説明

包装用シート

【課題】塩素、フッ素等のハロゲン系材料を含まず、水蒸気バリア性の高い包装用シート及びPTP包装体を提供する。
【解決手段】少なくとも、高密度ポリエチレン樹脂(A)、石油樹脂(B)および非晶性ポリオレフィン樹脂(C)を含む包装用シート。前記高密度ポリエチレン樹脂(A)および石油樹脂(B)の合計重量と、非晶性ポリオレフィン(C)の重量との重量配合比((A+B)/C)が50/50以上90/10以下である請求項1に記載の包装用シート。前記包装用シートを用いて作製されるプレススルーパック包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品および食品等の包装用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品、食品等の包装にはプラスチックシートを成形して作成したポケットに内容物を収納し、粘着剤を塗布したアルミ箔を蓋材として熱シールして包装するいわゆるプレススルーパック(以下PTP)包装体が用いられてきた。プラスチックシートとしては透明性、成形性、剛性、およびコストの面などから主としてポリ塩化ビニル樹脂が用いられてきた。しかし内容物が吸湿性のものである場合、ポリ塩化ビニル樹脂では防湿性に劣るため、ポリ塩化ビニル樹脂シートに防湿性の優れたポリ塩化ビニリデン樹脂をコーティングして用いて対応してきたが、これらは高価なものとなりコスト面で問題であった。
【0003】
また近年、環境問題よりポリ塩化ビニル樹脂及びポリ塩化ビニリデン樹脂が焼却処理の際の含塩素ガスの発生などから敬遠されている。一方、最近の成形機の改良に伴い以前は成形が難しかったポリプロピレンシートがその防湿性、低コスト性及び易処理性に注目されて種々の用途で使用されるようになってきており、PTP包装用としても用いられるようになった。近年では、水分に敏感な薬剤の保存のためや、新薬開発速度の促進のため、信頼性に優れる水蒸気バリア性の高いシートが求められており、その場合ポリプロピレン樹脂に石油樹脂を添加することによって水蒸気バリア性を向上させる方法が実施されてきた。しかし、ポリプロピレン樹脂に石油樹脂を添加する方法では、成形後の透明性、成形性は良好であるもののポリ塩化ビニル樹脂シートにポリ塩化ビニリデン樹脂をコーティングした積層シートに比較し、水蒸気バリア性が不十分である。一方、ポリオレフィン樹脂の中でもよりバリア性の高い高密度ポリエチレン樹脂を用いた場合には、水蒸気バリア性は向上できるものの、成形後の寸法ばらつきによるバリア性低下および透明性の改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−143613号公報
【特許文献2】特公平6−84063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塩素、フッ素等のハロゲン系材料を含まず、水蒸気バリア性の高い包装用シート及び成形後のバリア性が高いPTP包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の包装用シートは、少なくとも高密度ポリエチレン樹脂(A)、石油樹脂(B)および非晶性ポリオレフィン樹脂(C)を含むものである。
【0007】
[2]本発明の包装用シートは、前記高密度ポリエチレン樹脂(A)および石油樹脂(B)の合計重量と非晶性ポリオレフィン(C)の重量との重量配合比((A+B)/C)を50/50以上90/10以下とすることができる。
【0008】
[3]本発明の包装用シートは、前記高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)の重量配合比(A/B)を70/30以上90/10以下とすることができる。
【0009】
[4]本発明の包装用シートは、前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)を、環状ポリオレフィンを含むものとすることができる。
【0010】
[5]本発明の包装用シートは、前記環状ポリオレフィンが環状オレフィンとオレフィンとの共重合体を含むことができる。
【0011】
[6]本発明の包装用シートは、前記共重合体が、ノルボルネン、ノルボルネンの誘導体、ジシクロペンタジエンとエチレンとの付加反応物、およびジシクロペンタジエンの誘導体とエチレンとの付加反応物からなる群から選択される1種以上の環状オレフィンと、オレフィンとの共重合体を含むことができる。
【0012】
[7]本発明の包装用シートは、前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、およびブタジエンからなる群から選択される1種以上のオレフィンを含むことができる。
【0013】
[8]前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)がノルボルネンとエチレンの共重合体を含むことができる。
【0014】
[9]本発明の包装用シートは、前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)がシクロペンタジエンまたはその誘導体とノルボルネンまたはその誘導体との付加反応物と、エチレン、ブタジエン又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体、またはその水素添加物とすることができる。
【0015】
