説明

加飾シート、加飾成形体及び加飾シートの製造方法

【課題】干渉ムラがなく凹凸感があって自然な感じのヘアラインが施された加飾シート、及びその加飾シートを備えた加飾成形体の提供
【解決手段】基材シート(1)に、縞状パターンで構成される透光性の2以上のヘアライン印刷層(13,14,35)と、パール印刷層(12)とを備え、一のヘアライン印刷層を構成する縞状パターンが、他のヘアライン印刷層を構成する縞状パターンと平面視で交差して積層させ、パール印刷層(12)が少なくとも一のヘアライン印刷層よりも表面側に積層させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアラインが施された加飾シート及びその加飾シートを表面に備える加飾成形体と、加飾シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の外装部品にはデザイン価値を高めるために様々な加飾が施される。その加飾の一つにヘアライン模様やスクラッチ模様と呼ばれる髪の毛や引っ掻き傷のような細長い複数の線模様(本明細書、特許請求の範囲では「ヘアライン」という。)がある。こうしたヘアラインを樹脂成形体に施すことで装飾した加飾成形体が知られている。
【0003】
樹脂成形体にヘアラインを施す方法としては、樹脂成形体の表面に凹凸パターンを形成し、その表面にホットスタンプ箔を転写する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
ところがこの方法は、転写の対象が凹凸面であるため、樹脂成形体とホットスタンプ箔の界面にエアーを巻き込んで品位が損なわれるおそれがあった。また、凹凸パターンを有する金型や治具を用いて凹凸パターンを樹脂成形体に形成するため、小さな凹凸加工がし難く微細な凹凸パターンを形成することが困難であった。そこで、本発明者らは、成形体の表面に凹凸パターンを形成することなくヘアラインを施す方法として印刷技術に着目し、縞状パターンを複数回印刷して線が重なった模様を形成する方法を研究した。
【特許文献1】特開2003−109450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、縞状パターンを複数回印刷して線が重なった模様を形成する方法は、線どうしが重なった部分と重なっていない部分とで濃淡の差が生じ、モアレともいえる干渉ムラが発生してしまうおそれがあった。また、縞状パターンを重ねただけのヘアラインは規則的な線模様となりデザインとしては面白みに欠けるものであった。
【0005】
以上のような従来技術や発明者らの研究結果を背景になされたのが本発明である。すなわち本発明の目的は、平行な複数の直線が単に等間隔に並んだような一様なヘアラインではなく、平行に並ぶ複数の線を有し、その一部が途切れたり濃淡があったり傾いたりするように見えるヘアラインを有する加飾シートと加飾成形体を提供することにある。また、干渉ムラがなく凹凸感があって自然な感じに施されたヘアラインを有する加飾シートと加飾成形体を提供することにある。さらに、それらの加飾シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。
本発明は、ヘアラインを模様として有する加飾シートであって、透明な基材シートと、縞状パターンで構成される透光性の2以上のヘアライン印刷層と、ヘイズ層と、を積層して備えており、前記2以上のヘアライン印刷層は、各ヘアライン印刷層の縞状パターンが、他のヘアライン印刷層の縞状パターンと平面視で交差して積層されており、前記ヘイズ層は、少なくとも一のヘアライン印刷層よりも表面側に積層している加飾シートを提供する。
【0007】
本発明では、透光性の各ヘアライン印刷層の縞状パターンが平面視で交差するように積層する。
このため裏面側に位置するヘアライン印刷層の縞状パターンが、表面側に位置する透光性のヘアライン印刷層の縞状パターンを通して見え隠れする。即ち、線の重なりがある部分は線の重なりがない部分に比べて線の濃度が濃くなる。したがって2以上の縞状パターンの交差による縞状パターンの濃淡の発生を明確に視認でき、凹凸観があって、深みのあるヘアラインを有する加飾シートとすることができる。
ここで、「縞状パターン」は複数の線が縞状に描かれているものである。
【0008】
また本発明では、ヘイズ層を備えており、そのヘイズ層が少なくとも一のヘアライン印刷層よりも表面側に積層する。
このため少なくとも一のヘアライン印刷層がヘイズ層を通じて視認される。したがって、ヘイズ層がその裏側に隠れたヘアライン印刷層の発色や反射の程度を変化させて、縞状パターンの重なりから生じる干渉ムラを消失させることができる。
【0009】
さらに本発明のヘアライン印刷層は印刷形成されたものである。
このため、凹凸パターン面にホットスタンプ箔を転写する従来技術と異なり、エアーの巻き込みによる品位の低下を防止することができる。また、基材シートに凹凸を付するものではないので、加工が容易である。さらに、ヘアライン印刷層は印刷形成されるためミクロンオーダーの微細な縞状パターンを実現できる。
【0010】
ヘイズ層は、二つのヘアライン印刷層の間に積層して設けることができる。
