説明

加熱調理器

【課題】仕上がりの良い本格的な蒸し物調理できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】スチーム噴出口を有する水蒸気発生手段と、被調理物を加熱するマイクロ波を発生するレンジ加熱手段と、自動メニューの選択や設定を行う操作部と、水蒸気発生手段とレンジ加熱手段とを制御する制御手段と、マイクロ波を吸収して発熱する高周波発熱体を裏面に有する受け皿と金属製のグリル皿蓋からなる蒸し焼き器とを備える加熱調理器において、蒸し焼き器は、スチーム噴出口から噴出する水蒸気を導く蒸気口を設け、制御手段は、操作部によって蒸しドーナツを調理するメニューを選択したとき、水蒸気発生手段を動作して蒸し焼き器の中に水蒸気を供給することで被調理物を蒸して加熱するスチーム工程を実施した後、水蒸気発生手段を動作して蒸し焼き器の中に水蒸気を供給しながらレンジ加熱手段を動作して受け皿を加熱するスチーム+レンジ工程を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を蒸し料理する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱調理器は、電子レンジ調理を行うレンジ加熱手段,オーブン調理を行うオーブン加熱手段,グリル調理を行うグリル加熱手段,スチーム調理を行うスチーム加熱手段の4種類の調理方法を単独もしくは組み合わせて行うことにより多様な調理を行うことができるものが知られている。
【0003】
また、マイクロ波の吸収によって発熱する発熱体を密着させた調理皿に食品を載せて、マイクロ波によって受け皿の表面を高温にして受け皿に接触している食品の面に焼き色を付けるものも知られている。
【0004】
近年、加熱調理器においては豊富なオート調理が組み込まれその中で特に、スチーム加熱手段を用いるオート調理が充実してきている。そして、蒸したお菓子などを作る蒸し物調理をする機会が増えており、蒸し物調理を効率的に行い、手間を掛けないで調理時間を短縮し、更においしく調理ができる加熱調理器が好まれている。
【0005】
例えば、特許文献1の図3には、加熱室底面に設けた仕切板の水保持部に水を入れ、仕切板の上部に全体に蒸気口を有する被加熱物載置台を置き、被加熱物載置台に被加熱物を載せて被加熱物を覆う蒸気カバーを設け、水保持部の水を沸かしつつ発生させた水蒸気を、被加熱物載置台の蒸気口から蒸気カバーに供給して閉じ込めることで、被加熱物を加熱する加熱調理器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−187440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、蒸し物調理は、事前に湯を沸かして水蒸気が発生した後に蒸籠を載せ被調理物を蒸すことによって美味しく調理できるものである。また、多くの調理に使える市販のミックス粉を流用した蒸したお菓子が多数のメディアで紹介されている。そして、近年の健康志向から油で揚げない蒸しドーナツの専門店ができるほど人気である。
【0008】
しかし、ミックス粉を使わずに、自在のリング形や味を試す手作り生地で、本格蒸しドーナツの食感を得るには、油で揚げるのと同じように蒸気でドーナツの全面から加熱する必要がある。
【0009】
特許文献1に示す加熱調理器では、被加熱物載置台の蒸気口から、被調理物(被加熱物)の底部に向けて発生した水蒸気を蒸気カバーに閉じ込めて被調理物(被加熱物)を加熱しており、被調理物(被加熱物)に直接当たった水蒸気は結露して被加熱物載置台と被調理物(被加熱物)との間に溜まり、調理終了時にも仕切板に水が残っているので、調理を終了したときには低温の湯気で被加熱物載置台の温度が更に下がり、被調理物(被加熱物)の底部は水っぽくなる。
【0010】
