部の接触形状は曲率R1を有し、凹部は曲率R2を有し、R1<R2の関係となる請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項11】
グリル室底面における凹部は、前記グリル室底面をロール成形して厚み一定において形成する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項12】
グリル室は、グリル室底面と分離し前記グリル室底面とは別材質で設けたグリル室底面分
離部を備え、前記グリル室底面分離部が凹部を形成した請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項13】
グリル室底面分離部は、アルミダイキャストで構成した請求項12に記載の加熱調理器。
【請求項14】
グリル室底面分離部は、ホーロー処理鋼板で構成した請求項12に記載の加熱調理器。
【請求項15】
凹部よりグリル室前方にグリル底面に乗り越え凸部を設ける請求項1に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−237465(P2012−237465A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104979(P2011−104979)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】