説明

包装用箱

【課題】複合画像で構成される下絵の上で、フィルムゲージをスライド移動させることで、絵が動いているかの如き視覚的効果を与える装飾要素を備えた包装用箱を用いて、販促効果を高める。
【解決手段】
内容物を収容する収容本体10と、当該収容本体を内側に保持する外装体20とを備える包装用箱。下絵26が外装体の壁面21に表示される一方、当該壁面上の下絵26を挟む両側位置に平行な2つの保持スリット22、23が形成されている。フィルムゲージ50は、その両端52、53を2つの保持スリット22、23に差し込むことで、外装体20に対してスライド可能に保持されている。フィルムゲージ50を外装体20上でスライドさせたとき、内容物と関連した動画が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合画像で構成される下絵の上で、フィルムゲージをスライド移動させることで、絵が動いているかの如き視覚的効果を与える装飾要素を備えた包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
「下絵」と「フィルムゲージ」を利用して、パラパラ漫画とよく似た原理で、あたかも絵が動いているかのような視覚的効果を与える技術は、従来から知られている(例えば、特許文献1、2)。その原理を簡単に説明すると、次の通りである。
【0003】
≪画素が2つの場合:図1、図2≫
図1は、「複合画像で構成される下絵」の作成原理を示している。ここでは、複合画像は、2つの画素から構成される。まず、画素1、2をそれぞれ等間隔“α”で間引いて、「残像」と「欠け」が繰り返す中間画素を作成する。次に、中間画像1の「欠け」部分に、中間画像2の「残像」部分が一致するようにして、両者を組み合わせて複合画像を作成する。
【0004】
一方、図2に示したフィルムゲージは、透明の基材上に「黒塗りの細長い帯状領域」を等間隔で印刷したものであって、「帯状領域の幅」と「各帯状領域間の間隔」とが等しい(共に“α”)。
このフィルムゲージを複合画像上に重ね合わせて、両者を相対的にスライドさせると、図2に示したように、中間画素1の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに星形模様が視認される(A)。
一方、中間画素2の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに丸形模様が視認される(B)。
【0005】
以上の相対スライド動作を適度な速度で行うと、人間の目には、あたかも星形模様と丸形模様が動的に変化しているかのように視認される。
【0006】
≪画素が3つの場合:図3、図4≫
以上に説明した画素が2つの場合は、(i)画素を間引く際の「残像」と「欠け」の幅寸法を等しくし(“α”)、かつ、(ii)フィルムゲージ上の「帯状領域の幅」および「各帯状領域間の間隔」を共にこの“α”と等しくしている。
【0007】
画素が3つの場合は、図3、図4に示したように、(i)画素を間引く際に、「欠け」の幅寸法“β”を「残像」の幅寸法“γ”の2倍とし、(ii)フィルムゲージ上における「帯状領域の幅」を「欠け」の幅寸法“β”に等しく、「各帯状領域間の間隔」を「残像」の幅寸法“γ”に等しくする。
「欠け」の幅寸法“β”が「残像」の幅寸法“γ”の2倍であるため、中間画素1の「欠け」部分に他の2つの中間画素2、3の「残像」を収めることができ、したがって、3つの画素からなる複合画像を作成することができる。
【0008】
そして、図4に示したように、中間画素1の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに星形模様が視認される(A)。中間画素2の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに丸形模様が視認される(B)。中間画素3の「残像」がフィルムゲージ上の各帯状領域間の透明領域にきたときに菱形模様が視認される(C)。
【0009】
同様の考え方で、画素が4つ、5つの場合にも、複合画像および対応するフィルムゲージを作成できる。
【0010】
以上に説明した例では、ストライプ状のフィルムゲージを使用しているが、格子状のフィルムゲージと、これと対応する下絵とを利用して、同様の視覚的効果を与える構成も知られている。
ストライプ状のフィルムゲージの場合には、視覚的効果を得るために「下絵」と「フィルムゲージ」を相対移動させる方向は、ストライプに直交する1方向に限られる。これに対して、格子状のフィルムゲージの場合には、タテ、ヨコ、ナナメのいずれの方向に相対移動させた場合であっても、視覚的効果を得ることができる。
【0011】
【特許文献1】特表2007−526500号
