説明

動物情報収集システム

【課題】消費電力を抑えつつ動物の捜索を補助する動物情報収集システムを提供する。
【解決手段】子機2は、電池21と通信部22と活動量計測部23と活動量積算部24と位置取得部25と制御部26とを備えることを特徴としている。電池21は子機2の電源であり、通信部22は親機1との間で無線通信を行う。活動量計測部23は、自機が取り付けられている動物の活動量を計測する。活動量積算部24は、活動量計測部23により計測された活動量を積算する。位置取得部25は自機の位置情報を取得する。制御部26は通信部22から位置情報を送信させる。そして、制御部26は、活動量積算部24により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、位置取得部25に位置情報を取得させ、通信部22から、取得された位置情報を送信させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、動物の情報を収集する動物情報収集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば牧場のように、多くの動物を管理する場で用いられ、収集した情報によって家畜の健康状態等を把握する目的で、管理対象の動物の、歩数や体温といった生態情報を収集する装置やシステムが存在する。特に、家畜など、多数の動物を管理する場合には、このようなシステムを用いることで、人間の力のみで動物の状態を把握するよりも管理者の負担が軽くなる。また、生態情報以外にも、動物の位置情報を収集することで、管理者は、動物が見える場にいなくても、動物の位置や行動範囲を把握することができる。この場合、何らかの理由で動物を捕獲したい、あるいは監視下に置きたいときにも、動物の捜索が比較的容易となる。このような、動物の位置情報を含む動物の情報を収集する動物情報収集システムもすでに発明されている。例えば、特開2008−272163号公報(特許文献1)に示される生態情報モニターシステムは、人または動物に装着される生態情報送信端末が、自端末の位置に関する情報を生態情報計測装置に送信するものである。この生態情報送信端末は、人または動物の生態情報も生態情報計測装置に送信する。そして、生態情報計測装置は、受信した位置に関する情報を情報処理装置へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−272163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された従来の生態情報モニターシステムは、情報処理装置が位置情報を取得できる。しかし、位置情報を取得し送信する際に電力を多く消費するため、常時位置情報を取得・送信することは現実的でなく、位置情報を含む生態情報の送信は定期的に行われることになる。この送信周期が長すぎると、動物が例えば発情などといった状態を呈しているなどで、捕獲したい、あるいは目視で観測したい場合には、追跡が困難になることがある。送信周期を短くすればこの問題は解決可能であるが、その場合は、端末の電池寿命を大幅に減らしてしまうという問題が発生する。
【0005】
本願発明は、このような従来の課題を解決するものであり、消費電力を抑えつつ動物の捜索を補助する動物情報収集システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明の動物情報収集システムは、親機と、動物に取り付けられる子機とを有し、親機と子機との間で無線通信が行われるものである。そして、子機は、電池と通信部と活動量計測部と活動量積算部と位置取得部と制御部とを備えることを特徴としている。電池は子機の電源であり、通信部は親機との間で無線通信を行う。活動量計測部は、自機が取り付けられている動物の活動量を計測する。活動量積算部は、活動量計測部により計測された活動量を積算する。位置取得部は自機の位置情報を取得する。制御部は通信部から位置情報を送信させる。そして、制御部は、活動量積算部により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、位置取得部に位置情報を取得させ、通信部から、取得された位置情報を送信させる。
【0007】
この子機は、電池の残量が少なくなると移動認識活動量値を大きくする設定部を備えてもよい。
【0008】
この動物情報収集システムは、子機を複数有してもよい。このとき、親機は、子機の数が増えると、それらの子機に対して、子機の数情報を有する子機増加信号を送信する動物管理部を備える。そして、子機は、親機から子機増加信号を受け取ると、その子機増加信号中の子機の数が多いほど移動認識活動量値を大きくする設定部を備える。
【0009】
子機は、通信部によって送信された位置情報である前回送信位置情報を記憶する記憶部を備えてもよい。このとき、制御部は、活動量積算部により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、位置取得部に位置情報を取得させる。そして、位置情報と前回送信位置情報とから移動距離を計算する。この移動距離があらかじめ設定された移動認識距離未満であれば、制御部は、通信部に取得された位置情報を送信させない。
【0010】
また、この動物情報収集システムは、子機を複数有し、この子機は、自機に固有の子機識別情報を持っていてもよい。このとき、子機は、親機から自機の子機識別情報に特定された追跡モード設定信号を受け取ると、自機が取り付けられている動物の捜索を補助する追跡モードの設定を行う追跡モード設定部を備える。親機は動物管理部と子機情報記憶部とを備える。動物管理部は、捜索対象の動物に取り付けられている子機に対し、その子機の子機識別情報に特定された追跡モード設定信号を送信する。子機情報記憶部は、子機から受信した情報を記憶する。そして、動物管理部は、子機情報記憶部に記憶された情報のうち最新の位置情報から、追跡モード設定信号を送信した、追跡モード設定中の子機に最も近い子機である周辺子機を特定する。動物管理部はさらに、追跡モード設定中の子機と周辺子機との位置関係に基づいて移動認識距離を計算して、追跡モード設定中の子機に対し、移動認識距離変更信号を送信する。
【0011】
動物管理部は、追跡モード設定中の子機と周辺子機との位置関係に基づいて計算された移動認識距離があらかじめ定められた有視界距離以上であれば、計算された移動認識距離ではなく有視界距離を追跡モード設定中の子機の移動認識距離として、移動認識距離変更信号を送信してもよい。
【0012】
さらに、この動物情報収集システムは、親機との間で無線通信を行う携帯端末を有してもよい。この携帯端末は、親機との間で無線通信を行う端末通信部と、自端末の位置情報を取得する端末位置取得部と、親機から受信した情報に応じて外部報知を行う報知部と、を備える。端末通信部は、自端末の位置情報を親機に送信する。このとき親機は、子機の位置情報と携帯端末の位置情報とから、子機と携帯端末との相対位置情報を導出し、相対位置情報を携帯端末に送信する相対情報処理部を備える。
