説明

動物性タンパク質を含まない動物用の発酵嗜好性要素

本発明は、動物の給餌のための嗜好性要素に関する。より詳しくは、本発明は酵母を用いた発酵により得られ、動物起源のタンパク質成分を含まない、少なくとも以下を含む、動物給餌用の嗜好性要素に関する:水分(H):約80〜96重量%;タンパク質要素(FP):約1.5〜10.0重量%;脂肪質(MG):約10重量%以下;糖質(S):約0.20〜2.0重量%;灰分(C):約0.3〜8.0重量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の給餌のための嗜好性要素の分野に関する。
より詳しくは、本発明は酵母を用いた発酵により得られ、動物起源のタンパク質成分を含まない、少なくとも以下を含む、動物給餌用の嗜好性要素に関する:
−水分(H):約80〜96重量%
−タンパク質要素(FP):約1.5〜10.0重量%
−脂肪質(MG):約10重量%以下
−糖質(S):約0.20〜2.0重量%
−灰分(C):約0.3〜8.0重量%
【背景技術】
【0002】
動物、特にペットに与える食品について、その健康、健全さおよび落ち着きを増進し維持するための試みが行われている。しかし、栄養の観点から最も有益な食品でさえも、もし動物が食べることを受け付けなかったり拒否した場合、あるいその食品が十分には好みに合わないために動物が摂取する量が少ない場合、利益はない。
【0003】
また、動物、特に、しばしば気難しいことが分かるイヌやネコなどの飼い馴らされた動物が、食品を摂取するのを容易にするために、栄養の質を維持しながら食品の嗜好性を改善する試みが早くからなされてきた。
【0004】
典型的には、動物用食品の大部分においては、肉および魚が主なタンパク源である。事実、動物由来のもの(肉、骨、魚)によるアミノ酸の質および量は、期待される栄養の質を食品に与える。さらに、これらの由来物のもつ効果は、それを含む食品の嗜好性を増大させることである。
【0005】
しかし、食材に動物起源の成分を用いると小売り価格がかなり上がる。
このことが、より低価格で製造されながらも、動物性要素を主成分とする(例、レバーを主成分とする)伝統的な食品や成分と同様の食欲をそそる食品や栄養的にバランスのとれた食品成分を開発することに、非常に早く研究の目標が定められた理由である。事実、動物飼料業界はすぐに、動物用の食品および食品成分の調製において肉または魚に代わる、栄養的に満足でき、特に経済的である安定したタンパク源を見出すことが有益と判断した。
【0006】
これに関連して、米国特許第4,039,687 号(Weyn) は食品中に存在する動物性タンパク質の全部または一部を、微生物、例えば細菌や酵母を発酵させることにより得られる合成タンパク質で置き換えることを提案している。得られる食品は満足のいく嗜好性を有し、動物または植物起源の天然のタンパク質を主体とする食品に比べて低価格で製造できる。実際には、炭化水素の微生物発酵後に得られたバイオマスをタンパク源として食品中に入れる。
【0007】
米国特許第4,800,093 号 (Hogan等) は、初期の肉の食物の一定割合を、大豆ホエーなどの安価な基質に糸状菌を発酵させて得られたバイオマスで置換した、高水分含量をもつ動物用食品を記載している。
【0008】
英国特許出願第2,385,767 号 (Norferm DA) は、嗜好性要素としてメタン資化性細菌培養物に興味をもった。利用するバイオマスは、メチロコッカス・カプスラツス (Metylococcus capsulatus)種の細菌による炭化水素または天然ガスの発酵により得られる。
【0009】
従って、従来技術によれば、嗜好性に影響せずに、調製した食品の栄養の質を保って、発酵後に得られるバイオマスの形態で、微生物により合成されたタンパク質を食品に添加して動物性タンパク質の代わりとすることは可能である。
【0010】
しかしながら、嗜好性要素として動物飼料にバイオマスを添加することには欠点もあり、特に、かかる成分は必然的に、(i) 添加対象となる食品の官能的性質に対する何らかの予期しない改変 (例えば、微生物の発酵または望ましくない増殖による) を防ぐための、効果的なバイオマス不活性化工程、および(ii)発酵培地を除去するための分離工程を必要とする。また、かかる成分は得られた食品の外見 (例えば、色) を改変する傾向がしばしばみられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、(i) 栄養およびカロリーの点でバランスがとれ、(ii)動物由来のものを主体とする慣用の要素と少なくとも同程度効果的であり、(iii) 容易に入手でき経済的な一次材料からの製造が容易であり、(iv)経時的に安定であり、そして(v) 添加対象の食品の外見やテクスチャーを改変せず、特定の利用困難を生じないように (例えば、食品上に噴霧する場合) 、その物理的性質 (色、粘度など) の点で可能な限り中立である、動物用の嗜好性要素が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において出願人は、この分野に存在する要求に予想外にも十分に応じる、動物用の嗜好性要素を提案するものである。以下の詳細な説明および実施例において説明するように、(1) 本発明の嗜好性要素は栄養的にバランスがとれており、(2) 植物性であり、アレルギーを起こしにくい製品であり、(3) 動物起源のタンパク質を主体とする伝統的な嗜好性要素よりも効果的であり、(4) 微生物、特に酵母の発酵により容易に得られ、(5) 予想外にも発酵培地が嗜好性要素として使用され、バイオマス主体の従来技術の嗜好性要素の製造のために必要な工程のうちの1つを省略できる、というのは、本発明によれば発酵培地を単独で使用する (バイオマスを除けばよく、不活性化工程が不必要となる) か、あるいは発酵培地をバイオマスの存在下で使用する (バイオマスを効果的に不活性化するだけでよい) からであり、(6) その物理的性質が全般的に中立であり:集団に容易に溶け込む、透明な色の水性液体であり、(7) 特に、塗布、噴霧、混和、含浸により使用するのが容易である。