ヘイズ層は、含有するパール顔料などの粒子によって、その表面が粗面として形成される。こうした粗面上に印刷されるヘアライン印刷層は縞状パターンが歪んだり途切れたりし、また再現性のない縞状パターンとなる。したがって、全てのヘアライン印刷層がヘイズ層の上に積層されると、全ての縞状パターンが歪んだり途切れたりしたヘアラインとなる。
これに対し、ヘアライン印刷層の間にヘイズ層を積層すると、ヘイズ層を形成する前に必ず少なくとも一のヘアライン印刷層を印刷することが必要となり、ヘイズ層の粗面状態に影響を受けずにきれいに印刷された縞状パターンを形成することができる。したがって、ベースとなる縞状パターンを再現性良く形成することができる。
【0011】
ヘアライン印刷層が基材シートの裏面側に印刷されたものであり、この基材シートの表面側にさらにパール顔料を含むトップコート層が積層している加飾シートとすることができる。
ヘアライン印刷層を基材シートの裏面側に設け、表面側にはパール顔料を含むトップコート層を設けたため、パール感を高め、凹凸感に優れたヘアラインを実現することができる。
【0012】
ヘアライン印刷層の裏面側に金属調の色調を表出させる反射層を備える加飾シートとすることができる。
ヘアライン印刷層の裏面側に金属調の色調を表出させる反射層を備えるため、ヘアライン印刷層を裏面側から明るく照らし出すとともに金属調に加飾することができる。即ち、パール顔料などを含有するヘイズ層と、金属粉を含有するメタリック印刷層からなる反射層との両者を併用することにより、反射層で金属調の色調を設けつつヘイズ層で発色や反射の程度を変化させて深みのあるヘアラインを実現することができる。
【0013】
加飾シートを構成する2以上のヘアライン印刷層については、同一の縞状パターンでなるものとすることができる。
2以上のヘアライン印刷層について同一の縞状パターンを利用すれば、製版過程において一のヘアライン印刷層の版形成に他のヘアライン印刷層の版形成を利用することができ、縞状パターンの作成が簡単かつ容易である。
また、2以上のヘアライン印刷層が異なる縞状パターンでなるものとすることもできる。
異なる縞状パターンとすれば、同一の縞状パターンの場合に比べて、単調ではない変化に富んだヘアラインとすることができる。
【0014】
縞状パターンは、所定の線幅から任意に選択された線幅を有する複数の線が、所定の線間隔から任意に選択された間隔をあけて形成したものとすることが好ましい。
所定の線幅から任意に選択された線幅を有する複数の線が、所定の線間隔から任意に選択された間隔をあけて形成することで、ヘアライン調のデザインを形成することができるからである。
なお、所定の線幅とは、30μm〜100μmであり、所定の線間隔とは、40μm〜180μmである。
【0015】
2以上のヘアライン印刷層を構成する2以上の縞状パターンは、交差角度が、0.1°〜3.0°で交差して積層していることが好ましい。
交差角度がこの範囲にあれば、ヘアライン調のデザインを形成することができるからである。交差角度が0.1°より小さいと重なる縞状パターンが略平行となって2以上のヘアライン印刷層が見え隠れする重なり効果が生ぜず、3.0°を超えると縞状パターンが網目状に見えてしまう。交差角度が0.6°〜2.3°であれば、より自然な感じのヘアラインが得られるためより好ましい。
【0016】
また本発明は、上記何れかの加飾シートを成形体の表面に備える加飾成形体を提供する。
上記何れかの加飾シートを成形体の表面に備えるため、干渉ムラがなく高品位で、自然な感じを有するヘアラインが施された加飾成形体を実現できる。
【0017】
さらに本発明は、ヘアラインを模様として有する加飾シートの製造方法であって、透明な基材シートの裏面側に、縞状パターンで構成される透光性の複数のヘアライン印刷層を、各ヘアライン印刷層の縞状パターンが他のヘアライン印刷層の縞状パターンに対し平面視で交差するように印刷する工程と、複数のヘアライン印刷層の少なくとも何れか一のヘアライン印刷層に先だってヘイズ層を印刷する工程と、を含む加飾シートの製造方法を提供する。
【0018】
これによれば、縞状パターンの重なりが把握でき、また少なくとも一のヘアライン印刷層をヘイズ層を通じて視認させことができるので、干渉ムラのない加飾シートを得ることができる。
【0019】
そして、基材シートの表面側にパール顔料を含むトップコート層を印刷する工程と、前記全てのヘアライン印刷層を積層したその裏面側に金属調の色調を表出させる反射層を印刷する工程と、をさらに含むことができる。
これによれば、金属調の色調を有し、パール感が高く、凹凸感に優れ、深みのある自然なヘアラインを実現した加飾シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の加飾シート及び加飾成形体によれば、平行に並ぶ複数の線を有し、その一部が途切れたり濃淡があったり傾いたりするように見えるヘアラインが、干渉ムラがなく、自然な感じに施されたデザインを実現することができる。
【0021】
また、本発明の加飾シートの製造方法によれば、印刷によって、干渉ムラがなく自然な感じのヘアラインを有する加飾シートを得ることができる。また、エアーの巻き込みがなく、微細な凹凸パターンでのヘアラインを可能とする加飾シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態で共通する構成、材質、製造方法、作用効果については重複説明を省略する。各図は何れも層構成等を分かりやすく説明するために模式的に示しており、縮尺等は実際とは異なる。また、本願における明細書や特許請求の範囲の加飾シートや加飾成形体の記載において、「表面」と「裏面」の区別は、看者から見られる側を「表面」側とし、その反対側を「裏面」側としている。
