説明

動物用サポーター

【課題】 犬などの動物用のサポーターにおいて、体幹の可動を制限することにより椎間板ヘルニア等の疾病を予防すると共に、装着していても散歩等の日常の行動に支障が無い様にする。
【解決手段】 本発明の動物用サポーターは、動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、前記体幹背面覆部から延長されて肩甲骨の後部かつ骨盤の前部の間を筒状に覆う胴体部と、前記体幹背面覆部の前端から頭部を通すための首穴及び前脚を通すための前脚穴を形成して前記胴体部の前縁と繋がる一対の脇部と、前記体幹背面覆部の後端から尾及び排泄のための尾穴及び後脚を通すための後脚穴を形成して前記胴体部の後縁と繋がる一対の鼠径部とを有する本体覆部を有し、前記体幹背面覆部の背骨に沿って両側に肋骨の背側上部は体側に向かって凸状形状で、腰椎の背側上部は体側に向かって凹状形状の一対の体幹可動制限部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動物用サポーターにおいて、動物の椎間板ヘルニアの予防をし、かつ日常の散歩等の動作を可能とさせる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椎間板ヘルニアは、人間も発症する腰椎部分の疾病であるが、動物でも同様に発症することがある。例えば、犬の骨格の構造は、図1(非特許文献1参照)の骨格側面図及び図2(非特許文献2参照)の骨格上面図に示すように、7個の頚椎50、13個の胸椎51、7個の腰椎53、仙椎55、骨盤57、胸椎51から繋がる9対の肋骨61等からなるが、特にダックスフンド、ウェルッシュ・コーギーは骨格と筋肉のバランスが悪く、背骨や肘、股関節に負担がかかりやすく、椎間板ヘルニアになりやすい犬種である。これらの犬では、例えばチンチンの姿勢をとると、背骨(胸椎、腰椎)が横から見てS字状に大きく湾曲してしまう。また、自分の尻尾を追って回転運動する際には、上から見て背骨(胸椎、腰椎)が円弧状に大きく湾曲してしまう。これらの背骨(胸椎・腰椎)が大きく曲がる動作は動物にとって負担となり、椎間板ヘルニア等の原因となる。また、これらの緩慢な動作だけに限らず、ジャンプ時やその着地時など瞬間的に背骨にかかる可動域を超えた湾曲動作も同じく椎間板ヘルニアの原因となる。このため、これらの背骨の動きを制限し、かつ散歩などの日常の生活にも支障をきたさない動物用のサポーターの要求があった。
【0003】
従来技術として、動物の椎間板ヘルニアの治療・予防を目的とした腹部、背部、骨盤部をほぼ覆って筒状にされるシート状のコルセットがあった。本コルセットでは、背骨に沿うようにほぼ前端部から後端部至って複数本の直線状の矯正用心材が胴回りに配置されている。(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、本コルセットのように腹部、背部だけでなく骨盤部全体をも覆ってしまうと、特に後脚の動きを大きく妨げ、さらに直線状の矯正用心材では、体幹の動きがほとんど制限されてしまうため、動物は左右への回頭運動ができなくなってしまい、散歩などの日常の運動ができなくなってしまう問題があった。
【特許文献1】特開2007−296309号公報
【非特許文献1】ペット専門用語事典、株式会社日本畜犬学会出版
【非特許文献2】Color Atlas of Veterinary Anatomy, Volume3, The Dog & Cat
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、犬等の椎間板ヘルニアを予防するための動物用のサポーターにおいて、体幹(胸椎及び腰椎)の曲げを制限しつつ日常的な散歩などの行動も可能とさせることができなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動物用サポーターは、動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、前記体幹背面覆部の背骨位置に沿う両側の上部に体幹の可動を制限するために装着される背骨方向に長い長辺と体側方向に短い短辺を有する板状の一対の体幹可動制限部を有し、前記長辺が肋骨の背側上部は体側に向かって凸状に湾曲し腰椎の背側上部は体側に向かって凹状に湾曲することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の動物用サポーターは、動