【0013】
また、この動物情報収集システムは、親機との間で無線通信を行う携帯端末を有し、子機が、親機から距離減少信号を受け取ると、移動認識距離を小さくする設定部を備えるものであってもよい。このとき、携帯端末は、端末通信部と端末位置取得部と報知部とを備える。端末通信部は親機との間で無線通信を行う。端末位置取得部は自端末の位置情報を取得する。報知部は親機から受信した情報に応じて外部報知を行う。この端末通信部は、自端末の位置情報を親機に送信する。親機は相対情報処理部と動物管理部とを備える。相対情報処理部は、子機の位置情報と携帯端末の位置情報とから、子機と携帯端末との相対位置情報として少なくとも子機と携帯端末との距離を導出する。そして、相対情報処理部は、相対位置情報を携帯端末に送信する。動物管理部は、相対位置情報中の子機と携帯端末との距離が小さくなると、子機に距離減少信号を送信する。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の動物情報収集システムでは、子機が、活動量積算値が一定値に達するごとに位置情報を取得・送信するので、子機の消費電力を抑えつつ動物の捜索を補助できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の実施形態1にかかる動物情報収集システムの構成図
【図2】本願発明の実施形態1にかかる動物情報収集システムのブロック図
【図3】本願発明の実施形態1の動物管理部11における移動認識距離判断の一例を示す表
【図4】本願発明の実施形態1の親機1における子機情報記憶部12の記憶テーブルの一例を示す表
【図5】本願発明の実施形態1の設定部27における移動認識活動量値判断の一例を示す表
【図6】本願発明の実施形態1の子機2における記憶部28の記憶テーブルの一例を示す表
【図7】本願発明の実施形態1で追跡モードが解除されているときの子機2のフローチャート
【図8】本願発明の実施形態1で追跡モードが設定されているときの子機2のフローチャート
【図9】本願発明の実施形態1で携帯端末3がない場合のブロック図
【図10】本願発明の実施形態1で移動認識距離を用いない場合の追跡モード設定中の子機2のフローチャート
【図11】本願発明の実施形態1の動物情報収集システムで、携帯端末3、移動認識距離の決定・変更、移動認識活動量値の変更がない場合のブロック図
【図12】本願発明の実施形態1の動物情報収集システムで、携帯端末3、移動認識距離の決定・変更、移動認識活動量の変更、追跡モードの設定、がない場合のブロック図
【図13】本願発明の実施形態1の動物情報収集システムで、携帯端末3、移動認識距離の決定・変更、移動認識活動量値の変更がなく、送信情報が位置情報の場合のブロック図
【図14】本願発明の実施形態2の設定部27における移動認識活動量値判断の一例を示す表
【図15】本願発明の実施形態2の子機2における記憶部28の記憶テーブルの一例を示す表
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。ただし、以下の実施形態は本願発明の実施例を示したに過ぎず、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
<実施形態1>
本願発明の第1の実施形態を図1、図2に示す。まず、本実施形態の概要を述べると、親機1と、複数の子機2と携帯端末3とを有してなり、牧場等で用いられる。なお、家畜に対してではなく、特定地域に飛来する野鳥等の野生動物を対象としてもよい。
【0018】
この動物情報収集システムは、親機1と動物に取り付けられる子機2とを有し、親機1と子機2との間で無線通信が行われるものである。そして、子機2は、電池21と通信部22と活動量計測部23と活動量積算部24と位置取得部25と制御部26とを備えることを特徴としている。電池21は子機2の電源であり、通信部22は親機1との間で無線通信を行う。活動量計測部23は、自機が取り付けられている動物の活動量を計測する。活動量積算部24は、活動量計測部23により計測された活動量を積算する。位置取得部25は自機の位置情報を取得する。制御部26は通信部22から位置情報を送信させる。そして、制御部26は、活動量積算部24により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、位置取得部25に位置情報を取得させ、通信部22から、取得された位置情報を送信させる。
【0019】
この子機2は、電池21の残量が少なくなると移動認識活動量値を大きくする設定部27を備える。
【0020】
子機2は、通信部22によって送信された位置情報である前回送信位置情報を記憶する記憶部28を備える。このとき、制御部26は、活動量積算部24により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、位置取得部25に位置情報を取得させる。そして、位置情報と前回送信位置情報とから移動距離を計算する。この移動距離があらかじめ設定された移動認識距離未満であれば、制御部26は、通信部22に取得された位置情報を送信させない。
【0021】
また、この動物情報収集システムは、子機2を複数有し、この子機2は、自機に固有の子機識別情報を持つ。このとき、子機2は、親機1から自機の子機識別情報に特定された追跡モード設定信号を受け取ると、自機が取り付けられている動物の捜索を補助する追跡モードの設定を行う追跡モード設定部29を備える。親機1は動物管理部11と子機情報記憶部12とを備える。動物管理部11は、捜索対象の動物に取り付けられている子機2に対し、その子機2の子機識別情報に特定された追跡モード設定信号を送信する。子機情報記憶部12は、子機2から受信した情報を記憶する。そして、動物管理部11は、子機情報記憶部12に記憶された情報のうち最新の位置情報から、追跡モード設定信号を送信した、追跡モード設定中の子機2に最も近い子機2である周辺子機を特定する。動物管理部11はさらに、追跡モード設定中の子機2と周辺子機との位置関係に基づいて移動認識距離を計算して、追跡モード設定中の子機2に対し、移動認識距離変更信号を送信する。
【0022】
動物管理部11は、追跡モード設定中の子機2と周辺子機との位置関係に基づいて計算された移動認識距離があらかじめ定められた有視界距離以上であれば、計算された移動認識距離ではなく有視界距離を追跡モード設定中の子機2の移動認識距離として、移動認識距離変更信号を送信する。
【0023】
また、この動物情報収集システムは、親機1との間で無線通信を行う携帯端末3を有し、子機2は、親機1から距離減少信号を受け取ると、移動認識距離を小さくする設定部27を備えるものである。このとき、携帯端末3は、端末通信部31と端末位置取得部32と報知部33とを備える。端末通信部31は親機1との間で無線通信を行う。端末位置取得部32は自端末の位置情報を取得する。報知部33は親機1から受信した情報に応じて外部報知を行う。この端末通信部31は、自端末の位置情報を親機1に送信する。親機1は相対情報処理部13と動物管理部11とを備える。相対情報処理部13は、子機2の位置情報と携帯端末3の位置情報とから、子機2と携帯端末3との相対位置情報として少なくとも子機2と携帯端末3との距離を導出する。そして、相対情報処理部13は、相対位置情報を携帯端末3に送信する。動物管理部11は、相対位置情報中の子機2と携帯端末3との距離が小さくなると、子機2に距離減少信号を送信する。