【0013】
本発明において、動物のための「嗜好性要素 (palatability factor)」 (または「嗜好性物質 (palatability agent) 」、「食欲をそそる (appetizing) 」もしくは「口にあう要素 (palatable factor) 」) とは、官能的性質 (香り、味覚、外見、テクスチャーなど) が、動物が食べる欲求を経験するであろうような要素である。本発明において、嗜好性要素は動物飼料に添加される食品成分 (即ち、添加物) であることが最も多い。しかし、これは広く、かかる成分を含有する食材、また飲料であってもよい。
【0014】
従って、本発明の第1の面は、少なくとも1種の酵母の培養後に得られる発酵培地を含み、該発酵培地が少なくとも以下を含むことを特徴とする、動物飼料に添加するための発酵嗜好性要素に関する:
−水分(H):約80〜96重量%、
−タンパク質要素 (FP):約1.5〜10.0重量%、
−脂肪質(MG):約10重量%以下、
−糖質(S):約0.20〜2.0重量%、および
−灰分(C):約0.3〜8.0重量%、
ここで該タンパク質要素FPは動物起源の成分を含まない。
【0015】
例えば、ある特定の嗜好性要素は、動物起源のタンパク質成分を含まず、少なくとも以下を含むであろう:
−水分(H):約85〜96重量%、
−タンパク質要素 (FP):約1.5〜10.0重量%、
−脂肪質(MG):約1重量%以下、
−糖質(S):約0.20〜2.0重量%、および
−灰分(C):約0.3〜8.0重量%、
または、
−水分(H):約90〜96重量%、
−タンパク質要素 (FP):約2.5〜10.0重量%、
−脂肪質(MG):約5重量%以下、
−糖質(S):約0.30〜0.75重量%、および
−灰分(C):約0.5〜0.7重量%、
あるいは、
−水分(H):約90〜96重量%、
−タンパク質要素 (FP):約2.5〜10.0重量%、
−脂肪質(MG):約1重量%以下、
−糖質(S):約0.30〜0.75重量%、および
−灰分(C):約0.5〜0.7重量%、
本明細書において「灰分」なる用語は、製品の燃焼後のミネラル成分を意味する。
【0016】
ここでは「脂肪質」とは、動物用食品に適用され、嗜好性要素の最初において発酵を担う微生物によりおそらく代謝される(即ち、おそらく消費されるか、または生産される)任意の種類の脂肪質を意味する。これは、動物もしくは植物起源、またはそれらの組み合わせの脂肪質でありうる。当業者であればどのような種類の脂肪質を使用するべきかは、通常の知識および想定する嗜好性要素の用途を考慮すれば分かるであろう。
【0017】
タンパク質要素FPの成分は、タンパク質類、ペプチド類、アミノ酸類およびそれらの組み合わせでありうる。「タンパク質」および「ペプチド」なる用語は、当業者が、状況によりおよび通常の知識に照らしてこれらの用語の一方または他方に与えられるべき正確な意味を決定しうるならば、以下において区別せずに使用されることがある。さらに、ここで「タンパク質成分」および「タンパク質要素FPの成分」なる用語も同等である。
【0018】
1つの態様によれば、タンパク質要素FPは、アラニン、トレオニン、リシン、および含硫アミノ酸から選ばれる1または2以上のアミノ酸を少なくとも約90重量%含む。特に、タンパク質要素FPはこれらのアミノ酸を少なくとも約95重量%、好ましくは少なくとも約98重量%、さらに好ましくは少なくとも約99重量%含む。
【0019】
このアミノ酸またはこれらのアミノ酸は好ましくは、メチオニンやシステインなどの含硫アミノ酸から選択される。メチオニンを使用するのが好ましい。
別の態様によれば、本発明の嗜好性要素は約1.6〜3.5の範囲のpHを有し、約2.6〜3.2の範囲のpHが好ましい。
【0020】
本発明の嗜好性要素は「発酵した」もの、即ち、本発明において酵母である少なくとも1種の微生物を用い発酵により得られる。好ましくは、酵母は、ヤロウィア属 (Yarrowia sp.) 、サッカロミセス属 (Saccharomyces sp.)、カンジダ属 (Candida sp.)、クルイベロミセス属 (Kluyveromyces sp.)、ピチア属 (Pichia sp.) 、デバルヨミセス属 (Debaryomyces sp.) 、チゴサッカロミセス属 (Zygosaccharomyces sp.)から選択される。より好ましくは、酵母は、ヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae) 、カンジダ・ベルサリティス (Candida versalitis) 、クルイベロミセス・ラクティス (Kluyveromyces lactis) 、クルイベロミセス・フラギリス (Kluyveromyces fragilis) 、ピチア・パストリス (Pichia pastoris)、デバルヨミセス・ハルセニイ (Debaryomyces harsenii)、チゴサッカロミセス・ロウキシイ (Zygosaccharomyces rouxii) から選択される。ヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)酵母が最も好ましい。
【0021】
上記したように、本発明の嗜好性要素は、上記酵母の培養後に得られる発酵培地を含む。場合により、発酵培地は、バイオマスを取ったあとに嗜好性要素として利用される。