【0023】
第1実施形態〔図1〜図4〕
第1実施形態の加飾シート11を図1〜図3に示す。図1は加飾シート11の平面図、図2は加飾シート11の底面図、図3は加飾シート11の断面図である。加飾シート11は、透明な樹脂フィルムでなる基材シート1の裏面1aに、ヘイズ層12、第1ヘアライン印刷層13、第2ヘアライン印刷層14がこの順に積層している。
【0024】
ヘイズ層12は、その裏面側に形成される複数のヘアライン印刷層13,14から生じる干渉ムラをなくし、また、色調を変化させ深みのある自然な感じのヘアラインを生じさせる層である。
【0025】
第1ヘアライン印刷層13は、互いに略平行な複数の線で構成される縞状パターンが一度の印刷で形成される層である。略平行とは、模様を構成する範囲内で隣接する線が互いに交わらない関係までも含める意であり、厳格な意味にとらわれすぎることを排除するものである。したがって、本明細書や請求の範囲の記載において“平行”というときでも“略平行”の意味で用いているものとする。一の線は、直線だけでなく曲線であっても、波形状の線であっても良く、同心円の関係にある複数の線の関係も略平行には含まれる。また、一の線は、断点のない実線だけでなく、断点のある波線状や鎖線状であっても良い。この縞状パターンを構成する複数の線の線幅は同一であっても異なっていても良い。また、隣接する線間の間隔、即ち線間隔は同一であっても異なっていても良い。さらに、一の線においてその線幅は均一であっても均一でなくても良い。好ましくは異なる複数の線幅や線間隔等が組み合わされてなるものが良い。但し、線幅、線間隔、線ピッチは以下で説明する所定の範囲内にあることが好ましい。ここで「線幅」とは一の線の太さをいう。「線間隔」とは一の線の外縁から隣接する他の線の外縁までの長さ、即ち線自体の太さを含まない線と線との間の間隔である。「線ピッチ」とは一の線の中心から隣接する他の線の中心までの長さ、即ち隣接する線の中心間の距離である。
【0026】
縞状パターンを構成する各線の線幅は30μm〜100μmであり、隣接する線の線間隔は40μm〜180μmであることが好ましい。線幅が30μmより小さいと線を視認し難くなるためヘアラインと認めにくくなる。線幅が100μmを超えると縞状にならずに、ヘアラインと認めにくくなる。また、線間隔が40μmより短いと上下に重なる縞状パターンの重なりが見えにくくなり、深みのあるヘアラインが得られない。線間隔が180μmを超えるとヘアラインを視認しにくくなる。こうした線幅と線間隔の関係から、線ピッチは70μm〜280μmが好ましく、110μm〜230μmがより好ましい。
【0027】
第2ヘアライン印刷層14も縞状パターンでなるが、その縞状パターンは、第1ヘアライン印刷層13と同一であっても良いし異なっていても良い。但し、同一の縞状パターンであっても、第1ヘアライン印刷層13と第2ヘアライン印刷層14のそれぞれの縞状パターンは所定の交差角度で交わっている。同一縞状パターンにすれば印刷版の作製が容易であり、異なる縞状パターンにすればより自然な感じのヘアラインが得られる点で好ましい。図4では、第1ヘアライン印刷層13を構成する縞状パターンと第2ヘアライン印刷層14を構成する縞状パターンが所定の角度θ1で交差した状態を示す。
【0028】
第1ヘアライン印刷層13の縞状パターンと第2ヘアライン印刷層14の縞状パターンの交差角度は0.1°〜3.0°であることが好ましい。縞状パターンが重なることで、大略平行に並ぶ複数の線の一部が途切れたり濃淡があったり傾いたりするように見えるヘアラインが得られるからである。交差角度が0.1°よりも小さいと単調な平行線の連続であるヘアラインに見えてしまい、3.0°を超えるとおよそヘアラインとは呼べないような格子模様が生じてしまう。
【0029】
図1及び図2で示した加飾シート11は、第1ヘアライン印刷層13の縞状パターンと第2ヘアライン印刷層14の縞状パターンが、共に同じ太さで等間隔に並んだ直線で構成される同一縞状パターンからなり、両縞状パターンが角度3.0°で交差している例である。なお、図1や図2においては、基材シート1の端の部分ではヘアライン印刷層13,14が施されていないが、ヘアライン印刷層13,14の重なり状況をわかりやすく説明するためであり、むしろ基材シート1の全面にヘアライン印刷層13,14が形成されていることが好ましい。
【0030】
図1や図2で示す加飾シート11の変形例を図5と図6の底面図で示す。図1や図2に示す加飾シート11は、その縞状パターンが同一の線幅の直線が同一の線間隔で並んでなるものであったが、図5や図6で示す加飾シート11b,11cは、線幅や線間隔などを変化させている。即ち、図5に示す加飾シート11bは、3種の線幅と1種の線間隔によって構成される縞状パターンでなる第1ヘアライン印刷層13bと、1種の線幅と1種の線間隔によって構成される縞状パターンでなる第2ヘアライン印刷層14bとが2.0°の角度で交差している例である。また、図6に示す加飾シート11cは、3種の線幅と3種の線間隔によって構成される縞状パターンでなる第1ヘアライン印刷層13cと、この縞状パターンとは異なる3種の線幅と3種の線間隔によって構成される縞状パターンでなる第2ヘアライン印刷層14cとが2.0°の角度で交差している例である。このようにすれば、自然な感じを与えるヘアラインとすることができる。
