説明

加速度センサ

【課題】 小型で且つ任意の方向の加速度を検出することが可能な新規な加速度センサを提供する。
【解決手段】 基板101と、基板101上に形成された少なくとも1つのセンサ部102aとを備え、センサ部102aは、基板101上に基板101側から順に配置された第1および第2の層(半導体層123および124)を含む積層部103と、少なくとも第1および第2の層が折り曲げられることによって形成された起立部104aと、起立部104aの傾きを検出するための検出手段(ピエゾ抵抗素子132)とを含む。そして、第1の層の格子定数と第2の層の格子定数とは異なり、加速度を伴うセンサ部102aの移動によって起立部104aが傾く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサは、自動車や航空機などの移動手段、家電製品、玩具、携帯用通信機器など、様々な分野で用いられている。小型の加速度センサとして、従来から、半導体基板を用いた加速度センサが提案されている(たとえば特許文献1および2)。
【0003】
これらの加速度センサでは、半導体基板を用いて、可撓性を有するピエゾ抵抗素子で支えられた錘部を形成する。この錘部が移動するときのピエゾ抵抗素子の抵抗の変化を用いて、加速度が測定される。
【特許文献1】特開2004−184373号公報
【特許文献2】特開2004−198243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の加速度センサでは、基板に対して特定の方向の加速度しか検出できなかった。また、製造工程が複雑であり、小型化にも限界があった。
【0005】
このような状況に鑑み、本発明は、小型で且つ任意の方向の加速度を検出することが可能な新規な加速度センサを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の加速度センサは、基板と、前記基板上に形成された少なくとも1つのセンサ部とを備える加速度センサであって、前記センサ部は、前記基板上に前記基板側から順に配置された第1および第2の層を含む積層部と、少なくとも前記第1および第2の層が折り曲げられることによって形成された起立部と、前記起立部の傾きを検出するための検出手段とを含み、前記第1の層の格子定数と前記第2の層の格子定数とは異なり、加速度を伴う前記センサ部の移動によって前記起立部が傾くものである。
【0007】
また、本発明の第2の加速度センサは、基板と、前記基板上に形成された少なくとも1つのセンサ部とを備える加速度センサであって、前記センサ部は、前記基板上に前記基板側から順に配置された第1および第2の層を含む積層部と、少なくとも前記第1および第2の層が折り曲げられることによって形成された起立部と、前記起立部から突き出すように形成された薄膜と、前記薄膜の変形を検出するための検出手段とを含み、前記第1の層の格子定数と前記第2の層の格子定数とは異なり、加速度を伴う前記センサ部の移動によって前記薄膜が変形するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型で且つ任意の方向の加速度を検出することが可能な加速度センサが得られる。特に、本発明によれば、2次元方向または3次元方向の加速度を検出できる加速度センサを、同一基板を用いてモノリシックに形成できる。この加速度センサは、半導体プロセスを用いて作製することができるため、複数の加速度センサを一度に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下で説明する加速度センサは本発明の一例であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0010】
本発明の第1の加速度センサは、基板と、基板上に形成された少なくとも1つのセンサ部とを備える加速度センサであって、センサ部は、基板上に基板側から順に配置された第1および第2の層を含む積層部と、少なくとも第1および第2の層が折り曲げられることによって形成された起立部と、起立部の傾きを検出するための検出手段とを含み、第1の層の格子定数と第2の層の格子定数とは異なり、加速度を伴うセンサ部の移動によって起立部が傾くものである。
【0011】
起立部を形成するための層の組み合わせとしては、たとえば、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体、Si/SiGe、亜鉛/カドミウム、銅/銀/金、ニッケル/パラジウム/白金、コバルト/ロジウム/イリジウム、クロム/モリブデン/タングステン、バナジウム/ニオブといった組み合わせを用いることができる(第2の加速度センサにおいても同様である)。これらの中でも、III−V族化合物半導体、II−VI族化合物半導体、Si/SiGeの組み合わせは、組成比を変えることによって格子定数を簡単に制御でき、また、半導体プロセスで形成・加工できるため好ましい。
【0012】
