説明

加熱調理装置

【課題】被加熱物の予熱に要する時間の短縮化を図ることができる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】加熱室11内に3本の管ヒータを備える赤外線発生器20を有し、加熱室11内に置かれた食品12に対する予熱開始時に、加熱室11内に熱風を供給する熱風供給器14の循環ファンヒータ16を運転することなく赤外線発生器20の3本の管ヒータ及び熱風供給器14の循環ファン15を連続運転する予熱制御を行い、加熱室温度センサ25により検出された加熱室11内の温度が所定の温度以上になったときには、熱風供給器14の循環ファンヒータ16及び循環ファン15のみを連続運転するような予熱制御を行う。これにより、食品12の予熱に要する時間の短縮化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブン機能を備えた加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した加熱調理装置として、特許文献1で開示されたものがある。この特許文献1は、加熱室外に設けた熱風循環用のヒータに通電し、このヒータの発熱により熱風を発生させるものであり、オーブン予熱も上記ヒータを発熱させて行うものである。
【特許文献1】特開2005−233601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の加熱調理装置は、熱風循環用のヒータが金属管で覆ったシーズヒータであるため、ヒータ立ち上がりが遅く、その分、オーブン予熱完了までの時間が遅くなる。また、被加熱物を収容する加熱室とは別のヒータ室にて加熱室内の空気を吸引して該空気を加熱し、加熱した空気を加熱室に送って予熱を行うところから、この点ンでも予熱に時間がかかるという問題がある。
【0004】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、被加熱物の予熱に要する時間の短縮化を図ることができる加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の加熱調理装置は、前面開口が設けられた加熱室と、前記加熱室内に設けられ光を発生させる少なくとも1本の第1のヒータと、前記加熱室外に設けられ熱を発生させる少なくとも1本の第2のヒータと、前記加熱室外に設けられ、前記加熱室内の空気を吸い込んで前記第2のヒータにより加熱された空気を前記加熱室内に送る循環ファンと、前記第2のヒータを運転することなく、前記第1のヒータ及び前記循環ファンを連続運転することによって前記加熱室内に載置された被加熱物の予熱制御を行う制御部と、を備えた。
【0006】
上記構成によれば、光を発生させるヒータはシーズヒータに比べ瞬時的に立ち上がって高温になることからその分予熱時間の短縮が図れるとともに、このヒータが加熱室内にあって加熱室内に直接輻射熱を放射することから加熱室の内壁を温度上昇させることにもなり、ヒータの熱を無駄なく予熱に利用でき、被加熱物の予熱に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0007】
また、上記構成において、前記加熱室内の温度を検出する温度検出手段を更に備え、前記制御部は、前記被加熱物の予熱開始時に、前記第1のヒータ及び前記循環ファンのみを連続運転するような予熱制御を行い、前記温度検出手段により検出された前記加熱室内の温度が所定の温度以上になったときには、前記第2のヒータ及び前記循環ファンのみを連続運転するような予熱制御を行う。
【0008】
上記構成によれば、加熱室内の温度が所定の温度になるまで第1のヒータ及び循環ファンのみの連続運転を行い、当該温度以上になると、第2のヒータ及び循環ファンのみの連続運転を行うので、第1のヒータを発熱し続ける場合に懸念される装置天板の異常過熱を防止することができる。
【0009】
また、上記構成において、前記加熱室内に蒸気を発生させる蒸気発生手段を更に備え、前記第1のヒータのうち少なくとも1本は、前記蒸気発生手段により発生された蒸気を透過する光を発生させる蒸気透過型のヒータである。
【0010】
上記構成によれば、第1のヒータの少なくとも1本から発生する光が水蒸気を透過するので、被加熱物に対する加熱を効率良く行うことができ、併せて水蒸気を併用して被加熱物を加熱する際、被加熱物の表面の仕上がりを向上させることができる。
【0011】
また、上記構成において、前記制御部は、前記第1のヒータへの突入電流を防止するような制御を行う。
【0012】
上記構成によれば、第1のヒータへの突入電流を防止する制御を行うので、過大突入電流による第1のヒータの断線及び回路の損傷を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、加熱室に光を発生させるヒータを設けて、当該ヒータを加熱室外の循環ファンと同時に動作させるので、被加熱物の予熱に要する時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る加熱調理装置を正面から見て左右方向に切断した断面図、図2は本実施の形態に係る加熱調理装置を側面から見て左右方向に切断した断面図、図3は本実施の形態に係る加熱調理装置を上方から見て上面の天板を切断した断面図である。また、図4は光の波長に対する水蒸気の光を吸収する割合を示すグラフである。
