説明

加熱調理器

【課題】調理の加熱条件(火力や時間、温度等)をできるだけ共通の画面で確認し、かつ加熱手段の異常状態も確認可能にした加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理を行うための複数の加熱コイル6L、6R、7と、この加熱手段の加熱量や加熱時間等の調理条件を入力する入力キーと、この入力キーから入力された調理条件を表示する中央表示・入力部80と、加熱手段の異常な運転状況を検知し、加熱手段と表示手段を制御する制御手段とを備える。中央表示・入力部80には加熱手段に対応した表示エリアが設定され、制御手段は、加熱手段の正常運転時では当該表示エリアに加熱手段の加熱条件を表示し、加熱手段の異常時には当該異常の生じている加熱手段に対応した表示エリアに異常発生を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器、特に、電気加熱源や電磁誘導加熱源により調理を行う加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器として、1つの本体(筐体)の上面部に載置された食品を、複数の電磁誘導加熱源で加熱する電磁調理器や、電磁誘導加熱源に加えて電気ヒータ等の輻射型加熱源でも加熱できる電磁調理器(いわゆる複合型調理器)がある。
そして、加熱時間を制御する電気クッキングヒーターが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、周波数変換装置の動作周波数を規定した誘導加熱調理器が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、加熱手段を囲む遮蔽板を設けたクッキングヒータが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−269833号公報(第6−7頁、図9)
【特許文献2】特開平2−109292号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】実開平3−50790号公報(第6−8頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1〜3に開示された発明のように、従来の加熱調理器は、加熱手段(加熱源に同じ)が2個、多いものでは例えば5個もあるため、それらを個々に制御するにあたり、各加熱手段の入力スイッチや火力調節つまみ等の複数の操作部を調整する必要があった。このため、特に、多種類の調理に対応できる機能を持ったものになるほど、最初の調理メニューの選択や火力等の調理条件の設定が煩わしいという問題点があった。
また、かかる調整の結果が「液晶やランプ、文字等」によって複数の表示部に個々に表示されるため、それらの状態を別々に確認しなければなかった。このため、特に、多種類の調理に対応できる機能を持ったものになるほど、調整の結果の確認が煩わしいという問題点があった。
さらに、従来の加熱調理器の各種警報表示は、加熱調理器のメーカが決めた「英字記号、略号」で表示されるため、調理器に付属している取扱説明書を調べることによって、始めてその意味が理解されるものであった。このため、実際には一般の使用者にとって重要な警報かどうかを、直ぐに判読できないという問題点があった。
【0005】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであり、調理の加熱条件(火力や時間、温度等)をできるだけ共通の画面で設定し、且つ確認することを可能にすると共に、加熱手段に異常が発生した場合、その異常状態を容易に確認することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、加熱調理を行うための複数の加熱手段と、該加熱手段を用いて行う調理メニューを選択し、加熱量を含む制御条件をキー入力する入力手段と、該入力手段から入力された制御条件を表示する表示手段と、異常な運転状況を検知し、加熱手段と表示手段を制御する制御手段とを備え、前記表示手段には、前記加熱手段のそれぞれの加熱量に関する第一条件を表示する第一表示エリアと、前記加熱手段のそれぞれの調理時間および設定温度を含む非加熱量に関する第二条件及び異常時の温度や電流、電圧を含む物理量異常状態を表示する第二表示エリアと、を設け、前記第二条件が設定された特定の前記加熱手段において異常が発生した場合には、当該異常が発生した加熱手段に対応した前記第二表示エリアの面積を、他の前記加熱手段に対応した前記第二表示エリアの面積よりも大きくし、その拡大された第二表示エリアにおいて異常状態を文言表示すると同時に、他の前記加熱手段の前記第一表示エリアまたは前記第二表示エリアの一方または両方において、当該他の加熱手段の第一条件または第二条件の一方または両方を表示したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上の構成であるから、複数の加熱手段に対して設定された調理条件あるいは異常情報が共通の表示画面のそれぞれの表示エリアに表示されるため、使用者は、入力された調理条件をその都度確認することができると共に、異常が発生した状態では異常内容を迅速に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の態様1を示す加熱調理器の全体斜視図。
【図2】図1に示す加熱調理器の上部の横断面図。
【図3】図2に示すY―Y線における縦断面図。
【図4】図1に示す加熱調理器の上面操作部と中央表示・入力部を示す要部平面図。
【図5】図1に示す加熱調理器における電気回路構成図。
【図6】図1に示す加熱調理器の本体の中央表示・入力部と上面操作部の平面図。
【図7】図1に示す加熱調理器の中央表示・入力部の表示エリア区分を示す模式図。
【図8】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その1)。
【図9】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その2)。
【図10】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その3)。
【図11】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その4)。
【図12】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その5)。
【図13】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その6)。
【図14】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その7)。
【図15】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その8)。
【図16】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その9)。
【図17】中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係の説明図(その10)。
【図18】異常発生状態の制御動作を説明するためのフローチャート(その1)。
【図19】異常発生状態の動作を説明するためのフローチャート(その2)。
【図20】異常発生状態の動作を説明するためのフローチャート(その3)。
【図21】異常発生状態の動作を説明するためのフローチャート(その4)。
【図22】異常発生状態の動作を説明するためのフローチャート(その5)。
【図23】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面1の説明図。
【図24】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面2の説明図。
【図25】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面3の説明図。
【図26】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面4の説明図。
【図27】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面5の説明図。
【図28】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面6の説明図。
【図29】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面7の説明図。
【図30】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面8の説明図。
【図31】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面9の説明図。
【図32】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面10の説明図。
【図33】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面11の説明図。
【図34】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面12の説明図。
【図35】異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面13の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜図35は、本発明の実施の形態1に係る加熱調理器を示すものである。図1は加熱調理器の全体斜視図であり、図2は全体の横断面図、図3は図2のY−Y線縦断面図、図4は上面操作部と中央表示・入力部等を示す要部縦断面図、図5は電気回路図、図6は上面操作部と中央表示・入力部等を示す要部平面図、図7は中央表示・入力部の表示エリア区分を示す模式図、図8〜図17は中央表示・入力部の表示画面と入力キーとの関係を示す説明図、図18〜図22は異常発生状態の動作を説明するためのフローチャート、図23〜図35は異常発生状態における中央表示・入力部が表示する画面1〜画面13を示す説明図である。
【0010】
図1において、調理器本体1は、金属板から形成された箱形状の本体ケース2と、本体ケース2の上面開口を塞ぐ金属製板から形成された天板3と、から構成されている。
天板3の上面は額縁形状の枠体4で覆われ、天板3は、非磁性ステンレス板又はアルミ板などから形成され、その中央に設けられた大きな開口部は耐熱強化ガラスで赤外線を透過させる材料からなる平板状のトッププレート5によって密閉状態に覆われている。そして、トッププレート5の上面から水滴などが枠体4を通じて本体1内部に侵入しないようになっている。
【0011】
電磁誘導加熱手段として、本体1の内部であって、トッププレート5の右側位置の下面側に右側電磁加熱コイル(以下「右加熱コイル」と称す)6Rが配置され、右加熱コイル6Rの上端部がトッププレート5に近接している。この例では最大消費電力(最大火力)3kWの能力を備えたものが使用されている。
また、本体1の内部であって、トッププレート5の左側位置の下面側に左側電磁加熱コイル(以下「左加熱コイル」と称す)6Lが配置され、左加熱コイル6Lの上端部がトッププレート5に近接している。この例では最大消費電力(最大火力)2.5kWの能力を備えたものが使用されている。
これら二つの加熱コイル6Rおよび加熱コイル6Lは、それぞれ独立して通電とその電力量が制御され、火力も別個に設定できるように通電制御回路(図示しない)に電気的に接続されている。
【0012】
