説明

包装容器

【課題】収容部内の気体を所定の通路から大気側に確実に排出できるようにすることにある。
【解決手段】収容部21及びフランジ22を有する容器本体2と、フランジ22の上面側に設けられ収容部21の開口部を塞ぐカバー3とを備え、フランジ22の上面には開口縁部21aを囲むように延在しカバー3と密着した状態に接続される頂部22bを有する内側凸条22aを設けると共に、内側凸条22aを囲むように延在しカバー3と密着した状態に接続される頂部22dを有する外側凸条22cを設け、内側凸条22aの外側には、内側凸条22aと外側凸条22cとの間の空間Sを大気側に開放する通路22eを設け、カバー3と内側凸条22aの接続強度は収容部21内の圧力が所定の圧力に達した際に、カバー3が内側凸条22aから剥がれることが可能な強度に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱によって上昇した収容部内の圧力を当該収容部内の気体を外部に排出することにより、所定の圧力以下の圧力に調整することが可能な包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の包装容器としては、収容部内の例えば水分を含む食品や発酵食品などの収容物を電子レンジ等の加熱手段で過熱した際に、水蒸気、炭酸ガス、アルコールガス等の気体が発生し、これによって収容部内の圧力が高まることから、当該気体(水などの細かい粒子を含むことがある)を収容部から大気側に排出することによって、収容部内の圧力を所定の圧力に調整するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記包装容器は、収容部の開口縁部から外側に形成されたフランジを有しており、そのフランジの上面には前記開口縁部を囲むように主凸条が形成されていると共に、その主凸条の一部から分かれて前記開口縁部側に延在する副凸条が形成され、前記主凸条及び前記副凸条で囲まれたフランジの部分には貫通孔が形成されている。前記主凸条及び副凸条の頂部には、前記収容部を密閉するための樹脂フィルム(カバー)が接着されるようになっている。副凸条と樹脂フィルムとの接着力は、主凸条と樹脂フィルムとの接着力より小さく設定されている。
【0004】
上記のように構成された包装容器においては、収容部内の例えば水分を含む食品を電子レンジで加熱することにより水蒸気が発生し、これにより収容部内の圧力が高まることになるが、所定の圧力に達すると、接着力の小さな副凸条の部分から樹脂フィルムが剥がれ、その剥がれた部分及び貫通孔を通して収容部内の気体が大気側に逃げることになる。貫通孔は、気体の流量を制限する効果(即ち、絞り効果)に基づいて、収容部内の圧力を所定の圧力に調整することになる。このため、収容部内の圧力に対応する所定の温度で食品を温めたり、当該温度で調理したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−23682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記包装容器においては、一旦、樹脂フィルムが副凸条から剥がれ始めると、その剥がれた部分を起点として、当該樹脂フィルムが極めて容易に剥がれやすくなるので、その剥がれの開始部分が主凸条に近い部分であると、樹脂フィルムが主凸条からも剥がれてしまうことがある。そして、カバーが主凸条からも剥がれるようなことがあれば、貫通孔によって収容部内の圧力を調整することができず、よって当該収容部内の食品を所定の温度で温めたり、調理したりすることができなくなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、所定の圧力に達した収容部内の気体を所定の通路を通して大気側に確実に排出することができる包装容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、加熱によって上昇した収容部内の圧力を当該収容部内の気体を外部に排出することにより、所定の圧力以下に調整することが可能な包装容器であって、前記収容部及びこの収容部の開口縁部から外方に広がるフランジを有する容器本体と、この容器本体における前記フランジの上面側に設けられ前記収容部の開口部を塞ぐカバーとを備えてなり、前記フランジの前記上面には、前記開口縁部を囲むように延在し前記カバーと密着した状態に接続される頂部を有する内側凸条が設けられていると共に、この内側凸条を囲むように延在し前記カバーと密着した状態に接続される頂部を有する外側凸条が設けられ、前記フランジにおける前記内側凸条の外側には、当該内側凸条と前記外側凸条との間の空間を大気側に開放する通路が設けられており、前記カバーと前記内側凸条との接続強度は、前記収容部内の圧力が所定の圧力に達した際に、前記カバーが前記内側凸条から剥がれることが可能な強度に設定されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記容器本体は、合成樹脂によって一体に形成され、前記カバーは、合成樹脂の薄膜によって形成されていると共に、熱溶着によって前記内側凸条及び前記外側凸条の各頂部に接続されるようになっていることを特徴としている。