説明

動的核偏極装置

本発明は、動的に核偏極された核スピンを含む超偏極した試料(114)の連続的な提供のための動的核偏極装置(116)であって、前記核スピンを偏極させて前記超偏極した試料を生じるための偏極領域(106)を有しており、当該装置(116)はさらに:前記偏極領域(106)中で前記試料(114)を冷却するための低温保持装置(102)と、前記偏極領域(106)中で冷却された試料に磁場を提供する磁石(100)と、磁場提供と並行して、前記超偏極した試料を受け取るために前記偏極領域(106)に核偏極放射を提供する放射源(112)と、連続的に未偏極試料(114)を受け取り、該未偏極試料を核スピン偏極のための前記偏極領域(106)に搬送し、結果として得られる超偏極した試料(114)を提供するための試料搬送システム(104)とを有する、装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的核偏極装置、動的核偏極装置のための試料担体、磁気共鳴撮像によってオブジェクトの磁気共鳴画像を取得する方法およびコンピュータ・プログラム・プロダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
二次元または三次元画像を形成するために磁場と核スピンの間の相互作用を利用する画像形成MR(magnetic resonance[磁気共鳴])法は、電離放射線を必要とせず通例非侵襲的なので軟組織の撮像については多くの点で他の撮像方法より優れており、特に医療診断の分野において今日広く使われている。
【0003】
MR法一般では、検査対象の患者の身体が強い一様磁場中に配置される。一様磁場の方向は同時に、測定の基礎となる座標系の軸(通例z軸)を定義する。磁場は、定義された周波数(いわゆるラーモア周波数またはMR周波数)の交流電磁場(RF場)の印加によって励起される(スピン共鳴)ことのできる、磁場強度に依存する個々の核スピンについての異なるエネルギー・レベルを生じる。巨視的な観点からは、個々の核スピンの分布が全体的な磁化を生じる。この全体的な磁化が、磁場がz軸(長手軸とも称する)に垂直に延在する間に適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)を印加することによって平衡状態から逸らされることができ、磁化はz軸のまわりに歳差運動をする。歳差運動は円錐の表面を描き、その開き角はフリップ角と称される。フリップ角の大きさは、印加される電磁パルスの強さおよび継続時間に依存する。いわゆる90°パルスの場合、スピンはz軸から横平面まで逸らされる(フリップ角90°)。
【0004】
RFパルスの終了後、磁化はもとの平衡状態に緩和し、その過程で、z方向の磁化が第一の時定数T1(スピン格子緩和時間または縦緩和時間)で再び増大し、z方向に垂直な方向の磁化は第二の時定数T2(スピン‐スピン緩和時間または横緩和時間)で緩和する。z軸に垂直な方向に磁化の変化が測定されるようMR装置の検査体積内に配置され、配向された受信RFコイルによって、磁化の変化が検出できる。横磁化の減衰には、たとえば90°パルスの印加後、(局所的な磁場不均一性によって誘起される)同じ位相をもつ秩序状態からすべての位相角が一様に分布している状態への核スピンの遷移(位相乱雑化[dephasing])が伴う。位相乱雑化は再集束パルス(たとえば180°パルス)によって補償できる。この手順は、受信コイルにエコー信号(スピン・エコー)を生じる。
【0005】
身体における空間分解能を実現するために、三つの主要な軸に沿って延在する線形磁場勾配が一様磁場に重畳され、スピン共振周波数の線形の空間依存性につながる。すると、受信コイルによって拾われる信号は、身体中の異なる位置に関連付けることのできる異なる周波数の成分を含む。受信コイルを介して得られる信号データは空間周波数領域に対応し、k空間データと呼ばれる。k空間データは通例、異なる位相エンコードを用いて取得される複数のラインを含む。各ラインはいくつかのサンプルを収集することによってデジタル化される。k空間データのセットは、フーリエ変換によってMR画像に変換される。
【0006】
従来の磁気共鳴撮像およびまた核磁気共鳴分光はしばしば、調査対象物質に含まれる核スピンの偏極が低いため、しばしば感度に欠ける。結果として、たとえば13Cおよび15NのMRIは、これらの同位体の天然存在比が低く、よって感度が低いため、あまりよく使われない。MRIにおける超偏極(hyperpolarization)は、所望される核スピンの低い感度の問題を克服する技術を提供し、安定同位体前駆体および定量的生体内撮像を使った
リアルタイムの代謝プロファイリングおよびバイオマーカー検出を可能にする。
【0007】
たとえば13C核の偏極度は、DNP(dynamic nuclear polarization[動的核偏極])、PHIP(para hydrogen induced polarization[パラ水素誘起偏極])などのような超偏極プロセスを使って1近くまで上げられる。これは、こうした各種の画像の信号対雑音比(SNR: signal to noise ratio)を劇的に改善する。
【0008】
特に生体中で超偏極化合物を撮像する際、時間が非常に決定的な因子になる。超偏極は典型的には、ひとたびその化合物が熱され、偏極器から撮像されるべきオブジェクトに移送されて投与されると、急速に減少するからである。
【0009】