【0016】
図1〜図3において、本実施の形態の加熱調理装置10は、2つのアンテナを回転させる方式を採用した電子レンジであり、被加熱物である食品12を加熱するための加熱室11と、加熱室11内に熱風を供給して被加熱物を加熱する熱風供給器14と、蒸気を透過し易い赤外線を発生して被加熱物を加熱する赤外線発生器20と、加熱室11の底面11aよりも下側から加熱室11内に高周波を供給して被加熱物を加熱する高周波発生器40と、加熱室11内に蒸気を発生させる蒸気発生器(蒸気発生手段)50とを備えている。なお、本実施の形態では、蒸気発生器50を加熱室11内に設けたが、加熱室11外で発生させた蒸気を加熱室11内に供給するようにしてもよい。
【0017】
熱風供給器14は、加熱室11の奥の仕切板11cの後方に設けられており、加熱室11内の空気を撹拌・循環させる循環ファン15と、加熱室11内を循環する空気を加熱するリング状の循環ファンヒータ(第2のヒータ)16とを有する。なお、この循環ファンヒータは従来同様シーズヒータで構成してあり、立ち上がりの遅いものである。熱風供給器14は、循環ファン15によって加熱室11内の空気を吸い込んで2つの循環ファンヒータ16にて加熱し、加熱した空気を仕切板11cに設けられている排出孔14bから加熱室11内に送る。
【0018】
赤外線発生器20は、加熱室11の上部に設けられており、複数の波長の赤外線を発生する3本の管ヒータ(第1のヒータ)21を有している。3本の管ヒータ21は、図2に示すように、加熱室11の天井面11bに離間配置されており、そのうちの天井面11bの中央に設けられた管ヒータ21がアルゴンヒータ21aであり、そのアルゴンヒータ21aの左右両側に設けられた管ヒータ21がミラクロンヒータ21bである。
【0019】
図5は、アルゴンヒータ21aを側面から見た図である。この図において、アルゴンヒータ21aは、石英ガラス製の円筒形状をした管部材22と、この管部材22の内部に収容されるコイル状の発熱部材23を有している。管部材22は、両端部の断面が絞られて碍子22aが取り付けられている。また、管部材22には内部に不活性ガスであるアルゴンガスを封入するためのガス注入口22bが設けられており、ガス注入口22bはガス注入後に封じられる。発熱部材23にはタングステン線が用いられる。発熱部材23は、コイル状に巻回された螺旋部23aと螺旋部23a間に設けられた直線部23bからなる。発熱部材23は、管部材22の内面に接触する支持部材24によって支持される。支持部材24は直線部23bを支持する。支持部材24を直線部23bに設けることで、支持部材24が螺旋部23aの発熱を阻害しないので、発熱効率を低下させることなく支持することができる。アルゴンヒータ21aは、前記シーズヒータに比べ動作の立ち上がりが格段に早く、瞬間的に熱を発するもので、ミラクロンヒータ21bと比較してもその動作の立上りが早いという特徴を有している。
【0020】
ミラクロンヒータ21bは、従来から用いられているものであり、アルゴンヒータ21aより波長が長く、前記シーズヒータやマイカヒータ(マイカ(雲母)に帯状に電熱線を巻き付けた板状のヒータ)などと比較して立上りが早く、食品12の表面に焦げ色を付けるのに適している。また、ミラクロンヒータ21bはコストが安いという特徴を有している。ミラクロンヒータ21bを電子レンジに搭載する場合、ミラクロンヒータ21bがマイクロ波を吸収し発熱してしまい、使用しているガラス材料を溶かす恐れがあるので、誘電率が比較的低くマイクロ波を吸収し難い白色管のものを採用するのが望ましい。
【0021】
アルゴンヒータ21aは、食品自身より発生した水蒸気や蒸気発生器50からの蒸気に吸収されにくい波長の赤外線を輻射し、加熱室11内に存在する水蒸気を透過して食品12に輻射して調理を行う。アルゴンヒータ21aが発生する赤外線の波長が図4に示す水蒸気吸収率が低い領域の波長である1.5μm以上1.7μm以下にピークを有し、ミラクロンヒータ21bが略3μmより長い波長の領域にピークを有する構成としている。
【0022】
これによって、水蒸気を透過する1本のアルゴンヒータ21aから赤外線が加熱室11へ輻射されることから、加熱室11に置かれた食品12を直接より素早く均一に加熱でき、赤外線が食品12の表面に直接輻射され食品内部にまで素早く温度が伝わり、アルゴンヒータ21aの両側に設けた2本のミラクロンヒータ21bから遠赤外線が輻射されると食品12の表面がパリッと仕上がり焦げ目を素早く付けることが可能となる。
【0023】
図1において、高周波発生器40は、マグネトロン41と、マグネトロン41から発生された高周波を加熱室11内に導く導波管42と、導波管42で導かれた高周波を加熱室11全体に分散させる電波撹拌用の回転アンテナ43とを有する。
【0024】
図6は、加熱調理装置10の概略構成を示すブロック図である。以下、この図を参照して加熱調理装置10について更に説明する。加熱調理装置10は、被加熱物である食品12を収容する加熱室11に給電により発熱する加熱源である高周波発生器40からの熱と、給電により加熱する蒸気発生器50からの蒸気との少なくとも一方を供給して食品12を加熱処理する。加熱調理装置10は、上述した熱風供給器14、赤外線発生器20、高周波発生器40及び蒸気発生器50の他に、加熱室温度センサ(温度検出手段)25、オーブン予熱キー等の複数のキーを有するスイッチ部27、各種情報を表示する表示部28及び電源部29を備えている。
