説明

加硫ゴムが有する耐熱性の改善方法

【課題】自動車用タイヤの分野において、より簡便に加硫ゴムが有する耐熱性を改善させる方法が求められていた。
【解決手段】加硫ゴムが有する耐熱性を改善させるための、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物を混合して得られる組成物の使用並びに、下記の工程(1),(2)及び(3)を含む、加硫ゴムが有する耐熱性の改善方法(1)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程(2)工程(1)で得られた混合物とゴム成分と硫黄成分とを混練する工程(3)工程(2)で得られた混練物を加硫し、加硫ゴムを得る工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴムが有する耐熱性の改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤの製造に用いられる加硫ゴム用の老化防止剤として、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物が知られている(特許文献1)。しかしながら、かかる老化防止剤を用いて得られる加硫ゴムは、耐熱性が必ずしも十分ではない場合があった。
【0003】
かかる加硫ゴムが有する耐熱性を改善させる方法として、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物からアニリンとアセトンとの縮合物である2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンを蒸留により取り出す工程と、前記工程により得られた2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンを重合させる工程とを含む方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭53−145854号公報
【特許文献2】特開平6−228375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車用タイヤの分野において、より簡便に加硫ゴムが有する耐熱性を改善させる方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 加硫ゴムが有する耐熱性を改善させるための、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物を混合して得られる組成物の使用。
【0007】
[2] 下記の工程(1),(2)及び(3)を含む、加硫ゴムが有する耐熱性の改善方法。
(1)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程
(2)工程(1)で得られた混合物とゴム成分と硫黄成分とを混練する工程
(3)工程(2)で得られた混練物を加硫し、加硫ゴムを得る工程
【0008】
[3] 工程(1)が、ゴム成分の非存在下で実施される[2]記載の改善方法。
【0009】
[4] 工程(1)が、硫黄成分の非存在下で実施される[2]又は[3]記載の改善方法。
【0010】
[5] 工程(1)におけるカルボン酸無水物の使用量が、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物1kgに対して0.6〜5モルである[2]〜[4]のいずれか記載の改善方法。
【0011】
[6] アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物を混合して得られる加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【0012】
[7] アニリンとアセトンとの縮合反応生成物が、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物、及び、一級アミンを含む混合物である[6]記載の加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【0013】
[8] アニリンとアセトンとの縮合反応生成物が、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物、並びに、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及び2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物の合計100質量部に対して、一級アミンを2〜6質量部含む混合物である[6]又は[7]記載の加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【0014】
[9] アニリンとアセトンとの縮合反応生成物と、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物に含まれる一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを混合して得られる[7]又は[8]記載の加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【0015】
[10] アニリンとアセトンとの縮合反応生成物が、硫黄成分の非存在下でアニリンとアセトンとを縮合反応させることにより製造される生成物である[6]〜[9]のいずれか記載の加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、タイヤの製造に用いられる加硫ゴムが有する耐熱性を、より簡便に改善させる方法が提供可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において「加硫ゴムが有する耐熱性を改善させる」とは、例えば、後述するような加硫ゴムの耐熱試験(JIS K6257)において、試験片の引張特性(JIS K6251)を改変させること等を挙げることができる。
【0018】
本発明は、下記の工程(1),(2)及び(3)を有する加硫ゴムが有する耐熱性の改善方法を含む。