そのため、被調理物(被加熱物)の底部が水っぽくなることで、菓子として好ましくない重たい食感になるだけでなく、菓子に含まれる甘味料,香料などが流れ出して、薄味で素っ気無いものにしてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、被調理物を収納する加熱室と、該加熱室に水蒸気を噴出するスチーム噴出口を有する水蒸気発生手段と、前記被調理物を加熱するマイクロ波を発生するレンジ加熱手段と、自動メニューの選択や設定を行う操作部と、前記水蒸気発生手段と前記レンジ加熱手段とを制御する制御手段と、前記マイクロ波を吸収して発熱する高周波発熱体を裏面に有する受け皿と金属製のグリル皿蓋からなる蒸し焼き器とを備える加熱調理器において、前記蒸し焼き器は、前記スチーム噴出口から噴出する水蒸気を導く蒸気口を設け、前記制御手段は、前記操作部によって蒸しドーナツを調理するメニューを選択したとき、前記水蒸気発生手段を動作して前記蒸し焼き器の中に水蒸気を供給することで被調理物を蒸して加熱するスチーム工程を実施した後、前記水蒸気発生手段を動作して前記蒸し焼き器の中に水蒸気を供給しながら前記レンジ加熱手段を動作して前記受け皿を加熱するスチーム+レンジ工程を実施する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被調理物全体を均一に蒸し上げられ、水っぽくなく、菓子に適した食感で、食味や風味を保って、仕上がりの良い本格的な蒸し物調理することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施例の加熱調理器の本体を前方側から見た斜視図。
【図2】同加熱調理器の本体を後方側から見た斜視図。
【図3】図1のA−A断面図。
【図4】同加熱調理器のガラスドアを開いた状態の斜視図。
【図5】同加熱調理器の本体から外枠を取り外した状態を前方側から見た斜視図。
【図6】同加熱調理器の本体から外枠を取り外した状態を後方側から見た斜視図。
【図7】同加熱調理器のグリル皿蓋体単体の表面斜視図。
【図8】同加熱調理器の受け皿単体の表面斜視図。
【図9】同加熱調理器の受け皿単体の裏面斜視図。
【図10】同加熱調理器のグリル皿蓋体と受け皿を組んだ状態の斜視図。
【図11】図10のB−B断面図。
【図12】同加熱調理器にグリル皿蓋体と受け皿を組んで載置した斜視図。
【図13】同加熱調理器の制御手段を表わしたブロック図。
【図14】同加熱調理器の蒸しドーナツを調理するときの制御方法を表わした説明図。
【図15】同加熱調理器の蒸しドーナツを調理するときのスチーム工程の蒸し焼き器内の被調理物の加熱状態を表わした説明図。
【図16】同加熱調理器の蒸しドーナツを調理するときのスチーム+レンジ工程の蒸し焼き器内の被調理物の加熱状態を表わした説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本発明の実施例に係る加熱調理器の構成について、図1から図6の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
各図において、加熱調理器の本体1は、加熱室28の中に加熱する被調理物を入れ、マイクロ波やヒータ、水蒸気の熱を使用して被調理物を加熱調理する。ドア2は、加熱室28の内部に被調理物を出し入れするために開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室28を密閉状態にし、被調理物を加熱する時に使用するマイクロ波の漏洩を防止し、熱を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。取っ手9は、ドア2に取り付けられ、ドア2の開閉を容易にするもので、手で握りやすい形状になっている。ガラス窓3は、調理中の食品の状態が確認できるようにドア2に取り付けられ、ヒータ等の発熱による高温に耐えるガラスを使用している。
【0016】
