説明

動きが無いことに反応する警報機

【課題】孤独死を迎えざるを得ない老人や弱者たちが倒れて緊急状態であることを外部に知らしめるために、一定時間動きの無いことに反応する警報が必要になる。また、廉価に製作可能で各該当住宅に設置しうる必要がある。孤独死の発見不能は、亡骸のミイラ化や虫が湧いて死臭がこびりつく現象を招く。その結果不動産の価値が極端に下落し、遺族や家主にとって多大なる損失を発生させる。
【解決手段】動きの無いことによる警報を、ふいご5に圧力を加えふいご5内の空気を弁4から一気に追い出し、ピンホール3より外部の空気を微量ずつ取り込むことによって遅延するスイッチを可能にさせ、異常の無い生活者が必ず行動するであろう行動様式にこの警報機を組み込む。トイレのドアの蝶番部分にこの突起1を設置し、警報機の末端にブザー8や回転灯9を取り付け、外部に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一人住まいの老人が昏倒することによって救助されることもなく死に至る問題を解消させるための、動きが無いことに反応する警報機に関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術を利用した警報装置が存在していた。また異常を関係者へ自動送信できる装置が存在していた。
【0003】
一例として、一人住まいの老人による電気ポットの使用状況から異常を察知し、管理センターを通して一人住まいの老人の関係者に連絡を取るシステムがあるが、老人によっては電気代の節約からポットをほとんど使わないケースもあり、正確な異常検知に支障を来たしている。
【0004】
また、本来昏倒した一人住まいの老人を救うはずの関係者が存在しないばかりか、関係を拒否するケースも多く、連絡先そのものが存在せず、孤独に暮らす老人はこの電気ポットを利用するシステムから排除されていた。
【0005】
緊急警報スイッチを家屋内の決められた場所に準備することによって、一人住まいの老人が昏倒した際に、自らがスイッチを入れて外部のブザーや回転灯を作動させ、外部の住人に緊急を知らせるものがあった。
【0006】
これまで地域の協力による老人同士の決まりごとを作り、一人住まいの老人が元気なときには黄色い旗や造花を通りから見える場所に朝一番で個々に掲げるといった互助ルールを作っている地域が存在しており、黄色い旗や造花が掲げられていない場合には、その家屋内で異常が発生したことを周りの住民が認知し、緊急通報をしていた。
【0007】
また、一人住まいの老人に、発信機を内蔵させたペンダントやブレスレットなどの装飾品を身につけさせ、異常時には警報を外部に発信させる廉価な方法を講じたものも存在している。
【0008】
トイレ使用時にトイレという特殊空間だけに限定された通報システムというものも存在していた。
【0009】
エアーマットにおける圧力センサーを利用して老人の健康動向を判断するシステムも存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−165328号公報
【特許文献2】特開2009−217786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、かかる状況における警報機は、孤独死を迎えざるを得ない老人や一人暮らしの弱者たちが倒れて危篤状態であることを外部に知らしめる際に、誰もが利用できる廉価な対象でなければならないにもかかわらず、電子技術や自動送信技術を駆使しているために高価であった。また製造のために多種多数の電子部品が必要になり、その結果、故障率が上がる欠点があった。
【0012】
かつ維持費も月々かかることから、小額の年金受給者、無年金者そして仕事の無い一人住まいの若者にとっては不向きである。病院やサナトリウムにおいては高度な電子技術で患者を管理できるシステムは存在しているが、年金暮らしの一人住まいの老人や無年金の老人はそれらに入所することすら不可能であった。
【0013】
仕事をリタイヤした一人暮らしの老人は生活リズムが狂いやすく、生活リズムの異常をベースとして運用させる警報機に関しては誤作動が起きやすかった。
【0014】
また、昏倒という不測の事態に襲われた一人住まいの老人が警報を発信できれば問題はないのであるが、その状況下の老人はまったく意識がなく、異常を発信することは、例えすぐ近くにスイッチがあったとしても不可能であった。
【0015】
脳溢血や心臓発作などによって昏倒が起きた場合には、緊急警報スイッチの場所も存在もわからなくなるため、スイッチそのものを押すことができず、不幸な結果になることが多かった。