【0031】
ここで加飾シート11を構成する各層の材質等について説明する。
ヘイズ層12は、樹脂液に光を散乱させる性質を有する物質を添加した印刷インキを用いて形成することができ、例えば、アクリル系、ビニル系、ポリエステル系、アクリル・PC系、ABS・PS系、ウレタン系、ポリオレフィン系、エポキシ系、アルキッド系などから選ばれる樹脂に、炭酸カルシウムや架橋ポリメチルメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、硫酸バリウム、シリコーン、酸化チタン、マイカ、オキシ塩化ビスマスなどから選ばれる粒子を単独で、または組み合わせて分散させたインキを用いることができる。これらの樹脂の中でも、ABS・PS系、ビニル系、アクリル・PC系は、基材シート1に対し高い密着性を有する点で好ましい材料である。また、これらの粒子の中でも、マイカなどのパール顔料を用いてパール印刷層とすることが好ましい。マイカなどの、可視光線をスペクトルに分けるパール顔料を用いたパール印刷層は、真珠様光沢を有し、また、干渉ムラをなくす効果が高いからである。
上記樹脂は、液状樹脂であっても、溶剤で溶解した樹脂であっても良い。粒子の粒径は、平均粒径で0.1μm〜50μmであることが好ましい。50μmより大きいと、ヘイズ層12表面の凹凸が大きくなり、その後に印刷されるヘアライン印刷層13,14が不鮮明となるからであり、0.1μmより小さいと、添加量を増やしたり、分散が困難になったりする不都合が生じるからである。樹脂に対する粒子の含有量は、1.0wt%〜30wt%とすることが好ましい。1.0wt%より少ないと、ヘイズ層12を設けた効果が得られ難く、30wt%より多いと全体的に暗くなってしまうからである。ヘイズ層12の塗布厚は5μm〜20μm程度である。
【0032】
第1ヘアライン印刷層13や第2ヘアライン印刷層14は、縞状パターンの重なりを表現するため透光性の印刷インキが用いられる。第1ヘアライン印刷層13用の印刷インキや第2ヘアライン印刷層14用の印刷インキに含有する着色材には黒色系顔料が好ましい。高級感があって重みのあるヘアラインとするためである。しかしながら、デザインに応じて黒色以外の顔料を用いることもできる。また場合により、パール顔料や金属粉を含ませて金属調にすることもできる。さらに、印刷時のインキかすれや印刷後のインキにじみ等を防ぐため、シリカなどの粉末やワックスを添加することもできる。ヘアライン印刷層13,14の塗布厚も5μm〜15μm程度である。
【0033】
基材シート1は、複数のヘアライン印刷層13,14を積層でき、ヘアライン印刷層13,14を視認させる透光性を有する樹脂フィルムからなる。例えば、ポリカーボネート樹脂の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、透明ABS樹脂などが挙げられる。基材シート1の表面には艶消し調に視認させるように、シボ加工が施され凹凸を有するフィルムを用いることもできる。基材シートの厚みは用途によって変わり得るが印刷適正や樹脂成形体への加工性の観点から16μm〜500μm程度が好ましい。但し、樹脂成形体に加工せず、加飾シート11だけで利用するような場合には、2mm〜3mmといった厚い材料を用いることもできる。
【0034】
次に加飾シート11を備える「加飾成形体」としての加飾ケース10を説明する。図7で示すように、加飾ケース10は、「成形体」としての筐体2に加飾シート11を設けたものである。基材シート1が表面側となるように、筐体2の外形面形状に沿って加飾シート11が固着されている。筐体2は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマー、金属など用途によって適宜選択される材料から形成される。
【0035】
加飾シート11及び加飾ケース10の製造方法は次のとおりである。基材シート1の裏面1aに、スクリーン印刷やパッド印刷などの印刷にてヘイズ層12、第1ヘアライン印刷層13、第2ヘアライン印刷層14を順に形成する。ここで、第1ヘアライン印刷層13と第2ヘアライン印刷層14とは、互いの縞状パターンが0.1°〜3.0°の範囲内の所定角度で交差するように形成する。こうして加飾シート11が得られる。次に、この加飾シート11を筐体2の射出成形金型にインサートして筐体2を射出成形し、加飾シート11と筐体2とを一体形成した加飾ケース10を得る。なお、本実施形態では加飾シート11と筐体2とをインサート成形にて一体化しているが、圧着などの製法を用いることもできる。さらに加飾シート11と筐体2との界面に接着剤を介在させて両者の固着力を高めることもできる。
【0036】
加飾シート11及び加飾ケース10によれば、第1ヘアライン印刷層13の裏面に積層する第2ヘアライン印刷層14の縞状パターンが、第1ヘアライン印刷層13の縞状パターンを通して見え隠れし、線が途切れたり、太さが変わったりして見えるとともに、濃淡の差を視認することができる。こうして立体的に交差する縞状パターンを視認することができ、奥行き方向に凹凸観があって深みのあるヘアラインを実現することができる。
