説明

包装シート、ワイヤーハーネス組立体、及び包装シートの装着構造

【課題】少ない寸法種類を用意するだけで、多種の装着対象部長さに対応できるようにするワイヤーハーネス保護用の包装シートを提供する。
【解決手段】たて糸束11Aとよこ糸束11Bの平織りの編織物により伸縮性シート11を構成し、編み目の方向A、Bを、伸縮させるべき方向に対して角度を持たせることにより、横方向Xおよび縦方向Yに伸縮性を持たせた。横方向および縦方向に沿った4つの辺を持つ長方形状をなし、横方向に沿った1つの辺の近傍の片面に、該辺に沿って粘着剤12を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にワイヤーハーネスの外周に装着することでワイヤーハーネスを保護するワイヤーハーネス保護用の包装シート、その包装シートを装着したワイヤーハーネス組立体、及び、包装シートの装着構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は従来のワイヤーハーネス保護用の包装シートを示す(例えば、特許文献1参照)。この包装シート100は、矩形の平坦なシート材101の一方の側縁部に接着部102を設け、図6に示すように、ワイヤーハーネスWの外周に巻き付けながら、接着部102に他端縁を被せることで、ワイヤーハーネスWを保護するものである。
【特許文献1】実開昭58−81990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種のワイヤーハーネス外装用の包装シートは、一定の長さにカットされたものであり、図7に示すように、ワイヤーハーネスW側の装着対象部分の長さL1、L2に対応した長さL1、L2にカットしたものを用意して、装着しなくてはならなかった。ワイヤーハーネス側の装着対象部分の長さは非常に多く種類があり、それに対応させるには長さの違う多数種のシートを用意しなくてはならず、生産管理が煩雑であった。また、人手作業で取り付けるため、長さの違うシートを間違って取り付けるおそれがあり、品質管理上においても問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情を考慮し、少ない寸法種類を用意するだけで、ワイヤーハーネス等に装着する時点で長さを調節しながら、適切に装着することのできる包装シート、その包装シートを装着したワイヤーハーネス組立体、及び、包装シートの装着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明の包装シートは、繊維でできた編織物または不織布などのシート状物体であり、伸縮させるべき方向に対して角度を持たせた第1の方向およびそれと略直交する第2の方向に繊維の向きを配することで、横方向および縦方向に伸縮性を持たせたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の包装シートであって、複数の糸を一列または複数列に配した帯状の糸の束を、たて糸(経糸)束およびよこ糸(緯糸)束として、前記第1の方向および第2の方向にそれぞれ配し、前記たて糸束とよこ糸束を平織りに編成してなることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の包装シートであって、前記横方向および縦方向に沿った4つの辺を持つ長方形状をなし、横方向に沿った1つの辺の近傍の片面に、該辺に沿って粘着剤が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の包装シートであって、ワイヤーハーネスの外周に装着することでワイヤーハーネスを保護するワイヤーハーネス外装用のシートであることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明のワイヤーハーネス組立体は、請求項4に記載の包装シートを、その横方向をワイヤーハーネスの軸線方向に沿わせ且つその縦方向をワイヤーハーネスの周方向に沿わせて配置し、巻き付けるべきワイヤーハーネスの装着対象部分の形状または長さ等の状況に応じて、包装シートをそのままの状態または伸縮させた状態で、前記ワイヤーハーネスの外周に巻き付け固定したことを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明の包装シートの装着構造は、請求項1〜3のいずれかに記載の包装シートを、その横方向または縦方向を被装着部材の長手方向に沿わせて配置し、巻き付けるべき被装着部材の装着対象部分の形状または長さ等の状況に応じて、前記包装シートをそのままの状態または伸縮させた状態で、前記被装着部材の外周に巻き付け固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、シートを構成する繊維の揃う方向が、伸縮方向である横方向および縦方向に対して斜めに設定されているから、横方向に引っ張ると、その張力により繊維の向きが張力のかかる方向に傾いて、シートが横方向に伸び、縦方向に縮む。また、縦方向に引っ張ると、同様に、シートが縦方向に伸び、横方向に縮む。
