説明

加速度センサ回路及び3軸加速度センサ回路

【課題】ダイナミックレンジが広く、高感度で、効率的で、且つ、安価な加速度センサ回路を提供する。
【解決手段】加速度センサ回路は、検知した加速度によって容量が変化する第1のキャパシタと、加速度によって第1のキャパシタとは相反する方向に容量が変動する第2のキャパシタと、第1のキャパシタの容量と第2のキャパシタの容量との比によって交流信号に対する増幅度が定まる第1の増幅器と、第1の増幅器に入力される入力交流信号と、第1の増幅器にて増幅される増幅交流信号との差分信号を生成する第2の増幅器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量の変化により加速度を検知する加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサは、自動車のエアバッグ、及びゲーム機等の幅広い分野で利用される。これらの加速度センサは、小型で周波数特性が0近傍から数千Hzという低周波数帯域まで感度が伸びている。
【0003】
物理探査の一種である反射法地震探査法は、人工的に地震波を発生させ、地表に設置した受振器により地下から跳ね返ってくる反射波を捉え、その結果を解析して地下構造を解明する方法である。この受振器には加速度センサが備えられ、反射波による振動を加速度として検知する。反射法地震探査法では、1000個程度の受振器を設置して地下構造を検出する。将来的には、受振器を10m程の格子間隔で100万個ほど設置することも想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−258265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射法地震探査法では、加速度センサは、ダイナミックレンジとして120dB程度の加速度検出が必要となる。つまり、S/N比におけるノイズレベルとして1〜10μG/√Hz以下が必要となる。しかしながら、例えば、現在車両制御用加速度センサでは、ダイナミックレンジとして60〜80dB程度の加速度検知しかしておらず、S/N比におけるノイズレベルでは100μG/√Hz程度であり、反射法地震探査法で必要とされているダイナミックレンジを有していない。
【0006】
また、加速度センサは、MEMS素子を用いた探査システムとして実用化されたものもある。しかし、それらは、非常に高価であり、将来的に100万個設置することを考えると、より安価なMEMS素子を用いた加速度センサが求められる。
【0007】
本発明の目的は、上記の点に鑑みて、ダイナミックレンジが広く、高感度で、効率的で、且つ、安価な加速度センサ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加速度センサ回路は、検知した加速度によって容量が変化する第1のキャパシタと、
前記加速度によって第1のキャパシタとは相反する方向に容量が変動する第2のキャパ
シタと、
前記第1のキャパシタの容量と前記第2のキャパシタの容量との比によって交流信号に対する増幅度が定まる第1の増幅器と、
前記第1の増幅器に入力される入力交流信号と、前記第1の増幅器にて増幅される増幅交流信号との差分信号を生成する第2の増幅器と、を備える。
【0009】
本発明の加速度センサ回路では、第1の増幅器の増幅度が、第1のキャパシタの容量と第2のキャパシタの容量によって定まり、それぞれのキャパシタは検知した加速度に対し
て相反する方向に容量が変動するので、第1の増幅器の増幅度によって加速度を算出できる。また、増幅された信号と増幅前の信号の入力交流信号との差分値によって加速度を算出できる。
【0010】
また、本発明の加速度センサ回路は、前記入力交流信号値に対する差分信号値の比が検知した加速度にともなって変化するようにしてもよい。また、本発明の加速度センサ回路は、前記入力交流信号値に対する差分信号値の比が正の場合に、前記加速度を第1の方向の加速度とし、前記入力交流信号値に対する差分信号値の比が負の場合に前記第1の方向に対して逆方向となる第2の方向の加速度とすることによって正負2方向の加速度を検出する手段をさらに備えるようにしてもよい。このように構成することによって、入力交流信号値に対する差分信号値の比として正と負の値を得ることができ、加速度センサ回路に印加される加速度を第1の方向と第2の方向との2方向に検出することができる。
【0011】
また、前記入力交流信号の周波数は、前記増幅器で発生するノイズ成分にて白色雑音が支配的となる周波数帯域に設定されてもよい。これによって、増幅器で発生する白色雑音以外の雑音を回避でき、加速度センサ回路で発生するノイズを低減することができる。
【0012】
前記加速度センサ回路はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)上で構成されるのが好ましい。加速度センサ回路がMEMSで構成されることによって、安価で軽量小型の加速度センサ回路を実現できる。
【0013】
本発明の3個の加速度センサ回路を3軸方向の加速度をそれぞれ検知するために有する3軸加速度センサ回路とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダイナミックレンジが広く、高感度で、効率的で、且つ、安価な加速度センサ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】加速度センサ回路の構成例を示す図である。
【図2】交流バイアス発振回路の出力電圧Vinと、オペアンプの出力電圧vBとの時間tにおける変化の例を示す図である。
【図3】加速度検出の動作例のフロー図を示す図である。
【図4】加速度センサ回路の出力値のプロット例を示す図である。
【図5】容量式加速度センサに加速度が印加され、可動電極がxだけ変位した場合のイメージ図の例である。
【図6】オペアンプに入力する交流バイアスの周波数と発生する雑音との関係の例を示す図である。
【図7】非反転増幅回路であるオペアンプ回路の例を示す図である。
【図8】3軸加速度センサの例の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、図面に基づいて、本発明の加速度センサ回路の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明の加速度センサ回路は実施形態の構成には限定されない。
【0017】
<<加速度センサ回路の構成例>>
図1は、加速度センサ回路A1の構成例を示す図である。加速度センサ回路A1は、交流バイアス発振回路1と、容量式加速度センサ2と、オペアンプOP1と、インピータン
スZ1と、インピータンスZ2と、オペアンプOP2と、インピータンスZ3と、A/D変換器3と、CPU4とを備える。図1に示される加速度センサ回路A1は、MEMS素子として構成されるのが好ましい。
【0018】
交流バイアス発振回路1は、CPU4から送信されてくるクロック信号に従って方形波信号を出力する。交流バイアス発振回路1の出力する電圧をVin(単位V(ボルト))とする。
【0019】
容量式加速度センサ2は、コンデンサC1(「第1のキャパシタ」に相当)及びコンデンサC2(「第2のキャパシタ」に相当)を備えている。コンデンサC1とコンデンサC2とは、容量式加速度センサ2に加速度が印加されると静電容量が変化するように構成されている。例えば、容量式加速度センサ2に加速度が印加されると、コンデンサC1の静電容量が増加し、一方、コンデンサC2の静電容量は減少するというように、相反する関係にある(詳しくは後述)。コンデンサC1の静電容量をC1(単位F(ファラデー))、同様に、コンデンサC2の静電容量をC2(単位F)とする。それぞれのインピータンスz1、z2は、以下のように示される。
【0020】
【数1】