【0024】
ここから、本実施形態の動物情報収集システムを具体的に説明する。
親機1は、子機2から動物の生態情報および位置情報を取得し、取得したデータの蓄積と解析を行う。また、動物の管理者が特定の動物を捜索する際、後述のようにしてその捜索を補助する。
【0025】
動物管理部11は、子機2から取得した、動物の生態情報および位置情報を解析する。動物管理部11は、動物が特定の状態にあることを判断するために設定された条件に、子機2から取得した生態情報が当てはまれば、その子機2が取り付けられた動物を捜索対象とみなす。特定の状態とは、その状態の動物の行動や様子について、管理者が管理したい、または管理すべき状態のことであり、動物が発情している状態や動物が体調不良である状態などが考えられる。上述した、動物が特定の状態にあることを判断するために設定された条件とは、製品出荷時に設定されている、または使用者により設定されるものであって、例えば発情の場合の条件としては、高体温の持続などが考えられる。また、体調の不良という特定の状態の条件としては、例えば活動量の増分が少ないことが所定期間続く、などが考えられる。そして、動物管理部11は、捜索対象とみなした動物に取り付けられている子機2に対して、その子機2の子機識別情報に特定された追跡モード設定信号を送信する。例えば、生態情報として体温を取得しているのであれば、高体温が続くと捜索対象とみなして追跡モード設定信号を送信する。また、動物管理部11は入力部を備え、手入力により、任意のタイミングで追跡モード設定信号を送信するようにしてもよい。
【0026】
そして、動物管理部11は、子機情報記憶部12に記憶された情報のうち最新の位置情報から、追跡モード設定信号を送信した、追跡モード設定中の子機2に最も近い子機2である周辺子機を特定する。動物管理部11は、追跡モード設定中の子機2と周辺子機との距離である近接距離を計算し、子機情報記憶部12に記憶されている位置情報の履歴から周辺子機の送信周期ごとの平均移動距離を計算する。そして、近接距離と平均移動距離との差を計算する。動物管理部11は、この差を追跡モード設定中の子機2の移動認識距離として、追跡モード設定中の子機2に対し、移動認識距離変更信号を送信する。ただし、動物管理部11は、近接距離と平均移動距離との差があらかじめ定められた有視界距離以上であれば、この差ではなく有視界距離を、追跡モード設定中の子機2の移動認識距離として、移動認識距離変更信号を送信する。
【0027】
また、上記のような方法ではなく、動物管理部11が次に示す方法で子機2の移動認識距離を変更させるようにしてもよい。すなわち、動物管理部11は、相対情報処理部13により導出された相対位置情報中の子機2と携帯端末3との距離が小さくなると、子機2に距離減少信号を送信する。このとき、動物管理部11は、あらかじめ定められた探索角度θを引数として、子機2と携帯端末3との距離にtanθをかけた値を移動認識距離とする。例えば、探索角度が5°と定められているとする。5°はラジアンで表すと約0.087である。子機2と携帯端末3との距離が10kmであるならば、移動認識距離は、10000m×tan0.087で約870mとなる。また、子機2と携帯端末3との距離が100mであるならば、移動認識距離は、10m×tan0.087で約8.7mとなる。この探索角度θは、製品出荷に設定されているものでもよいし、使用者により設定されるようにしてもよい。また、正接関数ではなく、子機2と携帯端末3との距離にsinθをかけた値を移動認識距離としてもよい。そして動物管理部11は、距離減少信号中にこの移動認識距離を含めて送信する。なお、移動認識距離は正接関数や正弦関数のような三角関数を用いなくとも、他の関数などを用いて求めてもよい。また、計算によって求めなくとも、図3に例を示すように、距離に対応する移動認識距離を段階的に定めておいてもよい。そして、移動認識距離が変更される場合のみ距離減少信号を送信してもよい。図3における移動認識距離は3段階で変化するが、3段階に限るものではない。動物管理部11は子機2と携帯端末3との距離を距離減少信号中に含めて送信し、子機2の設定部27で移動認識距離を求めてもよい。なお、移動認識距離変更信号と距離減少信号とを併用し、状況に応じてどちらかを優先させるようにして子機2の移動認識距離を変更させても構わない。
【0028】
動物管理部11は、子機識別情報が特定された追跡モード解除依頼信号を受けると、その追跡モード解除依頼信号が解除の対象としている、追跡モード設定中の子機2の子機識別情報に特定された追跡モード解除信号を送信する。また、手入力により、任意のタイミングで追跡モード解除信号を送信するようにしてもよい。
【0029】
子機情報記憶部12は、子機2から受信した情報を記憶する。また移動認識距離変更信号を用いる場合は有視界距離を記憶する。有視界距離は、あらかじめ定められていてもよいし、子機情報記憶部12が入力手段を備え、入力手段から入力されるようにしてもよい。図4に有視界距離を記憶する場合の子機情報記憶部12の記憶テーブルの例を示す。移動認識距離変更信号を用いない構成であるときは、記憶テーブル例は図4の有視界距離がないものとなる。
【0030】
相対情報処理部13は、子機2の位置情報と携帯端末3の位置情報とから、子機2と携帯端末3との相対位置情報として、少なくとも子機2と携帯端末3との距離と、携帯端末3からの子機2の方向と、を導出する。相対位置情報とは、両者の相対位置関係を表す情報であり、子機2と携帯端末3との距離、および携帯端末3から見た子機2の方向以外に、例えば、子機2と携帯端末3のそれぞれの座標が含まれていてもよい。そして、相対情報処理部13は、相対位置情報を携帯端末3に送信する。携帯端末3への相対位置情報の送信タイミングは、相対位置情報の導出を行ったタイミングでもよいし、携帯端末3から要求があったときでもよい。なお、携帯端末3での報知情報が距離だけでよいならば、相対位置情報として距離だけを求めるようにしてもよい。
【0031】
子機2は、動物に取り付けられて用いられる、小型の機器であり、自機に固有の子機識別情報を持つ。子機2は、自機が取り付けられている動物の、例えば歩数や体温などといった生態情報と位置情報を取得し、一定期間記憶部28に蓄積して、送信周期ごとに親機に送信する。
【0032】
電池21は、子機2の電源として用いられる、使い捨ての乾電池である。ただし、蓄電池のように、充電によって繰り返し用いられる電池を用いても構わない。
【0033】