【0012】
従って、同一寸法のシートであっても、張力や圧縮力により繊維の傾きが変わることによって、シートの横方向または縦方向の寸法を自由に変えることができ、ワイヤーハーネスに装着する場合などに、装着対象部分の寸法の種類が多くても、少ない寸法種類のシートで対応することができる。そして、寸法種類を少なくできることから、シートを製造し装着する場合の生産管理の向上を図ることができるし、着け間違いを少なくできて、品質向上に寄与することができる。
【0013】
また、伸縮性を発揮できるため、例えば、ワイヤーハーネスに装着した場合に、ワイヤーハーネスの曲げやすさを確保することができると共に、シートに弛みやシワもできにくくすることができ、見映えを良好に保つことができる。
【0014】
また、ゴム等の素材自体の弾性によらず、張力により繊維の方向が傾くことによって伸縮性を得るので、いったん伸縮させると、別の外力がかからない限り、その寸法を維持しておくことができる。つまり、引っ張って寸法を変えた場合、そのままの状態で無理な力を加えずに、ワイヤーハーネス等に装着することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、複数の糸を一列または複数列に配した帯状の糸の束を、たて糸(経糸)束およびよこ糸(緯糸)束として平織りに編成してなり、編み目の方向を、シートの横方向および縦方向に対して斜めに設定したので(つまり、たて糸束およびよこ糸束を第1の方向および第2の方向にそれぞれ配したので)、シートを横方向または縦方向に引っ張った際に、その張力により、糸の向きが張力のかかる方向に傾きやすくなり、その結果、シートが伸び縮みしやすくなる。
【0016】
即ち、たて糸とよこ糸を1本ずつ平織りに編成すると、編み目が緊密になりすぎて、伸縮しにくくなるが、複数本の糸を一列または複数列に並べて帯状の束にし、それをたて糸(たて糸束)およびよこ糸(よこ糸束)として平織りに編成したので、隣接する糸同士が摺動することによる遊びを確保することができ、その遊びによって編み目の方向の傾きやすさを確保することができ、その結果、良好な伸縮性を発揮することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、ワイヤーハーネス等の外周に巻き付けながら、シートの一方の辺側に設けた粘着剤に他方の辺側を被せることで、ワイヤーハーネス等の外周に簡単に固定することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、ワイヤーハーネスの外装材として使用することにより、その伸縮性を有効に発揮することができる。つまり、ワイヤーハーネスの外装材として使用する場合、シートの横方向または縦方向をワイヤーハーネスの軸線方向に沿わせ、伸縮性を利用してシートの長さを、ワイヤーハーネス側の装着対象部分の長さに対応させて調整しながら、シートをワイヤーハーネスの外周に巻き付ける。
【0019】
そうすることにより、少ない寸法種類のシートで、多くのワイヤーハーネス側の装着対象部分の長さの違いに対応することができる。従って、シート自体の寸法種類を少なくすることができて、生産管理の容易化を図ることができるし、着け間違いを減らして品質向上に寄与することもできる。また、シートが伸縮性を有するがゆえに、ワイヤーハーネスの曲げやすさを確保することができると共に、シートに弛みやシワができずにきれいな外装体を形成することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項4に記載の包装シートを、その伸縮性を利用しながらワイヤーハーネスの外周に巻き付け固定したので、多数の寸法種類の包装シートを用意しないでも、ワイヤーハーネス上の必要部分を確実に包装シートで保護することができ、部品管理の手数が省けて、コストダウンが図れる。
【0021】
請求項6の発明によれば、請求項1〜3のいずれかに記載の包装シートを、その伸縮性を利用しながら被装着部材の外周に巻き付け固定したので、多数の寸法種類の包装シートを用意しないでも、被装着部材上の必要部分を確実に包装シートで保護することができ、部品管理の手数が省けて、コストダウンが図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をワイヤーハーネス保護用の外装シートに適用した場合の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は包装シート1の平面図、図2は包装シート1の編み目の構造を示す部分断面図、図3(a)は包装シート1の初期状態、図3(b)は包装シート1を横方向(矢印X方向)に伸ばした状態、図3(c)は包装シート1を縦方向(矢印Y方向)に伸ばした状態をそれぞれ示す平面図である。また、図4は包装シート1をワイヤーハーネスW側の装着対象部分の長さに対応させて伸縮させた例を示す図である。
