説明

勾配情報データベース作成装置及び作成方法

【課題】位置情報を取得できるか否かにかかわらず道路の勾配情報を格納可能な勾配情報データベースを作成する。
【解決手段】車両の位置情報を取得する位置情報取得部11と、補助ブレーキ装置の作動状態を検出する補助ブレーキ検出部12と、補助ブレーキ装置の作動状態に基づいて道路の勾配を判定する勾配判定部15とを備え、勾配情報が位置情報とともに格納されるデータベース21を作成する。位置情報取得部11によって検出された位置情報に基づいて車両の移動距離を演算する移動距離演算部16と、車両の車速に基づいて車両の走行距離を演算する走行距離演算部17とを備え、位置情報が取得された場合には勾配情報を移動距離演算部16にて演算された距離情報に対応させてデータベース21に格納し、位置情報が取得されなかった場合には勾配情報を走行距離演算部17にて演算された距離情報に対応させてデータベース21に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勾配情報のデータベースを作成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が走行する道路の状況を判定し、道路の状況に応じて省燃費運転を行うシステムが知られている。
【0003】
特許文献1には、位置情報とともに記録された道路の勾配情報に基づいて省燃費運転を実行する自動省燃費運転システムが開示されている。この自動省燃費運転システムでは、車両が走行する道路の位置情報をGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)によって検出し、補助ブレーキの作動状態によって走行中の道路の勾配情報を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−29321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の自動省燃費運転システムでは、GPSによる位置情報が取得できない場合には、勾配情報のデータは記憶されない。そのため、GPSによる位置情報が取得できない位置では、省燃費運転を実行できなかった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、位置情報を取得できるか否かにかかわらず道路の勾配情報を格納可能な勾配情報データベースを作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記車両における補助ブレーキ装置の作動状態を検出する補助ブレーキ検出部と、前記補助ブレーキ検出部によって検出された前記補助ブレーキ装置の作動状態に基づいて道路の勾配を判定する勾配判定部と、を備え、前記勾配判定部にて判定された勾配情報が、前記位置情報取得部にて取得された位置情報とともに格納されるデータベースを作成する勾配情報データベース作成装置であって、前記位置情報取得部によって検出された位置情報に基づいて前記車両の移動距離を演算する移動距離演算部と、前記車両の車速に基づいて前記車両の走行距離を演算する走行距離演算部と、を備え、前記位置情報取得部にて前記位置情報が取得された場合には、前記勾配情報を、前記移動距離演算部にて演算された距離情報に対応させて前記データベースに格納し、前記位置情報取得部にて前記位置情報が取得されなかった場合には、前記勾配情報を、前記走行距離演算部にて演算された距離情報に対応させて前記データベースに格納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、道路の勾配情報を、車両の位置情報と前回位置からの距離情報とともにデータベースに格納する。位置情報取得部によって車両の位置情報が取得されなかった場合には、車両の速度に基づいて演算した走行距離に対応させて勾配情報をデータベースに格納する。よって、位置情報が取得されなかった位置においても勾配情報をデータベースに格納できるため、位置情報を取得できるか否かにかかわらず道路の勾配情報をデータベースに格納可能となる。
【0009】
なお、このデータベースに基づいて省燃費運転を行った場合には、車両の位置情報の有無にかかわらず省燃費運転を実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る勾配情報データベース作成装置が設けられる省燃費運転システムの構成図である。
【図2】他の実施の形態に係る省燃費運転システムの構成図である。
【図3】走行距離演算部による距離情報の演算について示す図である。
【図4】勾配情報データベース作成装置のフローチャート図である。
