説明

包装用容器

【課題】フラップ状の部分をどちらの方向に倒し込んだ場合にも容器を二つ折り状態に保持することができ、かつ、より小さい力でフラップ状の部分を倒し込むことのできる、万人に使いやすい包装用容器を提供する。
【解決手段】包装用容器1は、底板2と天板3と底板及び天板の間に立設された右,左の立板4a,4bとを有し、底板2と天板3とを貫通する幅方向中央線上に、底板2には折り線21を、天板3にはジッパー31を設け、ジッパー31を破断することで折り線21を介して左右対称に二つ折り可能であって、底板2に、折り線21と交差し折り線21から離れるに従って互いに近づくように形成された一対の切込線61a,61bを有し、包装用容器1を折り線を介して二つ折りにし、一対の切込線に挟まれたフラップ状の部分73を任意の一方に折り曲げることにより二つ折り状態が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菓子等を収容するための包装用容器に係り、特に、中央で二つ折りして使用可能な包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、菓子などを収容して販売するためのカートン、すなわち包装用容器には、ジッパーを備え、このジッパーを破断することにより容易に開封でき、包装用容器におけるジッパーと対向する壁面に設けられた折り線を境に二つ折りにして使用に供されるものが知られている。特許文献1にはそのような二つ折り式の包装用容器が開示されている。
【0003】
また、二つ折り式の包装用容器のうち、ジッパー及び折り線が包装用容器の幅方向中央線上に位置することにより、二つ折りした際に左右の函体が同一の大きさになり、二つ折り前は側壁であった部分を底として使用し、上部が開口した函体としてテーブル上に設置してパーティー等で至便に使用できるものがある。特許文献2にはそのような左右対称タイプの二つ折り式の包装用容器が開示されている。
【0004】
ところで、上記したような二つ折り式の包装用容器では、折り線部分において紙の復元力が働くため、常に力を加えていないと二つ折り状態を保つことができない。そのため、特許文献1及び2に開示されているように、二つ折り状態を保持するための様々な工夫がなされている。
【0005】
特許文献1には、折り線と交わる略平行な二本の開口固定用破断線を有し、該二本の開口固定用破断線は、折り線の一方側においては平行線であり、他方においては折り線から離れるにつれて互いに離れるいわゆる末広がりとした包装用容器が開示されている。このような包装用容器101の開口固定用破断線部分を、図10(A)及び(B)にそれぞれ展開状態及び包装用容器を二つ折りにした状態として示す。この包装用容器101によれば、ジッパー(図示省略)を破断し、折り線102を介して包装用容器101を二つ折りにした後、二本の固定用破断線103a,103bに挟まれて形成されるフラップ状の部分104を、固定用破断線が末広がり状になっている側S1から平行になっている側S2へ押し倒すことにより、該二本の固定用破断線に挟まれた部分のうち一方側の台形状を成すフラップ状の部分104aが他方側の長方形状を成す枠部分105bとの間で摩擦を生じて係止し、包装用容器101が二つ折りされた状態で保持される。
【0006】
また、特許文献1及び2には、折り線と交わる略平行な二本の開口固定用破断線を有し、該二本の開口固定用破断線を、折り線の一方側においては平行線とし、他方においては折り線から離れるにつれて互いに一度離れると共に一定以上折り線から離れた部分においては再度近づく対称の円弧状とした包装用容器が開示されている。この包装用容器201の開口固定用破断線部分を、図11(A)及び(B)にそれぞれ展開状態及び包装用容器を二つ折りにした状態として示す。
【0007】
上記包装用容器によれば、ジッパーを破断し、折り線202を介して包装用容器201を二つ折りにした後、二本の固定用破断線203a,203bに挟まれて形成されるフラップ状の部分204を、固定用破断線が円弧状になっている側S3から平行になっている側S4へ押し倒すことにより、該二本の固定用破断線に挟まれたフラップ状の部分204のうち固定用破断線が円弧状になっている側204aの、円弧状の固定用破断線により形成される凸部204cが他方側の長方形状を成す枠部分205bを越えて係止し、該包装用容器が二つ折りされた状態で保持される。
【0008】
【特許文献1】特開2006−225007号公報