通信部22は、親機1との間で無線通信を行う。なお、携帯電話会社などとの契約により、携帯電話網などの通信網を使用するものでもよい。通信部22は、通信時以外は待機状態となっている。
【0034】
生態情報取得部23’は、活動量計測部23や体温計や咀嚼回数計測装置などを有し、自機が取り付けられている動物の生態情報を取得して記憶部28に記憶させる。なお、生態情報取得部23’は、活動量計測部23のみを有するものでもよい。
【0035】
活動量計測部23は、活動量計などを有し、自機が取り付けられている動物の活動量を計測する。活動量とは、対象の人または動物の動きから計算される、人または動物が運動した量である。活動量計は、自機が取り付けられた人あるいは動物の動きを検知する。なお、歩数計で計測した動物の歩数から求めた、人または動物が運動した量を、活動量としてもよいこととする。
【0036】
活動量積算部24は、活動量計測部23により計測された活動量を積算し、その積算値を活動量積算値として記憶部28に記憶させる。
【0037】
位置取得部25は、GPS(Global Positioning System)などを備え、自機の位置情報を取得する。位置取得部25は、制御部26から位置情報取得命令を受けて位置情報を取得するとき以外は待機状態となっている。
【0038】
制御部26は、送信周期ごとに通信部22から生態情報および位置情報を送信させる。このとき、送信させた位置情報を新たな前回送信位置情報として、記憶部28に記憶されている前回送信位置情報を変更する。制御部26は、追跡モード設定部29により追跡モードが設定されている場合には、送信周期にかかわりなく、活動量積算部24により積算された活動量積算値があらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、位置取得部25に位置情報を取得させる。このとき、活動量積算値が移動認識活動量値に達して位置取得部25に位置情報を取得させるたびに、活動量積算値をリセットする。なお、移動認識活動量値を複数設定し、最大の移動認識活動量値に達して位置取得部25に位置情報を取得させると活動量積算値をリセットするようにしてもよい。つまり、基本の移動認識活動量値を20とすると、移動認識活動量値として例えば20、40、60、80、100を記憶部28に記憶させておく。そして、活動量積算値が20、40、60、80、100に達すると制御部26が位置取得部25に位置情報を取得させ、制御部26は、活動量積算値が100に達して位置取得部25に位置情報を取得させると活動量積算値をリセットするようにしてもよい。位置取得部25に位置情報を取得させると、制御部26は、位置情報と前回送信位置情報とから移動距離を計算する。この移動距離があらかじめ設定された移動認識距離以上であれば、制御部26は、送信周期にかかわりなく、取得された位置情報を通信部22から送信させる。そして、送信させた位置情報を新たな前回送信位置情報として、記憶部28に記憶されている前回送信位置情報を変更する。移動距離があらかじめ設定された移動認識距離未満であれば、制御部26は、通信部22に送信命令を出さず、取得された位置情報を通信部22から送信させない。
【0039】
設定部27は、移動認識活動量値および移動認識距離を設定する。設定部27は、電池21の残量が少なくなると移動認識活動量値を大きくする。図5にこの場合の判断の例を示す。なお、移動認識活動量値の変化は3段階に限るものでなない。また、段階で分けるのではなく、関数を用いて移動認識活動量値を設定するようにしてもよい。設定部27は、移動認識距離変更信号を受ける場合は、親機1から移動認識距離変更信号を受けると、この内容に応じて移動認識距離を設定する。設定部27は、距離減少信号を受ける場合は、親機1から距離減少信号を受け取ると、移動認識距離をより小さな値に変更する。
【0040】
記憶部28は、通信部22によって送信された位置情報である前回送信位置情報、生態情報取得部23’により取得された生態情報、活動量積算部24により積算された活動量積算値を記憶する。また、移動認識活動量値、移動認識距離、親機に定期送信を行う送信周期を記憶する。図6に記憶部28の記憶テーブルの一例を示す。図6の移動認識距離において、信号値という項目があるが、ここには、親機1からの移動認識距離変更信号または距離減少信号に基づいて設定された移動認識距離が記憶される。
【0041】
追跡モード設定部29は、親機1から自機の子機識別情報に特定された追跡モード設定信号を受け取ると、自機が取り付けられている動物の捜索を補助する追跡モードの設定を行う。親機1から自機の子機識別情報に特定された追跡モード解除信号を受け取ると、自機が取り付けられている動物の捜索を補助する追跡モードの解除を行う。
【0042】
携帯端末3は、動物の捜索者が携帯するものであり、親機1との間で無線通信を行い、自機と追跡モード設定中の子機2との距離および自機を基準としたときの子機2の方向に応じて外部報知を行う。携帯端末3は入力部を備え、手入力により、任意のタイミングで、追跡モードを解除する子機2の子機識別情報に特定された追跡モード解除依頼信号を親機1に送信するようにしてもよい。
【0043】
端末通信部31は、親機1との間で無線通信を行う。端末通信部31は、端末送信周期で、端末位置取得部32により取得された位置情報を親機1に送信する。
【0044】
端末位置取得部32は、GPSなどを備え、端末送信周期で、自端末の位置情報を取得する。
【0045】
報知部33は、表示部を備え、親機1から受信した相対位置情報中の子機2と携帯端末3との距離および携帯端末3から見た子機2の方向を表示することによって外部報知を行う。距離と方向を数値や文字で表してもよいし、図等を用いて表してもよい。また、親機1から受信した相対位置情報中の子機2と携帯端末3との距離については、スピーカーを備え、距離に応じた長さの音声を発することにより報知してもよい。このときは、子機2と携帯端末3との距離が大きいと長い音声を発し、距離が短くなると発する音声の長さを短くするなどが考えられる。光による報知などを行ってもよい。さらに、相対位置情報中に、例えば子機2と携帯端末3とのそれぞれの座標など、両者の距離や方向以外の情報が含まれる場合には、距離や方向に応じた報知に加えて、これらの座標に基づく地図表示などを表示部に行ってもよい。
【0046】
ここから、上述のように構成された動物情報収集システムの動作について説明する。
まず、図7に示すフローをもとに、追跡モードが解除されている場合の子機2の動作を説明する。
【0047】
制御部26は、新たな送信周期になったときに送信タイミングが来たと判断し(ステップS1でYes)、位置取得部25に位置情報を取得させる(ステップS2)。そして、その位置情報と記憶部28に記憶されている生態情報を通信部22から送信させる(ステップS3)。記憶部28に記憶されている活動量積算値も、生態情報として送信する。なお、動物の管理者が把握したい情報が位置情報だけであれば、活動量以外の生態情報の取得、および活動量を含む生態情報の送信を行わない構成でもよい。通信部22が位置情報を送信すると、制御部26は、この位置情報を新たな前回送信位置情報として、記憶部28に記憶されている前回送信位置情報を変更する。
