説明

包装された物品

【課題】製品の運搬および保存の間は機能要素を十分に保護すると共に製品の使用に際しては機能要素の機能を損なうことのない包装を提供する。
【解決手段】
透明フィルムで包装された物品であって次の(1)〜(5)の構成を有するもの。(1)物品1は角柱形状の外観を呈する。(2)物品1の第一及び第二の面2,6に露出して形成された機能要素が設けられる。(3)物品1の周囲が1枚の帯状の透明フィルム8で巻かれることにより、物品の第一及び第二の面2,6が透明フィルム8で覆われている。(4)少なくとも二箇所において透明フィルム8と物品1とが粘着剤によって接着されている。(5)少なくとも物品1の第一及び第二の面2,6と透明フィルム8との間には粘着剤が存在していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品、例えば電子機器、の包装に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の運搬および保存を行う間、製品の表面に露出するように形成された機能要素を保護するために、粘着テープが用いられる。例えば、特許文献1には、インク・ジェット・プリンターのインク・カートリッジ外面に設けられたノズルを保護するために、ノズルの露出面に粘着テープを貼り付けることが開示されている。
【特許文献1】特開平06−320741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように保護される製品に粘着テープを直接貼付した場合、その箇所の表面状態(例えば製品表面に印刷された製品型番)を目視できず、梱包作業が正確に行われたかどうかを確認することができない。また、製品を使用するにあたって粘着テープをはがすと、機能要素に粘着剤が残留する可能性がある。すなわち、残留した粘着剤が機能要素の機能を損なう可能性がある。たとえば、ノズル孔が粘着剤によって塞がれると、ノズル孔からインクが射出されなくなる。本発明の目的は、製品の運搬および保存の間は機能要素を十分に保護すると共に製品の使用に際しては機能要素の機能を損なうことのない包装を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決するための第一の手段は、透明フィルムで包装された物品であって次の(1)〜(5)の構成を有するものである。すなわち、
(1)物品は角柱形状の外観を呈する。
(2)物品の第一及び第二の面に露出して形成された機能要素がそれぞれ設けられる。
(3)物品の周囲が1枚の帯状の透明フィルムで巻かれることにより、物品の第一及び第二の面が透明フィルムで覆われている。
(4)少なくとも二箇所において透明フィルムと物品とが粘着剤によって接着されている。
(5)少なくとも物品の第一及び第二の面と透明フィルムとの間には粘着剤が存在していない。
【0005】
課題を解決するための第二の手段は、透明フィルムで包装された物品であって次の(1)〜(5)の構成を有するものである。すなわち、
(1)物品は角柱形状の外観を呈する。
(2)物品の第一の面に穴が設けられると共に第二の面に文字や記号等の表示がなされている。
(3)物品の周囲が1枚の帯状の透明フィルムで巻かれることにより、物品の第一及び第二の面が透明フィルムで覆われている。
(4)少なくとも二箇所において透明フィルムと物品とが粘着剤によって接着されている。
(5)少なくとも物品の第一及び第二の面と透明フィルムとの間には粘着剤が存在していない。
【0006】
また、課題を解決する第三の手段は、第二の手段に加えて次の(1)〜(3)の構成を備えるものである。すなわち、
(1)物品の第一面の穴の周囲には溝が形成されている。
(2)弾性材料からなる環状のパッキンが着脱可能に溝にはめ込まれている。
(3)パッキンは透明フィルムで押さえられており、溝からの脱落が防がれている。
【発明の効果】
【0007】
第一及び第二の発明によれば、透明フィルムを用いて包装しているので、包装状態のまま物品の表面を見ることができると共に、物品から透明フィルムを剥がす際に、穴(機能要素)の設けられた第一の面、および文字や記号(機能要素)が表示された第二の面には粘着剤が残留するおそれが無いので、穴や表示(機能要素)の機能を損なうことなく包装することができる。
【0008】
第二の発明によれば、第一の発明の効果に加えて、脱落しやすいパッキンを確実に保持して包装すると共に、包装状態のままパッキンの有無を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を次の実施例1に示す。
【実施例1】
【0010】
図1は包装前の物品の斜視図であり、(a),(b)は異なる視点を示す。図2は包装用の透明フィルムの展開図を示す。図3は包装後の物品の斜視図であり、(a),(b)は異なる視点を示す。図1(a)と図3(a)とが対応し、図1(b)と図3(b)とが対応する。図1〜3において同一の部分には同一の符号を付す。
【0011】
まず、包装前の物品1の状態を図1を参照しつつ説明する。物品1は具体的には気体流量計であって、外観が直方体、すなわち四角柱形状、を呈するものである。この気体流量計1の底面が第一の面2を成す。第一の面2には二つの穴3,4が設けられており、一方が気体流入口、他方が気体流出口として機能する。すなわち、気体流量計1の内部には図示しない流路が設けられており、この流路の両端が穴3,4として第一の面2に現れている。気体流量計1の内部には図示しない熱式流量検知器が設けられており、流路に流れる気体の流量を検知する。第一の面2には、二つの穴3,4の周囲を囲むように眼鏡形の溝が形成され、その溝に同形のゴム製のパッキン5がはめ込まれている。このパッキン5は、第一の面2がマニホールドの面に対向して取り付けられた際に、面間からの気体の漏れを防ぐ。気体流量計1の一側面が第二の面6を成す。第二の面6には図示しない文字や記号等の表示機能要素が印刷されている。すなわち、製品型番、仕様、機能、商標等が表示されている。気体流量計1の一面から導出されている電線7は、気体流量計1の内部の熱式流量検知器に電力を供給すると共に熱式流量検知器からの流量信号を外部へ取り出すためのものである。