【特許文献2】特開平08−026342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した包装用容器101,201では、包装用容器を二つ折りにした後、開口固定用破断線103a,103b,203a,203bにより形成されるフラップ状の部分104,204を必ずある一方向に倒し込まなければ二つ折り状態を保持することができず、他の方向に倒し込んだ場合にはそのような効果を得ることができない。特に、左右対称タイプの二つ折り式の包装用容器にあっては、ユーザーがどちら側からも容器に接する可能性があるため、どちら側に倒しても同様の効果を得ることができる包装用容器が望まれていた。
【0010】
また、上記のした包装用容器では、フラップ状の部分104,204を倒し込む際には、フラップ状の部分104の側縁と枠部分105bとの間で生じる摩擦力、もしくは凸部204cが他方側の長方形状を成す枠部分205bを越える際に必要な変形力に抗って倒し込まなければならず、すなわちどちらもある程度の力を要する。
【0011】
そのため、初めてこのような包装用容器に接する者に対してはその機構を理解するための思考を要し、また力が弱い老人や子供などには使いにくい、すなわちユーザーフレンドリーの観点から必ずしも万人向けではない、という問題があった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、フラップ状の部分をどちらの方向に倒し込んだ場合にも容器を二つ折り状態に保持することができ、かつ、より小さい力でフラップ状の部分を倒し込むことのできる、万人に使いやすい包装用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の包装用容器は、底板と天板と底板及び天板の間に立設された左右の立板とを有し、底板と天板とを貫通する幅方向中央線上に、底板には折り線を、天板にはジッパーを設け、ジッパーを破断することで折り線を介して左右対称に二つ折り可能な包装用容器であって、底板に、折り線と交差し折り線から離れるに従って互いに近づくように形成された一対の切込線を有し、包装用容器を折り線を介して二つ折りにし、一対の切込線に挟まれたフラップ状の部分を任意の一方に折り曲げることにより二つ折り状態が保持されることを特徴とする。
【0014】
前記一対の切り込み線は、互いに点対称な位置にそれぞれ一つの湾曲部を有していてもよい。
【0015】
前記一対の切り込み線は、折り線を介して線対称であってもよい。
【0016】
前記切り込み線は、折り線を挟んだ両側であって折り線を介して線対称とならない位置に湾曲部を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の包装用容器によれば、一対の切込線が折り線から離れるに従って互いに近づくように形成された一対の切込線により画成されるフラップ状の部分が折り線のどちら側に折っても枠状の部分に係止するから、フラップ状部分をどちら側から倒し込んだ場合にも包装用容器の二つ折り状態を保持することができる。
【0018】
一対の切込線が湾曲部を有する場合、湾曲部により画成された凸部がフラップ状部分もしくは枠状部分に係止することができる。この湾曲部が互いに点対称な位置に設けられることにより、フラップ状部分をどちら側から倒し込んだ場合にも包装用容器の二つ折り状態を保持することができる。
【0019】
切り込み線は、折り線を介して線対称であれば、一対の切込線により画成されるフラップ状の部分が折り線のどちら側に折っても切込線により画成される枠状の部分に干渉することがないから、フラップ状部分をどちら側から倒し込んだ場合にも包装用容器の二つ折り状態を保持することができる。
【0020】
切り込み線が、折り線を挟んだ両側であって折り線を介して線対称とならない位置に一つずつ湾曲部を有する場合には、一方の湾曲部により画成された凸部が、他方の湾曲部により画成された凹部に対応することなく、すなわち直線状の枠状部分に係止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1乃至図5は第一実施形態の包装用容器1を示す。包装用容器1は図2に展開して示すような一枚の厚紙を折り曲げ、所定の部分において接着することにより図1及び図5に斜視図として、また図3に底面図を除く五面図として示すように形成される。
【0022】
包装用容器1は、底板2と、平板3a及び手前,奥の斜板3b,3cから成る天板3と、底板2と天板3との間に立設された左右の立板4a,4b及び奥,手前の立板5a,5bと、を有し、底板2と天板3とを貫通する幅方向中央線上に、底板2には折り線21を、天板3には左右のミシン目31a,31bとこれにより画成される菱形部分31cとから成るジッパー31を設け、図5に示すようにジッパー31を破断し折り線21を介して左右対称に二つ折り可能に構成されている。
