説明

包装体

【課題】熱接着による筒状体の変形又は未接着領域の発生を防ぎ、製造工程における歩留まりが高い包装体を提供する。
【解決手段】最内層に熱接着性樹脂層63を有する積層体60を対向配置して周縁を熱接着部21により熱接着して形成される包装体20において、包装体20の外側に向かって突出して先端が熱接着された管状の注出部23に樹脂成型品の筒状体24を挿嵌し、注出部23の両側方の熱接着部21が注出部23の内側に突出して筒状体24に当接する突出部25a、25bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流動物を包装する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の薬剤を包装する包装体が特許文献1、2に開示される。薬剤を密封収納する包装体は最内層に熱接着性樹脂層が配された積層体を対向配置して周縁を熱接着部により熱接着して形成される。また、包装体の周縁には薬剤の注出部が設けられ、注出部は樹脂成型品の筒状体を積層体で挟持しながら筒状体の外周を熱接着して取り付ける。これにより、包装体外部に突出する筒状体の先端を開封し、筒状体を介して薬剤を注出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−284186号公報
【特許文献2】特開2005−245677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記包装体によると、熱接着による加熱及び加圧により、筒状体が変形したり、筒状体の外周と包装体の内周との間に未接着領域が発生する問題があった。このため、包装体の製造工程における歩留りが低下する問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、熱接着による筒状体の変形又は未接着領域の発生を防ぎ、製造工程における歩留まりが高い包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、最内層に熱接着性樹脂層を有する積層体を対向配置して周縁を熱接着部により熱接着して形成される包装体であって、外側に向かって突出して先端が熱接着された管状の注出部と、前記注出部に挿嵌される樹脂成型品の筒状体とを備え、前記注出部の両側方の前記熱接着部が前記注出部の内側に突出して前記筒状体に当接する突出部を形成することを特徴としている。
【0007】
この構成によると、注出部の両側方の熱接着部が注出部の内側に突出して形成される突出部が筒状体と当接し、注出部内側において注出部の両側方の熱接着部と筒状体の外周との間に形成される隙間を塞ぐ。また、筒状体が挿嵌された注出部の先端は熱接着されており、開封前の注出部内側は密封状態にある。また、注出部の先端を切断して開封することによって筒状体を介して内容物が注出される。
【0008】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記突出部が前記筒状体の軸方向に複数設けられることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記筒状体が先端に向かうに従って縮径することを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記筒状体の一部が前記注出部に熱接着されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の包装体において、内容物を収納する収納空間が連通可能に複数区画されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、外側に向かって突出して先端が熱接着された管状の注出部に樹脂成型品の筒状体を挿嵌し、注出部の両側方の熱接着部に注出部の内側に突出して筒状体に当接する突出部を形成することにより、突出部が注出部内側において注出部の両側方の熱接着部と筒状体の外周との間に形成される隙間を塞ぐ。これにより、注出部を開封した後、包装体内部に充填された内容物が注出部の両側方の熱接着部と筒状体の外周との間に形成される隙間から漏出するのを防止しながら、筒状体の先端から内容物を注出することができる。また、注出部の開封前において、筒状体が挿嵌された注出部の先端は熱接着されており、注出部内側は密封状態にある。このため、注出部の両側方の熱接着部と筒状体の外周との間に形成される隙間から外気が包装体内部に侵入するのを防ぐことができる。したがって、熱接着された注出部を開封するまで筒状体及び包装体内部を無菌状態に保つことができる。これにより、熱接着による筒状体の変形又は未接着領域の発生を防ぎ、製造工程における歩留まりが高い包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る包装体の平面図
【図2】本発明の実施形態に係る包装体の注出部を拡大して示す平面図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】図2のB−B線断面図
【図5】本発明の実施形態に係る包装体の変形例を示す平面図
【図6】本発明の実施形態に係る包装体を構成する積層体の層構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は包装体20の平面図である。
【0015】