【0024】
この包装シート1は、図4に示すように、ワイヤーハーネスWの外周に装着することでワイヤーハーネスWを保護するものであり、図1に示すように、伸縮させるべき方向(X方向およびY方向)に対して略45°の角度を持たせた第1の方向Aおよびそれと略直交する第2の方向Bに、たて糸(経糸)束11Aとよこ糸(緯糸)束11Bによる編み目の方向を揃えることで、横方向Xおよび縦方向Yに伸縮性を持たせた伸縮性シート11を基本部材として有するものである。
【0025】
即ち、伸縮性シート11は、図2にも示すように、複数(図示例では3本)の糸11sを一列(複数列でも可)に配した帯状の糸の束を、たて糸束11Aおよびよこ糸束11Bとして、第1の方向(編み方向)Aおよび第2の方向(編み方向)Bにそれぞれ配し、たて糸束11Aとよこ糸束11Bを平織りに編成することで、布状の編織物として形成されており、横方向Xおよび縦方向Yに沿った4つの辺を持つ長方形状をなしている。そして伸縮性シート11の各辺に、解け防止の縁かがり13を施した上で、伸縮性シート11の長手方向である横方向Xに沿った1つの辺の近傍の片面に、該辺に沿って粘着剤12を設けることにより、実施形態の包装シート1が構成されている。
【0026】
なお、糸11sとしては、天然繊維や合成繊維によるフィラメント(長繊維)を使用する。フィラメントとしては、モノフィラメント(1本のフィラメントからなるフィラメント糸)でも、マルチフィラメント(複数本のフィラメントを撚り合わせて1本のフィラメント糸としたもの)でも利用可能である。また、平織りとは、各よこ糸(緯糸)が交互にたて糸(経糸)の上下を通過し、各たて糸が交互によこ糸の上下を通過する織物組織のことである。
【0027】
このように構成した包装シート1は、複数の糸11sを一列に配した帯状の糸の束を、たて糸束11Aおよびよこ糸束11Bとして平織りに編成し、しかも、編み目の方向を、包装シート1の長手方向である横方向Xおよび長手方向と直交する方向である縦方向Yに対して斜めに設定しているので、図3に示すように、包装シート1を横方向Xまたは縦方向Yに引っ張った際に、その張力Px、Pyにより、糸11sの向きを張力Px、Pyのかかる方向に容易に傾けることができ、横寸法および縦寸法を伸縮させることができる。
【0028】
ここでは、ワイヤーハーネスに装着する場合、横方向Xの寸法が調整の必要となるので、例えば、図3(a)に示すように、初期状態での横寸法がL0であったものを、図3(b)に示すように、横方向Xに張力Pxで引っ張ることで寸法L1に伸ばしたり、また、図3(c)に示すように、縦方向Yに張力Pyで引っ張ることで寸法L2に縮めたりする。
【0029】
そうすることにより、図4に示すように、ワイヤーハーネスWの装着対象部分の長さL1、L2に、包装シート1の寸法をそれぞれ対応させることができて、包装シート1を適正に装着することができる。
【0030】
ワイヤーハーネスWへの装着に当たっては、包装シート1の横方向XをワイヤーハーネスWの軸線方向に沿わせ、伸縮性を利用して包装シート1の横方向Xの長さを、ワイヤーハーネスW側の装着対象部分の長さに対応させて調整しながら、包装シート1をワイヤーハーネスWの外周に巻き付け、巻き付けながら包装シート1の一方の辺側に設けた粘着剤12に他方の辺側を被せることにより、ワイヤーハーネスWの外周に固定する。
【0031】
特に、本実施形態の場合、たて糸とよこ糸を1本ずつ平織りに編成するのではなく、複数本の糸11sを一列または複数列に並べて帯状の束にし、それをたて糸(たて糸束11A)およびよこ糸(よこ糸束11B)として平織りに編成しているので、隣接する糸11s同士が摺動することによる遊びを確保しやすくなり、その遊びによって編み目の方向の傾きやすさを確保することができて、その結果、横方向Xおよび縦方向Yに良好な伸縮性を発揮することができる。
【0032】
このように、包装シート1の特に横方向Xの寸法を自由に変えることができるので、ワイヤーハーネスWに装着する場合、装着対象部分の寸法の種類が多くても、少ない寸法種類の包装シートで対応することができる。そして寸法種類を少なくできることから、包装シート1の生産管理が容易になる上、着け間違いを少なくすることができて、品質向上に寄与することができる。また、伸縮性を発揮できるため、ワイヤーハーネスWの曲げやすさを確保することができると共に、包装シート1に弛みやシワもできにくくなって、見映えの良好が外装体を形成することができる。