【0023】
包装用容器1は、展開状態においては図2に示すように一枚の厚紙であり、長方形の底板2と、図において底板2の左右に位置する奥立板5a及び内側の手前立板5b’と、奥立板5aの左に位置し、右から順に奥の斜板3c、平板3a及び手前の斜板3bから成る天板3と、天板3の左に位置する外側の手前立板5bと、平板3aの上下に位置する外側の右立板4b及び左立板4aと、底板2の上下に位置する、内側の右立板4b’及び左立板4a’と、内側の右立板4b’及び左立板4a’における奥の斜板3c、平板3a及び手前の斜板3bと接する辺に配設された折り込み片41a,41b,41c及び42a,42b,42cと、内側の手前立板5b’及び奥立板5aにおける内側の右立板4b’,左立板4a’と接する辺に配設された折り込み片51a,51b及び52a,52bとから成る。
【0024】
ジッパー31は、包装用容器1の幅方向中央線上、すなわち図2における縦方向中央に略水平に設けられる左右のミシン目31a,31bと、これらにより画成される菱形部分31cとから構成される。左右のミシン目31a,31bは、右から順に奥立板5a、奥の斜板3c、平板3a、手前の斜板3b及び外側の手前立板5bに及び、互いの距離は平板3aの中央部分において最も広く、奥,手前の立板5a,5bの図2における右,左端部において最も狭くなっており、全体として略菱形に形成されている。左右のミシン目31a,31bによって画成される菱形部分31cは図2においてその左端に少し突き出た把手31dを有し、この把手31dをつまんで図1において手前側から奥側に引っ張り、ミシン目31a,31bを破断することにより箱を開封することができる。折り線21は、底板2を横断するように、包装用容器1の幅方向中央線上、すなわち図2において略水平方向に設けられる。
【0025】
内側の左立板4a’及び右立板4b’にはそれぞれ一対のスリット45a,46a及び45b,46bが設けられる。
【0026】
底板2には、折り線21と交差するように形成された左右一対の切込線61a,61bと、それぞれの切込線61a,61bの両端同士を結ぶ上下一対の折り線62a,62bとが設けられる。切込線61a,61bはそれぞれ折り線21を挟んで対称であり、折り線21と交差する部分において互いの距離が最も広く、それぞれの両端部において互いの距離が最も狭い。また、切込線61a,61bはそれぞれ折り線21を挟んで上下に、切り込みがなされていない破断部64a,64b及び64c,64dが設けられている。
【0027】
この包装用容器1を組み立てるには、底板2にそれぞれ接する内側の左右立板4b’,4a’と、奥の立板5a及び内側の手前立板5b’とを、底板2と接する辺において谷折りすることで垂立させ、奥,手前の立板5a,5b’に接する折り込み片52a,52b,51a,51bをそれぞれ奥,手前の立板5a,5b’と接する辺において谷折りする。この際、各折り込み片の先端に設けられたフック部53a,53b,54a,54bを、内側の左右立板4a’,4b’に設けられたスリット45b,45a,46b,46aにそれぞれ挿入し、係合させる。続いて、奥,手前の立板5a,5bと天板3と、及び平板3aと手前,奥の斜板3b,3cとの接するそれぞれの辺において谷折りし、平板3aが底板2と平行となるようにする。この際、外側の手前立板5bは内側の手前立板5b’に、平板3aと手前及び奥の斜板3b及び3cとは折り込み片41b,42bと41c,42c及び41a,42aと重なる。最後に、平板3aと左右の立板4a及び4bとの接する辺において谷折りし、左右の立板4a及び4bを内側の左右の立板4a’及び4b’と重なるようにする。この状態で重なっている部分をそれぞれ接着することにより、図1,3及び4に示すような包装用容器1が組み立てられる。
【0028】
包装用容器1を図5に示すように二つ折り状態にするには、ジッパー31の把手31dをつまんで図1において手前から奥へ引っ張り、ミシン目31a,31bを破断させることにより菱形部31cを包装用容器1から取り外す。そして、底板2の折り線21を山折りすることにより、図5に示すように包装用容器1をその幅方向中央線の左右に二つ折りすることができる。この状態においては左右の立板4a及び4bが底として利用され、開口91及び92から箱内の菓子等を容易に取り出すことができる。
【0029】