さらに別の態様によれば、嗜好性要素はすぐに使用できる液体の形態である。あるいは、これは濃縮した発酵嗜好性要素の調製において中間製品となりうる。この場合、水分割合の低下した濃縮発酵嗜好性要素は液体の形態でも、乾燥形態でもよい。「濃縮」とは上記したH、FP、MG、SおよびCの含有量を有する嗜好性要素の濃縮によって得られる嗜好性要素を意味する。濃縮した嗜好性要素においては、濃縮することにより、FP、MG、SおよびCの含有量は上記した特定の含有量よりも高く、同時に水分割合はより低いことは明らかである。
【0022】
ある態様によれば、本発明の嗜好性要素は動物飼料に適用される。あるいは、この嗜好性要素は動物飼料に混入される。一般に、これは嗜好性要素を「添加すること」または「使用すること」である。嗜好性要素を「添加すること」または「使用すること」は、「要素を適用する」、即ち、例えば噴霧や被覆により表面に添加するという概念、および「要素を中に入れる」、即ち、例えば含浸や混合により塊に添加するという概念を含む。
【0023】
ここで「動物飼料」とは、動物のための1または2以上の食材を意味する。これは固形物質(例、クロケット)でも、液体(例、ブイヨン、飲料)でも、より水分の多いまたは少ない中間製品(例、スープ、かゆ、ペレット、パテなど)であってもよい。状況により、これはまた、一食の摂取過程の間、または1日もしくはより長い期間にわたり摂取されるすべての食品(区別することなく)に関して、1日分の食品でも1食分でもよい。
【0024】
「動物用」または「動物」なる用語は、すべての種類の動物に関して最も広い意味で理解されなければならない。本発明の嗜好性要素またはそれを添加する動物飼料は好ましくは、イヌやネコなどのペット用、特に好ましくはイヌ用に製造される。しかし、本発明の対象は、家庭の、または飼い馴らされた、または飼育される任意の動物、例えば鳥、ウサギ、齧歯類、魚などに及ぶ。また、これらはブタ、家禽類、ウシ、魚、甲殻類などの飼育動物であってもよい。
【0025】
別の態様によれば、本発明の嗜好性要素は、動物および/または植物起源の嗜好性要素などの1または2以上のその他の嗜好性要素と組み合わせて使用される。
さらに別の態様によれば、本発明の対象である嗜好性要素は、約1〜10重量%、好ましくは約2〜4重量%の割合で使用される。
【0026】
本発明の第2の面は、上記したような少なくとも1種の嗜好性要素の濃縮および/または乾燥により得られるだろう濃縮された発酵嗜好性要素に関する。
第3の面によれば、本発明は、少なくとも1種の上記嗜好性要素を含む、動物飼料に添加される嗜好性要素の組成物に関する。かかる組成物は、本発明の嗜好性要素のみを含んでいても、あるいは動物および/または植物起源の1または2以上の嗜好性要素を含んでもよい。
【0027】
第4の面において、本発明は、上記嗜好性要素の製造方法に関し、この方法は少なくとも以下の工程を含む:
a)標準増殖培地において約22℃〜32℃の範囲の温度で約6〜25時間、上記酵母などの少なくとも1種の酵母を予備培養する工程、
b)少なくとも約1.105 細胞/mlの割合のこの予備培養物を用いて、1種または2種以上のアミノ酸を含有する発酵培地に接種する工程、
c)接種された発酵培地を約20℃〜32℃の範囲の温度で約12〜72時間培養する工程、
d)発酵を停止する工程、および
e)嗜好性要素として有用な最終発酵培地を回収する工程。
【0028】
場合により1または2以上の特徴を組み合わせることができるある態様によれば、
−予備培養工程a)を約30℃で行う;
−予備培養工程a)を約8〜16時間続ける;
−培養工程c)を約12〜60時間、または約12〜55時間、または約20〜72時間でも、あるいはより好ましくは約30〜50時間続ける;
−培養工程c)を約28℃〜30℃の範囲の温度で行う。
【0029】
特に、予備培養は酵母の指数増殖期の完了まで続けるであろう。
有利には、予備培養に使用する標準増殖培地は、酵母エキス、麦芽およびグルコースなどの糖を含む。これはさらにペプトンおよび/または少量成分を含んでもよい。例えば、この培地は当業者に既知のイーストマルト (YM) 培地であってもよい。
【0030】
ある態様によれば、工程b)で用いる発酵培地は、約2〜10重量%、好ましくは約3〜5重量%の1種または2種以上のアミノ酸を含有する。これらのアミノ酸は好ましくは酵母により代謝するのに適したアミノ酸である。あるいは、発酵培地中に存在するアミノ酸の中に、補助剤として添加された、酵母により代謝されるのに適したアミノ酸と非代謝アミノ酸が存在しうる。必要に応じ、これらの補充アミノ酸は、例えばその官能的性質を改善することにより、得られる要素の嗜好性に対して正の効果をもつことができる。各種アミノ酸の割合は、代謝されるアミノ酸を優勢とするように変えうる。代謝されるアミノ酸は特に、アラニン、トレオニン、リシンおよび含硫アミノ酸から選ばれる。このまたはこれらのアミノ酸は好ましくはメチオニンおよびシステインなどの含硫アミノ酸から選ばれる。好ましくはメチオニンが使用される。
【0031】
別の態様によれば、工程b)で使用される発酵培地はさらに、約10重量%以下、好ましくは約5〜10重量%の脂肪質を含有する。
さらに別の態様では、工程b)で使用される発酵培地はさらに酵母エキスおよび麦芽を含有する。
【0032】
好ましい態様によれば、予備培養物を用いた発酵培地のへ接種 (工程b)は、増殖培養の開始時に発酵培地において少なくとも約5.105 、1.106 、4.106 、6.106 細胞/mlの細胞集団となるように、少なくとも約5.105 、1.106 、4.106 、6.106 細胞/ml (この順に好ましく) に等しい割合で行う。
【0033】
ある態様によれば、発酵培地のpHは、工程c)の開始時に約4.5 〜6.5 、好ましくは約5.4 〜5.8 の範囲の値に調整する。
さらに別の態様によれば、工程a)の予備培養を、約0.5 〜1.5 vvm の範囲の通気条件で行うか、および/または工程c)の培養を約0.02〜0.40 vvmの範囲の通気条件で行う。