【0033】
なお、包装シート1の寸法変化の範囲は、繊維、糸などの径、編組の密度、編み方などにより自由に変えることができる。
【0034】
また、上記実施形態では、本発明をワイヤーハーネス保護用の外装シートとして適用した場合を説明したが、本発明の使用対象はそれに限定されるものではない。例えば、他の被装着対象部材を考えた場合、その伸縮性を利用しながら被装着部材の外周に巻き付け固定することにより、多数の寸法種類の包装シートを用意しないでも、被装着部材上の必要部分を確実に包装シートで保護することができる。従って、部品管理の手数が省け、コストダウンが図れる。
【0035】
また、上記実施形態では、伸縮性シート11に編織物を使用した場合を示したが、繊維(ステープル)のバインドの方向をA方向およびB方向に揃えることで、不織布を利用しても、同様の伸縮性を持たせることができる。即ち、織られていない不織布であっても、繊維のバインド工法によりシートの長手方向に伸縮させることが可能であり、この場合でも上記実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態の包装シートの平面図である。
【図2】図1の包装シートの編み目の構造を示す部分断面図である。
【図3】(a)は前記包装シートの初期状態、(b)は包装シートを横方向(矢印X方向)に伸ばした状態、(c)は包装シートを縦方向(矢印Y方向)に伸ばした状態をそれぞれ示す平面図である。
【図4】前記包装シートをワイヤーハーネス側の装着対象部分の長さに対応させて伸縮させた例を示す図である。
【図5】従来の包装シートの例を示す平面図である。
【図6】従来の包装シートをワイヤーハーネスに巻き付けた状態を示す斜視図である。
【図7】従来の包装シートを、ワイヤーハーネスの装着対象部分の長さに対応させる場合の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 包装シート
11 伸縮性シート(シート状物体)
12 粘着剤
11A たて糸束
11B よこ糸束
11s 糸
A,B 編み目の方向(第1の方向、第2の方向)
X 横方向(長手方向)
Y 縦方向(長手方向と直交する方向)
W ワイヤーハーネス(被装着部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維でできた編織物または不織布などのシート状物体であり、伸縮させるべき方向に対して角度を持たせた第1の方向およびそれと略直交する第2の方向に繊維の向きを配することで、横方向および縦方向に伸縮性を持たせたことを特徴とする包装シート。
【請求項2】
請求項1に記載の包装シートであって、
複数の糸を一列または複数列に配した帯状の糸の束を、たて糸束およびよこ糸束として、前記第1の方向および第2の方向にそれぞれ配し、前記たて糸束とよこ糸束を平織りに編成してなることを特徴とする包装シート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の包装シートであって、
前記横方向および縦方向に沿った4つの辺を持つ長方形状をなし、横方向に沿った1つの辺の近傍の片面に、該辺に沿って粘着剤が設けられていることを特徴とする包装シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の包装シートであって、
ワイヤーハーネスの外周に装着することで該ワイヤーハーネスを保護するワイヤーハーネス外装用のシートであることを特徴とする包装シート。
【請求項5】
請求項4に記載の包装シートを、その横方向をワイヤーハーネスの軸線方向に沿わせ且つその縦方向をワイヤーハーネスの周方向に沿わせて配置し、巻き付けるべきワイヤーハーネスの装着対象部分の形状または長さ等の状況に応じて、包装シートをそのままの状態または伸縮させた状態で、前記ワイヤーハーネスの外周に巻き付け固定したことを特徴とするワイヤーハーネス組立体。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の包装シートを、その横方向または縦方向を被装着部材の長手方向に沿わせて配置し、巻き付けるべき被装着部材の装着対象部分の形状または長さ等の状況に応じて、前記包装シートをそのままの状態または伸縮させた状態で、前記被装着部材の外周に巻き付け固定したことを特徴とする包装シートの装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−30918(P2007−30918A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215828(P2005−215828)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】