【図5】(a)は、車両が走行する道路の勾配の一例を示す図であり、(b)は、勾配情報データベース作成装置によって作成されたデータベースの一例を示す図である。
【図6】省燃費運転システムのフローチャート図である。
【図7】省燃費運転システムの作用を説明する図である。
【図8】データベースの更新について示すフローチャート図である。
【図9】データベースの更新が実行される道路の一例について示す図である。
【図10】更新されたデータベースの一例を示す図である。
【図11】データベースへの位置情報の格納について示すフローチャート図である。
【図12】(a)は、車両が走行する道路と位置情報との誤差について示す図であり、(b)は、位置情報が格納されたデータベースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る勾配情報データベース作成装置200について説明する。
【0012】
まず、図1を参照して、勾配情報データベース作成装置200が設けられる省燃費運転システム100の構成について説明する。
【0013】
省燃費運転システム100は、車両(図示省略)に搭載され、走行中の車両の燃料消費量を抑制し、省燃費運転を実行するものである。省燃費運転システム100は、エンジンの制御を実行するエンジンECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)101と接続され、エンジンへの燃料の供給量を調整可能である。省燃費運転システム100は、後述するデータベース21に記憶された道路の勾配情報に基づき、エンジンへの燃料の供給量を制限して惰行走行を行うことで、燃料消費量を抑制するものである。
【0014】
省燃費運転システム100が搭載される車両は、車両の速度を検出する車速センサ1と、車両における補助ブレーキ装置の作動状態を検出する補助ブレーキセンサ2とを備える。
【0015】
車速センサ1は、車両に搭載されトランスミッションの出力軸の回転を検出するセンサである。車速センサ1を独立して設けずに、車両の制御を実行するECUから車速を検出してもよい。
【0016】
補助ブレーキセンサ2は、車両のエンジンブレーキ,排気ブレーキ,及びリターダなどの補助ブレーキ装置の作動状態を検出するセンサである。補助ブレーキセンサ2を独立して設けずに、補助ブレーキ装置の制御を実行するECUから各ブレーキの作動状態を検出してもよい。
【0017】
また、車両は、エンジンへの燃料の供給量を検出する燃料流量センサ3と、エンジンの負荷を検出するエンジン負荷センサ4と、車両の位置情報を検出するGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)センサ5とを備える。燃料流量センサ3とエンジン負荷センサ4を独立して設けずに、エンジンECU101から燃料供給量とエンジン負荷とを検出してもよい。
【0018】
GPSセンサ5は、単数または複数のGPS衛星(図示省略)から車両の絶対的な位置情報を取得するものである。ここでいう位置情報とは、地球上の緯度及び経度である。GPSセンサ5として、車両に搭載されるカーナビゲーションシステムが有するGPSを用いてもよい。
【0019】
また、GPSセンサ5は、電波を受信可能なGPS衛星の個数を検出する。GPS衛星の個数が複数である場合には、位置情報の精度が向上するため、電波を受信可能なGPS衛星の個数が所定の個数以上である場合にのみ位置情報を出力するようにしてもよい。
【0020】
省燃費運転システム100は、省燃費運転の制御を実行するコントローラ10と、車両の位置情報とともに道路の勾配情報のデータベース21が格納される記憶装置20とを備える。
【0021】
コントローラ10は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって省燃費運転システム100の制御が実現される。
【0022】
コントローラ10は、車速センサ1,補助ブレーキセンサ2,燃料流量センサ3,エンジン負荷センサ4,及びGPSセンサ5にI/Oインターフェースを介して接続され、各センサ1〜5からの信号を受信する。また、コントローラ10は、エンジンECU101にI/Oインターフェースを介して接続され、エンジンに供給される燃料を制限する指令を送信する。
【0023】
コントローラ10は、車両の位置情報とともに道路の勾配情報が格納されたデータベース21を記憶装置20内に作成する勾配情報データベース作成装置200と、車両の位置情報が最後に検出された位置からの車両の距離を演算する距離演算部18と、データベース21から勾配情報などのデータを取得し、取得した勾配情報に基づいてエンジンへの燃料の供給量を制限する燃料制限部19とを備える。勾配情報データベース作成装置200の構成については、後で詳細に説明する。
