説明

加飾パネルの製造方法

【課題】模様が平面的又は立体的な加飾パネルを安価に製造する。
【解決手段】平滑な成形面を有する第1型と微細な凹凸模様(線状凹条部)が形成された成形面を有する第2型とを備えた成形型を型閉じして、キャビティに透明な溶融樹脂を射出して表面が平滑に形成されるとともに裏面にヘアライン調の模様(線状凸条部)17が形成されたパネル基材11を成形する。パネル基材11の表面に塗膜23を形成して平面的な模様が形成された第1加飾パネル13を製造する。一方、パネル基材11の裏面に金属蒸着膜25を形成して基材表面側から見て立体的な模様が形成された第2加飾パネル15を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加飾パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加飾パネルには、大別して平面的な模様を有するものと、立体的な模様を有するものとがある。
【0003】
一般に、平面的な模様を有する加飾パネルの製造方法としては、パネル基材の表面に水圧転写により塗膜を形成したり、あるいは直接塗料を塗布したり、さらには印刷フィルムを貼り合わせる等の方法が行われている。
【0004】
一方、立体的な模様を有する加飾パネルの製造方法も種々あるが、その一例として、特許文献1には、パネル基材の表面に塗膜を形成した後、該塗膜にサンドペーパー又は金属ブラシによってヘアライン調の微細な凹凸模様を形成し、その後、この微細な凹凸模様の上にクリア塗料を塗布する方法が開示されている。
【0005】
通常、このような加飾パネルは、目的に応じてそれぞれ独自の製造方法により製造される。
【特許文献1】特開2002−45785号公報(段落0008欄、0012欄、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の如き平面的な模様を有する加飾パネルと、立体的な模様を有する加飾パネルとを製造する場合、各々の製造工程の一部を共通化できればその分だけ加飾パネルの単価を低減することができて好ましい。
【0007】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、模様が平面的又は立体的な加飾パネルを安価に製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、この発明は、模様が平面的又は立体的な加飾パネルのパネル基材を共通の成形型で成形することを特徴とする。
【0009】
具体的には、この発明は、同一形状のパネル基材を用いて平面的な模様が形成された第1加飾パネルと立体的な模様が形成された第2加飾パネルとを製造する方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、平滑な成形面を有する第1型と微細な凹凸模様が形成された成形面を有する第2型とを備えた成形型を用意し、上記第1加飾パネルを製造する場合には、上記成形型の型閉じ状態で第1型と第2型との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出して表面が平滑に形成されるとともに裏面に微細な凹凸模様が形成されたパネル基材を成形した後、該パネル基材の表面に塗膜を形成して平面的な模様を形成し、一方、上記第2加飾パネルを製造する場合には、上記成形型の型閉じ状態で第1型と第2型との間に形成されたキャビティに透明な溶融樹脂を射出して表面が平滑に形成されるとともに裏面に微細な凹凸模様が形成された透明なパネル基材を成形した後、該パネル基材の裏面に塗膜又は蒸着膜を形成して基材表面側から見て立体的な模様を形成することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記パネル基材の裏面の微細な凹凸模様はヘアライン調の模様であり、上記第2加飾パネルでは、裏面の塗膜又は蒸着膜は金属光沢を有する膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、平面的な模様が形成された加飾パネルと立体的な模様が形成された加飾パネルとの各々のパネル基材は同一形状であるため共通の成形型で成形でき、従来のように独自の製造方法により全工程を別々に製造する場合に比べて第1及び第2加飾パネルを安価に製造することができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、メタリック感を有する膜とヘアライン調の模様とが相まって立体感のある意匠性の高い第2加飾パネルにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
