説明

包装体およびその製造方法

【課題】 過酸化水素を含む2剤型染毛剤第二剤をフィルム製容器に収納した包装体において、過酸化水素の分解により発生する酸素による容器の膨張を防止するとともに、2剤型染毛剤第二剤中の過酸化水素の濃度変化を抑える。
【解決手段】 水に対する過酸化水素の含有率がyである2剤型染毛剤第二剤をフィルムよりなる容器内に充填して包装体を製造するに当たり、フィルムとして、包装体中における過酸化水素の分解により発生する単位時間当りの酸素発生量より大きい酸素透過率が得られるとともに、単位時間当たりの過酸化水素の分解する質量xを前記含有率yで除した質量zの水が単位時間当たりに蒸発するとした場合の値にほぼ等しい水蒸気透過率が得られるものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を詰めた包装体に関し、特に過酸化水素を含む液体を詰めた包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体及びその液体を詰めた容器からなる包装体では、種々の形態が提案されている。例えば、2剤型染毛剤第二剤は、過酸化水素その他の薬剤が溶け込んだ水溶液であるが、プラスチック製成型容器に詰めて販売されている。2剤型染毛剤第二剤が入っている従来のプラスチック製成型容器は、2剤型染毛剤第二剤を漏らさないために液密性を要求される。
【0003】
2剤型染毛剤第二剤中の過酸化水素は、安定化の処理がなされていることから、20℃前後の温度では比較的安定化しているものの、酸素を発生しつつ徐々に分解する。
【0004】
従来の包装体は、過酸化水素等の化学物質を含む液体を備えており、さらに化学物質及び液体を入れるためのプラスチック製成型容器を備えている。液密性を有するプラスチック製成型容器は、同時に気密性も有していることから、過酸化水素が発生する酸素など、化学物質が発生するガスによって膨張するという問題を抱えている。
【0005】
また、過酸化水素等の化学物質が化学反応によって変化するため、内容物に占める当該化学物質の含有率が減少するという問題も生じる。
【特許文献1】特開2001−10642号公報
【特許文献2】特表2001−511416号公報
【特許文献3】特願2001−321031号(特開2003−116632号)
【特許文献4】特開2000−2260336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、過酸化水素を含む2剤型染毛剤第二剤が詰められている容器からなる包装体の膨張を抑制するとともに、2剤型染毛剤第二剤中の過酸化水素の含有率を安定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
そして、本発明は上記目的を達成するために、第1の課題解決手段として、水に対する過酸化水素の含有率がyである2剤型染毛剤第二剤をフィルムよりなる容器内に充填して包装体を製造するに当たり、前記フィルムとして、包装体中における過酸化水素の分解により発生する単位時間当りの酸素発生量より大きい酸素透過率が得られるとともに、単位時間当たりの過酸化水素の分解する質量xを前記含有率yで除した質量zの水が単位時間当たりに蒸発するとした場合の値にほぼ等しい水蒸気透過率が得られるものを使用した、包装体の製造方法を提供するものである。
ここで「水に対する過酸化水素の含有率」は過酸化水素の質量を水の質量で除した値である。
【0008】
第2の課題解決手段は、第1の課題解決手段において、フィルムとして、該フィルムから製作した容量100ml、内面積0.023mの容器に2剤型染毛剤第二剤を充填した場合に、保管温度40℃の環境下での酸素透過率が8cc/180日、水蒸気透過率が2.5〜4.5g/180日となるものを使用するものである。
【0009】
第3の課題解決手段は、第1の課題解決手段において、フィルムとして、該フィルムから製作した容量1000ml、内面積0.068mの容器に2剤型染毛剤第二剤を充填した場合に、保管温度40℃の環境下での酸素透過率が300〜500cc/180日、水蒸気透過率が25〜45g/180日となるものを使用するものである。
【0010】
第4の課題解決手段は、第1の課題解決手段において、フィルムとして、該フィルムから製作した容量500ml、内面積0.046mの容器に2剤型染毛剤第二剤を充填した場合に、保管温度40℃の環境下での酸素透過率が150〜250cc/180日、水蒸気透過率が12.5〜22.5g/180日となるものを使用するものである。