(1)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程
(2)工程(1)で得られた混合物とゴム成分と硫黄成分とを混練する工程
(3)工程(2)で得られた混練物を加硫し、加硫ゴムを得る工程
【0019】
以下、上記の各工程(1),(2)及び(3)について、それぞれ説明する。また、かかる説明により、加硫ゴムが有する耐熱性を改善させるための、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物を混合して得られる組成物の使用に係る発明についても説明する。
【0020】
まず、上記工程(1)、即ち、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程について説明する。
【0021】
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物は、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物であることが好ましい。
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物は、下式で示されるアニリンとアセトンとの縮合反応生成物(通常、nが異なる化合物の混合物)を主成分として含む。

(式中、nは0以上の整数を表す。nは0〜5が好ましい。)
【0022】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物は、アニリン1モルに対してアセトン2〜20モルを使用し、それらを反応させて得ることが好ましく、酸性触媒の存在下、アニリンにアセトンを加熱状態で反応させる脱水重縮合反応によって製造されることがより好ましい。アニリンおよび酸性触媒を混合した後、ついで過剰のアセトンを連続的に供給し、未反応分は生成水と共に蒸留により回収することが、常圧下での反応温度保持の点で好ましい。
【0023】
アセトンとアニリンとの反応は、通常、酸性触媒の存在下で実施される。酸性触媒としては、例えば、塩化水素、臭化水素、フッ化水素等のハロゲン化水素;有機スルホン等の有機酸;フッ化ホウ素等のルイス酸;等が挙げられる。好ましくはハロゲン化水素であり、より好ましくは塩化水素である。酸性触媒は、水溶液として使用してもよいし、水溶液以外の液体として用いてもよいし、固体として用いてもよいし、気体として反応系中に導入してもよい。ハロゲン化水素を用いる場合は、水溶液として使用することが好ましい。塩酸を用いる場合は、その濃度が15〜35質量%であることが好ましい。酸性触媒の使用量は、アニリン1モルに対して0.05〜0.5モルが好ましい。
酸性触媒の使用量が0.05モル以上であれば、反応時間が短くてすみ、0.5モル以下であれば、上記式においてnが2以上の縮合反応生成物の量が少なくなるため老化防止性能が向上する。
【0024】
アセトンとアニリンとの反応は、アセトンとアニリンとの反応に不活性な有機溶媒の存在下で実施してもよいし、有機溶媒を実質的に用いることなく実施してもよい。反応温度は100〜150℃の範囲が好ましい。反応温度が100℃以上であると、未反応のアニリンの量が少なくなり、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物の量が増加する。反応温度が150℃以下であると、アセトンの使用量が少なくてすみ、経済的に好ましい。
かかる反応は、通常は2時間〜16時間の反応時間で完結する。比較的大量の酸性触媒を用いると反応時間が比較的短くなる。
反応終点は、反応混合物中のアニリン含量を高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィー等の通常の分析手段により分析して、適宜決定すればよい。
反応終了後、中和等の方法によって触媒を除去し、次いでこれを減圧下に蒸留して有機溶媒と未反応のアニリンを除去することによって、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物を反応混合物より単離することが好ましい。
【0025】
得られる反応混合物は、そのままアニリンとアセトンとの縮合反応生成物としてカルボン酸無水物と混合してもよいし、中和、洗浄、濃縮等の後処理により上記酸性触媒を除去して得られる混合物をアニリンとアセトンとの縮合反応生成物としてカルボン酸無水物と混合してもよい。これらの縮合反応生成物は、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む。
【0026】
本明細書における「一級アミン」は、主としてアニリンに起因して生成し、各種の構造をとりうるが、代表例としては下式の構造の二つが挙げられる。

(式中、mは0以上の整数を表す。)

【0027】
このように、一級アミンは複数種の化合物の総称であり、本明細書において一級アミンの含有量は、全ての一級アミンをアニリン(分子量:93.13)と見なすことにより表される量である。即ち、アミノ基(−NH)1モルを一級アミン93.13gとして換算する。かかる一級アミンの含有量は、具体的には、混合物をクロロホルムに溶解させ、さらに塩酸及びp−ジメチルアミノベンズアルデヒドを加えて試料溶液を調製し、得られた試料溶液の吸光度を測定し、アニリンを用いた検量線により求められる。
【0028】
カルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の芳香族ジカルボン酸の分子内無水物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸の分子内無水物;無水酢酸等の脂肪族カルボン酸の分子間無水物;無水安息香酸等の芳香族カルボン酸の分子間無水物;等が挙げられる。これらのうち、芳香族ジカルボン酸の分子内無水物又は脂肪族ジカルボン酸の分子内無水物が好ましく、芳香族ジカルボン酸の分子内無水物がより好ましく、無水フタル酸がさらに好ましい。
【0029】
カルボン酸無水物の使用量は、一級アミン1モルに対して3〜10モルが好ましく、より好ましくは3〜5モルである。
【0030】