上記第1の加速度センサでは、基板の表面に平行な方向の加速度を検出できる。また、第1の加速度センサは半導体プロセスを用いて形成できるため、小型化が可能であり、たとえば100μm角(たとえば数百nm角〜1mm角の範囲)のサイズに形成することが可能である。
【0013】
上記第1の加速度センサでは、検出手段は、第1および第2の層の折れ曲がり部に形成された歪み計測手段を含み、起立部が傾くことによって歪み計測手段の抵抗が変化するものであってもよい。この構成によれば、起立部の傾きを簡単に検出できる。なお、検出手段には他の手段を適用してもよい。たとえば、起立部と基板のそれぞれの上に、対抗するように複数の電極を形成し、その電極間の静電容量を測定することによって起立部の傾きを検出してもよい。
【0014】
上記第1の加速度センサでは、加速度を伴うセンサ部の移動によって生じる起立部の傾きを大きくするための膜が、起立部の一部に形成されていてもよい。この構成によれば、センサの感度を変更することができる。
【0015】
また、本発明の第2の加速度センサは、基板と、基板上に形成された少なくとも1つのセンサ部とを備える加速度センサであって、センサ部は、基板上に基板側から順に配置された第1および第2の層を含む積層部と、少なくとも第1および第2の層が折り曲げられることによって形成された起立部と、起立部から突き出すように形成された薄膜と、薄膜の変形を検出するための検出手段とを含み、第1の層の格子定数と第2の層の格子定数とは異なり、加速度を伴うセンサ部の移動によって薄膜が変形する。本発明の第2の加速度センサによれば、上記第1の加速度センサと同様の効果に加えて、繰り返しの変形に対する機械的強度が高いという効果が得られる。
【0016】
上記第2の加速度センサでは、検出手段は、薄膜上に形成された歪み計測手段を含み、薄膜が曲がることによって歪み計測手段の抵抗が変化してもよい。この構成によれば、薄膜の曲がりを簡単に検出できる。なお、検出手段には他の検出手段を適用してもよい。たとえば、薄膜と基板のそれぞれの上に対向するように複数の電極を形成し、その電極間の静電容量を測定することによって薄膜の変形を検出してもよい。
【0017】
上記第2の加速度センサでは、加速度を伴うセンサ部の移動によって生じる薄膜の曲がりを大きくするための膜が、薄膜の一部に形成されていてもよい。この構成によれば、センサの感度を変更することができる。
【0018】
上記本発明の加速度センサでは、第1の層の格子定数は第2の層の格子定数よりも大きく、積層部と起立部との境界において、第1の層の格子定数と第2の層の格子定数との差によって生じる力によって第1および第2の層が第2の層側に折り曲げられていてもよい。
【0019】
上記本発明の加速度センサでは、第1および第2のセンサ部を備え、第1のセンサ部は、第1および第2の層を第2の層側に2回折り曲げることによって形成された第1の起立部を含み、第1のセンサ部は、基板の表面に垂直な方向の加速度を検出するものであってもよい。この場合、第1および第2のセンサ部に加えて第3のセンサ部を含んでもよい。これらの構成によれば、2次元的または3次元的に加速度を検出できる。
【0020】
上記本発明の加速度センサでは、検出する加速度の方向が異なる複数のセンサ部を備えてもよい。この場合、検出する加速度の方向が互いにほぼ直交していることが好ましい。この構成によれば、2次元的または3次元的に加速度を検出できる。
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同様の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。また、以下の説明ではIII−V族化合物半導体の組成比を示していない場合があるが、III族元素の組成比とV族元素の組成比とはほぼ等しい。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1では、本発明の第1の加速度センサの例を示す。実施形態1の加速度センサ100aの断面図を図1(a)に示す。
【0023】
図1(a)を参照して、加速度センサ100aは、基板101と、基板101上に形成されたセンサ部102aとを備える。センサ部102aは、積層部103と、起立部104aと、膜131と、起立部104aの傾きを検出するためのピエゾ抵抗素子132とを備える。なお、図1には図示していないが、ピエゾ抵抗素子132には配線が接続されている。また、膜131は、状況に応じて省略してもよい。
【0024】
基板101は、その上に半導体層を成長させることができるように、積層される半導体層に応じて選択される。基板101としては、たとえば、GaAs基板や、InP基板、Al23基板、SiC基板、Si基板を用いることができる。
【0025】
積層部103は、基板101上に基板101側から順に積層されたバッファ層121、層122、半導体層123〜125を含む多層膜で構成される。なお、積層部103および起立部104aは、必要に応じて他の層を含んでもよい。半導体層123〜125は、内部応力によって半導体層を所定の位置で折り曲げるための層である。そのため、半導体層123〜125を構成する半導体は、半導体層123(第1の層)および半導体層125(第3の層)の格子定数が半導体層124(第2の層)の格子定数よりも大きくなるように選択される。