なお、容器本体に用いる合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリプロピレン+充填剤、PET、ポリスチレン等を揚げることができる。また、カバーに用いる合成樹脂としては、PET樹脂による主層と、オレフィン系樹脂によるシーラント層とからなるものを揚げることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記内側凸条は、前記フランジの上面を基準にして、前記外側凸条より高く形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記フランジは、前記上面が外方に向って漸次下方に位置するように傾斜していることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記カバーと前記内側凸条との接続部には、その一箇所又は複数箇所に接続強度の低い部分が設けられていることを特徴としている。なお、接続強度の低い部分は、例えば、カバーを接続する内側凸条の頂部に幅の狭い部分を設けること、内側凸条の側面部分に内側(収容部側)からV字状の溝を形成することで当該内側凸条の頂部にV字状のノッチ(頂部の幅が狭くなるのに加えて応力集中により接続強度の低下が生じる部分)を形成すること、カバーを内側凸条に熱溶着するための加熱押圧手段の一部に熱伝達性の低い部材を設けることで熱溶着温度を部分的に下げること等により、内側凸条における一箇所又は複数箇所の位置に配置することが可能である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記通路は、前記フランジに形成された貫通孔によって構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の発明において、前記通路は、前記外側凸条の一部に形成された凹部によって構成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れかに記載の発明において、前記通路は、前記内側凸条と前記外側凸条との間から当該外側凸条の外側まで、前記フランジの一部を凹状に形成してなる溝部によって構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、フランジに内側凸条と外側凸条とを設け、内側凸条と外側凸条との間の空間を大気側に開放する通路を設け、カバーと内側凸条との接続強度を、収容部内の圧力が所定の圧力に達した際にカバーが内側凸条から剥離することが可能な強度に設定しているので、例えば収容部内の水分を含む食品を電子レンジで加熱することにより、水蒸気が発生し、その気体によって収容部内が所定の圧力に達すると、カバーが内側凸条から剥がれ、その剥がれた部分から収容部内の気体(水などの細かい粒子を含むことがある)が内側凸条の外側に流出し、更に通路を通って大気側に流出することになる。
【0017】
この場合、カバーが内側凸条の何れの部分から剥がれても、収容部内の気体は必ず通路を通って大気側に排出されることになる。即ち、所定の圧力に達した収容部内の気体を所定の通路を通して大気側に確実に排出することができる。
【0018】
また、通路に絞り効果をもたせて、大気側に排出する気体の流量を制限することにより、収容部内の圧力を調整することができると共に、当該圧力に対応する温度に収容部内の温度を調整することができる。従って、当初予定した温度の条件下で、食品を温めたり、調理したりすることができる。即ち、加熱により調理等を施した食品の品質の向上を図ることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、容器本体を合成樹脂によって一体に形成し、カバーを合成樹脂の薄膜によって形成すると共に、当該カバーを内側凸条及び外側凸条の各頂部に熱溶着により接続しているので、収容部をカバー及び内側凸条によって確実に密閉することができると共に、収容部内の圧力が所定の圧力に達した際にはカバーが内側凸条から確実に剥がれるように、当該カバーと内側凸条との接続強度を最適な値に設定することができる。従って、加熱により調理等を施した食品の品質の向上を図ることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、内側凸条が外側凸条より高く形成されているので、熱溶着のための加熱押圧手段を下方に移動し、カバーを内側凸条及び外側凸条に押し付けると共にこれらに熱を加えることにより、カバーと内側凸条及び外側凸条とを熱溶着することができると共に、カバーと内側凸条との接続強度をカバーと外側凸条との接続強度より高めることができる。即ち、加熱押圧手段を下方に移動させる簡単な操作で、カバーと内側凸条との接続強度をカバーと外側凸条との接続強度より高めることができる。なお、熱溶着の際には、フランジを下方から保持するバックアップ部材を設けることが好ましい。
