説明

動的脊椎安定化装置

少なくとも1つの付勢部材、例えばバネを含む動的脊椎安定化装置が、提供される。付勢部材は、約150ポンド重/インチ〜450ポンド重/インチの力を供給するように構成されており、前記第1の椎弓根と第2の椎弓根と間の相対的移動距離を約1.5mm〜5mmの距離に制限する。脊椎安定化装置はまた、治療される脊椎の体節に対する回転の中心の位置への影響を最小化する。記載される範囲の抵抗力を提供し、移動距離を記載される範囲に制限することにより、安定化装置が、傷害前の運動水準の範囲に厳密に近似する運動値の範囲が反映されるような所望の水準の安定化を、提供することが分かっている。加えて、抵抗力の水準は、治療された脊椎の体節の回転の中心の位置を、その正常な解剖的構造の位置から先に得られた水準まで変えるほど高くはなく、それにより安定化装置が後側にあるにもかかわらず、実質的に妨げられることのない角運動を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎の安定化のための方法及び器具に関する。より具体的には、本発明は、所望の水準及び/又は程度の、脊椎の運動を、生理的に保持又は維持しながら、所望の水準の安定化を脊椎に供給する、脊椎安定化装置、システム及び/又は器具(並びに関連する方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
腰痛は、産業社会を悩ます最も費用のかかる疾患の一つである。風邪を除き、それは、いずれの他の病気よりも多く、医者への受診訪問の割合を占める。腰痛の範囲は広く、強烈な何もできなくなるほどの痛みが消失する期間から、慢性的な痛みの度合いに変化するまでに及んでいる。腰痛に有効な控えめな治療として、冷湿布、理学治療、麻薬、ステロイド及びカイロプラクティックが挙げられる。患者が控えめな治療のすべてをし尽くすと、外科的な選択は、神経根への圧力を軽減するための比較的少数の手段であるマイクロ摘出術から、疼痛の水準での脊椎の運動を取り除く固定術まで及ぶ。
【0003】
各年、合衆国では、200,000を超える患者が腰椎骨固定術を受ける。固定術は、現代の約70パーセント有効であるが、これらの成果の上がる手段にさえ、可動性の範囲の縮小、これらのレベルで変性を加速する、脊椎の隣接するレベルに掛かる負荷の増大、を含む結果となる。更に、合衆国で七百万を超えると見積もられている著しい数の背痛患者は、それらの症状を緩和することに適切又は有効、とは限らない手段を、敢て行うよりも、むしろ慢性の腰痛にただ耐えている。
【0004】
新たな治療様式、総称して可動性維持装置が、これらの限界を解決するために現在開発されている。いくつかの有望な治療は、髄核、椎間板、又は椎間関節、の置換術の形態である。他の可動性維持装置は、いずれの脊椎の組織を取り除くことなく、傷ついた又は変性した脊椎の動的な内部の安定化を提供する。この概念の主要な目標は、正常に近い脊椎の機能を維持しながら疼痛を防止するための脊椎の安定化である。2つの型の可動性維持装置の主な違いは、置換装置が、変性した解剖学的構造体を置き換えるという運動を容易にする目標のために利用されるのに対して、動的な内部の安定化装置が、いかなる組織を取り除くこともなく、異常な脊椎の運動を、安定化させかつ制御する目標のために利用されることである。
【0005】
10年以上前に腰痛の仮説が提唱され、その中で、脊椎システムは、脊柱(椎骨、椎間板及び靭帯域)、脊柱を取り巻く筋肉、及び日常生活の様々な活動中に脊椎を安定化させるのを援助する神経筋制御ユニットから構成されるものとして、概念化された。パンジャビM.M.(Panjabi M.M.)著「脊椎の安定化システム 第1部 機能、機能障害、順応、及び強化(”The stablilization system fo the spine. Part I. Function, dysfunction, adaptation, and enhancement.”)」(脊椎疾患誌5(4)(J Spinal Disord 5 (4)):頁383〜389、1992a)。この仮説からの推論は、脊柱が傷害されるか又は変性するときには、強い脊椎の筋肉が必要とされることである。このことは、中立の姿勢で立っている間はとりわけ正しかった。パンジャビM.M.(Panjabi M.M.)著「脊椎の安定化システム 第2部 中立帯域及び不安定化仮説(”The stablilization system fo the spine. Part II. Neutral zone and instability hypothesis.”)」(脊椎疾患誌5(4)(J Spinal Disord 5 (4)):頁390〜397、1992b)。換言すると、腰部患者は、十分な良好に協調された筋力を有する必要があり、必要な場所の筋肉を強化して訓練することで、前記筋肉が、中立の姿勢で立っている間最大の保護を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
動的安定化装置(固定術ではない)装置は、背部患者の傷ついた(傷ついた又は変性し、機械的一体性が低下した)脊椎を補助するために、ある一定の機能性を必要とする。具体的には、装置は、傷ついた脊椎に、特に機械的補助が最も必要とされる中立帯域内に、機械的補助を提供しなければならない。「中立帯域」は、脊椎の低剛性の(曲がりにくい)領域、又は、脊椎体節のモーメント−回転曲線の先端領域を指す(図1を参照)。パンジャビM M(Panjabi M M)、ゲールV K(Goel V K)、タナカ K.(Tanaka K.)著 バイオメカニクスでのボルボ賞(Volvo Award in Biomechanics)1981年。「腰脊椎靭帯域内の生理的歪み、生体外バイオメカニクス研究(Physiological Strains in Lambar Spinal Ligaments, an in vitro Biomechanical Study.)」(脊椎7(3)(Spine 7 (3)):頁192〜203、1982)。中立帯域は、一般に、中立姿勢の周辺の運動範囲の中央部分として定義され、この範囲では、脊椎の軟組織と関節面とが脊柱の運動にあまり抵抗力を与えない。この概念は、図1に示されるように、無傷の脊椎及び傷ついた脊椎の、負荷‐変位曲線、又は、モーメント‐回転曲線上にうまく視覚化されている。曲線は、非線形であり、つまり脊椎の機械的特性が、角のある部分の量及び/又は回転量に併せて変化することに、留意すること。それぞれ屈曲及び伸展での脊椎のふるいまいを表すために、正側及び負側における曲線を考慮する場合、各点での曲線の傾斜は、脊椎の剛性を表す。図1に示されるように、中立帯域は、運動の範囲の中で低剛性の領域である。
【0007】
実験は、脊柱の損傷の後で、又は、変性が原因のために、中立帯域並びに運動の領域が増加することを示している(図1を参照)。しかしながら、中立帯域は、対応する無傷の値の百分率として記載されるとき、運動の範囲が増加するよりも大きな程度で増加する。これは、中立帯域が、運動の範囲よりも、脊椎の損傷及び不安定化のより良い尺度であることを示唆する。臨床試験はまた、運動の範囲の増加が、腰痛にはそれほど相互に関連しないことを見出した。したがって、不安定な脊椎は、特に中立帯域で安定化されることが必要である。動的内部安定化装置は、脊椎と併せて動くように順応的でなければならず、したがって椎間板、関節面、及び靭帯域に、栄養上良好な状態を維持するために必要な、正常な生理的運動及び負荷を与える。この装置はまた、各個別の患者に対して所望の姿勢を達成するために、個々の患者の異なる物理的な特徴及び異なる骨格に、適応しなければならない。実に、脊椎の安定化を提供しながら、脊椎に対して実質的に制限のない角運動を可能にすることが非常に望ましい。
【0008】
上記のことに留意して、当業者は、従来技術の装置の不十分な点を克服する脊椎安定化装置、システム及び/又は器具に対する必要性が存在することを理解するであろう。本発明は、所望の水準及び/又は程度の脊椎の運動を生理的に保持及び/又は維持しながら、所望の水準及び/又は程度の安定化を供給する脊椎の安定化のための有利な装置、システム、器具及び関連する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の目的は、実質的に制限されることのない脊椎の角運動を可能にすると同時に、所望の水準の脊椎の安定化を提供する脊椎安定化のための方法を提供することである。本開示の有利な方法は、動的安定化装置を脊椎の椎骨に固定して、動的安定化装置が取り付けられる脊椎の領域に、機械的な補助を抵抗力の形態で提供することにより達成される。本開示の例示的な実施形態において、脊椎がその中立帯域周辺にあるときには、より大きな機械的補助が提供され、脊椎がその中立帯域から離れて曲がるときには、より少ない機械的補助が提供されるように、抵抗力が加えられる。
