説明

包装材料および包装袋

【課題】ガスバリアー性の向上、包装物の含有水分蒸散の抑制、包装物の光曝露による品質変質の抑制、物流工程のおける包装袋内の生菌雑菌類繁殖の抑制、異臭発生の抑制を可能にした包装材料および包装袋を提供する。
【解決手段】透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルム(1)上に、耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質による薄膜コーティング部4と、該薄膜コーティング部4上の所望の箇所に所望の形状で形成した光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分2とを有する。光触媒性の金属酸化物は、酸化チタン・酸化亜鉛・酸化タングステン・チタン酸ストロンチュウムのいずれかとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種食品、医薬品等の包装工程やその後の物的流通(以下、物流という)工程における包装物の各種要因による品質劣化を防止し、その安全衛生に寄与するものであり、主として、ガスバリアー性の向上、包装物含有水分の蒸散防止、光触媒反応の惹起等の改善を同時的に実現するようにした包装材料および包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品や医薬品等は、直接人体に入るためにその安全衛生に関する管理はきわめて重要であり、加工工程においては様々な対策が施されてる。しかし、物流工程においても、光や温度等の各種環境条件によって変質し、安全衛生面でも問題が多発していることから加工工程同様その対策が望まれている。
【0003】
そこで、従来においては、日本酒容器であるガラス瓶や医薬品の容器類に色づけし、紫外線等による変質を防止する等の技術がある。さらに、近時においては、包装材料として用いられる各種合成樹脂フィルムに、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の金属類を包装袋の外側表面に薄膜コーティングして、電磁波である紫外線や可視光線を遮断遮蔽すると共に、製品によっては、包装袋内に封入される窒素ガスやアルゴンガス等、酸化防止用不活性ガスのバリア性を高め、また、製品含有水分の蒸散を防止する等の対策を行っている。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来においては、乾燥雰囲気での包装工程における主たる包装材料が合成樹脂材料である場合は、高電圧の静電気が発生し、静電引力による製袋シール面への塵埃等の付着によるシール不良が多発している。このような静電気によるシール不良防止対策のためにフィルム自体に導電性を付与した包材も供給されているが充分なものではない。さらには、光遮蔽と静電対策を兼ねて、包装袋の表面に金属薄膜を形成した材料も供給されているが、静電対策は袋の内部が問題の部位であるので効果が少ない。ただし、従来の技術で上記金属薄膜を利用するのは、周知のように、電磁波である光の遮蔽シールドを目途としたものであり、その点では効果を認めることができる。また、金属薄膜は金属結合しているために所謂、目が細かくてガスバリアー性が向上する等の利点を認めることができる。そして、現在多用されている上記諸金属は遷移金属であり、その原子構造に起因して、よりイオン化しやすく、酸やアルカリに対して十分に安定したものではない。したがって、様々な酸やアルカリ類、水分等に直接触れることになる包装袋の内面には使用できないという問題点を有していた。
【0005】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、包装材料および包装袋におけるガスバリアー性の向上、包装製品の含有水分蒸散の抑制、包装品の光曝露による品質変質の抑制、物流工程のおける包装袋内の生菌雑菌類繁殖の積極的且つ効果的な抑制、同工程内における異臭発生の積極的且つ効果的な抑制の6大課題を同時的に解決できると共に、包装材料に、静電対策に必要な導電性、および耐食性・食品適合性を有する物質として例えば炭素等の半導体材料を合成樹脂フィルム上に薄膜コーティングし、このコーティング面を包装袋の内面となるように使用することで、乾燥雰囲気における包装作業場の静電気環境下でのシール不良等の不具合を同時的に解決することができる包装材料および包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る包装材料にあっては、透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルム上の所望の箇所に所望の形状で光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分を有することを特徴とする。
【0007】
透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルム上に、耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質による薄膜コーティング部と、該薄膜コーティング部上の所望の箇所に所望の形状で形成した光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分とを有することを特徴とする。