包装用容器1は、底板2の折り線21において山折りするだけでなく、二つ折り状態をより確実に保持するために、図4(A)に示すように、底板2に、先述した包装用容器1を二つ折り状態で保持するための係止機構6を備えている。係止機構6は、前述した一対の切込線61a,61bと、それぞれの切込線61a,61bの両端同士を結ぶ一対の折り線62a,62bと、一対の切込線61a,61b及び一対の折り線62a,62bによって画成されるフラップ63とから成る。フラップ63は折り線21を挟んで図において上半分のフラップ63aと下半分のフラップ63bとから構成される。
【0030】
先述した手順により包装用容器1を二つ折り状態にすると、係止機構6は図4(B)に示すように、フラップ63が折り線21を介して二つ折りされるため、手前側に下半分のフラップ63bが、奥側に上半分のフラップ63aが位置する。
【0031】
この状態でフラップ63をつまみ、下半分のフラップ63bを奥側に押し倒すと、図4(C)に示すように破断部64a,64b及び64c,64dが破断し、フラップ63全体が奥側に倒れる。この際、一対の切込線61a,61bによってフラップ63a及び63bのそれぞれの左右側部にエッジ65a,65b及び66a,66bが、また、底板2においてフラップ63a及び63bを破断して抜いたことにより形成される開口のそれぞれの左右側部に露呈した枠状エッジ67a,67b及び68a,68bが形成される。
【0032】
下半分のフラップ63bと上半分のフラップ63aとは折り線21を挟んで対称であることから、下半分のフラップ63bの左右のエッジ66a及び66bは、底板2の奥側の部分において、上半分のフラップ63aを破断して抜いたことにより枠状に露呈したエッジ67a及び67bと干渉することがない。また、折り線62a,62bが設けられていることから、フラップ63は破断部64a,64b及び64c,64dが破断する程度の小さな力を加えるだけで押し倒すことができる。
【0033】
フラップ63を底板2に対して90°程度倒すと、折り線62a,62bは紙の復元力が強く働かない程度に折れるから、フラップ63は倒れた状態で保持される。ここで、包装用容器1の二つ折りを解除する、すなわち底板2の折り線21における山折りを復元する力が加わると、下半分のフラップ63bの左右のエッジ66a及び66bは、底板2の奥側の枠状のエッジ67a及び67bに当接する。すなわち、フラップ63が底板2に対して90°倒れている状態で、下半分のフラップ63bの左右のエッジ66a及び66bは、それぞれ底板2の奥側の部分のエッジ67a及び67bに対しそれぞれ90°の角度を有し、底板2の折り線21における山折りを復元する力が加わると、フラップ63bには折り線62bを介して手前に引く力が加わり、フラップ63の板面方向手前に移動しようとする。すると、フラップ63は図4(c)において手前の折り線62b部分より奥の折り線21の方が幅広になっているため、下半分のフラップ63bの左右のエッジ66a及び66bが底板2の奥側の枠状のエッジ67a及び67bに引っかかる。
【0034】
以上の作用によりフラップ63が枠状のエッジ67a及び67bに引っかかると、フラップ63は図4(C)においてそれ以上手前に移動することができないから、包装用容器1の二つ折り状態が保持される。なお、本例ではフラップ63を図4(C)において奥側に倒す場合の作用について説明したが、係止機構6は折り線21を介して対称に形成されているから、フラップ63を手前に引き倒した場合にも全く同様の作用及び効果を得ることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態の係止機構6を備えた包装用容器1によれば、容易に二つ折り状態を保持することができるが、その効果は、折り線62a,62bと折り線21との成す角度によって変化する。そこで、図7に示すように、折り線62a,62bと折り線21との成す角度θを様々に変化させ、二つ折り状態を保持する効果についての実験を行った。図においてθの値をそれぞれ、(A)は130°、(B)は125°、(C)は120°、(D)は115°、(E)は110°、(F)は105°、(G)は100°に設定した。
【0036】
一般に、底板を二つ折りした状態でフラップを押し倒し、もしくはこれを戻すのに要する力は、フラップの左右のエッジと底板の枠状エッジとの摩擦の影響を受けるところ、θが90°に近いほど、フラップを傾けた状態でのフラップの左右のエッジと底板の枠状エッジとの接する面積が広くなるため、摩擦が強くなる。
【0037】
そのため、(A)に示すようにθが130°の場合は、底板を二つ折りした状態でフラップを押し倒しても、この状態でフラップの左右のエッジと底板の枠状エッジとの接する面積が小さく、紙の復元力が摩擦力に勝るため、フラップが戻ってしまう。
【0038】