【0048】
次に、追跡モードが設定されている場合の子機2の動作について、図8に示すフローをもとに説明する。
追跡モードは、子機2が親機1から自機の子機識別情報に特定された追跡モード設定信号を受けると、追跡モード設定部29により設定される。
活動量は、活動量計測部23により随時計測されている(ステップS101)。この活動量は活動量積算部24で積算され、その積算値は活動量積算値として記憶部28に記憶される。活動量積算値が移動認識活動量に達すると(ステップS102でYes)、送信周期にかかわりなく、制御部26は位置取得部25に位置情報を取得させる(ステップS103)。活動量積算値が移動認識活動量未満であれば(ステップS102でNo)、ステップS101に戻る。そして、制御部26は、この位置情報と前回送信位置情報とから移動距離を計算する。移動距離が移動認識距離以上であれば(ステップS104でYes)、制御部26は、送信周期にかかわりなく、取得された位置情報を通信部22から送信させる(ステップS105)。このとき、生態情報を一緒に送信させても構わない。また、追跡モード解除時と同じように、送信タイミングにも送信を行ってもよい。送信タイミングにも送信を行う場合、送信タイミングでは生態情報を一緒に送信し、送信タイミング以外では位置情報のみ送信してもよい。そして、送信がなされると制御部26は前回送信位置情報を変更する。移動距離があらかじめ設定された移動認識距離未満であれば(ステップS104でNo)、制御部26は、取得された位置情報を通信部22から送信させず、ステップS101に戻る。
【0049】
ここから、例をあげて、本実施形態の動物情報収集システムを説明する。
この動物情報収集システムは牧場で利用されていて、親機1は牛舎にあり、複数ある子機2はそれぞれ牛に取り付けられているとする。そして、子機2は、牛の生態情報として体温と活動量を取得しているとする。子機2は、例えば30分の送信周期ごとに親機へ生態情報と位置情報を送信している。親機1は、各子機2から送信される情報を蓄積し、解析する。
【0050】
そして、親機1は、例えば高体温が続くとその牛を捜索対象とみなし、その牛に取り付けられている子機2に対して追跡モード設定信号を送信する。または、管理者が親機1を操作し、捜索したい牛に取り付けられている子機2に対して追跡モード設定信号を送信させる。
【0051】
牛の捜索を行う捜索者は、携帯端末3を携帯して牧場へ捜索に向かう。携帯端末3は、自端末の位置情報を例えば1分ごとに親機1に送信する。
【0052】
追跡モード設定信号を受け、追跡モードを設定した捜索対象の子機2は、まず、活動量積算値が移動認識活動量以上であれば位置情報を取得する。そして、移動距離を算出し、移動距離が移動認識距離以上であれば、送信タイミングでなくても位置情報を送信する。子機2は、電池残量が少なくなれば移動認識活動量値をより大きな値に変更する。
【0053】
移動認識距離変更信号を用いる構成の場合は、ここで、親機1は、それぞれの子機2から取得し蓄積している情報から、捜索対象の子機2と最も近い位置にいる子機2を周辺子機として特定し、周辺子機の平均移動距離と、捜索対象の子機2と周辺子機との距離とから、捜索者が捜索対象の牛と他の牛を識別できる最大の移動認識距離を推定して決定し、捜索対象の子機2に移動認識距離変更信号を送信する。
【0054】
そして、移動認識距離変更信号を用いる場合、移動認識距離変更信号を受けた子機2は、移動認識距離変更信号に従って移動認識距離を変更する。
【0055】
親機1は、捜索対象の子機2から取得した位置情報と携帯端末3から取得した位置情報から、両者の距離と携帯端末3から見た子機2の方角とを導出し、この距離と方角とを相対位置情報として携帯端末3に送信する。また、距離減少信号を用いる構成の場合は、この距離が小さくなると、親機1は、捜索対象の子機2に距離減少信号を送信する。
【0056】
相対位置情報を受信した携帯端末3は、例えば距離と方角を文字にして表示することで外部報知を行う。
【0057】
距離減少信号を用いる場合、距離減少信号を受けた子機2は、距離減少信号に従って移動認識距離を変更する。
【0058】
捜索者は、捜索対象の牛を発見あるいは捕獲すると、携帯端末3を操作して捜索対象の子機2の追跡モード解除依頼信号を親機1に送る。
【0059】
携帯端末3からの追跡モード解除依頼信号を受信した親機1は、捜索対象の子機2に追跡モード解除信号を送る。
【0060】
追跡モード解除信号を受けた子機2は、追跡モードを解除する。
【0061】
このように、本実施形態の動物情報収集システムは、子機2が、活動量積算値が移動認識活動量値に達するごとに位置情報を取得し送信する。つまり、決められた送信周期ごとにではなく、活動量が一定値に達するごとに位置情報を送信する。このため、位置情報の取得や通信といった、電力を消費する動作を必要最低限にとどめることができる。また、動作時以外にはこれらを待機状態にさせれば、より低消費電力での運用が可能となる。これにより、送信周期を短くしすぎて子機2の消費電力を大きくしてしまうことなく、移動認識活動量値によって推定される一定の範囲内に子機2が位置することを把握することが可能となる。言い換えると、子機2の消費電力を抑えながら、動物の位置をリアルタイムに範囲として把握することができる。
【0062】
また、本実施形態の動物情報収集システムは、子機2が、電池21の残量が少なくなると移動認識活動量値を大きくする。そのため、子機2の電池寿命が近づいたときに、電池寿命を延ばすことができ、捜索中に子機2の電池がなくなってしまう危険性を小さくすることができる。
【0063】
本実施形態の動物情報収集システムは、子機2が、移動距離を計算し、この移動距離が移動認識距離以上であれば位置情報を送信し、移動距離移動認識距離未満であれば位置情報を送信しない。このように、一定距離以上の移動を確認した後に位置情報を送信するので、例えば動物が同じ場所で足踏みしている場合の通信を省くことができ、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0064】
本実施形態の動物情報収集システムでは、追跡モード設定中の子機2の周辺にある周辺子機を特定する。そして、追跡モード設定中の子機2と周辺子機の位置関係、および推定した移動速度(送信周期ごとの平均移動距離)から、追跡モード設定中の子機2の移動認識距離を決定する。例えば、捜索対象の動物の周囲に他の動物がいないならば、詳細な位置情報がなくても捜索対象の動物と他の動物を間違える可能性は低くなる。このような場合に移動認識距離を大きくすれば、子機2の無線通信回数を減らすことができ、子機2の電力消費を抑えることができる。この子機2は、動物が多く、密集しているようなところでは頻繁に位置情報を送信して位置情報を詳細にするが、動物が少ないところでは位置情報の送信頻度を下げて粗い位置情報を提供する。これにより、複数の動物がいる場合に捜索対象の動物がどの個体かの判別を補助しつつ、全体として子機2の消費電力を抑えることができる。また、本実施形態では、他の動物の推定最大移動範囲と重ならない最大の範囲、に対応する距離を、追跡モード設定中の子機2の移動認識距離とする。これにより、捜索対象の動物と他の動物との区別がつくと想定される範囲で最大の移動認識距離を設定することができる。