【0037】
ヘイズ層がその裏面に形成されるヘアライン印刷層13,14の発色や反射の程度を変化させ、線の重なり部分と線のない部分との濃度差を干渉させることで、干渉ムラが無くより自然に感じるヘアラインを実現できる。また、従来技術のような凹凸パターン面にホットスタンプ箔を転写したものと異なり、エアー巻き込みによる品位の低下の無いヘアラインとすることができる。
【0038】
第2実施形態〔図8〕
第2実施形態の加飾シート21の断面図を図8に示す。加飾シート21が、第1実施形態の加飾シート11と異なるのは、ヘイズ層12を第1ヘアライン印刷層13と第2ヘアライン印刷層14との間に設ける構成としたことである。
【0039】
本実施形態の加飾シート21は、基材シート1の裏面に第1ヘアライン印刷層13を設けてからヘイズ層12を設けるため、第1ヘアライン印刷層13が再現性良く印刷できる。即ち、加飾シート11のように、ヘイズ層12の後に第1ヘアライン印刷層13を印刷する場合には、ヘイズ層12の表面が比較的ざらついた表面となるため、その後に印刷される第1ヘアライン印刷層13の仕上がりがざらついたものとなるのに対し、第1ヘアライン印刷層13を先に印刷すれば、基材シート1の平坦な裏面1aに第1ヘアライン印刷層13が印刷されることから縞状パターンがきれいに印刷される。したがって、加飾シート21によればきれいに縞状パターンが形成されたインパクトがあるヘアラインとすることができる。また、第1ヘアライン印刷層13による縞状パターンが製品間でばらつきがなく得られるため、歩留まりが良く不良品の出にくい加飾シート21が得られる。こうした加飾シート21も前記加飾シート11と同じようにして加飾成形体を製造することができる。
【0040】
第3実施形態〔図9〕
第3実施形態の加飾シート31の断面図を図9に示す。加飾シート31は、ヘアライン印刷層を3層設けている。即ち、加飾シート31では、基材シート1の裏面側に第1ヘアライン印刷層13、第2ヘアライン印刷層14、ヘイズ層12、第3ヘアライン印刷層35がこの順に積層されている。第3ヘアライン印刷層35は、第1ヘアライン印刷層13や第2ヘアライン印刷層14と同様の印刷インキからなり、ヘイズ層12の上に印刷形成される。第3ヘアライン印刷層35の塗布厚も5μm〜15μm程度である。
【0041】
図10は、第1ヘアライン印刷層13、第2ヘアライン印刷層14、そして第3ヘアライン印刷層35の積層状態を示した図である。第1ヘアライン印刷層13の縞状パターンと第2ヘアライン印刷層14の縞状パターンの交差角度をθ2、第1ヘアライン印刷層13の縞状パターンと第3ヘアライン印刷層35の縞状パターンの交差角度をθ3、第2ヘアライン印刷層14の縞状パターンと第3ヘアライン印刷層35の縞状パターンの交差角度をθ4とすると、θ2、θ3、θ4ともに0.5°〜3.0°の範囲内にある。
【0042】
本実施形態の加飾シート31は、ヘアライン印刷層が3層組み合わされているため、2層の場合に比べて、より深みのある自然な感じのヘアラインが実現できる。また、加飾シート31は、基材シート1の裏面1aに第1ヘアライン印刷層13と第2ヘアライン印刷層14を設けてからヘイズ層12を設けるため、第1ヘアライン印刷層13について再現性が良く、またインパクトが強く印刷される一方で、ヘイズ層12と、ヘイズ層12を通じて視認される第3ヘアライン印刷層35によって、干渉ムラが消失して自然な感じのヘアラインを実現している。加飾シート31も前記加飾シート11と同じようにして加飾成形体を製造することができる。
【0043】
第4実施形態〔図11〕
第4実施形態の加飾シート41の断面図を図11に示す。加飾シート41は、第2実施形態の加飾シート21にトップコート層46を設けた構成である。トップコート層46は基材シート1の表面1bに設けられ、基材シート1を保護するとともに、加飾シート41の表面にあってヘアラインの仕上げを行う層である。基材シート1の裏面1aに形成された各種印刷層12,13,14によって得られるヘアラインをより完成された、デザイン的に優れたヘアラインとすることができる。こうしたトップコート層46は、透明バインダー樹脂に紫外線吸収剤やフィラー、パール顔料が含まれた印刷インキから形成される。紫外線吸収剤が基材シート1の変色などの劣化を防ぎ、シリカなどのフィラーがマット調に仕上げ、パール顔料がパール調の反射効果を向上させる。トップコート層46の塗布厚は5μm〜20μm程度である。
【0044】
加飾シート41を製造するには、基材シート1の裏面側の印刷層12,13,14を形成した後、トップコート層46を印刷形成しても良いし、基材シート1の表面にトップコート層46を印刷した後、基材シート1の裏面側の印刷層12,13,14を順次、印刷形成しても良い。加飾シート41も前記加飾シート11と同じようにして加飾成形体を製造することができる。
【0045】
加飾シート41では、フィラーによりマット感を生じさせて落ち着いたデザインとする一方、ヘイズ層12とは別にもう一層パール顔料を設けた層を形成することで、パール感を高めることができる。また、第1ヘアライン印刷層13は一つのパール顔料含有層を通じて視認され、第2ヘアライン印刷層14は二つのパール顔料含有層を通じて視認されるように構成しているため、第1ヘアライン印刷層13と第2ヘアライン印刷層14とで発色や反射の程度が異なり趣のあるヘアラインを実現している。