【0012】
包装用の透明フィルム8は、図2に展開図を示す通り、長方形の帯状の合成樹脂製シートである。図中の破線は折り曲げ位置を表す仮想線であり、この仮想線によって4つの部分に区分される。これらの4つの区分は、四角柱形状の気体流量計1の各面にそれぞれ対応する。すなわち、透明フィルム8の一部分81が流量計1の第一の面2に対応し、透明フィルム8の一部分82が流量計1の第二の面6に対応する。そのため、一部分81及び82には粘着剤が塗布されていない。また、第一および第二の面以外に対応する部分の透明フィルム8には、粘着剤83,84が塗布されている。この粘着剤83,84は、その粘性によって透明フィルム8を流量計1の表面に仮止め接着するものである。粘着剤83,84は流量計1の表面を構成する材質よりも、透明フィルム8の材質に対して高い化学的親和性を有する。それゆえ、透明フィルム8を剥がす際に粘着剤83,84は全て透明フィルム8に粘着し、流量計1の表面には残留しない。
【0013】
包装後の物品1の状態を、図3を参照しつつ説明する。気体流量計1の全周囲に透明フィルム8を巻き付けて包装したものである。気体流量計1の、第一の面2及び第二の面6を除く面に粘着剤83及び84が接着するように透明フィルム8が巻きつけられている。透明フィルム8の一部分81が気体流量計1の第一の面2に対向し、透明フィルム8の一部分82が気体流量計1の第二の面6に対向しており、これらにおいては透明フィルム8と気体流量計1の表面との間に粘着剤が存在していない。また、透明フィルム8の一端部85が気体流量計1の端部からはみ出すように設けられており、透明フィルム8を気体流量計1から取り去る際の手がかりになる。当然ながら、この一端部85には粘着剤は塗布されていない。
【0014】
上記の包装によれば、物品1の表面が傷つくこと、それによって物品1の表面6に記載された表示が損なわれることを防止できる。また、物品1に設けられた穴3,4の内部へ埃などの異物が侵入して物品1内部の、例えば熱式流量検知器の、機構を損なうことを防止できる。さらに、着脱可能なパッキンが物体1から脱落することを防止できる。
【0015】
なお、上記の実施例では物品1を気体流量計として例示したが、これに限られるものではない。また、物品1の形状を四角柱として例示したが、三角柱、五角柱等の多角柱形状であっても構わない。また、物品1の表面に露出するように形成された機能要素として穴3,4および表示印刷を例示したが、これに限るものではない。例えば、検出器の検出素子や機械的な位置決め用の凹凸形状なども、ここで言う機能要素に相当する。さらに、透明フィルム8は、物品1の表面が透けて見える程度の透明度を有していれば機能する。したがって、合成樹脂製に限るものではなく、パラフィン紙等でも使用できる。その他、材質や形状についての種々の変形例が想定されるが、全て本発明の技術的範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】包装前の物品の斜視図を表す。
【図2】包装用の透明フィルムの展開図を表す。
【図3】包装後の物品の斜視図を表す。
【符号の説明】
【0017】
1 物品(気体流量計)
2 物品の第一の面
3,4
3,4
穴(機能要素)
5 パッキン
6 物品の第二の面
7 電線
8 透明フィルム
81 物品の第一の面に位置する透明フィルムの一部分
82 物品の第二の面に位置する透明フィルムの一部分
83,84 透明フィルムに塗布された粘着剤
85 透明フィルムの一端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルムで包装された物品であって次の(1)〜(5)の構成を有するもの。
(1)物品は角柱形状の外観を呈する。
(2)物品の第一及び第二の面に露出して形成された機能要素が設けられる。
(3)物品の周囲が1枚の帯状の透明フィルムで巻かれることにより、物品の第一及び第二の面が透明フィルムで覆われている。
(4)少なくとも二箇所において透明フィルムと物品とが粘着剤によって接着されている。
(5)少なくとも物品の第一及び第二の面と透明フィルムとの間には粘着剤が存在していない。
【請求項2】
透明フィルムで包装された物品であって次の(1)〜(5)の構成を有するもの。
(1)物品は角柱形状の外観を呈する。
(2)物品の第一の面に穴が設けられると共に第二の面に文字や記号等の表示がなされている。
(3)物品の周囲が1枚の帯状の透明フィルムで巻かれることにより、物品の第一及び第二の面が透明フィルムで覆われている。
(4)少なくとも二箇所において透明フィルムと物品とが粘着剤によって接着されている。
(5)少なくとも物品の第一及び第二の面と透明フィルムとの間には粘着剤が存在していない。
【請求項3】
請求項2記載の包装された物品であって次の(1)〜(3)の構成を備えるもの。
(1)物品の第一面の穴の周囲には溝が形成されている。
(2)弾性材料からなる環状のパッキンが着脱可能に溝にはめ込まれている。
(3)パッキンは透明フィルムで押さえられており、溝からの脱落が防がれている。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−44744(P2006−44744A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228961(P2004−228961)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】