説明

動力伝達切替装置、および液体噴射装置

【課題】キャリッジの移動によって駆動源の動力の伝達を確実に切り替えるとともに、その切り替えられた動力伝達の状態を維持する動力伝達切替装置を実現する。
【解決手段】左方向に移動して突出部103を第1係合部113または第2係合部114のいずれかと係合させる一方、右方向に移動して、第1係合部または第2係合部との係合を維持させて突出部とともに回転する係合部材110と、突出部の回転が許容される位置まで係合部材を左方向に移動させるように変位するレバー部材79と、変位部材の移動に伴い左方向に移動して駆動側突起部126と係合することによって回転軸101を中心に回動すると共に、突出部が第2係合部と係合するとき駆動側突起部との係合が維持し突出部が第1係合部と係合するとき駆動側突起部との係合が解除するように移動するクラッチ部材120と、クラッチ部材を右方向に付勢する第2コイルばね124と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの動力伝達を切り替える動力伝達切替装置、およびこの動力伝達切替装置を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一例として、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターは、往復移動するキャリッジに液体噴射ヘッドを設け、この液体噴射ヘッドのノズル形成面に開口したノズルから液体の一例となるインクを、キャリッジの移動方向と交差する方向に搬送される用紙などの媒体に噴射して印刷を行う。
【0003】
このようなプリンターでは、一般に、ノズルからインクを適正に噴射させる噴射特性を維持するためのヘッドメンテナンス処理が行われる。例えば、用紙の印刷領域外の位置となるホームポジションにキャリッジを移動させた後、液体噴射ヘッドのノズル形成面に対してノズルの開口部を覆うようにキャップを当接させる。そして、その当接状態においてノズル形成面とキャップとの間に形成されるキャップ内空間を吸引ポンプの回転動作によって負圧状態にし、ノズル内において例えば増粘したインクをノズルから吸引することによって、ノズルからインクが適正に噴射できるようにメンテナンスすることが行われる。この他、ノズルの開口部に付着した不要なインクを、液体噴射ヘッドと係合するように上昇させたワイピング部材によって払拭する処理なども行われる。そして、このような吸引ポンプを回転させたり、あるいはワイピング部材を上昇させたりするための駆動源として、通常モーターが用いられる。
【0004】
従って、1つのモーターによって複数の動作を行うことができれば、モーター(駆動源)の使用個数を少なくすることができるので、プリンターの大型化を抑制することが可能になる。そこで、例えば特許文献1には、用紙の両側の領域である印刷領域外におけるキャリッジの移動動作を利用して、モーターの駆動歯車が噛み合う歯車を、用紙を搬送する紙送り機構駆動用歯車と、吸引ポンプを駆動する吸引機構駆動歯車と、のいずれかの駆動歯車に切り替えるプリンターが開示されている。このように、キャリッジの印刷領域外における移動動作を利用して1つのモーターの回転動力の伝達を切替ることによって、動力伝達切替装置を別途備えることなく1つのモーターの回転駆動を切り替えることができるので、プリンターの大型化をさらに抑制することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−115096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の提案技術は、キャリッジが印刷領域外に位置した状態においてのみ吸引機構用駆動歯車を駆動することが可能である。つまり、例えばキャリッジが印刷領域に移動した場合では、モーターの駆動歯車は、吸引機構用駆動歯車を駆動する切替状態が維持されずに、常に紙送り機構の駆動歯車と噛み合う状態に戻ってしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、キャリッジの移動動作によって駆動源の動力の伝達を確実に切り替えるとともに、その切り替えられた動力伝達の状態を維持する動力伝達切替装置を実現することを主な目的とする。さらに、このような動力伝達切替装置を備えた液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の動力伝達切替装置は、駆動源の回動に伴い回転する回転部と、前記回転部の軸方向に沿って延びる軸部を有するとともに、該軸部から軸方向と交差する方向に突出する突出部が形成された回転軸と、前記突出部と前記回転軸の回転方向において係合可能な第1係合部と第2係合部とが前記軸方向において離間した位置に各々形成され、前記軸方向に沿う第1方向に移動することによって、前記突出部の相対的な回転を許容して前記突出部を前記第1係合部および前記第2係合部のいずれかと係合させる一方、前記第1方向と反対の第2方向に移動することによって、前記突出部と前記第1係合部および前記第2係合部のいずれかとの係合を維持させて前記突出部とともに回転する係合部材と、前記係合部材と当接して、前記突出部の回転が許容される位置まで前記係合部材を前記軸方向に沿って前記第1方向に移動させるように変位する変位部材と、前記変位部材の移動に伴い前記第1方向に移動して前記回転部と係合することによって前記回転部の回動が伝達されて前記回転軸を中心に回動すると共に、前記突出部が前記第2係合部と係合するとき前記回転部との係合が維持し前記突出部が前記第1係合部と係合するとき前記回転部との係合が解除するように前記軸方向に沿って移動するクラッチ部材と、前記クラッチ部材を前記第2方向に付勢する第2方向付勢部材と、を備える。
【0009】
上記構成によれば、変位部材を変位させることで、クラッチ部材を駆動源からの駆動力で回転駆動させるようにしたり、あるいは回転駆動させないようにしたりすることができる。従って、例えばキャリッジの移動動作を利用して変位部材を移動させるようにすることによって、クラッチ部材を軸方向に移動させれば、クラッチ部材の回転の有無によって駆動源の動力を伝達するかしないかのいずれかに切替えることができる。また、係合部材は第2方向付勢部材によってクラッチ部材を介して、常に突出部と第1係合部および第2係合部のいずれかとの係合状態を維持するように付勢される。従って、キャリッジの移動位置に関わらず切替えられた駆動源の動力伝達の状態を維持することができる。
【0010】
本発明の動力伝達切替装置において、前記変位部材は、一端側が移動することによって、他端側が前記係合部材と当接して前記係合部材を前記第1方向に移動させるように変位するレバー部材である。
【0011】
上記構成によれば、例えば、動力伝達切替装置から離れた位置において移動するキャリッジの移動動作を利用して係合部材を押すようにすることができる。また、キャリッジの移動方向と逆方向に係合部材を移動させたりすることができる。さらに、一端側をキャリッジの移動によって移動させる場合、他端側において係合部材を移動させる負荷に対してキャリッジの移動に際して生ずる負荷の増加を抑制することができる。
【0012】
本発明の動力伝達切替装置において、前記クラッチ部材と前記係合部材との間に挿入され、圧縮されることによって前記第2方向付勢部材よりも強い付勢力で前記クラッチ部材を前記第1方向に付勢することによって、前記第2方向付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ部材を前記係合部材と連動して前記第1方向に移動させる第1方向付勢部材を備える。
【0013】
上記構成によれば、例えば、クラッチ部材が第1方向への移動において回転部と係合可能な位置まで移動する前に回転部に対して非係合な位置で当接して第1方向に移動できない状態になった場合でも、次のようにすれば回転部にクラッチ部材を回転方向において確実に係合させることができる。すなわち、変位部材によって係合部材をクラッチ部材と近接する第1方向に移動させると、第1方向付勢部材が圧縮された状態になるとともに、その状態において回転部とクラッチ部材とを相対回転させれば、回転部に対するクラッチ部材の非係合な位置での当接状態が解除される。すると、圧縮されていた第1方向付勢部材が伸長することによってクラッチ部材を第1方向に移動させて回転部とクラッチ部材とを回転方向において係合させることができる。
【0014】
本発明の動力伝達切替装置において、前記回転部には、前記軸方向に沿って該回転部側から前記クラッチ部材側に突き出す駆動側突起部が形成され、前記クラッチ部材には、前記軸方向に沿って該クラッチ部材側から前記回転部側に突き出すとともに、前記回転軸を中心に前記回転部が回動したとき、前記回転部の駆動側突起部と係合して回転する従動側突起部が形成されている。
【0015】
上記構成によれば、クラッチ部材の第1方向への移動によって従動側突起部を回転軸の軸方向に沿って移動させて駆動側突起部と回転方向において係合させることで、回転部とクラッチ部材との駆動伝達を行うことができる。従って、係合に要する占有スペースが軸方向の移動量で済むので係合に要するスペースを抑制するとともに、突起部同士の係合によって回転を伝達するので安定して回転を伝達できる確率が高くなる。
【0016】
本発明の動力伝達切替装置において、前記クラッチ部材には、該クラッチ部材の回転と同期して前記回転軸を中心に回転する平歯車が設けられ、前記平歯車と噛み合うとともに、該平歯車の回転に伴い前記軸方向と交差する方向に沿って移動する直線歯車が一部の領域範囲に形成されたスライド部材を備え、少なくとも前記一部の領域範囲の端に位置する前記直線歯車の歯は、前記平歯車との噛み合いを常に維持するように前記平歯車と噛み合う方向に付勢される。
【0017】
上記構成によれば、クラッチ部材の回転によって駆動源の動力を必要に応じて伝達してスライド部材を確実に移動させることができる。従って、例えば、スライド部材によって対象部材を上下移動させる場合は、キャリッジの移動位置に制約されることなくスライド部材を確実に移動させて対象物を上下移動させることができる。
【0018】
本発明の動力伝達切替装置において、前記スライド部材は、移動に伴って弾性変形する弾性変形部を有し、該弾性変形部の復元力によって、前記直線歯車が前記平歯車との噛み合いを常に維持するように前記平歯車と噛み合う方向に付勢される。
【0019】
上記構成によれば、付勢手段を別部品で構成することなくスライド部材と一体で形成するので、動力伝達切替装置が複雑になることを抑制できる。
本発明の液体噴射装置は、媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドが設けられるとともに往復移動が可能に構成されたキャリッジと、上記構成を有する動力伝達切替装置と、を備えた。
【0020】
上記構成の液体噴射装置によれば、上記動力伝達切替装置が有する効果と同様な効果を奏する。特に、キャリッジの移動を用いて、駆動源の動力を伝達して駆動する部材を切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施形態のメンテナンス装置を有するプリンターの概略構成を示す斜視図。
【図2】実施形態のメンテナンス装置の概略構成図。
【図3】実施形態のメンテナンス装置の斜視図。
【図4】フレームを外した状態で左前方斜め上から見たメンテナンス装置の斜視図。
【図5】フレームを外した状態で右後方斜め下から見たメンテナンス装置の斜視図。
【図6】ワイパーとロックレバーの昇降機構及びクラッチ機構の構成を示す斜視図。
【図7】(a)はワイパーおよびロックレバーが退避位置にある昇降機構の状態を示す正面図、(b)は(a)における7b−7b線矢視での模式断面図。
【図8】(a)はロックレバーがロック位置にある昇降機構の状態を示す正面図、(b)は図7(a)における7b−7b線矢視での模式断面図。
【図9】(a)はワイパーが払拭位置でロックレバーが退避位置にある昇降機構の状態を示す正面図、(b)(c)は図7(a)における7b−7b線矢視での模式断面図。
【図10】クラッチ機構における構成部品を示す分解斜視図。
【図11】オフ状態にあるクラッチ機構関連の構成部品を前方矢視で示す正面図。
【図12】オフ状態からオン状態に切替え可能な状態にあるクラッチ機構関連の構成部品を前方矢視で示す正面図。
【図13】クラッチ機構においてオフ状態からオン状態への切替えの仕組み構成を示す斜視図。
【図14】クラッチ機構においてオフ状態からオン状態へ切替えられた状態を示す斜視図。
【図15】オン状態にあるクラッチ機構関連の構成部品を前方矢視で示す正面図。
【図16】選択閉塞手段の昇降機構を示す斜視図。