包装体20は医療用の薬剤を収納する包装体であり、包装体20の上部には包装体20を吊り下げるための孔部22が設けられ、下部には内容物を注出する注出部23が設けられ、胴体部には薬剤等の内容物を収納するための収納空間28が形成されている。包装体20は基材層61とバリア層62と熱接着性樹脂層63を含む積層体60(図6参照)で構成される。包装体20は下辺が突出する形状に予め断裁された積層体60を二枚用意して最内層の熱接着性樹脂層63を対向させた後、周縁を熱接着部21により熱接着して形成する。内容物は上部が未接着で開口する包装体20に充填された後、包装体20の上部を熱接着して包装体20内に密封される。
【0016】
図2は注出部23を拡大して示す平面図であり、注出部23は包装体20の下辺から外側に向かって突出し、注出部23の先端及び両側は熱接着部21により熱接着されている。また、注出部23の両側方の熱接着部21には注出部23の内側に突出する突出部25a、25bが形成されている。これにより、注出部23は対向する突出部25a、25bにより内径の一部が狭まった管状となる。注出部23の内部には円筒状の筒状体24が挿嵌されており、突出部25a、25bが筒状体24の両側方と当接する。
【0017】
筒状体24は収納空間28側から下端側へ押圧されて注出部28の内側へ挿嵌される。このとき、筒状体24は注出部23の両側から内側に突出する突出部25a、25bに挟持されて注出部23の内部で安定的に保持される。なお、突出部25a、25bは筒状体24の軸方向に複数設けられ、筒状体2は注出部23の内部でより安定的に保持されている。また、筒状体24は注出部23に挿嵌後、熱接着部27でスポット状に注出部23と部分的に熱接着される。これにより、筒状体24の熱による変形が殆どなく、筒状体24を注出部23内に固定することができる。なお、筒状体24に変形が生じても筒状体24は注出部23内に密封されているので無菌状態は保持される。
【0018】
注出部23の内径を筒状体24の外径より小さく形成することにより、筒状体24の外周と注出部23の内周をより密着させて筒状体24を注出部23内に挿嵌することができる。また、筒状体24は円筒状に限定されない。例えば、筒状体24の断面形状を注出部23の内周の断面形状と略同一に形成してもよい。これにより、挿嵌される筒状体24の外周と注出部23の内周をより密着させることができる。また、筒状体24を先端に向かうにしたがって縮径する先細り形状にすることにより、筒状体24を容易に注出部23へ挿入することができる。
【0019】
図3、図4は図2中のA−A線断面図、B−B線断面図である。図3に示すように、2枚の積層体60を重ね合わせて両側を熱接着部21により熱接着すると、注出部23に筒状体24を挿入したとき、注出部23の内側において注出部23の両側方の熱接着部21と筒状体24の外周との間に隙間26が形成される。しかし、図4に示すように、突出部25a、25bを設けた箇所において、突出部25a、25bが筒状体24と当接して隙間26を塞ぐ。これにより、包装体20内部に充填された内容物が隙間26から漏出するのを防止することができる。なお、突出部25a、25bは筒状体24の軸方向に複数設けることにより、内容物の漏出をより防ぐことができる。
【0020】
また、注出部23の両側の下部には開封用の切り込みであるノッチ29が設けられている。ノッチ29から注出部23を水平方向きに引き裂いて注出部23を開封すると、筒状体24の先端が外部に露出する。なお、開封手段はノッチ29に加えて開封方向にハーフカットライン又はレーザカットラインを設けてもよい。これにより、注出部23の引き裂き方向が決まり、引き裂かれた注出部23の先端が筒状体24の先端を塞ぐのを防止することができる。
【0021】
また、開封前の注出部23の内側は密封状態にある。このため、注出部23の両側方の熱接着部21と筒状体24の外周との間に形成される隙間26から外気が包装体20内部に侵入するのを防ぐことができる。したがって、熱接着された注出部21を開封するまで筒状体24及び包装体23の内側を無菌状態に保つことができる。
【0022】
図5は本実施形態の包装体20の変形例を示す平面図であり、内容物を収納する収納空間28に仕切部31を設けて各部屋を連通可能に複数区画してもよい。仕切部31は熱接着部21より弱シールすることにより開裂可能に形成することができる。これにより、使用直前に複数の薬剤を混合して注出部23から内容物を注出することができる。
【0023】
図6は、包装体20を構成する積層体60の層構成を示す断面図である。包装体20を構成する積層体60は、最外層である基材層61と最内層である熱接着性樹脂層63と中間層であるバリア層62を順次積層して構成される。各層はドライラミネート接着剤により接着している。
【0024】
基材層61は、包装体20が物理的及び化学的に過酷な条件におかれる場合、包装体20に高い密封性、耐突き刺し(耐ピンホール)性、耐熱性、耐光性、品質保全性、作業性、衛生性等を付与するものである。
【0025】
基材層61としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエンスチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂フィルムないしシートを任意に選択して使用することができる。
【0026】