図1乃至図3は自動車のインストルメントパネル1を示す。該インストルメントパネル1はアッパーパネル3を備え、該アッパーパネル3を被装着物としてその下端で、かつグローブボックス5上方のパネル装着箇所7にこの発明の実施形態に係る製造方法により製造された加飾パネルが装着されている。上記パネル装着箇所7は、アッパーパネル3の前面部3aに対して凹陥して形成され、加飾パネル装着状態でアッパーパネル3、加飾パネル及びグローブボックス5の三者がほぼ面一になっている。
【0016】
この実施形態では、同一形状の樹脂製透明パネル基材11を用いて平面的な模様が形成された第1加飾パネル13(図2参照)と、立体的な模様が形成された第2加飾パネル15(図3参照)との2種類の加飾パネルを製造する。
【0017】
上記第1及び第2加飾パネル13,15は、次のような工程で製造される。製造に先立ち、図4に示すように、平滑な成形面31aを有する第1型31と、全体として、ヘアライン調の微細な凹凸模様を構成する線状凹条部33aが形成された成形面33bを有する第2型33とを備えた成形型35を用意する。
【0018】
まず、上記成形型35を型閉じした状態で第1型31と第2型33との間に形成されたキャビティ37に透明な溶融樹脂Rを射出する。そして、この溶融樹脂Rが固化すると、図5(a)に示すように、上記第1型31の平滑な成形面31aに対応して表面が平滑に形成されるとともに、上記第2型33の微細な凹凸模様(線状凹条部)33aが形成された成形面33bに対応して裏面に微細な凹凸模様としてのヘアライン調の模様(線状凸条部)17が形成された透明なパネル基材11が成形される。
【0019】
該パネル基材11は、図6にも示すように、該パネル基材11の主体をなす横長略矩形の本体部11aを備え、該本体部11aの上端縁の先端には、複数個の舌状突起部19が基材長手方向に間隔をあけて外側方に向かって一体に突設されている。また、上記本体部11aの下端縁の先端には、爪状突起部21が基材長手方向に間隔をあけて一体に突設されている。該爪状突起部21の片面には、断面三角形状の爪部21aがコ字状のスリット21bにより可撓性を有するように囲まれて突設されている。なお、21cは、爪部21aの反対面側に一体に突設された一対の補強リブである。この補強リブ21cは、上記爪部21aを撓ませて後述する第1係合孔27に着脱させる際、上記スリット21b外側部分が撓まないように補強する役割と、第1係合孔27と爪部21aとの間に爪部21aの撓みスペースを確保する役割とを担っている。
【0020】
このように成形されたパネル基材11を用いて上記第1加飾パネル13を製造するには、図5(b)に拡大して示すように、上記パネル基材11の表面に不透明な塗膜23を形成して平面的な模様を形成する。これにより、上記パネル装着箇所7及びヘアライン調の模様(線状凸条部)17が基材表面側から見えないようになっている。一方、上記のように成形されたパネル基材11を用いて上記第2加飾パネル15を製造するには、図5(c)に拡大して示すように、上記パネル基材11の裏面に金属光沢を有する金属蒸着膜25を形成して基材表面側から見て立体的な模様を形成する。これにより、ヘアライン調の模様(線状凸条部)17は基材表面側から見えるが、上記パネル装着箇所7は基材表面側から見えないようになっている。
【0021】
したがって、本実施形態によれば、1つの成形型35で成形したパネル基材11を平面的な模様が形成された第1加飾パネル13と立体的な模様が形成された第2加飾パネル15との共通のパネル基材11として共通しているので、従来のように独自の製造方法により全工程を別々に製造する場合に比べて第1及び第2加飾パネル13,15を安価に製造することができる。
【0022】
また、第2加飾パネル15は、メタリック感を有する膜とヘアライン調の模様(線状凸条部)17とが相まって立体感のある意匠性の高いものにすることができる。
【0023】
さらに、成形型35の成形面33bの微細な凹凸模様(線状凹条部)33aでパネル基材11に基材成形と同時にヘアライン調の模様(線状凸条部)17が形成されるので、別途ヘアライン調の模様(線状凸条部)17を形成する工程を設けなくてもよい。
【0024】
図7は本実施形態の変形例を示す。この変形例では、第1加飾パネル13の塗膜23及びパネル基材11は共に不透明に構成されている。上記塗膜23は不透明でありパネル基材11は表面側から見えないので、このように、パネル基材11は不透明であってもよい。
【0025】