入力手段71は、ドア2の前面下側の操作パネル4に設けられ、マイクロ波で被調理物を加熱するレンジ加熱手段77、加熱室28の上面に設けたヒータで被調理物を加熱するグリル加熱手段12、水蒸気により被調理物を加熱する水蒸気発生手段43、熱風ユニットの熱風や加熱室28の上面と下面に設けたヒータなどで加熱室28を加熱するオーブン加熱手段などの加熱手段を選択し、加熱する時間等の調理条件や自動メニューを入力するための操作部6と、操作部6から入力された内容や調理の進行状態を表示する表示部5とで構成される。
【0017】
水タンク42は、水蒸気を作るのに必要な水を溜めておく容器であり、本体1の前面下側に設けられ、本体1の前面から着脱可能な構造とすることで給水および排水が容易にできるようになっている。
【0018】
外枠7は、加熱調理器の本体1の上面と左右側面を覆うキャビネットである。後板10は、前記したキャビネットの後面を形成するものであり、上部に外部排気ダクト18が取り付けられ、前記外部排気ダクト18の取り付けられる内側に、被調理物から排出した蒸気や本体1の内部の部品を冷却した後の冷却風(廃熱)39を排出する排気孔36が設けられている。また、外部排気ダクト18は、排気孔36を通過した冷却風39を本体1の外に排出するもので、排気は外部排気ダクト18の外部排気口8から排出し、排気の排出方向は本体1の上部方向で且つ前面側に排気する。排気の排出方向を上部方向で且つ前面側に向けることで、背面を壁面に寄せた時でも排気によって壁面を汚すことがないようにしている。
【0019】
機械室20は、加熱室底面28aと本体1の底板21との間の空間部に設けられ、底板21上には食品を加熱するためのマグネトロン33、マグネトロン33に接続された導波管47、制御基板23、その他、後述する各種部品、これらの各種部品を冷却する冷却手段50等が取り付けられている。
【0020】
加熱室底面28aは、略中央部が凹状に窪んでおり、その中に回転アンテナ26が設置され、マグネトロン33より放射されるマイクロ波は、導波管47,回転アンテナ駆動手段46の出力軸46aが貫通する結合穴47aを通して回転アンテナ26の下面に流入し、前記回転アンテナ26で拡散されて加熱室28内に放射される。回転アンテナ26は、回転アンテナ駆動手段46の出力軸46aに連結されている。
【0021】
冷却手段50は、底板21に取り付けられた冷却モータにファンが連結されており、この冷却手段50によって送風される冷却風39は、機械室20内の自己発熱するマグネトロン33やインバータ基板22,重量検出手段25等を冷却し、加熱室28の外側と外枠7の間および熱風ケース11aと後板10の間を流れ、外枠7と後板10を冷却しながら排気孔36を通り、外部排気ダクト18の外部排気口8より排出される。
【0022】
加熱室28の後部には熱風ユニット11が取り付けられ、熱風ユニット11は加熱室奥壁面28bの後部側に熱風ケース11aを設け、加熱室奥壁面28bと熱風ケース11aとの間に熱風ファン32とその外周側に位置するように熱風ヒータ14a、および14bを設け、熱風ケース11aの後側に熱風モータ13を取り付け、そのモータ軸を熱風ケース11aに設けた穴を通して熱風ファン32と連結している。
【0023】
そして、熱風ユニット11は加熱室奥壁面28bに設けた空気の通り道となる熱風吸気孔31と熱風吹出し孔30を通して連結し、熱風ケース11a内の熱風ファン32を熱風モータ13により回転することで、加熱室28と熱風ユニット11との空気を循環し、熱風ヒータ14a、および14bで循環する空気を加熱する。なお、熱風ユニット11の代わりに、加熱室28の上面と下面にヒータを設けて加熱室28を加熱しても良い。
【0024】
加熱室28の天面の裏側には、ヒータよりなるグリル加熱手段12が取り付けられている。グリル加熱手段12は、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室28の天面裏側に押し付けて固定し、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の被調理物を輻射熱によって焼くものである。
【0025】