【0026】
起立部104aは、半導体層123および124を、半導体層124側に折り曲げることによって基板から立ち上がっている。起立部104aは、基板101の表面に対して略垂直となるように形成されており、加速度を伴う移動によって揺動する揺動板として機能する。起立部104aの先端には、膜131が形成されている。膜131は、センサ部102aの移動によって生じる起立部104aの傾きを大きくするための膜である。膜131の材料に特に限定はないが、たとえば、フォトレジスト膜(たとえばマイクロケム株式会社(MicroChem Corp.)のSU−8)や樹脂などで形成できる。
【0027】
積層部103と起立部104aとの境界、すなわち、半導体層123および124の折れ曲がり部には、起立部104aの傾きを検出するためのピエゾ抵抗素子132が形成されている。ピエゾ抵抗素子(ストレインゲージ)は、歪みによって抵抗が変化する素子である。図1(b)に示すように、センサ部が矢印Xの方向に加速度を伴って移動すると、起立部104aは、通常の位置から、矢印Xとは逆方向に傾く。起立部104aが傾くと、ピエゾ抵抗素子132の抵抗が変化する。起立部104aの傾きは、加速度の大きさによって変化する。その結果、ピエゾ抵抗素子132の抵抗をモニタしたり、ピエゾ抵抗素子132を流れる電流をモニタしたりすることによって、基板とほぼ平行な方向における加速度の大きさを測定できる。
【0028】
図2に、本発明の他の加速度センサを示す。図2の加速度センサ100bは、基板101と、基板101上に形成されたセンサ部102bとを備える。センサ部102bでは、起立部104bが、半導体層123および124を折れ曲がり部133aおよび133bの2箇所で折り曲げることによって形成されている。各部材は、加速度センサ100aと同様であるため、重複する説明を省略する。
【0029】
加速度センサ100bでは、折れ曲がり部133bから先の部分が、加速度を伴う移動によって揺動する揺動板として機能する。加速度センサ100bでは、折れ曲がり部133bの部分にピエゾ抵抗素子132が形成され、上記揺動板の傾きが検出される。なお、折れ曲がり部133bの部分に加えて、折れ曲がり部133aの部分にピエゾ抵抗素子を形成してもよい。折れ曲がり部133bの部分に形成されたピエゾ抵抗素子132は、図2の矢印Zの方向、すなわち、基板101の表面に対してほぼ垂直な方向における加速度を検出する。
【0030】
以下に、加速度センサ100bの具体的な構成の一例およびその製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、図3(b)〜図6(b)は上面図であり、図3(a)〜図6(a)は図3(b)〜図6(b)の点線部分における断面図である。
【0031】
まず、図3(a)および(b)に示すように、基板101上に、バッファ層121、層122、半導体層123、半導体層124、半導体層125を含む多層膜130を形成する。バッファ層121は、結晶性が良好な半導体層を基板101上に形成するための層である。層122は、エッチングによって選択的に除去しやすい材料で形成される。
【0032】
半導体層123〜125を構成する半導体は、半導体層123および125の格子定数が半導体層124の格子定数よりも大きくなるように選択される。また、実施形態1の加速度センサでは、半導体層123と半導体層125とは、ほぼ同じ組成の材料で形成することが好ましい。これらの半導体層は、化合物半導体(たとえばIII−V族化合物半導体)で形成することが好ましい。III−V族化合物半導体などの化合物半導体の格子定数は、組成によって変化させることができる。半導体層124/半導体層123(および125)の具体的な組み合わせとしては、たとえば、GaAs/InGaAs、Si/SiGe、GaN/AlGaN、GaN/InGaNなどが挙げられる。これらの半導体層の組成比、厚さおよび折れ曲がり部の長さを変化させることによって、半導体層124が折れ曲がる角度を調節することができる。
【0033】
なお、本発明の加速度センサは、必要に応じて、図3に図示していない層を備えてもよい(以下の実施形態においても同様である)。本発明の加速度センサで用いられる多層膜の一例の構成を表1に示す。
【0034】
【表1】

表1の多層膜は、バッファ層121からキャップ層までこの順序で積層されている。エッチングストップ層〜キャップ層までが図3(a)の多層膜130に相当する。
【0035】
半導体層124の折れ曲がり部の曲率半径Rは、通常、以下の式で表される。
R=(a/Δa)・{(t1+t2)/2}
ここで、aは半導体層124(GaAs層)の格子定数であり、5.6533オングストロームである。また、Δaは、半導体層123(In0.2Ga0.8As層)の格子定数(5.7343オングストローム)と半導体層124(GaAs層)の格子定数との差である。また、t1は半導体層123の厚さ(単位:オングストローム)であり、t2は半導体層124の厚さ(単位:オングストローム)である。