【0025】
スイッチ部27及び表示部28は、操作パネル26上に設けられている。スイッチ部27が操作された場合、その情報が制御部13に入力される。例えば、オーブン予熱キー(図示略)が押下された場合、予熱を行うための情報が制御部13に入力される。表示部28には、動作モード(オーブン、グリル、スチーム等)、設定温度、時間(設定時間、経過時間)等の情報が表示される。加熱室温度センサ25は、サーミスタや赤外線センサ等で構成され、加熱室11の温度を測定する。加熱室温度センサ25による温度検出値は制御部13に入力される。
【0026】
制御部13は、図示しないCPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)を備えている。CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータに従って制御を行う。制御部13は、オーブン予熱キーが押下されて予熱を行うための情報が入力された場合、加熱室11内に熱風を供給する熱風供給器14の循環ファンヒータ16を運転することなく、赤外線発生器20の管ヒータ21(アルゴンヒータ21aとミラクロンヒータ21b)及び熱風供給器14の循環ファン15を連続運転する予熱制御を行う。このまま時間が経過して加熱室温度センサ25により検出された加熱室11内の温度が所定の温度以上になると、前記赤外線発生器20の管ヒータ21の通電を停止させるとともに今度は循環ファンヒータ16に通電を開始し、そのまま循環ファン15を運転し続けて予熱を継続する。
【0027】
また、制御部13は、アルゴンヒータ21aへの突入電流を防止する制御を行う。制御部13は、アルゴンヒータ21aへの突入電流を防止する制御を行うため、図7に示す切替回路30を有している。切替回路30は、図示のように、5つのリレー接点30a〜30eを有しており、それらをオン、オフすることでアルゴンヒータ21aへの突入電流を防止する。アルゴンヒータ21aは、その特性として初期通電時には通電抵抗値が低いため過大な突入電流が流れるので、アルゴンヒータ21aに通電する際には、リレー接点30a、30c、30dをそれぞれ同時にオン(閉状態)にしてアルゴンヒータ21aに対して2本のミラクロンヒータ21bを直列に介挿する。これにより、突入電流を1/3以下にすることができるようになり、過大突入電流によるアルゴンヒータ21aの発熱部材23の断線や回路の損傷を防止することができる。突入電流が終焉し定常状態になった時点でリレー接点30bをオンにすると同時にリレー接点30dをオフにする。2本のミラクロンヒータ21bのみを使用する場合は、リレー接点30b、30c、30dをそれぞれオフにして、リレー接点30eをオンにする。なお、図7において、29aは電源部29の交流電源、29bは電源部29に設けられた回路の保護を目的にしたヒューズである。
【0028】
次に、図8に示すフローチャートを参照して、本実施の形態の加熱調理装置10の動作を説明する。この図において、ユーザがスイッチ部27のオーブン予熱キーを選択して温度設定を行うと、オーブン予熱キー選択を行い(ステップST10)、また温度設定を行う(ステップST11)。このときの温度設定が100〜300℃の範囲で設定されたとする。そして、設定温度がある温度、例えば220℃以上かどうか判定し(ステップST12)、設定温度が220℃以上の場合は、ステップS13に進み、予熱モードのヒータ制御を行う。この予熱モードのヒータ制御では、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bを連続運転状態にする。また、循環ファンヒータ16はオフ状態にし、循環ファン15は連続運転状態にする。この予熱モードのヒータ制御を開始した後、庫内温度が220℃以上か否かを判定し(ステップST14)、220℃以上でなければ、220℃以上になるまでヒータ制御を継続する。
【0029】
庫内温度が220℃以上になったのを加熱室温度センサ25で検出すると、循環ファン15を連続運転状態にしたまま、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bを共にオフ状態にし、また循環ファンヒータ16をオン状態にして予熱を継続する(ステップST15)。そして、予熱完了か否か、すなわち庫内温度が設定された温度に達したか否かを判定し(ステップST16)、予熱完了でなければステップST15のヒータ制御を継続して行い、予熱完了であれば、調理モードのヒータ制御を行う(ステップST17)。この調理モードのヒータ制御では、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bをDuty(デューティ)運転状態にすると共に、循環ファンヒータ16もDuty運転状態にする。また、循環ファン15は継続して連続運転状態を維持する。この調理モードのヒータ制御を開始した後、所定時間を経過したかどうか判定し(ステップST18)、所定時間を経過していなければ、該時間を経過するまで、この調理モードのヒータ制御を行い、該時間を経過した場合は本処理を終える。
【0030】