【0010】
本発明のさらなる例示的な実施形態において、開示されている脊椎安定化の方法は、隣接する椎弓根の間の予め定められた移動距離(即ち線形移動)に適応しながら、予め定められた水準の抵抗力を供給する脊椎安定化装置を提供することを含んでいる。本明細書で開示される有利な臨床結果を達成するために、開示されている方法で使用するための脊椎安定化装置は、約150ポンド重/インチ〜約450ポンド重/インチの範囲で予め定められた水準の抵抗力を提供するように構成されている。加えて、開示されている方法で使用するための脊椎安定化装置は、約1.5mm〜約5mmの予め定められた移動距離を可能にするように構成されている。
【0011】
本発明はまた、予め定められた移動距離(即ち隣接する椎弓根間の線形移動(Δx))に適応すると同時に、予め定められた水準の抵抗力を提供する有利な動的安定化装置、システム及び/又は器具を提供する。本開示の例示的な実施形態において、開示されている脊椎安定化装置、システム又は器具は、後側への配置に適しており、約150〜約450ポンド重/インチの、好ましくは約200〜約400ポンド重/インチの範囲の予め定められた水準の抵抗力を提供し、かつ約1.5mm及び約5mmの、好ましくは約2mm〜約4mmの予め定められた移動距離を可能にするように構成されている。
【0012】
本開示の例示的な実施形態にしたがって、動的安定化装置、システム又は器具は、脊椎の運動の制御下で動き、傷ついた脊椎の中立帯域に実質的に対応する中央帯域内に、増大された機械的補助を提供する。例示的な動的安定化装置は、補助アセンブリと、補助アセンブリに結合される抵抗力アセンブリと、を備えている。抵抗力アセンブリは、抵抗力を生成して、中央帯域内の動作に、より大きな抵抗力を加え、中央帯域を越える動作に、より少ない抵抗力を加える。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、以下の詳細な記載から、本発明のある実施形態を説明する付属の図面と関連させて検討されるときに明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の脊椎安定化装置、システム及び器具(並びに関連する方法)の例示的な実施形態は、本明細書に開示される。しかしながら、開示される実施形態が本発明の単なる例示であり、様々な形態で実施され得ることを理解すべきである。したがって、本明細書で開示される詳細な内容は、限定して解釈されるべきものではなく、むしろ当業者が開示される、装置、システム及び器具(並びに関連する方法)を製造及び/又は利用することを可能にする例示的な教示として解釈されるべきである。
【0015】
図2、3a〜c及び4を参照して、脊椎安定化装置のための方法及び器具が、開示される。本発明の例示的な実施形態によれば、脊椎安定化方法は、隣接する椎骨12、14の間に内部の動的脊椎安定化装置10を固定し、それにより動的脊椎安定化装置10が取り付けられる脊椎の領域に弾性抵抗力の形態で機械的補助を提供することにより達成される。弾性抵抗力は変位の関数として働き、脊椎が中立帯域にあるときには、より大きな機械的補助が提供され、脊椎が中立帯域を越えて曲がるときには、より少ない機械的補助が提供される。用語「弾性抵抗力」は、本明細書の全体にわたって使用されているが、抵抗力の他の形態が、本発明の趣旨又は範囲から逸れることなく使用されることもある。
【0016】
当業者が確実に理解できるように、上記のように、「中立帯域」は、脊椎の低剛性の領域又は脊椎の体節のモーメント‐回転曲線の先端領域を指すものとして理解される(図2を参照)。つまり、中立帯域は、椎骨間の動作への抵抗力が最小である、脊椎体節の中立静止位置の周辺の弛緩領域を、指すものと考えられる。中立帯域の範囲は、脊椎の安定化を画定する上で極めて重要であると考えられる。パンジャビ,M M.(Panjabi, M M.)著「脊椎の安定化システム。第2部 中立帯域及び不安定化仮説。(The stabilizing system of the spine. Part II. Neutral zone and instability hypothesis.)」脊椎障害誌(J.Spinal Disorders)1992;5(4):頁390〜397。
【0017】
実際に、パンジャビ博士(Dr. Panjabi)は、「椀の中の玉」の類推を利用して、脊椎安定化に関連する負荷変位を以前に記載していた。この類推によると、その椀の形状は、脊椎の安定化を示す。椀がより深くなることは、脊椎がより安定することを表し、一方、椀が浅くなることは、脊椎がより安定しなくなることを表す。パンジャビ博士(Dr. Panjabi)は、脊椎の傷害がない者には、正常な範囲の動作が原因で正常な中立帯域(内椎骨の運動に対する抵抗力が最小である、運動の範囲の部分)がある、つまり脊椎痛がない、ことを先に仮定した。この場合、椀は、深すぎず、浅すぎない。しかしながら、解剖的構造に傷害が起こると、脊柱の中立帯域は増大し、玉はより大きな距離を越えて自由に移動する。この類推により、椀が浅くなると玉が安定しなくなり、結果として、この増大した中立帯域が原因で疼痛となる。
【0018】
一般に、椎弓根スクリュー16、18は、当業者に周知の良好に調整された身近な外科的手段を用いて、脊椎の椎骨12、14に動的脊椎安定化装置10を取り付けるために使用される。好ましい実施形態によれば、当業者が確実に理解するように、一対の対向する安定化装置が、脊椎に加えられる負荷を均衡するために一般に使用される(図3cを参照)。動的脊椎安定化装置10は、背部痛患者の傷ついた(傷ついた及び/又は変性した)脊椎を補助し、彼女/彼が日常生活を行うことを援助する。動的脊椎安定化装置10は、特に中立帯域の領域内の中立姿勢の付近の脊椎の運動に、制御された抵抗力を提供することにより、そのようにする。脊椎が前方に曲がる(屈曲)とき、安定化装置10は引き伸ばされ(図3dを参照)、脊椎が後方に曲がる(伸展)とき、安定化装置10は圧縮される(図3eを参照)。
【0019】
動的脊椎安定化装置10により提供される変位に対する抵抗力は、非線形であり、個人の中立帯域に対応するような中立帯域で最大であり、つまり安定化装置10の中央帯域は、脊椎を維持するための高度の機械的補助を提供する。個人が中立帯域を越えて動くとき、抵抗力の増加率はより適度な水準へ減少する。結果として、個人は、中立帯域内で移動している間は、動作に対するより大きな抵抗力(より大きな増分抵抗力)を受ける。
【0020】
本開示の例示的な実施形態によれば、動的脊椎安定化装置10の中立帯域は、つまり脊椎安定化装置10が最も大きな抵抗力を動作に提供する運動の範囲は、各個別の患者の中立帯域に適応するように、手術のときに調整可能である。実際に、動的脊椎安定化装置10により提供される動作に対する抵抗力は、手術前に及び手術中に調整可能である。この機能性は、個々の患者の傷ついた脊椎に適応するように動的脊椎安定化装置10の機械的特性を調整することを援助する働きをし得る。動的脊椎安定化装置10の長さはまた、手術中に調整可能であり、個々の患者の解剖的構造に適応し、所望の脊椎の姿勢を達成する。本開示の例示的な実施形態によれば、動的脊椎安定化装置10は、患者の変化する要求に適応するように、その中立帯域を調整する外科的手段を用いて、手術後に再調整できる。
【0021】
例示的な実施形態において、玉継ぎ手36、38は、動的脊椎安定化装置10を椎弓根スクリュー16、18に連結する。上記の実施形態での動的脊椎安定化装置10と椎弓根スクリュー16、18との接合は、遊離性であり、回転が抑制されていない。したがって、まず第1に、脊椎は屈曲及び湾曲の生理的運動の全てが許容されており、第2に、動的脊椎安定化装置10及び椎弓根スクリュー16、18は、有害な曲げ及びねじれの、力又はモーメントから保護されている。本発明の例示的な実施形態によれば、玉継ぎ手が開示されているが、他の連結構造、特に安定化装置と椎弓根スクリューとの間の相対的な運動の自由を手助けする連結構造が、本発明の趣旨又は範囲から逸れることなく利用されてもよい。
【0022】