【0034】
また別の態様によれば、工程a)の予備培養、および/または工程c)の培養を攪拌下に維持する。
本発明の方法によれば、嗜好性要素は最終の発酵培地からなるのでバイオマスを除去しても、あるいはバイオマスを含む最終発酵培地を保持してもよく、これは次いで不活性化されるであろう。従って、工程e)の前に、発酵培地からバイオマスを、好ましくはろ過、デカンテーション、遠心分離から選ばれた分離技術により除去することができる。あるいは、バイオマス除去工程を含む工程d)からe)を同時に、好ましくは無菌ろ過により行うことができる。または、バイオマスが除去されない場合、工程d)を、例えば熱による酵母の不活性化によって行うことができる。
【0035】
本発明の第5の面は、上述した少なくとも1種の嗜好性要素または少なくとも1種の組成物を動物飼料に添加することを含む、動物飼料の嗜好性を改善する方法に関する。
詳しくは、嗜好性要素または組成物を、動物飼料に単独で、または動物および/または植物起源の嗜好性要素などの1種または2種以上のその他の嗜好性要素と組み合わせて添加する。
【0036】
本発明を構成する嗜好性要素または組成物は好ましくは、約1〜10重量%、好ましくは約2〜4重量%の割合で使用する。
第6の面によれば、本発明は上記嗜好性要素を製造するための少なくとも1種の酵母の使用に関する。酵母は好ましくは、ヤロウィア (Yarrowia) sp. 、サッカロミセス (Saccharomyces) sp.、カンジダ (Candida) sp.、クルイベロミセス (Kluyveromyces) sp.、ピチア (Pichia) sp. 、デバルヨミセス (Debaryomyces) sp. 、チゴサッカロミセス (Zygosaccharomyces) sp.から選択される。より好ましくは、酵母は、ヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae) 、カンジダ・ベルサリティス (Candida versalitis) 、クルイベロミセス・ラクティス (Kluyveromyces lactis) 、クルイベロミセス・フラギリス (Kluyveromyces fragilis) 、ピチア・パストリス (Pichia pastoris)、デバルヨミセス・ハルセニイ (Debaryomyces harsenii)、チゴサッカロミセス・ロウキシイ (Zygosaccharomyces rouxii) から選択される。最も好ましくはヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)酵母が使用される。
【0037】
第7の面によれば、本発明は、動物用飼料の嗜好性を改善するための、本発明の嗜好性要素または組成物の使用に関する。
本発明はまた、上述した少なくとも1種の嗜好性要素または少なくとも1種の組成物を含む動物用食材を開示する。詳しくは、嗜好性要素または組成物を、好ましくは約1〜10重量%、好ましくは約2〜4重量%の割合で、適用および/または混入する。
【0038】
添付の図は本発明を例示するためのものであり、何ら制限するものではない。
以下の実施例は単に例示のために、本発明の態様および利点を説明することを意図する。
【実施例】
【0039】
I−実験室規模で製造される嗜好性要素の例
概略の製造方法を図2に示す。
1−1−実施例1:酵母ヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)の使用およびメチオニン存在下の発酵
第1の工程は以下の組成の滅菌培地100ml を含有する三角フラスコ中でのYarrowia lipolytica の予備培養であった:麦芽エキス (Muntons-英国) 0.25g、酵母エキス (Biospringer-フランス) 0.2 gおよびグルコース (Merck 、ドイツ) 1.5 g、100ml にする十分量の脱塩水。50%グリセロールを30%添加した標準YM培地上の培養物から得た、-80 ℃に保った1.8ml クリオチューブより、滅菌フードの下で接種を行った。クリオチューブの理論的細胞数は6.5 ・107 細胞/mlであった。pHを塩酸 (Merck)により増殖開始時に5.6 に調整し、30℃、140tr/分のNovotron攪拌台上に三角フラスコを置いた。培養16時間で予備培養を停止した。同時に、主発酵工程を準備した。このために、麦芽エキス(Muntons- 英国) 28g、酵母エキス (Biospringer-フランス) 12g、75% H3PO4 Brenntag- フランス)3.4g、メチオニン(Adisseo- フランス) 150 g、抗蘚剤 (antimousse) (Struktol SB2020) 5ml、および5Lにする十分量の脱塩水を含む5Lのガラス大発酵槽(Prelude-GUERIN SA-フランス) を121 ℃で15分間オートクレーブにかけた。オートクレーブの後、発酵槽にガス出口冷却器を取り付け、2℃で水循環を行わせ、そして培地を30℃とした。通気をタンク底のスパージャーからの補給時に質量流量計により0.1 L /分に設定した。攪拌は500tr /分であり、温度調節は30℃に設定した。発酵槽を、発酵開始時に細胞数が少なくとも1 ×10細胞/mlであるように予備培養物 (250 ml) で無菌的に接種を行った。発酵を48時間行わせた。発酵槽を不活性化のために110 ℃-10 分間のオートクレーブにかける前に密封した。冷却後、発酵培地を発酵槽より取り出した。50%ソルビン酸カリウム (Nutrinova-ドイツ) 30g、次いで75%リン酸 47gを攪拌下で添加した。生成物の最終組成は以下の通りであった:水分:94.3%、タンパク質 (N×6.25) ケルダール法:3.5 %、加水分解によるMG:<1.0 %、可溶性糖質合計:0.62%、灰分:1.64%、pH 2.9。