[10]本発明の包装用シートは、前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)がジシクロペンタジエンまたはその誘導体とエチレンとの付加反応物とエチレン、ブタジエン又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体、またはその水素添加物とすることができる。
【0016】
[11]本発明の包装用シートは、石油樹脂(B)が水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂とすることができる。
【0017】
[12]本発明の包装用シートは、前記石油樹脂(B)の数平均分子量が300〜2000とすることができる。
【0018】
[13]本発明のプレススルーパック包装体は前記〔1〕乃至〔12〕のいずれかに記載の包装用シートを用いて作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の包装用シートは、塩素、フッ素等のハロゲン系材料を含まず、水蒸気バリア性が高く、PTP包装体への成形性も優れたものとなる。また本発明のPTP包装体は耐防湿性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の包装用シートの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のPTP包装体の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例の評価に用いる薬品包装体の概略斜視図である。
【図4】本発明の実施例の評価に用いる薬品包装体の概略斜視図である。
【図5】本発明の実施例の評価に用いる薬品包装体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明について、以下図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
本発明の包装用シートは図1に示すように少なくとも単層シートであり、少なくとも高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)非晶性ポリオレフィン樹脂(C)とを含むものである。
【0023】
本発明の包装用シート中の高密度ポリエチレン樹脂(A)および石油樹脂(B)の合計重量と非晶性ポリオレフィン(C)の重量との重量配合比((A+B)/C)は50/50以上90/10以下であることが好ましく、より好ましくは50/50以上70/30以下である。重量配合比を前記範囲内とすることにより、成形後の容器の寸法ばらつきが抑えられ成形後のバリア性が高い容器を提供する樹脂組成物となる。前記範囲の下限値未満の場合にはコスト面で不利になり、前記範囲の上限値を超える場合には成形後の寸法ばらつきが生じるため成形後のバリア性が低下する可能性がある。
【0024】
本発明の包装用シート中の高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)との重量配合比(A/B)は70/30以上90/10以下であることが好ましい。前記樹脂層中の重量配合比を前記下限値以上とすることによりシートの剛性を保持し、n−ヘプタンを溶媒とする残留モノマーや低分子量化合物の抽出量が150ppm以内に抑えられ厚生省告示第20号に適合することができる。また前記上限値以下とすることによりシートの成形性を向上させ、高いレベルの水蒸気バリア性を付与させることができる。
【0025】
本発明に用いられる高密度ポリエチレン樹脂(A)の密度は0.945〜0.970g/cm3であることが好ましい。密度を前記範囲内とすることで、高い水蒸気バリア性や透明性を得ることができる。
【0026】
また高密度ポリエチレン樹脂(A)は、メルトフローレート(以下MFRという)が0.2〜8g/10分であることが好ましい。MFRを前記範囲内とすることで、フィルムの透明性や剛性を損なうことなく、また溶融押出性に優れ、ダイス押出面の「メヤニ」の発生も抑制することができる。
【0027】
高密度ポリエチレン樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。例えば、エチレンを、炭素数3〜18のα−オレフィンの存在下又は非存在下、遷移金属を含む化合物を触媒として重合することによって得られ、重合反応は30℃〜300℃の重合温度で、常圧〜3000kg/cm2の重合圧力下で行われる。重合方法としては、溶媒溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる石油樹脂(B)としては、脂肪族系、芳香族炭化水素樹脂系、脂環族飽和炭化水素樹脂系、共重合系等が使用可能であるが、透明性と臭気の観点から脂肪族系炭化水素樹脂が好ましく、ジシクロペンタジエンを熱重合したのちに水添反応を施して得られる水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂がより好ましい。前記水素添加ジシクロペンタジエン系の石油樹脂の水素化率は70%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。水素化率の割合が高くなることで石油樹脂の極性が小さくなり、ベース樹脂との相溶性が改良される。
また、軟化点(環球法、JIS K2548に準ずる)は、70〜150℃程度とするのが好ましく、より好ましくは90〜140℃である。軟化点を70℃以上にすることにより組成物のポリオレフィンに対する接着性能および耐熱性のバランスが良好となる。軟化点を150℃以下とすることで、樹脂の製造が容易になり、製造コストの面でも有利になるため好ましい。
【0029】