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、前記体幹背面覆部から延長されて肩甲骨の後部かつ骨盤の前部の間を筒状に覆う胴体部と、前記体幹背面覆部の前端から頭部を通すための首穴及び前脚を通すための前脚穴を形成して前記胴体部の前縁と繋がる一対の脇部と、前記体幹背面覆部の後端から尾及び排泄のための尾穴及び後脚を通すための後脚穴を形成して前記胴体部の後縁と繋がる一対の鼠径部とを有する本体覆部を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2の動物用サポーターは、前記体幹背面覆部の背骨位置に沿う両側の上部に体幹の可動を制限するために装着される背骨方向に長い長辺と体側方向に短い短辺を有する板状の一対の体幹可動制限部を有し、前記長辺が肋骨の背側上部は体側に向かって凸状に湾曲し腰椎の背側上部は体側に向かって凹状に湾曲することを特徴としても良い。
【0009】
また、本発明の動物用サポーターの前記体幹可動制限部は非装着状態において平面の板状であることを特徴としてもよい。
【0010】
また、本発明の動物用サポーターの前記体幹可動制限部は、下面に制限部接合部を有して前記本体覆部に取り外し可能で固定されることを特徴としてもよい。
【0011】
また、本発明の動物用サポーターの前記体幹背面覆部の背骨の背側上部の前記体幹可動制限部により挟まれる中心部分を背骨側部の材料よりより柔らかい材料により形成することを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明の動物用サポーターの前記体幹可動制限部の上面に夜光塗料、または反射テープを有していることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の動物用サポーターは、動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、前記体幹背面覆部の背骨位置に沿う両側の上部に体幹の可動を制限するために装着される背骨方向に長い長辺と体側方向に短い短辺を有する板状の一対の体幹可動制限部を有し、前記長辺が肋骨の背側上部は体側に向かって凸状に湾曲し腰椎の背側上部は体側に向かって凹状に湾曲することを特徴とする。
【0014】
このため、体幹可動制限部が椎間板ヘルニア等の原因となる体幹(胸椎、腰椎)の動きを制限して可動域以上の動きを抑制するため、椎間板ヘルニアの発症を予防する効果を有する。また、体幹可動制限部が三次元的に撓むことにより、肋骨上部にあたる部分は、体側に向かって凸状の形状が肋骨の形状に沿ってより体にフィットし、腰椎の側面の上側にあたる部分は、体側に向かって凹状の形状部分が背骨の横方向の曲げに沿って同様に三次元的に撓むことにより、回頭動作を可能とさせる。そして、体にフィットした体幹可動制限部が、背骨の縦方向の曲げを大きく制限することにより、椎間板ヘルニアを発生させるような体幹の動きには制限を加えつつも、前記した回頭動作を可能とさせることにより日常の散歩などの行動には支障がないようにさせる。そのため、常時の装着が可能となる。
【0015】
また、本発明の動物用サポーターは、動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、前記体幹背面覆部から延長されて肩甲骨の後部かつ骨盤の前部の間を筒状に覆う胴体部と、前記体幹背面覆部の前端から頭部を通すための首穴及び前脚を通すための前脚穴を形成して前記胴体部の前縁と繋がる一対の脇部と、前記体幹背面覆部の後端から尾及び排泄のための尾穴及び後脚を通すための後脚穴を形成して前記胴体部の後縁と繋がる一対の鼠径部とを有する本体覆部を有することを特徴とする。
【0016】
このため、体幹背面覆部及び胴体部により胸椎、腰椎が覆われて体幹の動きを制限して動物のヘルニアの予防が可能となると共に、肩甲骨及び骨盤が胴体部に覆われることがないので前脚及び後脚を自由に動かすことが可能で、散歩などの日常の運動に支障が無い。そのため、常時の装着が可能となる。
【0017】
また、本発明の請求項2の動物用サポーターは、前記体幹背面覆部の背骨位置に沿う両側の上部に体幹の可動を制限するために装着される背骨方向に長い長辺と体側方向に短い短辺を有する板状の一対の体幹可動制限部を有し、前記長辺が肋骨の背側上部は体側に向かって凸状に湾曲し腰椎の背側上部は体側に向かって凹状に湾曲することを特徴としても良い。
【0018】