【0036】
折れ曲がり部の長さを適切な長さとすることによって、半導体層124は約90°の角度に折り曲げられる。表1中、エッチングストップ層は、溝41および42を形成する際に、半導体層124の表面でエッチングを止めるために形成される。キャップ層は、InGaAs層中のInの蒸発を防止するための層である。
【0037】
上述したように、InGaAsからなる半導体層123および125の格子定数は、GaAsからなる半導体層124の格子定数よりも大きい。InGaAs層におけるInの組成比を多くするほどGaAs層との格子定数の差を大きくでき、両者の格子定数の差を7%程度とすることも可能である。
【0038】
基板101上の各層は公知の方法で形成でき、たとえば、分子線エピタキシャル成長法(MBE法)、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法)、化学的気相成長法(CVD法)などで形成できる。
【0039】
次に、図4(a)および(b)に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、多層膜130の一部を除去して溝41および42を形成する。溝41および42は、半導体層123および124を折り曲げる部分に形成する。溝41および42は、半導体層124がエッチングされないような条件で形成することが好ましい。そのために、半導体層124のエッチングレートよりもエッチングストップ層のエッチングレートが高いエッチング条件でエッチングストップ層をエッチングする。エッチングは、公知の方法で行うことができ、ウエットエッチングであってもドライエッチングであってもよい。
【0040】
次に、図5(a)および(b)に示すように、膜131、ピエゾ抵抗素子132、配線134および電極パッド135を形成する。ピエゾ抵抗素子132は、配線134によって電極パッド135に接続される。これらは、蒸着法、スパッタリング法、フォトリソ・エッチング法などを含む公知の方法で形成できる。膜131には、たとえば、フォトレジスト膜を用いることができる。膜131のサイズは、膜131が慣性質量として機能するサイズであればよい。一例では、厚さ1μm〜300μmのレジスト膜(上記SU−8)を用いることができる。配線134および電極パッド135は、導電性が高い材料で形成でき、たとえば、Ti膜とAu膜との積層膜を用いることができる。
【0041】
ピエゾ抵抗素子132の形成方法の一例について説明する。まず、ピエゾ抵抗素子132を形成する部分に、必要に応じて、SiO2膜などの絶縁膜を形成する。その後、絶縁膜上に、ポリシリコン膜を形成し、フォトリソグラフィー・エッチング工程でポリシリコン膜をパターニングすることによってポリシリコン細線を形成する。このポリシリコン細線はピエゾ抵抗を示す。最後に、ポリシリコン細線に接続された配線および電極パッドを形成する。このようにして、ピエゾ抵抗素子132が形成される。なお、ピエゾ抵抗素子132は、ポリシリコン細線に限らず、他の材料(たとえばCu−Ni系、Ni−Cr系の材料)で形成してもよい。
【0042】
次に、図6(a)および(b)に示すように、起立部104bを形成するときに基板101から分離する部分に溝51を形成する。溝51は、溝41とともに四角形を形成するように形成される。また、溝51は、層122に到達するように形成される。溝51は、公知のエッチング法で形成できる。溝51によって、起立部104bの大きさが規定される。起立部104bの大きさに特に制限はなく、たとえば、100μm角〜1000μm角の範囲としてもよい。
【0043】
次に、層122の一部をウエットエッチング法によって選択的に除去する。層122は、溝51を介して除去される。この工程によって、溝41と溝51とで囲まれた部分に存在する層122を除去する。ウエットエッチングは、層122のエッチングレートと層122以外の層とのエッチングレートとが異なる条件で行う必要がある。たとえば、H3PO4:H22:H2O=3:1:5(体積比)の割合で混合されたエッチング液を用いてエッチングを行えばよい。
【0044】
このとき、半導体層123の格子定数は半導体層124の格子定数よりも大きいため、半導体層124は、多層膜130が除去された部分、すなわち溝41(積層部103と起立部104bとの境界部分)および溝42の部分で半導体層124側に折れ曲がる。一方、多層膜130が除去されていない部分には半導体層125を含む多層膜が存在するため、半導体層124が折れ曲がることが抑制される。その結果、図2に示すように、基板101から立ち上がった起立部104bが形成される。このようにして、加速度センサ100bを形成できる。なお、加速度センサ100aは溝41を形成しないことを除いて加速度センサ100bと同様の方法で形成できる。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2では、本発明の第2の加速度センサの例を示す。実施形態2の加速度センサ100cの斜視図を図7(a)に示す。
【0046】