一方、上述したように、フラップ63は折り線62b部分より折り線21部分の方が幅広になっていることにより、下半分のフラップ63bの左右のエッジ66a及び66bが底板2の奥側の枠状のエッジ67a及び67bに引っかかるところ、この折り線62b部分と折り線21部分との幅の差はθが90°に近づくほど小さくなり、小さな力で引っ掛かりが解消してしまう。なお、θが90°未満の場合には折り線62b部分より折り線21部分の方が幅狭になり、上記作用が生じない。
【0039】
そのため、Gに示すようにθが100°の場合は、小さな力で係止機構6による引っ掛かりが解消してしまった。
【0040】
θを上記のように様々に設定し、二つ折り状態を保持する効果について検証したところ、(E)に示すようにθが110°の場合に上述した摩擦力と引っ掛かり力の双方が現れ、最も強く二つ折り状態を保持することができた。
【0041】
以上のように、第一実施形態の包装用容器1によれば、フラップ状の部分をどちらの方向に倒し込んだ場合にも容器を二つ折り状態に保持することができ、特にθを110°に設定した場合にその効果が最も強い。
【0042】
図7は第二実施形態の包装用容器11を示す。包装用容器11は係止機構7を備える点で包装用容器1と相違する。その他の点については包装用容器1と同様であるから、適宜同一の符号を付し、説明を省略する。また、斜視図及び底面図を除く五面図については図1及び図3に示す包装用容器1と同一であるから、省略する。
【0043】
包装用容器11は二つ折り状態をより確実に保持するために、図7(A)に示すように、底板2に係止機構7を有することを特徴とする。以下、この点につき詳述する。
【0044】
包装用容器11の底板2には、折り線21と交差するように形成された一対の切込線71a,71bと、それぞれの切込線71a,71bの両端同士を結ぶ一対の折り線72a,72bとが設けられる。切込線71a,71bはそれぞれ折り線21を挟んで後述する湾曲部71c,71dを除いて対称であり、互いの距離は折り線21と交差する部分において最も広く、それぞれの両端部において最も狭い。
【0045】
係止機構7は、一対の切込線71a,71bと、一対の折り線72a,72bと、一対の切込線71a,71b及び一対の折り線72a,72bによって画成されるフラップ73とから成る。フラップ73は折り線21を挟んで図7(A)において上半分のフラップ73aと下半分のフラップ73bとから構成される。切込線71aは折り線72b付近に、切込線71bは折り線72a付近に、それぞれフラップ73の内側方向へ食い込んだ湾曲部71c,71dを備える。これら湾曲部71c,71dは、フラップ73の中心点を介して対称に設けられる。また、切込線71a,71bにはそれぞれ折り線21を挟んで両側に、切り込みがなされていない破断部74a,74b及び74c,74dが設けられている。
【0046】
先述した手順により包装用容器11を二つ折り状態にすると、係止機構7は図7(B)に示すように、フラップ73が折り線21を介して二つ折りされるため、手前側に下半分のフラップ73bが、奥側に上半分のフラップ73aが位置する。
【0047】
この状態でフラップ73をつまみ、下半分のフラップ73bを奥側に押すと、図7(C)に示すように、破断部74a,74b及び74c,74dが破断し、フラップ73全体が奥側に倒れる。この際、一対の切込線71a,71bによってフラップ73a及び73bのそれぞれの左右側部にエッジ75a,75b及び76a,76bが、また、底板2においてフラップ73a及び73bを破断して抜いたことにより形成される開口のそれぞれの左右側部に露呈した枠状エッジ77a,77b及び78a,78bが、形成される。また、枠状エッジ77a上には湾曲部71cによって凸部79aが、凸部枠状エッジ78b上には湾曲部71dによって凸部79bが、それぞれ形成される。
【0048】
上述の押し倒し動作において、下半分のフラップ73bを奥側に押す際には、下半分のフラップ73bの右のエッジ76bが、凸部79bに圧接する。さらに少しの力を加えてフラップ73bを奥側に押すと、右のエッジ76bと凸部79bとが歪み、図7(C)に示すように、右のエッジ76bが凸部79bを乗り越える。
【0049】
下半分のフラップ73bと上半分のフラップ73aとは折り線21を挟んで湾曲部71c,71dを除いて対称であることから、下半分のフラップ73bの左右のエッジ76a及び76bは、底板2の奥側の部分において上半分のフラップ73aを破断して抜いたことにより枠状に露呈したエッジ77a及び77bと、凸部79bを除いて干渉することがない。また、折り線72a,72bが設けられていることから、フラップ73は破断部74a,74b及び74c,74dが破断する程度の小さな力を加えるだけで押し倒すことができる。