玉継ぎ手36、38が安定化装置10の各端部にあるとき、曲げモーメントは、一般に脊椎から安定化装置10に移されない。更に、椎弓根スクリュー(及びしたがって脊椎)に対して安定化装置10により付与される力は、一般に、安定化構成部品、及び/又は、安定化装置10に結合される安定化アセンブリ/サブアセンブリ、に結合されるそれらの力である。以下でより詳細に記載されるように、本開示の例示的な実施形態において、上記の力は、安定化装置10に結合されるハウジング内に配置できるバネ30、32の相対的な位置決め、取り付け及び剛性を通じて与えられる。安定化装置により付与される力は、脊椎の運動により画定されるように、安定化装置10に加えられる伸長及び圧縮に、応じて、応答する。人が重い負荷を運ぶか又は持ち上げるときのような、脊椎への大きな負荷に関係なく、安定化装置10の働きに影響を与える負荷は、脊椎の負荷の結果ではなく、そして脊椎の運動の結果に依存している。安定化装置10はしたがって、独自に、脊椎の高い負荷に耐えることなく脊椎を補助/安定化することができ、本開示の教示に応じる幅の広い設計の選択を可能にする。
【0023】
開示される安定化装置10の例示的な実施における椎弓根スクリュー16、18の負荷はまた、従来技術の椎弓根スクリュー固定システムのものとは、全く異なる。大まかに言えば、椎弓根スクリュー16、18が受ける唯一の負荷は、安定化装置10からの力である。安定化装置10により生成される力は、玉継ぎ手‐椎弓根スクリューの接触面で単なる軸力に変わる。この機構/接合の配置は、従来技術の椎弓根スクリュー固定術システムと比べて、椎弓根スクリュー16、18上に位置する曲げモーメントを大いに軽減する。したがって、本開示の例示的な実施形態において、玉継ぎ手36、38のために、椎弓根スクリュー16、18内の曲げモーメントは、玉継ぎ手36、38で本質的にゼロであり、椎弓根スクリュー16、18の先端に向けて増加する。椎弓根スクリュー−骨の接触面(典型的な従来技術の椎弓根スクリュー固定装置では障害の場所であり得る)の領域は、従来技術の実施に比べてあまり応力を加えられない場所であり、したがって障害は起こりそうではない。つまり、椎弓根スクリュー16、18は、本発明による脊椎安定化装置と連結して使用されるとき、著しく少ない負荷しか坦持せず、典型的な椎弓根スクリューよりも著しく少ない応力のもとに置かれている。
【0024】
図2では、健全な脊椎に対するモーメント‐回転曲線が、本安定化装置10を併せ持つ構成で示されている。この曲線は、健全な脊椎の中立帯域で受ける動作に対する低い抵抗力を示す。しかしながら、脊椎が傷ついた場合、この曲線は変化し、脊椎は、中立帯域の拡張によりはっきりわかるように不安定になる(図1を参照)。
【0025】
本発明の例示的な実施形態によれば、脊椎の損傷で苦しむ人々は、中立帯域において増大された機械的補助の適用を通じて最適に治療される。脊椎が、中立帯域を越えて動くとき、必要な機械的補助は減少し、より適度な水準になる。特に、図3aに関して、本発明の例示的な実施にしたがって意図される、補助の分析結果が、開示される。
【0026】
3つの異なる分析結果が、図3aに示されている。開示される分析結果は、単に例であり、中立帯域内で可能な補助の要件を明らかにしている。分析結果1は、中立帯域において大きな補助を必要とする個人の例であり、そのために安定化装置の中央帯域は増大されており、安定化装置が大きな変位にわたって高い程度の抵抗力を提供する。分析結果2は、中立帯域においてあまり補助を必要としない個人の例であり、そのために安定化装置の中央帯域はより適度であり、安定化装置がより限定された変位の範囲にわたって増大された抵抗力を提供する。また、分析結果3は、中立帯域においてわずかに大きな補助のみ必要とする状況の例であり、そのために安定化装置の中央帯域は減少しており、安定化装置が実に小さな変位の範囲にわたって増大された抵抗力を提供する。
【0027】
当業者が確実に理解するように、必要とされる機械的補助及び中立帯域の範囲は、個人により変わる。しかしながら、開示される脊椎安定化システムの基本理念は、そのままであり、つまり、脊椎の不安定化に苦しんでいる個人に対して、より大きな機械的補助が、個人の中立帯域内で必要とされている。この補助は、個人の中立帯域及び開示される動的脊椎安定化装置10の中央帯域内で与えられる動作に対する、より大きな抵抗力の形態で、提供される。
【0028】
本発明にしたがって開発される動的脊椎安定化装置10は、一般に、開示される補助分析結果にしたがう機械的補助を提供する。更に、本開示の例示的な実施形態において、本安定化装置10は、同軸バネの設計を通じて調整能力性を提供する。
【0029】
より具体的には、動的脊椎安定化装置10は、脊椎が中立姿勢から任意の生理的方向に動くとき、動作に対する(好ましい実施形態にしたがってバネにより与えられる)増大された抵抗力の形態で、傷ついた脊椎に補助を提供する。上記のように、本開示にしたがって動的脊椎安定化装置10により与えられる力‐変位関係は、非線形であり、脊椎の中立帯域及び動的脊椎安定化装置10の中央帯域の周辺で抵抗力の増分がより大きくなっており、個人が中立帯域を越えて動くとき、動的脊椎安定化装置10の中央帯域を越えての抵抗力の増分が減少する(図3aを参照)。
【0030】
伸長及び圧縮の間加えられる力に対する本安定化装置10の関係は、図3aに関して更に示される。上記のように、本安定化装置10のふるまいは非線形である。負荷‐変位曲線は、伸長、中心及び圧縮の3つの帯域を有する。K1及びK2が伸長及び圧縮帯域内の剛性値をそれぞれ定義する場合、本安定化装置は、中央帯域内の高い剛性が「K1+K2」であるように設計される。安定化装置10に予め加えられている負荷に応じて、以下により詳細に議論されるように、中央帯域の幅、及び、高い剛性の領域は、それゆえに、調整又は洗練できる。
【0031】
図4に関して、本発明にしたがう例示的な動的脊椎安定化装置10が開示される。動的脊椎安定化装置10は、第1のハウジング部材22と第2のハウジング部材24とを備えたハウジング20の形態で、補助アセンブリ(組立品)を備えている。第1のハウジング部材22及び第2のハウジング部材24は、第1のハウジング部材22の開口端部26上に形成される雄ネジと、第2のハウジング部材24の開口端部28上に形成される雌ネジと、を通じて、伸縮自在な状態で接続される。この方法で、ハウジング20は、第1のハウジング部材22を、第2のハウジング部材24にねじ込むことにより完成される。上記のように、以下により詳細に議論されるように、第1のハウジング部材22と第2のハウジング部材24との間の相対的な距離は、ハウジング20内に備えられる第1のバネ30と第2のバネ32との圧縮を調節することを目的に、容易に調整できる。バネが本発明の好ましい実施形態にしたがって使用されているが、他の弾性部材が、本発明の趣旨及び範囲から逸れることなく使用されてもよい。ピストンアセンブリ34は、第1のバネ30及び第2のバネ32を、第1及び第2の玉継ぎ手36、38に連結する。第1及び第2の玉継ぎ手36、38は、各椎骨12、14から延びる椎弓根スクリュー16、18への選択的取り付けに合わせて、次々に、形作りされて設計される。
【0032】
第1の玉継ぎ手36は、第1のハウジング部材22の閉口端部39に形成された開口部42内に形成されたネジを用いて、結合のために形作られて寸法決めされたネジの嵌合い部材40を通じて、第1のハウジング部材22の閉口端部39に固定される。この方法で、第1の玉継ぎ手36は、第1のハウジング部材22の閉口端部39を実質的に閉じる。動的脊椎安定化装置10の長さは、第1のハウジング部材22と第1の玉継ぎ手36の嵌合い部材40との間の重なりの範囲を調整するように第1玉継ぎ手36を回転することにより、容易に調整され得る。当業者が確実に理解するように、第1のハウジング部材22と第1の玉継ぎ手36の嵌合い部材40との間のネジの嵌合いが、好ましい実施形態にしたがって開示されているが、本発明の範囲から逸れずに他の結合構造が使用されてもよい。
【0033】
第2のハウジング部材24の閉口端部44は、その中に形成される開口部48を有するキャップ46が備えられている。以下により詳細に議論されるように、開口部48は、ピストンアセンブリ34から前記開口部に通じるピストンロッド50の通路に合わせて、形作られて、寸法決めされる。
【0034】
ピストンアセンブリ34は、第1及び第2のバネ30、32と協働する、1つのピストンロッド50及び複数の保持ロッド52を備えている。ピストンロッド50は、第1の端部58に停止ナット54と拡張ヘッド56とを備えている。拡張ヘッド56は、ピストンロッド50に堅く接続されると共に誘導孔60を備えており、例示的な動的脊椎安定化装置10が働いている間、保持ロッド52が、誘導孔60を貫いて延びている。上記のように、拡張ヘッド56は、保持ロッド52に沿って案内され、一方、第2の玉継ぎ手38は、第1の玉継ぎ手36に、向かうように、及び、離れるように、移動する。以下により詳細に議論されるように、拡張ヘッド56は、第1のバネ30と相互に作用し合い、動的脊椎安定化装置10が伸長されて、かつ脊椎が屈曲状態で動くときに、抵抗力を生み出す。