このように製造された上記第1及び第2加飾パネル13,15は、図2及び図3に示すように、パネル装着箇所7の第2係合面部3cに車幅方向に間隔をあけて複数個貫通形成された第2係合孔29に上記舌状突起部19を挿入して係合させるとともに、上記パネル装着箇所7の第1係合面部3bに車幅方向に間隔をあけて複数個貫通形成された第1係合孔27に爪状突起部21を対応させた状態で、第1及び第2加飾パネル13,15の本体部11aが押圧されてアッパーパネル3に装着される。この際、上記第1係合孔27に補強リブ21cが当接するとともに、爪部21aが第1係合孔27に押し付けられて撓み、上記爪部21aが第1係合孔27を通過した後、第1係合孔27に係合して、反本体部の略面直方向に抜けないようになっている。
【0026】
なお、本実施形態では、パネル基材11の裏面にヘアライン調の模様(線状凸条部)17を形成したが、微細な凹凸模様であればよく、ヘアライン調の模様(線状凸条部)17に限定されない。
【0027】
また、本実施形態では、第2加飾パネル15のパネル基材11の裏面には、金属蒸着膜25を施したが、金属蒸着膜25に限らず、例えば、水圧転写により模様層を形成したりあるいはパネル基材11の裏面に塗装を施す等してもよい。
【0028】
さらに、本実施形態では、加飾パネルを自動車のインストルメントパネル1に装着するようにしたが、自動車の他の内装品や自動車以外の内装品に装着するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、一種類の金型で多彩な意匠を表現する加飾パネルの製造方法について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施形態に係る製造方法により製造された加飾パネルが適用された自動車のインストルメントパネルの略左半分を示す正面図である。
【図2】この発明の製造方法により製造された第1加飾パネルがアッパーパネルに装着された状態を示す図6のA−A線に相当する断面図である。
【図3】この発明の製造方法により製造された第2加飾パネルがアッパーパネルに装着された状態を示す図6のA−A線に相当する断面図である。
【図4】キャビティに溶融樹脂が充填される状態を示す成形型の断面図である。
【図5】(a)はパネル基材、(b)は第1加飾パネル、(c)は第2加飾パネルのそれぞれ部分拡大図である。
【図6】この発明の実施形態に係る製造方法により製造された加飾パネルのパネル基材の部分斜視図である。
【図7】この発明の実施形態の変形例における図5(b)相当図である。
【符号の説明】
【0031】
1 インストルメントパネル
3 アッパーパネル
11 パネル基材
13 第1加飾パネル
15 第2加飾パネル
17 ヘアライン調の模様(線状凸条部)
23 塗膜
25 金属蒸着膜(塗膜又は蒸着膜)
31 第1型
31a 成形面
33 第2型
33a 微細な凹凸模様(線状凹条部)
33b 成形面
35 成形型
37 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一形状のパネル基材を用いて平面的な模様が形成された第1加飾パネルと立体的な模様が形成された第2加飾パネルとを製造する方法であって、
平滑な成形面を有する第1型と微細な凹凸模様が形成された成形面を有する第2型とを備えた成形型を用意し、
上記第1加飾パネルを製造する場合には、上記成形型の型閉じ状態で第1型と第2型との間に形成されたキャビティに溶融樹脂を射出して表面が平滑に形成されるとともに裏面に微細な凹凸模様が形成されたパネル基材を成形した後、該パネル基材の表面に塗膜を形成して平面的な模様を形成し、
一方、上記第2加飾パネルを製造する場合には、上記成形型の型閉じ状態で第1型と第2型との間に形成されたキャビティに透明な溶融樹脂を射出して表面が平滑に形成されるとともに裏面に微細な凹凸模様が形成された透明なパネル基材を成形した後、該パネル基材の裏面に塗膜又は蒸着膜を形成して基材表面側から見て立体的な模様を形成することを特徴とする加飾パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の加飾パネルの製造方法において、
上記パネル基材の裏面の微細な凹凸模様はヘアライン調の模様であり、上記第2加飾パネルでは、裏面の塗膜又は蒸着膜は金属光沢を有する膜であることを特徴とする加飾パネルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−55329(P2008−55329A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235732(P2006−235732)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】