【0065】
さらに、本実施形態の動物情報収集システムは、親機1が、近接距離と平均移動距離との差があらかじめ定められた有視界距離以上であれば、この差ではなく有視界距離を、追跡モード設定中の子機2の移動認識距離とする。このため、捜索対象の動物と他の動物との距離が遠く離れている場合でも、子機2から送信された位置情報の位置に捜索者が行けば、そこから視界に収まる範囲に捜索対象の動物がいる可能性が高くなり、動物の捜索がしやすくなる。
【0066】
本実施形態の動物情報収集システムは、捜索対象の子機2と自機との距離および自機を基準としたときの子機2の方向に応じて外部報知を行う携帯端末3を有する。捜索者は、この携帯端末3を携帯することにより、親機1から離れても捜索対象の子機2との相対関係を把握することができる。また、本実施形態の動物情報収集システムは、捜索対象の子機2と携帯端末3との距離が近づくと、その捜索対象の子機2の移動認識距離を小さくする。携帯端末3と捜索対象の子機2との距離が近づくと位置情報を詳細にすることができるので、携帯端末3と捜索対象の子機2との距離が離れているときは位置情報を粗くしても捜索への影響は少なくなる。これにより、携帯端末3と捜索対象の子機2との距離が離れているときは位置情報の送信頻度を下げて粗い位置情報を提供するようにすれば、全体として子機2の消費電力を抑えることができる。また、本実施形態では、携帯端末3と捜索対象の子機2との距離から子機2の移動認識距離を求める際に、探索角度θを設定し、三角関数の正接関数や正弦関数を用いている。このため、携帯端末3から見て、子機2が最後に位置情報の送信を行ったときに子機2があった方向を基準として、正接関数ではほぼプラスマイナスθ(正確にはプラスマイナスarcsin(tanθ))、正弦関数ではプラスマイナスθの角度範囲内に、その子機2が取り付けられた動物がいるということになる。これにより、捜索者による捜索がより容易になることが期待できる。
【0067】
なお、動物の位置を把握するだけでよい場合は、活動量以外の生態情報は取得せず、よって、生態情報の送信もしない構成でもよい。その場合は、生態情報を用いての捜索対象自動判断は行えないので、人為的な判断で手入力などにより追跡モード設定信号を親機1から送信させる。本実施形態において追跡モードの解除は、親機1に携帯端末3から追跡モード解除信号を送るか、親機1に手入力することで、対象の子機2への追跡モード解除信号を親機1から送信させて行うようにしている。しかし、子機2に入力部を設けて手入力で子機2に追跡モード解除信号を入力し、子機2が親機1に追跡モード解除を知らせるようにしてもよい。
【0068】
本実施形態の子機2は、追跡モード設定中には移動距離または活動量積算値に応じて位置情報の送信を行い、追跡モード解除中には送信周期ごとに定期的に位置情報を送信する。しかし、追跡モード解除中にも、定期的な送信ではなく移動距離または活動量積算値に応じた送信を行ってもよい。この場合、追跡モード解除中における移動認識距離や移動認識活動量値を大きく設定しておけば、捜索されていないときの子機2の消費電力を低く抑えることができる。
【0069】
本実施形態の動物情報収集システムは、携帯端末3を有する構成であるが、携帯端末3はなくてもよい。例えば、動物が双眼鏡等で見える範囲に存在し、捕獲せずに捜索対象の動物の様子を双眼鏡等で観察するだけであるような場合や、連絡手段を持った捜索人員が複数いて、親機1の位置から指示を送る者と指示を受けて捜索を行う者とに分かれることが可能な場合などには、携帯端末3は特に必要ない。このとき、ブロック図は図9に示すようになる。
【0070】
また、本実施形態では、近接距離と平均移動距離との差があらかじめ定められた有視界距離以上であれば、この差ではなく有視界距離を追跡モード設定中の子機2の移動認識距離とするが、この構成はなくても構わない。
【0071】
さらに、本実施形態では、追跡モード設定中の子機2と周辺子機との関係から追跡モード設定中の子機2の移動認識距離を決定するが、この構成はなくてもよい。
【0072】
本実施形態の子機2は、算出した移動距離が所定値以上の場合に位置情報を送信するが、この構成はなくてもよい。このとき、子機2の動作は図10に示すフローのようになる。ステップS201〜ステップS203までは、図8のステップS101〜ステップS103と同様である。そして、位置情報を取得すると、制御部26は取得された位置情報を通信部22から送信させる(ステップS204)。
【0073】
本実施形態の子機2は、電池残量が少なくなると移動認識活動量値を大きくするが、この構成はなくてもよい。携帯端末3を利用せず、移動認識距離の決定・変更も行わず、移動認識活動量値の変更も行わないとき、ブロック図は図11に示すようになる。
【0074】
本実施形態においては、子機2は親機1からの信号に従い追跡モードを設定するが、親機1が、追跡モード設定中か否かで子機2を区別する必要がない構成の場合には、親機1および子機2の、追跡モードを設定する構成はなくてもよい。携帯端末3との連携、移動認識距離および移動認識活動量値の変更、追跡モードの設定、がないとき、ブロック図は図12に示すようになる。このとき、送信情報が位置情報のみでよいならば、図13に示すような、生態情報取得部23’が活動量計測部23である構成にしてもよい。
【0075】
<実施形態2>
ここから本願発明の第2の実施形態を示す。ブロック図は図2と同様である。この動物情報収集システムは実施形態1と一部略同一の構成を備えているので、共通の構成については説明を省略し特徴的な構成および作用効果についてのみ説明する。
【0076】
本実施形態の動物情報収集システムは、親機1と、動物に取り付けられる子機2とを有し、親機1と子機2との間で無線通信が行われるものである。そして、子機2は、電池21と通信部22と活動量計測部23と活動量積算部24と位置取得部25と制御部26とを備えることを特徴としている。電池21は子機2の電源であり、通信部22は親機1との間で無線通信を行う。活動量計測部23は、自機が取り付けられている動物の活動量を計測する。活動量積算部24は、活動量計測部23により計測された活動量を積算する。位置取得部25は自機の位置情報を取得する。制御部26は通信部22から位置情報を送信させる。そして、制御部26は、活動量積算部24により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、位置取得部25に位置情報を取得させ、通信部22から、取得された位置情報を送信させる。
【0077】