【0040】
1−2−実施例2:酵母ヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)の使用およびメチオニンの存在下での発酵のその他の例
この例は実施例1−1と同じ条件で行い、主発酵の培地の組成のみが異なった。この培地は、麦芽エキス(Muntons- 英国) 22g、酵母エキス (Biospringer-フランス) 15g、75% H3PO4 Brenntag- フランス)3.1g、メチオニン(Adisseo- フランス) 150 g、抗蘚剤 (antimousse)(Struktol SB2020)5ml、無水乳脂肪 (Beuralia、フランス) 180 g、および4Lにする十分量の脱塩水を含んでいた。
【0041】
生成物の最終組成は以下の通りであった:水分:90.3%、タンパク質 (N×6.25) ケルダール法:3.4 %、加水分解によるMG:4.5 %、可溶性糖質合計:0.7 %、灰分:1.7 %、pH 2.9。
【0042】
1−3−実施例3:酵母サッカロミセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae) の使用およびメチオニンの存在下での発酵
この例は実施例1と同じ条件で行ったが、使用した酵母がサッカロミセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae) であるため予備培養が異なった。培地は、麦芽エキス(Muntons- 英国) 0.3 g、酵母エキス (Biospringer-フランス) 0.3 g、ミートペプトン (Merck 、ドイツ) 0.5 gおよびグルコース (Merck 、ドイツ) 12.5gからなる。pHを5.6 に調整した予備培養を30℃、140 tr/mlで13時間続けた。主発酵は実施例1と同じ条件で行った。最終生成物の組成は以下の通りであった:水分:94.9%、タンパク質 (N×6.25) ケルダール法:3.8 %、加水分解によるMG:<1.0 %、可溶性糖質合計:0.45%、灰分:1.3 %、pH 3。
【0043】
1−4−実施例4:酵母チゴサッカロミセス・ロウキシイ (Zygosaccharomyces rouxii) の使用およびシステインの存在下での発酵
酵母チゴサッカロミセス・ロウキシイ (Zygosaccharomyces rouxii) を、麦芽エキス(Muntons- 英国) 0.3 g、酵母エキス (Biospringer-フランス) 0.3 g、ミートペプトン (Merck 、ドイツ) 0.5 gおよびグルコース (Merck 、ドイツ) 15gからなる予備培養培地で培養した。pHを5.6 に調整した予備培養を30℃、140 tr/mlで21時間続けた。主発酵は実施例1と同じ条件で行ったが、発酵培地の組成は以下の通りであった:麦芽エキス(Muntons- 英国) 35g、酵母エキス (Biospringer-フランス) 18g、2M NaOH (Merck、ドイツ) 15.6g、システイン一水和物HCl (AMC- 英国) 413 g、抗蘚剤 (antimousse)(Struktol SB2020)5ml、および5Lにする十分量の脱塩水を含む。最終生成物の組成は以下の通りであった:水分:88.2%、タンパク質 (N×6.25) ケルダール法:7.1 %、加水分解によるMG:<1.0 %、可溶性糖質合計:0.83%、灰分:4.3 %、pH2.9 。
II−実施例5:メチオニンの存在下での発酵による酵母ヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)を用いた工業的規模で製造される嗜好性要素
図3の概略図は工業的規模に適用できる製造方法の一例を示す。第1の工程は実施例1と同じであった。予備培養物 15 mlを無菌的に採取し、麦芽エキス(Muntons- 英国) 15g、酵母エキス (Biospringer-フランス) 15g、デキストロース一水和物 (Tate & LyIe 、ベルギー) 50g、75% H3PO4 Brenntag- フランス) 12g、抗蘚剤 (antimousse)(Struktol SB2020)5ml、および5Lにするのに十分な量の脱塩水を含む5Lの発酵槽(Prelude-GUERIN SA-フランス) に含まれる滅菌培地への接種物として用いた。温度は30℃であり、通気は5L/分に設定し、攪拌は700 rpm で行った。発酵を12時間続けた。この間に60L容量の発酵槽 (Fermenteur Semi-Automatique Pierre Guerin Biolafitte Type "S" 60/100L) を備えつけた。これは、麦芽エキス 300g、酵母エキス 180g、75%リン酸 152g、メチオニン 2.4 kg 、抗蘚剤 (antimousse)Struktol 80g、および60Lにするのに十分な量の脱塩水を含む。培地を121 ℃で20分間滅菌した。30℃に冷却した後、pHを5.7 に調整し、開放圧を0.5barとし、通気は24L/分であった。空気出力冷却器を2℃の目標値で始動させた。接種は、蠕動ポンプ (4L/時間) によって5L 発酵槽から直接、接種物3L を用いて無菌的に行った。発酵5時間後、通気を6L/分に下げた。こうして発酵を合計48時間続けた。不活性化は発酵槽中で110 ℃、10分にて行った。一旦温度を40℃以下に下げ、50%ソルビン酸カリウム 360gおよび75%リン酸 542gを添加した。発酵培地を発酵槽から取り出し、室温の25kg冷蔵庫において貯蔵した。生成物の組成は実施例1と同じであった。
III −特別な処理の例
III-1-実施例6:発酵後バイオマスを除去する方法の説明