【0021】
また、少なくとも内側凸条と外側凸条との高さの差分だけ押圧変位させることによってカバーを内側凸条に加圧することになるので、内側凸条の頂部全体とカバーとを確実に密着させた状態で熱溶着することができる。従って、収容部をカバーによって確実に密閉することができる。しかも、内側凸条とカバーの接続位置の違いによる接続強度のばらつきを小さく抑えることができるので、カバーが内側凸条から剥がれる際の収容部内の圧力のばらつきを小さく抑えることができ、加熱により調理等を施す食品の品質の向上を図ることができる。
【0022】
一方、外側凸条とカバーとの接続強度は低く抑えることができるので、当該カバーを外す際にはそのカバーの外側部分をつかんで引き剥がすことにより容易に外すことができる。この際、内側凸条に接続されたカバーの部分については、調理等の際に既に剥がれた部分が生じているので、その部分から容易に剥がすことができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、フランジの上面が外方に向って漸次下方に位置するように傾斜しているので、内側凸条の頂部の位置が外側凸条の頂部の位置より高い位置になる。従って、請求項3に記載の発明と同様の作用効果を奏する。なお、カバーを内側凸条及び外側凸条に熱溶着する際には、フランジを下方から保持するバックアップ部材を設けることが好ましい。
【0024】
また、フランジの下方にバックアップ部材を配置した状態で、熱溶着のための加熱押圧手段を下方に移動すると、カバー及び内側凸条が互いに当接した状態で下方に移動し、これに伴って、斜めに傾斜したフランジがバックアップ部材の上面にならうように水平(加熱押圧手段の下面と平行)の状態となるように弾性変形することになり、更にカバーが内側凸条及び外側凸条に加圧されることによって、当該カバーが内側凸条及び外側凸条に熱溶着されることになる。このため、少なくとも内側凸条とカバーは、フランジの大きな弾性変形量に基づく弾性力により、均一に密着した状態で熱溶着されることになる。従って、内側凸条とカバーの接続位置の違いによる接続強度のばらつきを極めて小さく抑えることができるので、カバーが内側凸条から剥がれる際の収容部内の圧力のばらつきも極めて小さく抑えることができ、加熱により調理等を施す食品の品質の向上を図る上で極めて有利である。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、カバーと内側凸条との接続部の一箇所又は複数箇所について接続強度の低い部分を設けているので、収容部内の圧力が上昇することにより、その接続強度の低い内側凸条の部分からカバーが剥がれ始めることになる。このため、内側凸条におけるカバーが剥がれる部分を特定することができると共に、カバーが内側凸条の全体から一気に剥がれるのを防止して、収容部内の圧力が所定の圧力となるように穏やかに調整することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、通路がフランジに形成された貫通孔によって構成されているので、この貫通孔の開口面積に基づいて気体の流量を制限することにより、収容部内の圧力を調整することができる。また、貫通孔は、容器本体を例えば真空成形により形成した後、その容器本体の周囲に残った合成樹脂シートを切り離す際等に簡単に形成することができる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、通路が外側凸条の一部に形成された凹部によって構成されているので、この凹部における外側凸条に沿う方向の寸法(即ち、幅)及び深さによってほぼ決まる開口面積に基づいて気体の流量を制限し、これにより収容部内の圧力を調整することができる。また、凹部は、容器本体を例えば真空成形する際に外側凸条の一部を凹状に形成したり、当該外側凸条を形成しない部分を設けることにより簡単に得ることができる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、通路が内側凸条と外側凸条との間から当該外側凸条の外側までフランジの一部を凹状に形成してなる溝部によって構成されているので、その溝部によって得られる開口面積に基づいて気体の流量を制限し、これにより収容部内の圧力を調整することができる。また、溝部は、容器本体を例えば真空成形する際にフランジの一部として簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例として示した包装容器を示す平面図である。