右加熱コイル6Rと左加熱コイル6Lの何れも、通電時に渦電流を発生するように渦状に巻かれたコイル316Rおよびコイル316Lと、これを収容した円形で上面が開口した金属製の容器状(周囲壁面には、多数の通風孔330Pが設けられて、冷却風が通過するようになっている)の保持枠330Rおよび保持枠330Lと、この下面の全体やその一部を覆うフェライト製板(磁束漏れ防止板)331Rおよびフェライト製板331Lなどで構成されている(図4には左加熱コイル6Lが一部破断断面図で示してある)。
保持枠330Rおよび保持枠330Lの上面開口の縁が、断熱材332を介してトッププレート5の下面に接触するように設置され、右加熱コイル316Rおよび左加熱コイル316Lの上面は、トッププレート5の下面に対し一定の空隙335をあけて対向するように設置されている。
【0013】
中央加熱手段7は、本体1の内部であって、トッププレート5の左右中心線上で、かつその後部寄り位置に配置され、電磁誘導によって加熱するコイル、あるいは輻射によって加熱するタイプの電気ヒータ(例えばニクロム線やハロゲンヒータ)である。例えば、最大消費電力(最大火力)1.2kWの能力を備えたものが使用され、トッププレート5を通してその上方に置かれた鍋等の調理器具(図示せず)を加熱する。
【0014】
前面操作部10が本体ケース2の右側前面に設けられている。前面操作部10には、操作ボタン11と、操作ダイアル12R、操作ダイアル12L、操作ダイアル13、表示灯14と、表示灯15と、が設けられている。
操作ボタン11は、左加熱コイル6Lおよび右加熱コイル6R、中央加熱手段7、及びオーブン調理やグリル調理用の電気ヒータ110A、110Bの全ての電源を一斉に投入・遮断する主電源スイッチ11MSを操作するものである。
操作ダイアル12Rは、右加熱コイル6Rの通電とその通電量(火力)を制御する制御スイッチ12RSの電気接点を開閉する操作をするものである。
操作ダイアル12Lは、左加熱コイル6Lの通電とその通電量(火力)を制御する制御スイッチ12LSの電気接点を開閉する操作をするものである。
操作ダイアル13は、中央加熱手段7の通電とその通電量(火力)を制御するものである。
表示灯14は、操作ダイアル12Rで右加熱コイル6Rに通電が行われている状態において点灯するものである。
表示灯15は、操作ダイアル12Lで左加熱コイル6Lに通電が行われている状態において点灯するものである。
【0015】
前記3つの操作ダイアル12R、12L、13は、使用しない状態では、図1に示されるように、前面操作部10の表面から突出しないように押し込まれており、使用する場合には、使用者が指で一度押すと前方に突出して操作ダイアル13、14、15を回すことができる状態になり、この段階で、左加熱コイル6L、右加熱コイル6R及び中央加熱手段7にはそれぞれ通電が開始される。そこで、更に各操作ダイアル13、14、15をそれぞれ左右に回せば、その回動の量に応じて通電量が決まり、火力設定が行えるようになっている。
【0016】
また、前面操作部10には、操作ダイアル17、18、16が設置され、それぞれ左加熱コイル6L、中央加熱手段7、右加熱コイル6R、を通電開始から所望の時間だけ通電し、以後自動的に電源を切るタイマースイッチ(図示せず)を操作するものである。
【0017】
本体1の内部の下半分には加熱室19が区画形成され、金属板により左右及び上下の壁面が形成されている。加熱室19内の上部天井付近には最大消費電力(最大火力)1200Wの電気ヒータ(図4の110A)と、底部付近には最大消費電力800Wの電気ヒータ(図示せず)と、がそれぞれ設けられている。
したがって、これらヒータを同時又は個別に通電してロースト調理(例えば焼き魚)、グリル調理(例えばピザやグラタン)や、加熱室19内の雰囲気温度を設定して調理するオーブン調理(例えば、ケーキや焼き野菜)が行えるようになっている。
【0018】
さらに、天板3の上面、具体的には枠体4の前部に上面操作部20が配置され、図1に示すように、本体1の左右中心線を挟んだ中央部には、左加熱コイル6L、右加熱コイル6R、中央加熱手段7、及びオーブン調理やグリル調理用の電気ヒータ(図示せず)の操作部23が配置され、左右中心線を挟んだ右側には、右加熱コイル6Rの火力設定用操作部21が、左右中心線を挟んだ左側には左加熱コイル6Lの火力設定用操作部22が、それぞれ配置されている。
【0019】
図6は、天板の上面の一部を示す拡大平面図である。図6において、右加熱手段5Rの火力を使用者が1度押圧することで簡単に設定できるワンタッチキー部24が設けられ、ワンタッチキー部24は、3つのワンタッチキー25、26、27を備えている。すなわち、右加熱コイル6Rの火力を2.5kWに設定する強火力キー25、同じく750Wに設定する中火力キー26、同じく300Wに設定する弱火力キー27である。
なお、左加熱コイル6Lの火力設定のためにも、ワンタッチキー部24と同様なキーが操作部22(図24参照)に設けてあり、ワンタッチで左加熱コイル6Lの火力を2.5kW、750W及び300Wの何れかに設定できるようになっている。
【0020】
図6において、強火力キー86が、ワンタッチキー部24の右端部に設けられ、右加熱コイル6Rの火力を3kWにしたい場合に、これを押圧操作する。
【0021】
中央表示・入力部(本発明の表示手段に相当する)80では、左加熱コイル6L、中央加熱手段7、右加熱コイル6R及び加熱室19の内部に設けた二つの電気加熱手段110A、110Bの通電状態(火力や時間等)を入力したり、確認したりすることができる。これについては具体的に後記する。
【0022】
前記の中央操作部23には、図6に示されるように、ロースト調理、オーブン調理及びグリル調理に用いられる各電気ヒータ110A、110Bの通電を開始する操作スイッチ(図示せず)の操作ボタン92と、その通電を停止する操作スイッチ(図示せず)の操作ボタン29が並べて設けられている。
【0023】
さらに、中央操作部23には、前記ヒータ110A、110Bによるグリル調理や左加熱コイル6Lおよび右加熱コイル6Rによる電磁調理における制御温度を1度ずつ加算的又は減算的に設定する温度調節スイッチ(図示せず)の操作ボタン300、310が横一列に設けられている。
【0024】
そして、便利メニューキー93が設けられ、揚げ物調理、揚げ物予熱状態表示、タイマー調理の何れかを設定する際に押圧すれば、簡単に中央表示・入力部80に所望の入力画面や状態表示画面を読み出すことができる。
なお、揚げ物調理とは、左加熱コイル6L、右加熱コイル6Rを使用する調理であり、揚げ物予熱状態表示とは、左加熱コイル6L、右加熱コイル6Rを使用し、油を所定の予熱温度まで加熱する状態の表示であり、タイマー調理とは、左加熱コイル6L、右加熱コイル6R、中央加熱手段7、加熱室19の内部に設けた二つの電気加熱手段110A、110Bなどをタイマーカウンターにて設定した時間中だけ通電して調理するものである。
さらに、中央加熱手段7の電源の入・切を操作するための制御スイッチ(図示せず)の操作ボタン94が設けられている。
また、操作ボタン29の右側には、ハードボタンからなる右IH便利メニューボタン93aが設けられており、これは右加熱コイル6Rについての各種の設定をするための設定ボタンである。同様な設定ボタンは左加熱コイル6Lについても設けられている(図示せず)。
【0025】
タイマーカウンター(図示せず)のスタートスイッチ34Rが操作部21の右端部に設けてあり、使用者が1度押圧すると、その時点から時間が計測され、トッププレート5の右前方隅部に設けられた液晶表示部35R(トッププレート5の下面近傍にあり、トッププレート5を介してその上方)に表示光を透過させて経過時間が分と秒単位で表示される。
同じく操作部21に設けられた揚げ物選択スイッチ36Rを使用者が1度押圧すると、右加熱コイル6Rによる揚げ物(天ぷら)鍋の油の温度を180℃に初期設定することができ、その後、使用者は右加熱コイル6Rの火力を、操作ダイアル12Rを操作して揚げ物に適する任意の適当、例えば200℃に設定することができる。
左側の操作部22にも、前記タイマーカウンター(図示せず)のスタートスイッチ34Rと同様なスイッチ34Lと、その計測時間を表示する液晶表示部35Rと同様な機能の液晶表示部35L(図1参照)及び左加熱コイル6L用の揚げ物選択スイッチ36Rと同様な機能をする揚げ物選択スイッチ36Lの3つが、それぞれ本体1の左右中心線を挟んで左右対象的位置に設けられている。
【0026】
右加熱コイル6Rの火力の大きさを表示する火力表示ランプ40Rは、トッププレート5の右前側で右加熱コイル6R対応位置と操作部21の間の位置に対応した位置にあり、トッププレート5を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート5の下面近傍に設けられている。
左加熱コイル6Lの火力の大きさを表示する火力表示ランプ40Lは、トッププレート5の左前側で左加熱コイル6L対応位置と操作部22の間の位置に対応した位置にあり、トッププレート5を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート5の下面近傍に設けられている。
【0027】
前記の右加熱コイル6R用の火力表示ランプ40Rは、火力120Wから最大火力3kWまでの間を12段階で表示できるようになっており、詳細は表1のようになっている。
【0028】
【表1】

【0029】
そしてこれら12段階の火力を発光で示すために、火力表示ランプ40Rは、図5に示す回路図の通り12個の発光ダイオード246〜257(発光素子)を直線的に配置してある。例えば火力1である場合は、発光ダイオード1の246のみが点灯し、その赤い光が使用者はトッププレート5の表面上から容易に目視できる。
【0030】
しかも、表1に示すように、中火力の領域である500Wから1000Wの間に、563W、625W、875Wと更に細かい中間火力を設けている。
【0031】
前記左加熱コイル6L用の火力表示ランプ40Lは、図示していないが、火力120Wから最大火力2.5kWまでの間を11段階で表示できるようになっており、詳細は表2のようになっている。
【0032】
【表2】

【0033】
また、右加熱手段用6Rの火力表示ランプ40Rと同様に、563W、625W、875Wと更に細かい中間火力を3つ設定している。
【0034】
このように563W、625W、875Wの火力を設けている理由について説明する。
中火力領域における加熱調理を実際に行った結果、500Wや750Wのような従来の火力では、煮物が不用意に沸騰し、吹きこぼれ、あるいは逆に十分な高温加熱状態が維持できない状態となってしまったことから、安定して色々な分量の調理物を上手に火力調節して調理することできないことが判明した。
そこで、この中火力域において従来の火力の中間値、例えば500Wと750Wの中間値になる625Wを追加し、さらにこの625Wと500Wの略中間値になる563Wを追加するようにした。このため、使用者は従来の火力調節よりも更に細かい火力調節ができ、煮物が不用意に沸騰したり、逆に十分な高温加熱が維持できない状態になったりすること等を抑制し、安定的に色々な分量の各種調理を上手に行うことが可能となる。
【0035】
中央表示・入力部(本発明の表示手段に相当する)80が、トッププレート5の左右中央部の前側に位置している。中央表示・入力部80は、左加熱コイル6Lおよび右加熱コイル6Rの機能(調理動作中であるかどうか等)と、中央加熱手段7の機能(調理中であるかどうか等)と、加熱室19内部でグリル調理を行う場合の操作手順や機能(例えば、グリル調理の場合に、現在ロースタ、グリル、オーブンの調理の何れが行われているかどうか)とを、文字やイラスト、グラフなどで表示する。
中央表示・入力部80は、液晶パネルを主体に構成され、トッププレート5を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート5の下面近傍に設けられている(図4参照)。これについては具体的に後記する。
【0036】
火力表示ランプ60が、中央表示・入力部80より少し後方位置に配置され、中央加熱手段7の火力の大きさを表示する。火力表示ランプ60は、火力表示ランプ40Rと同様に、トッププレート5を介して(透過させて)その下面から表示光を上面側に放つようにトッププレート5の下面近傍に設けられている。