【0050】
フラップ73を底板2に対して90°程度倒すと、折り線72a,72bが紙の復元力が強く働かない程度に折れ、フラップ73が元の位置に戻ろうとしても右のエッジ76bが凸部79bを手前側に乗り越えることができないから、フラップ73は倒れた状態で保持される。
【0051】
ここで、包装用容器11の二つ折りを解除する、すなわち底板2の折り線21における山折りを復元する力が加わると、下半分のフラップ73bの左右のエッジ76a及び76bは、底板2の奥側の枠状のエッジ77a及び77bに当接する。すなわち、フラップ73が底板2に対して90°倒れている状態で、下半分のフラップ73bの左右のエッジ76a及び76bは、それぞれ底板2の奥側の部分のエッジ77a及び77bに対しそれぞれ90°の角度を有し、底板2の折り線21における山折りを復元する力が加わると、フラップ73には折り線72bを介して手前に引く力が加わり、フラップ73の板面方向手前に移動しようとする。すると、フラップ73は図において手前の折り線72b部分より奥の折り線21部分の方が幅広になっているため、下半分のフラップ73bの左右のエッジ76a及び76bが底板2の奥側の枠状のエッジ77a及び77bに引っかかる。
【0052】
以上の作用によりフラップ73が枠状のエッジ77a及び77bに引っかかると、フラップ73は図7(C)においてそれ以上手前に移動することができないから、包装用容器1の二つ折り状態が保持される。なお、本例ではフラップ73を図7(C)において奥側に倒す場合の作用について説明したが、係止機構7は展開状態においてその中心に対し点対称に形成されているから、フラップ73を手前に引き倒した場合にも全く同様の作用及び効果を得ることができる。また、各湾曲部71c,71dがそれぞれ切込線71aにおける折り線72a付近、及び切込線71bにおける折り線72b付近に備えられた場合であっても全く同様の作用及び効果を得ることができる。
【0053】
図8は第三実施形態の包装用容器12を示す。包装用容器12は係止機構8を備える点で包装用容器1と相違する。その他の点については包装用容器1と同様であるから、適宜同一の符号を付し、説明を省略する。また、斜視図及び底面図を除く五面図については図1及び図3に示す包装用容器1と同一であるから、省略する。
【0054】
包装用容器12は二つ折り状態をより確実に保持するために、図8(A)に示すように、底板2に係止機構8を有することを特徴とする。以下、この点につき詳述する。
【0055】
包装用容器12の底板2には、折り線21と交差するように形成された一対の切込線81a,81bと、それぞれの切込線81a,81bの両端同士を結ぶ一対の折り線82a,82bとが設けられる。切込線81a,81bはそれぞれ折り線21を挟んで後述する湾曲部81c,81d,81e,81fを除いて対称であり、互いの距離は折り線21と交差する部分において最も広く、それぞれの両端部において最も狭い。
【0056】
係止機構8は、一対の切込線81a,81bと、一対の折り線82a,82bと、一対の切込線81a,81b及び一対の折り線82a,82bによって画成されるフラップ83とから成る。フラップ83は折り線21を挟んで図8(A)において上半分のフラップ83aと下半分のフラップ83bとから構成される。切込線81a及び81bは折り線82a及び折り線82b付近に、それぞれフラップ83の内側方向へ食い込んだ湾曲部81c,81d及び81e,81fを備える。これら湾曲部81c,81dと81e,81fとはフラップ83における縦方向中心線83cを介して対称であるが、折り線21を介して非対称である。また、切込線81a,81bにはそれぞれ折り線21を挟んで両側に、切り込みがなされていない破断部84a,84b及び84c,84dが設けられている。
【0057】
先述した手順により包装用容器12を二つ折り状態にすると、係止機構8は図8(B)に示すように、フラップ83が折り線21を介して二つ折りされるため、手前側に下半分のフラップ83bが、奥側に上半分のフラップ83aが位置する。この際、湾曲部81c,81eと81d,81fとは重ならない。
【0058】
この状態でフラップ83をつまみ、下半分のフラップ83bを奥側に押すと、図8(C)に示すように、破断部84a,84b及び84c,84dが破断し、フラップ83全体が奥側に倒れる。この際、一対の切込線81a,81bによってフラップ83a及び83bのそれぞれの左右側部にエッジ85a,85b及び86a,86bが、また、底板2においてフラップ83a及び83bを破断して抜いたことにより形成される開口のそれぞれの左右側部に露呈した枠状エッジ87a,87b及び88a,88bが、形成される。また、枠状エッジ86a上には湾曲部81c,81dによって凸部89a,89bが、枠状エッジ86b上には湾曲部81e,81fによって凸部89c,89dが、それぞれ形成される。この際、凸部89a,89cと凸部89b,89dとは重ならない。