DNPなどを使って超偏極した凍結した試料を生成するプロセスは、さらに時間がかかり、偏極ラン毎に少量の使用可能剤が生成されるのみである。たとえば室温での超偏極した13C剤の60秒という短いT1時間に比べ、剤は、事前に、長時間、典型的には数十分、マイクロ波でまたは光学的に照射される必要がある。
【0010】
特許文献1は、DNP装置において使うための冷却材(coolant)サブアセンブリーを開示している。動作では、試料が対応する試料ホルダーに入れられ、ごく低温に冷却され、その後マイクロ波を照射されてより高い偏極を達成する。その後、試料は融解され、当該装置から外に、NMR作用領域に押し出され、そこでNMRプロセスが実行できる。
【0011】
しかしながら、これは、一時に一つの超偏極試料しか提供できない。よって、複数の偏極試料を適用するMR測定は長大な時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US2009/0051361A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上から、改善された動的核偏極装置が必要とされていることがすぐ理解される。よって、短時間のうちに高品質でMRデータを取得するために、高速かつ信頼できる仕方での超偏極された造影剤を使ったMR撮像を可能にすることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、動的に核偏極された核スピンを含む超偏極した試料の連続的な提供のための動的核偏極装置が開示される。本装置は、核スピンを偏極させて超偏極した試料を生じるための偏極領域を有する。本装置はさらに、偏極された領域中で試料を冷却するための低温保持装置〔クライオスタット〕と、偏極された領域中で冷却された試料に磁場を提供する磁石と、磁場提供と並行して、超偏極した試料を受け取るために偏極領域に核偏極放射を提供する放射源と、未偏極試料を連続的に受け取り、該未偏極試料を核スピン偏極のための偏極領域に搬送し、結果として得られる超偏極した試料をたとえば当該装置の各ユーザーに提供する試料搬送システムとを有する。
【0015】
これは、試料のバッチ処理またさらには偏極した試料の連続的な提供を使って、超偏極プロセスおよび臨床上の作業フローを改善することを許容する。本システムは、偏極領域中の異なる位置で同時に異なる核スピンを偏極させることさえ許容する。この目的のため、前記放射源は、たとえば偏極のための放射を提供するマイクロ波または光学組立体は、複数のバージョンで存在している必要があることがありうる。各バージョンが一つの偏極周波数に資するのである。あるいはまた、前記組立体は、複数の試料に対応する周波数を供給することができるように設計される。
【0016】
マイクロ波または光学放射は、複数の試料が同時に偏極されるよう、好適な仕方で、たとえば好適なマイクロ波アンテナを使って、分配されてもよい(バッチ・モード)。さらに、マイクロ波導波管または一般に放射導波路は、それぞれが試料領域に異なる周波数を提供する複数の導波路から構成されてもよい。光学放射の場合、たとえば光ファイバーまたは鏡が、光を試料に案内するために使われてもよい。
【0017】
上記諸改善は、改善された臨床上の作業フローを許容する。というのも、バッチ――あるいは連続的に偏極された試料――が利用可能であり、相続く撮像セッションの間の長い待ち時間が解消されるからである。
【0018】
本発明のある実施形態によれば、前記搬送システムはコンベヤーを有する。該コンベヤーは、未偏極試料を受け取るよう適応された試料担体〔サンプル・キャリア〕を保持し、該試料を搬送するための第一の担体ホルダー〔キャリア・ホルダー〕を有する。このコンテキストで、「コンベヤー」という用語は、試料担体を、偏極領域に、また偏極領域から動かすことのできる任意の種類の搬送ラインとして理解される。これは、たとえば単純なコンベヤー・ベルトによって実現されてもよい。代替的または追加的に、コンベヤーは、試料をある位置から別の位置に動かすためおよび/または試料をコンベヤー・ベルト上に位置させるためのつかみ具〔グリッパー〕を有していてもよい。
【0019】
ある代替的な実施形態では、コンベヤー・ベルトの代わりに、偏極領域内で試料の垂直方向の搬送が所望される場合、循環エレベーター(paternoster)型の搬送システムが使われてもよい。
【0020】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、各第一の担体ホルダーは、試料位置における偏極放射を高める受動共振器を有する。これは、限られた入射マイクロ波パワーが原因で、特に複数の試料を同時に偏極させるために、偏極プロセスが長時間かかる手順となりうるという問題を克服する。適切な受動共振器によって入射場を局所的に高めることは、各試料の位置においてより高い場の振幅を与え、よって超偏極のために必要とされる超微細遷移の飽和がより簡単になる。
【0021】
本発明のある実施形態によれば、各試料担体が、その試料位置で偏極放射を高める受動共振器を有する。換言すれば、上記の実施形態では受動共振器は前記搬送システムの一部であり、一方、本実施形態によれば、各試料について、受動共振器を有する個々の試料担体が設けられる。結果として、各試料は、マイクロ波場増強器として作用する個々の共振器構造を有する。ここで、放射源からの放射の結合は、誘導性または容量性の結合、たとえばストリップライン(stripline)結合を介して実現される。
【0022】