なお、火力表示ランプ60は火力100Wから最大火力1500Wまでの間を5段階で表示できるようになっており、火力1は100W、火力2は300W、火力3は600W、火力4は1200W、火力5は1500Wに設定してあり、これらは火力表示ランプ40Rと同様に、5つの発光ダイオード(図示せず)を直線的に配置されている。例えば、火力1である場合は、最も左側の発光ダイオードだけが点灯し、使用者は100Wの消費電力で中央加熱手段7が動作していることをトッププレート5の上方から目視で確認することができる。
【0037】
また、図1において、ドア70が、加熱室19の前面開口71を開閉自在に覆い、前後に移動自在になるよう加熱室19に支持機構(図示せず)により保持されている。ドア70の中央に設けた窓72は耐熱ガラスで覆われている。また、金属製の受皿73がドア70と一体に形成され、油の多い調理をする場合は、通常、受皿73の上には金属製の焼き網(図示せず)が置かれる。
【0038】
右排気口74は、枠体4の後部上面に設けられ、表面は使用者の指や異物等が入らないようにパンチングメタルや網、細かい格子で覆われている。
【0039】
左排気口75は、同様に枠体4の後部上面に設けられ、表面は使用者の指や異物等が入らないようにパンチングメタルや網、細かい格子で覆われている。左排気口75および右排気口74は、本体1の内部空間(後記する上部空間275)に連通し、また、加熱室19の内部まで排気ダクト(図示せず)を介して連通している。
【0040】
加熱室19の内部に発生した高温空気(調理物から発生した油煙を含む)は、左排気口75および右排気口74を経由して排出される。また、新鮮な室内空気が、本体1内部に設置した電動式の吸気ファン316(図5参照)の運転によって、本体ケース2の後部中央壁面に設けた吸気口(図示せず)より本体1の内部に吸い込まれる。そして、その空気によって、本体1内部の加熱室19上部に位置している下方空間274(図4参照)や側面周辺を冷却し、その後、左排気口75および右排気口74から排気される。
【0041】
図6において、前記した6つの各種操作ボタン29、92、93、94、300、310、93a等は、表面が水や調理物の油などに耐える材質の薄い樹脂皮膜や金属皮膜で覆われており、使用者が指先で軽く押すことにより動作(内蔵した電気接点が導通し、入力信号発生)するように構成されている。
【0042】
さらに、中央操作部23には、入力キー群91が設けられている。このキー群は6つの独立して操作可能なキー83、95、96、97、98、99を備えており、これらキーは、表面が調理物の油などに絶える材質の薄い樹脂皮膜や金属皮膜で覆われており、使用者が指先で軽く押すことにより動作(内蔵した電気接点が導通し、入力信号発生)するように構成されている。
【0043】
前記のように中央操作部23の各操作ボタンや入力キーを、接触式の入力キー(例えば、特許第2712399号参照)を使用しなかった理由は、その種の接触式キーは静電容量の変化を検知して入力信号が発生するものであるため、調理中の水や油の飛散、また使用者が濡れた手で操作した場合などの状況を考えると、この種の調理器では誤動作が起こる懸念があるため採用しなかった。これにより、この実施の形態1ではより高い信頼性を確保しているが、本発明は前記接触式のキーを採用しても実現でき、必ずしも押圧式のキーを使用しなければならない訳ではない。
【0044】
中央表示・入力部80は、周知のドットマトリックス型液晶画面で構成されている。このため高精細(320×240ピクセルの解像度を備えているQVGAや、640×480ドット、16色の表示が可能なVGA(Video Graphics Array)相当)の画面を実現することができ、文字を表示する場合でも多数の文字を表示することができる。
図7はその具体的を模式的に表示した例である。図7に記載するように、情報を表示する画面区域81は合計10個のエリアに割り当てられ、
左加熱コイル6Lの対応エリアA1、A2と、
中央加熱手段7の対応エリアB1、B2と、
右加熱コイル6Rの対応エリアC1、C2と、
グリルやオーブン調理用の加熱手段110A、110Bの対応エリアDと、
使用者に各種調理における注意や参考情報を表示するガイドエリアEと、
前記入力キー群91の各入力キー83、95〜99に隣接し、そのキーで入力可能な機能を個別に表示する、互いに独立した6つの表示キー84、100、101、102、103、104を(仮想的に)表示するキー表示エリアFと、
Tips表示エリアGと、
をそれぞれ備えている。
【0045】
前記の合計10個の各エリア(表示領域)は、中央表示・入力部80の液晶画面の上に実現されたものであるが、画面自体に物理的に個別に形成され、又は区画されているものではなく、画面表示のソフトウエア(マイコンのプログラム)により確立されたものであるので、そのソフトウエアによりその都度面積や形、位置を変えることは可能である。なお、使用者の使い勝手を考え、左加熱コイル6L、中央加熱手段7、右加熱コイル6Rなど各加熱手段の並び順序は常に同じにしている。
【0046】
左加熱コイル6Lの対応エリアA1、A2は、左加熱手段のための火力(加熱量)などの「第一条件」設定の正常状態を表示する第一の表示エリアA1と、左加熱コイル6Lのための調理時間、設定温度など(第一条件よりも多数の種類がある)「第二条件」の設定状態並びに「温度や電流、電圧などの物理量」異常状態を表示する第二の表示エリアA2、の2つのエリアから構成されている。
【0047】
同様に、中央加熱手段7の表示エリアB1、B2は、中央加熱手段のための火力などの「第一条件」設定の正常状態を表示する第一の表示エリアB1と、中央加熱手段7のための調理時間、設定温度など(第一条件よりも多数の種類がある)「第二条件」の設定状態並びに「温度や電流、電圧などの物理量」異常状態を表示する第二の表示エリアB2、の2つのエリアから構成されている。
【0048】
同様に、右加熱コイル6Rの対応エリアC1、C2は、右加熱手段のための火力などの「第一条件」設定の正常状態を表示する第一の対応エリアC1と、右加熱コイル6Rのための調理時間、設定温度など(第一条件より多数の種類がある)「第二条件」設定の正常状態並びに「温度や電流、電圧などの物理量」異常状態を表示する第二の表示エリアC2、の2つのエリアから構成されている。
【0049】
図6において、キー表示エリアFと、6つの入力キー83、95〜99との関係が示されている。キー表示エリア部分Fに設けた6つの各キー(以下、表示キー又はソフトキーともいう)84、100〜104は、場面によって機能が変わる液晶画面内での仮想キーであり、実際の操作は各キー84、100〜104に対応して近接配置されている入力キー(F1〜F6、ファンクションキーともいう)83、95〜99を操作することにより、各キー84、100〜104を操作したことに相当する操作信号が(後述する通電制御回路200)に入力することになる。
なお、6つの入力キー83、95〜99を個別に表示する方法として、キー部分に文字を浮かび上がらせたり、発光ダイオード等により点灯させたり、キー部分の色彩や輝度を強調したり、色々な方法があるが、この実施の形態では、入力できる条件の前提となる各種パラメータ(対象となる加熱手段、加熱温度や時間、通電量など)設定に必要な文字と記号(矢印など)を表示キー部分84、100〜104に表示するように構成している。
【0050】
表示キー104の右側手前には、ハードキーからなるインフォーメーションキー(Tipsキー)85が設けられている。このキーは、表示キー104の上方のTips表示エリアGに対応しており、その表示エリアに特定の記号、例えば参考情報(インフォーメーション)を意味する「○i(i)が表示された場合、このインフォーメーションキー85を押せば、図14に示すように調理に役立つ詳しい情報などを文字で中央表示・入力部80のガイドエリアEに表示させることができる。
【0051】
図8〜図17は、表示キー84、100〜104と入力キー(ファンクションキー)83、95〜99との表示例を示した動作説明図である。
6つの表示キー84、100〜104はそれぞれその下方に個別にLEDがそれぞれ配置されており、操作場面毎に有効な入力用表示キーを点灯する。例えば図8に示す表示キー100〜104は有効(アクティブ状態)になっている。図中、AMはアクティブ状況にあることを模式的に示したアクティブマークである。実際はこのような特定形状の点灯を行うだけではなく、表示キー84、100〜104の全域や輪郭だけを明るくし、又は色を変える等の方法で、アクティブ状況にあることを示しても良い。
また、表示キー84、100〜104内、操作しても無効なキーについては、グレイアウト(コントラスト及び文字内容を薄く表示する)や非表示(キー外形形状のみを薄く表示する)により区別をするようにしている。図8では、1つの表示84だけが、グレイアウトや非表示になっている。またファンクションキー83、95〜99についても、その下方に個別に設けたLEDの点灯有無により、有効なファンクションキーが目視で区別できるようにしている。
【0052】
図8において、表示キー84に対応するファンクションキー83は、LEDが点灯しておらず、このLEDが点灯していないファンクションキー83を押しても、後記する通電制御回路200の中には有効な操作信号が上面操作部20より取り込まれない(通電制御回路200の動作を定める制御プログラムに対し、有効な操作指令信号にならない)。
つまり、実施形態1では、使用者が中央表示・入力部80を見た場合、所望の表示キーを少しでも早く、簡単に認識・理解できるよう不要な表示キーにはこのように何も選択する機能名や加熱手段の名称を表示しないようにプログラムしてある。また、入力が有効な表示キーは文字や発光、色などで判別できるようにしている。また、その有効な表示キーに対応するファンクションキー83、95〜99も、それが有効な(アクティブ)状態であることを色や光等で表示している。
つまり6つの表示キー84、100〜104のアクティブ状態と、6つのファンクションキー83、95〜99のアクティブ状態とは、入力の場面毎に変化するが、常に両者は対応している。例えば、図8において、表示キー100が(アクティブマークAMが点灯しているので)有効(アクティブ状態)である場面では、ファンクションキー95も有効(アクティブ状態)になっている。
【0053】
図8では、中央表示・入力部80の画面区域81が初期状態を表示しているため、表示キー84に対応するファンクションキー83は非アクティブになっており、このキー83を押圧しても、これに対応する表示キー84では入力操作できないことを示している。
表示キー84には「初期画面」との説明文字が表示されているが、既に初期画面になっているので、このキー84を操作する必要性がないからである(この初期画面という表示自体を表示キー84に表示させないこともできるが、説明の便宜上、表示させている)。
なお、図6や図8以降で、「戻る」という表示キー100は、調理条件の入力などを行っていく過程で一つ前の入力画面や表示画面に戻したい場合に押すものである。「初期画面」の表示キー84は、どのような段階でも一挙に初期画面に戻したい場合に操作する。
【0054】
図9は、図8の状態から使用者が3kWキー86(図6参照)を押した場合の中央表示・入力部80と入力キー(ファンクションキー)83、95〜99との表示例を示す説明図である。3kWキー86が押されると、入力キー86の入力信号で通電制御回路200にメニュー選択の指令が入力され、その制御回路はこの中央表示・入力部80に対し、図9の画面を表示するよう指令を出す。
中央表示・入力部80における、右加熱コイル6RのエリアC2は自動的に面積が数倍に拡大され、表示エリアC1に表示された文字で、その火力のレベルが12段階中の12(最大値)である3kWに設定されることが分かる。
【0055】