【0024】
距離演算部18は、車両の位置情報が最後に検出された位置から車両が走行した距離を演算する。これにより、位置情報取得部11にて位置情報が取得されない場合に、位置情報が最後に検出された位置からの走行距離に基づいて、車両の位置を推定することができる。
【0025】
燃料制限部19は、データベース21に記憶された道路の勾配情報に基づいて、道路が下り坂である場合に、車両のエンジンへの燃料の供給量を制限するものである。これにより、下り坂を走行する際には、車両は、燃料を消費せずに惰行走行を行うことができ、燃料消費量を抑制できる。
【0026】
なお、図2に示すように、CAN(Controller Area Network)通信などの車内ネットワーク30を備える車両の場合には、交互に通信可能なように、コントローラ10,エンジンECU101などが車内ネットワーク30を介して接続される。
【0027】
以下、主に図1を参照して、勾配情報データベース作成装置200について説明する。
【0028】
勾配情報データベース作成装置200は、省燃費運転システム100にて省燃費運転を実行する際に用いる道路の勾配情報のデータベース21を作成する。勾配情報データベース作成装置200は、車両が道路を走行することによって、その道路における勾配情報のデータベース21を作成する。
【0029】
勾配情報データベース作成装置200は、記憶装置20と通信可能に接続され、相互にデータの送受信が可能である。記憶装置20には、車両の位置情報とともに道路の勾配情報などのデータベース21が格納される。記憶装置20は、ハードディスクやフラッシュメモリーなどによって構成される。
【0030】
勾配情報データベース作成装置200によって作成されるデータベース21は、例えば図5(b)に示すものである。データベース21には、車両が走行を開始してからの距離情報と、距離情報に対応した緯度及び経度の位置情報と、その緯度及び経度の位置における勾配情報とが記憶される。
【0031】
距離情報は、走行を開始してから車両が移動した距離の情報である。図5(b)には、距離情報として車両が走行を開始してからの累計の距離が記載されているが、これと同時に、連続する位置間の相互距離も距離情報としてデータベース21に格納されている。
【0032】
位置情報は、GPSセンサ5によって位置情報が取得されなかった位置では、緯度及び経度がともに「情報なし」であるとしてデータベース21に記憶される。これにより、省燃費運転システム100がデータベース21を参照した際に、データベース21の緯度及び経度がともに「情報なし」である場合には、その位置では位置情報が取得できなかったと判定することが可能となる。
【0033】
勾配情報は、道路が下り坂である場合には「Downhill」と記憶され、下り坂以外である場合には「Other」と記憶される。このように、勾配情報は、道路が下り坂であるか又はそれ以外であるかの情報である。この他にも、勾配情報として、登り坂であることを記憶したり、勾配の大きさを記憶するようにしてもよい。
【0034】
図1に示すように、勾配情報データベース作成装置200は、車両の位置情報を取得する位置情報取得部11と、車両における補助ブレーキ装置の作動状態を検出する補助ブレーキ検出部12と、補助ブレーキ検出部12によって検出された補助ブレーキ装置の作動状態に基づいて道路の勾配を判定する勾配判定部15とを備える。
【0035】
位置情報取得部11は、GPSセンサ5によって検出された車両の現在の絶対的な位置情報を取得する。位置情報取得部11によって取得された位置情報は、記憶装置20に送信されデータベース21に格納される。また、位置情報取得部11は、GPSセンサ5が何個のGPS衛星から位置情報を検出したかを取得する。これにより、位置情報取得部11は、GPSセンサ5で検出した車両の位置情報の精度を判定することが可能となる。
【0036】
補助ブレーキ検出部12は、補助ブレーキセンサ2によって検出された信号に基づいて車両における補助ブレーキ装置の作動状態を判定する。補助ブレーキ検出部12は、補助ブレーキ装置の作動状態を勾配判定部15に送信する。
【0037】
勾配判定部15は、補助ブレーキ検出部12によって判定された補助ブレーキ装置の作動状態と、車速センサ1,燃料流量センサ3,及びエンジン負荷センサ4によって検出されたデータとによって、車両が走行中の道路における勾配を判定する。例えば、補助ブレーキ装置が作動しており、燃料流量及びエンジン負荷が共に小さく、減速度が小さい又は加速しているような場合には、勾配判定部15は、道路が下り坂(「Downhill」)であると判定する。一方、補助ブレーキ装置が非作動であり、燃料流量及びエンジン負荷がともに大きい場合には、勾配判定部15は、道路が下り坂以外(「Other」)であると判定する。