【0008】
光触媒性の金属酸化物としては、酸化チタン・酸化亜鉛・酸化タングステン・チタン酸ストロンチュウムのいずれかを使用するものである
【0009】
耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質としては、炭素系の半導体材料を使用するものである。
【0010】
本発明に係る包装袋にあっては、透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルムの包装物に接する内面上の所望の箇所に所望の形状で光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分を有し、包装用フィルムの展開面において前記薄膜形成部分が各展開面部分のうちの所望の面に配置して成ることを特徴とする。
【0011】
透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルムの包装物に接する内面上に、耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質による薄膜コーティング部と、該薄膜コーティング部上の所望の箇所に所望の形状で形成した光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分とを有し、包装用フィルムの展開面において前記薄膜形成部分が各展開面部分のうちの所望の面に配置して成ることを特徴とする。
【0012】
さらに、この包装袋において、光触媒性の金属酸化物としては、酸化チタン・酸化亜鉛・酸化タングステン・チタン酸ストロンチュウムのいずれかを使用するものである。
【0013】
加えて、この包装袋において、耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質としては、炭素系の半導体材料を使用するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、包装材料および包装袋におけるガスバリアー性の向上、包装製品の含有水分蒸散の抑制、包装品の光曝露による品質変質の抑制、物流工程のおける包装袋内の生菌雑菌類繁殖の積極的且つ効果的な抑制、同工程内における異臭発生の積極的且つ効果的な抑制の6大課題を同時的に解決できると共に、包装材料に、静電対策に必要な導電性、および耐食性・食品適合性を有する物質として例えば炭素等の半導体材料を合成樹脂フィルム上に薄膜コーティングし、このコーティング面を包装袋の内面となるように使用することで、乾燥雰囲気における包装作業場の静電気環境下でのシール不良等の不具合を同時的に解決することができる。
【0015】
すなわち、本発明では、化学的に安定な光触媒性の金属酸化物として例えば酸化チタンを選択して、これを包装材料の表面に成膜することにより、金属面を包装袋の内部に使用することができる。したがって、従来のように金属面を別途の材料により保護する必要が無く、包装材料を合理化することができる。同時に、成膜は金属であるので、アルミニウム泊の場合と同等のガスバリアー性、含有水分蒸散効果を実現することができる。
【0016】
また、選択した金属が光触媒性の金属酸化物である例えば酸化チタンであるため、ホンダ・フジシマ効果として知られている光触媒効果により、包装袋内部での制菌効果や異臭発生の抑制効果等が容易に実現できる。
【0017】
さらに、包装材料に帯電する静電気の除去のためには、成膜工程において、除電に適した抵抗値による電気導電性を有し、且つ耐食性・食品適合性を有する物質として、例えば炭素等の半導体材料を包装袋の内面に位置するように薄膜コーティングにより成膜できるので、本来は導電性を持たない合成樹脂製フィルムに特段の加工をして静電対策フィルムとして使う必要が無く、且つシール面への塵埃、製品粉末の付着等によるシール不良発生の防止をより効果的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。
図において示される符号1は、本発明の包装袋を構成する包装材料であり、該包装材料1に使用する素材は、一義的には合成樹脂材料のポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムを選択しているが、その他にポリカーボネート(PC)、ナイロン等のフィルムであっても良く、後述する各種薄膜成形に適する素材で、且つ透明度60%程度もしくはそれ以上の透明性を有する素材であることが好ましい。
【0019】
静電対策を要する乾燥雰囲気内で使用する包装材料1は、前記した各種フィルムの静電対策に必要な導電性として、10の3乗〜10の6乗Ω/cm程度の導電抵抗値を付与することができるように、当該フィルム面に、耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質として、例えば炭素系の半導体材料を100nm以下程度の厚みに薄膜コーティング成形したものを使用する。この半導体材料は、食品包装材料としての適合性を有すると共に、酸やアルカリ等に強いものでなくてはならない。