【0046】
また、加飾シート41では、パール顔料を有するトップコート層46を基材シート1の表面に1bに設けたため、ヘイズ層12の次に第1ヘアライン印刷層13を印刷する場合の不都合がなく、平坦な面に第1ヘアライン印刷層13を形成できるとともに、第1ヘアライン印刷層13をパール顔料含有層46を通じて視認させる構成を実現することができる。
【0047】
第5実施形態〔図12〕
第5実施形態の加飾シート51の断面図を図12に示す。加飾シート51は、第1ヘアライン印刷層13が基材シート1の表面に設けられ、第2ヘアライン印刷層14と第3ヘアライン印刷層35が基材シート1の裏面に設けられている。また、第1ヘアライン印刷層13の表面にはトップコート層46が設けられている。加飾シート51におけるトップコート層46は、第1ヘアライン印刷層13をも保護するものである。加飾シート51も前記加飾シート11と同じようにして加飾成形体を製造することができる。
【0048】
加飾シート51では基材シート1の両面1a,1bにそれぞれヘアライン印刷層を設けた構成としている。このため、積層するヘアライン印刷層の間に透明な基材シート1が存在するため、さらに深みのあるヘアラインを実現することができる。
【0049】
本実施形態は複数のヘアライン印刷層13,14,35を基材シート1の表裏両面に設けた構造の一例であり、第2ヘアライン印刷層14を基材シート1の表面側に設けるなどの適宜変更が可能である。
【0050】
次に上記各実施形態に共通する変形例について以下に説明する。なお、何れの変形例もある一つの実施形態に適用した場合についてだけ説明するが、他の実施形態についても同様に適用できる。
【0051】
各実施形態の変更例1〔図13〕
変形例1は、反射層を設けることを特徴とする。図13には第3実施形態の加飾シート31の裏面にさらに反射層67を設けた実施形態としての加飾シート61を示す。反射層67は、金属調の外観(メタリック感)を表出させる層である。アルミニウム粉やステンレス粉、銅粉、ブロンズ粉、錫粉などの金属粉を含有したメタリックインキを第3ヘアライン印刷層35の後に印刷形成して得られる。メタリックインキには金属色にバラエティーをもたせるために、金属粉の他に着色顔料を加えることもできる。例えば、アルミニウム粉に赤色顔料を加えることでチタン調の加飾を実現することができる。反射層67の塗布厚は5μm〜15μm程度である。この加飾シート61も前記加飾シート11と同じようにして加飾成形体を製造することができる。
【0052】
加飾シート61は、複数のヘアライン印刷層13,14,35の裏面に反射層67を備えるため、これらのヘアライン印刷層13,14,35を裏面側から明るく照らし出すことができ、また金属調の外観を表現することができる。よって金属調のヘアラインを実現できる。また、ヘイズ層12と金属粉を含有したメタリックインキでなる反射層67とが組み合わされているため、パール顔料含有層12と金属粉含有層67とを使いわけ、金属調に優れるとともに粒子感のあるデザインを具現化することができる。
加飾シート61では反射層67を加飾シート51の裏面に設ける構成としたが、反射層67は、他の加飾シート11,21,31,41,51の裏面に設けることもできる。
【0053】
各実施形態の変更例2〔図14〕
変形例2は、着色層を設けることを特徴とする。図14には、着色層78を設けた加飾シート71を示す。加飾シート71は、基材フィルム1側から、第1ヘアライン印刷層13、ヘイズ層12、第2ヘアライン印刷層14、着色層78、第3ヘアライン印刷層35、反射層67が順に印刷形成された構成である。着色層78は、デザインに応じて種々の色調を表現するため、デザインに応じて選択された顔料等の着色材を含む印刷層である。着色層78を設ける位置は特に限定されないが、ここでは、第2ヘアライン印刷層14と第3ヘアライン印刷層35との間に着色層78を設けているので、第2ヘアライン印刷層14と第3ヘアライン印刷層35との間に距離が開き、色の変化と深みを表現することができる。種々の色調の着色層78を施すことが可能で、ヘアライン印刷層13,14,35からなる線部分とその背景部分との色の変化の程度を種々変更することができる。このように、着色層78を設ける位置や色調によって、線模様の表われ方を変えることができ、デザインバリエーションを多くすることができる。一例として、ヘアライン印刷層13,14,35を黒色系インキにて印刷し、着色層78をスモーク色インキで形成すると、深みのある金属調の加飾シート71が得られる。着色層78の塗布厚は5μm〜15μm程度である。
【0054】
各実施形態の変更例3〔図15〕
変形例3は、保護層を設けることを特徴とする。図15には、前述の加飾シート71の裏面にさらに保護層89を設けた加飾シート81を示す。保護層89は、成形体に加飾シートを固着して加飾成形体を形成する際には接着剤としての機能を有し、加飾シートの保存、運搬時にあっては、保護層89より内側の印刷層を保護する機能を有している。したがって、保護層89があれば、加飾シートから成形体へ加工する際に、溶融樹脂がヘアライン印刷層などの印刷層に直接あたることを防ぎ、加飾部分に歪みが生じることがない。保護層89は、熱溶融性の樹脂材料を含む溶剤型印刷インキで形成したり、ホットメルト型インキで形成したりすることができる。保護層89の塗布厚は5μm〜30μm程度である。