加速度センサ100cは、基板101と、基板101上に形成されたセンサ部102cとを備える。センサ部102cは、起立部104aと、起立部104aから突き出すように形成された薄膜136とを備える。薄膜136は、基板の表面に対してほぼ垂直になるように形成されている。起立部104aは、加速度センサ100aの起立部104aと同様であるため、重複する説明は省略する。
【0047】
薄膜136は、板バネとして機能する。薄膜136の材料に特に限定はないが、半導体層123および124(たとえばIII−V族化合物半導体)よりも機械的強度が大きい材料で形成することが好ましい。薄膜136は、たとえば、SiO2、Fe、Fe−Ni、Ptおよびこれらの複合材で形成できる。薄膜136の厚さは、薄膜136の材料や加速度センサの用途によって異なるが、たとえば、数十μm〜数百μmの範囲としてもよい。
【0048】
薄膜136のうち、起立部104aから飛び出した部分には、ピエゾ抵抗素子132が形成されている。薄膜136の先端部には、加速度を伴うセンサ部の移動によって生じる薄膜136の曲がりを大きくするための膜131が形成されている。
【0049】
センサ部が図7(a)の矢印Aの方向に加速度を伴って移動すると、薄膜136が曲がり、その曲がりがピエゾ抵抗素子132によって検出される。したがって、加速度センサ100cによれば、基板の表面に平行な矢印Aの方向の加速度を検出できる。
【0050】
なお、実施形態2の加速度センサは、起立部104aの代わりに、加速度センサ100bの起立部104bを用いたものでもよい。その場合の加速度センサ100dを図7(b)に示す。
【0051】
加速度センサ100dは、基板101と、基板101上に形成されたセンサ部102dとを備える。センサ部102dは、起立部104bと、起立部104bの先端から突き出すように形成された薄膜136とを備える。薄膜136は、基板の表面に対してほぼ平行になるように形成されている。起立部104bは、加速度センサ100bの起立部104bと同様であるため、重複する説明は省略する。
【0052】
センサ部102dでも、センサ部102cと同様に、薄膜136上に、膜131およびピエゾ抵抗素子132が形成されている。センサ部が図7(b)の矢印Bの方向に加速度を伴って移動すると、薄膜136が曲がり、その曲がりがピエゾ抵抗素子132によって検出される。したがって、加速度センサ100dによれば、基板の表面に垂直な方向の加速度の大きさを測定できる。
【0053】
薄膜136は、蒸着法やスパッタリング法などで形成できる。薄膜136は、たとえば、エッチングによって除去可能な膜の上に形成したのち、その膜を除去することによって下地層から分離できる。それ以外の部分は、実施形態1で説明した加速度センサと同様に形成できる。
【0054】
(実施形態3)
実施形態3では、本発明の加速度センサの他の例を示す。実施形態3の加速度センサ100eの斜視図を図8に示す。
【0055】
加速度センサ100eは、3つのセンサ部を備える。加速度センサ100eは、基板101と、基板101上に形成されたセンサ部102a1、102a2および102bを備える。センサ部102a1および102a2は実施形態1で説明したセンサ部102aと同様であり、センサ部102b(第1のセンサ部)は実施形態1で説明したセンサ部102bと同様である。
【0056】
センサ部102a1、102a2および102bは、起立部が傾きやすい方向が、互いに直交するように形成される。具体的には、図8に示すXYZ軸を仮定したときに、センサ部102a1の起立部、センサ部102a2の起立部、およびセンサ部102bの起立部は、それぞれ、X軸、Y軸、およびZ軸の方向に傾きやすい。そのため、センサ部102a1は方向A(X軸方向)における加速度を検出し、センサ部102a2は方向B(Y軸方向)における加速度を検出し、センサ部102bは方向C(Z軸方向)における加速度を検出する。このように、互いに直交する3方向の加速度を検出できる加速度センサを備える加速度センサ100eによれば、加速度を3次元的に検出できる。
【0057】
なお、本発明の加速度センサは、センサ部102a1、102a2および102bのうちのいずれか2つのみを備えるものであってもよい。この場合、加速度を2次元的に検出できる。
【0058】
また、センサ部102a1および102a2の代わりに実施形態2で説明したセンサ部102cを用いてもよく、センサ部102bの代わりに実施形態2で説明したセンサ部102dを用いてもよい。
【0059】
また、本発明の加速度センサは、感度が異なる複数の加速度センサを備えてもよい。加速度センサの感度は、膜131の位置、大きさおよび材質や、半導体層の厚さ、起立部の大きさなどによって制御できる。また、実施形態2で説明したように、バネ材として機能するプレートを用いることによって感度を変化させることも可能である。
【0060】