【図17】キャリッジと選択閉塞手段との係合状態を示す図で、(a)は選択閉塞手段の上昇前、(b)は閉塞手段の上昇後を、それぞれ右方矢視で示す正面図。
【図18】(a)は本実施形態のラックスライダーの構成を示す斜視図、(b)は(a)におけるM−M線矢視断面図。
【図19】選択閉塞手段が上昇状態にある選択閉塞手段の昇降機構を示す斜視図。
【図20】スライダーを取り外した状態の選択閉塞手段を示す斜視図。
【図21】カム面における閉塞部材の回転状態を上方矢視で示す平面図。
【図22】チューブの閉塞機構を示す斜視図。
【図23】実施形態におけるクラッチ機構の切替動作を示す動作フロー図。
【図24】クラッチ機構において動力伝達が切替可能状態にあるキャリッジのメンテナンス装置に対する移動位置を上方矢視で示す平面図。
【図25】スライダーの係合部とキャリッジの凹部とが係合状態にあるキャリッジのメンテナンス装置に対する移動位置を上方矢視で示す平面図。
【図26】変形例のラックスライダーを示す斜視図。
【図27】変形例のクラッチ体を示す斜視図。
【図28】変形例のクラッチ機構を前方矢視で示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を、液体噴射装置の一例であるインクジェット式プリンターにおいて具体化した実施形態について、以下、図を参照して説明する。なお、以降の説明を容易にするため、図1に示したように、鉛直方向における重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、鉛直方向と交差する方向であって、プリンターに給送された用紙Pが画像の形成時において搬送される搬送方向を前方向、搬送方向と反対方向を後方向とする。さらに鉛直方向および搬送方向の双方と交差する方向であってキャリッジが往復移動する方向すなわち走査方向を、前方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0023】
図1に示すように、液体噴射装置としてのプリンター11における略矩形箱状をなすフレーム12内の下部には、その長手方向に沿って媒体の一例である用紙Pを印刷時に支持するための支持部材13が延設されている。そして、この支持部材13上には、フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモーター14の駆動に基づき、図示しない紙送り機構により用紙Pが支持部材13上にその後方側から前方側に給送されるようになっている。
【0024】
フレーム12内における支持部材13の上方には、該支持部材13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、該ガイド軸15の軸線方向に沿って往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。すなわち、キャリッジ16にはガイド軸15の軸線方向に貫通するように支持孔16aが形成されるとともに、該支持孔16aにガイド軸15が挿通される。従って、キャリッジ16はガイド軸15の軸線方向つまり走査方向(左右方向)に往復移動できるように支持されている。
【0025】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリー17a及び従動プーリー17bが回転自在に支持されている。駆動プーリー17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター18の出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとの間には一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモーター18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介してガイド軸15の軸線方向(左右方向)に移動するようになっている。
【0026】
キャリッジ16の下面には液体噴射ヘッド19が設けられており、キャリッジ16上には液体噴射ヘッド19に対して流体としての複数色(本実施形態では、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの4色)のインクをそれぞれ供給するためのインクカートリッジ20が着脱可能に装着されている。
【0027】
液体噴射ヘッド19の下面には、複数のノズルが前後方向に並んでなる複数列(本実施形態では4列)のノズル列22A〜22D(図2参照)が左右方向に並設されている。本実施形態では、各ノズル列22A〜22Dは、左側から順にノズル列22A、ノズル列22B、ノズル列22C、ノズル列22Dとされている。そして、インクカートリッジ20内の各インクは、液体噴射ヘッド19内に備えられた図示しない圧電素子などの加圧手段の駆動により、インクカートリッジ20から液体噴射ヘッド19へと供給され、該液体噴射ヘッド19に備えられた各ノズル列22A〜22Dのノズルからそれぞれ噴射されるようになっている。
【0028】
すなわち、図1に示すように、プリンター11は、用紙Pが搬送時に支持される支持部材13と対応する領域が印刷領域PAとなっている。そして、この印刷領域PAにおいてキャリッジ16を左右方向に往復移動させながら、液体噴射ヘッド19内に備えられた図示しない圧電素子を駆動することで、支持部材13上に給送された用紙Pに各インクがそれぞれ噴射されて印刷が行われるようになっている。この場合、ノズル列22Aを構成する各ノズルからはブラックインクが噴射され、ノズル列22Bを構成する各ノズルからはシアンインクが噴射され、ノズル列22Cを構成する各ノズルからはイエローインクが噴射され、ノズル列22Dを構成する各ノズルからはマゼンタインクが噴射される。
【0029】
さて、本実施形態では、支持部材13の左右両側のうち右側に位置する印刷領域PAから外れた非印刷領域は、液体噴射ヘッド19のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンス領域MAとなっている。このメンテナンス領域MAにおける所定の位置に液体噴射ヘッド19が移動し、ノズルからのインクの噴射特性を維持するメンテナンス装置23が設けられている。
【0030】
メンテナンス装置23は、キャリッジ16のメンテナンス領域MAへの移動に伴って上昇し、メンテナンス領域MAにおいてノズルを囲うように液体噴射ヘッド19に当接した状態になるキャップ27を備えている。そして、その当接状態において液体噴射ヘッド19とキャップ27との間に形成される複数(ここでは2つ)の内部空間(以降、「キャップ内空間」と言う)を、吸引通路となる可撓性のチューブを介して吸引して減圧し、ノズルからインクを吸引して液体噴射ヘッド19をメンテナンスするようになっている。このインクの吸引に際して、本実施形態のメンテナンス装置23は複数(ここでは2つ)の吸引通路をキャップ内空間ごとに有しており、減圧すべきキャップ内空間の選択に応じてチューブを押し潰し、吸引通路を閉塞する選択閉塞機構(選択閉塞手段)40が備えられている。
【0031】
次に、本実施形態のメンテナンス装置23について、具体的に説明する。
まず、メンテナンス装置23の概略構成について、図2を参照して説明する。なお、図2においては、破断線よりも左側ではキャリッジ16が左右方向に移動する状態でのメンテナンス装置23を模式的に図示し、破断線よりも右側ではキャリッジ16が紙面と直交する方向に移動する状態でのメンテナンス装置23を模式的に図示している。
【0032】
図2に示すように、キャップ27内には該キャップ27内を左右2室に隔絶する隔壁30が設けられている。キャップ27において、隔壁30から左側の部分は第1キャップ部31とされ、隔壁30から右側の部分は第2キャップ部32とされている。そして、キャリッジ16がメンテナンス領域MAにおけるメンテナンス装置23の上方位置に移動するとともにキャップ27が上昇した状態では、第1キャップ部31がノズル列22Aを囲みながら液体噴射ヘッド19との間で第1キャップ内空間31aを形成する。また、第2キャップ部32がノズル列22B〜22Dを囲みながら液体噴射ヘッド19との間で第2キャップ内空間32aを形成するようになっている。
【0033】
第1キャップ部31の底壁からは第1突部33が下方に向かって突設されており、該第1突部33内には第1キャップ部31内からインクを排出するための第1排出路33aが上下方向に貫通するように形成されている。一方、第2キャップ部32の底壁からは第2突部34が下方に向かって突設されており、該第2突部34内には第2キャップ部32内からインクを排出するための第2排出路34aが上下方向に貫通するように形成されている。
【0034】
第2突部34には可撓性を有するチューブとしての第2排出チューブ37の基端側(上流側)が接続され、該第2排出チューブ37の他端側(下流側)は直方体状をなす廃インクタンク36内に挿入されている。一方、第1突部33には可撓性を有するチューブとしての第1排出チューブ35の基端側(上流側)が接続され、該第1排出チューブ35の他端側(下流側)は第2排出チューブ37の途中に設けられた合流点Gで第2排出チューブ37に合流するように連結されている。
【0035】
両排出チューブ35,37はこれらの合流点Gまでは並ぶようにして引き回されている。そして、第2排出チューブ37における第1排出チューブ35との合流点Gよりも下流端の位置には該第1排出チューブ35内及び第2排出チューブ37内をキャップ27側から廃インクタンク36側へ向かって吸引するための吸引手段としての1つのチューブポンプ38が配設されている。
【0036】
すなわち、チューブポンプ38を駆動した場合には、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるようになっている。したがって、第2排出チューブ37及び第1排出チューブ35は、第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aをそれぞれ吸引するための吸引通路を形成している。
【0037】
そして、キャップ27が上昇して液体噴射ヘッド19に当接した状態でチューブポンプ38を駆動することで、ノズルのクリーニングが行われるようになっている。すなわち、各ノズル列22A〜22Dを構成する各ノズルから増粘したインクが気泡等とともに吸引され、キャップ27及び両排出チューブ35,37を介して廃インクタンク36内に排出されるようになっている。なお、廃インクタンク36内には、該廃インクタンク36内に排出されたインクを吸収して保持する廃インク吸収材39が収容されている。
【0038】
また、両排出チューブ35,37におけるこれらの合流点Gよりも上流側の位置には、両排出チューブ35,37を選択的に閉塞可能な選択閉塞機構40が配設されている。選択閉塞機構40は、ベース60と、このベース60に対してスライドする移動部材としてのスライダー41とを備えている。
【0039】
スライダー41には、キャリッジ16の下面側に設けられた凹部16hに下方から上昇して進入することによりキャリッジ16に対して走査方向(左右方向)において係合する係合部42と、スライダー41の下面側に回転可能に軸支されて吸引通路を閉塞するための閉塞部材43と、が設けられている。またベース60には一面にカム面を構成したカム部材50が内装され、閉塞部材43と対向する面(上面)がカム面となっている。そして、キャリッジ16の凹部16hに係合部42が係合することによって、走査方向に移動するキャリッジ16と連動するスライダー41の移動に伴って、閉塞部材43がカム面によって案内されて移動し、第2排出チューブ37あるいは第1排出チューブ35が押し潰されて何れか一方の吸引通路が閉塞されるようになっている。
【0040】
また、図2では示していないが、本実施形態のメンテナンス装置23には、駆動源によって駆動され、スライダー41選択閉塞機構40をキャリッジ16に対して接近および離間するように移動させる離接移動手段が備えられている。さらに、この離接移動手段に対して、駆動源の動力を伝達する状態と伝達しない状態に切替える動力伝達切替装置を有している。動力伝達切替装置は、キャリッジ16がメンテナンス領域MAへの移動途中の領域において、スライダー41がキャリッジ16と連動して移動するように、駆動源の動力が離接移動手段に伝達されるように切り替えて選択閉塞機構40を上昇および降下させるようになっている。以下、上記の離接移動手段および動力伝達切替装置を含めて、メンテナンス装置23の詳細な構成について図を参照して説明する。
【0041】