カルボン酸無水物の使用量は、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物1kgに対して0.6〜5モルが好ましく、より好ましくは0.6〜2モルである。カルボン酸無水物の使用量が上記の範囲であれば、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物を混合して得られる組成物と、ゴム成分と硫黄成分とを混練し、次いで加硫して得られる加硫ゴムが有する耐熱性が改善される傾向にあり好ましい。
【0031】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物の混合は、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物の反応に不活性な溶媒の存在下で実施してもよいし、かかる溶媒を実質的に用いることなく実施してもよい。かかる溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;ヘプタン、オクタン、ジメチルヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;等が挙げられる。溶媒を使用する場合、その使用量は、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物1質量部に対して、通常0.5〜10質量部、好ましくは0.5〜2質量部である。
【0032】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物の混合は、硫黄成分の非存在下で実施することが好ましい。かかる硫黄成分については工程(2)で詳述する。
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物の混合は、ゴム成分の非存在下で実施することが好ましい。
【0033】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物を混合させる際の温度は、100〜150℃が好ましい。
【0034】
得られた組成物を、そのまま工程(2)に使用してもよいし、必要に応じて中和、洗浄、濃縮等の後処理を施した後に工程(2)に使用してもよい。かくして得られた組成物を、以下「本組成物」と記載することがある。
【0035】
次に工程(2)、即ち、工程(1)で得られた組成物(本組成物)とゴム成分と硫黄成分とを混練する工程について説明する。以下、本工程で得られる混練物を「本ゴム組成物」と記載することがある。
【0036】
ゴム成分としては、天然ゴム及びジエン系ゴムからなる群より選ばれるゴムが挙げられる。
【0037】
天然ゴムとしては、例えば、未変性の天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、脱蛋白天然ゴムおよびその他の変性天然ゴム等が挙げられる。
【0038】
ジエン系ゴムとしては、例えば、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム等の高不飽和性ゴムが挙げられる。
【0039】
硫黄成分としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、及び高分散性硫黄等が挙げられる。通常は粉末硫黄が好ましく、ベルト用部材等の硫黄量が多いタイヤ部材に用いる場合には不溶性硫黄が好ましい。その使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2〜10質量部、より好ましくは3〜6質量部である。
【0040】
本組成物の使用量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。
【0041】
本ゴム組成物は、さらに、充填剤、加硫促進剤、酸化亜鉛、脂肪酸類、コバルト塩等を含んでいてもよい。
【0042】
充填剤としては、ゴム分野で通常使用されているカーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が例示されるが、好ましくはカーボンブラック及びシリカが使用され、より好ましくはカーボンブラックが使用される。かかる充填剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、30〜80質量部がより好ましい。
【0043】
カーボンブラックとしては、例えば、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の494頁に記載されるものが挙げられ、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、FEF(Fast Extrusion Furnace)、MAF、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)等のカーボンブラックが好ましい。
【0044】
シリカとしては、CTAB比表面積50〜180m/gのシリカや、窒素吸着比表面積50〜300m2/gのシリカが例示され、東ソー・シリカ(株)社製「AQ」、「AQ−N」、デグッサ社製「ウルトラジル(登録商標)VN3」、「ウルトラジル(登録商標)360」、「ウルトラジル(登録商標)7000」、ローディア社製「ゼオシル(登録商標)115GR」、「ゼオシル(登録商標)1115MP」、「ゼオシル(登録商標)1205MP」、「ゼオシル(登録商標)Z85MP」、日本シリカ社製「ニップシール(登録商標)AQ」等の市販品が好ましい。また、pHが6〜8であるシリカやナトリウムを0.2〜1.5質量%含むシリカ、真円度が1〜1.3の真球状シリカ、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイルやエトキシシリル基を含有する有機ケイ素化合物、エタノールやポリエチレングリコール等のアルコールで表面処理したシリカ、二種類以上の異なった窒素吸着比表面積を有するシリカを配合することも好ましい。
【0045】
シリカを配合する場合、ゴム成分100質量部あたり、カーボンブラックを5〜50質量部配合することが好ましく、シリカ/カーボンブラックの配合比率は0.7/1〜1/0.1が特に好ましい。また通常充填剤としてシリカを用いる場合にはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製「Si−69」)、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(デグッサ社製「Si−75」)等、シリカと結合可能なケイ素等の元素またはアルコシキシラン等の官能基を有する化合物、いわゆるシランカップリング剤を添加することが好ましい。