【0035】
停止ナット54は、ピストンロッド50上に、ピストンロッド50に対して移動自在に、ぴったり合わされる。しかしながら、第1の玉継ぎ手36に向けた停止ナット54の移動は、停止ナット54を支持して停止ナット54が第1の玉継ぎ手36に向かって移動するのを妨げる保持ロッド52により、妨げられる。以下により詳細に議論されるように、停止ナット54は、第2のバネ32と相互に作用し合い、動的脊椎安定化装置10が圧縮されて、かつ脊椎が伸展状態で動くときに、抵抗力を生み出す。
【0036】
ピストンロッド50の第2の端部62は、第2のハウジング部材24の閉口端部44での開口部48から延びて、第2の玉継ぎ手38の嵌合い部材64に取り付けられる。ピストンロッド50の第2の端部62は、ネジの嵌合いを通じて第2の玉継ぎ手38の嵌合い部材64に結合される。当業者が確実に理解するように、ピストンロッド50の第2の端部62と第2の玉継ぎ手38の嵌合い部材64との間のネジの嵌合いが、好ましい実施形態にしたがって開示されているが、他の結合構造が、本発明の趣旨又は範囲から逸れることなく使用されてもよい。
【0037】
短く上に述べたように、第1及び第2のバネ30、32は、ハウジング20内に保持されている。特に、第1のバネ30は、ピストンロッド50の拡張ヘッド56と、第2のハウジング部材24のキャップ46と、の間で、伸長する。第2のバネ32は、第2の玉継ぎ手38の嵌合い部材64の遠位端と、ピストンロッド50の停止ナット54と、の間で、伸長する。第1及び第2のバネ30、32により予め加えられている負荷力が、ハウジング20内の静止位置にピストンロッドを保持し、その結果、ピストンロッドは、脊椎が伸展又は屈曲する間、移動することができる。
【0038】
使用中、椎骨12、14が屈曲状態に動き、第1の玉継ぎ手36が第2の玉継ぎ手38から離れるように引かれるとき、ピストンロッド50は、第1のバネ30により加えられる力に反してハウジング24内へ引かれる。特に、ピストンロッド50の拡張ヘッド56は、第2のハウジング部材24の閉口端部44に向かって移動する。この移動は、第1のバネ30の圧縮を生じさせ、脊椎の運動に対する抵抗力を生み出す。第2のバネ32に関して、停止ナット54と第2の玉継ぎ手38との間に捕獲されている第2のバネ32は、第1の玉継ぎ手36から離れる第2の玉継ぎ手38の移動の結果として、伸長又は延長する。椎骨が中立帯域内の屈曲状態に動くとき、第2のバネ32の高さ(又は長さ)は増加し、延長力は低減し、移動に対する装置の抵抗力は実質的に増加する。この機構を通じて、脊椎が初期の位置から屈曲状態に動くとき、バネ30とバネ32の両方は、運動と反対の負荷を増加させるか(即ち、第1のバネ30)、運動を補助する負荷を減少させるか(即ち、第2のバネ32)のいずれかにより、装置の延長に直接抵抗する。
【0039】
しかしながら、脊椎が伸展の状態であり、かつ第2の玉継ぎ手38が第1の玉継ぎ手36に向かって移動するとき、第2の玉継ぎ手38の嵌合い部材64は、停止ナット54に向かって移動する。停止ナット54は、ピストンロッド50が第1の玉継ぎ手36に向かって移動するとき、保持ロッド52により適所に保持される。この移動は、第2の玉継ぎ手38の嵌合い部材64と停止ナット54との間で保持される第2のバネ32の圧縮を生じさせ、動的脊椎安定化装置10の動作に対する抵抗力を生み出す。第1のバネ30に関して、第1のバネ30は、キャップ46と拡張ヘッド56との間で保持されて、椎骨が中立帯域内で伸展の状態に動くとき、第2のバネ30の高さは増加し、圧縮力は低減され、実質的に動作に対する装置の抵抗力は増加する。この機構を通じて、脊椎が初期の位置から伸展の状態に動くとき、バネ32とバネ30の両方は、運動と反対の負荷を増加させるか(即ち、第2のバネ32)、運動を補助する負荷を減少させるか(即ち、第1のバネ30)のいずれかにより、装置の圧縮に直接抵抗する。
【0040】
本開示の例示的な実施形態にしたがって開示されるように、2つの同軸上に配置される弾性バネ30、32の使用に基づいて、図2に示されるような補助(力)分析結果が、本動的脊椎安定化装置10により提供される。つまり、第1及び第2のバネ30、32は、動的脊椎安定化装置10が中央帯域内で変位するとき大きな弾性力を提供するように、協同して働く。しかしながら、第1の玉継ぎ手36と第2の玉継ぎ手38との間の変位が安定化装置10の中央帯域と個人の脊椎の運動の中立帯域とを越えて伸長すると、個人はもはや、中立帯域内で必要とされる実質的な補助を必要としないので、運動に対する増分の抵抗力は実質的に軽減される。これは、本明細書で開示される安定化装置の中央帯域を設定又は画定することにより達成される。力変位曲線の中央帯域は、バネの両方が上記の装置内で動作しているときを表す曲線の領域である。脊椎の運動が、中立帯域の外にあり、かつ対応する装置の延長又は圧縮が、記載される中央帯域の外にあるとき、延長しているバネは、その自由長に達する。自由長は、当業者の誰でも理解するように、力が加えられていないときのバネの長さである。したがって、開示される動的脊椎安定化装置/機構の例示的な実施形態において、中央帯域は、バネの両方が運動に抵抗するように作動している領域に対応する。中央帯域の外では、装置の動作に対する抵抗力は、屈曲状態のバネ30か伸長状態のバネ32のいずれかの、1つのバネの抵抗力のみに依存している。
【0041】
簡潔に上述したように、動的脊椎安定化装置10は、第2のハウジング部材24に対して第1のハウジング部材22を回転することで調節されてもよい。この動作は、結局のところ、第1及び第2のバネ30、32にわたって置かれている、予め加えられた負荷を、変えるやり方で、第1のハウジング部材22と第2のハウジング部材24との間の距離を変化させる。予め加えられた負荷のこの変化は、本動的脊椎安定化装置10の抵抗力の分析結果を変える。距離が縮小される場合、抵抗力の分析結果は、図3aの分析結果2に示されるものから、第1及び第2のバネ30、32が調和して作動する有効な範囲を拡げる、予め加えられた負荷の増加(図3aの分析結果1を参照)へ変わる。安定化装置10の中央帯域のこの増加された幅は、脊椎の運動のより大きな範囲にわたる高い剛性と相互に関連する。この効果は、図3aの分析結果3に明瞭であるように、距離を増加することにより反対にできる。
【0042】
開示される動的脊椎安定化装置10の例示的な実施形態は、維持を必要とする椎骨の部分から延びる椎弓根スクリュー16、18に取り付けられる。動的脊椎安定化装置10の外科的取り付けの間、安定化装置の中央帯域の大きさは、外科医により判断され、及び/又は、不安定測定装置により定量化されるので、各個別の患者に対して調整できる。開示される動的脊椎安定化装置10のこの調整可能な特性が、本発明の例示的な実施形態にしたがって生成された3つの説明のための分析結果中に実証されている(図2を参照、各装置の中央帯域の幅に留意すること)。
【0043】
手術前に、より幅の広い範囲の脊椎の不安定化に適応するように、動的脊椎安定化装置10の第1及び第2の弾性バネ30、32を、異なる組に交換することができる。図3bに表されるように、分析結果2bは、図3bの分析結果2aに示される曲線と比較するとき、より堅いバネの組を用いて生成される力変位曲線を明示している。
【0044】
手術中に、動的脊椎安定化装置10の長さは、異なる患者の解剖的構造及び所望の脊椎の姿勢に適応するために、安定化装置10を延ばすように第1の玉継ぎ手36の嵌合い部材40を回すことにより調整されてもよい。手術前に、より幅の広い範囲の解剖的構造の変化に適応するように、ピストンロッド50は、異なる幾何形状のピストンロッドと交換してもよい。
【0045】
開示される動的脊椎安定化装置10の例示的な実施形態は、負荷‐変位関係を画定するために単独で試験された。伸長を加えるとき、動的脊椎安定化装置10は、予め画定された変位まで抵抗力が増加することを、続いて、装置が完全に延長された位置に達するまで増加する抵抗力の低減率が増加することを、明示した。圧縮にさらされるとき、動的脊椎安定化装置10は、予め画定された変位まで抵抗力が増加することを、続いて、装置が完全に圧縮位置に達するまで増加する抵抗力の低減率が増加することを、明示した。したがって、動的脊椎安定化装置10は、中立姿勢の周辺で示される変位に対する最大の抵抗力を持った、非線形の負荷‐変位曲線を示す。このふるまいは、傷ついた脊椎の負荷‐変位曲線を正常にすることに役立つ。