オペアンプOP1(「第1の増幅器」に相当)は、自身のフィードバックに容量式加速度センサ2に含まれるコンデンサC2を含む。オペアンプOP1は、容量式加速度センサ2に含まれるコンデンサC1を通過した信号(「第1の増幅器に入力される入力交流信号」に相当)を入力信号とし、増幅する。オペアンプOP1の出力信号(「第1の増幅器にて増幅される増幅交流信号」に相当)の電圧vA(単位V)は、以下のように示される。
【0021】
【数2】

オペアンプOP2(「第2の増幅器」に相当)とインピータンスZ3とは、オペアンプOP1にて増幅された信号と、インピータンスZ2とを通過した信号を加算する加算回路である。このオペアンプOP2の出力信号(「差分信号」に相当)の電圧vBは、以下のように示される。ただし、インピータンスZ1及びインピータンスZ2のインピータンスを同じ値にしてZ(単位Ω)、インピータンスZ3のインピータンスをZf(単位Ω)とする。
【0022】
【数3】

ここで、Zf=Zの場合、オペアンプOP2の出力電圧vBは、オペアンプOP1の入力電圧と出力電圧との差分となる。
【0023】
A/D変換器3は、オペアンプOP2の出力電圧vBを計測する。CPU4は、A/D
変換器3の計測値を元に出力電圧Voutを算出する。CPU4は、交流バイアス発振回路1の出力周波数を制御する。
【0024】
<<加速度検出の動作例>>
図2は、交流バイアス発振回路1の出力電圧Vinと、オペアンプOP2の出力電圧vBとの時間tにおける変化の例を示す。図2では、交流バイアス発振回路1は20kHzの周波数で動作している場合を例として示す。
【0025】
(式1)より、コンデンサC1の静電容量の方がコンデンサC2の静電容量より大きい場合(C1>C2)には、vBは交流バイアス発振回路1の出力電圧Vinと同位相となる。コンデンサC1の静電容量C1とコンデンサC2の静電容量C2とが等しい場合(C1=C2)には、vBは直線を示す。コンデンサC1の静電容量C1の方がコンデンサC2の静電容量より小さい場合(C1<C2)には、vBは交流バイアス発振回路1の出力電圧Vinとは逆位相となる。
【0026】
図3は、加速度検出の動作例のフロー図を示す。尚、図3では、交流バイアス発振回路1は20kHzの周波数(周期50μ秒)であるとする。
【0027】
CPU4は、交流バイアス発振回路1の出力電圧Vin(以降、入力電圧と称す)の立ち上がりを検知すると、立ち上がり検知タイマを起動する(OP1)。
【0028】
CPU4は、立ち上がり検知タイマが、例えば、12μ秒をカウントすると(OP2)、A/D変換器3からvBを読み込み、一時的に記憶する(OP3)。このときの時刻t=t1とし、vBの値をv1(図2)とする。
【0029】
CPU4は、立ち上がり検知タイマが、例えば、時刻t1から25μ秒(半周期)後の37μ秒をカウントすると(OP4)、A/D変換器3からvBを読み込み、一時的に記憶する(OP5)。このときの時刻t=t2とし、vBの値をv2(図2)とする。
【0030】
CPUは、v1とv2とを読みこんだら、Voutを算出する。Voutは、以下の式で求められる。
【0031】
【数4】