この火力については下げることはできないので、火力を下げるための表示キー102は非アクティブであり、これと対応したファンクションキー97は非アクティブになる。また通電時間は初期設定では2分、5分、10分の内から、2分が表示されるので、この2分を5分に変えたい場合は、3kWキー86を再度押すか、又は時間や温度を増加させる「→」の記号が表示された表示キー103を操作するため、ファンクションキー98を押せば良い。この場合、時間を(5分や10分に)長くするためのファンクションキー98はアクティブ表示になっており、逆に時間を短くするための表示キー102に対応するファンクションキー97はグレイアウトになっている(2分以下に下げることはできないため)。しかし、5分に設定したあと、2分に戻す場合は、このファンクションキー97はアクティブになっているので、これを押せば良い。
【0056】
図9に示す通り、中央表示・入力部80のガイドエリアE(警報・案内表示エリアに相当する)には調理時間が2分、5分、10分の内から選べること、またその選ぶ方法は3kWキー86を押すか、又は「→」、「←」の記号が表示された表示キー102、103をファンクションキー97、98で操作すれば良いこと、を使用者は容易に認識できる。このように、ガイドエリアEには、例えば50文字までの文言表示ができるようにしてあり、その主な表示内容は、各種キーの操作機能の説明や操作手順の補助等、また重要な警報である。
【0057】
図10は、図8の状態から使用者が右IH便利メニューキー93a(図6参照)を押した場合の中央表示・入力部80とファンクションキー83、95〜99との表示例を示す説明図である。図10において、キー93aが押されると、中央表示・入力部80における、右加熱コイル6RのエリアC2は自動的に面積が拡大され、左側には各種の調理メニュー(例えば、揚げ物、煮込み等)が表示され、煮込みに適する火力として火力レベルが12段階中の5である625W(弱火力)に初期設定されることが分かる。
この火力は初期設定値以外に使用者が希望する火力に変更できるので、火力を1段階落として563W以下にしたい場合は、表示キー102を操作すべく、ファンクションキー97を1回押せば、1段階さがり、2回押せば2段階(500W)に下げることができる。逆に火力を上げる場合は、ファンクションキー98を押せば良い。
【0058】
また、通電時間は上下方向の矢印が示された表示キー101を操作すれば、入力される条件が「通電時間」になる。つまり、図10で「時間:0分」という部分の時間設定が可能になる。そこで調理時間を2分に設定したい場合、ファンクションキー98を2回押す。図10はこのように時間を設定する段階にあるため、時間(0分)を下げる(短くする)ことはないから、表示キー102が対応するファンクションキー97は非アクティブ状態である(このキー97を押しても何も入力できない)。
【0059】
なお、時間設定を行わずに、また火力設定をやり直したい場合、図10の状態から表示キー101に対応したファンクションキー96を押せば、表示キー101の矢印表示の通り、入力対象を、「時間」からその上方位置に表示されている「火力」に移動させることができ、時間の欄から火力の欄に入力対象を変えることができる。
【0060】
また、調理メニューを「煮込み」から「切タイマー」に変更したい場合は、ファンクションキー96を押せば、「煮込み→保温→揚げ物→切タイマー」のように巡回するから、切タイマーのところに合わせれば良い。
なお、切タイマーとは左加熱コイル6Lおよび右加熱コイル6Rの火力を、レベル1(120W)、2(300W)、3(563W)〜8(1kW)の内から選び、1時間30分(90分)以内の連続調理をタイマーにより行うことができるようにした機能であり、例えば火力8で29分間右加熱コイル6Rを通電して調理を行なうという使用ができる。なお、切タイマー運転の場合の加熱手段は、中央加熱手段7でも使用可能である。
【0061】
図10において、通電マーク50は、右加熱コイル6Rが通電され加熱中であることを点灯や点滅で示すものである。通電マーク50は、図6に示すように各加熱手段の名称を表示した右位置に現れる。
【0062】
図11は、図10の状態で、使用者が右IH便利メニューキー93aを押し、煮込み調理を行っている場合の中央表示・入力部80とファンクションキー83、95〜99との表示例を示す説明図である。この例では、右加熱コイル6RのエリアC2には、煮込み調理を40分行う設定で、現在33分経過し、残り時間が7分になったことが表示されている。
このように、加熱手段の選択をしたあと、加熱調理運転に入ると、特定の加熱手段の表示エリアA2、B2、C2は標準的な面積に自動的に戻り、図11のように各表示エリアA2、B2、C2の面積は略均等になる。そして右加熱コイル6Rの表示エリアには、通電マーク50が表示される。
【0063】
図12は、図8の状態(初期画面)で、使用者がグリル調理の表示キー103を選び、ファンクションキー98を押した場合における自動グリル調理を行っている場合を示している。ファンクションキー98が押されると、中央表示・入力部80における、オーブン調理・グリル調理用の電気ヒータの表示エリアDは自動的にその面積が拡大され、左側には各種の調理メニュー(例えば、自動グリル、手動グリル等)が表示される。
自動グリルにおいては、図12に示すように「姿焼き」の他に、「切身」、「小魚」、「つけ焼き」、という加熱メニューが選べる。この選び方はファンクションキー97、98を押すだけである。この場合、表示キー103(ファンクションキー98)を押す度に「姿焼き→切身→小魚→つけ焼き」というメニューが現れる。また表示キー102(ファンクションキー97)を押せば、前記とは逆の方向で、「切身→姿焼き」、というように順次表示させて選ぶことができる。
【0064】
また、ファンクションキー96を押して表示キー101を操作すれば、姿焼きの場合の焼色を設定できる。焼色を増やしたい場合は、焼色の入力モードにした上で、ファンクションキー98を押し、逆に少なくしたい場合はファンクションキー97を押せば良い。押すたびに焼色が1段階ずつ変化する。そして図13に示すように焼色のレベルを4にした状態で、スタートキーに相当する表示キー104をファンクションキー99で操作すれば調理開始となる。
【0065】
図12〜図13に示す調理を行う場合、加熱室19の扉70が開いた状態では、表示エリアEには「○i(i)グリルの扉が開いています」といった注意メッセージが表示される。また、図13に示すように、「さんま」、「あじ」、「いわし」等の魚も姿焼きできることがメッセージで示される。
【0066】
図14はTipsの表示例を示す説明図である。「Tips」は、お役立ち情報・豆知識といった意で扱い、知っていると便利な機能や調理のポイント、また自動制御によるユーザーの戸惑いを解決する内容を、使用者が知りたいと思う場面で知らせるために用意されている。実施の形態1では主にハウツー(howto)対策として活用し、IH調理をより快適にすることを目的としている。
その動作は、『○i(i)』アイコン(iはインフォメーションの頭文字)が表示エリアGに表示されたときに対応するハードキーであるインフォーメーションキー(Tipsキー)85(図6参照)を押したときに該当する内容が表示される。
【0067】
なお、その表示内容としては、図14に示した以外に、例えば次のような例がある。
(1)ユーザーの操作・意図とは関係ない動作に対するお知らせ(切り忘れ防止/脱煙フィルター自動クリーニング等)。
(2)自動調理(揚げ物、自動グリル)を安全に、また上手に使いこなすために行ってもらいたい内容。
(3)調理全般に関して機器特有の癖(焼きムラ等)お知らせ。
(4)調理装置の安全面のお願いや・警報内容、警報に対する対応方法。
図14で自動グリルの焼き色調節の目安を更に詳しく知りたい場合、使用者はファンクションキー98を押し、表示キー103を操作すれば表示画面が次のページに切り替わる。
【0068】
図13および図14における「自動グリル」調理とは、被加熱物の種類や大きさ、焼き色の設定などの条件に応じて、調理の開始直後から調理器の通電制御装置200に内蔵されたマイコンが加熱室19の温度上昇の状態を見て、調理完了までの時間を計算し、その計算結果を目安時間として図15に示すように、「姿焼き あと18分」のように示すものである。
一方「手動グリル」とは、調理時間を自由に設定できるものをいい、自動グリルが終了したあと、焼き程度を増したい場合には、自動グリル調理が終わった後でこの手動グリルにすることもできる。なお、調理が終わった後に、通電制御回路200が加熱室19の自動クリーニングを行う(煙を分解する作用をする脱煙フィルターを一定時間通電する)場合もあり、この場合は「自動クリーニング中」等が表示エリアEに表示される。
【0069】
また、図15に示すように「グリル扉が開いています」と注意喚起したにも拘らず、30秒以上そのまま放置された場合、加熱室19から熱気が外に漏れ出し、加熱室内の温度が十分上がらないため、調理条件の設定は無効になるように通電制御回路200のマイコンはプログラムされている。このとき、図15に示すような注意メッセージを出し、使用者に正しい使用状態にするように注意を促す。
【0070】
図15に示した状態では「左IH 揚げ物 温度180℃」となっている。この意味は、左加熱コイル6Lが通電され、その通電時間がこの調理器では最初に全て20分にタイマーセットされていること(調理開始後は、この20分からカウントダウンされ、1分刻みで表示される)を意味している。また、「設定180℃」とは、左加熱コイル6Lが通電され、天ぷら鍋の油の温度が180℃に設定されていることを意味している。
なお、前記のように初期設定(デフォルト)時間を20分に設定せず、例えば10分になるよう、制御プログラムを設計してもよい。
また、図15の状態では、中央加熱手段7を選択する表示キーの表示がされない。表示キー101に対応するファンクションキー96も非アクティブ状態であるから、仮にこのキー96を押しても通電制御回路200には何ら有効な指令が入力されない。このようにグリル・オーブン調理が行なわれている間は、調理器全体の消費電力を一定の範囲に抑えるため、中央加熱手段7は同時に使用できないようになっている。
【0071】
ところで、中央表示・入力部80は、使用者が目視で確認できるように、第二の表示エリアA2、B2、C2の表示エリアの面積は、表示する内容に応じて大きく変化させることができるものである。第二の表示エリアA2、B2、C2は、各表示エリアの内、調理時間、設定温度などの「第二条件」設定状態と、「加熱温度や電流、電圧などの物理量」の異常状態との2つを表示するものである。
例えば、左加熱コイル6Lの制御条件を設定したり、確認したりする場合には、対象となるエリアA2は、例えば、図16に示すように全体に占める面積を(図15の状態より)大きく拡大することができる。すなわち、図15の状態で、「左IH」と文字や記号などで表示された表示キー100を入力操作すべく、(アクティブ状態になっている)ファンクションキー95を押せば、図16のような表示に変わるため、使用者は左加熱コイル6Lの調理に必要な情報を確認することができる。
【0072】
図16においては、油の加熱温度が最初180℃に設定されているが、表示キー102に対応するファンクションキー97を押せば、温度を1℃ずつ下げることができ、反対に、表示キー103に対応するファンクションキー98を押せば、温度を1℃ずつ上げることができる。
また、通電時間は最初20分に設定されているが、ファンクションキー96を押せば、入力項目を「温度」(例:180℃)から「時間」に切り換えることができる。そして、このように時間入力モードにした後に、表示キー104に対応するファンクションキー99を押せば、以上の条件で揚げ物調理がスタートする(スタートした段階で、図16に示すように「左IH」の表示の右脇位置に通電マーク50が点灯する)。
また、この場合、表示エリアEには、例えば使用者に対し「油量は0.6L以上で調理してください」を表示し、揚げ物に使用する油を0.6リットル以上にするようにとの注意を与える文言表示が出される。つまり揚げ物調理に必要な油の量や加熱温度など注意事項を表示する機能を有している。例えば鍋に揚げ物の油を0.2リットルしか入れないで加熱すると、その油は加熱手段の火力によっては300℃以上まで一気に上昇することがあり、発火事故などになる危険性がある。