【0046】
本開示の有利な脊椎安定化装置の設計の別の例示的な実施形態において、図5に関して、安定化装置110は、直列のバネ配置を用いて構成できる。この実施形態にしたがって、ハウジング120は、調整を可能にする、ネジで結合される第1及び第2ハウジング部材122、124で構成される。第1の玉継ぎ手136は、第1のハウジング部材122から延びる。第2のハウジング部材124は、開口部148を備えており、開口部148からピストンロッド150の第2の端部162が延びている。ピストンロッド150の第2の端部162は、第2の玉継ぎ手138に取り付けられる。第2の玉継ぎ手138は、ピストンロッド150上にねじ込まれる。
【0047】
ピストンロッド150は、その第1の端部158に拡張ヘッド156を備えている。第1及び第2のバネ130、132は、拡張ヘッド156と第1及び第2のハウジング部材122、124の閉口端部139、144との間に、それぞれ固定される。この方法で、安定化装置110は、前の例示的な実施形態について記載されている同じ機械的原理を用いて、伸長と圧縮の両方に抵抗力を提供する。
【0048】
この代替の実施形態にしたがう抵抗力の分析結果の調整は、第2のハウジング部材124に対して第1のハウジング部材122を回転することにより達成してもよい。この方法での回転は、安定化装置110により提供される高い抵抗力の中央帯域を変える。前に記載したように、バネの1つ又は両方が、同様に、2つ又は3つの帯域内の力‐変位曲線の傾斜をそれぞれ変えるために交換されてもよい。
【0049】
どのように安定化装置10、110が傷ついた脊椎(増大された中立帯域)を補助するのかを説明するために、図6のモーメント‐回転曲線を参照する。4つの曲線が、示される:1.無傷、2.傷害、3.安定化装置及び、4.傷害+安定化装置。無傷の脊椎、傷ついた脊椎、安定化装置単独、及び安定化装置と傷ついた脊椎、のモーメント‐回転曲線がそれぞれある。第4の曲線が、無傷の曲線に近いことに留意する。したがって、安定化装置は、中立姿勢の周辺の動作に対してより大きな抵抗を提供しており、脊椎の不安定化を補償することに理想的に適している。
【0050】
上記の動的脊椎安定化装置に加えて、他の相補的な装置が考えられる。例えば、軸回転及び横曲げにおける追加的な安定化を提供するのを援助するために、左及び右の安定化ユニットを連結するための連結装置が備えられてもよい。この連結装置は、開示された動的脊椎安定化装置への補足物になる。連結装置は、個々の患者の基部上で必要とされるように加えられてもよい。加えて、脊椎安定化測定装置が利用されてもよい。測定装置は、手術のときに各脊椎レベルの安定化を定量化するために使用されてよい。開示される測定装置が、各レベルの安定化を測定するために、傷ついた脊椎レベル及び損なわれていない脊椎レベルで隣接する脊椎の構成要素の対に、手術中に取り付けられてもよい。傷ついたレベルに対する、隣接する傷ついてないレベルの安定化測定を、開示された脊椎安定化装置の適切な調整を画定するために行使することができる。加えて、傷ついた脊椎レベルの安定化測定が、正常な傷ついてない脊椎の安定化の、表にされたデータベースを参照することにより、装置を調整するために用いることができる。開示される測定装置は、簡単で頑丈であることになり、この結果、手術状況下で最も簡単で可能な方法の情報が外科医に提供される。
【0051】
所望の力分析結果曲線を達成するために、本発明の脊椎安定化装置にしたがって使用されるバネの選択は、少なくとも一部で、バネにより生み出される力を支配する基本の物理法則により、一般に左右される。特に、図3aに示される上記の力分析結果は、個々のバネ構成部品又は他の弾性部材の独自の特性よりは、むしろ本安定化装置の独自の設計を通じて、達成される。
【0052】
本開示の安定化装置は、たとえ安定化装置内の2つのバネが両方圧縮型のものであっても、圧縮及び伸長の両方で有利に機能する。第2に、中央帯域内で、開示される安定化装置により提供される、より高い剛性(K1+K2)は、予め加えられた負荷の存在が原因である。バネの両方は、予め加えられた負荷が存在するときに、互いに働く。安定化装置が、中央帯域内で伸長されるか又は圧縮されるかのどちらかであるとき、力は一方のバネで増加し、他のバネで減少する。減少する力がゼロ値に達するとき、この力に対応するバネはもはや機能せず、したがって安定化機能は低下する。
【0053】
図7a及び7bに示される図表を含む工学的分析が、以下に示される。この分析は具体的には図5に開示される例示的な実施形態に関するが、当業者は、本工学的分析が、本発明にしたがって開示される実施形態すべてに適用される方法であることを理解するであろう。
は、上述にようにハウジングの本体の長さを短縮することにより導入される、安定化装置の中に予め加えられた負荷である。
及びKは、それぞれ、安定化装置が伸長されている及び圧縮されている間に働く圧縮バネの剛性係数である。
F及びDは、それぞれ、安定化装置の本体に関する安定化装置のディスクの力及び変位である。
ディスク上の力の合計は、ゼロに等しくなければならない。したがって、
F+(F−DxK)−(F+DxK)=0、並びに
F=Dx(K+K)。
中央帯域(CZ)幅に関して(図3aを参照)、
伸長側で、CZは、
CZ=F/K
圧縮側で、CZは、
CZ=F/K
【0054】
より広い意味において、本開示は、所望の水準及び/又は程度の脊椎の運動を生理的に保持又は維持しながら、所望の水準の安定化を脊椎に供給する、脊椎安定化装置、システム及び/又は器具(並びに関連する方法)を提供する。したがって、脊椎の安定化を提供しながら、脊椎のための制限されない角運動を実質的に可能にすることも非常に好ましい。実際に、脊椎安定化装置、システム及び/又は器具の導入にかかわらず、脊椎の負荷への最小限の効果で、患者が「折り曲げる」ことを妨げられない能力が、主に臨床上重要である。
【0055】
脊椎後側の脊椎安定化装置の位置決めは、その正常な解剖的構造の配置からの、即ち安定化装置に向けての後側方向で、脊椎の体節について、回転の中心を再び位置決めする効果を有する。本明細書で使用されるように、用語「回転の中心」は、脊椎が屈曲及び/又は伸展の状態で動くとき、その周りで脊椎が回転する、移動する点又は軸を指す。実際に、脊椎に対して後側方向に配置される、動的ではない脊椎安定化装置、例えば、隣接する椎弓根スクリューの間に延びる強固なロッドは、安定化装置と実質的に合致するように、後側の位置にあるその脊椎の体節についての回転の中心を、必然的に移動させるであろう。
【0056】
シーソーのように、回転軸は、脊椎の前側の解剖的構造と後側の解剖的構造との間の抵抗が均衡する中心により決定される。脊椎の安定化は、シーソー上で小さな子供の後ろで大きな人を配置することに類似して、増加した抵抗力を付与することを必要としている。したがって、シーソーの旋回点を移動させるのとそっくりに、脊椎安定化装置は、脊椎が再び均衡するように理想的に設計される。この例において、シーソーの回転軸は、正常な機能を回復するために、子供及び大人により近く移動することを必要とするであろう。シーソーの例が明らかに実証するように、動的システムの移動及び力学は、脊椎のように、増加される抵抗力の付加をともなって著しく変わる。
【0057】
回転の中心の後部への平行移動は、一般に不利である。というのは、回転の中心がその正常な解剖的構造の位置から後側位置へ移動するとき、所与の水準の角運動を成し遂げるための患者の能力が、新たな回転の軸の後側の脊椎の領域内で、より大きな程度の移動を必要とするためである。別の言い方をすると、所与の量の脊椎の伸展/移動に対して、回転の中心がその正常な解剖的構造の位置に対して後側の位置に移動された場合、より大きな力が脊椎の後面に加えられるであろう。この基本的な生体機械的(biomechanical)関連は、回転の中心がその正常な解剖的構造の位置にある(又は実質的にその近くにある)ときに、角運動に有効である、より大きなモーメントアームにより説明される。回転の中心を後側の位置に移動させることにより、例えば、強固な脊椎安定化装置を上記の後側の位置に挿入することにより、モーメントアームは実質的に軽減され、それにより患者にとっての正常な角運動の有効性が制限される。
【0058】
もちろん、脊椎安定化装置の不在のもとでは、所与の脊椎の体節に対する回転の中心は、その正常な解剖的構造の位置のままである。しかしながら、所望の水準の角運動を維持するためのこのやり方は、損傷、疾患等により脊椎安定化を必要とする患者に一般に有効ではない。したがって、理想的な状況では、脊椎安定化装置は、脊椎を安定化するための必要な力を提供し、一方で同時に、治療された脊椎の体節に対する回転の中心がその正常な解剖的構造の位置から再配置される、程度を、最小化するであろう。実際に、上記の脊椎の体節に対する回転の中心への、限定された又は無視し得る影響を有しながら、必要な量又は水準の、脊椎の安定化を達成することが非常に望まれている。