ここで、Vin(t1)は時刻t=t1における入力電圧を示す。Vin(t2)は時刻t=t2における入力電圧を示す。C1(t1)は時刻t=t1におけるコンデンサC1の静電容量を示す。C1(t2)は時刻t=t2におけるコンデンサC1の静電容量を示す。C2(t1)は時刻t=t1におけるコンデンサC2の静電容量を示す。C2(t2)は時刻t=t2におけるコンデンサC2の静電容量を示す。
【0032】
t2−t1=25μ秒は、加速度センサが検出する振動(検出波)の周期をTとする場合、t1−t2<<Tであるので、C1(t1)=C1(t2)、C2(t1)=C2(t2)とすることができる。従って、
【0033】
【数5】

となる。CPU4は、Vinの立ち上がりを基準にしてt1、t2をカウントするので、図2より、常に、Vin(t1)−Vin(t2)>0となる。従って、(式2)より
C1>C2の場合、Vout>0、
C1=C2の場合、Vout=0、
C1<C2の場合、Vout<0
となる。
【0034】
CPU4は、Voutを算出したら、Voutの値を記録する(OP6)。入力電圧Vinの立ち上がりを検知する毎に図3に示すフローが行われるので、図2及び図3の場合、Voutは50μ秒毎に算出される(Voutのサンプル周波数20kHz)。
【0035】
図4は、Voutのプロット例を示す図である。Voutをプロットしていくと加速度センサ回路が検出する検出波の波形が得られる。図4の場合は、検出波はおおよそ250Hzの周波数であることがわかる。
【0036】
(式2)より、C1>C2の場合はVoutが正の値をとり、C1<C2の場合はVoutが負の値をとる。このことによって、例えば、図4に示す出力結果の例では、出力電圧5Vの交流電源を用いる場合は、入力電圧0(V)<Vin(V)<5V(V)に対し、出力電圧−5(V)<Vout<5(V)という、入力電圧Vinに対して2倍の範囲の出力電圧を得ることができる。言い換えると、加速度センサ回路A1は、(式2)によってVoutを求めることによって、検出波の正側の振幅に加え、負側の振幅を検出することができる。さらに、5Vの交流電源を用いる場合には、コンピュータと電源を共用することができるため、非常に効率の良い回路構成となる。
【0037】
<<容量式加速度センサと加速度との関係>>
図5は、容量式加速度センサ2の概念的な構成例を示す図である。容量式加速度センサ2は、例えば、図5で示されるように、2枚の固定電極の間に梁で支持された可動シリコン振動子(可動電極)によってモデル化できる。この2枚の固定電極とその間の可動電極でコンデンサC1(図1)及びコンデンサC2(図1)を形成する。
【0038】
図5において、dはコンデンサC1とコンデンサC2の静電容量が等しい場合の固定電極と可動電極との極板間距離を示す。d1は、加速度aが印加された後のコンデンサC1の極板間距離である。同じくd2は、加速度aが印加された後のコンデンサC2の極板間距離である。加速度センサ回路A1を構成するMEMS素子に加速度がかかると、可動電極が動く。可動電極が動くと、可動電極と固定電極との静電ギャップの間隔が変化し、それとともに、コンデンサC1及びコンデンサC2の静電容量が変化する。一般にコンデンサの静電容量は以下の式で示される。
【0039】
【数6】

ここで、ε[F/m]は誘電率、S[m2]は極板面積、d[m]は極板間距離である

【0040】
例えば、可動電極がxだけ動いた場合、コンデンサC1の極板間距離は小さくなり、コンデンサC2極板間距離は大きくなる。この場合、(式3)より、コンデンサC1の静電容量C1の値は大きくなり、コンデンサC2の静電容量C2の値は小さくなる。従って、容量式加速度センサ2のコンデンサC1とC2は、加速度が印加されると、互いに相反する方向に静電容量が変化する。
【0041】
一方、加速度は、以下に示す式から求められる。
【0042】
【数7】