たとえば、局所共振器は、渦巻き、対数、周期的、方形渦巻きまたさらにはダイポール・アレイといった共振構造を有していてもよく、あるいはAMC(artificial magnetic conductor[人工磁気導体])構造を有していてもよい。共振器は金属性の導体を担持する誘電体を有し、金属性の導体が受動共振器を形成してもよい。そのような担体の一例は、金属性の導体によって形成される個々の共振器のアレイのようなエッチングされた伝導性構造を担持するプリント回路基板(PCB: printed circuit board)と同様の担体であってもよい。
【0023】
結果として、試料の取り出しや交換の際のヘリウムや任意の冷却媒体の損失を著しく減らす、小さな熱容量をもつ軽量の共振器構造が提供できる。小さな熱容量をもつ銀や金のような材料は、冷却材(たとえばヘリウム)消費を著しく減らすことを許容し、よって安価でかつ信頼できる、自動的かつ連続的な試料製造の方法を提供する。試料担体のそのような種類の局所的受動共振器は、使い捨てとして設計されることさえできる。これは、試料担体によって保持される試料が生体に適用される超偏極された造影剤であり、担体に細菌汚染がないことを保証する必要がある場合には重要な側面となりうる。使い捨ての担体は、細菌汚染というこの問題を克服する。担体を再利用することで先の使用で担体を汚染した細菌またはウイルスが新たな試料と接触するかもしれないリスクにさらされる必要がないからである。
【0024】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、本装置はさらに、超偏極された試料を保管する試料保管領域を有する。ここで、前記低温保持装置はさらに前記試料保管領域内の試料を冷却するよう適応され、前記磁石はさらに前記試料保管領域に磁場を与えるよう適応され、前記試料搬送システムはさらに、前記偏極領域から前記試料保管領域に超偏極された試料を搬送するよう適応される。試料を偏極した状態で保存して、結果として得られる超偏極された試料を要求に際して個々に提供するためである。
【0025】
このことは、一方では、超偏極された試料が連続的に製造されるという利点をもつ。他方では、そのような試料の連続的な要求がない場合、試料が高い努力を払って外部保管システムに保管されたり、またさらには廃棄されたりする必要がなく、試料は装置の試料保管領域に自動的に保管される。超偏極された試料が必要とされる場合、搬送システムは要求に際して、一つの超偏極された試料を個別に提供する。
【0026】
この概念は、試料が試料保管領域にすでに存在している時間期間をモニタリングするモニタリング・コンポーネントをさらに使うことによって、拡張することさえできる。所定の時間制限を超過した場合には、モニタリング・システムが搬送システムに、この劣化した試料を偏極領域に搬送し戻して、その試料が再び超偏極プロセスを受けられるようにするよう信号伝達する。「リフレッシュ」された超偏極試料はその後、再び装置の試料保管領域に保管されてもよい。試料を偏極し直すための唯一の判断項目として所定の時間制限を使うことのほか、試料は、ひとたび偏極領域を出るときにその実際の偏極状態を能動的にラベル付けされてもよい。そのデータをラベル付けしたり読んだりするためにRFID技術が使用されてもよい。保管ドメイン内にNMR分光器を設置して、再偏極をするかしないかを決定するために、時折、残留偏極の度合いが検査されてもよい。
【0027】
本発明のある実施形態によれば、前記試料保管領域はコンベヤー・ループを有する。該コンベヤー・ループは、試料担体を保持する第二の担体ホルダーを有する。換言すれば、試料保管領域に、超偏極した試料のための固定した駐留場所を設ける代わりに、超偏極した試料を有する試料担体を受け取り、保持するために異なる第二の担体ホルダーを有する、連続的に動作するコンベヤー・ループが設けられる。前記搬送システムは、ここでもまた、超偏極された試料をその試料担体と一緒に、自動的に空の第二の担体ホルダーの上または中に位置させ、よって駐留させるつかみ具を有していてもよい。試料が要求される場合には、つかみ具は、その試料を有する試料担体を前記ホルダーから取り出してもよい。それによりそのホルダーは空にされ、再び、前記偏極領域の新たに超偏極された試料を受け入れる準備ができる。
【0028】
もう一つの側面では、本発明は、動的核偏極装置のための試料担体に関する。本試料担体は偏極されるべき試料を受け取るよう適応される。本試料担体は、試料の核スピンを偏極させる前記装置によって使用される偏極放射を試料位置において高める受動共振器を有する。
【0029】
本発明のある実施形態によれば、前記共振器は金属性の導体を担持する誘電体を有し、金属性の導体が受動共振器を形成する。
【0030】
本発明のある実施形態によれば、前記受動共振器は、金属性の導体によって形成される個々の共振器のアレイ、たとえばダイポールのアレイによって形成される。
【0031】
もう一つの側面では、本発明は、磁気共鳴撮像によってオブジェクトの磁気共鳴画像を取得する方法に関する。本方法は、超偏極された造影剤の一連のサブ・ボーラスを前記オブジェクトに適用し、各サブ・ボーラスの適用後に、前記オブジェクトの部分的な磁気共鳴画像を取得し、それら部分的な画像を組み合わせて前記オブジェクトの最終的な磁気共鳴画像を得ることを含む。
【0032】