【0059】
本開示の例示的な実施形態にしたがって、これらの臨床的に望ましい結果が、所定の移動距離(即ち、隣接する椎弓根間の線形移動(Δx))を提供すると同時に、所定水準の抵抗力を提供する、安定化装置、システム又は器具、を備えることにより得られる。上記の脊椎安定化装置、システム又は器具が、また、治療される脊椎の体節についての回転の中心の位置に、最小限の影響を有している。本開示の例示的な実施形態において、上記の有利な臨床結果が、後側への配置に適合された動的安定化装置、システム又は器具、を提供することにより得られており、安定化装置は、約150〜約450ポンド/インチの、好ましくは約200〜約400ポンド/インチの範囲で、所定水準の抵抗力を提供するように構成されており、約1.5mm〜約5mmの、好ましくは約2mm〜4mmの所定の移動距離を容認する。
【0060】
記載される範囲の抵抗力を提供し、記載される範囲に移動距離を制限することにより、開示される安定化装置が、傷害前の運動水準の範囲に厳密に近づけた運動値の範囲により示されるように、所望の水準の安定化を提供することが分かっている。加えて、上記の抵抗力の水準は、治療された脊椎の体節の回転の中心の位置を、その正常な解剖的構造の位置から先に得られた水準にまで変えるほどは、高くはなく、それにより、安定化装置が後側に存在するにもかかわらず、実質的に妨げられない角運動を可能にする。したがって、開示される動的脊椎安定化装置、システム及び器具は、脊椎安定化治療の相反する状況の全てを成功裏に解決し、所望の、運動の範囲及び各運動の特質が反映された、有利な臨床結果を提供する。
【0061】
本開示の例示的な実施形態によれば、本明細書で説明される有利な、抵抗力/移動パラメータは、様々な方法で得られてもよい。したがって、例えば、1つ以上のバネが、所望の水準の抵抗力、即ち、約150ポンド/インチ〜約450ポンド/インチを、付与するように、1対の椎弓根スクリューに対して配置されてもよい。1つのバネがまた、有効な移動を所望の範囲に、即ち約1.5〜約5mmに制限するやり方で、椎弓根スクリューに対して取り付けられ、つなげられ、及び/又は、別の方法で捕獲されてもよい。本開示の代替の実装化において、1つ以上のバネではない弾性部材が、所望の水準の抵抗力を付与するように1対の椎弓根スクリューに対して配置されてもよく、適切な機械的手段(例えば、1つ以上の停止装置)が、移動距離を所望の範囲に制限するために、脊椎安定化装置、システム又は器具、に結び付けられても良い。本開示の更に例示的な実施形態において、複数の脊椎安定化システム、装置及び/又は器具が、所望の抵抗力/移動効率パラメータを供給するために(例えば、直列に又は並列に)組み合わされる。したがって、例えば、1つ以上のバネを備える第1の安定化構成部品が、備えられてもよく、1つ以上のバネではない弾性部材を備える第2の安定化構成部品が、約150ポンド/インチ〜約450ポンド/インチの全抵抗力を供給するように、かつ、約1.5mm〜5mmの移動に適応するように、1対の椎弓根スクリューに対して並列に(又は直列に)配置されてもよい。
【0062】
本開示によれば、本明細書で説明される抵抗力及び移動の範囲外での作動は、脊椎の安定化のために不利であることが分かっている。より具体的には、約150ポンド/インチ未満の抵抗力を付与する安定化装置は、不適切な脊椎の安定化を提供することが分かっている。反対に、約450ポンド/インチを超える抵抗力を付与する安定化装置は、制限された、ますます増加する安定化効果を提供し、その上、安定化装置の剛性が好ましくなく増大し、回転の中心がその正常な解剖的構造の位置から後側の方向に移動し、それにより
前側の運動を得るために必要とされる前側の運動量が増大し、不必要に正常な脊椎の生体機械性(biomechanics)を損なうことが分かっている。同様なやり方で、所望の水準の生理的な脊椎の運動を妨げるために、隣接する椎弓根間の相対的な移動、即ちΔxを約1.5mm未満に制限する安定化装置、その上、約5mmを超える隣接する椎弓根間の相対的移動を容認する脊椎安定化装置は、十分な安定化を提供するために必要である脊椎の運動を超える脊椎の運動を、容認する。
【0063】
端的に、生理的に所望の水準の脊椎の運動(約1.5mm〜約5mmの移動)を保持又は維持しながら、脊椎に対して所望の水準の安定化(約150ポンド/インチ〜450ポンド/インチの抵抗力)を供給する脊椎安定化システム、装置及び器具(並びに関連する方法)は、非常に有利な脊椎の安定化を提供する。加えて、本明細書に記載される有利な水準の脊椎の安定化を提供することにより、開示される脊椎安定化システム、装置又は器具、に結合される椎弓根スクリューにより受ける負荷が低減され、それにより椎弓根スクリューの障害の可能性が低減すると考えられている。
【0064】
[[付加的な実験結果]]
本開示による安定化装置を評価するために、所定の様式で印加されたモーメントに対する屍体の応答が、試験された。特に、運動の範囲(ROM)、中立帯域(NZ)及び高順応性帯域(HFZ)、に関する測定が行われた。実験上の試験は、本開示による安定化装置が正常なROMを許容しながら、(NZ及びHFZの低減として測定される)脊椎の不安定化を低減することに有効であるのかを定めるために、着手された。
【0065】
[試験計画及び設定]:5つの屍体の運動の体節の特性が、(i)無傷;(ii)髄核摘出術(N);(iii)髄核摘出術と安定化装置;(iv)部分的椎間関節突起切除術と併せた椎弓切除術(LPF);並びに(v)LPFと安定化装置、の5つの状態で評価された。各損傷が、頻度履歴及び臨床上の重要性に基づいて選択された。5つのヒト屍体の腰椎標本が、つまり4つのL3‐4体節及び1つのL1‐2体節が、使用された。
【0066】
[方法]:標本が、死後の24時間以内に得られ、試験のときまで−20℃で生理食塩水に浸漬されたガーゼに保存された。標本は解凍され、外部の組織は取り除かれた。脊椎の単純X線撮影写真が、解剖的構造、椎間板の変性の程度、及び、(もしあれば)予め存在する骨の病態、を画定するために取られた。病態(例えば、架橋骨増殖体、主モール軟骨小結節又は明らかな椎間関節の変性)を有する標本は、試験から除かれた。予め存在する著しい椎間板の病態(ヘルニア形成など)を有する標本も、試験から除かれた。
【0067】
椎弓根スクリューは、下部及び上部椎骨体内に両側で配置された。椎弓根スクリューの固定である付加的な補強が、椎弓根スクリューを取り除き、少量のエポキシ(〜1cc)を加え、ネジを再び挿入することで成し遂げられた。椎弓根スクリューは、生理食塩水で浸漬された紙の中に包まれ、各運動体節は、低融解温度合金内に封止された。構造物は、多重の自由度を提供するように構成された試験設備内に配置された。封止固定装置が試験機械にボルト締めされることにより、標本は、その機械に対して強固に取り付けられた。下部固定装置は、x−y平面に置かれており、標本が試験中に強制されずに自由に運動することを可能にした。
【0068】
6軸負荷セル(AMTI社(AMTI, Inc)、ワシントン、マサチューセッツ州)が、試験中標本に加えられる力及びトルクを測定するために使用された。軸圧縮負荷が、標本に連続的に加えられ(200Nの予め加えられた負荷)、一方で屈曲/伸展、左/右の横曲げ、及び左/右のねじれ、における単なる曲げモーメントが、標本の上部椎骨体に加えられた。位置及び角度の相対的な変化は、高解像度光学エンコーダ(ガーリー精機(Gurley Precision Instruments)、トロイ(Troy)、ニューヨーク州)を用いて測定された。椎弓根スクリュー間の安定化装置の変位は、2つの位置変換器(スペースエイジコントロール(SpaceAge Control)、パルムデール(Palmdale)、カリフォルニア州)を使って測定された。データは、最小で10Hzの抽出率で収集された。
【0069】
無傷の標本(無損傷及び安定化されていない)が、3つのサイクルを通じて、各々、200Nの軸圧縮負荷が予め連続的に加えられた状態で、1mm/分で、屈曲/伸展、左/右の横曲げ、及び左/右のねじれ、において10Nm(トルクの単位)まで、負荷を与えられた。無傷の試験の完了に続いて、標本が、試験機械から除かれた。本開示の安定化装置/システムの配置に続いて、標本が、試験機械内の背後に配置され、試験手順が繰り返された。本明細書に記載の試験において、安定化装置は、図5で表された型である。各運動体節は、200Nの軸圧縮負荷が予め連続的に加えられた状態で、前方への、屈曲/伸展、左/右の横曲げ、及び左/右ねじれ、の3サイクルを通じて、再び負荷を与えられた。試験は、次の条件もとで繰り返された:(i)安定化装置を有しない髄核摘出術、安定化装置を有する髄核摘出術、安定化装置を有しない部分的な椎間関節突起切除術と併せた椎弓板切除術(LPF)、並びに安定化装置を有するLPF。