(式4)はニュートンの第2法則であり、fiは慣性力[N・s]、錘の質量をm[Kg]、加速度をa[m/s2]とする。(式5)はフックの法則であり、frは復元力[
N]、ばね定数をk[N/m]、変位をx[m]とする。
【0043】
慣性力fiと復元力frとがつりあうとき、図5において、可動電極の変位xと加速度aの関係は、(式4)及び(式5)より以下の式で表わされる。
【0044】
【数8】

図5において、加速度aが容量式加速度センサ2に印加され、可動電極がxだけ動いた場合、d1、d2、及びxとは以下の関係にあとする。
【0045】
【数9】

尚、d>>xであるとする。
【0046】
(式1)、(式3)、(式6)及び(式7)より、
【0047】
【数10】

(式8)より、オペアンプOP2の出力電圧vBと加速度aとはほぼ線形の関係にあることがわかる。従って、(式1)及び(式8)より、加速度センサ回路A1の出力電圧Voutは加速度センサ回路A1に印加される加速度aにしたがって変化する。つまり、加
速度センサ回路A1の増幅度(入力電圧Vinに対する出力電圧Voutの比)に変化があった場合(特にVoutの出力に検出波が認められた場合)は、加速度センサ回路A1に加速度が印加されたことを検出できる。
【0048】
尚、変位‘x’と電極の長さ‘L’との間には、x<<Lが成り立つので可動電極は固定電極に対して常に平行に移動すると見なすことができる。
【0049】
<<加速度センサ回路のノイズ低減>>
信号とノイズはS/N比で表わせる。加速度をより高感度で検知するためには、信号(S:Signal)を大きく検知することと、ノイズ(N:Noise)を低減することが必要となる。
【0050】
図1の加速度センサ回路A1では、ノイズを低減するために、以下の点を考慮する。
(1)ブライアンノイズの低減
ブライアンノイズとは、空気中に含まれる気体分子が容量式加速度センサ2の可動電極に衝突することで発生するノイズのことである。このノイズを低減するために、容量式加速度センサ2のエレメント内は真空にする。
(2)オペアンプにて生じるノイズの低減
市販されているオペアンプには、ノイズが小さくなるように設計されているものがある。このようなオペアンプを用いたとしても、オペアンプで使用されている半導体において特有のノイズが発生する。このノイズに対して検討が必要になる。
【0051】
オペアンプに発生する雑音スペクトラムには、以下のようなものがある。
・ホワイトノイズ(白色雑音):Pn(f)=C(周波数に依存しない一定の雑音)
・1/f雑音:Pn(f)∝1/f (周波数に反比例する雑音)
ここで、Pn(f)は、雑音源の電力スペクトラム密度であり、一定周波数帯域の実行値を示す。
【0052】
ホワイトノイズは、いか様にしても発生してしまう雑音であり、低減することは不可能である。しかし、1/f雑音は、周波数によって変化する雑音である。
【0053】
図6は、あるオペアンプに入力する交流バイアスの周波数と発生する雑音との関係の例を示す図である。この関係は、使用するオペアンプによって変わる。図6では、低周波の領域では、1/f雑音が発生することを示す。また、ある周波数を超えると、1/f雑音が回避できる(図6の場合は、100Hzを超えた領域)。従って、交流バイアス発振回路1の出力電圧Vinの周波数は、1/f雑音を回避できる十分高い周波数を用いる。
(3)抵抗内の電子の不規則な熱振動によって発生する雑音
抵抗内で発生する雑音の電圧Vn(単位V)は以下のように示される。
【0054】
【数11】

ここで、kはボルツマン係数、Tは抵抗の胴体温度(単位K)、Rは抵抗値(単位Ω)、Δfは帯域幅を示す。
【0055】
図7は、非反転増幅回路であるオペアンプ回路の例を示す図である。このオペアンプの増幅度を決める場合は、以下の式を用いる。
【0056】
【数12】