実施例1から得られた生成物を、微生物を除いて、完全に明澄で半透明の生成物を作製するように処理した。これを行うために、Pall (フランス) より供給されたろ過システム、K80 型酢酸セルロース担体を100 L 発酵槽の出口において用いた。フィルターの表面は0.2 m2であった。流速は300 L/h/m2 であった。フィルターでの保持は乾燥物質0.2 %であった。分析により、以下の組成を有する透明な生成物と判明した:水分:95.8%、タンパク質 (N×6.25) ケルダール法:3.05%、加水分解によるMG:<1.0 %、可溶性糖質合計:0.41%、灰分:0.75%。
【0044】
III-2-実施例7:液状濃縮嗜好性要素の調製
貯蔵に適したより乾燥した物質を有する食欲をそそる製品を製造した。実施例1で得られた生成物36kgを図4に示す減圧濃縮方法に使用した。濃縮装置は50 L容量で20 Lの有用容量 (連続供給) をもつAURIOL濃縮器であった。二重の外被の温度は、生成物温度を35℃とするために40℃に設定した。10℃に冷却された水のネットワークにより蒸発させた水の凝縮を確実とした。減圧は最大 (35 mbar)に設定した。生成物の供給は平均50 L/hで手動で行った。濃縮を停止し、まだ流動性の生成物を得た。4.5kg の生成物が得られ、乾燥物は27.5%であった。pHは3.3 であった。
【0045】
III-3-実施例8:乾燥した濃縮嗜好性要素の調製
実施例1で得た生成物から、蒸発水20〜40kg/時間の能力をもつAlfa-Laval type S18 の原装置上で粉末を製造した。液状嗜好性要素15kgを、ultraturax T50を用いてビール酵母 (Lorenzetti、ブラジル) 6.4kg と5分間混合した。乾燥は47分かかり、投入温度165 ℃、粉末出力温度90℃の結果、4.4kg の粉末が得られ、水分含量は6%であった。
IV- 本発明の要素例の嗜好性試験
IV-1- 実施例9:ドッグフードへの噴霧により適用した要素の例
実施例1で得られた嗜好性要素の適用を、Forberg type RVC 120 コーターにより「バッチ」ごとに液体の噴霧の形態で行った。
【0046】
イヌ用の標準クロケット 25kg を25℃でForberg 中に入れた。60℃に加熱したラード1662kgを50秒間クロケット上にスプレーにより噴霧した。1分間混合を行った。次いで、30℃に熱した嗜好性要素1108kgを60秒間スプレーにより噴霧した。混合物をさらに1分間保持した。被覆したクロケットの水気を切り、試験構造物へ移動させるために包装した。記号化をバッチ被覆の間に完了させ、袋上に表した。製品Aは実施例1からの嗜好性要素で被覆した。製品Bは対照である (フランス、SPF 社製の超高級等級の肉主体の嗜好性要素で被覆) 。対照の被覆条件は製品Aを得るのに記載した条件と同じであった。
【0047】
得られた食品の嗜好性は、専門家パネルにおいて比較試験方法によってPANELIS (フランス) 構造内で測定した。1日にわたって2食を36匹のイヌに配給した。2種の食材は各イヌに同時に与えられ、AおよびBと記された各食品は、各動物の栄養必要量を適切に満たしており、左右の機能分化による選択を避けるため1つ毎に位置を逆にした (右または左) 。動物が向かった第1の食材 (第1の選択) を各食材の最終消費と共に記録した。結果をAまたはBの消費に関する%で表示した。結果を統計学的に処理した (第1の選択に対してはカイ二乗(χ2 )検定、消費率に対してはスチューデント検定) 。正常な「有効」イヌのみを含む。表1にまとめた結果は、実施例1で得られた嗜好性要素で被覆した食品の方が対照よりもイヌに好まれることを示す。
【0048】
【表1】

( *** ) 非常に高い有意差 (p <0.01)
【0049】
IV-2- 実施例10:ドックフードおよびキャットフードに混入した嗜好性要素の例
実施例1で得られた嗜好性要素を、押出しの間に、ドックフード用基本標準品またはキャットフード用基本標準品中に基本食品の全重量に対して10%の量で「包含させることにより」使用した。押出は二重スクリュー共回転Evolum53 extruder CLEXTRAL (フランス) を用いて行った。
【0050】
フードA−CTは嗜好性要素を10%含有するキャットフードである。これは45℃に加熱した鶏脂肪により、25℃でForberg type RVC 120において6%被覆されたものである。フードA−CNは嗜好性要素を10%含むドッグフードである。これは60℃に加熱したラードにより、25℃でForberg type RVC 120において6%被覆されたものである。フードT-CTおよびT-CTはそれぞれ、嗜好性要素を含有しない乾燥フードの対照であるが、上記に具体的に記載した脂肪で被覆されている。この食品を同量、第2のシリーズにおいて利用したが、Forberg type RVC 120中30℃で、実施例9に匹敵する条件下25℃で、動物性タンパク質を主体とするSuper-Premium SPF の嗜好性要素の外部被覆を行った。この第2シリーズのバッチはフードA-CT-E、フードA-CN-E、フードT-CT-E、フードT-CN-Eと記した。
【0051】
得られた食品の嗜好性は、専門家パネルおいて比較試験方法によってPANELIS (フランス) 構造内で測定した。1日にわたって2食を36匹のイヌ、または2日にわたって40匹のネコの群に配給した。試験は実施例9に記載したと同じ条件での分析により行った。表2にまとめた結果は、実施例1で得られた嗜好性要素を含む食品の方が対照よりもイヌおよびネコに好まれることを示す。
【0052】
【表2】

( *** ) 非常に高い有意差 (p <0.01)
( ** ) 高い有意差 (p <0.05)
( * ) 有意差あり (p <0.1)
( ) 有意差なし
【0053】
IV-3- 実施例11:エビ飼料に混入した嗜好性要素の例