【0073】
図17は、図8の状態(初期画面)で、使用者が右加熱コイル6Rを使用し、その使用中にグリル調理をした状態を示す。右加熱コイル6Rが先に使用されている場合、表示キー84、100〜104は図11や図15の状態になる。つまり図15に示したように、表示キー103に「グリル」の文字が示され、対応するファンクションキー98もアクティブ状態になるので、このキー98を押せば、グリル・オーブン調理の表示エリアが図17のように拡大される。この状態では右加熱コイル6Rを示す「右IH」と示された表示エリアC2には、通電表示マーク50が点灯(又は点滅)しており、右加熱コイル6Rが加熱中であることが分かる。
一方、中央加熱手段7と左加熱コイル6Lは、その表示エリアB2、A2に通電表示マーク50やその他通電中であることを示す文字や絵は表示されていないので、使用していない(停止している)ことが分かる。なお、この図17の状態の画面は、自動グリルで姿焼きがスタートした後、数秒から10秒程度後に、図6に示すように全ての加熱コイル6L、6R、7、110A、110Bの通電状態が分かる初期画面に自動的に復帰する。
【0074】
図5は、この調理装置の制御回路の全体を示す図である。図5において、通電制御回路200は1つ又は複数のマイクロコンピュータを内蔵し、入力部と出力部と記憶部と演算制御部の4つの部分から構成され、定電圧回路232を介して直流電源が供給されている。通電制御回路200は、本発明における全ての加熱コイル(加熱手段)と表示手段(中央表示・入力部80)を制御する制御手段の役目を果たすものである。
商用電源202は主回路の母線202A、202Bに200Vを供給し、主電源スイッチ201は主回路の一方の母線202Aに設けられている。そして、回路206Rが電源202に対し互いに並列に接続された右加熱コイル6R用として、回路206Lが右加熱手段回路206Rと同様に構成された左加熱手段(6L)用として、回路207が中央加熱手段7用の回路として、回路208がグリル・オーブン用加熱手段用として、設けられている。
【0075】
右加熱手段回路206Rは、誘導加熱コイル220と、母線202A、202Bに入力側が接続された整流ブリッジ回路221と、この直流側出力端子に接続されたコイル222及び平滑化コンデンサ223からなる直流回路と、コイル222とコンデンサ223の接続点に1端が接続された加熱コイル220及び共振コンデンサ224の並列回路からなる共振回路と、この共振回路の他端にコレクタ側が接続されたスイッチング手段となるIGBT225と、を備えている。
IGBT225のエミッタは、平滑化コンデンサ223と整流ブリッジ回路221の共通接続点に接続されている。226はフライホイールダイオードで、そのアノードがエミッタ側になるようIGBT225のエミッタとコレクタ間に接続されている。
【0076】
図5において、電流検出センサー227は、加熱コイル220と共振コンデンサ224との並列回路からなる共振回路225に流れる電流を検出するものであって、この検出出力は通電制御回路200の入力部に供給される。誘導加熱に不適当な鍋などが用いられた場合や何らかの事故などによって正規の電流値に比較して過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路200により駆動回路228を介してIGBT225が制御され、瞬時に誘導加熱コイル220の通電を停止するようになっている。
右加熱手段回路206Rは、前記の誘導加熱コイル220と、コイル222及び平滑化コンデンサ223からなる直流回路と、駆動回路228と、この駆動回路によりスイッチング制御される前記IGBT225と、共振回路220と、フライホイールダイオード226と、整流ブリッジ回路221と、から構成されている。
【0077】
左加熱手段回路206Lは、前記右加熱手段回路206Rと同等の回路構成であるので説明を省略する。なお、左加熱コイル6Lの最大火力は前記したように2.5kWであり、右加熱コイル6Rの最大火力設定3.0kWよりも小さく設計されている。
【0078】
電流検出器227は、図示していないが、左加熱手段回路206Lやグリル・オーブン用加熱手段用の回路208、中央加熱手段7用の回路207にもそれぞれ同様に設けてある。
【0079】
中央加熱手段7用の回路207は、電磁リレー230と電気ヒータ231との直列回路を有し、この回路の両端が母線202A、202Bにそれぞれ接続されている。
【0080】
赤外線駆動回路233は、通電制御回路200から出力される駆動信号に基づき、赤外線の光信号を発生させるものであって、その駆動出力側には複数個(図5では3個しか書いていない)の赤外線LED234、235、236の直列接続回路が接続されている。この直列接続回路の他端には抵抗237を介してトランジスタ238のコレクタが接続され、トランジスタ238のベースは赤外線駆動回路233に接続されている。なお、トランジスタ238のエミッタはアース接続されている。
【0081】
換気装置239は本発明になる調理器の構成の一部ではなく、本発明の調理器に必須の装置や部品でもない。調理器の設置空間の上方となる台所の側壁上部などに設置されている。換気装置239の制御部には、赤外線受光素子となるフォトダイオード240、受信回路241、制御回路242が内蔵されている。
また、ファンモータ243は換気用の排気ファンを駆動するものであって、フォトダイオード240が赤外線LED234〜236の直列回路から赤外線信号を受けると受信回路241を通じて制御回路242に信号が伝達され、その信号により回転駆動される。
【0082】
駆動回路244は、中央表示・入力部80の液晶画面を駆動するものであって、通電制御回路200から駆動信号が入力される。
【0083】
駆動回路245は、右加熱コイル6Rの火力表示ランプ40Rを点灯させるものであって、通電制御回路200から駆動信号が入力される。
火力表示ランプ40Rは、図5に示すように、合計12個の発光ダイオード246〜257が互いに並列に接続されている回路を備えている。この並列回路の一端が駆動回路245に接続され、他端はそれぞれ抵抗258a〜258lを介して接地側接続点259に接続されている。また左加熱コイル6L用の火力表示ランプ40Lも同様に構成されているが、発光ダイオードの数は11個である。
【0084】
右加熱コイル6R用の火力表示ランプ40Rは、前記したように、火力120Wから最大火力3kWまでの間を12個の発光ダイオードにより12段階に表示できるようになっている。
【0085】
左加熱コイル6L用の火力表示ランプ40Lは、図示していないが、前記したように火力120Wから最大火力2.5kWまでの間を11個の発光ダイオードで11段階に表示できるようになっている。
【0086】
図5において、冷却ファン駆動回路260は、本体1の内部空間を一定の温度範囲に保つためのものである。また、温度検出回路311には、
中央加熱手段7用の回路207の電気ヒータ231の近傍に温度センサーS1と、
右加熱コイル6R用回路206Rの誘導加熱コイル220の底部に温度センサーS2と、
中央表示・入力部80の液晶表示パネルの後部上面に温度センサーS3と、
左加熱コイル6L用回路206Lの誘導加熱コイルの保持枠330L底部に温度センサーS4と、
加熱室19の天井部に温度センサーS5と、
本体1内部の右空間部370Rに設けた複数の高電圧電気部品(電源トランスや高周波インバータ制御回路部品等)371Rの冷却用ダクト372Rの入口部天井に温度センサーS6(図3参照)と、
前記高電圧電気部品371Rの一部が取り付けられたアルミ製の放熱パネル373Rの天井面に温度センサーS7(図3参照)と、
がそれぞれ取り付け配置されている。
【0087】
温度センサーS2と温度センサーS4は、1対の温度センサーから構成されており、右加熱コイル6Rでは、金属製の容器状保持枠330R下面の覆うフェライト製板(磁束漏れ防止板)331Rの略中央部(円板形に巻いた誘導加熱コイル220の略中心直下)に一つの温度センサーS2Bを取り付け、保持枠330R内部で、かつ保持枠の中心線から後記する冷却用ファン262側位置に少し離れた位置にもう一方の温度センサーS2Aを配置している。
同様に、本体1の左右中心線を挟んで右加熱コイル6Rの温度センサーS2A及びS2Bと対照的な位置に温度センサーS4A、S4Bをそれぞれ備えている。
なお、このように左加熱コイル6Lと右加熱コイル6Rとに温度センサーを2個設けた目的は、保持枠330R、330Lの内部で後記する冷却用ファン262、315からの風上側位置と、保持枠330R、330Lの底部中央部という離れた2箇所で温度を測定することにより、より正確に温度を検出しようとするものである。
1対の温度センサーS2A、S2B、1対の温度センサーS4A、S4Bの個々の温度検出状態は異なり、異常温度と判定する基準温度も異なるが、左加熱コイル6Lと右加熱コイル6Rとは主要な加熱手段であり、かつ高温度になるので、温度センサーを1対設け、二重に監視している。
【0088】
同じく図3に示すように、本体1の内部の左空間部370Lにも、右空間部370Rと同様に、複数の高電圧電気部品(電源トランスや高周波インバータ制御回路部品等)371Lの冷却用ダクト372Lや、その入口部天井面に温度センサーS8を、また高圧電気部品が取り付けられたアルミ製の放熱パネル373Lの天井面に温度センサーS9を、それぞれ配置している。
回路基板390は前記2つの冷却ダクト372R、372Lの内側にあって、高電圧電気部品371R、371Lを固定している、複数の脚部391によって支持されている。
【0089】
本体1の内部は、図2の横断面図に示すように、加熱室19を両側から挟むように、本体1の内部底面から天井面に至るような寸法を有する左仕切板374Lと右仕切板374Rとが設けられ、左仕切板374Lと右仕切板374と本体ケース2の左右側壁との間で左空間部370Lと右空間部370Rとが区画形成されている。
【0090】
右空間部370Rに設けられた逆U字型断面形状の冷却用ダクト372Rは、アルミ等のような熱伝導性の良い素材で形成されており、その内側で入口部に設けた冷却用ファン261はモータFMに支持されている。そして、このモータFM駆動時には、本体ケース2の背面右側位置に多数形成した吸気孔375から図3に矢印F1で示すように外気を右空間部370Rに吸引するようになっている。
【0091】
同様に、左空間部370Lにも逆U字型断面形状の冷却用ダクト372Lが設置されており、その内側で入口部には冷却用ファン263とモータFMが設置され、そのモータFM駆動時には、本体ケース2の背面左側位置に多数形成した吸気孔(図示せず)から外気を矢印F1で示すように左空間部370Lに吸引する。
【0092】
右空間部370Rの前方の天井面近くには、上面と下面にそれぞれ吸い込み口376Rを形成したケーシング377Rを持った冷却用ファン262が水平に配置され、冷却用ダクト372の出口部から上昇してくる空気を吸い込み口376Rで吸い込み、これを加熱室19の上方において本体1内部を上下に区画する金属製仕切板334の上方空間275の右前方角部分へ(矢印F3で示すように)吹き出す。
【0093】
同様に、左空間部370Lの前方の天井面近くには、上面と下面にそれぞれ吸い込み口376Lを形成したケーシング377Lを持った冷却用ファン315が水平に配置され、冷却用ダクト372の出口部から上昇してくる空気を吸い込み口376Lで吸い込み、これを加熱室19の上方において本体1内部を上下に区画する金属製仕切板334の上方空間275の左前方角部分へ(矢印F3のように)吹き出す。冷却用ファン262は駆動用モータの回転軸262Bに設置され、同じく、冷却ファン315は駆動用モータの回転軸315Bに設置されている。
【0094】
右仕切板374Rに設けた窓379Rには、冷却ファン262のケーシング377Rが貫通している。同様に、左仕切板374Lに設けた窓379Lには、冷却ファン315のケーシング377Lが貫通している。
【0095】