【0059】
上述の押し倒し動作において、下半分のフラップ83bを奥側に押す際には、下半分のフラップ83bの左右のエッジ86a,86bが、凸部89a,89cに圧接する。さらに少しの力を加えてフラップ83bを奥側に押すと、左右のエッジ86a,86bと凸部89a,89cとが歪み、図8(C)に示すように、左右のエッジ86a,86bが凸部89a,89cを乗り越える。
【0060】
下半分のフラップ83bと上半分のフラップ83aとは折り線21を挟んで湾曲部81c,81d,81e,81fを除いて対称であることから、下半分のフラップ83bの左右のエッジ86a及び86bは、底板2の奥側の部分において、上半分のフラップ83aを破断して抜いたことにより枠状に露呈したエッジ87a及び87bと凸部89a,89cを除いて干渉することがない。また、折り線82a,82bが設けられていることから、フラップ83は破断部84a,84b及び84c,84dが破断する程度の小さな力を加えるだけで押し倒すことができる。
【0061】
フラップ83を底板2に対して90°程度倒すと、折り線82a,82bが紙の復元力が強く働かない程度に折れ、フラップ83が元の位置に戻ろうとしても左右のエッジ86a及び86bが凸部89a,89cを手前側に乗り越えることができないから、フラップ83は倒れた状態で保持される。
【0062】
ここで、包装用容器12の二つ折りを解除する、すなわち底板2の折り線21における山折りを復元する力が加わると、下半分のフラップ83bの左右のエッジ86a及び86bは、底板2の奥側の枠状のエッジ87a及び87bに当接する。すなわち、フラップ83が底板2に対して90°倒れている状態で、下半分のフラップ83bの左右のエッジ86a及び86bは、それぞれ底板2の奥側の部分のエッジ87a及び87bに対しそれぞれ90°の角度を有し、底板2の折り線21における山折りを復元する力が加わると、フラップ83には折り線82bを介して手前に引く力が加わり、フラップ83の板面方向手前に移動しようとする。すると、フラップ83は図において手前の折り線82b部分より奥の折り線21部分の方が幅広になっているため、下半分のフラップ83bの左右のエッジ86a及び86bが底板2の奥側の枠状のエッジ87a及び87bに引っかかる。
【0063】
以上の作用によりフラップ83が枠状のエッジ87a及び87bに引っかかると、フラップ83は図8(C)においてそれ以上手前に移動することができないから、包装用容器1の二つ折り状態が保持される。なお、本例ではフラップ83を図8(C)において奥側に倒す場合の作用について説明したが、フラップ83を手前に引き倒した場合にも全く同様の作用及び効果を得ることができる。また、各湾曲部81c,81d及び81e,81fがそれぞれ切込線81a,81bにおける折り線21付近及び82b付近に備えられた場合であっても全く同様の作用及び効果を得ることができる。
【0064】
以上説明したように、本発明の包装用容器は、フラップ部分を任意の方向に押し倒すことにより二つ折り状態を保持することができるよう構成されたものであって、その主旨を逸脱しない範囲において材質、形状等に様々な変更又は変形を加えた形態で実施することができる。例えば、天板の形状は図9(A)に示す立方体状の天板35a、図9(B)に示す蒲鉾状の天板35b、図9(C)に示す三角屋根状の天板35cであってもよい。また、第三の実施形態における湾曲部81c,81d,81e,81fは右,左の切込線81a,81bのいずれかのみに設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の包装用容器は、菓子のみでなく、アイスクリーム、紙ナプキン等、様々なものを収納し、また二つ折り状態で使用するための箱に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第一実施形態の包装用容器を示す斜視図である。
【図2】図1の包装用容器を示す展開図である。
【図3】図1の包装用容器を示す底面図を除く五面図であり、(A)は正面図、(B)は平面図、(C)は背面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図である。