実施例1で得られた嗜好性要素を、以下の配合の市販の種類の飼料中に3%含有させることにより混入させた:魚粉 40 %、全粒小麦 25 %、小麦飼料 15%、大豆油かす 9.5 %、エビ粉末6%、魚油2%、大豆レシチン1%、ビタミン混合物1%、およびミネラル混合物 0.5%。Hobart press (ドイツ) 上で圧縮して得られた飼料(飼料A) を、同じ配合であるが嗜好性要素を含まない飼料(飼料B) と比較した。
【0054】
1000m2のタンク中で養魚場 (ブラジル) からのP.vanamei 種のエビについて分析を行った。エビの平均重量は8gであり、密度は20個体/m2であった。エビはタンク中正確な位置に置いた4個のカゴによって育てられた。各カゴは、2つの部分に分けられ、そこにAおよびBの給餌を行った。図5Aはタンク中のカゴの配置を図示する。各飼料は1日にわたりまかれる2つの配置中、カゴにおいて1日当たりバイオマスが4%に調整される。飼料は午前および午後早くにカゴに置かれ、ガゴはエビに摂取されていない量を測定するために午前および午後遅くに引き上げられた。これらの工程を2週間毎日繰り返した。
【0055】
各試験日毎に以下のパラメーターを計測した:
[(摂取された飼料A−摂取された飼料B) /摂取された飼料B] ×100 、結果は図5Bに示す。
【0056】
2週間の試験の終了後、嗜好性要素を含む飼料Aの消費は、嗜好性要素を含まない飼料Bよりも23%高かった。嗜好性要素を含む飼料Aは飼料Bよりも有意に好まれた (p <0.05) 。
V-実施例12:嗜好性要素の組成物
実施例1で得られた生成物と、動物性タンパク質を主体とするSuper-Premium 嗜好性要素を混合することにより嗜好性要素を調製した。混合物の性質を表3にまとめる。混合はUltraturax T50デスペンサー混合機で行った。
【0057】
【表3】

【0058】
Forberg type RVC 120中で基本クロケット上に混合物をスプレーすることによりドッグフードを作製した。イヌ用の標準クロケット 24.955kg を25℃Forberg 中に入れた。60℃に加熱したラード1654kgを50秒間クロケット上にスプレーにより噴霧した。混合は1分間行った。次いで、30℃に加熱した嗜好性要素 831gを60秒間クロケット上にスプレーにより噴霧した。混合をさらに1分間続けた。被覆されたクロケットの水気を切り、試験構造物に移動するために袋に包装した。対照は、SPF 社 (フランス) の超高級等級からの混合物として供される肉主体の嗜好性要素のみで、同じ条件で被覆した飼料である。こうして得られた飼料の嗜好性は、実施例9に記載したと同じ条件下でPANELIS(フランス) 構造内で測定した。表4にまとめた結果から、混合物から構成された嗜好性要素により、それをスプレーした飼料が対照よりも食欲をそそるものとなることが分かる。
【0059】
【表4】

( *** ) 非常に高い有意差 (p <0.01)
( ** ) 高い有意差 (p <0.05)
( * ) 有意差あり (p <0.1)
( ) 有意差なし
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の嗜好性要素の概略の製造方法の1例を示す。
【図2】本発明の嗜好性要素の実験室での製造方法の1例を示す(実施例1〜4)。
【図3】工業的規模に適用可能な、本発明の嗜好性要素の製造方法の1例を示す(実施例5)。
【図4】本発明の嗜好性要素の濃縮方法の1例を例示する(実施例7)。
【図5A】エビ用飼料に混入される本発明の要素の嗜好性試験の結果を示す(実施例11) 。A:タンク中のカゴの配置。
【図5B】エビ用飼料に混入される本発明の要素の嗜好性試験の結果を示す(実施例11) 。B:嗜好性試験の結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の酵母の培養後に得られる発酵培地を含み、該発酵培地が少なくとも以下を含むことを特徴とする、動物飼料に添加するための発酵嗜好性要素:
−水分(H):約80〜96重量%、
−タンパク質要素 (FP):約1.5〜10.0重量%、
−脂肪質(MG):約10重量%以下、
−糖質(S):約0.20〜2.0重量%、および
−灰分(C):約0.3〜8.0重量%、
ここで該タンパク質要素(FP)は動物起源の成分を含まない。
【請求項2】
前記タンパク質要素(FP)の成分が、タンパク質、ペプチド、アミノ酸およびそれらの組み合わせから選ばれることを特徴とする、請求項1記載の嗜好性要素。
【請求項3】
前記タンパク質要素(FP)が、アラニン、トレオニン、リシン、および含硫アミノ酸から選ばれ、好ましくは含硫アミノ酸から選ばれる、1または2以上のアミノ酸を少なくとも約90重量%含むことを特徴とする、請求項1または2記載の嗜好性要素。
【請求項4】
前記タンパク質要素(FP)が、前記アミノ酸を少なくとも約95重量%、好ましくは少なくとも約98重量%、さらに好ましくは少なくとも約99重量%含むことを特徴とする、請求項3記載の嗜好性要素。
【請求項5】
前記含硫アミノ酸が、メチオニンおよびシステインから選ばれ、好ましくはメチオニンであることを特徴とする、請求項3または4記載の嗜好性要素。
【請求項6】
約1.6〜3.5の範囲のpH、好ましくは約2.6〜3.2の範囲のpHを有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかの項記載の嗜好性要素。
【請求項7】
前記酵母が、ヤロウィア属 (Yarrowia sp.) 、サッカロミセス属 (Saccharomyces sp.)、カンジダ属 (Candida sp.)、クルイベロミセス属 (Kluyveromyces sp.)、ピチア属 (Pichia sp.) 、デバルヨミセス属 (Debaryomyces sp.) 、チゴサッカロミセス属 (Zygosaccharomyces sp.)から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの項記載の嗜好性要素。