【0055】
各実施形態の変更例4〔図示せず〕
これまでの実施形態ではヘアライン印刷層は2層または3層で構成していたが、さらに別のヘアライン印刷層を積層することができる。しかしながら、ヘアライン印刷層が5層を超えると裏面側に形成したヘアライン印刷層が視認し難くなるため、ヘアライン印刷層は2層〜4層積層させることが深みのあるヘアラインを形成できる点で好ましい。
【実施例】
【0056】
以下の表1や表2に示す種々の層構成からなる加飾シートを製造して外観を評価した。
【0057】
実験例1
ヘイズ層12とヘアライン印刷層13,14,35の位置関係と、ヘアラインの美感などとの関係について検討すべく、次の表1で示す層構成からなる加飾シートを製造した(試料1〜試料7で示す)。
表1において、「基材」は基材シート1、「(1)」は第1ヘアライン印刷層13、「(2)」は第2ヘアライン印刷層14、「(3)」は第3ヘアライン印刷層35、「パール」はヘイズ層12をそれぞれ表す。「実施形態」の欄は対応する加飾シートが上述の実施形態で符号付きで示されていれば表示した。例えば、試料1は、第1実施形態の加飾シート11と同じ層構成であることを「加飾11」のように表示している。
【0058】
【表1】

【0059】
実験例2
さらに、トップコート層46や、反射層67、着色層78を設けた場合のヘアラインの仕上がりに対して検討すべく、次の表2で示す層構成からなる加飾シートを製造した(試料6,試料11〜試料15で示す)。
表2において、各表記は表1と同様であり、さらに「トップ」はトップコート層46、「反射」は反射層67、「着色」は着色層78をそれぞれ表す。「実施形態」については表1と同様である。また、試料15の加飾シートについては、その構成を図16に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表1、表2で示す各層の詳細は次のとおりである。
「基材シート1」; 一方面にシボ目が形成されている厚さ100μmの透明なポリカーボネート樹脂を用いた。
「第1ヘアライン印刷層13」; 1本の直線の線幅が30μm〜100μmの範囲内で、隣接する直線の間隔が40μm〜180μmの範囲内にあるように複数の直線が略平行に並んだ縞状パターンを構成するものとして、黒色光沢インキをスクリーン印刷して厚さ8μm程度に形成した。
「第2ヘアライン印刷層14」; 第1ヘアライン印刷層13と同一模様であるが0.1°の角度だけ時計の針の回転方向(右回り)に傾斜させた縞状パターンを、第1ヘアライン印刷層13と同様にして厚さ8μm程度に形成した。
「第3ヘアライン印刷層35」; 第1ヘアライン印刷層13と同一模様であるが0.2°の角度だけ時計の針の回転方向と逆方向(左回り)に傾斜させた縞状パターンを、第1ヘアライン印刷層13と同様にして厚さ8μm程度に形成した。
「ヘイズ層12」; パール顔料含有のパールインキをスクリーン印刷して厚さ8μm程度に形成した。
「反射層67」; アルミ粉含有のメタリックインキをスクリーン印刷して厚さ8μm程度に形成した。
「着色層78」; スモーク色インキをスクリーン印刷して厚さ8μm程度に形成した。
【0062】
試料1〜試料7の加飾シートの外観を目視で評価した。その結果を表1に示す。
『美感』の欄は、ヘアラインの仕上がり具合について、優れたヘアラインが認められる場合を「○」、ヘアラインとしては認められない場合を「×」とした。
『干渉ムラ』の欄は、干渉ムラが生じない場合を「○」、干渉ムラが生じる場合を「×」とした。
『再現性』については、同じヘアラインが何度も繰り返し製造できる場合を「○」、同じ版を使いながら異なるヘアラインが得られる場合を「×」とした。
【0063】
実験例1の結果から、全てのヘアライン印刷層13,14,35の裏面にヘイズ層12を積層した試料3と試料7の加飾シートは干渉ムラが生じやすくなってしまうが、ヘイズ層12が少なくとも一のヘアライン印刷層よりも表面側に積層される加飾シート、換言すれば、ヘイズ層12が異なるヘアライン印刷層の間に積層される試料1、試料2、試料4〜試料6の加飾シートは、干渉ムラが生じない美感の優れたヘアラインが得られることが分かる。また、ヘイズ層12が全てのヘアライン印刷層13,14,35よりも表面側にある試料1と試料4の加飾シートは、印刷の再現性が悪く、品質の安定しないヘアラインが得られることが分かる。
【0064】
試料6、試料11〜試料15の加飾シートの外観を目視で評価した。その結果を表2に示す。表2では、『美感』の欄を『自然』、『金属調』、『高級感』、『パール感』に細分化して評価した。
『自然』の欄は、ヘアラインが機械的に描かれた印象ではなく自然に近い感じに仕上がっている程度を6段階に分けて示した。自然な感じに仕上がっていない場合を「×」とし、自然な感じに仕上がっている場合につき、さらに数字の1〜5の5段階に分けて示した。最も程度の低い1であっても自然な感じを与えるものである。
『金属調』の欄は、ヘアラインが金属調に視認できる場合を「○」、金属調とは認められない場合を「×」とした。