また、加熱室底面28aには、複数個の重量検出手段25、例えば前側左右に右側重量検出手段25a,左側重量検出手段25b,後側中央に奥側重量検出手段25cが設けられ、その上にテーブルプレート24が載置されている。
【0026】
テーブルプレート24は、食品を載置するためのもので、ヒータ加熱とマイクロ波加熱の両方に使用できるように耐熱性を有し、かつ、マイクロ波の透過性が良く、衛生面でも問題がない磁器等の材料で成形されている。
【0027】
加熱室28の後部上方には、加熱室28内の温度を検出する温度検出手段a85が設けられている。前記温度検出手段a85は、グリル加熱手段12及び熱風ユニット11の熱風吹出し孔30から加熱室28内に吹出される熱風の影響を直接受けない位置に設けられている。
【0028】
スチームユニット43a(図13)は水蒸気発生手段43とポンプ手段87により成る。
【0029】
水蒸気発生手段43は、加熱室左側面28cの外側面に取り付けられ、水蒸気を噴出するスチーム噴出口44は加熱室28内に臨ませている。水蒸気発生手段43は、アルミの鋳造で作られ、鋳造時にボイラー加熱手段89であるシーズヒータを一体となるように埋め込んでいる。そのヒータの消費電力は600W前後と大きく、水蒸気発生手段43は短時間で水を沸騰できる温度に加熱することができる。水蒸気発生手段43への水の供給は、ポンプ手段87を駆動することによって水タンク42からパイプ45を通して供給される。供給された水は、パイプ40を通って、水蒸気発生手段43で加熱されて沸騰し、水蒸気となってスチーム噴出口44から加熱室28へ噴出する。
【0030】
温度検出手段b88は、水蒸気発生手段43の温度を検出するもので、その検出結果を後述する制御手段151(図13)に伝え、ボイラー加熱手段89やポンプ手段87を制御する。
【0031】
ポンプ手段87は、水タンク42の水を水蒸気発生手段43まで汲み上げるもので、ポンプとポンプを駆動するモータで構成される。水蒸気発生手段43への給水量の調節はモータに供給する電力のON/OFFの比率で決定する。
【0032】
次に、図7から図10を用いて、本実施例におけるグリル皿蓋と受け皿について説明する。
【0033】
グリル皿蓋101は、グリル蓋105,蒸気口102,グリル皿蓋取っ手103,蓋パッキン104によって構成されている。
【0034】
グリル蓋105は、マグネトロン33より放射されるマイクロ波を透過しない金属製の材料により形成され、本実施例では、アルミフッ素PCMにより構成されている。また蒸気口102,グリル皿蓋取っ手103は、グリル蓋105の熱が伝わりにくく、更に加熱室28内の熱による変形等の抑制を図るよう、本実施例ではプラスチック製樹脂にガラス材を混合させた材料により形成する。
【0035】
蒸気口102は、本体1の内部に設けられた水蒸気発生手段43から噴出される水蒸気をグリル皿蓋101に流入可能な構成となっており、蒸気口102はグリル蓋105と係合され、蒸気口102が係合されているグリル蓋105部は、蒸気口102の内径同形状の楕円形の連通口が設けられている。
【0036】
グリル皿蓋101の下端周部には蓋パッキン104が設けられている。蓋パッキン104は、受け皿111(後述)からの熱の伝達を抑制する効果があり、さらに充満された水蒸気を、受け皿111とグリル皿蓋101から漏れることが無いよう設けている。これにより水蒸気が加熱室28内に漏れるのを少なくし、加熱室28の清掃を省き、使い勝っての向上している。本実施例ではシリコンゴム製の材料を使用している。また蓋パッキン104は、グリル蓋105と着脱可能な構成となっていることから、お手入れ時には容易にはずれ、使い勝っての良い構造となっている。
【0037】
受け皿111は金属皿部112、および4つの脚部113により構成されている。
【0038】
金属皿部112は、マグネトロン33より放射されるマイクロ波を透過しない金属製の材料により形成され、本実施例では、アルミフッ素PCMにより構成されている。
【0039】