換言すれば、単一のボーラスで超偏極された物質を加える代わりに、細分されたまたは複数のボーラス適用が使用される。このようにして、造影剤のほとんど連続的な投入または注入が達成できる。これは、関心領域においてモニタリングされるべき代謝産物のピーク濃度を平坦化する。このようにして、実際の生体内などでの観察時間窓を長くできる。単一のボーラスを複数ボーラスに置き換えることは、時間分解能の損失にはつながらない。基質消化によって生成される代謝産物の信号はT1緩和のために薄れていくからである。達成できる主要な利得は、高い空間分解能の撮像(分光撮像であってもよい)を使っての空間分解能の向上、代謝の生成物のモニタリングである。
【0033】
さらに、細分された基質適用によって、時間分解能を向上させることも可能である。撮像されるべきオブジェクトにおける代謝プロセスが時間的に不変であり、再現可能であるとすると、ボーラスとMR信号取得との間の遅延を変えてのボーラス適用を繰り返すことが可能である(ボックスカー積分器(boxcar integrator)モード)。このようにして、時間的分解能は、これらの実験を数回繰り返すことによって増大させることができる。結果として、細分されたまたは複数のボーラス適用を使うことで、超偏極MRIまたはMRSを高い時間的分解能および空間的分解能で実行できる。
【0034】
さらに、細分されたまたは反復されたボーラス注入は、より多くの情報を得ることを許容する。たとえば、個々のサブ・ボーラス適用の際、調査対象オブジェクトの実験条件が変わることがある。本発明のある実施形態では、オブジェクトは生命体であり、本方法はさらに、各サブ・ボーラス適用後に該生命体の代謝状態の変化を誘起することを含む。たとえば、そうした変化した条件のもとでの代謝の応答を調査するために、安静とストレス・モードの間で切り換えることができる。ストレス・モードは、たとえば、運動または薬理学上のストレス(血管拡張)によって導入される。これは、特に心臓用途における組織の生存能力、組織の応答などについての貴重な情報を与えることができる。
【0035】
他の実験パラダイムを変えることができる。たとえばグローバル酸素供給などを、呼吸する大気を修正することにより変えることができる。これによりたとえば、腫瘍の識別または特徴付けのための追加的な情報が得られる。組織応答は、超偏極されたサブ・ボーラスの個々の適用と適用の間で、異なる化学物質、酵素、非超偏極代謝産物の消化系統への進入などにより、影響されることがある。このようにして、生体内システムの受容探査(receptive probing)が、診断(diagnoses)と、療法の段階分類(therapy staging)と、一般的な組織特徴付け(tissue characterization)の応答とについての情報を送達しうる。
【0036】
本発明のあるさらなる実施形態によれば、本方法はさらに、超偏極された造影剤の個々の投与量を継続的に提供することを含み、本方法は、動的核偏極装置の偏極領域において試料を冷却するために、該動的核偏極装置の低温保持装置において未偏極の造影剤試料を受け取ることを含む。好ましくは、上記の装置がこの目的のために使用されてもよい。前記装置の低温保持装置において前記未偏極の造影剤試料を受け取ったのち、超偏極された試料を受け取るために、前記装置の偏極領域中の冷却された試料に磁場が加えられ、磁場が提供されるのと一緒に核偏極放射が偏極領域に、すなわち前記試料に加えられる。
【0037】
さらに、本方法は、前記未偏極試料を連続的に受け取り、前記未偏極試料を核スピン偏極のための偏極領域に搬送し、結果として得られる超偏極した試料を前記超偏極した造影剤の前記個々の投与量として提供するための試料搬送システムを提供することを含む。
【0038】
これは、オブジェクトに適用するための化合物の加熱の際の超偏極の減衰という決定的な時間因子が迂回されるので、オブジェクトに対するほとんど連続的なサブ・ボーラス適用を実行することを許容する。要求があったとき、超偏極された造影剤の多くのサブ・ボーラスが利用可能であり、超偏極のための試料の準備の開始とサブ・ボーラスのオブジェクトへの適用と磁気共鳴撮像プロセスの実行との間にタイミングを取る特別な必要はない。逐次的に複数のいくつかの試料を、またさらには同時にいくつかの試料を並列に偏極させるバッチ・プロセスを用意することは、複数ショットを許容し、そのため、注入パラダイムなどのための新たな試料適用の完全な範囲が可能にされる。この概念は、連続的な偏極および投与に拡張することさえできる。代謝および細胞機能に対するさらなる洞察を得るために、同時に複数の核を撮像する必要があることもある。この目的のため、偏極器は、同時に13Cおよび15Nのようないくつかの各種を扱うよう、用意されることができる。
【0039】
現在まで、たとえばDNPを使って偏極された試料は、1K程度の温度の液体ヘリウムに浸された凍結液滴を形成し、その後、4.2Kのゾーンで急速溶解されて液相で投与されていた。ヘリウムおよびコストを節約する目的で、偏極自身のためおよび上記で「試料保管領域」として言及された中間保管所を運用するために、閉サイクル冷却器が適用されることができた。この場合、閉サイクル冷却器は、ポンプされたヘリウムを再凝縮し、それによりヘリウムの蒸発損〔ボイルオフ〕をゼロにするまたは少なくとも劇的に少なくすることを可能にする。
【0040】
本発明のあるさらなる実施形態では、本方法はさらに、前記ボーラスを一時に適用するときに、所望される空間分解能およびスペクトル分解能をもってオブジェクトの所望される磁気共鳴画像を取得するために必要とされる造影剤のボーラス濃度を決定する段階を含む。さらに、個々のサブ・ボーラスの濃度が選択され、該個々のサブ・ボーラスの前記濃度は決定された前記ボーラス濃度未満である。