【0046】
水酸化アルミニウムとしては、窒素吸着比表面積5〜250m2/gの水酸化アルミニウムや、DOP給油量50〜100ml/100gの水酸化アルミニウムが例示される。
【0047】
加硫促進剤の例としては、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日社団法人 日本ゴム協会発行)の412〜413ページに記載されているチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
【0048】
具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ジフェニルグアニジン(DPG)が挙げられる。また、公知の加硫剤であるモルフォリンジスルフィドを用いることもできる。充填剤としてカーボンブラックを用いる場合には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のいずれかとジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましく、充填剤としてシリカとカーボンブラックとを併用する場合には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)のいずれかとジフェニルグアニジン(DPG)とを併用することが好ましい。
【0049】
かかる加硫促進剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対し、0.5〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。
【0050】
酸化亜鉛の使用量は、ゴム成分100質量部に対し、1〜15質量部であることが好ましく、3〜8質量部であることがより好ましい。
【0051】
脂肪酸類としてはステアリン酸が好ましく、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、1〜15質量部が好ましく、1〜7質量部がより好ましい。
【0052】
コバルト塩としてはナフテン酸コバルトが例示される。その使用量は、コバルト分としてゴム成分100質量部に対し、0.02〜2質量部が好ましく、0.1〜0.5質量部がより好ましい。
【0053】
さらには、ゴム工業で通常使用されている各種ゴム薬品、例えば劣化防止剤、架橋剤、リターダー、しゃく解剤、軟化剤、石油樹脂、滑剤、可塑剤、粘着付与剤、レゾルシンやレゾルシン系樹脂のような接着剤を必要に応じて併用してもよい。
【0054】
各成分を混練する手順としては、ゴム成分と充填剤とを混練し(以下、「手順1」と記載することもある。)、次いで、手順1で得られた組成物と硫黄成分とを混練する(以下、「手順2」と記載することもある。)という手順が挙げられる。本組成物は、手順1で混練することが好ましい。
【0055】
手順1の混練温度は80〜200℃が好ましく、更に好ましくは110〜160℃の範囲である。
【0056】
手順2の混練温度は60〜110℃が好ましい。
【0057】
かくして混練された本ゴム組成物は、特に自動車用タイヤの内部部材に好適に用いられる。自動車用タイヤの内部部材としてはベルト、カーカス、インナーライナー、アンダートレッド等が例示される。
【0058】
最後に工程(3)、即ち、工程(2)により得られた混練物(本ゴム組成物)を加硫し、加硫ゴムを得る工程について説明する。
【0059】
本ゴム組成物は、特定の状態に加工された後、加硫することにより目的とする製品となる。
【0060】
加硫の条件は目的とする製品により異なるが、通常は120〜200℃程度、1分〜2時間程度の範囲から選択される。
【0061】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物(カルボン酸無水物と混合しない)を配合してゴム組成物を得、これを加硫して得られる加硫ゴムと比較して、本ゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムは耐熱性が改善される。
【実施例】
【0062】
以下、実施例、試験例及び製造例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
製造例1
温度計、攪拌機及び蒸留装置を装備した300mL丸底フラスコに、アニリン46.5g、35質量%塩酸4.4gを仕込み110℃に昇温した。そこにアセトン290.4gを110℃〜140℃で16時間かけて滴下した後、135℃〜140℃で4時間保温した。その後、反応混合物を90℃まで冷却し、トルエンで希釈、水酸化ナトリウム水溶液で中和後、静置分液して水層を除去した。油層中のトルエンを留去した後、さらに内温200℃、減圧度2mmHgで蒸留して低沸点成分を留去することにより、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物80.3gを得た。
【0064】
製造例2:工程(1)
温度計、攪拌機、ディーンスターク装置及びコンデンサーを備えた100mL四つ口丸底フラスコに、製造例1に準じて得たアニリンとアセトンとの縮合反応生成物25.0g及び無水フタル酸3.46gを仕込み、140℃で2時間保温し、本組成物を得た。
【0065】
製造例3:工程(1)
製造例2において、保温条件を120℃で4時間にする以外は製造例2と同様にして本組成物を得た。
【0066】
製造例4:工程(1)
温度計、攪拌機、ディーンスターク装置及びコンデンサーを備えた100mL四つ口丸底フラスコに、製造例1で得たアニリンとアセトンとの縮合反応生成物20.0g、無水フタル酸11.2g及びキシレン40.0mLを仕込み、140℃で3時間保温し、本組成物を得た。
【0067】
製造例5:工程(1)
製造例4において、無水フタル酸を22.3gにする以外は製造例4と同様にして本組成物を得た。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例1