図3に示すように、本実施形態のメンテナンス装置23は、上述のキャップ27、選択閉塞機構40、チューブポンプ38、および液体噴射ヘッド19を払拭するワイパー75、キャリッジ16の移動を規制するロックレバー84、を備えている。これらは、装置の基台となる樹脂製のフレーム体29によって支持あるいは固定されているとともに、駆動源としての1つのモーター26によって駆動されることによってメンテナンス装置23においてそれぞれ所定の動作を行うようになっている。本実施形態では、キャップ27の昇降動作およびスライダー41の往復動作は、キャリッジ16の移動に伴って各動作の切り替えが行われるようになっている。また、ワイパー75とロックレバー84、および選択閉塞機構40の昇降動作も、モーター26の駆動力によって行われるようになっている。さらに、チューブポンプ38の回転動作もモーター26によって行われるようになっている。次に、これらの動作を行うための構造について、以下順次説明する。
【0042】
キャップ27は、メンテナンス装置23における略中央部分に備えられた略箱型形状のキャップ保持部材71によって、図示しない弾性部材を介して保持されている。このキャップ保持部材71は、その前後において上下方向に立設するとともに左右方向に延びるフレーム壁29aによって案内されて左右方向に移動可能であるとともに、左から右方向への移動に伴って上昇するようになっている。
【0043】
すなわち、それぞれのフレーム壁29aには、互いに前後方向において対向するように並ぶ2つで一組の貫通溝28が、左右方向において異なる位置に2つ、都合4つ形成されている。各貫通溝28は、左から右へ向かって真っ直ぐ延びる下側平坦部29bと、この下側平坦部29bの右端から右斜め上方に向かって真っ直ぐに延びる斜面部29cと、この斜面部29cの右端から右へ向かって真っ直ぐ延びる上側平坦部29dとをそれぞれ備えている。そして各貫通溝28において、下側平坦部29b、斜面部29c、及び上側平坦部29dは互いに連通している。
【0044】
キャップ保持部材71には、それぞれの貫通溝28に進入するように、前後方向に延びる支持棒72が、それぞれの貫通溝28に対応して合計4つ設けられている。そして、それぞれの支持棒72は、進入するそれぞれの貫通溝28内において摺動可能に挿通されている。従って、キャップ保持部材71は、キャリッジ16の右面と当接して左から右に移動することによって、支持棒72が貫通溝28を左から右に摺動して下側平坦部29bから斜面部29cを通過して上側平坦部29dに移動して上昇するように構成されている。
【0045】
また、キャップ保持部材71は、コイルばね74図5参照によって常に左側へ向かって付勢されており、キャリッジ16がメンテナンス領域MAに位置しない印刷状態では、コイルばね74の付勢力により各支持棒72が各貫通溝28内における最も左側の下側平坦部29bに位置するようになっている。従って、キャップ保持部材71は、キャリッジ16が印刷領域PAに位置する場合は降下した状態になっている。そして、キャリッジ16が印刷領域PAからメンテナンス領域MAに向かって左から右方向に移動すると、キャリッジ16の右面は、キャップ保持部材71の右端において左方に凸面を有する凸条部が上下方向に形成された係止部71aと当接し、以降キャップ保持部材71を右方に一緒に移動させる。
【0046】
この右方向への移動に伴って、キャップ保持部材71に設けられた各支持棒72が各貫通溝28内の斜面部29cを右側に向かって摺動する過程で、キャップ保持部材71とともにキャップ27が液体噴射ヘッド19に向かって近接するように徐々に上昇する。そして、各支持棒72が各貫通溝28の上側平坦部29dに達した段階で該キャップ27が液体噴射ヘッド19に当接する。
【0047】
キャップ保持部材71は、キャリッジ16が支持部材13の右側に位置するメンテナンス領域MAに移動した状態では、各支持棒72が各貫通溝28内の上側平坦部29dにキャップ27とともに位置するようになっている。従って、キャリッジ16は各支持棒72が各貫通溝28内の斜面部29cを右側に向かって摺動する過程で、移動に要する負荷が増加することになる。
【0048】
また、メンテナンス装置23は、キャップ保持部材71よりも前側の位置に、選択閉塞機構40が配設されている。選択閉塞機構40は、フレーム体29にベース60が固定されるとともに、そのベース60には、当該ベース60における前後両位置に左右方向へ延びるように設けられた凹条溝部60aに案内されることによりベース60に対して左右方向にスライドするスライダー41が設けられている。そして、本実施形態では、スライダー41における左右方向の中途位置に設けられた引掛け部41cとベース60における右端位置に設けられた引掛け部60cとの間に、付勢手段としてのコイルばね61が張架され、スライダー41が左右方向へのスライド範囲の右端に位置するように付勢されている。
【0049】
スライダー41には、その上面の略中央において上方に突出するように形成された係合部42が設けられている。そして選択閉塞機構40が上昇して係合部42がキャリッジ16の凹部16hと係合することによって、スライダー41はキャリッジ16によって駆動され、キャリッジ16と連動してベース60に対して左右方向に往復移動するように構成されている。
【0050】
ベース60には、一面がカム面となっているカム部材50が、該カム面を往復移動するスライダー41と対向させるように内装されている。一方、スライダー41の下面には、閉塞部材43(図20〜図22参照)が回転自在に支持されている。閉塞部材43は、スライダー41の往復移動に伴い回転し、その回転姿勢の変化に応じて、第2排出チューブ37あるいは第1排出チューブ35を押し潰すように構成されている。この閉塞部材43によるチューブに押し潰し構造については、後ほど詳しく説明する。
【0051】
また、メンテナンス装置23には、選択閉塞機構40におけるベース60を上昇および降下させることによってスライダー41の上昇および降下を行う離接移動手段が設けられている。本実施形態では、フレーム体29に回転可能に軸支された複数の歯車による歯車列が、モーター26の回動力を駆動力として、この離接移動手段の駆動を含め、ロックレバー84の回転駆動、ワイパー75の昇降駆動、チューブポンプ38の回転駆動を、それぞれ行うように構成されている。
【0052】
すなわち、フレーム体29を取り外した状態のメンテナンス装置23を左前方向から見た図4に示すように、モーター26と一体で回転するピニオン26aが、第1伝達歯車81およびポンプ伝達歯車88の夫々に噛み合い、モーター26の回転を伝達するように歯車列が構成されている。
【0053】
ポンプ伝達歯車88は、チューブポンプ38の駆動軸に連結されたポンプ歯車不図示と噛み合うことによって、ポンプ歯車にモーター26の回転動力を伝達してチューブポンプ38を駆動するようになっている。なお、本実施形態では、チューブポンプ38はモーター26が左方から見て反時計方向に回転(以降、これを「CCW回転」と呼ぶ)することによってポンプが吸引動作するようになっており、時計方向に回転(以降、これを「CW回転」と呼ぶ)する場合は、ポンプが吸引動作しないようになっている。
【0054】
一方、第1伝達歯車81は、これと噛み合う第2伝達歯車82と第3伝達歯車86とにモーター26の回転を伝達するようになっている。また、第3伝達歯車86は、更に回転部の一例である第4伝達歯車87に噛み合って、第4伝達歯車87にモーター26の回転を伝達するようになっている。このような歯車列の構成によって、本実施形態では、モーター26(ピニオン26a)がCCW回転すると、第2伝達歯車82はCCW回転し、第4伝達歯車87はCW回転するように構成されている。
【0055】
第2伝達歯車82は、回転軸部82jに設けられたバネ83によって、背面側となる右側に位置するカム歯車90に対して押し付けられている。カム歯車90は第2伝達歯車82と間で、この押し付けによって接触する接触面において摩擦力が発生し、この発生した摩擦力によって第2伝達歯車82と同期して回転するように、第2伝達歯車82との間に摩擦クラッチ機構が構成されている。
【0056】
本実施形態では、ロックレバー84は、通常、ロックばね85によって回転軸部84jを中心にCW回転するように付勢されて上側が前方に少し傾いた傾斜状態になっている。そして、カム歯車90が回転すると、このカム歯車90に形成されたカム形状に応じてロックレバー84が回転軸部84jを中心に回転するとともに、ロックばね85の付勢力に抗するようにCCW回転してほぼ立設した状態になるように構成されている。
【0057】
また、カム歯車90が回転すると、該カム歯車90に形成されたカム溝に応じてワイパー75が上昇および降下するようになっている。本実施形態では、ワイパー75は液体噴射ヘッド19を払拭するワイパーブレード75aと該ワイパーブレード75aを保持するワイパー保持部材76とを有し、カム歯車90(第2伝達歯車82)がCCW回転するとワイパー保持部材76が上昇するようになっている。また、ワイパー保持部材76の下方には、ワイパーブレード75aによって払拭された後、ワイパー75を伝って重力方向に落下する液体噴射ヘッド19のインクを受け止めて吸収する吸収部材78が配設されている。
【0058】
一方、第4伝達歯車87は、選択閉塞機構40(ベース60)を上昇および降下させるように構成されている。すなわち、図4および図5に示すように、第4伝達歯車87はクラッチ部材120に設けられたクラッチ歯車122を回転(ここではCW回転)させることによって、ラック66が形成されたスライド部材としてのラックスライダー65を前方に移動させる。すなわち、ラック66は常にクラッチ歯車122と噛み合うようになっており、クラッチ歯車122の回転によってラック66が前方に移動することによってラックスライダー65を前方にスライド移動させる。
【0059】
ラックスライダー65の前方には前下がりの斜面部67が2つ設けられ、これらの斜面部67にベース60の下側に所定幅で延設された2つの延設部位62を当接させつつラックスライダー65が前方に移動すると、これらの延設部位62が斜面部67に沿って上昇する結果、ベース60も上昇するようになっている。逆に、ラックスライダー65が後方に移動すれば、ベース60の延設部位62を斜面部67に沿って降下させるため、ベース60も降下するようになっている。このように、第4伝達歯車87と共に回転するクラッチ歯車122と噛み合うラック66及びベース60の延設部位62と摺接する斜面部67が形成されたラックスライダー65により、ベース60を昇降させて選択閉塞機構40をキャリッジ16に対して離間あるいは接近させる離接移動手段の一部が構成されている。
【0060】
そして、この離接移動手段において、クラッチ部材120は、第4伝達歯車87の回転をラックスライダー65のスライド移動に伝達する状態(これを「オン状態」とも呼ぶ)と、ラックスライダー65のスライド移動に伝達しない状態(これを「オフ状態」とも呼ぶ)の、2つの状態に切り替わるようになっている。本実施形態では、図5に示すように、フレーム体29に回転可能に軸支された回転軸部79aを中心に回転変位する変位部材としてのレバー部材79によって、クラッチ部材120がオン状態とオフ状態との間で切替えることができるように構成されている。このように、クラッチ部材120、および回転部としての第4伝達歯車87とを含み、第4伝達歯車87とクラッチ部材120との間の回転伝達状態を切替えるクラッチ機構100と、この変位部材としてのレバー部材79とによって動力伝達切替装置が構成されている。
【0061】
すなわち、図6に示すように、キャリッジ16のメンテナンス領域MAへの移動に伴ってキャップ保持部材71が右方向に移動した状態では、レバー部材79の一端側となる上端部79cが、キャップ保持部材71の下面に形成された下面部位71cと当接する。レバー部材79はこの当接によって回転軸部79aを中心に回転し、その他端側となる下端部79bが左方に移動するように変位する。このレバー部材79の変位によって、クラッチ機構100において第4伝達歯車87とクラッチ歯車122との間での回転の伝達状態の切り替えが許容されるようになっている。
【0062】
また、図6に示すように、キャップ保持部材71には、その左端において前方側に突出するストッパー71bが形成されている。このストッパー71bは、キャップ保持部材71において各支持棒72がフレーム体29の各貫通溝28の下側平坦部29bに位置する状態では、カム歯車90と係合することによってその回転を規制する。一方、キャリッジ16のメンテナンス領域MAへの移動に伴ってキャップ保持部材71が右方向に移動した状態では、カム歯車90から離間して、その回転規制を解除することによって、ワイパー75の上昇移動およびロックレバー84の回転が許容される状態となる。
【0063】