【0038】
このように、勾配判定部15によって判定された道路の勾配情報は、位置情報取得部11が取得した位置情報とともに記憶装置20に送信され、データベース21に格納される。
【0039】
勾配情報データベース作成装置200は、位置情報取得部11によって検出された位置情報に基づいて車両の移動距離を演算する移動距離演算部16と、車両の速度に基づいて車両の走行距離を演算する走行距離演算部17とを備える。
【0040】
移動距離演算部16は、位置情報取得部11にて位置情報が取得された場合に、位置情報に基づいて車両の移動距離を演算する。具体的には、移動距離演算部16は、位置情報取得部11によって検出された位置情報と、この位置情報の直前に検出された前回の位置情報との間の距離を演算し、車両が移動した移動距離とする。位置情報取得部11にて位置情報が取得された場合には、勾配情報は、移動距離演算部16にて演算された距離情報に対応させてデータベース21に格納される。
【0041】
走行距離演算部17は、車速センサ1によって検出された車両の速度に基づいて車両の走行距離を演算して距離情報としてデータベース21に格納する。例えば、図3に示すように、車両が80km/hで定常走行を続けており、1秒ごとに距離情報を演算する場合には、1秒後の走行距離は22.2m、2秒後の走行距離は44.4m、3秒後の走行距離は66.6m、4秒後の走行距離は88.8mと演算される。位置情報取得部11にて位置情報が取得されなかった場合には、勾配情報は、走行距離演算部17にて演算された距離情報に対応させてデータベース21に格納される。
【0042】
以上のように勾配情報データベース作成装置200を構成することによって、道路の勾配情報が、位置情報と距離情報とともに格納されたデータベース21が作成される。
【0043】
以下、図4から図7を参照して、省燃費運転システム100の作用について説明する。
【0044】
まず、図4及び図5を参照して、勾配情報データベース作成装置200の作用について説明する。
【0045】
図4のフローチャートにおけるステップ101では、GPSセンサ5によって検出された車両の位置情報が、位置情報取得部11によって読み込まれる。ステップ101では、GPSセンサ5によって位置情報が検出されなかった場合には、位置情報は読み込まれない。
【0046】
ステップ102では、車速センサ1,補助ブレーキセンサ2,燃料流量センサ3,及びエンジン負荷センサ4によって検出された車両情報が読み込まれる。
【0047】
ステップ103では、ステップ102にて読み込まれた車両情報に基づき、勾配判定部15によって道路の勾配が「Downhill」であるか「Others」であるか判定される。
【0048】
ステップ104では、位置情報取得部11によって位置情報が読み込まれたか否かが判定される。ステップ104において位置情報が読み込まれたと判定された場合には、ステップ105に移行する。一方、ステップ104において位置情報が読み込まれなかったと判定された場合には、位置情報取得部11が位置情報を取得できなかったとしてステップ107に移行する。
【0049】
ステップ105では、位置情報取得部11によって読み込まれた位置情報の精度が高いか否かを判定する。ステップ105では、例えば、何個のGPS衛星から位置情報を検出したかを取得して、所定の個数以上のGPS衛星から位置情報を検出した場合に位置精度が高いと判定する。この他にも、GPS衛星の配置状況を示す指標であるPDOP(Position Dilution of Precision:位置精度低下率)を用いて位置精度の高さを判定してもよい。
【0050】
ステップ105において位置情報の精度が高いと判定された場合には、ステップ106に移行する。一方、ステップ105において位置情報の精度が低いと判定された場合には、検出された位置情報の信頼性が省燃費運転システム100で利用できる程高くないため、位置情報取得部11が位置情報を取得できなかったとしてステップ107に移行する。
【0051】
ステップ106では、位置情報取得部11にて位置情報が取得され、位置情報の精度も高いため、移動距離演算部16によって、位置情報に基づいて車両の移動距離を演算する。ステップ106では、位置情報取得部11によって検出された位置情報と、この位置情報の直前に検出された前回の位置情報とから、車両が移動した距離を演算して距離情報とする。
【0052】
一方、ステップ107では、GPSセンサ5によって車両の位置情報が検出されなかったか、又はGPSセンサ5によって検出された位置情報の精度が低いため、位置情報取得部11にて位置情報が取得されなかったと判定し、走行距離演算部17によって、車両の速度に基づいて車両の走行距離を演算して距離情報とする。