【図4】図1の包装用容器における係止機構を示し、(A)は底面図で、係止機構を実線で他を二点鎖線で示す。(B)は包装用容器を二つ折りにした状態を示す正面図、(C)はフラップを奥側に倒し込んだ状態を示す斜視図である。
【図5】図1の包装用容器を二つ折りした状態を示す斜視図である。
【図6】図1の包装用容器において、フラップの左右のエッジと折り線との成す角度を様々に変化させた場合の係止機構を示す。
【図7】第二実施形態の包装用容器を示し、(A)は底面図で、係止機構を実線で他を二点鎖線で示す。(B)は包装用容器を二つ折りにした状態を示す正面図、(C)はフラップを奥側に倒し込んだ状態を示す斜視図である。
【図8】第三実施形態の包装用容器を示し、(A)は底面図で、係止機構を実線で他を二点鎖線で示す。(B)は包装用容器を二つ折りにした状態を示す正面図、(C)はフラップを奥側に倒し込んだ状態を示す斜視図である。
【図9】他の実施形態の包装用容器を示す斜視図であり、(A)は立方体状の天板、(B)は蒲鉾状の天板、(C)は三角屋根状の天板を有する包装用容器を示す。
【図10】第一の従来例の開口固定用破断線部分を示し、(A)は展開状態、(B)は包装用容器を二つ折りにした状態を示す。
【図11】第二の従来例の開口固定用破断線部分を示し、(A)は展開状態、(B)は包装用容器を二つ折りにした状態を示す。
【符号の説明】
【0067】
1,11,12 包装用容器
2 底板
3 天板
3a 平板
3b,3c 斜板
4a,4b 右,左の立板
4a’,4b’ 内側の右,左の立板
5a,5b 奥,手前の立板
5b’ 内側の手前立板
6,7,8 係止機構
21 折り線
31 ジッパー
31a,31b 右,左のミシン目
31c 菱形部分
35a,35b,35c 天板
41a,41b,41c,42a,42b,42c,51a,51b,52a,52b 折り込み片
45b’,46b’,45a’,46a’ スリット
53a,53b,54a,54b フック部
61a,61b,71a,71b,81a,81b 切込線
62a,62b,72a,72b,82a,82b 折り線
63,73,83 フラップ
63a,73a,83a 上半分のフラップ
63b,73b,83b 下半分のフラップ
64a,64b,64c,64d,74a,74b,74c,74d,84a,84b,84c,84d 破断部
65a,65b,66a,66b,75a,75b,76a,76b,85a,85b,86a,86b エッジ
67a,67b,68a,68b,77a,77b,78a,78b,87a,87b,88a,88b 枠状エッジ
71c,71d,81c,81d,81e,81f 湾曲部
79a,79b,89a,89b,89c,89d 凸部
83c 縦方向中心線
91,92 開口
101,201 包装用容器
103a,103b,203a,203b 開口固定用破断線
104,204 フラップ状部分
105b,205b 枠部分
204a,204a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、天板と、該底板と天板との間に立設された左右の立板とを有し、
上記底板と上記天板とを貫通する幅方向中央線上に、上記底板には折り線を、上記天板にはジッパーを設け、
上記ジッパーを破断することで上記折り線を介して左右対称に二つ折り可能な包装用容器であって、
上記底板に、上記折り線と交差し、上記折り線から離れるに従って互いに近づくように形成された一対の切込線を備え、
上記包装用容器を上記折り線を介して二つ折りにし、上記一対の切込線に挟まれた部分を任意の一方に折り曲げることにより二つ折り状態が保持されることを特徴とする、包装用容器。
【請求項2】
前記一対の切り込み線は、前記折り線を介して線対称であることを特徴とする、請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
前記一対の切り込み線は、互いに点対称な位置にそれぞれ一つの湾曲部を有することを特徴とする、請求項1に記載の包装用容器。
【請求項4】
前記切り込み線は、前記折り線を挟んだ両側であって前記折り線を介して非線対称な位置に湾曲部を有することを特徴とする、請求項1に記載の包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−239223(P2008−239223A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85967(P2007−85967)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】