石油樹脂(B)の数平均分子量は、300〜2000とするのが好ましく、より好ましくは500〜1500である。数平均分子量を前記の下限値以上とすることにより、樹脂組成物の凝集力等の接着性能が良好となり、水蒸気バリア性も向上する。数平均分子量を前記の上限値以下とすることで、ベースポリマーのゴム系重合体または合成樹脂系重合体との相溶性が良好となるとともに、樹脂の製造が容易になり、製造コストの面でも有利になるため好ましい。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値による。
【0030】
本発明に用いられる非晶性ポリオレフィン樹脂(C)としては、環状オレフィンモノマーの開環メタセシス重合体およびその水素添加物からなる環状オレフィンポリマーや環状オレフィンモノマーとα―オレフィンとの共重合体からなる環状オレフィンコポリマーが使用可能であるが、包装容器への成形性の観点から環状オレフィンコポリマーの方がより好ましい。
【0031】
また本発明においては、前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)を、環状ポリオレフィンを含むものとすることができる。前記環状ポリオレフィンは、環状オレフィンとオレフィンとの共重合体を含むことができる。前記共重合体は、ノルボルネン、ノルボルネンの誘導体、ジシクロペンタジエンとエチレンとの付加反応物、およびジシクロペンタジエンの誘導体とエチレンとの付加反応物からなる群から選択される1種以上の環状オレフィンと、オレフィンとの共重合体を含むことができる。
前記オレフィンは、エチレン、プロピレン、およびブタジエンからなる群から選択される1種以上のオレフィンを含むことができる。
前記共重合体を構成する環状オレフィンモノマーとオレフィンモノマーとしてはそれぞれノルボルネンとエチレンが中でも好ましい。また、前記環状オレフィンコポリマーは共重合体を形成する環状オレフィンモノマーの比率で各種物性が変化する。環状オレフィンモノマーの比率が50wt%以上80wt%以下のものが使用可能であるが、より好ましくは60wt%以上70wt%以下のものである。環状オレフィンモノマー比率を上記範囲内とすることで樹脂組成物中の高密度ポリエチレンとの軟化温度のバランスがとれ成形後の容器の寸法ばらつきが抑えられる。
【0032】
また前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)は、シクロペンタジエンまたはその誘導体とノルボルネンまたはその誘導体との付加反応物と、エチレン、ブタジエン又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体、またはその水素添加物とすることができる。
【0033】
さらに前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)は、ジシクロペンタジエンまたはその誘導体とエチレンとの付加反応物とエチレン、ブタジエン又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合、またはその水素添加物とすることもできる。
【0034】
また、前記環状オレフィンコポリマーとしてはガラス転移温度が140℃以下とするのが好ましく、より好ましくは100℃以下である。ガラス転移温度を前記温度以下にすることにより、樹脂組成物中の高密度ポリエチレンの軟化温度と同等以下にすることができ、成形後の容器の寸法ばらつきが抑えられ成形後のバリア性が高い容器を提供する樹脂組成物となる。
【0035】
前記環状オレフィンコポリマーは、MFRが0.2〜12g/10分であることが好ましい。MFRを前記範囲内とすることで溶融押出性に優れ、高密度ポリエチレン樹脂(A)と溶融粘度を調整することにより相溶性が良くなる。
【0036】
(シートの製造方法)
本発明の包装用シートの製造方法としては、例えば、原料をあらかじめブレンドし、押出機により溶融混練後、T型ダイスによりシート状に製膜する方法など公知の製膜方法が挙げられる。なお原料のブレンド方法としては、特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法が挙げられる。公知のブレンド方法としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂(A)および石油樹脂(B)非晶性ポリオレフィン樹脂(C)をドライブレンドする方法、メルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法には、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いることができ、またメルトブレンドする方法には、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いることができる。
【0037】
本発明の包装用シートには、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、抗ブロッキング剤等の添加剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、商品名:IRGANOX1010)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、商品名:IRGANOX1076)等のフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のホファイト系安定剤等が挙げられる。
【0038】