<工程(2)手順1>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(RSS#1)100質量部、カーボンブラック(N330)45質量部、含水シリカ(Nipsil AQ)10質量部、ステアリン酸3質量部、酸化亜鉛5質量部および製造例2で得た本組成物2質量部を配合混練し、組成物を得た。
<工程(2)手順2>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、工程(2)手順1により得られた組成物と、加硫促進剤(N,N−ジシクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)0.7質量部、不溶性イオウ6質量部(イオウ分として)およびナフテン酸コバルト2質量部とを配合混練し、本ゴム組成物を得た。
<工程(3)>
工程(2)手順2で得た本ゴム組成物を150℃で加硫することにより加硫ゴムを得た。
【0070】
実施例2、3
実施例1において、製造例2で得た本組成物に代えて製造例3、4でそれぞれ得た本組成物を用いる以外は実施例1と同様にして本ゴム組成物および加硫ゴムを得た。
【0071】
比較例1
実施例1において、製造例2で得た本組成物に代えて製造例1で得たアニリンとアセトンとの縮合反応生成物を用いる以外は実施例1と同様にしてゴム組成物及び加硫ゴムを得た。
【0072】
比較例2
実施例1において、製造例2で得た本組成物に代えて製造例5で得た本組成物を用いる以外は実施例1と同様にしてゴム組成物及び加硫ゴムを得た。
【0073】
試験例1〜3、比較試験例1、2
実施例1〜3、比較例1、2でそれぞれ得られたゴム組成物及び加硫ゴムについて、以下の耐熱試験を実施した。
耐熱試験:JIS K6251によるダンベル3号の試験片を用いて、JIS K6257 B−1法により、100℃、48時間の耐熱試験を実施した。耐熱試験後の試験片を用いてJIS K6251により切断時伸び(EB)を測定した。比較例1で得たゴム組成物及び加硫ゴムを用いた値を100としたときの相対EBを示す。
【0074】
【表2】

【0075】
相対EBが大きいほど耐熱性に優れているといえる。したがって、本組成物を使用すれば、タイヤの製造に用いられる加硫ゴムが有する耐熱性を、より簡便に改善させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明により、タイヤの製造に用いられる加硫ゴムが有する耐熱性を、より簡便に改善させる方法が提供可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴムが有する耐熱性を改善させるための、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物を混合して得られる組成物の使用。
【請求項2】
下記の工程(1),(2)及び(3)を含む、加硫ゴムが有する耐熱性の改善方法。
(1)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及びその重合物、並びに、これらの合計100質量部に対して一級アミンを2〜6質量部含む混合物と、該一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを接触させる工程
(2)工程(1)で得られた混合物とゴム成分と硫黄成分とを混練する工程
(3)工程(2)で得られた混練物を加硫し、加硫ゴムを得る工程
【請求項3】
工程(1)が、ゴム成分の非存在下で実施される請求項2記載の改善方法。
【請求項4】
工程(1)が、硫黄成分の非存在下で実施される請求項2又は3記載の改善方法。
【請求項5】
工程(1)におけるカルボン酸無水物の使用量が、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物1kgに対して0.6〜5モルである請求項2〜4のいずれか記載の改善方法。
【請求項6】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物及びカルボン酸無水物を混合して得られる加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【請求項7】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物が、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物、及び、一級アミンを含む混合物である請求項6記載の加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【請求項8】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物が、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物、並びに、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン及び2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物の合計100質量部に対して、一級アミンを2〜6質量部含む混合物である請求項6又は7記載の加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【請求項9】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物と、アニリンとアセトンとの縮合反応生成物に含まれる一級アミン1モルに対して3〜10モルのカルボン酸無水物とを混合して得られる請求項7又は8記載の加硫ゴム用耐熱性改善剤。
【請求項10】
アニリンとアセトンとの縮合反応生成物が、硫黄成分の非存在下でアニリンとアセトンとを縮合反応させることにより製造される生成物である請求項6〜9のいずれか記載の加硫ゴム用耐熱性改善剤。

【公開番号】特開2012−197416(P2012−197416A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224676(P2011−224676)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】