【0020】
また、包装材料1のフィルム表面には、光触媒性の金属酸化物として、例えば酸化チタンのコーティング部2が、約300nm程度の厚みの薄膜となって形成され、この包装材料1によって包装袋を形成した際に、当該包装袋の内面にコーティング部2が向き、包装物に接するように構成して製袋する。この他、光触媒反応に適した金属酸化物として、例えば酸化亜鉛・酸化タングステン・チタン酸ストロンチュウム等を使用しても良い。これらは酸やアルカリに不安定で、酸化力、還元力が弱く実用性に乏しいため、酸化チタンを選択した方が好ましい。
【0021】
包装材料1には製袋を行う場合に必要なシール代3が形成される。これは一般的には熱間シールであり、接着剤は使用しない。この部位は各種の塵埃や、製品から発生する微粉末等が、合成樹脂製フィルム等に発生する静電気の引力でシール代3に付着し、シール不良を多発させる問題部位でもある。
【0022】
さらに、包装材料1には、静電気対策用の導電性の薄膜コーティング部4が施される。これは、静電気を除電するために、フィルム面全体に例えばカーボン等の、除電に適する導電抵抗値を有し、且つ包装物に触れたときにも安定な物質を100nm以下の厚みにコーティングする。また、その薄膜コーティング部4は、光透過度を大きく低下させることのない程度の厚みに設定される。しかも、フィルムの厚みに対して薄膜コーティング部4の厚みは約100分の1以下となるので、シール代3上にコーティングしても、熱間シールの場合は製袋の支障とはならない。
【0023】
図2は、コーティングしたフィルムの全体図を示すもので、図中、コーティングフィルム5としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を使用し、フィルムロール6に巻かれている。このコーティングフィルム5には、光触媒機能を有する薄膜形成部分として、酸化チタンのコーティング部2が縦・横に連続的に成膜されている。静電対策用のための前記した薄膜コーティング部4は、用途に応じて必要な場合にだけ成膜する。
【0024】
図3は、製袋した包装袋を示すもので、片面コーティング包装袋7および両面コーティング包装袋8それぞれは、いずれも酸化チタンのコーティング部2が包装袋の内側に面するように配置された状態で形成されている。
【0025】
次に、以上のように構成された最良の形態についての製造方法の一例について説明する。
本発明における薄膜形成部分としての金属薄膜成形では、材料に酸化チタンを選択しているが、その成膜技術には様々な方法がある。また、本発明では、薄膜の厚みの制御や精度、薄膜形成速度、熱の影響等の判断からして、図4(b)に示すように、PVD(フィジカル・ベーパー・デポジション)法の一つであるスパッタリング法を採用しているが、この他に単純真空蒸着法やCVD(ケミカル・ベーパー・デポジション)法に関わる方法、あるいはスピンコーティング法等、各種の方法がある。これらいずれの方法においても本発明の趣旨を損なうことにはならない。
【0026】
所望の形状の成膜を行うためには、図4(a)に示すような養成用フィルム9が使用される。この養成用フィルム9には、所望の成膜形状になるように開穿した開口部10が形成されている。該養成フィルム9は、母材のPETフィルムと合わせてロール状に巻き、2層フィルムロール11とする。図4(b)に示したように、この2層フィルムロール11を、模式的に示したスパッタリングプラント12内に支架し、巻き取りロール16方向へ移送しつつ、加速粒子14を酸化チタンターゲット13に衝突させ、叩き出されて飛び出してきた酸化チタン粒子15をフィルム上の所望の部分に衝突させて成膜する。図中、17は2個のガイドロールを示す。
【実施例】
【0027】
次に、スパッタリング法によりフィルム面上に薄膜を形成する場合の実施例について説明する。
すなわち、物理的に加速された酸化チタン粒子15が包装材料1を構成する高分子に衝突し、その衝突エネルギーで熱融合し、さらにその上に加重積層する。したがって、金属薄膜面と包装材料1面との接着力は極めて大きく、粒子間の結合も緻密である。また、酸化チタンの化学的な安定性は、瞬間凍結に必要な摂氏マイナス65度から耐熱性菌類の殺菌に必要な摂氏120度の範囲(レトルト釜殺菌)においても十分である。また、そのような温度環境下で、金属薄膜面を包装袋の内面に位置させて包装物に直接触れさせることができるだけの耐薬性を保持することができる。このために、合成樹脂から成るフィルム面を外面に向けることが可能であり、所望の商業印刷や諸データの印刷をフィルム面に自在に行える。そして、ガスバリアー性の確保、含有水分蒸散防止効果については現状のアルミニウム泊を中心に多層化して使用する場合と同等もしくはそれ以上の成果が実現できる。
【0028】
現状の技術で高度な光遮蔽やガスバリアー性の確保、水分蒸散の防止等を行う場合、一般的には、アルミニウム等の薄膜を使用し、アルミニウム泊を中心に両面に10ミクロン程度の厚みのフィルムを貼合し、外面を印刷面とし内面を包装物との隔離面として、包装材料が酸類やアルカリ類等に腐食されないように構成する。
【0029】