【0011】
第5の課題解決手段は、第1から第4の課題解決手段のいずれかの方法によって製造された包装体である。
【0012】
第1から第5の課題解決手段による作用効果は次のとおりである。すなわち、過酸化水素が分解して酸素が発生しても、発生した酸素を、フィルムを透過させて包装体外部に逃がすことができ、包装体内部に酸素を充満させない。また、過酸化水素の分解に伴って、2剤型染毛剤第二剤中の過酸化水素の質量が減少する。水は、包装体内が飽和蒸気圧に達していれば蒸発が進まないので、フィルムが透過する水蒸気量に応じて水の量を減じられる。フィルムを透過する水蒸気量を過酸化水素の質量変化に則して選定することにより水と過酸化水素の比をほぼ一定に保つことができる。
【0013】
過酸化水素が分解して減少する質量をxグラムとすると、質量xを過酸化水素の含有率yで除した値x/yが、過酸化水素が分解しても過酸化水素水の濃度を一定に保つために、単位時間当たりに取り除かなければならない水の質量zに相当する。水蒸気透過率は、この水の質量zが単位時間当りに蒸発するとした場合の値にほぼ等しく、従って余分な水を除去して過酸化水素水の濃度を安定に保てる。
【0014】
また、第2ないし第4の課題解決手段によれば、同手段に係る選定条件を満たすフィルムを使用して容器を製作することにより、保管温度15℃から30℃で6ヶ月を越える長期間保管する場合における過酸化水素の濃度を安定化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態に係る包装体を図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る包装体の外観を示す斜視図である。
図1の包装体1は、プラスチックフィルム製の容器本体2、コネクタ3及び2剤型染毛剤第二剤(図示省略)を備えてなる。
プラスチックフィルム製容器本体2は、4枚のプラスチック製フィルムによって構成されている。正面側部の第1フィルム2aに対応して背面側部の第2フィルム(図示省略)が配置され、第1及び第2フィルムは相互に上下縁部がヒートシールされてシール線4aが上下位置に形成されている。
第3及び第4フィルムが各々半分に織り込まれた状態で、シール線4aの端部の各々に、第3及び第4フィルムの各々の上下端部が挟み込まれている。
第1フィルム2aと第2フィルムの横縁部は、襠をつくるために、第3フィルム2b及び第4フィルム(図示省略)の横縁部にヒートシールされてシール線4bが形成される。
図2は、2剤型染毛剤第二剤の入っていない空の状態のプラスチックフィルム製容器を示す平面図及び正面図である。
図2に示すようにフィルム2bにより形成される襠が折り込まれた状態においては、フィルム数枚分まで薄くできる。そのため2剤型染毛剤第二剤を充填する前の空の状態について比較すると、従来のプラスチック製成型容器に比べ、プラスチックフィルム製容器本体2の占有体積を少なくでき、輸送し保管する際のコストを削減することができる。また、廃棄する際にも廃棄物の容積を減少させることができる。
【0016】
図2に示すプラスチックフィルム製容器本体2に取り付けられているコネクタ3は、液密に再閉栓可能に構成されている。
コネクタ3は、例えば、正面側部の第1のフィルム2a(図2の紙面表側)と第2フィルム(図2の紙面裏側)とのヒートシールの際に、形成される上部シール線4aの略中央部に取り付けられる。コネクタ3の取り付けは、第1フィルム2aと第2フィルムとの間にコネクタ3を挟みこんだ状態でヒートシールすることにより行われる。
【0017】
次に、コネクタ3の構成を図3及び図4に基づいて説明する。コネクタ3には、プラスチックフィルム製容器2内に詰められた2剤型染毛剤第二剤を出し入れするための貫通孔3aが設けられている。また、コネクタ3には、プラスチックフィルム製容器本体2の内部側にキャップ3bが配設される。キャップ3bには、図4に示すように嵌合部3cが設けられ、図3に示すように嵌合部3cが貫通孔3aに嵌合されることにより、プラスチックフィルム製容器本体2が液密に密封される。
【0018】
次に、プラスチックフィルム製容器本体2を構成しているフィルムについて説明する。
第1から第4フィルムには同じ材質のものを用いてもよく、異なる材質のものとしてもよい。