次に、ロックレバー84を回転駆動させるカム歯車90のカム形状と、ワイパー75を上昇および降下駆動させるカム歯車90のカム溝とについて、その構成を図7〜図9を参照して説明する。その後、クラッチ機構100におけるオン状態とオフ状態との切替について、その構成を図10〜図15を参照して説明する。
【0064】
図7(a)に示すように、カム歯車90は、その外周面の一部が径方向外側へ略台形状に突設された凸部96となっている。この凸部96は、その外周面両端部分がカム歯車90の軸心からの半径方向の距離が徐々に変化する斜面となっており、その外周面先端部分は円弧面となっている。従って、カム歯車90が一方向に回動する過程において、この凸部96の回転始端側の斜面がロックレバー84の下端側の突起84bに係合しているときに、ロックレバー84の上端部84aは上昇する。そして、図8(a)に示すように、凸部96の円弧面が突起84bに係合している過程でほぼ立設してキャリッジ16の移動を規制するロック位置に保持される。さらにカム歯車90が継続回転し、凸部96の回転終端側の斜面が突起84bに係合しているときに下降して、図9(a)に示すように、図7(a)に示す元の位置(退避位置)に戻るようになっている。このようにカム歯車90の凸部96は形成されている。
【0065】
また、カム歯車90の第2伝達歯車82との当接面(クラッチ面)と反対側となる端面上には、ワイパー75のワイパー保持部材76からカム歯車90側に突出形成されたガイドピン77が係入されるカム溝95が形成されている。カム溝95は、カム歯車90がCCW回転するにつれてカム歯車90の軸心からカム溝95までの半径方向の距離が徐々に長くなる所定経路に形成されている。そして、カム溝95の一端から他端に至る過程でカム歯車90の軸心からカム溝95までの半径方向におけるずれ量は、ワイパー75の昇降ストローク長に一致している。このため、図9(a)に示したように、ガイドピン77がカム溝95に案内されて上方に移動すると、ワイパー75は退避位置から昇降ストローク長だけ上昇して液体噴射ヘッド19を払拭する払拭位置に配置されるようになっている。もとより、カム歯車90が逆転(ここではCW回転)すると、カム溝95に挿入されたガイドピン77がカム溝95に案内されて下方に移動し、図7(a)に示す元の位置となることになる。これにより、ワイパー75が払拭位置から昇降ストローク長だけ下降して退避位置に配置されるようになっている。
【0066】
また、図7(a)に示すように、カム歯車90には、軸心を挟んでカム溝95と反対側となる位置に係止凹部91が形成されている。係止凹部91は、キャップ保持部材71(キャップ27)が降下してキャップ27が液体噴射ヘッド19から離間した退避位置にあるときに、キャップ保持部材71から前方に突出されたストッパー71bを係合させてカム歯車90の回転を停止させる被係止部を構成している。
【0067】
すなわち、図7(b)に示すように、ワイパー75およびロックレバー84が退避位置にあるとき、ストッパー71bはカム歯車90の係止凹部91に挿入される。このため、キャップ27が退避位置にあるときは、ストッパー71bによる係止により、ワイパー75およびロックレバー84は退避位置にロックされる係止状態となる。この状態では、カム歯車90は、ストッパー71bの係止によって所定値を超える回転負荷に抗して回転が規制されるので、モーター26からの動力が第2伝達歯車82に伝達されて回転しても、カム歯車90との間の摩擦クラッチに滑りが発生して第2伝達歯車82が空回りする状態となる。
【0068】
そして、図8(b)に示すように、キャップ保持部材71の上昇により係止凹部91からストッパー71bが抜け出ると、カム歯車90が回転(ここではCCW回転)可能な状態となるので、ワイパー75の退避位置から払拭位置への上昇が可能となる。
【0069】
カム歯車90には、ワイパー75が図9aに二点鎖線で示す払拭位置にある状態において、キャリッジ16がメンテナンス領域MAから左方へ移動してキャップ保持部材71が降下し、係止位置となるその左端位置に戻ったストッパー71bと相対する位置に凹部94が形成されている。インク吸引動作終了後にキャリッジ16がメンテナンス領域MAから印刷領域PA側に移動するためメンテナンス領域MAを離れた段階で、キャップ27はワイパー75による液体噴射ヘッド19の払拭に先立ち下降し、この下降によって左方に移動するストッパー71bは、図9(b)に示すように、カム歯車90の凹部94に挿入されることになる。
【0070】
そして、ストッパー71bが凹部94に挿入された状態において、カム歯車90が逆転してCW回転しようとするときに、この凹部94に挿入されているストッパー71bがカム歯車90に対して相対移動する移動方向側の内壁面は、斜面93に形成されている。斜面93は、カム歯車90のCW回転時におけるストッパー71bの相対移動方向側に向かって凹部94の底面と同じ深さから徐々に深さが浅くなる傾斜面となっている。このため、図9(a)に示した状態で、モーター26がCW回転で駆動されれば、ストッパー71bは、図9(c)に示すように、斜面93を乗り上げて凹部94から抜け出ることができるので、カム歯車90のCW回転つまり逆転が許容されることになる。このように、斜面93は、ワイパー75を払拭位置から退避位置へ移動させるためのカム歯車90の逆転を許容できるように、ストッパー71bが凹部94から係止凹部91へ至る経路上のストッパー71bの移動を許容する移動許容面となっている。
【0071】
さらに、カム歯車90の外周面上には、凸部96とほぼ反対側で所定の角度範囲(本例では約90度)に渡る位置に歯部90aが形成されている。歯部90aは、カム歯車90が回転するときにガイドピン77がカム溝95に案内されることで昇降するワイパー75が退避位置と払拭位置を除く昇降ストロークの途中領域にあるときに、第1伝達歯車81と直接噛合できるようにカム歯車90の外周面上の所定の部位に形成されている。つまり、カム歯車90が有限回動範囲の途中領域にあるときに第1伝達歯車81と直接噛合できるようにカム歯車90の外周面上の所定の部位に形成されている。
【0072】
したがって、第1伝達歯車81が回転するときには、ワイパー75が昇降ストロークの途中領域にあるときに第1伝達歯車81から歯部90aに動力が直接伝達されるので、カム歯車90は確実に回動する。また、カム歯車90の外周面上において歯部90aが形成されていない部分は、第1伝達歯車81と噛合できない円弧面となっており、カム歯車90は、ガイドピン77がカム溝95の両端近傍に位置する回動位置にあるときは、第1伝達歯車81と噛合できない。このため、第1伝達歯車81が歯部90aと噛合していないときは、第2伝達歯車82との摩擦係合を介してのみカム歯車90に回転が伝達されることになる。
【0073】
また、ガイドピン77がカム溝95の一方の終端面95aに当接すると、摩擦クラッチに滑りが発生して第2伝達歯車82が空回りし、カム歯車90のそれ以上の回動(CW回転)が規制されるようになっている。また、ガイドピン77がカム溝95の他方の終端面95bに当接したときも、同様に、摩擦クラッチに滑りが発生して第2伝達歯車82が空回りし、カム歯車90のそれ以上の回動(CCW回転)が規制される。このように摩擦クラッチ機構は、第2伝達歯車82がいずれの方向に回転し続けた場合でも、カム歯車90が所定の角度範囲でのみ往復回動するように構成されている。
【0074】
そこで、図7(a)に示すように、所定の角度範囲でのみ往復回動するカム歯車90の回動範囲の途中の一範囲において、凸部96はロックレバー84の突起84bに係合するように、凸部96の形成位置および形成範囲のカム歯車90に対する中心角(本例では約30度)が設定されている。従って、カム歯車90が図7(a)に示す初期位置から所定回動量だけCCW回動してから凸部96は突起84bと係合し始めるようになっている。この結果、図7〜図9から分かるように、メンテナンス装置23は、まずワイパー75が上昇し始め、その上昇する途中からロックレバー84が上昇し始めてロック位置に到達する。そこから、さらにカム歯車90が約30度回動した後にロックレバー84がロック位置から降下して退避位置に戻り、その後ワイパー75が払拭位置に到達するように動作する構成となっている。
【0075】
次に、クラッチ機構100におけるオン状態とオフ状態との間の切替機構について、その構成を説明する。本実施形態のクラッチ機構100は、図10に示すように、クラッチ軸101、係止部102、係合部材110、ワッシャー118、第1方向付勢部材としての第1コイルばね119、クラッチ部材120、第2方向付勢部材としての第2コイルばね124、ワッシャー125、および第4伝達歯車87と、によって構成されている。なお、第1方向付勢部材、第2方向付勢部材とは、ある状態における付勢方向を示しており、常に一定の方向の付勢をしている部材ということではない。
【0076】
クラッチ軸101は回転軸として機能し、その両側の軸端部101a,101bにおいて、フレーム体29に対して回転自在に軸支される軸部が形成されている。このうちの一方の軸端部101a側において、軸方向と交差する方向に所定量突出する突出部103がクラッチ軸101を中心にして対角位置に2つ形成された係止部102が、クラッチ軸101と一体で回転するように設けられている。なお、本実施形態では、係止部102はクラッチ軸101と一体で形成されている。もとより、係止部102はクラッチ軸101と別体で形成され、クラッチ軸101と一体で回転するようにクラッチ軸101に固定されていてもよい。
【0077】
このクラッチ軸101において第1方向側となる軸端部101b側から、まず係合部材110が軸通しされて挿入されている。係合部材110は、周縁が第2方向側となる軸端部101a側に庇状をなす円板部111とその円板部111よりも小径の円筒部112とを有している。円筒部112には、突出部103と軸方向で当接して係合する第1係合部113と第2係合部114とが形成されている。第1係合部113および第2係合部114は、円筒部112において第1方向と反対の第2方向側の端面からクラッチ軸101の軸方向に沿って第1方向に掘り下げられた溝形状を有している。そして、本実施形態では第1係合部113の方が第2係合部114よりも深い溝形状で形成されている。すなわち、第1係合部113の溝底面113Bと、第2係合部114の溝底面114Bとは、クラッチ軸101の軸方向において互いに離間する位置になるように、具体的には第1係合部113の溝底面113Bの方が第2係合部114の溝底面114Bよりも第1方向側に位置するように形成されている。また、溝形状の幅つまり回転方向の寸法は、突出部103より僅かに広くなっており、突出部103が第1係合部113あるいは第2係合部114において軸方向に移動して溝底面113Bあるいは溝底面114Bと当接して係合できるようになっている。
【0078】
また、第1係合部113の溝と第2係合部114の溝との間には、第2係合部114の溝部における軸方向の端面(溝底面114B)から第2方向に所定量の高さを有する壁部115が形成されている。壁部115は、第1係合部113と第2係合部114との間を、突出部103が回転して移動することを抑止するように設けられている。すなわち、壁部115は、突出部103がクラッチ軸101とともに回転した場合において、突出部103と第2係合部114とが係合した状態でのクラッチ軸101の回動時に、その回転方向において係合状態を維持する高さで形成されている。
【0079】
続いて、クラッチ軸101に対して、ワッシャー118と第1コイルばね119とが軸通しされる。ワッシャー118によって、第1コイルばね119と係合部材110との間で相対的な回転が円滑に行われるようになっている。
【0080】
次に、クラッチ軸101に対してクラッチ部材120を軸通しする。クラッチ部材120は、軸部となる略円筒形状のクラッチ本体121を有し、このクラッチ本体121の第1コイルばね119側の端部外周面にクラッチ歯車122が形成されている。そして、クラッチ本体121における軸方向でクラッチ歯車122の反対側には、クラッチ軸101の軸方向に沿ってクラッチ本体121の基端部から第1コイルばね119と反対側の第1方向に突き出す従動側突起部123が回転方向(周方向)において互いに所定の間隔を有して複数(ここでは3つ)形成されている。
【0081】
続いて、クラッチ軸101に対して第2コイルばね124とワッシャー125とが軸通しされる。ワッシャー125によって、第2コイルばね124と第4伝達歯車87との間で相対的な回転が円滑に行われるようになっている。また、第2コイルばね124のバネ力は、第1コイルばね119のバネ力よりも小さくなっている。
【0082】