例えば、R1=1K(Ω)、R2=9K(Ω)を用いた場合をケース1とする。R1=10K(Ω)、R2=90K(Ω)を用いた場合をケース2とする。ケース1とケース2とでは、(式10)における増幅度は10と同じ値になる。しかし、ノイズレベルでは、(式9)から、ケース2はケース1の√10倍(=3.16倍)大きくなる。
【0057】
従って、抵抗により発生する熱雑音を低減するためには、抵抗の値が小さい抵抗素子を用いることと、熱雑音の発生源となる抵抗素子の数をできるだけ少なくすることが望まれる。図1の加速度センサ回路A1においては、回路を構成する素子数を少なくしている。さらに、図1の加速度センサ回路A1内のインピータンスZ1〜Z3に抵抗素子ではなく、コンデンサを採用することも可能である。加速度センサ回路A1にインピータンスZ1〜Z3としてコンデンサを用いることで熱雑音の発生を回避することができる。
【0058】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態によれば、加速度をオペアンプOP1に入力する入力信号とオペアンプOP1によって増幅された信号との差分の電圧の比をvBとして得ることができる。A/D変換器3の測定値が差分の電圧になっているので、CPUで処理すべき作業が軽減され、効率がよい。
【0059】
第1実施形態では、出力電圧Vout=v1−v2で求められるので、Voutは正の値と負の値をとることができる。通常、例えば、正と負の両方の領域で出力電圧Voutを得たい場合には、入力電圧Vinとして正の領域の出力結果を得るための電源と、負の領域の出力結果を得るための電源を用意する必要がある。しかし、第1実施形態の回路構成によれば、1つの交流バイアス発振回路1で、正と負の両方の領域の出力電圧Voutが得られるので、効率が良い。
【0060】
第1実施形態の加速度センサ回路A1によれば、回路を構成する回路素子の数が少なくて済むので、消費電力が少なく抑えることができる。さらに、回路素子の数が少ないので、回路素子で発生する雑音も少なく抑えることができ、加速度センサ回路A1の感度を上げることができる。
【0061】
第1実施形態によれば、加速度センサエレメントを真空にし、交流電源を1/f雑音を回避できる周波数で用い、回路の素子数が少ないので、ノイズを低減することができる。ノイズ低減することによって、S/N比が大きくなり、感度を上げることができる。
【0062】
第1実施形態をMEMSにより構成すれば、効率的で、ダイナミックレンジが広く、高感度で、安価で、且つ、軽量小型の加速度センサ回路を実現できる。
【0063】
<変形例>
第1実施形態の加速度センサ回路A1を、3つ備えて3軸の加速度センサを構成することができる。
【0064】
図8は、3軸加速度センサの例の全体図である。直行した基準となる3軸(X軸、Y軸、Z軸)毎に加速度センサ回路A1を配置する。3つの加速度センサ回路A1からの出力電圧によって、3軸方向の加速度を検出することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 交流バイアス発振回路
2 容量式加速度センサ
3 A/D変換器
4 CPU
A1 加速度センサ回路
C1、C2 コンデンサ
OP1、OP2 オペアンプ
Z1、Z2、Z3、 インピータンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知した加速度によって容量が変化する第1のキャパシタと、
前記加速度によって第1のキャパシタとは相反する方向に容量が変動する第2のキャパ
シタと、
前記第1のキャパシタの容量と前記第2のキャパシタの容量との比によって交流信号に対する増幅度が定まる第1の増幅器と、
前記第1の増幅器に入力される入力交流信号と、前記第1の増幅器にて増幅される増幅交流信号との差分信号を生成する第2の増幅器と、
を備える加速度センサ回路。
【請求項2】
前記入力交流信号値に対する差分信号値の比が検知した加速度にともなって変化する請求項1に記載の加速度センサ回路。
【請求項3】
前記入力交流信号値に対する差分信号値の比が正の場合に、前記加速度を第1の方向の加速度とし、前記入力交流信号値に対する差分信号値の比が負の場合に前記第1の方向に対して逆方向となる第2の方向の加速度とすることによって正負2方向の加速度を検出する手段をさらに備える
請求項1または2に記載の加速度センサ回路。
【請求項4】
前記入力交流信号の周波数は、前記増幅器で発生するノイズ成分にて白色雑音が支配的となる周波数帯域に設定される請求項1から3の何れか1つに記載の加速度センサ回路。
【請求項5】
前記加速度センサ回路はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)上で構成される請求項1から4の何れか1つに記載の加速度センサ回路。
【請求項6】
3軸方向の加速度をそれぞれ検知する3個のセンサ回路を有し、
前記それぞれのセンサ回路は、
検知した加速度によって容量が変動する第1のキャパシタと、
前記加速度によって第1のキャパシタとは相反する方向に容量が変動する第2のキャパシタと、
前記第1のキャパシタの容量と前記第2のキャパシタの容量との比によって交流信号に対する増幅度が定まる第1の増幅器と、
前記第1の増幅器に入力される入力信号と、前記第1の増幅器にて増幅される増幅交流信号との差分を生成する第2の増幅器と、
を備える3軸加速度センサ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169534(P2010−169534A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12333(P2009−12333)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)