15℃から30℃の条件で、数重量%から10重量%の濃度の過酸化水素水を保管するのに適しているのは、例えば、厚さ数μmから二十μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ数μmから二十μmのナイロンフィルム及び厚さ数十μmから二百μmのポリエチレンフィルムを容器の外側から内側に順に積層してなる積層フィルムである。
プラスチックフィルム製容器本体2の第1から第4フィルムのいずれかに上記のフィルムが含まれるか、又は全てを上記フィルムで構成してもよいが、上記フィルムは500mlから1000ml程度の比較的大型の容器に適している。
また、上記フィルム構成においてさらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムに酸化アルミニウムまたは酸化シリコンを蒸着した酸化アルミニウム層(アルミナ蒸着層)または酸化シリコン層(シリカ蒸着層)を備えてもよい。このフィルムを用いてプラスチックフィルム製容器本体2を構成する場合には、ガスバリア性が向上しており、100ml程度の比較的小型の容器に適している。
また、プラスチックフィルム製容器本体2の第1から第4フィルムのいずれかに、厚さ数から二十μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ十から三十μmのエチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム及び厚さ数十から二百μmのポリエチレンフィルムを容器の外側から内側に順に積層してなる積層フィルムを用いてもよい。
【0019】
美容室などの室内において、15℃から30℃の温度条件で保管する場合、次のことが実験的に確かめられている。即ち、6重量%の過酸化水素濃度の2剤型染毛剤第二剤を容量100ml、内面積0.023mのプラスチックフィルム製容器本体2に入れたとき、保管温度40℃の環境下での容器1個当たりの酸素透過率が8cc/180day、水蒸気透過率が2.5から4.5グラム/180dayに設定することにより、保管温度15℃から30℃で6ヶ月を越える長期保管において過酸化水素の濃度を安定化できることが確かめられている。
例えば、酸化アルミニウム層(アルミナ蒸着層)が蒸着された厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ15μmのナイロンフィルム及び厚さ100μmのポリエチレンフィルムを容器の外側から内側に順に積層してなる積層フィルム(以下アルミナ蒸着フィルムという)を2枚重ね合わせ、ポリエチレンフィルム同士をヒートシールして90mm×130mmのアルミナ蒸着フィルム製容器を製作し、6重量%の過酸化水素濃度を有する2剤型染毛剤第二剤を充填したものを製造した。アルミナ蒸着層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの間に配置される。
【0020】
上述のアルミナ蒸着フィルム製容器において、温度40℃(相対湿度10%程度)の乾燥機の中に入れて、6ヶ月間保管した後の過酸化水素濃度は、クリーム状の2剤型染毛剤第二剤について平均値で0.06重量%濃度が薄まった。つまり、6重量%から5.94重量%へ変化した。また、液状の2剤型染毛剤第二剤について平均値で0.20重量%濃度が薄まった。
上述のアルミナ蒸着フィルム製容器を15℃から30℃の室内に保管した後、過酸化水素濃度は、クリーム状の2剤型染毛剤第二剤について平均値で0.03重量%濃度が濃くなった。つまり、6重量%から6.03重量%へ変化した。また、液状の2剤型染毛剤第二剤について平均値で0.09重量%濃度が薄くなった。
【0021】
一方、市販されているポリエチレン製ブロー成型容器(容量1リットル)に、上述のクリーム状の2剤型染毛剤第二剤を充填して上述の乾燥機の中で40℃の条件で6ヶ月保管した後の過酸化水素濃度は、平均値で0.31重量%濃度が薄くなった。また、液状の2剤型染毛剤第二剤について平均値で0.42重量%濃度が薄くなった。
【0022】