最後に、回転部としての第4伝達歯車87がクラッチ軸101と一体で回転するように、クラッチ軸101の軸端部101b側において取り付けられる。第4伝達歯車87は、クラッチ部材120と対向する側において円筒形状部127を有している。そして、この円筒形状部127の外周には、クラッチ軸101の軸方向に沿って円筒形状部127の基端部からクラッチ本体121の従動側突起部123と各々対応するように突き出す駆動側突起部126が、外周方向において互いに所定の間隔を有して複数(ここでは3つ)形成されている。
【0083】
クラッチ機構100はこのように構成されている。従って、係合部材110、ワッシャー118、第1コイルばね119、クラッチ部材120は、クラッチ軸101を同心軸として回転するとともに、クラッチ軸101の軸方向に沿って移動することができるようになっている。一方、第4伝達歯車87とクラッチ軸101は軸方向に移動することはない。そして、この移動に際して圧縮される第2コイルばね124は、圧縮されたときの圧縮力が第1コイルばね119の圧縮力よりも常に小さくなるようにばね力が設定されている。また、係合部材110およびクラッチ部材120は、クラッチ軸101に対して相対的に回転できるようになっている。
【0084】
さて、このような構成のクラッチ機構100を備えたメンテナンス装置23において、突出部103が第1係合部113と係合するか、第2係合部114と係合するかによって、第4伝達歯車87の回転がクラッチ歯車122の回転に伝達されるか否か、つまりオン状態かオフ状態かを切替えるように構成されている。この切替機構について、その切替の仕組みとなる構成を図11〜図15を参照して説明する。なお、説明の都合から、クラッチ機構100は最初にオフ状態にあるものとして説明する。
【0085】
図11に示すように、キャリッジ16が例えば印刷領域PAを移動してキャップ保持部材71と当接しない状態においては、各支持棒72が貫通溝28において下側平坦部29bに位置する。この状態では、キャップ保持部材71の下面部位71cはレバー部材79の上端部79cから離間している。従って、レバー部材79の下端部79bは、係合部材110の円板部111に外力を加えない状態になっている。このため、第4伝達歯車87に対してクラッチ部材120は第2コイルばね124によって右側に付勢される。また、係合部材110はクラッチ部材120に対して第1コイルばね119で右側に付勢される。このとき、クラッチ軸101の突出部103は係合部材110の円筒部112における第1係合部113と係合している。従って、係合部材110はクラッチ軸101に対する位置が最も右方向に寄った位置になる。この結果、クラッチ部材120に形成された従動側突起部123は、第4伝達歯車87に形成された駆動側突起部126と係合しないように軸方向において離間した状態、つまりオフ状態となるように構成されている。なお、このとき、第1コイルばね119は、殆ど圧縮されない状態つまり略自由長となっている。また、第2コイルばね124は、僅かに圧縮された状態、ないしは略自由長となっている。
【0086】
次に、図12に示すように、キャリッジ16がメンテナンス領域MAに移動すると、キャップ保持部材71の各支持棒72が貫通溝28において上側平坦部29dに位置するようになる。このとき、本実施形態では、各支持棒72が上側平坦部29dにおける左端の位置(これを「第1メンテナンス位置MP1」と呼ぶ)に移動し、キャップ保持部材71の下面部位71cはレバー部材79の上端部79cとほぼ当接した状態となるように構成されている。その後、各支持棒72が上側平坦部29dに沿って右側に距離SK分離れた位置(これを「メンテナンス位置MP2」と呼ぶ)に移動することによってレバー部材79の上端部79cを右方に移動させる。従って、レバー部材79はこのキャップ保持部材71の距離SKの移動によって、回転軸部79aを中心に回転して変位し、レバー部材79の下端部79bが、係合部材110の円板部111と当接しつつ左方向に押す。そして、第1コイルばね119、第2コイルばね124の付勢力に抗して係合部材110を左側に移動させた状態になる。
【0087】
この係合部材110の左方への移動に伴って第1コイルばね119、第2コイルばね124が圧縮される。ここで、第2コイルばね124の圧縮力は第1コイルばね119より小さいため、係合部材110の左方への移動に伴って、第2コイルばね124の方が第1コイルばね119より圧縮量が大きくなる。第2コイルばね124が圧縮されることで、クラッチ部材120が左側に移動する。クラッチ部材120は第4伝達歯車87に突き当たる位置まで移動させられると、第1コイルばね119が圧縮させられる。この状態では、第1コイルばね119の圧縮力の方が第2コイルばね124より大きいため、クラッチ部材120は左側に付勢される。図12ではクラッチ部材120の従動側突起部123と第4伝達歯車87の駆動側突起部126の先端同士が当接している(図13も同様)。この状態から、第4伝達歯車87が回転すると、従動側突起部123と駆動側突起部126が回転方向でずれる。そして、クラッチ部材120は左に付勢されているのでクラッチ部材120は左に移動する。そして、図14のように従動側突起部123は、駆動側突起部126と左右方向において所定量係合する。この左右方向の係合によって、第4伝達歯車87の回転をクラッチ部材120に伝達して、クラッチ部材120のクラッチ歯車122を回転させるようになっている。従って、第4伝達歯車87が回転部として機能し、クラッチ部材120が回転伝達部として機能する。
【0088】
さて、この係合部材110の左側への移動状態において、図13に示すように、係合部材110の壁部115は、突出部103よりも左側に位置するようになっている。すなわち、突出部103はクラッチ軸101の回転によって第1係合部113と第2係合部114との間で移動できる状態となる。従って、本実施形態では、軸方向に沿う左方向が第1方向となり、右方向が第2方向となる。この状態で、第4伝達歯車87をモーター26で回転(ここではCW回転)させることによって、クラッチ軸101および係止部102を介して突出部103を係合部材110に対して所定の角度分相対的に回転させる。この結果、図14に示したように、突出部103は、第1係合部113から離脱した位置から、回転することにより壁部115の右側を通過して、第2係合部114と左右方向(クラッチ軸101の軸方向)において対峙する位置に移動する。
【0089】
ところで、このクラッチ部材120の左方への移動に際して、図12および図13に示すように、第4伝達歯車87の回転状態に応じて、従動側突起部123が駆動側突起部126と軸方向つまり左右方向において当接する(すなわち、端面同士が突き合わせられた)状態が発生する場合がある。このような場合、クラッチ機構100では第1コイルばね119が圧縮されるようになっており、レバー部材79の変位(回転)に応じて左方に移動する係合部材110の移動が規制されないようになっている。また、本実施形態では、このように従動側突起部123と駆動側突起部126とが当接した状態を解除するように第4伝達歯車87の回転が行われたのち、オフ状態からオン状態への切替えが行われるように構成されている。
【0090】
ちなみに、本実施形態では、最初に第4伝達歯車87をラックスライダー65が前方に移動しない方向へ所定量回転(ここではCCW回転)させる。クラッチ部材120は、クラッチ歯車122がラックスライダー65のラック66と常に係合するようになっており、常に所定の回転負荷を有する状態となっている。これに対して、本実施形態では、第4伝達歯車87の駆動側突起部126とクラッチ部材120の従動側突起部123との当接面において相対移動した際に生ずる摩擦抵抗つまり回転負荷は、クラッチ部材120の回転負荷よりも小さくなっている。
【0091】
ところで、本実施形態では、図示を省略しているが、この駆動側突起部126と従動側突起部123との当接状態が解除された状態において、駆動側突起部126と従動側突起部123との間には、CW回転方向に隙間が形成されるようになっている。従って図14に示すように、その後第4伝達歯車87が所定角度分CW回転することによって、駆動側突起部126と従動側突起部123とが当接しない範囲内で突出部103を回転させ、第1係合部113から第2係合部114と左右方向で対峙する位置に移動させることができる。この結果、この突出部103に回転移動において、クラッチ部材120はCW回転しないので、ラックスライダー65も前方に移動しないようになっている。
【0092】
その後、図15に示すように、キャリッジ16が第2メンテナンス位置MP2から印刷領域PAに移動すると、レバー部材79の上端部79cはキャップ保持部材71の下面部位71cとの当接が解除される。すると、レバー部材79の下端部79bは右方向に移動する。それに伴い、第1コイルばね119の付勢力で、係合部材110が右方向に移動する。このとき、突出部103は第2係合部114と左右方向で対峙しているため、突出部103は第2係合部114の左側の溝底面114Bに当接して係合する。第2係合部114の溝底面114Bは第1係合部113の溝底面113Bよりも第2方向側に位置するので、図15における係合部材110の位置は、図11における係合部材110の位置より第1方向側に位置する。このとき、係合部材110とクラッチ部材120の距離は広がり、第1コイルばね119は伸びた状態となるが、第2コイルばね124は圧縮されたままである。そのため、クラッチ部材120は左に付勢された状態を維持し、第4伝達歯車87の駆動側突起部126がクラッチ本体121の従動側突起部123と左右方向において係合を維持する状態となる。この結果、クラッチ機構100は、駆動側突起部126が従動側突起部123と左右方向において係合することによって回転時に互いに当接し、第4伝達歯車87の回転をクラッチ本体121に伝達することができる状態となる。こうしてクラッチ機構100は、第4伝達歯車87によって、クラッチ本体121のクラッチ歯車122を回転させるオン状態に設定される。
【0093】
一方、クラッチ機構100をオン状態からオフ状態にする場合は、上記の説明から明らかなように、係合部材110に対する突出部103の相対的な回転方向を、オフ状態からオン状態にする場合の回転方向と逆の方向に回転させればよいことになる。すなわち、本実施形態では、図12に示したようにキャリッジ16が第2メンテナンス位置MP2に移動し、突出部103と係合部材110の第2係合部の係合状態を解除する。そして、第4伝達歯車87を所定の角度分回転(ここではCCW回転)させ、突出部103を係合部材110の第2係合部114から第1係合部113と対峙する位置に突出部103を移動させる。その後、キャリッジ16が第2メンテナンス位置MP2から第1メンテナンス位置MP1又はそれよりも左方へ移動すると、第2コイルばね124の付勢力により係合部材110及びクラッチ部材120を右方向に移動させ、この移動によって突出部103を第1係合部113の溝部と係合させる。このとき、第2コイルばね124は図11に示すように伸びた状態であり、クラッチ部材120の従動側突起部123は第4伝達歯車87の駆動側突起部126から離れた状態となってオフ状態とするように構成されている。
【0094】
なお、クラッチ機構100をオン状態からオフ状態に切替える場合においても、ラックスライダー65が移動しないようになっている。具体的に説明すると、従動側突起部123が駆動側突起部126と軸方向つまり左右方向において当接する状態が発生することなく、従動側突起部123と駆動側突起部126とは、回転方向において当接した状態となっている。従って、例えば、クラッチ部材120をCCW回転させてラックスライダー65を後方に移動させた状態においてオン状態からオフ状態に切替える場合は、第4伝達歯車87を所定の角度分CCW回転させてもラックスライダー65は後方への移動が完了しており更に移動しないようになっている。また、クラッチ部材120をCW回転させてラックスライダー65を前方に移動させた状態においてオン状態からオフ状態に切替える場合は、第4伝達歯車87を所定の角度分CCW回転させても、駆動側突起部126は従動側突起部123に当接しないように設定されている。すなわち、駆動側突起部126と従動側突起部123との間に、回転方向において第4伝達歯車87の所定の角度分に対応する隙間を有するように、夫々の突起部が形成されている。
【0095】
本実施形態のメンテナンス装置23には、このようにキャリッジ16がメンテナンス位置に移動することによって、クラッチ機構100の動作状態を、オン状態もしくはオフ状態のいずれかの状態に設定することができるようになっている。そして、キャリッジ16が第2メンテナンス位置MP2に移動することによって設定されたオン状態となるクラッチ機構100によって、選択閉塞機構40をキャリッジ16に対して接近および離間させる離接移動手段の一部が構成されている。
【0096】