【0053】
ステップ108では、ステップ106又はステップ107にて演算された距離情報と、車両の絶対的な位置情報(緯度,経度)と、その位置における道路の勾配情報とを、記憶装置20のデータベース21に格納する。
【0054】
以上のステップ101〜ステップ108における処理を周期的に繰り返すことによって、記憶装置20には、図5(b)に示すような、道路の勾配情報のデータベース21が作成される。
【0055】
図5(b)は、図5(a)に示すような下り坂を含む道路を車両が走行した場合に作成されるデータベース21の一例である。図5(a)に示すように、この道路には距離情報が40m及び60mの位置に下り坂があるため、図5(b)のデータベース21でも、距離情報が40m及び60mの位置に対応する勾配情報が「Downhill」となっている。
【0056】
以上より、勾配情報データベース作成装置200は、車両が走行した道路の勾配情報を、車両の位置情報と距離情報とともにデータベース21に格納する。位置情報取得部11によって車両の位置情報が取得されなかった場合には、車両の速度から演算した走行距離を距離情報としてデータベース21に格納する。よって、位置情報が取得されなかった位置においても距離情報とともに勾配情報をデータベース21に格納できるため、位置情報を取得できるか否かにかかわらず道路の勾配情報をデータベース21に格納可能となる。
【0057】
データベース21は、実際に車両が走行した履歴に基づいて作成されるものである。データベース21は、車両が同じ経路を複数回走行することによって更新され、自己学習するものである。よって、車両が同じ経路を走行する回数が多いほど、データベース21の信頼性が向上する。
【0058】
なお、データベース21を、車両に搭載されるテレマティクスシステムなどの通信装置を介して車外のデータセンタに送信し、複数の車両のデータベース21を共有できるようにしてもよい。この場合、複数の車両のデータベース21を共有することで、効率的に道路の勾配情報を収集して利用することができる。
【0059】
次に、図6及び図7を参照して、勾配情報データベース作成装置200によって作成されたデータベース21を用いて省燃費運転を実行する省燃費運転システム100の作用について説明する。
【0060】
図6のフローチャートにおけるステップ201では、GPSセンサ5によって検出された車両の位置情報が、位置情報取得部11によって読み込まれる。ステップ201では、GPSセンサ5によって位置情報が検出されなかった場合には、位置情報は読み込まれない。
【0061】
ステップ202では、車速センサ1,補助ブレーキセンサ2,燃料流量センサ3,及びエンジン負荷センサ4によって検出された車両情報が読み込まれる。
【0062】
ステップ203では、位置情報取得部11によって位置情報が読み込まれたか否かが判定される。ステップ203において位置情報が読み込まれたと判定された場合には、ステップ204に移行する。一方、ステップ203において位置情報が読み込まれなかったと判定された場合には、位置情報取得部11が位置情報を取得できなかったとしてステップ205に移行する。
【0063】
ステップ204では、位置情報取得部11によって読み込まれた位置情報の精度が高いか否かを判定する。ステップ204において位置情報の精度が高いと判定された場合には、ステップ207に移行する。一方、ステップ204において位置情報の精度が低いと判定された場合には、検出された位置情報の信頼性が省燃費運転システム100で利用できる程高くないため、位置情報取得部11が位置情報を取得できなかったとしてステップ205に移行する。
【0064】
ステップ205では、距離演算部18によって、車両の位置情報が最後に検出された位置からの車両の走行距離を、車両の速度に基づいて演算する。例えば、図7において、車両が位置Yを走行している場合には、距離演算部18は、位置情報が最後に検出された位置である位置Xから位置Yまでの累計の距離Dを演算する。この例の場合、距離Dは、距離情報が記憶されている位置間の距離の総和であるため、D1+D2+D3で求められる。
【0065】
ステップ206では、データベース21に記憶してある距離情報を参照して、位置情報が最後に検出された位置から距離Dだけ離れた位置における勾配情報を取得する。具体的には、データベース21を参照して、位置情報が最後に検出された位置から距離Dだけ離れた位置から最も近い位置の勾配情報を参照し、車両の位置と勾配情報の位置との間の相対距離を演算する。この相対距離が例えば10m程度の所定の範囲内であるときに、取得された勾配情報が車両の位置における勾配情報であるとして、その勾配情報をデータベース21から取得する。