図5において、前記9つの各温度センサーS1〜S9からの温度データは、温度検出回路311を介して全て通電制御回路200に入力する構成になっている。
そしてファン駆動回路260は、温度検出回路311からの温度測定状況に応じ、それぞれの温度測定部分が所定温度以上高温にならないように常に冷却用ファン261、262、263、315、316を運転して発生した風で冷却している。しかし、それでも所定温度以上に上昇した場合は、通電制御回路200に温度検出回路311から異常温度信号が入力され、左加熱コイル6L、右加熱コイル6Rや電気ヒータ231等の加熱手段の電源が遮断されたり、制限されたり、安全動作のための保護信号が通電制御回路200から各加熱手段に向けて出力される。
つまり、異常検出手段は、通電制御回路200と、温度検出回路311と、電流検出センサー227等から構成されている。なお、前記各冷却用ファンの運転については後で詳しく述べる。
【0096】
図2において、案内板378R、378Lは、冷却用ファン262、315の吹き出し口262A、315Aの前方位置で、仕切り板334の上面に設置され、V字形を有し、冷却用ファン262、315からの冷却風を中央表示・入力部80と左加熱コイル6L、右加熱コイル6Rのそれぞれに分配する役目を有する。
すなわち、中央表示・入力部80を冷却する空気の流れF3と、左加熱コイル6Lおよび右加熱コイル6Rを両側からそれぞれ冷却する空気の流れF5およびF4と、を形成する。そして、最終的にはそれら空気は右排気口74と左排気口75から図3に矢印F8で示すように排気される。
【0097】
1対の案内板380R、380Lは、仕切板334の上方空間275の後部側を後ろに行くほど狭めるようにハの字形に仕切板275上に設置され、空気の流れF4、F5、F6を排気口74、75の直下まで集めるような役目を有する。
【0098】
図4は図1の加熱調理器の上部断面図である。図4に示されるように、トッププレート5の下面と、加熱室19の天井面全体を覆う断熱材300との間の空間は、仕切り板334により上下2つの空間に区画され、上方空間275と下方空間274を形成している。
送風ファン314は、下方空間274内部後方に設置されており、本体ケース2の後部中央に設けた吸気孔(図示せず)から室内空気を吸引し、本体1の中の加熱室19上方(下方空間275)に平面的に右回りか左回りの何れかで冷却風を送り、下方空間274の下方に風の流れF7を作り、最後に排気口74、75から排出されるようにしている。
なお、上方空間275と下方空間274は、排気口74、75に至るまで仕切板334やダクト(図示せず)等により区画されていて途中で交わることが無いので、両空間274、275を流れる空気は相互に干渉など起こさず、本体1の外部にそれぞれ別々に排出される。
【0099】
また、2つの冷却用ファン262、315は、その吹き出し口が仕切り板270の上方空間275に臨むように設置されており、運転時には、同じく吸い込み口376L、376Rから吸い込んだ空気をその上方空間275の前方部分へ送る。
【0100】
図4に示す通り、上方空間275の前部には、中央表示・入力部80の液晶画面を構成する液晶基板280が設けられている。液晶基板280はその底面側が断熱材281で覆われ、上面だけが開口した金属製のケース282の内部に格納され、トッププレート5の下面から所定の空隙283を保つようにケース282により固定されている。
連通孔271がケース282の全周に亘り多数形成され、液晶基板280の上方に冷却ファン262、315からの風の一部が通過することにより、液晶基板が高温度にならないようにしている。ケース282の底面には風の流れる方向(前後方向。図4では左から右方向)に略平行となるよう、複数の放熱フィン282Aが一体に形成されており、ケース282の空冷性能が高まるようにしてある。
【0101】
図4に示すように、天ぷらなどの揚げ物を調理した大型(大口径)の鍋Nがトッププレート5の上に長時間置かれた場合、特に、その鍋の位置が正規の位置より中央表示・入力部80に接近し過ぎて置かれた場合、鍋Nからの熱が中央表示・入力部80に伝わりやすくなり、温度が異常に上がる原因になることが考えられるので、連通孔271を設けて冷却風の流れを良くしている。
【0102】
同じく図4においても図5に示した赤外線LED234が、液晶基板280の後端と断熱材281の間に設けた溝状空間291に配置されている。図示していないが他の赤外線LED235、236も直ぐ横に一列に置かれ、トッププレート5を透過して換気装置239の方角へ赤外線駆動信号を放射するようになっている。
なお、枠体4の上壁面や上面操作部20を構成する外表面の一部に開口を設け、その開口を赤外線透過材で覆い、この透過材の下方に前記赤外線LED234〜236の一部又は全部を設けても良い。
【0103】
金属製の取付基板292には、上面操作部20の各種入力スイッチ類、例えば操作ボタン92により操作される操作スイッチや入力キー97で操作される複数個のスイッチ、通電制御回路200を構成する主要部品の一つである「表示用」のマイクロコンピュータ等、上面操作部20に関係のある電気部品群298が搭載されている。
取付基板292に一定間隔で多数の連通孔297が形成され、冷却用ファン262、315から上方空間275に送り込まれた冷却風の一部が連通孔297を通じて空間部295まで入ることになり、トッププレート5を通じて伝達される熱の影響で電気部品類298が高温にならないようにしている。
【0104】
図2に示す通り、液晶基板280の周辺のケース282や、ケース282の周辺のトッププレート5は、冷却用ファン262、315から送られて来る冷却風の流れF3に晒されるため、冷却される。また、同時に電気部品類298も冷却される。
【0105】
制御基板299は電気部品類298を取付基板292に固定するものであって、取付脚部293によって固定されている。配線93Aは中央操作部23の操作スイッチ類と電気部品類とを結び、配線296はファンクションキー83、95〜99に接続されている。
【0106】
密封用シールパッキン材333が、6つのファンクションキー83、95〜99等と枠体4の間をシールし、スイッチ93の接続線93Aと、ファンクションキー97の接続線296は、それぞれスイッチ類298に繋がれている。
【0107】
図5において、予備電源400は、商用電源202から電源スイッチ201により通電制御回路200を切り離す場合、その商用電源に代わって電源を供給するものであって、例えば、充電池から構成されている。したがって、商用電源202から通電制御回路200の間で電気的に異常電流等の不具合が発生し、そのままでは危険な場合に通電制御回路200自身が電源スイッチ201を開放する時に、予備電源400は接続されて使用される。
また、通電制御回路200の内部には、図示していないが不揮発性半導体記憶メモリーが内蔵されており、調理器に異常が発生してから商用電源が切れるまでの情報を記憶している。これは、次に再度調理器が起動した際に、通電制御回路200が前回の故障や不具合を判断し、不用意に通電しないようにしている。また、調理器の修理業者やメーカが前記メモリーの故障履歴を読み出し、修理に役立てるようにすることもできる。
【0108】
次に、前記の構成からなる加熱調理器の動作の概要をフローチャートに基づいて説明する。以下、各ステップを「ST」と略記する。
図18は電源投入から調理準備開始までの基本動作を示すフローチャートである。図18において、このような動作プログラムが通電制御回路200の内部にあるマイコンに格納されている。
まず、電源プラグを200Vの商用電源に接続し、電源スイッチ201を押す(ST−1)。
すると、定電圧回路232を介して所定の低い電源電圧が通電制御回路200に供給される(ST−2)。
すると、通電制御回路200が起動され、自身の制御プログラムを自己診断、チェックし、異常がない場合には冷却ファンの駆動回路260、左右加熱コイル6Rの駆動回路228、中央表示・入力部80の液晶表示部の駆動回路244、をそれぞれ起動する(ST−3)。
さらに駆動回路228は左加熱コイル6L、右加熱コイル6Rに小電力を流し、その電流の状態から回路構成に異常がないことをチェックする(ST−4)。
【0109】
さらに、駆動回路260は冷却ファン261、262、263、314、315を所定の定格電流で運転開始する(ST−5)。
温度検出回路311は合計11個所に設けた各温度センサー(S1〜S9)からの温度データを読み込み、そのデータを通電制御回路200に送る。
【0110】
以上のようにして通電制御回路200には、主要な構成部分の回路電流や電圧、温度などのデータが集まるので、調理前の異常監視制御として、異常加熱判定を行なう。
例えば、中央表示・入力部80の温度がその液晶表示部の耐熱温度(例えば70℃)よりも21℃以下低い(49℃以下)場合は、異常高温ではないと判定する(ST−7)。逆に、50℃以上になると異常高温と判定する。
【0111】
次に、電流検出センサー227は、加熱コイル220と共振コンデンサ224との並列回路からなる共振回路225に流れる電流を検出し、この検出出力は通電制御回路200の入力部に供給される。そして、何らかの事故や導通不良などによって正規の電流値に比較して過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路200は異常と判定する(ST−8)。
【0112】
以上のステップ(ST−7、ST−8)によって異常判定が無かった場合は調理開始準備完了となる(ST−9)。
しかし、異常判定が行なわれた場合は、図18に示すように異常時処理1に従った処理が行なわれる。
【0113】
異常時処理1の動作は図19に示されている。
まず、異常の内容からその異常状態を調理器で是正できるかどうか判定する(ST−10)。
例えば、中央表示・入力部80の温度がその液晶表示部の耐熱温度(例えば70℃)よりも20℃以上低くはなく、15℃低い(つまり55℃である)場合は、その液晶表示部を冷却用ファン262によって強力に冷却するか、または中央表示・入力部80の液晶表示部上方近傍のトッププレート5上に、高温の調理器具(例えば天ぷらを行なった直後の鍋)が置かれている場合も考えられるので、その鍋を使用者に注意喚起して移動させればよい。
しかし、異常状態を調理器自体で直接是正できないものと判断される異常データを受けた場合(前記のように、使用者に鍋の移動を促すことも含まれる)は、ST−10から直ちに異常表示の動作1(ST−13)に入る。
【0114】
そこで、是正処理が可能であると判断された異常情報については、異常の是正処理が実行される。例えば、前記したように、中央表示・入力部80の温度がその液晶表示部の耐熱温度(例えば70℃)よりも20℃以上低くはなく、15℃低い(つまり55℃である)場合は、その液晶表示部を冷却用ファン262によって強力に冷却するため、冷却用ファン261および冷却用ファン262の双方の供給電力を平常時よりも5%増加させて運転を継続する(異常是正処理実行:ST−11)。
【0115】
そして、冷却用ファン261および冷却用ファン262を強運転にしてから30秒間間隔で監視し、所定時間経過後(例えば3分後)に、再度、中央表示・入力部80の温度を温度センサーS3により測定した検出温度が、かかる是正処理を実行する前より悪化し、60℃を超えている場合は、「危険状態」であると判断する(ST−12)。
【0116】
そして、中央表示・入力部80が異常高温になっているとの警報メッセージをその液晶表示部にて表示する。具体的には表示エリアEに文字で異常の内容を表示する(ST−13)。
そして、この異常高温が例えば1分以内に解消されない場合には、通電制御回路200は、49℃以下に低下するまで(但し、最長でも例えば5分間)冷却用ファン261および冷却用ファン262を運転した後、予備電源400に接続を切り換え、電源スイッチ201を強制的に開放し、商用電源202から切り離す(ST−14)。
これにより中央表示・入力部80の液晶表示部が高温で変形したり焼損したりする事故を未然に防止することができる。
【0117】