なお、本実施形態では、選択閉塞機構40をキャリッジ16に対して上昇によって接近させ降下によって離間させる昇降機構が離接移動手段の一部として構成されている。そして、選択閉塞機構40は、上昇によって係合部42がキャリッジ16と係合状態にあるスライダー41をキャリッジ16の移動によって移動させることで、押し潰すチューブを選択する選択機構が構成されている。この選択閉塞機構40の昇降機構、および選択閉塞機構40における選択機構について、以下順次説明する。
【0097】
図16に示すように、昇降機構は、選択閉塞機構40のベース60に設けられた延設部位62と、ラックスライダー65と、オン状態に設定されたクラッチ部材120および第4伝達歯車87と、を有して構成されている。ラックスライダー65は、その後端側の平板部65aにおいて下面に形成されたラック66がクラッチ部材120に形成されたクラッチ歯車122と常に噛み合うようになっている。また、前述するように、ラックスライダー65の前端側には、前方に移動することによって延設部位62と係合して上昇させるように斜面部67が設けられている。なお、ここでは、選択閉塞機構40は降下した状態になっているものとする。
【0098】
さて、図17(a)に示すように、キャリッジ16が左右方向に移動して、上下方向においてキャリッジ16に設けられた凹部16h内にスライダー41の係合部42が位置したとき、キャリッジ16は移動停止するとともに、係合部42が降下した状態から上昇する。すなわち、モーター26の回転が第1伝達歯車81および第3伝達歯車86を介して伝達され、第4伝達歯車87がCW回転することによって、オン状態にあるクラッチ歯車122が同じくCW回転する。すると、図17(b)に示すように、ラックスライダー65が前方に移動してベース60の延設部位62を上昇させることによって、ベース60とともに選択閉塞機構40を上昇させ、スライダー41の係合部42をキャリッジ16の凹部16hに進入させる。この結果、スライダー41は、キャリッジ16の左右方向の移動と連動して移動する係合成立状態となる。
【0099】
もとより、図17(b)に示したように、このようにラックスライダー65を前方に移動させて選択閉塞機構40を上昇させた状態から、クラッチ歯車122を逆転(つまりCCW回転)させることによって、ラックスライダー65を後方に移動させて、選択閉塞機構40を降下させるようになっている。この選択閉塞機構40の降下により、スライダー41は係合部42がキャリッジ16の凹部16hから退出して、キャリッジと連動して移動しない係合解除状態となる。
【0100】
なお、本実施形態では、ラックスライダー65はフレーム体29と当接することによって前後方向における移動範囲が規制されている。この規制された移動範囲において、前述するように、ラックスライダー65のラック66とクラッチ歯車122は常に噛み合う状態になっている。従って、図17(a)に示した状態においてクラッチ歯車122がCCW回転したとき、あるいは図17(b)に示した状態においてクラッチ歯車122がCW回転したとき、ラック66およびクラッチ歯車122のいずれにおいても噛み合い維持されるようになっている。すなわち、少なくとも一方の歯車が他方の歯車と噛み合う方向に付勢されており、いずれか一方が回転したとき噛み合いが外れるとともに、回転が停止したとき付勢によって再び噛み合い状態となるように構成されている。
【0101】
本実施形態では、図18(a)に示すように、ラック66は4つのラック歯66a,66b,66b,66cを有している。そして、前方端のラック歯66aおよび後方端のラック歯66cは、ラックスライダー65の平板部65aにおいて周囲三方に空隙が形成された片持ち梁部66afの梁先端および片持ち梁部66cfの梁先端に、それぞれ形成されている。従って、ラック歯66aとラック歯66cは上下方向に撓んで変形可能になっている。なお、ラック歯66bはラックスライダー65と一体で形成されている。
【0102】
従って、図18(b)に示すように、選択閉塞機構40が降下した状態でクラッチ歯車122がCCW回転すると、片持ち梁部66afが図中二点鎖線で示すように上方に変形して撓むことによって、ラック歯66aはクラッチ歯車122との噛み合いが外れるようになっている。そして、クラッチ歯車122の回転が停止すると、片持ち梁部66afが有する弾性によって付勢されて図中二点鎖線で示す変形が元に戻り、ラック歯66aはクラッチ歯車122と噛み合うようになっている。なお、説明は省略するが、ラック歯66cについても同様である。
【0103】
続いて、スライダー41がキャリッジ16と連動して移動することによって選択されたチューブを押し潰す選択閉塞機構40において、その押し潰すチューブの選択機構について、図19〜図22を参照して説明する。
【0104】
図19に示すように、昇降機構によって上昇した選択閉塞機構40は、前述するようにスライダー41がコイルばね61によって右方向に引っ張られるようになっている。従って、スライダー41の係合部42は、左右方向における定まった位置においてキャリッジ16と係合するように上昇する。そして、上昇してキャリッジ16(凹部16h)と係合したスライダー41は、略直方体形状を有するベース60に内装されたカム部材50のカム面上を移動するようになっている。本実施形態では、このスライダー41の移動によって、第2排出チューブ37ないし第1排出チューブ35が選択されて押し潰されるように構成されている。
【0105】
すなわち、図20に示すように、選択閉塞機構40は、カム部材50を内装したベース60とスライダー41とを有している。そして、カム面と対向するスライダー41の下面において回転可能に軸支された閉塞部材43が、カム面において特定の位置である選択位置に導かれるようになっている。以下、この選択位置を含め、選択閉塞機構40において閉塞部材43が選択位置に導かれる構成について説明する。
【0106】
スライダー41は、上方からの平面視形状が略矩形形状を有するとともに、その下面における略中央位置に円柱状の凸部45が形成されている。この凸部45には、該凸部45に嵌合させた円環状の環状部から径方向の一つである左方に向かって真っ直ぐに延びる矩形板状のアーム部を備えた閉塞部材43が、その環状部を押さえ部材46で上方に付勢されて嵌合状態が維持されることで、揺動可能に軸支されている。そして、その閉塞部材43におけるアーム部の先端部近傍における下面には、下方に向かって突出した円柱状のピン部43aが形成されている。
【0107】
スライダー41の前後方向の端部には、上下方向に側壁が形成され、この側壁から内側に向かって板状に突設されたガイド片部41aが、下面側の四隅に形成されている。一方、ベース60は、略直方体状のケース部材であり、前後の両側壁において、凹条溝部60aが左右方向に延設されている。この凹条溝部60aにスライダー41のガイド片部41aが左側から挿入され、スライダー41は左右方向にスライド移動するようになっている。なお、凹条溝部60aは、右方向において終端部60bが設けられ、この終端部60bとスライダー41の右側のガイド片部41aが当接することによって、スライダー41は左右方向において位置決めされるとともに、右方向への移動が規制されるようになっている。
【0108】
ベース60は、略直方体の形状を有するカム部材50を内装するとともに、ベース60とカム部材50との間に、第2排出チューブ37と第1排出チューブ35の中間部を前後に並ぶようにして支持するように構成されている(図16参照)。カム部材50は、第1排出チューブ35の一部及び第2排出チューブ37の一部を、上側からそれぞれ押圧可能な押圧部材としての第1押圧部材57B及び第2押圧部材57Cを備えている(図22参照)。
【0109】
カム部材50の上面には、後端部から前端部にかけて、第1壁51、第2壁52、第3壁53、及び第4壁54がそれぞれ下方向の基底面50aから上方に所定の高さを有して立設されている。また、第1壁51〜第4壁54の左側には島状の第5壁55と第6壁56が、同じく基底面50aから上方に所定の高さを有して立設されている。なお、カム部材50は、これらの壁部が形成されている領域が、ベース60における左右方向のほぼ中央部から左端にかけて位置するように、ベース60に内装されている。
【0110】
さて、これらの各壁部51〜56によって、カム部材50の上面には主として左右方向に長い溝部を有する所謂カム面が形成されている。この溝部は左端側が広く開口しているとともに右端側には、前後方向に等間隔で互いに平行となるとともに左右方向に長い略平面視矩形状をなす3つの選択通路としての案内溝SL1,SL2,SL3が形成されている。各案内溝SL1〜SL3は後側から順に案内溝SL1、案内溝SL2,案内溝SL3とされ、各案内溝SL1〜SL3の前後の幅は閉塞部材43のピン部43aの外径よりも若干大きくなるように設定されている。そして、案内溝SL1に第1押圧部材57Bが、案内溝SL2に第2押圧部材57Cが、それぞれ上下方向への移動自在に配設されている。閉塞部材43は、キャリッジ16の往復移動に連動してスライダー41が移動することによって左右方向に移動し、ピン部43aがこのように形成された溝部に案内されることによって、カム面における所定位置に導かれるようになっている。
【0111】
すなわち、図20及び図21に示すように、第4壁54における延設方向の途中に僅かな段差を有して左右方向に真直ぐ延びる後側面54aの中途よりも右端側となる位置には右斜め後方に傾斜した傾斜面54bが形成されている。一方、第4壁54との間で案内溝SL3を形成する第3壁53の前側面は左右方向に真直ぐ延びている。また、第2壁52との間で案内溝SL1を形成する第1壁51は、第5壁55及び第6壁56よりも左端側となる位置で第4壁54との前後方向の隙間が狭くなるように前側面51aが平面視で前方が凸となる略三角形の輪郭形状に形成されている。
【0112】
この構成によって、スライダー41がベース60に組みつけるべく左側から右方向に移動して挿入されると、閉塞部材43のピン部43aは、第1壁51の前側面51aにおける略三角形の輪郭部分の突端よりも左側部分に倣って前方側に移動したのち、第4壁54の後側面54aとの間の隙間を通過するようになっている。そして、図中実線の矢印で示したように、傾斜面54bと当接して摺動することによって、スライダー41が右方向への移動が規制される位置まで移動した場合は、案内溝SL3における特定の位置に導かれるようになっている。本実施形態では、この位置を初期位置と呼ぶことにする。なお、この初期位置は選択位置の一つであり、この初期値において閉塞部材43は、符号43Aで示した実線図示の状態となる。
【0113】
次に、ピン部43aが初期位置にある状態から、スライダー41が左方向に移動すると、図中破線矢印で示したように、ピン部43aは第6壁56において左後方に傾斜した傾斜面56aと当接し、この傾斜面56aを摺動して第6壁56の左右方向に真直ぐ延びている後側面56bに接触する。その後、スライダー41が継続して更に左方向に移動した場合は、ピン部43aは後側面56bに沿って更に左方に移動し、第1壁51の前側面51aにおける略三角形の輪郭部分の突端よりも右側部分に当接した後、第4壁54の後側面54aとの間の隙間を左側に通過する。その結果、ピン部43aは再びスライダー41がベース60に挿入されたときの位置に移動するようになっている。
【0114】
一方、ピン部43aが第6壁56の後側面56bに接触して位置する状態で、スライダー41が反転移動して右方向に移動した場合は、ピン部43aは図中実線の矢印で示したように、第3壁53において右後方に傾斜した傾斜面53bと当接して右側へ摺動する。そして、スライダー41が右方向への移動が規制される位置まで移動した場合は、案内溝SL2における特定の位置に導かれるようになっている。本実施形態では、この位置を第2閉塞位置と呼ぶことにする。なお、この第2閉塞位置は選択位置の一つであり、この第2閉塞位置において閉塞部材43は、符号43Cで示した二点鎖線図示の状態となる。
【0115】
次に、ピン部43aが第2閉塞位置にある状態から、スライダー41が左方向に移動した場合、図中破線矢印で示したように、ピン部43aは第5壁55において左後方に傾斜した傾斜面55aと当接し、この傾斜面55aを摺動して第5壁55の左右方向に真直ぐ延びている後側面55bに接触するようになっている。その後、スライダー41が継続して更に左方向に移動した場合、ピン部43aは後側面55bに沿って更に左方に移動し、第1壁51の前側面51aにおける略三角形の輪郭部分の突端よりも右側部分当接した後、第4壁54の後側面54aとの間の隙間を左側に通過する。その結果、ピン部43aは第2閉塞位置に移動可能な位置もしくはスライダー41がベース60に挿入されたときの位置に移動するようになっている。
【0116】