なお、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ15μmのナイロンフィルム及び厚さ120μmのポリエチレンフィルムを容器の外側から内側に順に積層してなる積層フィルムでプラスチックフィルム製容器本体2を構成した。そのような積層フィルムからなるプラスチックフィルム製容器本体2の容量が1000ml、内面積が0.068mである場合に、保管温度40℃の環境下での容器1個当たりの酸素透過率が300から500cc/180day、水蒸気透過率が25から45グラム/180dayに設定することにより、保管温度15℃から30℃で6ヶ月を越える長期間保管する場合における過酸化水素の濃度を安定化できることが確かめられている。
【0023】
また、プラスチックフィルム製容器本体2の容量が500ml、内面積が0.046mである場合に、保管温度40℃の環境下での容器1個当たりの酸素透過率が150から250cc/180day、水蒸気透過率が12.5から22.5グラム/180dayに設定することにより、保管温度15℃から30℃で6ヶ月を越える長期間保管する場合における過酸化水素の濃度を安定化できることが確かめられている。
【0024】
プラスチックフィルム製容器本体2の全体としての酸素透過率を、過酸化水素が分解して生じる単位時間あたりの酸素発生量と同程度か少し大きな値に設定してもよく、上述のように、単位時間あたりの酸素発生量に比べ、酸素透過率を十分大きく設定してもよく、プラスチックフィルム製容器本体2の膨張を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る包装体の外観を示す斜視図である。
【図2】2剤型染毛剤第二剤の入っていない空の状態のプラスチックフィルム製容器を示すものであって、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図3】コネクタ部分の一部拡大平面図である。
【図4】コネクタ部分の一部拡大平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 包装体
2 プラスチックフィルム製容器本体
3 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に対する過酸化水素の含有率がyである2剤型染毛剤第二剤をフィルムよりなる容器内に充填して包装体を製造するに当たり、
前記フィルムとして、包装体中における過酸化水素の分解により発生する単位時間当りの酸素発生量より大きい酸素透過率が得られるとともに、単位時間当たりの過酸化水素の分解する質量xを前記含有率yで除した質量zの水が単位時間当たりに蒸発するとした場合の値にほぼ等しい水蒸気透過率が得られるものを使用することを特徴とする、包装体の製造方法。
【請求項2】
前記フィルムとして、該フィルムから製作した容量100ml、内面積0.023mの容器に2剤型染毛剤第二剤を充填した場合に、保管温度40℃の環境下での酸素透過率が8cc/180日、水蒸気透過率が2.5〜4.5g/180日となるものを使用することを特徴とする、請求項1記載の包装体の製造方法。
【請求項3】
前記フィルムとして、該フィルムから製作した容量1000ml、内面積0.068mの容器に2剤型染毛剤第二剤を充填した場合に、保管温度40℃の環境下での酸素透過率が300〜500cc/180日、水蒸気透過率が25〜45g/180日となるものを使用することを特徴とする、請求項1記載の包装体の製造方法。
【請求項4】
前記フィルムとして、該フィルムから製作した容量500ml、内面積0.046mの容器に2剤型染毛剤第二剤を充填した場合に、保管温度40℃の環境下での酸素透過率が150〜250cc/180日、水蒸気透過率が12.5〜22.5g/180日となるものを使用することを特徴とする、請求項1記載の包装体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法によって製造された、包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−168950(P2008−168950A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75820(P2008−75820)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【分割の表示】特願2002−70234(P2002−70234)の分割
【原出願日】平成14年3月14日(2002.3.14)
【出願人】(000145987)株式会社昭和丸筒 (28)
【Fターム(参考)】