説明

動物の骨の治療方法

【課題】本発明の目的は、血流促進の効果があると云われている赤色と、腎の機能を高める効果があると云われている黒色とを用いることにより、骨折の治癒期間を短縮することである。
【解決手段】本動物の骨の治療方法は、骨折部位およびその周囲の毛を削ぐ工程と、骨折部位に丸形で黒色の布22を貼付する工程と、前記骨折部位の近傍であって、骨折部位よりも遠位の部位および近位の部位に丸形で赤色の布20を貼付する工程と、前記黒色および赤色の布を覆い、かつ、前記骨折部位の骨の周りに青色の帯状の布23でテーピングを施す工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物の骨の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型犬においては前肢の骨折が増加する傾向にある。この一因として無理な交配による小型化があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−93934号(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、骨折の根本的原因は腎臓の機能低下に基づくものであるとの観点から、治療を行うことはなされていない。
【0005】
また、骨折線(骨の破断した線)が融合するには、骨に栄養を運ぶ血液の流れを良くする必要があるとの観点から、治療を行うことはなされていない。
【0006】
本発明の主目的は、腎の機能を向上させると共に、骨に栄養を運ぶ血流を向上させることで、骨折の完治までの期間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、まず、骨折を治療するには、
i)血流を促進して骨折部位への栄養を供給すること、ならびに、
ii)腎の機能を高めることにより骨折線における骨を再生することが重要であると考えた。
【0008】
ここで、可視光線が電磁波の一種であり、人の心理に作用することは、カラーセラピストの存在等により周知となっている。
一方、犬などの動物は可視光線の色つまり波長の違いを見分けることができるか否かは定かではない。しかし、動物でも人と同じ様に可視光線という電磁波が体の表面(皮膚)に入射すれば、人と同様の反応を期待することができる。
【0009】
そこで、本発明者は血流促進の効果があると云われている赤色と、腎の機能を高める効果があると云われている黒色とを用いることにより、骨折の治癒期間を短縮できるであろうとの仮説を立て、更に、鋭意研究を重ねることで本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の治療方法は、骨折部位およびその周囲の毛を削ぐ工程と、骨折部位に丸形で黒色の布を貼付する工程と、前記骨折部位の近傍であって、骨折部位よりも遠位の部位および近位の部位に丸形で赤色の布を貼付する工程と、前記黒色および赤色の布を覆い、かつ、前記骨折部位の骨の周りに青色の帯状の布でテーピングを施す工程とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、骨折部位に黒色の布を貼付しており、該黒色は腎の機能を高める作用がある。一方、骨折部位の遠位および近位の部位に赤色の布を貼付しており、該赤色は血流を促す作用がある。したがって、骨折線に骨を融合させるための栄養が集まり、骨折線における骨の再生機能が向上し、完治までの期間が大幅に短縮される。
【0012】
本発明において、貼付する布の形状を丸形としたのは、丸形の場合には貼付する布に方向性がなく、色治療に詳しくない獣医でも誤った貼付を未然に防止し得るからである。
丸形の布の形状としては、真円が好ましいがだ円形や長円形であってもよい。
【0013】
赤い丸形の布を貼付する部位としては、骨折部位よりも体の中心から遠い遠位の部位と、体の中心に近い近位の部位に貼付する。小型犬の場合、前肢や後肢を骨折することが多いのであるが、この場合、骨折部位よりも足首側の遠位の部位と、骨折部位よりも前肢や後肢の付け根側の部位とに前記赤色の布を貼付する。
【0014】
ここで、赤色や黒色は血流や骨の治癒を促進するため、骨折部位が「じんじん」とした痛み(疼痛)や痒みが生じる。そこで、本方法においては当該疼痛を緩和するために、青色の帯で骨折部位やその周辺にテーピングを施す。
青色は鎮痛や鎮静効果がある。
【0015】
本発明において、各布は表面から裏面まで全体が同一色で染色されているのが好ましい。色治療の効果を確実にするためである。
【0016】
本発明においては、前記赤色のマンセル値が5RP〜10RPおよび1R〜10Rの範囲に属し、前記黒色のマンセル値がN−1〜N−2の範囲に属し、前記青色のマンセル値が1B〜10Bおよび1PB〜10PBの範囲に属するのが好ましい。
【0017】
すなわち、本発明において赤色、黒色、青色には、ある程度の幅があるが、更に好ましい実施例では、前記赤色のマンセル値が2R〜9Rの範囲に属し、前記黒色のマンセル値がN−1〜N−1.5の範囲に属し、前記青色のマンセル値が5B〜10Bおよび1PB〜7PBの範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は人の手首近傍の腕に赤色の布を貼付した様子を示す平面図で、図1 Aは赤色の丸形の布、図1Bは赤色の楔形の布、図1Cは赤色の楔形の布の向きを変え て貼付した状態を示す平面図である。
【図2】図1の布を貼付した状態において点Oにおける皮膚の表面温度を測定した 結果を示す図表である。
【図3】骨折した犬の前肢に施した色治療の方法を示す平面図で、図3A〜図3Dは 実施例に係り、図3EおよびFは比較例に係る方法を示す平面図である。
【図4】実施例および比較例の結果を示す図表である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の色治療の効果を明瞭にするために、試験例、実施例および比較例を示す。