一方、ピン部43aが第5壁55の後側面55bに接触して位置する状態で、スライダー41が反転移動して右方向に移動した場合、ピン部43aは図中実線の矢印で示したように、第2壁52において右後方に傾斜した傾斜面52bと当接して右側へ摺動するようになっている。そして、スライダー41が右方向への移動が規制される位置まで移動した場合、案内溝SL1における特定の位置に導かれるようになっている。本実施形態では、この位置を第1閉塞位置と呼ぶことにする。なお、この第1閉塞位置は選択位置の一つであり、この第1閉塞位置において閉塞部材43は、符号43Bで示した二点鎖線図示の状態となる。
【0117】
次に、ピン部43aが第1閉塞位置にある状態から、スライダー41が左方向に移動した場合、図中破線矢印で示したように、ピン部43aは第1壁51における前側面51aと当接し、この前側面51aを左方に摺動する。すなわち、ピン部43aは、第1壁51の前側面51aにおける略三角形の輪郭部分の突端よりも右側部分に当接した後、第4壁54の後側面54aとの間の隙間を左側に通過する。その結果、ピン部43aを、第2閉塞位置に移動可能な位置もしくはスライダー41がベース60に挿入されたときの位置に再び移動させることができるようになっている。
【0118】
以上のように閉塞部材43は、キャリッジ16の往復移動に連動してスライダー41が左右方向に移動することによって、このように形成された溝部に案内されて、ピン部43aが、カム面における初期位置、第1閉塞位置、または第2閉塞位置のいずれかの位置(これらを総称して選択位置と呼ぶ)に導かれるようになっている。そして、ピン部43aが第1閉塞位置に位置した状態では、第1押圧部材57Bがピン部43aにより下方へ押されることで第1排出チューブ35を押し潰し、ピン部43aが第2閉塞位置に位置した状態では、第2押圧部材57Cがピン部43aにより下方へ押されることで第2排出チューブ37を押し潰すようになっている。
【0119】
次に、第1押圧部材57Bと第2押圧部材57Cとについて、その構造を説明する。なお、本実施形態では、第1押圧部材57Bと第2押圧部材57Cとは、上下方向及び左右方向に広がる鉛直面を対称面として互いに面対称な形状になっている。従って、ここでは、代表して第2押圧部材57Cについて説明する。
【0120】
図22に示すように、第2押圧部材57Cは、同図において図示しない選択閉塞機構40におけるカム部材50において、上下方向に移動可能に備えられている。そして、上端が案内溝SL2内に露出するとともに右上方向に傾斜する傾斜面部57aと圧縮ばね58を内装したブロック形状部57bと、を有する基台部59aと、チューブ押し部59bと、を備えている。チューブ押し部59bは、圧縮ばね58を介して、基台部59aに対して上下方向に摺動可能になっている。
【0121】
チューブ押し部59bは、前後方向に所定幅を有するとともに、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、この先端は、選択閉塞機構40において第1排出チューブ35の上面に当接するように配置されている。
【0122】
従って、閉塞部材43のピン部43aがアーム部の揺動により移動して、例えば第2閉塞位置に導かれた場合は、第2押圧部材57Cにおける上端の傾斜面部57aがピン部43aによって押し下げられようになっている。この押し下げによって、基台部59aが下がると、圧縮ばね58が圧縮され、この圧縮ばね58の圧縮によってチューブ押し部59bが第2排出チューブ37を押し潰すようになっている。そして、スライダー41が移動しない状態を維持することによって、この第2排出チューブ37を押し潰した状態が維持されるようになっている。
【0123】
このように、選択閉塞機構40において、スライダー41の往復移動によって閉塞部材43を回転移動させ、ピン部43aを選択位置に移動させることによって、押し潰す排出チューブを選択できるようになっている。このように、第1排出チューブ35の途中に設けられた合流点Gの手前で第2排出チューブ37及び第1排出チューブ35のいずれかが押し潰されるようになっている。もとより、ピン部43aの選択位置が初期位置にある場合は、第2排出チューブ37および第1排出チューブ35は、いずれも押し潰されない状態となっている。
【0124】
上記の如く構成されたメンテナンス装置23を用いて、プリンター11において行われるインクの吸引作用について、図23〜図25を参照して説明する。
図23に示すように、まずキャリッジ16をメンテナンス領域MA(第2メンテナンス位置MP2)へ移動させる(ステップS1)。すなわち、キャリッジ16をキャリッジモーター18図1参照の回転によって右方向に移動させ、図24に示すように、キャップ保持部材71を右方向に移動させることで、レバー部材79を回転させ、クラッチ機構100における係合部材110を左方向に移動させる。なお、この状態では、選択閉塞機構40は降下した位置にあり、スライダー41の係合部42は、キャリッジ16の凹部16hと係合することもなく、キャリッジ16の移動を妨げないようになっている。
【0125】
次に、モーター26の回転によって第4伝達歯車87を所定の手順で正逆回転(CW回転およびCCW回転)させ、クラッチ軸101を回転させることでクラッチ機構100をオン状態に設定する(ステップS2)。すなわち、突出部103を第1係合部113との係合状態から第2係合部114との係合状態になるように回転させる。
【0126】
次に、キャリッジ16をメンテナンス領域MA(第2メンテナンス位置MP2)から左方に移動させてスライダー41と係合する位置まで移動させるステップS3。具体的には、図25に示すように、上方からの平面視で、スライダー41の係合部42がキャリッジ16の凹部16hの領域内に平面的に位置する状態になるようにキャリッジ16を移動させる。なお、本実施形態では、少なくとも、キャリッジ16がキャップ保持部材71の係止部71aに対して左方向に離間した位置においてスライダー41の係合部42と係合するように、凹部16hはキャリッジ16の右側端部に形成されている。
【0127】
キャリッジ16のこの移動によって、キャップ保持部材71は左方に移動するので、レバー部材79の上端部79cに対する押圧も解除され、クラッチ機構100において係合部材110は第2コイルばね124の付勢力に基づき右方に移動する。この結果、突出部103が第2係合部114の溝底面114Bに当接して第2係合部114と係合した状態(つまりオン状態)になる。もとより、このキャリッジ16の移動において、ロックレバー84はキャリッジ16の移動を規制しない退避位置になっている。
【0128】
次に、クラッチ軸101を回転して選択閉塞機構40を上昇させる(ステップS4)。すなわち、モーター26の回転によって第4伝達歯車87をCW回転させてクラッチ軸101を回転させることで、クラッチ歯車122を介してラックスライダー65を前方に移動させる。これにより選択閉塞機構40を上昇させる。
【0129】
次に、キャリッジ16を往復移動して閉塞する吸引通路を選択する(ステップS5)。例えば、ブラックインクを噴射するノズル列22Aを吸引する場合は、プリンター11において吸引すべきキャップ内空間は第1キャップ内空間31aであるので、この第1キャップ内空間31aに連通する第1排出チューブ35以外の第2排出チューブ37を押し潰す必要がある。そこで、この第2排出チューブ37を押し潰すように、閉塞部材43のピン部43aの選択位置が第2閉塞位置になるようにスライダー41を往復移動させる。
【0130】
次に、クラッチ軸101を回転して選択閉塞機構40を降下させる(ステップS6)。すなわち、モーター26の回転によって第4伝達歯車87をCCW回転させてクラッチ軸101を回転させることで、クラッチ歯車122を介してラックスライダー65を後方に移動させる。これにより選択閉塞機構40を降下させる。こうすることで、キャリッジ16はスライダー41の係合部42との係合が解除されるとともに、選択閉塞機構40において、閉塞部材43のピン部43aが選択位置(例えば第2閉塞位置)に維持されたままの状態となる。
【0131】
次に、再びキャリッジ16をメンテナンス領域MA(第2メンテナンス位置MP2)へ移動させる(ステップS7)。すると、キャリッジ16はキャリッジモーターによって右方向に移動し、再び図24に示すように、キャップ保持部材71を右方向に移動させて、レバー部材79を回転させ、クラッチ機構100における係合部材110を左方向に移動させる。同時に、キャップ27は液体噴射ヘッド19に各ノズル列22A〜22Dを囲んで当接した状態となる。
【0132】
次に、モーター26の回転によって第4伝達歯車87をCCW回転させ、クラッチ軸101を回転させることでクラッチ機構100をオフ状態にする(ステップS8)。この動作によって、モーター26の回転がクラッチ部材120の回転に伝達されなくなる。従って、選択閉塞機構40は、モーター26の回転に関わらず降下した状態を維持する。なお、本実施形態では、このときキャリッジ16を第2メンテナンス位置MP2から第1メンテナンス位置MP1へ移動させる。こうすることによって、キャップ27が液体噴射ヘッド19に当接した状態を維持しながら、クラッチ機構100はオフ状態となる。
【0133】
次に、チューブポンプを駆動する(ステップS9)。すなわち、モーター26をCCW回転させてチューブポンプ38を吸引動作させてキャップ内空間を吸引する。この結果、吸引すべきキャップ内空間(例えば第1キャップ内空間31a)が吸引される。
【0134】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)レバー部材79を変位させることで、クラッチ部材120をモーター26からの駆動力で回転駆動させるようにしたり、あるいは回転駆動させないようにしたりすることができる。従って、例えばキャリッジ16の移動動作を利用してレバー部材79を移動させるようにすることによって、クラッチ部材120を軸方向に移動させれば、クラッチ部材120の回転の有無によってモーター26の動力を伝達するかしないかのいずれかに切替えることができる。また、係合部材110は第2コイルばね124によってクラッチ部材120を介して、常に突出部103と第1係合部113および第2係合部114のいずれかとの係合状態を維持するように付勢される。従って、キャリッジ16の移動位置に関わらず切替えられたモーター26の動力伝達の状態を維持することができる。
【0135】
(2)例えば、レバー部材79によってクラッチ機構100から離れた位置において移動するキャリッジ16の移動動作を利用して係合部材110を押すようにすることができる。また、キャリッジ16の移動方向と逆方向に係合部材110を移動させたりすることができる。さらに、上端部79cをキャリッジ16の移動によって移動させる場合、下端部79bにおいて係合部材110を移動させる負荷に対してキャリッジ16の移動に際して生ずる負荷の増加を抑制することができる。あるいは、キャリッジ16の移動量に対して係合部材110の移動量を多くすることもできる。
【0136】
(3)クラッチ部材120が第1コイルばね119を介して係合部材110の移動と連動して移動するとともに、第1コイルばね119の圧縮によってクラッチ部材120と係合部材110とが近接できることになる。従って、例えばクラッチ部材120の従動側突起部123が左方向への移動において駆動側突起部126に対して一体回転するように係合する位置まで移動する前に端面同士が当接して左方向に移動できない状態になった場合でも、次のようにすれば従動側突起部123と駆動側突起部126とを一体回転するように係合させることができる。すなわち、レバー部材79によって係合部材110をクラッチ部材120と近接する左方向に移動させると共に、クラッチ部材120と第4伝達歯車87を相対回転させると、駆動側突起部126と従動側突起部123との端面同士の当接状態が解除される。その結果、第1コイルばね119は伸長することによってクラッチ部材120を左方向に移動させて駆動側突起部126と従動側突起部123とを係合させることができる。
【0137】
(4)クラッチ部材120の左方向への移動によって従動側突起部123をクラッチ軸101の軸方向に沿って移動させて駆動側突起部126と回転方向において係合させることで、駆動側突起部126と従動側突起部123との駆動伝達を行うことができる。従って、係合に要する占有スペースが軸方向の移動量で済むので係合に要するスペースを抑制するとともに、突起部同士の係合によって回転を伝達するので安定して回転を伝達できる確率が高くなる。
【0138】
(5)クラッチ部材120の回転によってモーター26の動力を必要に応じて伝達してラックスライダー65を確実に移動させることができる。従って、例えば、ラックスライダー65によって選択閉塞機構40を上下移動させる場合は、キャリッジ16の移動位置に制約されることなくラックスライダー65を確実に移動させて選択閉塞機構40を上下移動させることができる。