【0066】
このとき、データベース21に記憶されている各種情報と各種車両情報とから、車両がどの道路上をどの方向に走行しているかを予め特定しておく。例えば、走行中の車両においてGPSセンサ5が検出した連続する二箇所の位置情報から、車両がどの道路上をどの方向に走行しているかを判定する。また、車両に加速度センサを搭載して、車両が走行する方向を変えたことを検出するようにしてもよい。このようにして、位置情報が最後に検出された位置から正しい道路上の位置と同じように距離Dだけ離れた他の道路上の位置における勾配情報を誤って取得することを防止できる。
【0067】
ステップ207では、燃料制限部19によって、エンジンに供給される燃料を制限する。これにより、下り坂を走行する際には、車両は、燃料を消費せずに惰行走行を行うことができ、燃料消費量を抑制できる。
【0068】
ステップ207では、位置情報取得部11によって位置情報が取得された場合には、燃料制限部19は、取得された位置情報に対応する勾配情報をデータベース21から取得し、その勾配情報に基づいて燃料制限を実行することとなる。
【0069】
一方、位置情報取得部11によって位置情報が取得されなかった場合には、燃料制限部19は、車両の位置情報が最後に検出された位置から距離演算部18にて演算された走行距離だけ移動した位置における勾配情報をデータベース21から取得し、その勾配情報に基づいて燃料制限を実行することとなる。よって、位置情報が取得されなかった位置においても燃料制限を実行することができ、車両の位置情報を取得できるか否かにかかわらず省燃費運転が実行可能となる。
【0070】
以上の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
【0071】
データベース21には、車両が走行した道路の勾配情報が、車両の位置情報と距離情報とともに格納される。位置情報取得部11によって車両の位置情報が取得されなかった場合には、車両の速度から演算した走行距離を距離情報としてデータベース21に格納される。よって、位置情報が取得されなかった位置においても距離情報とともに勾配情報をデータベース21に格納できるため、位置情報を取得できるか否かにかかわらず道路の勾配情報をデータベース21に格納可能となる。
【0072】
また、データベース21を用いて省燃費運転を実行する場合、位置情報が取得されなかったときには、車両の速度に基づき、車両の位置情報が最後に検出された位置からの走行距離を演算し、位置情報が最後に検出された位置から、演算された走行距離だけ車両が移動した位置における勾配情報をデータベース21から取得して燃料制限を実行する。よって、位置情報が取得されなかった位置においても燃料制限を実行することができ、車両の位置情報を取得できるか否かにかかわらず省燃費運転が実行可能となる。
【0073】
次に、図8から図10を参照して、勾配情報データベース作成装置200におけるデータベース21の更新について説明する。
【0074】
図8に示すデータベース21の更新は、前回までの走行にて位置情報が取得されなかった位置を車両が再び走行し、今回の走行にて位置情報取得部11によって位置情報が取得された場合に、取得された位置情報をデータベース21に更に格納するものである。
【0075】
例えば、図9に示すように、山間部を通る道路をを車両が走行した場合、前回までの走行によって位置情報が取得されなかった位置(ID:4〜6)では、データベース21には、図10の上段に示すように緯度及び経度の位置情報は共に「情報なし」で、距離情報と勾配情報のみが記憶されている。このような道路を車両が再び走行した場合に、衛星の配置状況等が変化し、位置情報取得部11によって位置情報が取得されることがある。図8に示すデータベース21の更新は、このような場合に、共に「情報なし」として記憶されている緯度及び経度の位置情報を補完するためのものである。
【0076】
図8のフローチャートにおけるステップ301では、GPSセンサ5によって検出された車両の位置情報が、位置情報取得部11によって読み込まれる。ステップ301では、GPSセンサ5によって位置情報が検出されなかった場合には、位置情報は読み込まれない。
【0077】
ステップ302では、車速センサ1,補助ブレーキセンサ2,燃料流量センサ3,及びエンジン負荷センサ4によって検出された車両情報が読み込まれる。
【0078】
ステップ303では、位置情報取得部11によって位置情報が読み込まれたか否かが判定される。ステップ303において位置情報が読み込まれたと判定された場合には、ステップ304に移行する。一方、ステップ303において位置情報が読み込まれなかったと判定された場合には、位置情報取得部11が位置情報を取得できなかったとしてリターンする。