【0016】
また互助ルールに関しては、それぞれの人生観から、老後の人付き合いを面倒に感じている老人も多く、なかなかルールを徹底させることは難しく、老人が散在している場所では互助ルールを実践することすら不可能だった。
【0017】
さらに、もともと痴呆症にかかっている老人の場合には、これらのルールを守り続けることは不可能であり、よしんば痴呆症とは無縁であったとしても旗や造花を出し入れする行為そのものをうっかり忘れてしまう場合もあって、なかなか徹底されることはなかった。
【0018】
痴呆症の有無に係わらず、老人は忘れっぽくなるものであり、入浴するたびに発信機を内蔵した装飾品を身につける保証もなく、また何よりも老人自身に死が訪れることを他人事と捉える傾向があり的確な警報として実践することは難しかった。
【0019】
トイレ空間は室温が低かったり力んだりすることが原因で、老人が倒れやすい空間であることは否定できないが、昏倒原因のすべてではありえず、浴室やリビングなどあらゆる場所で昏倒は考えられている。
【0020】
エアーマットによる生存兆候検知に関しても、それを老人の居住空間すべてで行おうとすると多額の費用が発生し、一般の使用に困難を生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで本発明である動きが無いことに反応する警報機は、弁4を備え、極小ピンホール3の開けられた、形状復元可能なふいご5に、圧を加えてふいご5内の空気を弁4から押し出した後、ピンホール3から少しずつ外部の空気が陰圧状態のふいご内に取り込まれることによって、ふいご5の形状が復元し、ふいご5の先端に取り付けた金属部7が時間差をもって接点6に触れ通電することを特徴とする。
【0022】
ふいご5の先端が、ドアの動きに合わせて弧を描きながら収縮膨張することを可能にする、回転可能な回転バー2を装着したふいご5を活用することによって上記課題を解決することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は電子技術の方法を採らないため、電子部品は一切使用せず、その結果故障率はかなり低く、廉価で製造販売が可能であり、設置も容易である。
【0024】
また本発明は異常が発生したときのみ通電する仕組みを持っているため、日頃は一切の電力を必要とせず、したがって長期に渡ってバッテリー10交換が不要である。
【0025】
また、本発明による警報機はふいご5に開けた極小ピンホール3の大きさを調節することによって、一人住まいの老人の昏倒という事故発生時から、ブザー8や回転灯9を機能させるまでの時間を調節することができる。
【0026】
本発明による警報機は取り付けが容易であり、屋内を改造する必要もなく、ふいご5は少量の力で縮むことからトイレドアの開閉時、ドアが重くなる心配もなく、老人の使用に問題は生じない。
【0027】
本発明による警報機はマイクやカメラを使用していないため、一人住まいの老人のプライバシーを侵害することはない。
【0028】
本発明による警報機は、一人住まいの老人に異常がある場合、トイレに老人が行けないことを前提としており、故にすべての部屋や浴室に設置する必要もなく、一家に一台で事足り、従って廉価にて実戦可能であり、設置も容易である。
【0029】
本発明による警報機は、異常が発生した際にこのスイッチを押さなくてはという義務の履行を老人に要求しない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】A ドアを一人住まいの老人が開け、トイレを使用しドアを閉じた状態を表す平面図である。B 仮に24時間仕様にした場合の、回転バーが接点に近づく状態を表す平面図である。C トイレ使用のため、少しドアが開けられる状態を表す平面図である。D ドアがさらに開かれ、突起1がふいご5に圧を加え始める状態を表す平面図である。E ドアが閉じられ始める。ふいご5が一番縮められている状態を表す平面図である。F 1に戻り、金属部7が接点6に近づき始める状態を表す平面図である。
【図3】ふいご5に圧を加える前段階の状態を表す正面図である。
【図4】本発明を実施するに当たっての回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施形態について、ふいご5を圧縮するためにドアの右上に設置した突起1と、ふいご5を使った遅延スイッチ部を構成する2・ピンホール3・弁4・ふいご5・接点6・金属部7を平行させながら説明する。