以上、本発明の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて他の実施形態に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の加速度センサは、加速度センサ、およびそれが用いられる様々な分野に利用できる。特に、微小なサイズに形成できるという点から、本発明の加速度センサは、携帯用通信機器、家電製品、ナビゲーションシステム、玩具などの分野に特に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の加速度センサの(a)一例および(b)機能を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の加速度センサの他の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の加速度センサの製造方法について一例の一工程を模式的に示す(a)断面図および(b)上面図である。
【図4】図3の次の工程の一例を模式的に示す(a)断面図および(b)上面図である。
【図5】図4の次の工程の一例を模式的に示す(a)断面図および(b)上面図である。
【図6】図5の次の工程の一例を模式的に示す(a)断面図および(b)上面図である。
【図7】本発明の加速度センサのその他の例を模式的に示す斜視図である。
【図8】本発明の加速度センサのその他の例を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
100a〜100e 加速度センサ
101 基板
102a〜102d センサ部
103 積層部
104a、104b 起立部
121 バッファ層
122 層
123 半導体層(第1の層)
124 半導体層(第2の層)
125 半導体層(第3の層)
130 多層膜
131 膜
132 ピエゾ抵抗素子(歪み計測手段)
133a、133b 折れ曲がり部
136 薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された少なくとも1つのセンサ部とを備える加速度センサであって、
前記センサ部は、前記基板上に前記基板側から順に配置された第1および第2の層を含む積層部と、少なくとも前記第1および第2の層が折り曲げられることによって形成された起立部と、前記起立部の傾きを検出するための検出手段とを含み、
前記第1の層の格子定数と前記第2の層の格子定数とは異なり、
加速度を伴う前記センサ部の移動によって前記起立部が傾く加速度センサ。
【請求項2】
前記検出手段は、前記第1および第2の層の折れ曲がり部に形成された歪み計測手段を含み、
前記起立部が傾くことによって前記歪み計測手段の抵抗が変化する請求項1に記載の加速度センサ。
【請求項3】
加速度を伴う前記センサ部の移動によって生じる前記起立部の傾きを大きくするための膜が、前記起立部の一部に形成されている請求項1または2に記載の加速度センサ。
【請求項4】
基板と、前記基板上に形成された少なくとも1つのセンサ部とを備える加速度センサであって、
前記センサ部は、前記基板上に前記基板側から順に配置された第1および第2の層を含む積層部と、少なくとも前記第1および第2の層が折り曲げられることによって形成された起立部と、前記起立部から突き出すように形成された薄膜と、前記薄膜の変形を検出するための検出手段とを含み、
前記第1の層の格子定数と前記第2の層の格子定数とは異なり、
加速度を伴う前記センサ部の移動によって前記薄膜が変形する加速度センサ。
【請求項5】
前記検出手段は、前記薄膜上に形成された歪み計測手段を含み、
前記薄膜が曲がることによって前記歪み計測手段の抵抗が変化する請求項4に記載の加速度センサ。
【請求項6】
加速度を伴う前記センサ部の移動によって生じる前記薄膜の曲がりを大きくするための膜が、前記薄膜の一部に形成されている請求項4または5に記載の加速度センサ。
【請求項7】
前記第1の層の格子定数は前記第2の層の格子定数よりも大きく、
前記積層部と前記起立部との境界において、前記第1の層の格子定数と前記第2の層の格子定数との差によって生じる力によって前記第1および第2の層が前記第2の層側に折り曲げられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の加速度センサ。
【請求項8】
第1および第2のセンサ部を備え、前記第1のセンサ部は、前記第1および第2の層を前記第2の層側に2回折り曲げることによって形成された第1の起立部を含み、
前記第1のセンサ部は、前記基板の表面に垂直な方向の加速度を検出する請求項1〜7のいずれか1項に記載の加速度センサ。
【請求項9】
検出する加速度の方向が異なる複数のセンサ部を備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の加速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−126007(P2006−126007A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314575(P2004−314575)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)