この動物情報収集システムは、子機2を複数有する。このとき、親機1は、子機2の数が増えると、それらの子機2に対して、子機2の数情報を有する子機増加信号を送信する動物管理部11を備える。そして、子機2は、親機1から子機増加信号を受け取ると、その子機増加信号中の子機2の数が多いほど移動認識活動量値を大きくする設定部27を備える。
【0078】
さらに、この動物情報収集システムは、親機1との間で無線通信を行う携帯端末3を有する。この携帯端末3は、親機1との間で無線通信を行う端末通信部31と、自端末の位置情報を取得する端末位置取得部32と、親機1から受信した情報に応じて外部報知を行う報知部33と、を備える。端末通信部31は、自端末の位置情報を親機1に送信する。このとき親機1は、子機2の位置情報と携帯端末3の位置情報とから、子機2と携帯端末3との相対位置情報を導出し、相対位置情報を携帯端末3に送信する相対情報処理部13を備える。
【0079】
親機1は、動物管理部11と子機情報記憶部12と相対情報処理部13とを備える。
動物管理部11は、位置情報を送信してくる子機2の数が増えると、それらの子機2に対して、子機2の数情報を有する子機増加信号を送信する。本実施形態でも、追跡モードを導入し、子機増加信号には追跡モード設定中の子機2の数を含めることとする。なお、この子機増加信号は、信号中に含める子機2の数が一定数に達するごとに送信してもよいし、信号中に含める子機2の数が増えるたびに送信してもよい。
【0080】
子機情報記憶部12は、子機2から受信した情報を記憶する。また、動物管理部11により追跡モード設定信号が送信され、かつ追跡モード解除信号が送信されていないまたは子機2からの追跡モード解除を知らせる通知を受けていない子機2の数、つまり、追跡モード設定中の子機2の数を記憶する。
【0081】
相対情報処理部13は、子機2の位置情報と携帯端末3の位置情報とから、子機2と携帯端末3との相対位置情報を導出し、相対位置情報を携帯端末3に送信する。相対位置情報には子機2と携帯端末3との距離が含まれることが望ましいが、距離を含まず、例えば、子機2と携帯端末3のそれぞれの座標が含まれてもよい。また、距離と距離以外の情報の双方が含まれてもよい。
【0082】
子機2は、電池21と通信部22と活動量計測部23と活動量積算部24と位置取得部25と制御部26と設定部27と記憶部28と追跡モード設定部29を備え、自機に固有の子機識別情報を持つ。電池21、通信部22、活動量計測部23を含む生態情報取得部23’、活動量積算部24、位置取得部25、および追跡モード設定部29については実施形態1と同様である。
【0083】
制御部26は、活動量積算部24により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、位置取得部25に位置情報を取得させ、通信部22から、取得された位置情報を送信させる。
【0084】
設定部27は、親機1から子機増加信号を受け取ると、その子機増加信号中の子機2の数が多いほど移動認識活動量値を大きくする。図14にこの判断の例を示す。移動認識活動量値の変化は3段階に限るものでなない。なお、このように、子機増加信号中の子機2の数から設定部27で移動認識活動量値を判断してもよいし、動物管理部11で移動認識活動量値を判断し、子機増加信号中に移動認識活動量値を含めるようにして、設定部27でその値に設定するようにしてもよい。
【0085】
記憶部28は、生態情報取得部23’により取得された生態情報、活動量積算部24により積算された活動量積算値を記憶する。また、移動認識活動量値、親機に定期送信を行う送信周期を記憶する。図15に記憶部28の記憶テーブルの一例を示す。
【0086】
携帯端末3は、端末通信部31と端末位置取得部32と報知部33とを備える。これらは、実施形態1と同様である。なお、親機1からの相対位置情報に、例えば捜索対象の子機2と自機の座標などの、捜索対象の子機2と自機との距離や方向以外の位置情報が含まれている場合、報知部3は、距離や方向に応じた報知でなく、例えば捜索対象の子機2と自機の座標に基づいた地図表示などを行ってもよい。また、例えば、距離や方向の文字表示と座標に基づいた地図表示の双方を行ってもよい。
【0087】
ここから、例をあげて、本実施形態の動物情報収集システムを説明する。
この動物情報収集システムは牧場で利用されていて、親機1は牛舎にあり、複数ある子機2はそれぞれ牛に取り付けられているとする。そして、子機2は、牛の生態情報として体温と活動量を取得しているとする。子機2は、例えば30分の送信周期ごとに親機へ生態情報と位置情報を送信している。親機1は、各子機2から送信される情報を蓄積し、解析する。
【0088】
そして、親機1は、例えば高体温が続くとその牛を捜索対象とみなし、その牛に取り付けられている子機2に対して追跡モード設定信号を送信する。または、管理者が親機1を操作し、捜索したい牛に取り付けられている子機2に対して追跡モード設定信号を送信させる。
【0089】
牛の捜索を行う捜索者は、携帯端末3を携帯して牧場へ捜索に向かう。携帯端末3は、自端末の位置情報を例えば1分ごとに親機1に送信する。
【0090】
追跡モード設定信号を受け、追跡モードを設定した捜索対象の子機2は、活動量積算値が移動認識活動量以上であれば送信タイミングでなくても位置情報を取得し、その位置情報を送信する。
【0091】
親機1は、追跡モード設定信号を送信した子機2の数を記憶し、この子機2の数が、例えば5以上になったときと10以上になったときに一回ずつ、その数を信号中に含む子機増加信号を捜索対象の子機2に送信する。
【0092】
子機増加信号を受けた子機2は、子機増加信号中の子機2の数に応じて移動認識活動量値を変更する。
【0093】
親機1は、捜索対象の子機2から取得した位置情報と携帯端末3から取得した位置情報から、両者の距離と携帯端末3から見た子機2の方角とを導出し、この距離と方角とを相対位置情報として携帯端末3に送信する。
【0094】
相対位置情報を受信した携帯端末3は、例えば距離と方角を文字にして表示することで外部報知を行う。
【0095】
捜索者は、捜索対象の牛を発見あるいは捕獲すると、携帯端末3を操作して捜索対象の子機2の追跡モード解除依頼信号を親機1に送る。
【0096】
携帯端末3からの追跡モード解除依頼信号を受信した親機1は、捜索対象の子機2に追跡モード解除信号を送る。
【0097】
追跡モード解除信号を受けた子機2は、追跡モードを解除する。
【0098】
このように、本実施形態の動物情報収集システムでは、子機2の数に応じて移動認識活動量値を変更する。子機2の数が増えると総通信回数が多くなり、通信の衝突が多発することが想定される。通信が衝突すると子機2からの再送が必要となり、この再送の回数が多くなると、子機2の電池消耗が激しくなってしまいかねない。本実施形態では、子機2の数が増えると移動認識活動量値を大きくし、つまり通信頻度を下げることで、無線帯域の使用率を下げて通信が衝突可する能性を低くできる。特に、本実施形態においては、送信頻度の多くなる追跡モード設定中の子機2の数によって移動認識活動量値を変えるので、より効率的な運用を行うことができる。