金属皿部112の裏面には、マグネトロン33より放射されたマイクロ波を吸収することにより発熱する高周波発熱体120を設ける。高周波発熱体120が発した熱は金属皿部112に伝達され、金属皿部112表面に載置されている被調理物の下部に焼きながら焦げ目を付ける効果がある。
【0040】
金属皿部112は被調理物を載置するものであり、被調理物に含まれる水分等が外部に漏れないよう、外壁が設けられている。また金属皿部112の表面には波状の凹凸部を設け、被調理物の内部に含まれる余分な脂分を排出しながら加熱される凹部112aは外周部112bと繋がっている。
【0041】
更に金属皿部112の表面には、フッ素コーティングを施し、調理後、被調理物による金属皿部112の焦げ付き等を防止している。
【0042】
図10は、グリル皿蓋101と受け皿111を組み合わせた状態を示し、両者を合わせて蒸し焼き器125が構成される。
【0043】
グリル皿蓋101は蓋パッキン104を介して受け皿111に載置されている。しかしグリル皿蓋101と受け皿111とで共振器を構成し、グリル皿蓋101と受け皿111間の寸法を共振点の寸法から外すことで、グリル皿蓋101と受け皿111で構成する空間内(蒸し焼き器125の内部)にはマイクロ波が供給されにくくなっている。
【0044】
図11は、図10のB−B断面図、図12は、グリル皿蓋体と受け皿を組んで加熱室28に載置した斜視図である。
【0045】
調理を行う際には、受け皿111の表面上に被調理物130を載置し、これらを覆うようにグリル皿蓋101を載置する。図12に示すように、蒸し焼き器125をテーブルプレート24に載置したとき、グリル皿蓋101の蒸気口102の開口部の位置は、本体1のスチーム噴出口44と同じ高さとなる。また、グリル皿蓋101に有する蒸気口102の開口部先端と、加熱室左側面28cとの位置関係は、受け皿111をテーブルプレート24に載置した状態において、スチーム噴出口44は、蒸気口102の開口部の内側にて隠れるような位置関係となっている。
【0046】
次に、図13のブロック図を用いて、本加熱調理器の制御手段151の動作を説明する。
【0047】
入力手段71は、操作部6と表示部5が相当する。電源76は、加熱調理器の本体1を動作させるためのものである。熱風ユニット11は、熱風吸気孔31熱風吹出し孔30を備える加熱室奥壁面28b外側に設けた熱風ケース11aの後側に熱風モータ13を備え、熱風ケース11aの穴を通してそのモータ軸に熱風ファン32を設け、熱風ファン32の外周側に熱風ヒータ14a、および14bを設け、加熱室28に熱風を循環して供給する。レンジ加熱手段77は、マグネトロン33とマグネトロン33を駆動するための電源を作るインバータ回路を搭載したインバータ基板22である。インバータ回路は入力手段71より入力された加熱パワーに応じた電源を作りマグネトロン33に供給する。グリル加熱手段12は、加熱室28の天面の裏側に設けられたヒータよりなり、加熱室28の天面を加熱して加熱室28内の被調理物を輻射熱によって焼くものである。
【0048】
冷却手段50は、底板21に取り付けられた冷却モータにファンが連結されており、この冷却手段50によって送風される冷却風39は、機械室20内の自己発熱するマグネトロン33やインバータ基板22,重量検出手段25等を冷却する。回転アンテナ駆動手段46は、回転アンテナ26を駆動するためのモータで、同期モータと回転数を減速するためのギヤが一体になっているものである。重量検出手段25は、テーブルプレート24に載置された被調理物の重量を測定するものである。温度検出手段a85は、加熱室28に取り付けられ、加熱室28内の温度を検出し、制御手段151によってグリル加熱手段12のヒータの電力を調整するものである。スチームユニット43aは水蒸気発生手段43とポンプ手段87により成る。水蒸気発生手段43は、水を加熱するヒータからなるボイラー加熱手段89と、水蒸気発生手段43の温度を検出する温度検出手段b88から構成し、制御手段151は温度検出手段b88の検出結果からボイラー加熱手段89やポンプ手段87を制御する。
【0049】