また、金属酸化物半導体である酸化チタン薄膜面を包装袋の内面に位置させることにより、光触媒効果を包装袋内において実現することができる。酸化チタンによる光触媒効果をより効果的に実現するためには、酸化チタンのバンドギャップが、3.2eVであることから容易に導き出される、波長λ=387.5nmの紫外線が共鳴吸収波長としてより多く必要となる。
【0030】
本実施例のスパッタリング法によれば、透過光の波長を一定限度内で制御できるので、母材である包装用フィルムの特性に応じて、より高い所望の波長に紫外線を導入することができる。一方、包装物の酸化抑制のために、包装物の種類によっては、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを99.8%以上封入するので、光触媒の化学的な基本挙動を成す、酸化還元反応の環境とすれば好ましくないものと判断される。しかし、別な判断とすれば残留する酸素は0.2%であり、アボガドロ定数(約6.02×10の23乗)からみても、物理的な存在比は必ずしも小さいとはいえない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における包装材料を示すもので、(a)は正面図、(b)は(a)中のX−X線部分の拡大断面図である。
【図2】同じくコーティングしたフィルム全体を示す斜視図である。
【図3】同じく包装袋の具体的な構成を示すもので、(a)は片面内面コーティングの場合の一部切欠斜視図、(b)は両面内面コーティングの場合の一部切欠斜視図である。
【図4】同じく包装材料の製造方法の一例を示すもので、(a)は当該製造方法に使われる養成用フィルムを備えたコーティングフィルムの一例を示す斜視図、(b)はスパッタリングプラントの簡略した模式図である。
【符号の説明】
【0032】
1 包装材料
2 コーティング部
3 シール代
4 薄膜コーティング部
5 コーティングフィルム
6 フィルムロール
7 片面コーティング包装袋
8 両面コーティング包装袋
9 養成用フィルム
10 開口部
11 2層フィルムロール
12 スパッタリングターゲット
13 酸化チタンターゲット
14 加速粒子
15 酸化チタン粒子
16 巻き取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルム上の所望の箇所に所望の形状で光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分を有することを特徴とする包装材料。
【請求項2】
透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルム上に、耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質による薄膜コーティング部と、該薄膜コーティング部上の所望の箇所に所望の形状で形成した光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分とを有することを特徴とする包装材料。
【請求項3】
光触媒性の金属酸化物は、酸化チタン・酸化亜鉛・酸化タングステン・チタン酸ストロンチュウムのいずれかである請求項1または2記載の包装材料。
【請求項4】
耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質は、炭素系の半導体材料である請求項2または3記載の包装材料。
【請求項5】
透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルムの包装物に接する内面上の所望の箇所に所望の形状で光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分を有し、包装用フィルムの展開面において前記薄膜形成部分が各展開面部分のうちの所望の面に配置して成ることを特徴とする包装袋。
【請求項6】
透明性を有する合成樹脂製の包装用フィルムの包装物に接する内面上に、耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質による薄膜コーティング部と、該薄膜コーティング部上の所望の箇所に所望の形状で形成した光触媒性の金属酸化物による薄膜形成部分とを有し、包装用フィルムの展開面において前記薄膜形成部分が各展開面部分のうちの所望の面に配置して成ることを特徴とする包装袋。
【請求項7】
光触媒性の金属酸化物は、酸化チタン・酸化亜鉛・酸化タングステン・チタン酸ストロンチュウムのいずれかである請求項5または6記載の包装袋。
【請求項8】
耐食性・電気導電性・食品適合性を有する物質は、炭素系の半導体材料である請求項6または7記載の包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−331765(P2007−331765A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162510(P2006−162510)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(590006398)マルトモ株式会社 (23)
【出願人】(595035360)
【Fターム(参考)】