【0139】
(6)付勢手段を別部品で構成することなくラックスライダー65において一体で形成するので、クラッチ機構100が複雑になることを抑制できる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0140】
・上記実施形態において、ラックスライダー65のラック66とクラッチ部材120のクラッチ歯車122との噛み合いが維持される構造として、ラックスライダー65の移動方向において変位が戻るように付勢する弾性変形部を、ラックスライダー65に形成するようにしてもよい。本変形例について図26を参照して説明する。
【0141】
図26に示すように、本変形例のラックスライダー65は、選択閉塞機構40を昇降させる際の移動範囲の両端の位置において、弾性変形可能な可撓形状部65eと可撓形状部65fが設けられている。可撓形状部65eは、図中実線矢印で示したように、ラックスライダー65の前方への移動において、同図において図示しないフレーム体29と当接して後上方に変位するように、ラックスライダー65の後端部において略平板形状の平板部65aから切り起こされた片持ち梁の形状となっている。また、可撓形状部65fは、図中破線矢印で示したように、ラックスライダー65の後方への移動において、同図において図示しないフレーム体29と当接して、先端部が前方に変位するように、ラックスライダー65において右側の部位を基端部とする略S字の片持ち梁形状となっている。
【0142】
従って、ラックスライダー65が選択閉塞機構40を上昇させるため前方に移動した際、移動範囲の終端において可撓形状部65eが変位してラックスライダー65を後側に付勢することによって、ラック66とクラッチ歯車122とが常に噛み合いを維持するようになっている。また、ラックスライダー65が選択閉塞機構40を降下させるため後方に移動した際、移動範囲の終端において可撓形状部65fが変位してラックスライダー65を前方に付勢することによって、ラック66とクラッチ歯車122とが常に噛み合いを維持するようになっている。
【0143】
・上記実施形態において、ラックスライダー65のラック66とクラッチ部材120のクラッチ歯車122との噛み合いが維持される構造として、クラッチ部材120においてクラッチ歯車122が2つの歯車で構成されるようにしてもよい。例えば、図27に示すように、クラッチ歯車122は、クラッチ本体121に形成されたクラッチ歯車122aと、クラッチ本体121とは別体で形成されたクラッチ歯車122bとによって構成されるようにしてもよい。
【0144】
本変形例では、クラッチ歯車122aが形成されたクラッチ本体121には、その右端において右方向に台形状に突出するように凸部121cを形成されるとともに、クラッチ歯車122bには、その左側においてこの凸部121cと回転方向において係合するように左方向に台形状に突出する凸部122cが形成されている。また、クラッチ歯車122bは第1コイルばね119によって左方向に付勢され、クラッチ歯車122a(クラッチ本体121)は第1コイルばねよりも弱い圧縮力を有する第2コイルばね124によって右方向に付勢されている。そして、このような付勢状態において、クラッチ歯車122bは第1コイルばね119によって4つのラック歯66a,66b,66b,66cと噛み合う位置に、また、クラッチ歯車122aは2つのラック歯66bと噛み合う位置に配設されている。
【0145】
このように構成することで、例えば、ラックスライダー65を前方に移動させる場合、図27に示すように、回転方向(図中矢印)において係合状態にある凸部121cと凸部122cとによってクラッチ歯車122aとクラッチ歯車122bは一緒に回転して、ラックスライダー65を移動させる。そして、移動範囲の終端においては、クラッチ歯車122aはラック歯66cと噛み合わない状態になる。この状態で、クラッチ本体121が回転を継続すると、第1コイルばね119よりも圧縮力が弱い第2コイルばね124が圧縮変形するので、凸部121cは台形の斜面部に沿って左方に移動し、凸部122cを乗り越えて移動することになる。この結果、クラッチ歯車122aは空回転するとともに、クラッチ歯車122bはクラッチ本体121の回転が伝達されない状態となるので、ラック66(ラック歯66c)と噛み合った状態が維持されるようになっている。
【0146】
・上記実施形態において、クラッチ機構100のオン状態において、クラッチ部材120はクラッチ軸101の軸方向と交差する方向において係合する回転部から回転が伝達されるようにしてもよい。例えば、図28に示すように、本変形例のクラッチ部材120aは、その左端部において外周面に左右方向に伸びる歯を有する平歯車123aが形成されている。そして、クラッチ部材120aが左側に寄ってクラッチ機構100がオン状態となったとき平歯車123aと噛み合うとともに、クラッチ部材120aが右側に寄ってクラッチ機構100がオフ状態となったとき平歯車123aとの噛み合いが外れるように、回転部としての平歯車126aが配設されている。従って、平歯車126aは上記実施形態における駆動側突起部として機能し、平歯車123aは上記実施形態における従動側突起部として機能する。
【0147】
本変形例の構成によれば、クラッチ部材120aの左右方向の移動量によって、駆動側となる平歯車126aとの係合を選択することが可能となる。従って、例えば、駆動側の平歯車126aを複数備えるようにすれば、クラッチ部材120aの移動量を調節することによって、クラッチ部材120aに回転を伝達すべき平歯車126aと噛み合うようにすることもできる。
【0148】
・上記実施形態において、クラッチ機構100は第1コイルばね119を必ずしも備えなくてもよい。例えば駆動側突起部126および従動側突起部123が三角形状を有するなどによって、クラッチ機構100においてオフ状態からオン状態への切替の際に、従動側突起部123と駆動側突起部126とが左右方向で当接しないようになっている場合は、第1コイルばね119は不要である。
【0149】
・上記実施形態において、変位部材は必ずしもレバー部材79でなくてもよい。例えば、クラッチ機構100において、キャリッジ16(キャップ保持部材71)と同じ方向に係合部材110を移動させる場合は、スライド部材であってもよい。また、このような場合、図示しないが、レバー部材79において、力点と作用点が支点に対して同じ側に位置するように回転軸部79aを設けるようにしてもよい。
【0150】
・上記実施形態において、クラッチ歯車122はラックスライダー65のようなスライド部材ではなく、回転部材(例えば、ポンプ伝達歯車88など)を回転させるようにしてもよい。こうすれば、必要なときにのみチューブポンプ38を回転させることができる。
【0151】
・上記実施形態において、回転部として第4伝達歯車87以外の回転体を備えることとしてもよい。例えば歯車でなくプーリーを回転体として備えたり、モーター26のピニオン26aを回転部として備えたりするように構成されていてもよい。
【0152】
・上記実施形態において、メンテナンス領域MAにおいて、第1メンテナンス位置MP1と第2メンテナンス位置MP2とは同じ位置であってもよい。例えば、クラッチ機構100がオン状態もしくはオン状態とオフ状態との切替が可能な状態において、選択閉塞機構40が上昇することなくチューブポンプが吸引駆動できるように構成されている場合は、このように第1メンテナンス位置MP1の位置と第2メンテナンス位置MP2の位置とを異ならせる必要はない。
【0153】
・上記実施形態では、液体噴射装置を一例としてインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
11…液体噴射装置としてのプリンター、16…キャリッジ、19…液体噴射ヘッド、79…レバー部材(変位部材)、79a…回転軸部、79b…下端部、79c…上端部、103…突出部、87…第4伝達歯車(回転部)、101…クラッチ軸(回転軸)、110…係合部材、113…第1係合部、114…第2係合部、120,120a…クラッチ部材、123…従動側突起部、123a,126a…平歯車(回転部)、126…駆動側突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の回動に伴い回転する回転部と、
前記回転部の軸方向に沿って延びる軸部を有するとともに、該軸部から軸方向と交差する方向に突出する突出部が形成された回転軸と、
前記突出部と前記回転軸の回転方向において係合可能な第1係合部と第2係合部とが前記軸方向において離間した位置に各々形成され、前記軸方向に沿う第1方向に移動することによって、前記突出部の相対的な回転を許容して前記突出部を前記第1係合部および前記第2係合部のいずれかと係合させる一方、前記第1方向と反対の第2方向に移動することによって、前記突出部と前記第1係合部および前記第2係合部のいずれかとの係合を維持させて前記突出部とともに回転する係合部材と、
前記係合部材と当接して、前記突出部の回転が許容される位置まで前記係合部材を前記軸方向に沿って前記第1方向に移動させるように変位する変位部材と、
前記変位部材の移動に伴い前記第1方向に移動して前記回転部と係合することによって前記回転部の回動が伝達されて前記回転軸を中心に回動すると共に、前記突出部が前記第2係合部と係合するとき前記回転部との係合が維持し前記突出部が前記第1係合部と係合するとき前記回転部との係合が解除するように前記軸方向に沿って移動するクラッチ部材と、
前記クラッチ部材を前記第2方向に付勢する第2方向付勢部材と、
を備えることを特徴とする動力伝達切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達切替装置において、
前記変位部材は、一端側が移動することによって、他端側が前記係合部材と当接して前記係合部材を前記第1方向に移動させるように変位するレバー部材であることを特徴とする動力伝達切替装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動力伝達切替装置において、
前記クラッチ部材と前記係合部材との間に挿入され、圧縮されることによって前記第2方向付勢部材よりも強い付勢力で前記クラッチ部材を前記第1方向に付勢することによって、前記第2方向付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ部材を前記係合部材と連動して前記第1方向に移動させる第1方向付勢部材を備えることを特徴とする動力伝達切替装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の動力伝達切替装置において、
前記回転部には、前記軸方向に沿って該回転部側から前記クラッチ部材側に突き出す駆動側突起部が形成され、
前記クラッチ部材には、前記軸方向に沿って該クラッチ部材側から前記回転部側に突き出すとともに、前記回転軸を中心に前記回転部が回動したとき、前記回転部の駆動側突起部と係合して回転する従動側突起部が形成されていることを特徴とする動力伝達切替装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の動力伝達切替装置において、
前記クラッチ部材には、該クラッチ部材の回転と同期して前記回転軸を中心に回転する平歯車が設けられ、
前記平歯車と噛み合うとともに、該平歯車の回転に伴い前記軸方向と交差する方向に沿って移動する直線歯車が一部の領域範囲に形成されたスライド部材を備え、
少なくとも前記一部の領域範囲の端に位置する前記直線歯車の歯は、前記平歯車との噛み合いを常に維持するように前記平歯車と噛み合う方向に付勢されることを特徴とする動力伝達切替装置。
【請求項6】
請求項5に記載の動力伝達切替装置において、
前記スライド部材は、移動に伴って弾性変形する弾性変形部を有し、該弾性変形部の復元力によって、前記直線歯車が前記平歯車との噛み合いを常に維持するように前記平歯車と噛み合う方向に付勢されることを特徴とする動力伝達切替装置。
【請求項7】
媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが設けられるとともに往復移動が可能に構成されたキャリッジと、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の動力伝達切替装置と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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