以上で構成されるシステムにおいて、制御基板23に搭載された制御手段151は、入力手段71からの入力に従い、食品を加熱調理するように動作させるもので、各検知手段から食品の状態や加熱室の状態を検知し、その後、各加熱手段や駆動手段を必要に応じて動作させるものである。
【0050】
本実施例は、以上の構成からなり、被調理物130として環状の蒸しドーナツ6個を蒸す場合の動作例を、図14から図16を用いて説明する。
【0051】
蒸しドーナツは、材料を混ぜ発酵させて生地をつくり、生地を休ませた後、棒状にして両端を繋いで環状にして、オーブンシート131に載せて再度発酵させる。その発酵が終わった生地を、オーブンシート131に載せたまま、受け皿111に移動して並べる。そして、図11で示したように、被調理物130の蒸しドーナツを並べた蒸し焼き器125を、図12で示したように、蒸気口102をスチーム噴出口44に向けて加熱室28のテーブルプレート24に載置する。そして、給水タンク50に給水して、本体1にセットし、ドア2を閉めて調理を開始する。
【0052】
図14に示すように、加熱開始用ボタンを操作すると、スチーム工程301と、それに続くスチーム+レンジ工程302の2工程からなる制御工程300によって蒸しドーナツの調理が行われる。なお、ここでは、スチーム工程301の加熱時間t1を約14分30秒、スチーム+レンジ工程302の加熱時間t2を約1分30秒とする。
【0053】
スチーム工程301は、スチームユニット43aからの水蒸気を用いて蒸しドーナツを蒸す加熱工程である。このスチーム工程301では、約100℃の水蒸気が供給され、蒸し焼き器125の内部は水蒸気で充満し約80℃、受け皿111は水蒸気が接触して温まり約50℃になっている。図15に示すように、充満した水蒸気は、最初に蒸しドーナツの外周面130aと内周面130bの表面を蒸し、一部は結露水となってグリル皿蓋101やオーブンシート131を伝わり、受け皿111に溜まり、表面がパサパサと乾燥するのを防止する。その後、外周面130aと内周面130bの表面から内部へ徐々に熱が伝わり、芯130cまで蒸しあげる。環状の蒸しドーナツは、外周面130aと内周面130bの両方から水蒸気によって加熱されるため、外周面130aと内周面130bが高温になると、素早く内部の芯130cに熱が伝わる。なお、図14では、スチーム工程301において、スチームユニット43aが水蒸気を連続して供給する例を示しているが、水蒸気を間欠的に供給する構成としても良い。
【0054】
スチーム工程301が完了すると、スチーム+レンジ工程302を行う。スチーム+レンジ工程302は、スチームユニット43aと、350W程度で駆動するレンジ加熱手段77を組み合わせて用いる加熱工程である。この工程では、スチーム工程301と同様に、水蒸気を略連続して供給し、ドーナツを水蒸気で蒸す調理を継続する。それと同時に、受け皿111の裏面に設けられた高周波発熱体120が、マグネトロン33から供給したマイクロ波を吸収して発熱し、金属皿部112が高温になることによって、金属皿部112からの熱によっても蒸しドーナツが調理される。これにより、蒸しドーナツの底部130dの温度が上昇する。このように、スチーム+レンジ工程302は、蒸し焼き器125の内部を水蒸気で充満しながら、受け皿111からの熱によって調理を行うものであるため、被調理物130の乾燥を防止しながら、調理終盤の仕上がりの食感を向上させ、食味と風味を保つことができる。そして、水蒸気発生手段43とレンジ加熱手段77を同時に停止して調理を終了する。
【0055】
なお、スチーム+レンジ工程302では、高周波発熱体120で金属皿部112が加熱されるので、受け皿111の表面温度は約70℃となり、載置された被調理物130の底部130dが加熱される。レンジ加熱手段77により熱せられた受け皿111の熱は、グリル皿蓋101にも伝達されるが、グリル皿蓋101はマイクロ波を透過しない金属製の材料により形成されており、また、グリル皿蓋101の下端外周に設けられた蓋パッキン104により受け皿111の熱は伝達されにくいことから、レンジ加熱手段77を駆動してもグリル皿蓋101が高温となりにくい構成となっている。そのため、グリル皿蓋101から熱線が少ないので、焼き色を付けないで加熱する蒸しドーナツのような調理に好適である。