【0041】
すでに上記で論じたように、これは、関心領域においてモニタリングされるべき代謝産物のピーク濃度を平坦にし、このようにして、実際の観察時間窓を長くすることができる。
【0042】
本発明の方法は、現在臨床的に使われている大半のMR装置において実行できることが有利である。この目的に向け、前記MR装置および好ましくはまた上記の動的核偏極装置を上記で説明した本発明の方法ステップを実行するよう制御するコンピュータ・プログラムを利用することが必要になるだけである。コンピュータ・プログラムは、前記MR装置および/または前記動的核偏極装置の制御ユニットにインストールするために、データ担体上に存在していてもよいし、データ・ネットワークに存在していてもよい。したがって、本発明は、上記の方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ・プログラム・プロダクトにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
添付の図面は、本発明の好ましい実施形態を開示する。しかしながら、図面は、本発明の限界を定義するものとしてではなく、単に例解の目的のために描かれていることは理解しておくべきである。
【図1】超偏極化された試料の連続的な提供のための動的核偏極装置を示す図である。
【図2】試料を動かすためのつかみ機構をさらに有するDNP装置を示す図である。
【図3】循環エレベーター型システムを有する縦型DNP装置を示す図である。
【図4】給電に対する電磁結合をもつ試料の個別の共振器を示す図である。
【図5】別個のマイクロ波発生器によって給電される個々の試料のグループを示す図である。
【図6】共振器構造のための異なる表面構造を示す図である。
【図7】通常のボーラスおよび細分ボーラスの適応の違いを示す図である。
【図8】一連のサブ・ボーラス適用について、ボーラスとMR信号取得の間の遅延を変えてボーラス適用方法を示す図である。
【図9】繰り返されるボーラスの間のオブジェクト状態の変化を示す図である。
【図10】MRデータ取得プロセスにおける、偏極器と、MRシステムと、超偏極試料の撮像されるべきオブジェクトへの提供を制御するコンピュータ・ユニットとの間の対話を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、超偏極試料114の連続的な提供のための動的核偏極装置116を示している。本装置は、超偏極化されるべき試料の核スピンの偏極のための偏極領域106を有する。超偏極の目的のために、本システムは偏極領域106において試料114を冷却するための低温保持装置102を有する。さらに、超偏極化された試料を受け取るために、偏極領域106に核偏極放射を提供するために、放射源112が設けられる。偏極器磁石の十分均一な領域106内部では、コンベヤー・ベルト104が動作させられる。これは、マイクロ波または光の照射の領域に試料を供給し、該試料を専用の保管領域108に移す。共振器は図示しておらず、試料ホルダーに統合されているまたは試料ホルダーを囲んでいると考えることができる。
【0045】
コンベヤー・ベルトおよび試料搬送は手動で制御されてもよいし、あるいはコンピュータおよび対応するコンピュータ・プログラム・プロダクトを使って操作されてもよい。ベルトは、電気的または機械的な駆動部を使って動かされてもよい。
【0046】
均一磁場は磁石100によって生成され、磁場は、偏極領域106に、また試料保管領域108に均一に提供される。
【0047】
図1に示した実施形態では、偏極領域は試料保管領域上に延びている。換言すれば、超偏極化された試料を受け取るために試料を照射するときに試料に与えられるのと同じ磁場が、試料保管領域において超偏極状態で試料を保管するために使われる。それにより、偏極領域の一部は核偏極放射の提供のために使われ、均一な磁場はこのエリア上を試料保管領域まで延びる。
【0048】
図2は、試料114がいかにして磁石システム100中に入れられ、磁石システム100から取り出されるかの実現を示している。ここでもまた、コンベヤー・ベルト104が試料を規定の位置に搬送するために使用され、つかみ具202を有するつかみ機構200が、試料114を置いたりどけたりすることを許容するために用意されている。この機構200は、高磁場中に留まっている間に、すなわち液体ヘリウムに浸されてはいないが低温保持装置内で、試料を溶解するための熱い液体を注入する可能性を備えていてもよい。
【0049】
連続的な超偏極のために、偏極器磁石は、二つの側からのアクセスを許容する低温保持装置内に位置されていてもよい。試料はたとえば第一のポートを通じて自動的に導入される。これは、逐次的に、あるいはバッチ・モードで実行されうる。すなわち、同時にいくつかの試料のバッチが導入されてもよい。次いで、それらの試料は低温保持装置内で手動でまたは自動的にコンベヤー・ベルトに載せられ、照射領域を通じて適正な偏極を保証する速さで動かされてもよい。偏極された試料は、第二のポートを通じて、磁石を出る、あるいは磁石内で溶解される。こうして、連続的または準連続的な超偏極が実現される。
【0050】