【0070】
[結果測定]:試験の完了に続いて、生データのテキストファイルが、マイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)プログラムに、読み出し可能に出力された。データは、サイクル数、運動、現在の角度、現在のモーメント、軸負荷、右側の変位変換器出力及び左側の変位変換器出力を含んでいた。10Nmでの運動の範囲、2.5Nmでの中立帯域(高剛性帯域)、0.2Nmでの中立帯域(受動曲線)、及び実装されていない構造物(即ち、本開示による動的脊椎安定化装置がない)の椎弓根スクリューの変位が、実装された構造物(本開示による動的脊椎安定化装置を有する)と比較された。ROM、NZ及びHFZが、屈曲/伸展、横曲げ及び軸回転について記録された。ROM=回転±10Nm;NZ=回転±0.2Nm、0モーメント軸に交差する前の受動応答;HFZ=回転±2.5Nm、能動曲線上。
【0071】
[結果]:標本の変性により、2つの標本が、LPFと、LPF+安定化装置と、において評価されなかった。屈曲/伸展、横曲げ、及び軸回転、において、各構造物について平均の、運動の範囲、中立帯域及び変位データが、図8〜10の棒グラフで説明される。棒グラフが示すように、脊椎の不安定化が、外科的な傷害に併せて増加する。これは、ROMの増加、及び、NZ及びHFZの著しく高い相対的な増加、として測定され得る。本明細書に記載されるように開示される安定化装置の使用を通じて、同時にROMを損なわずに残しながら、無傷の水準と匹敵する水準にNZ及びHFZを有利に低減することが可能であった。
【0072】
[[さらなる試験結果]]
図11及び12に関して、抵抗力/移動パラメータに関して本明細書で記載される臨界を裏付けるデータが、上記のものとは別の試験で生成された。このようなデータは、2つの違った標本についての棒の表及びグラフの形で与えられる。初めに図11に関して、一連のバネ剛性が、本開示による脊椎安定化装置を使ってL4‐L5の脊椎領域で試験された。特に、図4及び5に関して記載される型の脊椎安定化装置が、図11及び12に示されるデータを生成するために屍体試験で使用された。したがって、脊椎安定化装置は、200Nの予め加えられた負荷を受ける、第1及び第2の入れ子になったバネを備えていた。注釈として、付加的な試験が、400Nの予め加えられた負荷で行われ、一貫した結果を伴った。試験された脊椎の体節は、12.44度の無傷の運動の範囲(ROM)と、13.58度の傷ついたROM(即ち、髄核摘出術後のROM)と、を示した。
【0073】
図11の棒グラフのX軸に沿って説明されるバネ剛性は、外部バネの位置で試験されるバネの力を示す。外部バネは、図4及び5の開示される脊椎安定化装置内の「屈曲」に対応し、開示される脊椎安定化装置の性能を評価することを目的とした主要なバネを表す。実験データは、内部バネと外部バネとの間の、20:10及び10:20の、相対的バネ剛性を用いて生成され、比較可能な結果を伴った。本明細書で報告されるデータは、外部バネ剛性(屈曲バネ)と内部バネ剛性(伸長バネ)との間の関係が、20:10である試験に対応した。したがって、図11で報告されるデータにおいて、3つの違ったバネ剛性が、本開示の例示的な脊椎安定化装置内の屈曲バネについて試験され、各バネ剛性が、2重の試験の実行で試験された。データは、ROM(度;各対の最も左の棒)、及び移動距離(mm;各対の最も右の棒)、について収集された。移動距離は、第1及び第2の椎弓根スクリューがそれぞれに対して移動する距離を指し、脊椎の回転の軸が脊椎の介在により影響を受ける程度の指標である。移動距離が低減するにつれて、脊椎の正常な運動の欠損がより大きく発生する。
【0074】
初めに42.86ポンド重/インチのバネ剛性に関連する棒グラフに関して、ROMが無傷の脊椎に関連するROMを越えることに留意する。このように、外部バネについて42.86ポンド重/インチの脊椎の剛性を有する、開示される脊椎安定化装置は、傷ついた水準(13.58度)から無傷の水準(12.44)へ、ROMを低減するには不十分な安定化力を、提供する。代わりに、ROMは、12.8度以上(12.81及び13.04度)に留まり、それは、望ましくない水準の脊椎の不安定化に対応する。外部バネが42.86ポンド重/インチの剛性を有するところで、試験に関連する移動距離は、5.69及び5.92mmであった。
【0075】
中間の2つの棒グラフに目を向けて、145.71ポンド重/インチの剛性を有する外部バネを使用する試験の実行についてのデータが示される。これらの試験の実行のために、ROMが、無傷のROM以下の水準、即ち、12.44度に対して10.73/10.67度、に有利に低減された。ROMのこの低減は、望ましい水準の安定化を示す。移動距離の付随する低減が、より弱いバネ(42.86ポンド重/インチ)に関して注目された。より具体的には、移動距離が、4.34/3.39mmに低減されており、このことは、患者の角運動がより弱いバネに関して制限されることになる、その程度の増加を示した。
【0076】
図11の試験データで示される第3の外部バネに目を向けて、197.14ポンド重/インチの剛性を有する外部バネが、本開示の脊椎安定化装置内で試験された。意義深いことに、ROMが、より弱いバネ(145.71ポンド重/インチ)に関して実質的に変化せず、移動距離がさらなる低減を明示した(4.34/3.39mmに対して3.08/3.13mm)。最も右の棒グラフのこの試験データは、脊椎安定化適用の驚くべき結果を示し、つまり、バネ剛性のさらなる増大がROMの実質的な低減をもたらさないところで閾値に到達し、一方で、移動距離の連続した低減が観測される。
【0077】
本明細書で報告される驚くべき結果を見ると、本開示による臨床的に有利な脊椎安定化装置/システムは、これらが本明細書で記載される閾水準に実質的に対応する安定化力を供給し、それにより隣接する椎弓根間の移動距離が制限/低減される程度を制限することを、特徴とする。移動距離への影響を最小化することにより、本開示による脊椎安定化装置/システムは、有利に、所望の/必要な水準の脊椎の安定化を供給しながら、脊椎の制限されない角運動を実質的に可能にする。
【0078】
図12のグラフに関して、開示される脊椎安定化装置/システムを通じて達成される驚くべき有利な結果を裏付ける更なるデータが、提供される。図12のY軸は、無傷の脊椎に対する傷ついた脊椎についてのROMの比に対応する。したがって、傷ついた脊椎が、その当初の正常なROM性能に安定された場合、1.0の比が得られるであろう。臨床的に望ましい脊椎安定化装置のために、本明細書で記載される試験手順での目標のROM比は、0.8である。換言すると、望ましい脊椎安定化装置/システムは、当初の無傷のROM水準の約80%の水準に、傷ついた脊椎のROMを低減するであろう。
【0079】
特に図12を参照して、初期の点データ(0のバネ剛性)は、傷ついたROMが無傷のROMよりも約10%大きいところの試験データに対応する。付加的なROM比の点データが、42.86ポンド重/インチ、145.71ポンド重及び197.14ポンド重/インチ、のバネ剛性について、与えられている。注釈として、水平域が、ROM比が約0.82のところで設定されており、0.82は、目標のROM比に極めて近い。したがって、図12のプロットは更に、約0.82のROMを達成するために必要なバネ剛性を越えるバネ剛性の追加的な増加が、任意の適切な程度にROM比を更に低減することには、有効ではないことを明示している。図12に示される試験結果、特に水平域は、図12に作られる白線により示されるような、初期の点データの最小二乗法近似によっては、予測されない。
【0080】
上記の試験の結果に基づいて、有利な脊椎安定化の結果が、本開示によれば、本明細書で記載されるROM比の水平域で作動する脊椎安定化装置/システムを提供することにより、達成され得ることが、明らかである。本開示によれば、有利な脊椎安定化の結果が、約150ポンド/インチ〜約450ポンド/インチの抵抗力を与えることで、約1.5mm〜約4.5mmの移動を可能にすることによって、有利な脊椎安定化の結果が、達成されることが分かった。上記の脊椎安定化装置/システムは、0.8に極めて近いROM比を達成するために一般に有効であり、それにより同時に脊椎の実質的に制限されない角運動を提供しながら、安定化の有利な水準を達成する。