【図2】同包装容器を示す図であって、(a)は図1のA−A線に沿う断面図であり、(b)は図1のB−B線に沿う断面図であり、(c)はフランジを示す拡大断面図である。
【図3】同包装容器を示す図であって、(a)は熱溶着のためのヒートシールバーを降下させる直前の状態を示す説明図であり、(b)はヒートシールバーの降下により、当該ヒートシールバーの下面がカバーに当接した状態を示す説明図であり、(c)は更にヒートシールバーを降下させることにより、当該ヒートシールバーの下面でカバー及び内側凸条を下方に移動させ、主フランジ部をバックアップ部材の保持面にならうように水平状態に弾性変形させた後の状態を示す説明図であり、(d)は更にヒートシールバーを降下させ、当該ヒートシールバーの下面でカバーを内側凸条及び外側凸条に加圧した状態を示す説明図である。
【図4】同包装容器の容器本体を示す図であって、(a)〜(c)は内側凸条の頂部の幅を狭めることによって形成した狭幅部の各形態を示す要部平面図であり、(d)は内側凸条の頂部に露出するように形成したノッチを示す要部斜視図である。
【図5】同包装容器の容器本体を示す図であって、(a)は通路に関する第1の他の例として主フランジ部に形成した貫通孔を示す要部平面図であり、(b)は通路に関する第2の他の例として外側凸条の一部に形成した凹部を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態を一実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0031】
この実施例で示す包装容器1は、図1及び図2に示すように、例えば電子レンジ(加熱手段)で加熱することによって上昇した収容部21内の圧力を当該収容部21内の水蒸気等の気体(水などの細かい粒子を含むことがある)を外部に排出することにより、所定の圧力又はその圧力以下に調整することを可能にしたものであり、収容部21及びフランジ22を有する容器本体2と、この容器本体2におけるフランジ22の上面側に設けられ収容部21の開口部を塞ぐカバー3とを備えている。フランジ22は、収容部21の開口縁部21aから外方に延在するように形成されている。
【0032】
フランジ22の上面には、図2(c)に示すように、内側凸条22a及び外側凸条22cが形成されている。内側凸条22aは、開口縁部21aを囲むように環状に連続して延在している。内側凸条22aの頂部22bは、平面状に形成されており、カバー3と密着した状態に接続されるようになっている。カバー3と内側凸条22aとの接続強度は、収容部21内の圧力が所定の圧力に達した際に、カバー3が内側凸条22aから剥離することが可能な強度に設定されている。
【0033】
外側凸条22cは、内側凸条22aの外側にあって当該内側凸条22aを囲むように延在している。外側凸条22cの頂部22dも、平面状に形成されており、カバー3と密着した状態に接続されるようになっている。カバー3と外側凸条22cとの接続強度は、カバー3を人の力で外側凸条22cから引き剥がすことが可能な強度に設定されている。
【0034】
フランジ22における内側凸条22aの外側には、図1及び図2(b)に示すように、内側凸条22aと外側凸条22cとの間の空間Sを大気側に開放する通路22eが設けられている。即ち、通路22eは、空間Sを大気側に連通するものとなっている。
【0035】
容器本体2は、ポリプロピレン(PP)樹脂を用いた合成樹脂シートから真空成形により一体に形成されたものである。合成樹脂シートの厚さは0.6mmである。ただし、このシートの厚さは、0.4mm以上1.0mm以下であってもよい。ここで、0.4mm以上としたのは、0.4mm未満であると、加熱による収容部21内の圧力上昇や、放熱による収容部21内の圧力の低下により、収容部21の変形が増大することになるからである。また、1.0mm以下としたのは、1.0mmを超えると、真空成形による成形性が低下すると共に、重量の増加により製造コストや搬送コスト等の費用が増大することになるからである。なお、容器本体2は、上述したポリプロピレン(PP)樹脂の他に、例えばポリプロピレン+充填剤、PET、ポリスチレン等の合成樹脂シートを用いて真空成形により一体に形成するように構成してもよい。
【0036】
収容部21の開口縁部21aは、図1に示す平面視において、角部が円弧状に丸められた正方形状に形成されている。また、収容部21の底部21bは、円板状に形成されている。
【0037】