このため、体幹可動制限部が三次元的に撓むことにより、肋骨上部にあたる部分は、体側に向かって凸状の形状が肋骨の形状に沿ってより体にフィットし、腰椎の側面の上側にあたる部分は、体側に向かって凹状の形状部分が背骨の横方向の曲げに沿って同様に三次元的に撓むことにより、回頭動作を可能とさせる。そして、体にフィットした体幹可動制限部が、背骨の縦方向の曲げを大きく制限することにより、椎間板ヘルニアを発生させるような体幹の動きには制限を加えつつも、前記した回頭動作を可能とさせることにより日常の散歩などの行動には支障がないようにさせる。そのため、常時の装着が可能となる。
【0019】
また、本発明の動物用サポーターの前記体幹可動制限部は非装着状態において平面の板状であることを特徴としてもよい。
【0020】
このため、体幹可動制限部の作製は平面状の板をS字状に形成するだけでよく、低価格で短時間に作製可能である。
【0021】
また、本発明の動物用サポーターの前記体幹可動制限部は、下面に制限部接合部を有して前記本体覆部に取り外し可能で固定されることを特徴としてもよい。
【0022】
このため、個々の動物の異なる状況に対応して最適な体幹可動制限部を選択して容易に取替え可能となる。
【0023】
また、本発明の動物用サポーターの前記体幹背面覆部の背骨の背側上部の前記体幹可動制限部により挟まれる中心部分を背骨側部の材料よりより柔らかい材料により形成することを特徴としてもよい。
【0024】
このため、背骨の背側上部に直接触れる部分が柔らかい素材であるため、背骨と本体覆部との接触部分で痛みが発生することが抑制される。また、日常の行動に必要とさせる体幹の可動が行いやすくなる。
【0025】
また、本発明の動物用サポーターの前記体幹可動制限部の上面に夜光塗料、または反射テープを有していることを特徴としてもよい。
【0026】
このため、夜の散歩でも体幹可動制限部が光って注意力を喚起するため安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
動物用サポーターにおいて、動物の椎間板ヘルニアの予防をし、かつ日常の散歩等の動作を可能とさせることが出来ないという問題点を動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、前記体幹背面覆部の背骨に沿って両側に肋骨の背側上部は体側に向かって凸状で、腰椎の背側上部は体側に向かって凹状の形状の一対の板状の体幹可動制限部とを有することによって、また、動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、前記体幹背面覆部から延長されて肩甲骨の後部かつ骨盤の前部の間を筒状に覆う胴体部と、前記体幹背面覆部の前端から頭部を通すための首穴及び前脚を通すための前脚穴を形成して前記胴体部の前縁と繋がる一対の脇部と、前記体幹背面覆部の後端から尾及び排泄のための尾穴及び後脚を通すための後脚穴を形成して前記胴体部の後縁と繋がる一対の鼠径部とを有することにより解決した。
【実施例】
【0028】
[構成]
本発明実施例としての動物用サポーターを展開したものを図3に、犬のダックスフンドに装着させた側面図を図4に示す。また、犬の骨格図の側面図を図1に、上面図を図2に示し、以下の動物用サポーターの構成の説明中において、骨格の説明では関連の図面番号を括弧内に示す。
【0029】
まず、図3に示す動物用サポーター1は、大きく分けて二つの要素から構成されている。それらは、ウェットスーツに用いられるネオプレーンゴムの表面にジャージ生地を貼り付けたもので作製された本体覆部19と、ポリプロピレン等のプラスチック製で作製された体幹可動制限部41とである。
【0030】
図3では、図面に表す関係で本体覆部19は平面状に広がって見られるが、実際には、動物に装着してフィットする様に立体的に裁断されたパターンを、点線部で示す縫い目で縫合して作製されているので、図3のように展開して広げても一面に平面というわけではない。特に首穴21周りは突出しており、動物の首によくフィットする。
【0031】
本体覆部19は、動物の胸椎51(図1、図2)、腰椎53(図1、図2)の背側上部を覆う体幹背面覆部11を有する。体幹背面覆部11は、尾方向に延長して仙骨55(図1、図2)の背側上部を覆うとしてもよい。
【0032】
本体覆部19は、前記体幹背面覆部11の体側から延長されて、肩甲骨59(図1、図2)の後部かつ骨盤57(図1、図2)の前部の間を筒状に覆う胴体部13を有する。
【0033】