このコンテキストにおいて、「連続的な(continuous)提供」とは、超偏極された試料の準連続的な提供をも含んでいてもよいことをはっきりさせておく必要がある。たとえば、超偏極の目的のためには、試料は、あらかじめ定義された期間、偏極放射が試料に加えられるエリアに留まっていてもよい。未偏極の試料は所与のサイクル時間で第一のポートに連続的に供給され、偏極された試料は同じサイクル時間において第二のポートにおいて連続的に受け取られる。しかしながら、試料が実際に必要とされていない場合、コンベヤー・ベルトを含む搬送システムは、試料を一時的に保管し、要求があったときに第二のポートで提供するために、超偏極された試料を試料保管領域108に自動的に動かすよう適応されていてもよい。
【0051】
図3は、循環エレベーター型の搬送システムを用いる実施形態を示している。いくつかの試料114がループ302をなして本システムで巡回し、一つまたはいくつかの偏極領域を用いて偏極される間、部分的にまたは完全に偏極された試料114を遅延した使用のために保管するために、専用の保管ループ300が利用可能である。ここでもまた、低温保持装置にロードし、試料を除去するために、好適なピック・アンド・プレース機構200が使用されうる。ピック・アンド・プレース機構200は、必要に応じて液体を注入し、試料を解凍するための備えをされていてもよい。
【0052】
上記の記述から、低温保持装置が、偏極領域および試料保管領域両方にわたって延在するのが好ましいことが明らかになる。好ましくは、この目的のために、低温保持装置の冷却空間が偏極領域および試料保管領域にわたって延在するよう単一の閉じた低温保持装置システムが使われる。
【0053】
図4は、試料担体402内に担持される試料114を示している。試料担体402をコンベヤー・ベルト104に固定し、取り付けるために、コンベヤー・ベルト104は担体ホルダー406を有していてもよい。
【0054】
コンベヤー・ベルト104の代わりに、DNP装置内で試料を搬送するために好適な他の任意の型のコンベヤーが使用されてもよいことを注意しておく必要がある。これは、たとえば、これに限られないが、機械的なつかみ具を有するロボット・アームのシステムであってもよく、あるいは単に、個々の担体ホルダーがケーブルによって相互接続されたケーブル・ベースのシステムであって、ケーブルが、ケーブルを引っ張りそれにより担体ホルダーを動かす駆動システムに接続されていてもよい。
【0055】
マイクロ波または光放射のような放射を効率的に試料に与えるために、好ましくは、試料114は共振器中に位置され、該共振器がマイクロ波の場(すなわち放射)の増強器として作用する。この目的のために、各共振器は、担体ホルダーの一部または試料担体の一部であってもよい。図4に示される実施形態では、共振器は共振器構造400として試料担体402上に含まれる。結果として、各試料は独自の受動共振器を有する。個々の試料の局所的な共振器は、アンテナ112の到来する照射マイクロ波と結合する。マイクロ波の場は、誘導性または容量性の結合を介して共振器に供給されてもよい。これは図5に詳細に示されている。
【0056】
図5では、試料担体において受け入れられる個々の試料114のグループが、別個のマイクロ波発生器によってフィードされる。マイクロ波(または一般に放射)は、ストリップラインまたは導波路112によって局所的共振器に供給される。ストリップラインは、横波電磁波(transverse electromagnetic)伝達線媒体である。各試料は独自の受動共振器を有するので、個々の各試料のところに存在する電磁場は、各共振器によって与えられる場である。
【0057】
共振構造400としては、実際的な実現のためにさまざまな可能性が存在する。図6aに示されるように、ダイポール・アレイが使用されてもよい。これは、たとえば印刷回路基板製造技法により製造が容易という利点がある。試料担体の材料が印刷回路基板材料である場合、ダイポール・アレイ600は試料担体の外側または内側表面上に、標準的なエッチング技法によって生成されてもよい。結果として、そのような構造は安価で高速な仕方で生産でき、使い捨ての試料担体を提供することが可能となる。
【0058】
短い伝導線として実現される個々のダイポールによってダイポール・アレイを提供する代わりに、図6のaに示される構造と逆の構造を提供することも可能である。すなわち、中断を有する金属被覆された表面が提供されてもよい。これもダイポールのアレイを与える。
【0059】
試料担体について印刷回路基板材料を使う代わりに、低い熱容量をもち、低損失の誘電体である任意の種類の材料が使用されうる。
【0060】
低損失誘電体上に伝導構造を作成するための導体材料として、低い熱容量をもち伝導性の高い金属が使用されるべきである。例は、たとえば、銀または金である。試料担体上の共振構造を与えるために必要とされる金属材料の量はごく微量なので、試料担体の全熱容量は最小化され、よって試料を低温保持装置に移すときのそれぞれの冷却剤消費が最小化される。さらに、共振器は場の増強器として作用するので、入射マイクロ波パワーも下げることができる。
【0061】
図6のbは、さらなる共振器構造を示している。この構造は、半ループ602を有する。しかしながら、電磁場を局所的に高めるために入射電磁場に結合する任意の種類の共振構造が使用されうることを注意しておく必要がある。それは、これに限られないが、渦巻き、対数.周期的、方形渦巻きまたは他の任意の種類のアレイといったものである。
【0062】
すでに上記で詳細に論じたように、上述したコンポーネント、すなわち試料担体およびDNP装置は、たとえば造影剤のような超偏極された試料の連続的または準連続的な提供を実現する可能性を提供し、「新たに」超偏極された剤を投与のために連続的または準連続的に供給することによって、それぞれの臨床上の作業フローは著しく改善されることができる。