フランジ22は、図2(c)に示すように、主フランジ部221と、副フランジ部222と、側面部223とを有する形状になっている。主フランジ部221は、図1に示す平面視において、収容部21の開口縁部21aから外側に広がるように形成され、その外縁が開口縁部21aに沿うような正方形状に形成されていると共に、各角部が円弧状に丸められた形状になっている。また、主フランジ部221は、図2(c)に示すように、収容部21の開口縁部21aから外方に向って漸次下方に位置するように傾斜している。即ち、主フランジ部221は、開口縁部21aの全体が接する平面Pを想定した場合に、当該平面Pに対して上述した方向に傾斜した形状になっている。
【0038】
副フランジ部222は、主フランジ部221の外縁に位置する側面部223を介して当該主フランジ部221より一段低い位置に配置されていると共に、当該主フランジ部221から更に外側に延在するように形成されている。なお、副フランジ部222の延在方向は、上述した平面Pと平行な水平方向である。また、副フランジ部222の外縁は、図1に示す平面視において、主フランジ部221の外縁に沿うように形成された正方形状となっている。そして、フランジ22は、図2(c)に示すように、主フランジ部221と副フランジ部222が側面部223を介して上下方向に間隔をおいて配置された断面形状となることにより、曲げ剛性の高い構造になっている。
【0039】
内側凸条22a及び外側凸条22cは、主フランジ部221の一部を上方(カバー3側)に突出するように形成されたものである。そして、内側凸条22aの頂部22bまでの高さは、主フランジ部221の上面を基準にして、外側凸条22cの頂部22dまでの高さより高く形成されている。また、内側凸条22aの頂部22bの幅は、外側凸条22cの頂部22dの幅より狭く形成されている。各頂部22b、22dは、主フランジ部221の上面と平行に形成されている。
【0040】
一方、カバー3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を用いた主層と、オレフィン系樹脂を用いたシーラント層とからなる二層のラミネートフィルム(合成樹脂の薄膜)によって形成されている。主層及びシーラント層の厚さとしては、例えば主層として25μm、シーラント層として30μmのものが用いられている。そして、カバー3は、シーラント層をフランジ22側に向けて、当該フランジ22に形成された内側凸条22a及び外側凸条22cの各頂部22b、22dに熱溶着されるようになっている。
【0041】
通路22eは、図1及び図2(b)に示すように、内側凸条22aと外側凸条22cとの間の空間Sから当該外側凸条22cの外側に至るように(この例では主フランジ部221の外縁に至るように)、主フランジ部221の一部を凹状に形成してなる溝部によって構成されている。この通路22eは、図1に示す平面視において、基端部が半円状に形成され、その半円状の基端部から一定の幅で主フランジ部221の外縁に至るように形成されている。このように形成された通路22eは、主フランジ部221の各角部に配置されている。また、外側凸条22cは、主フランジ部221の外縁としての正方形状の各辺に沿う位置にあって、当該各辺の両端部に位置する通路22eの近傍まで延在するように形成されている。
【0042】
また、内側凸条22a及び外側凸条22cにカバー3を熱溶着するには、図3(a)に示すように、主フランジ部221の下方にバックアップ部材4を配置し、フランジ22及び収容部21にカバー3を重ねてから、ヒートシールバー(加熱押圧手段)5を図3(b)、(c)及び(d)に示すように順次下方に移動することになる。
【0043】
バックアップ部材4は、平面状に形成された上面の軸心位置に、収容部21の全体を挿入することが可能な大きさの孔部4aを有しており、前記上面が主フランジ部221を下方から保持する保持面4bとなっている。保持面4bは、水平に維持されるようになっていると共に、主フランジ部221の下面を水平面上に投影した際の当該下面の幅より若干狭い幅となっている。
【0044】
ヒートシールバー5は、図3(a)〜(c)に示すように、平面状に形成された下面5aを水平に保持した状態で下方に移動することにより、カバー3と内側凸条22aを下方に押圧移動し、傾斜した主フランジ部221の下面を保持面4bに押し当てるようになっている。このヒートシールバー5により、主フランジ部221が傾斜状態から水平状態になるように弾性変形し、その際の弾発力により、内側凸条22aの頂部22bとカバー3とが互いに加圧された状態になると共に、加熱された状態になる。
【0045】