本体覆部19は、前記体幹背面覆部11の前端から頭部を通すための首穴21及び前脚を通すための前脚穴23(図4)を形成して前記胴体部13の前縁と繋がる一対の脇部15を有する。
【0034】
本体覆部19は、前記体幹背面覆部11の後端から尾及び排泄のための尾穴25(図4)及び後脚を通すための後脚穴27(図4)を形成して前記胴体部13の後縁と繋がる一対の鼠径部17を有する。鼠径部17の前記胴体部13の後縁と繋がる部分には、面ファスナーからなる鼠径接合部31を有して、動物への脱着が容易に可能となっている。
【0035】
一対の脇部15は、首の前下部で連結されて前垂れ部29を形成しており、前記首穴21は前記体幹背面覆部11の前縁と前記脇部15と前記前垂れ部29とに囲まれて形成されている。
【0036】
一対の脇部15は、前記胴体部13の前縁と繋がる部分に面ファスナーからなる脇接合部33を有して、脱着を可能とさせる。
【0037】
前垂れ部29は、下端に面ファスナーからなる前垂れ接合部35を有して前記胴体部13の前縁部と繋がり、胴体部13との間での脱着を可能とさせる。
【0038】
また、筒状の胴体部13は腹側に面ファスナーからなる胴体接合部37を有して、脱着を可能とさせる。
【0039】
上記の各接合部(鼠径接合部31、脇接合部33、前垂れ接合部35、胴体接合部37)の面ファスナーは、一点鎖線で示す縫い目により本体覆部19下面(動物の体に接する側)に縫合されている。この面ファスナーに接合する対向側はジャージ生地となっており、その表面のいずれの位置でも面ファスナーと接合可能であり、動物の大きさや形態に合わせて、接合位置を広く選択可能となっている。例えば、図4に示すように胴体接合部37が反対側の胴体部13の側面に接合されており、その上に脇接合部33が重なっている。また、鼠径接合部31及び前垂れ接合部35が胴体部13の腹部分に接合されている。接合位置は、図4の例に限られずに、動物の大きさや形態に合わせて選択される。
【0040】
また、前記体幹背面覆部11の背骨に沿って両側に肋骨61(図1,2)の背側上部は体側に向かって凸状で腰椎53の背側上部は、体側に向かって凹状の形状(S字状とその鏡面形状)の一対の体幹可動制限部41を有する。
【0041】
体幹可動制限部41は、ポリプロピレン製の2mm厚の一対のプラスチック平板からなる。この板は、装着しない状態では曲面をもたず全くの平面の板である。このポリプロピレン材料の物性は、引っ張り強さが29MPa、引張破断伸びが500%、曲げ強さ35MPa、曲げ弾性率1.1GPaの可撓性を有する。これらの物性値は、適宜最適なものが選択される。
【0042】
この体幹可動制限部41の幅を変えた2つの例について、図5(A)に幅広タイプの体幹可動制限部41aの上面図、図5(B)に幅広タイプの体幹可動制限部41aの後面図、図5(C)に幅狭タイプの体幹可動制限部41bの上面図、図5(D)に幅狭タイプの体幹可動制限部41bの後面図を示す。
【0043】
体幹可動制限部41(41a,41b)の下面には、面ファスナーからなる制限部接合部43(43a,43b)を有して取り外し可能である。
【0044】
この体幹可動制限部(41a,41b)は、前記動物の運動能力に合わせて材料の弾性、厚さ、幅を変えた最適な可動制限力を有するものを選択可能であり、典型的には、図5に示す41a,41bのように幅を変えた材料によって、その動物の運動能力に合わせて可撓性を異ならせることによって対応し、犬種や大きさや犬の椎間板ヘルニアの症状に合わせることが可能である。
【0045】
この体幹可動制限部41は、そのS字状の形状のために三次元的に撓んで、動物の背部分によくフィットする。図5(E)に体幹可動制限部41の三次元的撓みの状態を誇張して示した斜視図を示す。中心に点線で示す円柱は、胸椎51、腰椎53である。体幹可動制限部41は、矢印Xで示すように三次元的に体幹可動制限部41の板の肋骨上部にあたる部分の上面側が凸に撓むことにより、肋骨の形状に沿ってより体にフィットし、腰椎53の側面の上側にあたる部分が腰椎部分の横方向の動きに応じて矢印Yで示すように凹状に撓むことにより、回頭動作を可能とさせる。これらの効果は、体幹可動制限部41の側面のS字形状及び体幹可動制限部41の可撓性に起因して可能となる。
【0046】
そして、このような撓みにより体にフィットした体幹可動制限部41が、背骨の特に縦方向の曲げを大きく制限することにより、椎間板ヘルニア等の発症を予防する。
【0047】