【0081】
当業者が確実に理解するように、本発明を強調する概念が、他の医療手段に適応されてもよい。上記のように、これらの概念は、本発明の趣旨から逸れることなく脊椎治療を越えて利用されてもよい。好ましい例示的な実施形態が本明細書で示されて記載されたが、上記の開示により本発明を制限することを意図するものではなく、むしろ本開示が、付属の請求項で定義されるような本発明の趣旨及び範囲内にある変更及び代替の構造のすべてを含むことを意図していることが理解されるであろう。実際に、本開示による使用のための代替の動的脊椎安定化装置が、本願と同一譲受人に譲渡された、2004年12月31日に出願され、シリアル番号第11/027,269号を割り当てられた「動的接合を含む脊椎安定化のためのシステム及び方法(Systems and Methods for Spine Stabilization Including a Dynamic Junction)」と題する米国特許出願に記載されており、その内容全てが、参照として本明細書内に組み込まれている。
【0082】
当業者が、開示される脊椎安定化装置、システム及び器具(並びに関連する方法)を製造かつ利用するのを補助するために、付属の図面について言及される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】(無傷の及び傷ついた)脊椎の体節に対するモーメント‐回転曲線であり、中立帯域内の低剛性の(曲がりやすい)脊椎を示す。
【図2】脊椎の体節に対するモーメント‐回転曲線に関連する脊椎の体節の概略表示であり、中立帯域内の低剛性の脊椎を示している。
【図3a】力‐変位曲線に関連する本発明による例示的な脊椎安定化装置の概略図であり、前記力‐変位曲線の中央帯域内で供給される、増大した抵抗力を示している。
【図3b】例示的な脊椎安定化装置に結合されるバネの置換を通じて達成される分析結果の変化を実証している力‐変位曲線である。
【図3c】脊椎に固定された一対の脊椎安定化装置を有する脊椎の背部の図である。
【図3d】伸長状態の安定化装置を示している側面図である。
【図3e】圧縮状態の安定化装置を示している側面図である。
【図4】本開示による例示的な脊椎安定化装置の概略図である。
【図5】本開示にしたがう代替の脊椎安定化装置の概略図である。
【図6】開示される脊椎安定化装置が脊椎の安定化を補助する一態様の方法を明示しているモーメント‐回転曲線である。
【図7a】本開示による例示的な脊椎安定化装置の自由物体図である。
【図7b】脊椎安定化装置の中央帯域を表している図である。
【図8】本開示による例示的な動的脊椎安定化装置を含んだ屍体実験に基づく屈曲/伸展データを示している棒グラフである。
【図9】本開示による例示的な動的脊椎安定化装置を含んだ屍体実験に基づく横曲げデータを示している棒グラフである。
【図10】本開示による例示的な動的脊椎安定化装置を含んだ屍体実験に基づく軸回転データを示している棒グラフである。
【図11】複数の動的安定化システムについての運動の範囲(ROM)及び移動を示している棒グラフである。
【図12】動的安定化システムについての運動の範囲(ROM)の対バネ剛性の比のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的安定化システムにおいて、
少なくとも1つの付勢要素を備えた安定化部材を備えており、
安定化部材が、脊椎の第1及び第2の椎弓根に対して取り付けられるように構成されており、
付勢要素が、約150ポンド/インチ〜450ポンド/インチの力を供給して、前記脊椎の前記第1の椎弓根と前記第2の椎弓根との間の相対的な移動距離を、約1.5mm〜5mmの距離に制限するように構成されている、ことを特徴とする動的安定化システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの付勢要素がバネである、請求項1に記載の動的安定化システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの付勢要素が、第1のバネと第2のバネとを備えており、
前記第1及び第2のバネが共に、約150ポンド/インチ〜450ポンド/インチの力を供給して、前記脊椎の前記第1の椎弓根と前記第2の椎弓根との間の相対的な移動距離を、約1.5mm〜5mmの距離に制限する、請求項1に記載の動的安定化システム。
【請求項4】
前記第1及び第2のバネが、入れ子の配置にある、請求項3に記載の動的安定化システム。
【請求項5】
前記第1及び第2のバネが、軸方向に一列に並んでいる、請求項3に記載の動的安定化システム。
【請求項6】
前記安定化部材が、ハウジングを備えており、ハウジング内に前記少なくとも1つの付勢要素が配置されている、請求項1に記載の動的安定化システム。
【請求項7】
前記ハウジングが、第1及び第2のハウジング部材を備えており、前記第1及び第2のハウジング部材が、互いに対して位置を変えることが可能である、請求項6に記載の動的安定化システム。
【請求項8】
前記安定化部材が、傷ついた脊椎の運動の範囲を、当初の傷ついていない脊椎の約80%に限定することに有効である、請求項1に記載の動的安定化システム。
【請求項9】
前記安定化部材が、前記安定化部材の対向する末端部に配置される、第1及び第2の取り付け要素を備えている、請求項1に記載の動的安定化システム。
【請求項10】
前記第1及び第2の取り付け要素が、玉継ぎ手である、請求項9に記載の動的安定化システム。
【請求項11】
前記玉継ぎ手が、第1及び第2椎弓根スクリューに対して取り付けられるように構成されている、請求項10に記載の動的安定化システム。
【請求項12】
前記安定化部材が、前記脊椎の前記第1及び第2の椎弓根に対する回転中心位置への影響を限定する安定化力を、脊椎の椎弓根に供給するように構成されている、請求項1に記載の動的安定化システム。
【請求項13】
脊椎の体節を安定化するための方法において、
脊椎の体節の第1及び第2の椎弓根に対して取り付けられる、第1の椎弓根スクリューと第2の椎弓根スクリューとの間に、脊椎安定化装置を配置することを含んでおり、
前記脊椎安定化装置が、約150ポンド/インチ〜450ポンド/インチの力を供給して、前記第1の椎弓根と前記第2の椎弓根との間の相対的な移動距離を、約1.5mm〜5mmの距離に制限するように構成されている、少なくとも1つの付勢要素を備えている、ことを特徴とする、脊椎の体節を安定化するための方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの付勢要素が、バネである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの付勢要素が、第1及び第2のバネを備えている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記脊椎安定化装置が、更に、椎弓根取り付け構造体と協働するように構成された、第1及び第2の末端部とを備えている、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの前記椎弓根取り付け構造体が、玉継ぎ手である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの付勢要素が、予め負荷を加えられた状態にある、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−540055(P2008−540055A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512535(P2008−512535)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/019412
【国際公開番号】WO2006/125142
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507381972)アプライド・スパイン・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Applied Spine Technologies, Inc.
【出願人】(392019352)イェール ユニバーシティ (38)
【氏名又は名称原語表記】YALE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】