【請求項8】
前記酵母が、ヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)、サッカロミセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae) 、カンジダ・ベルサリティス (Candida versalitis) 、クルイベロミセス・ラクティス (Kluyveromyces lactis) 、クルイベロミセス・フラギリス (Kluyveromyces fragilis) 、ピチア・パストリス (Pichia pastoris)、デバルヨミセス・ハルセニイ (Debaryomyces harsenii)、チゴサッカロミセス・ロウキシイ (Zygosaccharomyces rouxii) から選択されることを特徴とする、請求項7記載の嗜好性要素。
【請求項9】
前記酵母がヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)であることを特徴とする、請求項8記載の嗜好性要素。
【請求項10】
すぐに使用できる液体の形態であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかの項記載の嗜好性要素。
【請求項11】
濃縮した発酵嗜好性要素の調製における中間製品としての、請求項1〜10のいずれかの項記載の嗜好性要素。
【請求項12】
動物飼料中に適用および/または混入されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかの項記載の嗜好性要素。
【請求項13】
動物および/または植物起源の嗜好性要素などの1または2以上のその他の嗜好性要素と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項12記載の嗜好性要素。
【請求項14】
約1〜10重量%、好ましくは約2〜4重量%の割合で使用されることを特徴とする、請求項12または13記載の嗜好性要素。
【請求項15】

前記動物飼料がペット用であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかの項記載の嗜好性要素。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかの項記載の少なくとも1種の嗜好性要素の濃縮および/または乾燥により得られる濃縮された発酵嗜好性要素。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかの項記載の少なくとも1種の嗜好性要素を含むことを特徴とする、動物飼料に添加される嗜好性要素の組成物。
【請求項18】
少なくとも以下の工程を含む、請求項1〜16のいずれかの項記載の嗜好性要素の製造方法:
a)標準増殖培地において約22℃〜32℃の範囲の温度で約6〜25時間、少なくとも1種の酵母を予備培養する工程、
b)少なくとも約1×105 細胞/mlの割合の該予備培養物を用いて、1種または2種以上のアミノ酸を含有する発酵培地に接種する工程、
c)接種された発酵培地を約20℃〜32℃の範囲の温度で約12〜72時間培養する工程、
d)発酵を停止する工程、および
e)嗜好性要素として有用な最終発酵培地を回収する工程。
【請求項19】
工程b)で用いる発酵培地が、約2〜10重量%、好ましくは約3〜5重量%の1種または2種以上のアミノ酸を含有することを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
アミノ酸がアラニン、トレオニン、リシンおよび含硫アミノ酸から選ばれ、好ましくは含硫アミノ酸から選ばれることを特徴とする、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
工程d)を熱による酵母の不活性化によって行うことを特徴とする、請求項18〜20のいずれかの項記載の方法。
【請求項22】
工程e)の前に、前記発酵培地からバイオマスを除去することを特徴とする、請求項18〜21のいずれかの項記載の方法。
【請求項23】
工程d)からe)を同時に、好ましくは無菌的ろ過により行うことを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜16のいずれかの項記載の少なくとも1種の嗜好性要素、または請求項17記載の少なくとも1種の組成物を動物飼料に添加することを含む、動物飼料の嗜好性を改善する方法。
【請求項25】
請求項1〜16のいずれかの項記載の嗜好性要素を製造するための少なくとも1種の酵母の使用。
【請求項26】
前記酵母がヤロウィア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica)である請求項25記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−504147(P2009−504147A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525511(P2008−525511)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064474
【国際公開番号】WO2007/017356
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508040186)
【氏名又は名称原語表記】SPECIALITES PET FOOD
【Fターム(参考)】