【0099】
また、本実施形態の動物情報収集システムは、捜索対象の子機2と自機との距離に応じて外部報知を行う携帯端末3を有する。捜索者は、この携帯端末3を携帯することにより、親機1から離れても捜索対象の子機2との相対関係を把握することができ、効率よく動物を捜索することができる。
【0100】
なお、実施形態1と同様、追跡モードのない構成にしてもよい。また、子機2の数によって移動認識活動量値を変更する構成はなくてもよい。管理対象の動物の数が1や2といった少数である場合には特に、このような構成は必要ではない。携帯端末3についても、これを備えない構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 親機
11 動物管理部
12 子機情報記憶部
13 相対情報処理部
2 子機
21 電池
22 通信部
23 活動量計測部
24 活動量積算部
25 位置取得部
26 制御部
27 設定部
28 記憶部
29 追跡モード設定部
3 携帯端末
31 端末通信部
32 端末位置取得部
33 報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と、動物に取り付けられる子機とを有し、前記親機と前記子機との間で無線通信が行われる動物情報収集システムであって、
前記子機は、
自機の電源である電池と、
前記親機との間で無線通信を行う通信部と、
自機が取り付けられている動物の活動量を計測する活動量計測部と、
前記活動量計測部により計測された活動量を積算する活動量積算部と、
自機の位置情報を取得する位置取得部と、
前記通信部から前記位置情報を送信させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記活動量積算部により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、前記位置取得部に位置情報を取得させ、前記通信部から当該取得された位置情報を送信させる
ことを特徴とする動物情報収集システム。
【請求項2】
前記子機は、前記電池の残量が少なくなると前記移動認識活動量値を大きくする設定部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の動物情報収集システム。
【請求項3】
前記子機を複数有し、
前記親機は、前記子機の数が増えると、当該子機に対して、当該子機の数情報を有する子機増加信号を送信する動物管理部を備え、
前記子機は、前記親機から前記子機増加信号を受け取ると、当該子機増加信号中の前記子機の数が多いほど前記移動認識活動量値を大きくする設定部を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の動物情報収集システム。
【請求項4】
前記子機は、前記通信部によって送信された位置情報である前回送信位置情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記活動量積算部により積算された活動量積算値が、あらかじめ設定された移動認識活動量値に達するごとに、前記位置取得部に位置情報を取得させ、当該位置情報と前記前回送信位置情報とから移動距離を計算し、当該移動距離があらかじめ設定された移動認識距離未満であれば、前記通信部に当該取得された位置情報を送信させない
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の動物情報収集システム。
【請求項5】
前記子機を複数有し、
前記子機は、
自機に固有の子機識別情報を持っており、
前記親機から、自機の前記子機識別情報に特定された追跡モード設定信号を受け取ると、自機が取り付けられている動物の捜索を補助する追跡モードの設定を行う追跡モード設定部を備え、
前記親機は、捜索対象の動物に取り付けられている前記子機に対し、当該子機の前記子機識別情報に特定された前記追跡モード設定信号を送信する動物管理部と、前記子機から受信した情報を記憶する子機情報記憶部と、を備え、
前記動物管理部は、前記記憶部に記憶された情報のうち最新の前記位置情報から、前記追跡モード設定信号を送信した、前記追跡モード設定中の子機に最も近い子機である周辺子機を特定し、当該追跡モード設定中の子機と当該周辺子機との位置関係に基づいて前記移動認識距離を計算して、当該追跡モード設定中の子機に対し、移動認識距離変更信号を送信する
ことを特徴とする請求項4に記載の動物情報収集システム。
【請求項6】
前記動物管理部は、前記追跡モード設定中の子機と周辺子機との位置関係に基づいて計算された移動認識距離があらかじめ定められた有視界距離以上であれば、当該計算された移動認識距離ではなく当該有視界距離を当該追跡モード設定中の子機の前記移動認識距離として、移動認識距離変更信号を送信する
ことを特徴とする請求項5に記載の動物情報収集システム。
【請求項7】
前記親機との間で無線通信を行う携帯端末を有し、
前記携帯端末は、前記親機との間で無線通信を行う端末通信部と、自端末の位置情報を取得する端末位置取得部と、前記親機から受信した情報に応じて外部報知を行う報知部と、を備え、
前記端末通信部は、自端末の位置情報を前記親機に送信し、
前記親機は、前記子機の位置情報と前記携帯端末の位置情報とから、当該子機と当該携帯端末との相対位置情報を導出し、当該相対位置情報を当該携帯端末に送信する相対情報処理部を備える
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の動物情報収集システム。
【請求項8】
前記親機との間で無線通信を行う携帯端末を有し、
前記携帯端末は、
前記親機との間で無線通信を行う端末通信部と、
自端末の位置情報を取得する端末位置取得部と、
前記親機から受信した情報に応じて外部報知を行う報知部と、
を備え、
前記端末通信部は、自端末の位置情報を前記親機に送信し、
前記親機は、
前記子機の位置情報と前記携帯端末の位置情報とから、当該子機と当該携帯端末との相対位置情報として少なくとも当該子機と当該携帯端末との距離を導出し、当該相対位置情報を当該携帯端末に送信する相対情報処理部と、
前記相対位置情報中の前記子機と前記携帯端末との距離が小さくなると当該子機に距離減少信号を送信する動物管理部と、
を備え、
前記子機は、前記親機から距離減少信号を受け取ると、前記移動認識距離を小さくする設定部を備える
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の動物情報収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−200166(P2012−200166A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65862(P2011−65862)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】