この体幹可動制限部41のS字状の板状形状により、上記の体をフィットさせる目的と共に、椎間板ヘルニアの原因となる望ましくない方向への可動、例えば体幹可動制限部板面の面内方向への移動は大きく制限されることにより、椎間板ヘルニアの発症を予防する。
【0048】
また、体幹可動制限部板面の垂直方向への板面の可撓性により比較的可動しやすい方向の動きであっても、瞬間的に大きな力が生じても、体幹可動制限部41の存在によりクッションとして働き、瞬間的に背骨を可動域以上に湾曲させることを予防する。
【0049】
しかし、前記したように回頭動作は尾方向へのS字形状の広がり等により容易に可能とさせることにより日常の散歩などの行動には支障が無い。そのため、常時の装着が可能となる。
【0050】
また、体幹背面覆部11の背骨の背側上部の前記体幹可動制限部41により挟まれる中心部分39を背骨側部の材料よりより柔らかい材料により形成してもよい。この部分は、胸椎51、腰椎53を覆う部分であるので、これら体幹(胸椎51、腰椎53)の可動が容易になるためと、また背骨の上部の突起部分等に痛みを生じないようにするためとの理由で、前記柔らかい材料により作製されている。具体的には、ネオプレーンゴムの厚みを薄くすることや柔らかい素材を選択すること等により行われる。
【0051】
この動物用サポーターの前記体幹背面覆部11は、前記した胸椎51及び腰椎53の背側上部だけでなく、仙椎55の背側上部を覆うこととしてもよい。
【0052】
[実施例の効果]
本発明実施例の動物用サポーターのために以下の効果が得られる。
【0053】
動物用サポーター1の体幹背面覆部11が動物の体幹(胸椎及び腰椎)の背面を覆うため、体幹の動きを制限して体幹の過度の曲がりを制限することにより、椎間板ヘルニア等の腰椎の疾病を予防する。
【0054】
動物用のサポーターの胴体部13は、肩甲骨59の後部及び骨盤57の前部との間を覆うために、前脚及び後脚の可動を制限することなく、散歩や日常の行動などを制限することなく、常時装着したまま生活をすることが可能である。
【0055】
鼠径接合部31、脇接合部33、前垂れ接合部35及び胴体接合部37が面ファスナーで接合相手方のジャージ生地の広い位置での接合位置の選択が可能であるので、動物の大きさや形態に合わせて広く応用可能である。
【0056】
本体覆部19は、ウェットスーツ等に用いられるネオプレーンゴムにジャージ生地を貼り付けたものからなり洗濯可能であるため、常に清潔に保つことが可能である。
【0057】
体幹可動制限部41により、体幹の動きの制限がより確実となり、椎間板ヘルニア等の腰椎の疾病を予防する役割がより高まった。体幹可動制限部41による動きの制限は、動物がチンチンのポーズをとる場合や歩行する場合などの時間的にゆっくりした動作について制限するだけに限らず、瞬間的な、例えばジャンプ時やその着地時などにかかる背骨の可動域を超えてしまうような動作をも抑えることにより、椎間板ヘルニア等の疾病を予防することが可能となる。
【0058】
図6に示す図は、動物用サポーターを装着した犬がチンチンのポーズをとっている際の側面図であるが、体幹(胸椎及び腰椎)が動物用サポーターにより支えられている様子を示す。特に体幹可動制限部41により支えられることにより、背骨がS字状に曲がることなく支えられている様子がわかる。
【0059】
体幹可動制限部41は、平面状の板をS字状に加工することによって作製されるため、低コストで短時間での作製が可能である。
【0060】
体幹可動制限部41の背骨方向に沿った長辺の形状は、肋骨の上部分は、肋骨61(図2)の左右の膨らみに合わせて体側に向かって凸状の曲線を有しており、腰椎53(図2)の上部は、体側に向かって尾側が広がるように体の中心に向かって凸状の曲線を有しているため、体の曲面に合わせてフィットする。また、胸椎51(図2)と腰椎53(図2)の接合部分から尾側に向かって左右に広がっている(図3)ため、腰椎53の左右への可動を容易にして、散歩などの日常活動を可能とし、常時の装着を可能とさせる。
【0061】
体幹可動制限部41は、面ファスナーにより脱着可能で、幅、長さ、厚み、材料の異なるものを選可能であるため犬の大きさや形態、運動能力や疾病の度合い等に合わせて最適なものを選択可能である。
【0062】
体幹可動制限部41の上面は、蛍光塗料や反射テープなどにより夜間でも容易に視認が可能であるため、安全性が高まった。
【0063】
[その他]