そして、中央表示・入力部80に異常表示1(ST−13)した時点から所定時間(例えば10分間)経過後、駆動回路244を介して中央表示・入力部80の通電を遮断する(ST−14)。
そして、通電制御回路200の不揮発性メモリー(図示せず)に、異常発生後のST−10からST−14までの経緯、異常な温度データ等を記憶させる(ST−15)。
以上で異常処理1が終了する。
【0118】
次に、図18において調理前異常監視処理を終えた後に調理モードに移行した場合について説明する。図20は右加熱コイル60R(右IH)を使用した場合の例である。まず前面操作部10の操作ダイアル12Rを「右か左へ」回す(回した量に応じて火力が設定される(ST−16))。
【0119】
前面操作部10からの操作信号が通電制御回路200に入力され、また、上面操作部20からの各種入力キー(95など)操作信号が通電制御回路200に入力され、火力レベルや加熱時間などの調理条件が設定される(ST−17)。
【0120】
通電制御回路200が駆動回路228を駆動し、右加熱手段回路206Rを駆動する。また、中央表示・入力部80が駆動回路244に駆動されるので、その表示エリアC1、C2には火力や調理時間などの調理条件が表示される(ST−18)。
【0121】
駆動回路228はIGBT225のゲートに駆動電圧を印加するので、加熱コイル220に高周波電流が流れる(ST−19)。
これにより加熱コイル220からの高周波磁束により鍋が高温になる(ST−20)。
これ以後は電磁誘導過熱調理動作(調理モード)に入る(ST−21)。
【0122】
図20に示したように、調理中の異常監視制御は、異常加熱監視処理(ST−22)、異常電圧監視処理(ST−23)、異常電流監視処理(ST−24)の3つの監視段階を有している。
【0123】
異常加熱監視処理(ST−22)は、図18のST−7に示したのと同様であるが、加熱調理を開始した後であるから、過熱の原因としては左加熱コイル6L、右加熱コイル6R、中央加熱手段7などが加わる(但し、図20に示す例では右加熱コイル6Rを使用した場合であるので、右加熱コイル6Rが過熱の有力な原因になり得る)。
また、異常電流監視処理(ST−24)は、前記したように誘導加熱に不適当な鍋などが用いられた場合や、何らかの事故などによって正規の電流値に比較して過少電流や過大電流が検出された場合、を監視するものであり、この異常の対処方法のひとつは、通電制御回路200により駆動回路228を介してIGBT225を制御し、瞬時に誘導加熱コイル220の通電を停止することである。
【0124】
異常加熱監視処理は、通電制御回路200が、ST−25に示すように加熱(調理)終了信号を受け取った場合、または使用者からの加熱停止指令信号を受け取った場合、に終了する。この一連の加熱異常監視制御の中で異常であると判定された場合は、異常処理2で処理される。これについては図22を参照して別途説明する。
【0125】
異常監視制御は、図21に示すように各種加熱手段の調理中における異常監視制御の段階と、調理器本体1の異常監視制御の2段階から構成されている。
調理中の加熱手段異常監視は、右加熱コイル6Rの異常監視のST−26、左加熱コイル6Lの異常監視のST−27、中央ヒータ7の異常監視のST−28、グリル調理等を行なう加熱室19の異常監視のST−29からなる。
【0126】
また、調理中の調理器本体1の異常監視制御は、本体右電気制御基板部(右側ダクト272Rの内部)の温度異常監視(ST−30)、本体左電気制御基板部(左側ダクト272Lの内部)の温度異常監視(ST−31)、中央表示・入力部80の温度異常監視(ST−32)から成る。このST−32は、前記ST−7(図18参照)と同様の監視処理である。
【0127】
次に、実際の調理過程における異常時の処理について図22を基に説明する。また、異常発生状態における中央表示・入力部の表示画面の遷移(画面1〜画面12)を示した図23〜図35を参照する。
図21のST−26〜ST−32の何れかにおいて「異常あり」と判定された場合は、図22の「異常時処理2」に移行する。
例えば、ST−26では、温度センサーS2の検出温度が280℃になった場合は、異常高温と判定される。ST−32では、温度センサーS3の検出温度が、中央表示・入力部80の液晶表示部の耐熱温度(例えば70℃)よりも21℃以下低い(49℃以下)を超えて50℃になった場合は、異常高温と判定される(前記のように、280℃、50℃がそれぞれの異常に関する判定基準値となっている)。
異常時処理2では、最初に異常是正可否判定が行なわれる(ST−34)。異常時処理2は、図19の異常是正可否判定のST−10と基本的な考え方は同じである。
【0128】
異常が是正可能なものであるとST−34で判断された場合は、次に異常が発生したのが加熱手段(左加熱コイル6Lや右加熱コイル6R、中央加熱手段7など)であるかどうか判断される。
すなわち、これ以前に特定の加熱手段(例えば右加熱コイル6R)に加熱指令が行なわれていて、その異常発生時点では調理加熱中であった場合は、当該加熱手段の異常監視ステップ(ST−26)からの情報で右加熱コイル6Rが異常発生源と判定できる。
また、同様に右加熱手段回路206Rの電流検出センサー227から異常電流が通電制御回路200に送出されていた場合にも、右加熱コイル6が異常発生元であると判定することができる。
【0129】
加熱手段で異常が発生したと判断された場合は、ST−36に示すように中央表示・入力部80において当該異常加熱手段の表示エリアが拡大処理される。例えば右加熱コイル6Rで異常が発生した場合は、表示エリアC2が拡大される(画面3、4)。もし何れの加熱手段でも異常が発生したものではないという判断が下された場合(加熱手段は全て停止中であることから分かる)、例えば中央表示・入力部80の温度が異常に上昇したような場合には、表示エリアFの面積を数倍まで拡大し、そのエリアに異常の内容を明示する(ST−37、画面2参照)。
【0130】
表示エリアC2が拡大された状態を使用者が十分認識できる時間維持した後(例えば数分後)に、自動的に元のエリア面積の画面表示に戻り、画面4に示すように異常が発生している右加熱コイル6Rの名称の下に「高温異常」という警告表示が赤い文字などで表示される。なお、この画面4に戻ることを自動的にせず、使用者が十分確認し、確認のキー操作を行なった場合に画面が元の状態に戻るようにしても良い。
【0131】
または、画面4と画面5との切り換えを使用者が目視で確認できる速度(所定時間)間隔で行い、交互に画面が表示されるようにしても良い。このような表示を行い、使用者に異常状態を是正するための注意喚起や協力、確認を求めるメッセージを表示エリアEで行なう。画面4、5の例では、本体の排気口74、75(図1参照)の上方を調理器具等で塞いだり、吸気孔375(図3参照)の後ろを布やその他の物で塞がないように注意喚起している。
【0132】
次に、異常是正可能と判断された異常に対しては、ST−39で異常是正処理が実行される。例えば、右加熱コイル6Rが異常高温になっていると判定された場合は、次の順序で通電制御回路が是正指令を発する。
1)右加熱手段の発熱コイルを空冷している冷却用ファン262と、その上流側にある冷却用ファン261の回転数を増加させるため、その通電量を平常運転時に比較して(例えば5%)増大させ、冷却風量を増加させる。この状態を1分間継続しても改善の効果が現れない場合は、次に
2)右加熱手段の火力(電力)を(使用者が設定したものから)下げる。例えば、1段階下の火力、300W下の火力、又は10%の火力、の3者の内で、最大の火力までダウンさせる(3kW火力で使用していた場合は、2.7kWに下げる)。なお、画面5の通り、表示エリアC2では火力を自動的に下げることを予告表示している(なお、このような火力ダウン処理を数回繰り返すことも有効な対策であるが、説明の都合上、1回の火力ダウンだけの処理の場合について説明する)。
【0133】
画面4又は画面5の状態から所定の短時間以内(右加熱コイル6Rで異常が発生し、表示エリアC2が拡大された時点から、例えば1分〜3分以内)に、高温異常状態が解消したかどうかを確認するため、通電制御回路200は再度異常の有無を再度判定する(ST−40)。
なお、温度検出自体が数秒おきに行なわれており、通電制御回路200はその都度異常の有無を再判定しているので、1分以内でも、右加熱コイル6Rの温度センサーS2の検出温度が所定温度(例えば、300℃に)、あるいは液晶表示部の温度センサーの検出温度が所定温度(例えば70℃)になった場合、通電制御回路200はその異常の有無の再判定処理(ST−40)で、「危険状態」と判定する(ST−41)。
異常状態の判定がされた場合は、直ちに画面6又は画面7に表示したように、右加熱コイル6Rの通電を停止する(ST−42)。
そのため使用者が画面6や画面7、画面8を見れば、温度異常上昇で自動停止したことが容易に理解できる状態になる。
【0134】
再判定処理(ST−40A)では、図21のST−26〜32で異常と判定された判定基準値以下(例えば、右加熱コイル6Rの温度が280℃未満に、また中央表示・入力部80の温度が49℃以下)に戻っていないかぎり、正常な加熱調理動作(正常調理モード、図21のST−21参照)には復帰させず、再判定処理のST−40に処理を戻すことを繰り返す。判定基準値以下に復帰したことが判定された場合は、図20のST−21に戻し、以後、図21に示した加熱手段異常監視と本体異常監視が調理中に継続して行なわれる。
【0135】
なお、右加熱コイル6Rの通電停止指令を出し、右加熱手段の通電は停止される(ST−44)。
しかしながら、その加熱手段の発熱コイルを冷却している冷却用ファン262は以後も2分間〜5分間運転継続する(但し、冷却ファン262からの異常電流が検出される等、冷却ファン自体の故障であることが判明した場合は、その冷却ファンへの通電も同時に停止する。また、この運転継続時間は、通電停止までの温度上昇の様子や室内気温、加熱手段の運転火力の大小等の条件に対応して通電制御回路200が予め決められた算式や数値テーブルから決定する)。
これにより右加熱コイル6Rが冷却ファン262からの送風停止直後から急激に温度上昇するというオーバーシュート問題も未然に防ぐことができる。また、中央表示・入力部80の温度が高くなるという弊害も防ぐことができる。
【0136】
一方、右加熱コイル6Rの使用中に、中央加熱手段7も使用されていた場合、冷却用ファン262の運転と同時に冷却用ファン315も運転されているので、この場合は右加熱コイル6Rの通電を停止しても、冷却用ファン262は運転を継続させる。
何故ならば、図2に示すように中央加熱手段7は通電開始後短時間で高温になることが特長であるので、その加熱手段7の周囲の空気を冷却していないと、上方空間275の後部やトッププレート5が高温になるからである。但し、右加熱コイル6Rが強火力(例えば3kW)で使用されている状況と異なるので、右加熱コイル6Rは発熱を停止するので、左側にある冷却用ファン262の運転は弱運転に切り換えて継続される。
また、冷却用ファン262と同期して運転される冷却用ファン261も右加熱コイル6Rが通電停止され、その電源部分を構成する電気部品371Rは自己発熱しない状況にあるので、弱運転に自動的に切り換えられる。
【0137】
異常状態で停止した加熱手段の表示エリアにはその旨の表示が行われ、例えば、右加熱コイル6Rを異常高温で停止した場合は、画面5から画面6、画面7を経て、画面8に示すように面積が拡大された表示エリアC2に、異常高温停止した旨が文字で示される(ST−46)。
なお、この状態で所定時間表示を継続した後、表示エリアC2の面積は、画面9に示すように他の加熱コイル6Lの表示エリアA2と同等程度にまで戻り、他の加熱手段の調理進捗状態や設定条件の確認が平常時と同様にできるようになる。この場合でも、画面9に示すように右加熱コイル6Rは異常高温で停止中であることを表示し、また表示キー84、100〜104の何れにも「右IH」という表示はさせない(画面9に示す通り)。
【0138】