【0063】
そのような臨床上の作業フロー改善の一例が図7との関連で論じられる。図7のaでは、超偏極された試料、たとえば超偏極された造影剤の現状技術のボーラス適用が示されている。超偏極された剤がたとえば生命体の血流に加えられる場合、初期ボーラス700は、血流力学的応答関数(右)702と畳み込みされる。対照的に、図7のbに示されるように、細分ボーラス適用704、すなわち超偏極された造影剤の一連のサブ・ボーラス704の適用のため、関心領域における血流力学的応答関数708は増大する。
【0064】
超偏極された造影剤の一連のサブ・ボーラスを生命体に適用する好適さの例は次のようなものである:全身の腫瘍検出および/または特徴付けを実行するためには、全身または非常に大きな視野の適用が実行されるべきである。しかしながら、所望される視野(FOV: field of view)がスキャナの均一性体積より大きい場合、マルチ・ステーション(multi-station)超偏極MR撮像の実行が必要である。この目的のために、マルチステーション磁気共鳴撮像におけるMRデータ取得が種々のスキャン・セグメントにおいて実行され、所与のスキャン・セグメントについてはテーブルは静止している。一つのセクションについてデータ取得が実行されたら、テーブルは、体の異なる部分をスキャンする次のセクションに動かされてもよい。上記の方法により、造影剤の細分された超偏極サブ・ボーラスは連続的にまたは準連続的に関心領域に加えられることができ、最終的に、個々のセクションの部分的画像の組み合わせによって、これまでにない高品質でオブジェクトの最終的な磁気共鳴画像を受け取ることができる。
【0065】
超偏極された造影剤の一連のサブ・ボーラスを加えるためのさらなる例が図8に示されている:図8では、組織の代謝または外部トリガーに対する反応の小さな変化が調査される。外部刺激としては、酸素濃度を高めた大気と酸素濃度を高めていない大気との間の反復的な変化を選んでもよい。これは、ほぼ10〜100回、反復的にオン/オフ・モードの間で切り換えることにおいて実行されてもよい。この変化系列〔パラダイム〕に同期して、心ゲーティングされた超偏極されたMRが実行される。それに先立って小さいがはっきりしたボーラス、すなわちサブ・ボーラス704の適用が行われ、対応するMR実験を許容する。反復的な実験の組において、MRデータ取得800のタイミングが、ボーラスの時間に対して遅延させられる。これにより、ボックスカー積分器モードとも呼ばれる、高い時間的分解能に達することが可能となる。実験後、追加的な統計データ解析段階が再構成された時系列に対して実行される。解析は、基本的には、ボクセル毎および/またはスペクトル毎のMRデータにおける刺激変化系列〔パラダイム〕の相関からなる。この測定アプローチは、非常に小さな信号変化の同定を許容する。
【0066】
論じたアプローチのためには、MRデータ取得800のタイミングを、サブ・ボーラス適用のタイミングに関して固定されたままに保つことも可能であることを注意しておく必要がある。
【0067】
超偏極された試料の連続的もしくは準連続的な提供または要求時の提供からどのようにして利益を得るかのさらなる例が図9に示されている。ある腫瘍をより詳細に特徴付けるために、13C超偏極化されたピルビン酸塩/エステルの消化をモニタリングするためにMRIが使用されてもよい。この目的のため、高速の13C分光撮像が使われる。さらなる情報を得るために、参照符号900で示されるように、検査対象オブジェクトの条件を変化させながら細分ボーラス注入704が適用されてもよい。ピルビン酸塩/エステルの第一のボーラスおよび対応する撮像後、特別な化学物質または酵素が、適切な注入またはカテーテルによって、全身的な仕方でまたは非常に局所的に、身体に投与される。この酵素または化学物質は、非常に特定的な腫瘍細胞において特定的な代謝経路をブロックすると知られている。第一のボーラスが当該細胞に到達するのに十分だが潜在的な酵素ウォッシュアウト(wash-out)を避けるのに十分短い時間後、ピルビン酸塩/エステルの第二のボーラス704が投与され、続いて、対応する13C撮像800が行われる。各ボーラス提供後にデータ取得800によって取得される各MR画像の解析に基づいて、腫瘍をその病期上で精密に同定することが可能である。
【0068】
図10にさらに示されるように、DNP装置116と、超偏極された物質の量と、生理へのゲーティングおよびトリガーを含むオブジェクト1004(たとえば患者)へのそれぞれの投与時間とによる試料生産プロセス全体が、それぞれのコンピュータ・プログラムを実行する対応するコンピュータ1000によって監督されてもよい。前記コンピュータ1000はMRIシステム1002およびDNP装置100を制御してもよい。すでに上で論じたように、DNP装置は好ましくは、搬送システムと、超偏極された試料を保管し要求があったときに該資料を提供するための試料保管領域108とを有していてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的に核偏極された核スピンを含む超偏極した試料の連続的なまたはバッチ毎の提供のための動的核偏極装置であって、前記核スピンを偏極させて前記超偏極した試料を生じるための偏極領域を有しており、当該装置はさらに:
・前記偏極領域中で前記試料を冷却するための低温保持装置と、
・前記偏極領域中で冷却された試料に磁場を提供する磁石と、
・磁場提供と並行して、前記超偏極した試料を受け取るために前記偏極領域に核偏極放射を提供する放射源と、
・連続的に未偏極試料を受け取り、該未偏極試料を核スピン偏極のための前記偏極領域に搬送し、結果として得られる超偏極した試料を提供するための、前記磁場内の、特に前記磁石の均一場領域内の試料搬送システムとを有する、
装置。
【請求項2】
前記搬送システムがコンベヤーを有し、該コンベヤーは、前記試料を受け取り、前記試料を搬送するよう適応された試料担体を保持する第一の担体ホルダーを有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
各第一の担体ホルダーが、その試料位置において前記偏極放射を高める受動共振器を有する、請求項2記載の装置。
【請求項4】
各試料担体が、その試料位置において前記偏極放射を高める受動共振器を有する、請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記超偏極された試料を保管する試料保管領域をさらに有する請求項1記載の装置であって、前記低温保持装置はさらに前記試料保管領域内の試料を冷却するよう適応され、前記磁石はさらに前記試料保管領域に磁場を与えるよう適応され、前記試料搬送システムはさらに、試料を偏極した状態で保存して、結果として得られる超偏極された試料を要求があったときに個別に提供するため、前記偏極領域から前記試料保管領域に超偏極された試料を搬送するよう適応される、装置。
【請求項6】
前記試料保管領域はコンベヤー・ループを有し、該コンベヤー・ループは、試料担体を保持する第二の担体ホルダーを有する、請求項5記載の装置。
【請求項7】
動的核偏極装置のための試料担体であって、当該試料担体は偏極されるべき試料を受け取るよう適応されており、当該試料担体は、試料の核スピンを偏極させる前記装置によって使用される偏極放射を試料位置において高める受動共振器を有する、試料担体。
【請求項8】
前記共振器は誘電体を有し、該誘電体は金属性の導体を担持し、該金属性の導体が前記受動共振器を形成する、請求項7記載の試料担体。
【請求項9】
前記受動共振器が、前記金属性の導体によって形成される個別の共振器のアレイによって形成される、請求項8記載の資料担体。
【請求項10】
磁気共鳴撮像によってオブジェクトの磁気共鳴画像を取得する方法であって:
・超偏極された造影剤の一連のサブ・ボーラスを前記オブジェクトに適用する段階と、
・各サブ・ボーラスの適用後に、前記オブジェクトの部分的な磁気共鳴画像を取得する段階と、
・それら部分的な画像を組み合わせて前記オブジェクトの最終的な磁気共鳴画像を得る段階とを含む、
方法。
【請求項11】
前記ボーラスを一度に適用するときに、所望される空間分解能およびスペクトル分解能をもってオブジェクトの所望される磁気共鳴画像を取得するために必要とされる前記造影剤のボーラス濃度を決定する段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記超偏極された造影剤の個別の投与量を連続的に提供する段階をさらに含む、請求項10記載の方法であって:
・動的核偏極装置の偏極領域において試料を冷却するために前記動的核偏極装置の低温保持装置において未偏極の造影剤試料を連続的に受け取る段階と、
・前記偏極領域内の冷却された試料に磁場を与える段階と、
・超偏極された試料を受け取るために、磁場を与えるのと並行して、前記偏極領域に核偏極放射を与える段階とを含み、
前記未偏極試料を受け取り、該未偏極試料を核スピン偏極のための前記偏極領域に搬送し、結果として得られる超偏極した試料を前記超偏極された造影剤の個別の投与量として提供するために、前記磁場内で、特に前記磁石の均一場領域内で、試料搬送システムが使われる、
方法。
【請求項13】
前記オブジェクトが生命体であり、当該方法がさらに、各サブ・ボーラス適用後に前記生命体の代謝状態の変化を誘起する段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
請求項10ないし13のうちいずれか一項記載の方法段階を実行するためのコンピュータ実行可能命令を有するコンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a)】
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【図6b)】
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【図7a)】
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【図7b)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−516608(P2013−516608A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546545(P2012−546545)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【国際出願番号】PCT/IB2010/056092
【国際公開番号】WO2011/080697
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】