このように、設定温度が220℃以上に設定された場合は、庫内温度が220℃以上になるまでは、循環ファンヒータ16をオフ状態にしたまま、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bを連続運転状態にすると共に循環ファン15を連続運転状態にする。そして、庫内温度が220℃以上になったのを検出すると、循環ファン15を連続運転状態にしたまま、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bをオフ状態にすると共に循環ファンヒータ16をオン状態にして予熱を継続する。したがって、例えば予熱温度が300℃に設定されていても220℃以降は循環ファンヒータ16で300℃までに温度上昇させるので、加熱室の天井付近に設けられているアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bを利用してそのまま300℃まで予熱する場合に懸念される装置天板の異常過熱が発生することはなく、安心して高温予熱も実現できる。そして、予熱が完了すると、所定時間が経過するまでアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bと循環ファンヒータ16をDuty運転状態にし、循環ファン15は継続して連続運転状態を維持する。そして、所定時間が経過すると、食品12に対する調理が完了する。
【0031】
一方、ステップST12の判定で設定温度が220℃未満であれば、ステップST19に進み、ステップST13と同様の予熱モードのヒータ制御を行う。すなわち、循環ファンヒータ16をオフ状態にしたまま、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bと循環ファン15を連続運転状態にする。そして、予熱完了か否かを判定し(ステップST20)、予熱完了でなければ、予熱完了になるまで予熱モードのヒータ制御を継続し、予熱完了であれば、ステップST17と同様に循環ファン15は継続して連続運転状態にしたまま、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bと循環ファンヒータ16をDuty運転状態にする(ステップST21)。この調理モードのヒータ制御を開始した後、所定時間を経過したかどうか判定し(ステップST22)、所定時間を経過していなければ、該時間を経過するまで調理モードのヒータ制御を行い、該時間を経過した場合は本処理を終える。
【0032】
このように、設定温度が220℃未満の場合は、予熱が完了するまで循環ファンヒータ16をオフ状態にしたまま、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bと循環ファン15を連続運転状態にする。そして、予熱が完了すると、所定時間が経過するまで、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bと循環ファンヒータ16をDuty運転状態にし、循環ファン15は継続して連続運転状態を維持する。そして、所定時間を経過すると、食品12に対する調理が完了する。
【0033】
図9は、200℃までの庫内温度の立上りを、本発明の場合と従来を含む他の場合とを比較したグラフである。この図において、Cvaは、予熱開始からアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bと循環ファン15を同時に連続運転状態にする本発明の温度特性である。Cvbは、予熱開始時にはアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bを連続運転状態にして1分後に循環ファン15を連続運転状態にしたときの温度特性である。また、Cvcは、予熱開始から循環ファンヒータ16と循環ファン15を同時に連続運転状態にする従来の温度特性である。Cvdは、予熱開始からアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bのみを同時に連続運転状態(循環ファン15は停止)にしたときの温度特性である。本発明は、予熱開始からアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bと循環ファン15を同時に連続運転状態にするので、他の場合よりも庫内温度の立上りが早くなっている。すなわち、予熱に要する時間の短縮化が図れていることが分かる。これはアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bの立ち上がりが格段に早く、瞬間的に熱を発することとこれら各ヒータ21a、21bからの輻射熱が加熱室の内壁を加熱して無駄なく(循環ファンヒータ16の場合は熱風供給器14の加熱室とは反対側の壁面を加熱する無駄がある)その熱が利用される、ということによるものと推察される。
【0034】