【0079】
ステップ304では、位置情報取得部11によって読み込まれた位置情報の精度が高いか否かを判定する。ステップ304において位置情報の精度が高いと判定された場合には、ステップ305に移行する。一方、ステップ304において位置情報の精度が低いと判定された場合には、検出された位置情報の信頼性が省燃費運転システム100で利用できる程高くないため、位置情報を取得できなかったとしてリターンする。
【0080】
ステップ305では、データベース21内の位置情報を参照し、位置情報取得部11によって読み込まれた位置情報に対応する位置が、データベース21に記憶されているか否かを判定する。ステップ305において位置情報がデータベース21に記憶されていると判定された場合にはリターンし、ステップ305において位置情報がデータベース21に記憶されていないと判定された場合には、ステップ306に移行する。
【0081】
ステップ306では、データベース21に記憶された距離情報に基づき、位置情報取得部11によって取得された位置情報を、距離情報に対応させてデータベース21に格納する。これにより、図10の下段に示すように、緯度及び経度の位置情報が共に「情報なし」であった位置における位置情報を補完することができる。
【0082】
次に、図11及び図12を参照して、勾配情報データベース作成装置200におけるデータベース21への位置情報の格納について説明する。
【0083】
図11に示すデータベース21への位置情報の格納は、移動距離演算部16にて演算された車両の移動距離と、走行距離演算部17にて演算された車両の走行距離との差が所定の範囲内であるときにのみ、車両の位置情報をデータベース21に格納するものである。
【0084】
例えば、図12(a)に示すように、車両がトンネルに入る手前などでは、GPSセンサ5の精度が悪くなることがあり、位置情報取得部11によって取得された位置情報が、車両が実際に走行する道路からずれる場合がある。図11に示す位置情報の判定は、このような場合に、精度の低い位置情報をデータベース21に格納させないためのものである。
【0085】
図11のフローチャートにおけるステップ401では、GPSセンサ5によって検出された車両の位置情報が、位置情報取得部11によって読み込まれる。ステップ401では、GPSセンサ5によって位置情報が検出されなかった場合には、位置情報は読み込まれない。
【0086】
ステップ402では、車速センサ1,補助ブレーキセンサ2,燃料流量センサ3,及びエンジン負荷センサ4によって検出された車両情報が読み込まれる。
【0087】
ステップ403では、ステップ402にて読み込まれた車両情報に基づき、勾配判定部15によって道路の勾配が「Downhill」であるか「Others」であるか判定される。
【0088】
ステップ404では、位置情報取得部11によって位置情報が読み込まれたか否かが判定される。ステップ404において位置情報が読み込まれたと判定された場合には、ステップ405に移行する。一方、ステップ404において位置情報が読み込まれなかったと判定された場合には、位置情報取得部11が位置情報を取得できなかったとしてステップ406に移行する。
【0089】
ステップ405では、車速センサ1によって検出された車両の速度に基づいて車両の走行距離Dvを演算するとともに、位置情報取得部11にて取得された位置情報に基づいて車両の移動距離Dlを演算する。
【0090】
具体的には、ステップ405では、移動距離演算部16によって、位置情報取得部11にて検出された位置情報と、この位置情報の直前に検出された前回の位置情報とから、車両が移動した移動距離Dlが演算され、走行距離演算部17によって、車速センサ1にて検出された車両の速度から、車両が走行した走行距離Dvが演算される。車両の移動距離Dlと走行距離Dvとが演算されると、ステップ407に移行する。
【0091】
一方、ステップ406では、位置情報取得部11によって位置情報が取得されなかったため、車両の速度に基づく走行距離Dvのみが、走行距離演算部17によって演算される。車両の走行距離Dvが演算されると、ステップ409に移行する。
【0092】
ステップ407では、ステップ405にて演算された車両の移動距離Dlと走行距離Dvとを比較して、位置情報の精度を判定する。具体的には、移動距離Dlと走行距離Dvとの比であるDl/Dvを演算して、Dl/Dvが所定の範囲の値であるか否かを判定する。例えば、移動距離Dl=走行距離Dvである場合には、Dl/Dvは、1.0である。よって、所定の範囲は、例えば0.95<Dl/Dv<1.05のような範囲に設定される。
【0093】