本実施例の体幹可動制限部は、平面状の板からできており装着時に動物の形態、動作に合わせて三次元的に撓むものであったが、例えば平面状の板を熱加工したり、または三次元的な曲面を有する型にインジェクション成形する方法などにより、あらかじめ三次元的な曲面を有する体幹可動制限部を用いるとする方法であっても良い。
【0064】
本実施例では、体幹可動制限部が撓むことによりフィット感が高まり、動作が可能となるとしたが、体幹可動制限部は可撓性が無く本体覆部の素材の伸縮性によって動作を可能とさせる体幹可動の制限を非常に強くしたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】犬の骨格図の側面図である。
【図2】犬の骨格図の上面図である。
【図3】本発明実施例の動物用サポーターの展開図である。
【図4】本発明実施例の動物用サポーターを犬に着せた際の側面図である。
【図5】本発明実施例の体幹可動制限部について、(A)幅広タイプの上面図、(B)幅広タイプの後面図、(C)幅狭タイプの上面図、(D)幅狭タイプの後面図である。(E)撓みを三次元的に把握できるように示した斜視図である。
【図6】本発明実施例の動物用サポーターを犬に着せて、犬がチンチンのポーズを取ったときの側面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 動物用サポーター
11 体幹背面覆部
13 胴体部
15 脇部
17 鼠径部
19 本体覆部
21 首穴
23 前脚穴
25 尾穴
27 後脚穴
29 前垂れ部
31 鼠径接合部
33 脇接合部
35 前垂れ接合部
37 胴体接合部
39 体幹背面覆部の中心部分
41 体幹可動制限部
43 制限部接合部
50 頚椎
51 胸椎
53 腰椎
55 仙骨
57 骨盤
59 肩甲骨
61 肋骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、
前記体幹背面覆部の背骨位置に沿う両側の上部に体幹の可動を制限するために装着される背骨方向に長い長辺と体側方向に短い短辺を有する板状の一対の体幹可動制限部を有し、前記長辺が肋骨の背側上部は体側に向かって凸状に湾曲し腰椎の背側上部は体側に向かって凹状に湾曲する
ことを特徴とする動物用サポーター。
【請求項2】
動物の胸椎、腰椎の背側上部を覆う体幹背面覆部と、
前記体幹背面覆部から延長されて肩甲骨の後部かつ骨盤の前部の間を筒状に覆う胴体部と、
前記体幹背面覆部の前端から頭部を通すための首穴及び前脚を通すための前脚穴を形成して前記胴体部の前縁と繋がる一対の脇部と、
前記体幹背面覆部の後端から尾及び排泄のための尾穴及び後脚を通すための後脚穴を形成して前記胴体部の後縁と繋がる一対の鼠径部とを有する本体覆部を有する
ことを特徴とする動物用サポーター。
【請求項3】
請求項2の動物用サポーターであって、
前記体幹背面覆部の背骨位置に沿う両側の上部に体幹の可動を制限するために装着される背骨方向に長い長辺と体側方向に短い短辺を有する板状の一対の体幹可動制限部を有し、前記長辺が肋骨の背側上部は体側に向かって凸状に湾曲し腰椎の背側上部は体側に向かって凹状に湾曲する
ことを特徴とする動物用サポーター。
【請求項4】
請求項1または3の動物用サポーターであって、
前記体幹可動制限部は非装着状態において平面の板状である
ことを特徴とする動物用サポーター。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれかの動物用サポーターであって、
前記体幹可動制限部は下面に制限部接合部を有して前記本体覆部に取り外し可能で固定される
ことを特徴とする動物用サポーター。
【請求項6】
請求項1または3から5のいずれかの動物用サポーターであって、
前記体幹背面覆部の背骨の背側上部の前記体幹可動制限部により挟まれる中心部分を背骨側部の材料よりより柔らかい材料により形成する
ことを特徴とする動物用サポーター。
【請求項7】
請求項1または3から6のいずれかの動物用サポーターであって、
前記体幹可動制限部の上面に夜光塗料、または反射テープを有している
ことを特徴とする動物用サポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−104418(P2010−104418A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276704(P2008−276704)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(508323458)株式会社P−Pro (1)
【Fターム(参考)】