このように本実施の形態の加熱調理装置10によれば、加熱室11内にアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bを有し、加熱室11内に置かれた食品12に対する予熱開始時に、加熱室11内に熱風を供給する熱風供給器14の循環ファンヒータ16を運転することなく、赤外線発生器20のアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21b及び熱風供給器14の循環ファン15を連続運転する予熱制御を行い、加熱室温度センサ25により検出された加熱室11内の温度が所定の温度以上になったときには、循環ファンヒータ16及び循環ファン15のみを連続運転するような予熱制御を行うので、食品12の予熱に要する時間の短縮化を図ることができる。また、加熱室11内の温度が所定の温度以上になると、循環ファンヒータ16及び循環ファン15のみの連続運転を行うので、加熱室の天井付近に設けられているアルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bを利用してそのまま予熱を継続する場合に懸念される装置天板の異常過熱も防止することができ、また、加熱(調理モード)へのスムーズな移行も可能となる。
【0035】
また、アルゴンヒータ21aから発生される赤外線が水蒸気を透過するので、食品12に対する加熱を効率良く行うことができ、被加熱物の予熱に要する時間の短縮化を図ることができる。すなわち、水蒸気を併用して被加熱物を加熱する際、被加熱物の表面の仕上がりを向上させることができる。
【0036】
また、アルゴンヒータ21aへの突入電流を防止する制御を行うので、過大突入電流によるアルゴンヒータ21aの断線及び回路の損傷を防止できる。
【0037】
なお、本発明の加熱調理装置は、上記実施の形態に限定されるものでなく、適宜な変形や改良等が可能である。例えば、上記実施の形態では、アルゴンヒータ21aと2つのミラクロンヒータ21bの3本の管ヒータ21を設けたが、管ヒータ21の本数はこれに限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、予熱に要する時間の短縮化を図ることができるといった効果を有し、管ヒータを用いて被加熱物を調理する電子レンジ、オーブン、グリル等の加熱調理装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態に係る加熱調理装置を正面から見て左右方向に切断した断面図
【図2】本発明の上記実施の形態に係る加熱調理装置を側面から見て左右方向に切断した断面図
【図3】本発明の上記実施の形態に係る加熱調理装置を上方から見て上面の天板を切断した断面図
【図4】光の波長に対する水蒸気の吸収率を示すグラフ
【図5】本発明の上記実施の形態に係る加熱調理装置に用いられるアルゴンヒータの側面図
【図6】本発明の上記実施の形態に係る加熱調理装置の概略構成を示すブロック図
【図7】本発明の上記実施の形態に係る加熱調理装置の制御部が有する切替回路の構成を示す図
【図8】本発明の上記実施の形態に係る加熱調理装置の動作を説明するためのフローチャート
【図9】200℃までの庫内温度の立上りを本発明の加熱調理装置の場合と従来を含む他の場合とを比較したグラフ
【符号の説明】
【0040】
10 加熱調理装置
11 加熱室
11a 底面
11b 天井面
11c 仕切板
12 食品
13 制御部
14 熱風供給器
14b 排出孔
15 循環ファン
16 循環ファンヒータ
20 赤外線発生器
21 管ヒータ
21a アルゴンヒータ
21b ミラクロンヒータ
25 加熱室温度センサ
26 操作パネル
27 スイッチ部
28 表示部
29 電源部
30 切替回路
30a、30b、30c、30d、30e リレー接点
40 高周波発生器
41 マグネトロン
42 導波管
43 回転アンテナ
50 蒸気発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口が設けられた加熱室と、
前記加熱室内に設けられ光を発生させる少なくとも1本の第1のヒータと、
前記加熱室外に設けられ熱を発生させる少なくとも1本の第2のヒータと、
前記加熱室外に設けられ、前記加熱室内の空気を吸い込んで前記第2のヒータにより加熱された空気を前記加熱室内に送る循環ファンと、
前記第2のヒータを運転することなく、前記第1のヒータ及び前記循環ファンを連続運転することによって前記加熱室内に載置された被加熱物の予熱制御を行う制御部と、
を備えた加熱調理装置。
【請求項2】
前記加熱室内の温度を検出する温度検出手段を更に備え、
前記制御部は、前記被加熱物の予熱開始時に、前記第1のヒータ及び前記循環ファンのみを連続運転するような予熱制御を行い、前記温度検出手段により検出された前記加熱室内の温度が所定の温度以上になったときには、前記第2のヒータ及び前記循環ファンのみを連続運転するような予熱制御を行う請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項3】
前記加熱室内に蒸気を発生させる蒸気発生手段を更に備え、
前記第1のヒータのうち少なくとも1本は、前記蒸気発生手段により発生された蒸気を透過する光を発生させる蒸気透過型のヒータである請求項1又は2に記載の加熱調理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のヒータへの突入電流を防止するような制御を行う請求項1乃至3のいずれかに記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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