【0032】
ドアを開けることによってドアに取り付けた突起1の圧力がふいご5にかかり、弁4から一気にふいご内の空気が外部へ押し出されるために、ふいご5は縮むが、ドアが閉められたときに突起1はふいご5から離れ、弁4は閉じられるため、ふいご5の自然復元力により、ふいご5内は陰圧状態のままピンホール3より微量の外部空気を吸い込んで膨張する。
【0033】
その際、弧を描くように圧力を加えることを目的とした回転バー2をふいご5の先端に固着させることで、ふいご5は弧の軌道を保ちながら収縮し、かつ膨張する。
【0034】
ここまでにある程度の間隔をもってドアが何度か開閉されているので、膨張しようとするふいご5がたえず突起1によって押し縮められる状態、すなわち一人住まいの老人に異常が起きていない状態であり、従って警報機は作動しない。
【0035】
そして、一人住まいの老人に異常が起きた場合、トイレのドアは一切開閉されることがなくなるため、ふいご5の自然復元力でふいご5の内部は陰圧であったとしても、弁4は閉じられたままであることから、ピンホール3から外部の空気が微量ずつ流入し続け、ふいご5はゆっくりと時間をかけて弧の軌道を保ちながら膨らみ、ふいご5の先端に設置した金属部7と接点6とが接触し、その結果、通電し、ブザー8と回転灯9が作動する。
【0036】
一日で不定期にトイレが使用された場合でも、警報機におけるふいご5は膨張しようとする動きが、ドアを開けるたびに絶えず突起1によって阻止されて収縮し、弁4からふいご5にたまった空気がその都度押し出されるため、ふいご5は膨張しきれず、接点6と金属部7が接触することはない。よって警報機は作動しない。
【0037】
電源は乾電池直列6ボルトで十分であるが、希望によってはAC電源仕様に関しても問題はない。この発明品に関して代金を支払う者が一人住まいの老人なのか物件所有者なのかの問題が生ずるが、いずれにせよ対象が老人であることがほとんどと考えられるため、商品としては廉価で、かつ設置も特殊な技術を必要としない簡単なものである必要が生じる。
【0038】
購入希望者の要求に答えて警報機部分は自動発信による電話への無線を利用することも可能であることから、家屋の外に取り付けたブザー8や回転灯9を機能させることに関しても内部配線を行わず、無線や赤外線で実践することも可能である。
【0039】
電池使用の際のコードは大変細く、家屋の一部から外部にコードを引くことは容易であるし、室内の美観を損ねることもない。
【0040】
一般的なふいごは内部にばねを包含しているが、スイッチのON・OFFに利用するだけであるから、ふいごの材質によって復元可能な場合、ばねは不要である。
【0041】
動きが無いことに反応させるための時間を設定するには、生存可能時間と言われている72時間以内である必要があり、一人住まいの老人の日々のトイレ使用状況を考慮して、24、48、72時間などの選択ができることが望ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 突起
2 回転バー
3 ピンホール
4 弁
5 ふいご
6 接点
7 金属部
8 ブザー
9 回転灯
10 バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁を備え、極小ピンホールの開けられた、形状復元可能なふいごに、圧を加えてふいご内の空気を弁から押し出した後、ピンホールから少しずつ外部の空気が陰圧状態のふいご内に取り込まれることによって、ふいごの先端に取り付けた金属部が時間差をもって接点に触れ通電することを特徴とする警報機。
【請求項2】
請求項1記載のふいごの先端が、ドアの動きに合わせて弧を描きながら収縮または膨張することを可能にする、回転可能な回転バーを装着したふいごを特徴とする警報機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150773(P2012−150773A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20179(P2011−20179)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【特許番号】特許第4894959号(P4894959)
【特許公報発行日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(595035197)
【Fターム(参考)】