そして、ヒートシールバー5は、図3(d)に示すように、更に下方に移動することにより、内側凸条22aを更に圧縮方向に弾性変形させると共に、カバー3を外側凸条22cの頂部22dに加圧するようになっている。このヒートシールバー5により、内側凸条22aの頂部22bとカバー3とが更に加圧された状態で加熱され、また外側凸条22cの頂部22dとカバー3とも互いに加圧された状態で加熱されることになる。これにより、内側凸条22aとカバー3とは、外側凸条22cとカバー3より、大きな接続強度で熱溶着されることになる。なお、ヒートシールバー5の下面5aは、フランジ22における内側凸条22a及び外側凸条22cの全体を同時に加圧することが可能な面積を有している。
【0046】
なお、主フランジ部221の上面を基準とする内側凸条22a及び外側凸条22cの高さについては、容器本体2の材質、厚さ、熱溶着の際の温度及び圧力、主フランジ部221の傾斜角度等によって適宜決定されることになるが、この実施例においては、内側凸条22aは1.0mm、外側凸条22cは0.6mmに設定している。主フランジ部221の傾斜角度については、容器本体2の材質、厚さ、熱溶着の際の温度及び圧力、内側凸条22aの高さ、外側凸条22cの高さ等によって適宜決定されることになるが、この実施例においては、平面Pに対して上述した方向に約10度となるように設定している。
【0047】
上記のように構成された包装容器1にいては、フランジ22に内側凸条22aと外側凸条22cとを設け、内側凸条22aと外側凸条22cとの間の空間Sを大気側に開放する通路22eを設け、カバー3と内側凸条22aとの接続強度を収容部21内の圧力が所定の圧力に達した際にカバー3が内側凸条22aから剥離することが可能な強度に設定しているので、例えば収容部21内に収容された水分を含む食品としての収容物を電子レンジで加熱することにより、水蒸気が発生し、その気体によって収容部21内が所定の圧力に達すると、カバー3が内側凸条22aから剥がれ、その剥がれた部分から収容部21内の気体が内側凸条22aの外側に流出し、更に通路22eを通って大気側に流出することになる。
【0048】
この場合、カバー3が内側凸条22aの何れの部分から剥がれても、収容部21内の気体は必ず何れかの通路22eを通って大気側に流出することになる。従って、所定の圧力に達した収容部21内の気体を所定の通路22eに沿って確実に排出することができる。
【0049】
また、通路22eは溝部によって構成されているので、その幅と深さによってほぼ決まる開口面積と、外側凸条22cが不連続となっている部分の間隔と外側凸条22cの高さによってほぼ決まる開口面積とを合計した開口面積を、開口部の数(この例では4)を乗じた全開口面積によって、気体の流量を制限することができる。そして、気体の流量を制限することにより、収容部21内の圧力を所定の圧力に調整することができると共に、当該圧力に対応する所定の温度に収容部21内の温度を調整することができる。従って、当初予定した温度の条件下で、食品を温めたり、調理したりすることができるので、加熱により調理等を施した食品の品質の向上を図ることができる。また、溝部からなる通路22eは、容器本体2を真空成形する際にフランジ22の一部として簡単に形成することができる。
【0050】
また、容器本体2をポリプロピレン(PP)樹脂によって形成し、カバー3を二層のラミネートフィルムによって形成すると共に、当該カバー3を内側凸条22a及び外側凸条22cの各頂部22b、22dに熱溶着により接続しているので、収容部21をカバー3によって確実に密閉することができると共に、収容部21内の圧力が所定の圧力に達した際にはカバー3が内側凸条22aから剥がれるように、当該カバー3と内側凸条22aとの接続強度を最適な値に設定することができる。従って、加熱により調理等を施した食品の品質の向上を図ることができる。
【0051】
一方、内側凸条22aが主フランジ部221の上面を基準にして外側凸条22cより高く形成されているので、主フランジ部221がバックアップ部材4の保持面4bに押し付けられて水平になった状態(図3(c)の状態)からヒートシールバー5を更に下方に移動し、カバー3を内側凸条22a及び外側凸条22cに押し付けると共にこれらに熱を加えることにより、カバー3と内側凸条22a及び外側凸条22cとを熱溶着することができると共に、カバー3と内側凸条22aとの接続強度をカバー3と外側凸条22cとの接続強度より高めることができる。即ち、ヒートシールバー5を下方に移動させる簡単な操作で、カバー3と内側凸条22aとの接続強度をカバー3と外側凸条22cとの接続強度より高めることができる。
【0052】
また、内側凸条22aと外側凸条22cとの高さの差分以上の押圧変位をもってカバー3を内側凸条22aに押し付けることになるので、内側凸条22aの頂部22bの全体とカバー3とを確実に密着させた状態で熱溶着することができる。従って、収容部21をカバー3によって確実に密閉することができる。しかも、内側凸条22aとカバー3の接続位置の違いによる接続強度のばらつきも小さく抑えることができるので、カバー3が内側凸条22aから剥がれる際の収容部21内の圧力のばらつきを小さく抑えることができ、加熱により調理等を施す食品の品質の向上を図ることができる。