【0056】
図16を用いて、スチーム+レンジ工程302での蒸しドーナツ調理を更に詳細に説明する。ここに示すように、スチーム+レンジ工程302では、受け皿111が加熱されることにより、受け皿111に並べた被調理物130の底部130dに付着している底部周囲水分132と、被調理物130の内部の被調理物内底部の水分133が、被調理物の底部130dの周囲へ発散して被調理物から離れていく。そして、リング状に形成する被調理物130の外周面130aと内周面130bと底部130dと芯130cの水分が略均一になり、表面の水濡れをなくす。前記したように、受け皿111は約70℃になるが、この温度では、蒸しドーナツを急激に高温にして焼き色をつけることなく、それでいて、被調理物130の底部130d及び周囲の水分を蒸発させることができる。つまり、被調理物130の外周面130aと内周面130bの表面に付着した後、底部130dに溜まった水によって、蒸しドーナツがビシャビシャになることを防ぐことができるとともに、蒸しドーナツに含まれる甘味料や香料が底に溜まった水に流れ出るのを抑えている。
【0057】
また、制御手段151により、テーブルプレート24の底部に設けられた重量検知手段25によって受け皿111に載置された蒸しドーナツの重量を測定し、スチーム工程301の加熱時間、スチーム+レンジ工程302の加熱時間を調整することが可能となる。
【0058】
以上、本実施例の加熱調理器によれば、被調理物全体を均一に蒸し上げられ、水っぽくなく、菓子に適した食感で、食味,風味を保って、仕上がりの良い本格的な蒸し物調理することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 本体
6 操作部
11 熱風ユニット
13 熱風モータ
14a,14b 熱風ヒータ
15,151 制御手段
24 テーブルプレート
25 重量検出手段
28 加熱室
33 マグネトロン
42 水タンク
43 水蒸気発生手段
43a スチームユニット
44 スチーム噴出口
77 レンジ加熱手段
101 グリル皿蓋
102 蒸気口
104 蓋パッキン
105 グリル蓋
111 受け皿
112 金属皿部
113 脚部
120 高周波発熱体
125 蒸し焼き器
130 被調理物
130a 外周面
130b 内周面
130c 芯
130d 底部
131 オーブンシート
132 底部周囲水分
133 被調理物内底部水分
300 制御工程
301 スチーム工程
302 スチーム+レンジ工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を収納する加熱室と、該加熱室に水蒸気を噴出するスチーム噴出口を有する水蒸気発生手段と、前記被調理物を加熱するマイクロ波を発生するレンジ加熱手段と、自動メニューの選択や設定を行う操作部と、前記水蒸気発生手段と前記レンジ加熱手段とを制御する制御手段と、前記マイクロ波を吸収して発熱する高周波発熱体を裏面に有する受け皿と金属製のグリル皿蓋からなる蒸し焼き器とを備える加熱調理器において、
前記蒸し焼き器は、前記スチーム噴出口から噴出する水蒸気を導く蒸気口を設け、
前記制御手段は、前記操作部によって蒸しドーナツを調理するメニューを選択したとき、
前記水蒸気発生手段を動作して前記蒸し焼き器の中に水蒸気を供給することで被調理物を蒸して加熱するスチーム工程を実施した後、
前記水蒸気発生手段を動作して前記蒸し焼き器の中に水蒸気を供給しながら前記レンジ加熱手段を動作して前記受け皿を加熱するスチーム+レンジ工程を実施することを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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