『高級感』の欄は、描かれたヘアラインが高級感を醸し出す場合を「○」とし、さらに程度が優れる場合を「◎」、高級感が持てず安っぽく見える場合を「×」とした。
『パール感』の欄は、見る角度によって色調等が変化して見え、粒子感、凹凸感が感じられる場合を「○」とし、さらに、粒子感や凹凸感に優れ深みが感じられる場合を「◎」とした。
『干渉ムラ』や『再現性』の評価については表1と同じである。
【0065】
実験例2の結果から、試料6、試料11〜試料15の何れも自然な感じのヘアラインを与えているが、試料15の『自然』の評価が5で最も高く、トップコート層46や着色層78、反射層67の何れも備えると最も自然な感じに近く優れたヘアラインが得られることがわかる。また、トップコート層46を設けると『パール感』がさらに強調されるとともに『高級感』も高まること、着色層78を設けると『高級感』に優れること、反射層67を設けると『金属調』に優れることも分かる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1実施形態の加飾シートの平面図。
【図2】第1実施形態の加飾シート底面図。
【図3】図1のSA−SA線断面図。
【図4】図2の部分拡大図。
【図5】第1実施形態の変形例による加飾シートの底面図。
【図6】第1実施形態の他の変形例による加飾シートの底面図。
【図7】第1実施形態の加飾シートを備える加飾ケースの要部拡大断面図。
【図8】第2実施形態の加飾シートの断面図。
【図9】第3実施形態の加飾シートの断面図。
【図10】第3実施形態の加飾シートの部分拡大断面図。
【図11】第4実施形態の加飾シートの断面図。
【図12】第5実施形態の加飾シートの断面図。
【図13】実施形態の変更例1による加飾シートの断面図。
【図14】実施形態の変更例2による加飾シートの断面図。
【図15】実施形態の変更例3による加飾シートの断面図。
【図16】実施形態の他の変更例である加飾シートの断面図。
【符号の説明】
【0067】
1 基材シート
1a 裏面
1b 表面
2 筐体(成形体)
10 加飾ケース(加飾成形体)
11 加飾シート(第1実施形態)
11b 加飾シート(変形例)
11c 加飾シート(別の変形例)
12 ヘイズ層
13 第1ヘアライン印刷層
13b 第1ヘアライン印刷層(変形例)
13c 第1ヘアライン印刷層(別の変形例)
14 第2ヘアライン印刷層
14b 第2ヘアライン印刷層(変形例)
14c 第2ヘアライン印刷層(別の変形例)
21 加飾シート(第2実施形態)
31 加飾シート(第3実施形態)
35 第3ヘアライン印刷層
41 加飾シート(第4実施形態)
46 トップコート層
51 加飾シート(第5実施形態)
61 加飾シート(実施形態の変更例1)
67 反射層
71 加飾シート(実施形態の変更例2)
78 着色層
81 加飾シート(実施形態の変更例3)
89 保護層
91 加飾シート(実施形態のさらなる変更例))
θ1,θ2,θ3、θ4 交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘアラインを模様として有する加飾シートであって、
透明な基材シートと、
縞状パターンで構成される透光性の2以上のヘアライン印刷層と、
ヘイズ層と、を積層して備えており、
前記2以上のヘアライン印刷層は、各ヘアライン印刷層の縞状パターンが、他のヘアライン印刷層の縞状パターンと平面視で交差して積層されており、
前記ヘイズ層は、少なくとも一のヘアライン印刷層よりも表面側に積層している加飾シート。
【請求項2】
ヘイズ層が二つのヘアライン印刷層の間に積層している請求項1記載の加飾シート。
【請求項3】
ヘアライン印刷層が基材シートの裏面側に印刷されたものであり、この基材シートの表面側にさらにパール顔料を含むトップコート層が積層している請求項1または請求項2記載の加飾シート。
【請求項4】
ヘアライン印刷層の裏面側に金属調の色調を表出させる反射層を備える請求項1〜請求項3何れか1項記載の加飾シート。
【請求項5】
請求項1〜請求項4何れか1項記載の加飾シートを成形体の表面に備える加飾成形体。
【請求項6】
ヘアラインを模様として有する加飾シートの製造方法であって、
透明な基材シートの裏面側に、縞状パターンで構成される透光性の複数のヘアライン印刷層を、各ヘアライン印刷層の縞状パターンが他のヘアライン印刷層の縞状パターンに対し平面視で交差するように印刷する工程と、
複数のヘアライン印刷層の少なくとも何れか一のヘアライン印刷層に先だってヘイズ層を印刷する工程と、を含む加飾シートの製造方法。
【請求項7】
基材シートの表面側にパール顔料を含むトップコート層を印刷する工程と、
前記全てのヘアライン印刷層を積層したその裏面側に金属調の色調を表出させる反射層を印刷する工程と、をさらに含む請求項6記載の加飾シートの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−208377(P2009−208377A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54393(P2008−54393)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】