ステップ407においてDl/Dvが所定の範囲の値であると判定された場合には、位置情報の精度が高いためステップ408に移行する。一方、ステップ407においてDl/Dvが所定の範囲の値でないと判定された場合には、位置情報取得部11によって読み込まれた位置情報の精度が低いと判定してステップ409に移行する。
【0094】
ステップ408では、位置情報取得部11によって読み込まれた位置情報が所定の誤差範囲内に含まれており、位置精度が高いとステップ407にて判定されたことから、距離情報と勾配情報とともに緯度及び経度の位置情報をデータベース21に格納する。
【0095】
一方、ステップ409では、位置情報取得部11によって位置情報が取得されなかったか、又は位置情報取得部11によって取得された位置情報が所定の誤差範囲内に含まれておらず、位置精度が低いと判定されたことから、緯度及び経度の位置情報を共に「情報なし」として、距離情報及び勾配情報のみをデータベース21に格納する。
【0096】
以上のように、車両の位置情報から演算された移動距離と、車両の速度から演算された走行距離との差が所定の範囲内であるときにのみ、車両の位置情報をデータベース21に格納する。これにより、位置情報取得部11によって取得された位置情報の精度が高い場合にのみ、位置情報をデータベース21に格納される。よって、位置情報の精度が低い場合に位置情報がデータベース21に格納されることを防止できる。
【0097】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の勾配情報データベース作成装置は、車両における省燃費運転の促進に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
100 省燃費運転システム
200 勾配情報データベース作成装置
1 車速センサ
2 補助ブレーキセンサ
5 GPSセンサ
10 コントローラ
11 位置情報取得部
12 補助ブレーキ検出部
15 勾配判定部
16 移動距離演算部
17 走行距離演算部
18 距離演算部
19 燃料制限部
21 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記車両における補助ブレーキ装置の作動状態を検出する補助ブレーキ検出部と、
前記補助ブレーキ検出部によって検出された前記補助ブレーキ装置の作動状態に基づいて道路の勾配を判定する勾配判定部と、を備え、
前記勾配判定部にて判定された勾配情報が、前記位置情報取得部にて取得された位置情報とともに格納されるデータベースを作成する勾配情報データベース作成装置であって、
前記位置情報取得部によって検出された位置情報に基づいて前記車両の移動距離を演算する移動距離演算部と、
前記車両の車速に基づいて前記車両の走行距離を演算する走行距離演算部と、を備え、
前記位置情報取得部にて前記位置情報が取得された場合には、前記勾配情報を、前記移動距離演算部にて演算された距離情報に対応させて前記データベースに格納し、前記位置情報取得部にて前記位置情報が取得されなかった場合には、前記勾配情報を、前記走行距離演算部にて演算された距離情報に対応させて前記データベースに格納することを特徴とする勾配情報データベース作成装置。
【請求項2】
前回までの走行にて位置情報が取得されなかった位置を前記車両が再び走行したときに、前記位置情報取得部によって位置情報が取得された場合には、取得された位置情報を前記データベースに更に格納することを特徴とする請求項1に記載の勾配情報データベース作成装置。
【請求項3】
前記移動距離演算部にて演算された前記車両の移動距離と、前記走行距離演算部にて演算された走行距離との差が所定の範囲内であるときにのみ、前記車両の位置情報を前記データベースに格納することを特徴とする請求項1又は2に記載の勾配情報データベース作成装置。
【請求項4】
車両の位置情報を取得し、
前記車両における補助ブレーキ装置の作動状態を検出し、
前記補助ブレーキ装置の作動状態に基づいて道路の勾配を判定し、
道路の勾配情報を前記位置情報とともにデータベースに格納する勾配情報データベース作成方法であって、
前記位置情報が取得された場合には、前記勾配情報を、前記車両の位置情報に基づいて演算された前記車両の移動距離に対応させて前記データベースに格納し、
前記位置情報が取得されなかった場合には、前記勾配情報を、前記車両の速度に基づいて演算された前記車両の走行距離に対応させて前記データベースに格納することを特徴とする勾配情報データベース作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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