【0020】
試験例11〜14:
まず、赤色による血流促進の作用を検証した。図1A〜図1Cに示すように人の手首近傍の腕1に赤色の布20,21を貼付した。赤色の布20,21としては、綿の生地の表面から裏面までの全体を赤色(マンセル値5R〜6R程度)で染色したものを用いた。
前記赤色の布20,21は測定点Oに対して、遠位および近位となる部位に貼付した。
【0021】
図1Aの試験例12では直径18mmの丸形の赤色の布20を用い、図1B,図1Cの試験例13,14では楔形の赤色の布21を用いた。図1Bの試験例13では楔形の布が手首から肘に向って先窄まりとなるように赤色の布21を平行に多数配置し、一方、図1Cの試験例3では肘から手首に向って先窄まりとなるように赤色の布21を平行に多数配置した。
【0022】
前記赤色の布20,21の貼付後測定点Oの表面温度を放射温度計(株式会社堀場製作所製)で測定した。これを各試験例1〜3について10人づつ行った。なお、試験例11では何も貼付せずに測定点Oの表面温度を測定した。その結果を図2の表1に示す。
【0023】
図2の表1の結果から分るように、赤色の布20,21のいずれも貼付しなかった試験例11に比べ赤色の布20,21を貼付した試験例12〜14では皮膚の表面温度が高かった。これは、赤色による血流が促進されたためであると推測される。
【0024】
試験例13,14では同じ形状および赤色の布21を用いているにも拘わらず、試験例13の方が表面温度が低かった。これは血液の流れる方向に対する形状の対称性が不均等であることによると推測される。したがって、試験例12の丸形が異方性がなく、施術が容易で安定した効果が得られると推定される。
【0025】
つぎに、骨折した人に黒および赤で色治療を施し白い包帯でテーピングを行ったところ骨折部位に疼痛が生じた。そこで骨折2日目から青色のテーピングに変えたところ、前記疼痛が消えた。
【0026】
つぎに、実際に前肢を骨折した犬を用いてテストを行った。
【0027】
図3A、図3Bおよび図3Dは実施例1の方法を示す。
図3A、図3Cおよび図3Dは実施例2、3の方法を示す。
図3Eおよび図3Fは、それぞれ、比較例1、2の方法を示す。
【0028】
各実施例1〜3、比較例1および2の犬種、年令および体重を図4の表2に示す。
前記各実施例および比較例1においては、まず、骨折部位11およびその周囲の毛を削いだ。その後、全身麻酔で獣医師による手術を行い、整復(骨を整えること)後に骨折線の前後の部位を針金およびボルト(ピン)を用いて固定した。
【0029】
前記実施例1〜3においては、図3Bまたは図3Cに示すように、骨折部位に丸形で黒色の布22を貼付すると共に、前記骨折部位の近傍であって骨折部位よりも遠位の部位および近位の部位に丸形で赤色の布20を貼付した。
【0030】
実施例2、3においては更に、黒色の布22から周方向に離れた部位にも赤色の布20を貼付した。
なお、黒色の布22としては、綿の生地の表面から裏面までの全体を黒色(マンセル値N−1程度)で染色したものを用いた。
【0031】
その後、図3Dのように、前記黒色および赤色の布22,20を覆い、かつ、前記骨折部位11の骨の周りに青色の帯状の布23でテーピングを施した。青色の布23としては、綿の生地の表面から裏面までの全体を青色(マンセル値3PB〜7PB程度)で染色したものを用いた。
【0032】
一方、比較例1および2については、それぞれ図3EおよびFに示すように、赤色の布20または黒色の布22のみを貼付した。また、白色の布でテーピングを行った。
【0033】
各実施例および比較例について5日ごとにレントゲンを撮像し、獣医師の判断で完治までの期間を測定した。その結果を図4の表2に示す。
【0034】
図4の表2の結果から分るとおり、本発明の場合、前記レントゲン撮像による骨折線の消失までの期間、並びに、完治までの期間が著しく短縮された。
【0035】
また、前記レントゲン撮像の結果、各実施例の場合には骨折部位において骨が隆起しているのが確認された。これは黒色の布22による骨の再生機能が向上したためと推測される。
【0036】
また、白色でテーピングした比較例1,2の場合には犬がテープを剥がそうとしたのに対し、青色でテーピングした実施例1〜3の場合には、そのような行動は見られなかった。これは、実施例1〜3の場合には、青色による鎮静効果が得られたためと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、動物の骨折の治療に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
20:赤色の布
22:黒色の布
23:青色の布


【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折部位およびその周囲の毛を削ぐ工程
骨折部位に丸形で黒色の布を貼付する工程と、
前記骨折部位の近傍であって、骨折部位よりも遠位の部位および近位の部位に丸形で赤色の布を貼付する工程と、前記黒色および赤色の布を覆い、かつ、前記骨折部位の骨の周りに青色の帯状の布でテーピングを施す工程とを備えた動物の骨の治療方法。
【請求項2】
請求項1において、前記赤色の布の表面から裏面までの全体が赤色で染色されており、
前記黒色の布の表面から裏面までの全体が黒色で染色されており、
前記青色の布の表面から裏面までの全体が青色で染色されている動物の骨の治療方法。
【請求項3】
請求項2において、前記赤色のマンセル値が5RP〜10RPおよび1R〜10Rの範囲に属し、
前記黒色のマンセル値がN−1〜N−2の範囲に属し、
前記青色のマンセル値が1B〜10Bおよび1PB〜10PBの範囲に属する動物の骨の治療方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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