【0053】
他方、外側凸条22cとカバー3との接続強度は低く抑えることができるので、調理等が終わった後には当該カバー3を外側凸条22cから容易に引き剥がすことができる。この際、内側凸条22aに接続されたカバー3の部分については、調理等の際に既に剥がれた部分が生じているので、その部分から容易に剥がすことができる。
【0054】
更に、内側凸条22aが外側凸条22cより高く形成されていると共に、内側凸条22aの位置が更に高くなるように主フランジ部221が傾斜しているので、収容部21内の温度が低下することによって、当該収容部21内の圧力が低下した場合には、内側凸条22aから剥離したカバー3の部分が当該内側凸条22aの頂部22bに密着した状態になる。従って、冷えた後の収容部21内の衛生状態を良好に保つことができる。
【0055】
また、主フランジ部221が外方に向って漸次下方に位置するように傾斜しているので、ヒートシールバー5を下方に移動すると、図3(a)〜(c)に示すように、カバー3及び内側凸条22aが互いに当接した状態で下方に移動することになる。これにより、傾斜した主フランジ部221はバックアップ部材4の保持面4bにならうように水平(ヒートシールバー5の下面5aと平行)の状態となるように弾性変形することになる。このため、内側凸条22aとカバー3は、フランジ22の大きな弾性変形量に基づく弾性力により、均一に密着した状態で熱溶着されることになると共に、上述した内側凸条22aと外側凸条22cとの高さの差分以上の弾性変形量に基づく弾性力で加圧された状態で熱溶着されることになる。従って、内側凸条22aとカバー3の接続位置の違いによる接続強度のばらつきを更に小さく抑えることができるので、カバー3が内側凸条22aから剥がれる際の収容部21内の圧力のばらつきを極めて小さく抑えることができ、加熱により調理等を施す食品の品質の向上を図る上で極めて有利となる。
【0056】
なお、上記実施例においては、カバー3と内側凸条22aの頂部22bとが一様の接続強度で接続されるように構成した例を示したが、カバー3と内側凸条22aとの接続部の一部(一箇所又は複数箇所の部分であってもよい)に接続強度の低い部分を設けてもよい。この場合には、収容部21内の圧力が上昇することにより、その接続強度の低い内側凸条22aの頂部22bの部分からカバー3が剥がれ始めることになる。このため、内側凸条22aにおけるカバー3が剥がれる部分を特定することができると共に、カバー3が内側凸条22aの全体から一気に剥がれるのを防止して、収容部21内の圧力が所定の圧力となるように穏やかに調整することができる。
【0057】
そして、接続強度の低い部分は、例えば図4(a)〜(c)の何れかに示すように、カバー3(図示せず)を接続(熱溶着)する内側凸条22aの頂部22bに幅の狭い狭幅部22fを設けること、また例えば図4(d)に示すように、内側凸条22aの側面部分に内側(収容部21側)からV字状の溝22gを形成することで頂部22bに内側から外側(外側凸条22c側)に向けて漸次幅の狭くなるV字状のノッチ(頂部22bの幅が狭くなるのに加えて応力集中により接続強度の低下を図る部分)22hを形成することにより、内側凸条22aにおける一箇所又は複数箇所の任意の位置に配置することが可能である。また、図示を省略するが、カバー3を内側凸条22aの頂部22bに熱溶着するためのヒートシールバー(加熱押圧手段)5の下面5aの一部に熱伝達性の低い部材を設けることで熱溶着温度を部分的に下げること等によっても、内側凸条22aの頂部22bにおける一箇所又は複数箇所の任意の位置に、接続強度の低い部分を設けることが可能である。
【0058】
また、通路22eを内側凸条22aと外側凸条22cとの間から主フランジ部221の外縁に至るように形成した例を示したが、この通路22eは、内側凸条22aと外側凸条22cとの間から少なくとも外側凸条22cの外側に至るように形成したものであってもよい。
【0059】
更に、通路22eは、図5(a)に示すように、内側凸条22aと外側凸条22cとの間のフランジ22(主フランジ部221)に形成した貫通孔によって構成してもよい。この場合には、貫通孔の開口面積に基づいて気体の流量を制限することにより、収容部21内の圧力を調整することができる。貫通孔の形状としては、図5(a)に示すような長円径でも、円形や楕円形等の他の形状であってもよい。また、貫通孔は、容器本体2を真空成形した後に、その容器本体2の周囲に残った合成樹脂シートを切り離す際等に簡単に形成することができる。
【0060】