滑剤としては、例えば、エルカ酸アミド、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止剤としては、例えば、炭素数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステル、ソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられ、加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等が挙げられ、抗ブロッキング剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0039】
上記の種々の添加剤は、高密度ポリエチレン樹脂(A)、石油樹脂(B)、非晶性ポリオレフィン樹脂(C)を予めブレンドして得られる樹脂混合物に添加して用いても良く、高密度ポリエチレン樹脂(A)または石油樹脂(B)または非晶性ポリオレフィン樹脂(C)のそれぞれに添加して用いても良く、または、添加剤をマスターバッチとして用いても良い。
【0040】
(本発明の包装用シートの使用方法)
本発明の包装シートの使用例としてPTP包装体の底材が挙げられる。PTP包装体とは、図2に示すように、例えば医薬品包装分野の場合、錠剤、カプセル剤等の固形剤の包装用として、本発明の包装用シートをポケット形状に成形して底材3、その中に固形の薬剤4を充填し、例えばアルミ箔からなる蓋材2で密封した包装体である。水分による劣化がある薬剤の場合、包装用シートには高いレベルの水蒸気バリア性が求められている。この点、本発明の包装用シートは水蒸気バリア性が良好のため、PTP包装体の底材3として好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
高密度ポリエチレン樹脂56重量部、石油樹脂14重量部、非晶性樹脂30重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にてシーティングし、厚み0.3mmの包装用シートを得た。
なお実施例および比較例に用いた各原料は以下のとおりである。
高密度ポリエチレン樹脂:旭化成株式会社製 サンテックHD−B161
密度 0.966g/cm
石油樹脂 :荒川化学工業株式会社製
水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂
アルコンP−125
非晶性樹脂 :ポリプラスチック株式会社製
環状オレフィンコポリマー
TOPAS8007F−04
【0043】
(実施例2)
高密度ポリエチレン樹脂72重量部、石油樹脂18重量部、非晶性樹脂10重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0044】
(実施例3)
高密度ポリエチレン樹脂40重量部、石油樹脂10重量部、非晶性樹脂を50重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0045】
(実施例4)
高密度ポリエチレン樹脂49重量部、石油樹脂21重量部、非晶性樹脂を30重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0046】
(実施例5)
高密度ポリエチレン樹脂63重量部、石油樹脂27重量部、非晶性樹脂を10重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0047】
(実施例6)
高密度ポリエチレン樹脂35重量部、石油樹脂15重量部、非晶性樹脂を50重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0048】
(実施例7)
高密度ポリエチレン樹脂63重量部、石油樹脂7重量部、非晶性樹脂を30重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0049】
(実施例8)
高密度ポリエチレン樹脂81重量部、石油樹脂9重量部、非晶性樹脂を10重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0050】
(実施例9)
高密度ポリエチレン樹脂45重量部、石油樹脂5重量部、非晶性樹脂を50重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0051】
(比較例1)
高密度ポリエチレン樹脂80重量部、石油樹脂20重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にてシーティングし、厚み0.3mmの包装用シートを得た。
【0052】
(比較例2)
高密度ポリエチレン樹脂70重量部、非晶性ポリオレフィン樹脂30重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にてシーティングし、厚み0.3mmの包装用シートを得た。
【0053】
(水蒸気バリア性の評価)
得られた包装用シートの水蒸気バリア性を、JIS Z 0208:40℃/90%RHに準拠し測定した。結果を表1に示す。
【0054】
(成形性の評価)
CKD社のプラグアシスト圧空成形機(FBP−M2)で図3に示すように2号カプセル型に成形したサンプル中央部の周囲(破線100上)の9点(101〜109)の厚みをダイアルゲージにて測定した。結果を表1に示す。

A:9点の最薄厚みが55μm以上
B:9点の最薄厚みが45μm以上55μm未満
C:9点の最薄厚みが45μm未満
【0055】
(PTP包装体成形後の水蒸気バリア性の評価)