また、画面9の状態で、仮に左加熱コイル6Lの加熱時間を変更したい場合、「左IH」という表示がされている表示キー100に対応したファンクションキー95を押せば、画面10に示すような画面に変わる。画面10の状態で設定時間を変更したい場合、時間を増やす表示キー(→)102に対応するファンクションキー97を押せば、変更後の時間枠のところに1分単位で20分から加算した数字が表れる。
【0139】
これと同時にガイドエリアEには、キー操作に参考になる情報が表示される。例えば、25分に設定したい場合、「25」の画面になった時点で、決定キーに相当する表示キー103の対応するファンクションキー98を押せば、25分に変更確定し、残り時間もその変更後の時間に併せて自動的に変更される。
例えば、前記時間変更が速やかに行われれば、残り時間10分という表示は15分に変更になり「残り時間も変更になりました」と表示される(画面12の状態)。画面11に示したように、左加熱コイル6Lの表示エリアA2の面積は、使用者が調理時間の確認や入力を容易にできるように自動的に大きく拡大される。
【0140】
なお、何れの加熱手段も動作していない状態で危険状態が発生した場合は、画面2に示すように、例えば中央表示・入力部80の液晶画面部分が異常高温になった場合は「高温の鍋がトッププレートの上に置かれていないか確認して下さい。中央ヒータで加熱中の鍋が、所定の位置にあるか確認して下さい」などの注意喚起が行われる(ST−43)。
そして、通電制御回路200は予備電源400に電源を切り換え、商用電源202を遮断する(ST−53)。
さらに、異常表示を一定時間経過し続け、その後自動的に中央表示・入力部80の駆動を停止し、液晶画面の表示を消す(ST−47)。
【0141】
以上のように、実施の形態1においては、少なくとも2つ以上の加熱手段(左加熱コイル6L、右加熱コイル6R、中央加熱手段7)に共通して使用される表示手段を備えており、該加熱手段の加熱量や加熱時間等の調理条件を入力する入力手段と、該入力手段から入力された前記複数加熱手段の調理条件を画面上に表示する表示手段と、前記加熱手段と加熱手段以外の電気部品の異常な運転状況を検知し、それら加熱手段と電気部品及び表示手段を制御する制御手段とを備え、
前記表示手段の表示画面上には、各加熱手段に対応した表示エリアが用意され、
前記制御手段は、加熱手段と前記電気部品が正常に運転されている状態で前記表示エリアに加熱手段の加熱条件を表示すると共に、加熱手段に異常が発生した状態では当該異常に関係した加熱手段に対応した前記表示エリアにおいて、その異常発生を表示するようにし、
前記電気部品に異常が発生した状態では、前記表示手段の表示画面上で前記表示エリアとは異なるガイドエリアにおいて、当該異常発生を表示するようにしている。
【0142】
したがって、多種類の調理に対応できる調理器において、煩わしい調理条件の確認や調理実行の状況が共通の画面を見ながら実行できる。しかもその画面に各加熱手段と電気部品の異常発生状態も表示されるので、使用者が調理の途中でも異常の発生を迅速、かつ容易に認識でき、安全性が向上する。
また異常加熱等の異常状態に対処して調理器側で加熱手段やその他電気部品などを自動的に停止した場合でも、その停止状況にあることを使用者に報知し、無用な混乱を招かないようにすることができる。
【0143】
また、調理器の上面部(トッププレートの下方含む)に液晶表示面等の表示手段を設けると、使用者が調理の途中でもそれを視認しやすいが、調理器の上面は複数の加熱手段による加熱スペース(鍋を置くスペースなど)が必要であり、表示の情報量を増やすために単純に表示手段を大型化し、表示面積を広くするという手法が採用できない。しかし、実施の形態1では、一つの画面を調理条件の設定や確認、異常状態の表示などの場面で有効に活用しているので、前記のような加熱スペースの制約がある中でも、表示手段としての機能を十分に発揮させることが可能になる。
【0144】
また、中央表示・入力部80には、特定の加熱手段だけの調理条件を表示させた場合、該調理の特有の注意事項、又は被加熱物の種類等の参考情報が自動的に表示されるガイドエリア81Eを設け、このガイドエリアに異常時の情報やその対処に関する情報等も異常時に表示させるようにしたので、調理条件の入力操作や調理の手助けをすることができ、利便性が向上すると共に、異常時での対処方法や異常運転しない使用方法等の注意喚起も出来、使用者がより安心して、より安全に使用できる環境を提供できる。
【0145】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る加熱調理器(図示しない)は、加熱手段の何れかの異常発生時には、その加熱手段の表示エリアの画面が他の加熱手段の画面とは異なる色彩や明度で変化し、かつその表示エリアに異常状態を文字・図形などで表示するようにしたものである。
具体的には、例えば、左加熱コイル6Lの対応表示エリアA2と、中央加熱手段7の対応表示エリアB2と、右加熱コイル6Rの対応表示エリアC2の色を統一しておき(例えば青系統)、各加熱手段のいずれかで異常が発生した場合、異常が発生した加熱手段の表示エリアA2、B2、C2のいずれかの全域を黄色に変更して注意喚起し、調理器を停止しなくてはならないような重大な状況、危険状態になった場合は、その黄色の表示エリアをオレンジ系統の色にして表示する。
【0146】
つまり「青→黄色→オレンジ」というように表示エリアの画面の色を変えることで使用者が平常時と異なったことを容易に理解することができる。また、ガイドエリアEの部分も、正常運転時の色と、異常発生検知後の色を明確に変え、使用者に対する注意喚起効果、視覚効果を高めるようにしてもよい。
なお、本発明において使用者に対する注意喚起効果を高める手段は、図示するものに限定するものではなく、異常の程度に応じて、当該表示エリアの面積を変動させたり、照度を変更(含む点滅)させたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、調理の加熱条件を共通の画面で設定すると共に、加熱条件や異常状態を容易且つ確実に確認することができるため、事業用および家庭用の各種加熱調理器として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1:加熱調理器本体、5:トッププレート、6R:右加熱手段、6L:左加熱手段、7:中央加熱手段、10:前面操作部、19:加熱室、20:上面操作部、21:操作部、22:操作部、23:中央操作部、40R:火力表示ランプ、40L:火力表示ランプ、70:ドア、80:中央表示・入力部、91:入力キー群、83:入力キー、95〜99:入力キー、84:表示キー、100〜104:表示キー、200:通電制御回路(制御手段)、201:主電源スイッチ、206R:右加熱手段回路、206L:左加熱手段回路、207:中央加熱手段用回路、208:グリル・オーブン用加熱手段用回路、260:ファン駆動回路、261:冷却用ファン、262:冷却用ファン、263:冷却用ファン、274:下方空間、275:上方空間、280:液晶基板、S1〜S9:温度センサー、311温度検出回路、315:冷却用ファン、316:冷却用ファン、A1:第一の表示エリア、A2:第二の表示エリア、B1:第一の表示エリア、B2:第二の表示エリア、C1:第一の表示エリア、C2:第二の表示エリアC2、E:ガイドエリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理を行うための複数の加熱手段と、
該加熱手段を用いて行う調理メニューを選択し、加熱量を含む制御条件をキー入力する入力手段と、
該入力手段から入力された制御条件を表示する表示手段と、
異常な運転状況を検知し、加熱手段と表示手段を制御する制御手段とを備え、
前記表示手段には、前記加熱手段のそれぞれの加熱量に関する第一条件を表示する第一表示エリアと、
前記加熱手段のそれぞれの調理時間および設定温度を含む非加熱量に関する第二条件及び異常時の温度や電流、電圧を含む物理量異常状態を表示する第二表示エリアと、
を設け、
前記第二条件が設定された特定の前記加熱手段において異常が発生した場合には、当該異常が発生した加熱手段に対応した前記第二表示エリアの面積を、他の前記加熱手段に対応した前記第二表示エリアの面積よりも大きくし、
その拡大された第二表示エリアにおいて異常状態を文言表示すると同時に、他の前記加熱手段の前記第一表示エリアまたは前記第二表示エリアの一方または両方において、当該他の加熱手段の第一条件または第二条件の一方または両方を表示したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
加熱調理を行うための複数の加熱手段と、
該加熱手段を用いて行う調理メニューを選択し、加熱量を含む制御条件をキー入力する入力手段と、
該入力手段から入力された制御条件を表示する表示手段と、
異常な運転状況を検知し、前記加熱手段と前記表示手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記表示手段の表示画面上に、前記加熱手段のそれぞれの加熱量に関する第一条件を表示する第一表示エリアと、前記加熱手段のそれぞれの調理時間、設定温度を含む非加熱量に関する第二条件及び異常時の温度や電流、電圧を含む物理量異常状態を表示する第二表示エリアと、
を設け、
前記制御手段は、前記第二条件の設定状態が設定された特定の加熱手段で異常が発生した場合には、当該異常が発生した加熱手段に対応した前記第二表示エリアの面積を、他の前記加熱手段に対応した第二表示エリアの面積よりも大きくし、
異常状態にある前記加熱手段の情報と、他の前記加熱手段の第一表示エリアまたは第二表示エリアの一方または両方に表示されていた当該他の加熱手段の第一条件又は第二条件の情報と、が同時に表示される第一画面と、
異常状態にある加熱手段の情報を文言表示する第二画面とを用意し、
前記第一画面または前記第二画面が、前記制御手段によって前記拡大した表示エリアに交互に表示されることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
前記第二画面では、異常状態にある前記加熱手段の情報が、前記第一画面における情報に参考情報や異常の発生原因、点検項目を含む関連情報を付加して表示されることを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御手段は、異常状態の内容又は危険度に応じて二段階の対応が可能となるように構成され、
前記二段階の最初の段階では異常を是正するように前記加熱手段を制御し、前記二段階の第二段階では異常が発生した前記加熱手段を停止すると共に、当該停止した加熱手段を前記表示手段にて表示させることを特徴とした請求項2又は3記載の加熱調理器。
【請求項5】
上面にトッププレートを備える本体と、
このトッププレートの下方に設置された加熱調理を行うための複数の加熱手段と、
該加熱手段の加熱条件を入力するために前記本体上面に設けた入力手段と、
該入力手段から入力された加熱条件を画面上に表示する表示手段と、
前記加熱手段の異常な運転状況を検知し、当該加熱手段及び表示手段を制御する制御手段とを備え、
前記表示手段の表示画面は、前記本体の上面から目視可能に構成され、かつ各加熱手段に対応した表示エリアが用意され、
前記制御手段は、加熱手段が正常に運転されている状態で前記表示エリアに加熱手段の加熱条件を表示するとともに、加熱手段に異常が発生した状態では当該異常に関係した加熱手段に対応した前記表示エリアにおいて、その異常発生を文言表示することを特徴とする加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2013−100985(P2013−100985A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−17210(P2013−17210)
【出願日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【分割の表示】特願2011−142794(P2011−142794)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】