また、通路22eは、図5(b)に示すように、外側凸条22cの一部に形成された凹部によって構成したものであってもよい。この場合には、凹部の外側凸条22cに沿う方向の寸法(即ち、幅)及び深さによってほぼ決まる開口面積に基づいて気体の流量を制限し、これにより収容部21内の圧力を調整することができる。また、凹部は、容器本体2を真空成形する際に、外側凸条22cを形成しない部分を設けることにより形成されている。なお、凹部は、外側凸条22cの一部を凹状に形成したものであってもよい。
【0061】
そして、通路22eは、上述した溝部、貫通孔及び凹部によって構成したもののうち2種以上のものをそれそれ1個又は複数個同時に備えたものであってもよい。また、通路22eは、上述した溝部、貫通孔及び凹部のうち1種類のものを少なくとも1個設けるようにしてもよい。
【0062】
一方、カバー3については、ラミネートフィルムとしての合成樹脂フィルムで形成した例を示したが、合成樹脂シートや、発泡合成樹脂シート等を用いて所定の厚さに形成し所定の大きさの剛性を有する板状のもので形成してもよい。また、カバー3をフランジ22の内側凸条22a及び外側凸条22cに熱溶着により接続するように構成した例を示したが、超音波溶着等の他の溶着や、接着等によって接続するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 包装容器
2 容器本体
3 カバー
4 バックアップ部材
4b 保持面(上面)
5 ヒートシールバー(加熱押圧手段)
5a 下面
21 収容部
21a 開口縁部
22 フランジ
22a 内側凸条
22b、22d 頂部
22c 外側凸条
22e 通路
221 主フランジ部
222 副フランジ部
223 側面部
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によって上昇した収容部内の圧力を当該収容部内の気体を外部に排出することにより、所定の圧力以下に調整することが可能な包装容器であって、
前記収容部及びこの収容部の開口縁部から外方に広がるフランジを有する容器本体と、この容器本体における前記フランジの上面側に設けられ前記収容部の開口部を塞ぐカバーとを備えてなり、
前記フランジの前記上面には、前記開口縁部を囲むように延在し前記カバーと密着した状態に接続される頂部を有する内側凸条が設けられていると共に、この内側凸条を囲むように延在し前記カバーと密着した状態に接続される頂部を有する外側凸条が設けられ、
前記フランジにおける前記内側凸条の外側には、当該内側凸条と前記外側凸条との間の空間を大気側に開放する通路が設けられており、
前記カバーと前記内側凸条との接続強度は、前記収容部内の圧力が所定の圧力に達した際に、前記カバーが前記内側凸条から剥がれることが可能な強度に設定されていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記容器本体は、合成樹脂によって一体に形成され、
前記カバーは、合成樹脂の薄膜によって形成されていると共に、熱溶着によって前記内側凸条及び前記外側凸条の各頂部に接続されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記内側凸条は、前記フランジの上面を基準にして、前記外側凸条より高く形成されていることを特徴する請求項1又は2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記フランジは、前記上面が外方に向って漸次下方に位置するように傾斜していることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の包装容器。
【請求項5】
前記カバーと前記内側凸条との接続部には、その一箇所又は複数箇所に接続強度の低い部分が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の容器本体。
【請求項6】
前記通路は、前記フランジに形成された貫通孔によって構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の包装容器。
【請求項7】
前記通路は、前記外側凸条の一部に形成された凹部によって構成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の包装容器。
【請求項8】
前記通路は、前記内側凸条と前記外側凸条との間から当該外側凸条の外側まで、前記フランジの一部を凹状に形成してなる溝部によって構成されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−247850(P2010−247850A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97388(P2009−97388)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(391011825)中央化学株式会社 (32)
【Fターム(参考)】