実施例1〜9および比較例1〜2で得られた包装用シートを、PTP成形機(FBP−M2、CKD社製)により凹部を成型し、そこに吸湿剤(錠剤型合成ゼオライト、東海化学工業所社製)を充填し、アルミ箔を接着してPTP包装体を作製した。まず、PTP包装体の重量を測定してから、その後40℃/90%RHの恒温恒湿槽に投入し、吸湿剤の水分吸収によるPTP包装体の重量変化を経時で測定し、成形後の包装用シートの水蒸気バリア性を測定した。結果を表1に示す。成形品の最薄厚みがAのものが良好な結果であった。
【0056】
(成形温度幅の評価)
得られた包装用シートをCKD社のプラグアシスト圧空成形機(FBP−M2)で成形する際に型追従性が良く、熱板へのとられや白濁箇所がない温度範囲を測定した。結果を表1に示す。いずれの実施例においても比較例と比較して、広い前記の成形温度幅を有していた。
【0057】
(透明性の評価)
得られた包装用シートの両面に株式会社共和製のパイロンクリスタルテープを貼ったサンプルを作成し、日本電色工業株式会社製のヘイズメータ(NDH2000)で内部ヘイズを測定した。結果を表1に示す。実施例3、6、9において、特に低い内部ヘイズを示していた。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の包装用シートは、塩素、フッ素等のハロゲン系材料を含まず、水蒸気バリア性が高く、例えばPTP包装体の用途に好適に用いることができる。そのため、本発明は産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・包装用シート
2・・・蓋材
3・・・底材
4・・・薬剤
21・・・包装体
22・・・2号カプセル型(斜視図)
23・・・2号カプセル型(斜視図)
24・・・2号カプセル型(断面図)
100・・PTP包装体サンプル中央部
101〜109・・・厚み測定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、高密度ポリエチレン樹脂(A)、石油樹脂(B)および非晶性ポリオレフィン樹脂(C)を含む包装用シート。
【請求項2】
前記高密度ポリエチレン樹脂(A)および石油樹脂(B)の合計重量と、非晶性ポリオレフィン(C)の重量との重量配合比((A+B)/C)が50/50以上90/10以下である請求項1に記載の包装用シート。
【請求項3】
前記高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)の重量配合比(A/B)が70/30以上90/10以下である請求項2に記載の包装用シート。
【請求項4】
前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)が、環状ポリオレフィンを含む請求項1〜3のいずれかに記載の包装用シート。
【請求項5】
前記環状ポリオレフィンが環状オレフィンとオレフィンとの共重合体を含む請求項4に記載の包装用シート。
【請求項6】
前記共重合体が、ノルボルネン、ノルボルネンの誘導体、ジシクロペンタジエンとエチレンとの付加反応物、およびジシクロペンタジエンの誘導体とエチレンとの付加反応物からなる群から選択される1種以上の環状オレフィンと、オレフィンとの共重合体を含む請求項5に記載の包装用シート。
【請求項7】
前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、およびブタジエンからなる群から選択される1種以上のオレフィンを含む請求項5または6に記載の包装用シート。
【請求項8】
前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)がノルボルネンとエチレンの共重合体を含む請求項4〜7のいずれかに記載の樹脂シート。
【請求項9】
前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)がシクロペンタジエンまたはその誘導体とノルボルネンまたはその誘導体との付加反応物と、エチレン、ブタジエン又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体、またはその水素添加物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項10】
前記非晶性ポリオレフィン樹脂(C)がジシクロペンタジエンまたはその誘導体とエチレンとの付加反応物とエチレン、ブタジエン又はスチレン誘導体から選ばれた1種以上の不飽和単量体との共重合体、またはその水素添加物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項11】
請求項1に記載の石油樹脂(B)が水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂である請求項1〜10のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項12】
前記石油樹脂(B)の数平均分子量が300〜2000である請求項1〜11のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の包装用シートを用いて作製されるプレススルーパック包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−76056(P2013−76056A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125378(P2012−125378)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】