熱接着性樹脂層63は、熱によって溶融して対向する積層体60を相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合したエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等から選ばれた1種ないし2種以上を使用することができる。好ましいものとしては、直鎖状低密度ポリエチレンを挙げることができる。熱接着性樹脂層63の厚さとしては、ヒートシール性等を考慮すると、10μm〜100μm程度、特に15μm〜50μm程度であることが好ましい。
【0027】
バリア層62はアルミニウム、ニッケルなどの金属、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの耐熱性樹脂を使用することができる。また、バリア層62を省略して軟質性の積層体60とすることもできる。
【0028】
ドライラミネート接着剤は、積層体60を構成する基材層61、バリア層62、熱接着性樹脂層63を強固に密着させて層間剥離(デラミネーション)の発生を防止するものである。ドライラミネート接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、或いは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等を使用することができる。
【0029】
本実施形態によると、外側に向かって突出して先端が熱接着された管状の注出部23に樹脂成型品の筒状体24を挿嵌し、注出部23の両側方の熱接着部21に注出部23の内側に突出して筒状体24に当接する突出部25a、25bを形成することにより、突出部25a、25bが注出部23の内側において注出部23の両側方の熱接着部21と筒状体24の外周との間に形成される隙間26を塞ぐ。これにより、注出部23を開封した後、包装体20内部に充填された内容物が隙間26から漏出するのを防止しながら、筒状体24の先端から内容物を注出することができる。また、注出部23の開封前において、筒状体24が挿嵌された注出部23の先端は熱接着されており、注出部23の内側は密封状態にある。このため、隙間26から外気が包装体内部に侵入するのを防ぐことができる。したがって、熱接着された注出部23を開封するまで筒状体24及び包装体20内部を無菌状態に保つことができる。これにより、熱接着による筒状体24の変形又は未接着領域の発生を防ぎ、製造工程における歩留まりが高い包装体20を提供することができる。
【0030】
また、突出部25a、25bを筒状体24の軸方向に複数設けることにより、隙間26から内容物が漏出するのをより防ぐことができる。また、注出部23の内側に筒状体24をより安定して保持することができる。また、筒状体24を先端に向かうにしたがって縮径する先細り形状に形成することにより、筒状体24を容易に注出部23の内側へ挿入することができる。また、筒状体24の一部を注出部23に熱接着することにより、筒状体24が熱により変形が殆どなく、筒状体24を注出部23の内側に固定することができる。
【0031】
また、内容物を収納する収納空間28を連通可能に複数区画することにより、複数の薬剤を混合する混合タイプの包装体20を提供することができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、自立型包装体20において、注出部23を包装体20の上辺又は側辺から上方又は側方に向かって突出させても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、薬剤を包装する包装体に利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
20 包装体
21 熱接着部
22 孔部
23 注出部
24 筒状体
25a、25b 突出部
26 隙間
27 熱接着部
28 収納空間
29 ノッチ
31 仕切部
60 積層体
61 基材層
62 バリア層
63 熱接着性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層に熱接着性樹脂層を有する積層体を対向配置して周縁を熱接着部により熱接着して形成される包装体であって、外側に向かって突出して先端が熱接着された管状の注出部と、前記注出部に挿嵌される樹脂成型品の筒状体とを備え、前記注出部の両側方の前記熱接着部が前記注出部の内側に突出して前記筒状体に当接する突出部を形成することを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記突出部が前記筒状体の軸方向に複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記筒状体が先端に向かうに従って縮径することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記筒状体の一部が前記注出部に熱接着されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
内容物を収納する収納空間が連通可能に複数区画されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52904(P2013−52904A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192427(P2011−192427)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】