【特許文献2】実用新案登録第3095265号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第1の目的は、上記視覚的効果によって得られる動画を利用した包装用箱を提供し、これにより、販売促進効果を高めることである。
また、「フィルムゲージ」と「下絵」を重ね合わせて相対スライドさせることで動画を生じさせる場合、相対スライドする「フィルムゲージ」および「下絵」は、適度に密着していることが好ましい。両者の隙間が大きいと、視覚的効果として得られる動画もボヤケたものとなってしまう。
したがって、本発明の第2の目的は、包装用箱に設けた「フィルムゲージ」と「下絵」の適度な密着性を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の包装用箱は、複合画像で構成される下絵に対して、対応するフィルムゲージを相対的にスライド移動させることで、動画を生じさせる装飾要素を備える。当該包装用箱は、内容物を収容する収容本体と、当該収容本体を内側に保持する外装体とを備える。
上記下絵が外装体の壁面に表示されていて、当該壁面上の下絵を挟む両側位置に平行な2つの保持スリットが形成されている。フィルムゲージは、その両端を当該2つの保持スリットに差し込むことで、外装体に対してスライド可能に保持される。
フィルムゲージを外装体上でスライドさせたとき、上記内容物と関連した動画が生じる。
【0014】
上記フィルムゲージは、平板状の(すなわち、一平面内に収まる)フレーム枠を備えていてもよい。その場合、当該フレーム枠の両端を上記2つの保持スリットに差し込むことで、フィルムゲージが外装体に対してスライド可能に保持される。
【0015】
「下絵」は、例えば図1〜4で説明したような「残像」と「欠け」で構成される複数の画素から作成される複合画像である。また、下絵に「対応するフィルムゲージ」とは、複合画像の「残像」および「欠け」に対応した「透明領域」および「不透明領域」を含み、相対スライドによって動画を生じさせるフィルムゲージを意味する。
また、フィルムゲージは、ストライプ状および格子状のいずれであってもよく、対応する下絵(複合画像)と相対スライドすることで動画を生じさせる。
【発明の効果】
【0016】
菓子等の内容物を収容する包装用箱において、「フィルムゲージ」および「下絵」による上述の視覚的効果で得られる動画を、「内容物と関連する」ものとすることで、宣伝効果あるいは販売促進効果を高めることができる。
【0017】
「内容物と関連する」とは、内容物自体の内容と関連するものに限られず、当該商品を提供するメーカーと関連するもの等、広い意味で、何らかの関連があればよい。
【0018】
また、本発明においては、壁面上で向かい合う一対のスリットに対して、フィルムゲージが、その両端を差し込むことで当該壁面上に保持されている。そのため、「フィルムゲージ」が「下絵」に対して適度に密着し、相対スライドにより得られる動画がクリアなものとなる。
特に、フィルムゲージが一平面内に収まろうとする適度な剛性を有する材質で構成される場合に、この適度な密着が達成される。また、フィルムゲージが平板状のフレーム枠を備える場合も同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
≪第1実施形態:図5、図6≫
図5は、本発明の第1実施形態に係る包装用箱の分解斜視図である。この包装用箱は、内容物を収容する収容本体10と、これを内側にスライド可能に保持する外装体20とで構成されている。
収容本体10は、代表的には1枚のブランクから組み立てることができ、上面が開口したトレー状の形態をなしている。
【0020】
外装体20も代表的には1枚のブランクから組み立てることができ、図示した例では、両端が開口する筒状体として構成されるとともに、壁面21に対して回動可能な回動フラップ30を備える。
回動フラップ30の側縁には、折罫30aを介して、係止フラップ35が連設されている。係止フラップ35を差込スリット25に差し込むと、回動フラップ30は、装飾要素を覆った状態に保持される(その状態は、図示していない)。
【0021】
外装体20の壁面21には、その中央領域に下絵26が表示されていて、この下絵26を挟む両サイドの位置に2つの保持スリット22、23が形成されている。2つのスリット22、23は、互いに平行に形成されていて、以下に説明するように、フィルムゲージ50をスライド可能に保持する。
【0022】
フィルムゲージ50は、その両端52、53をそれぞれ保持スリット22、23に差し込むことで、外装体20に対して(すなわち、下絵26に対して)相対スライド可能に保持される。
フィルムゲージ両端52、53のやや内側の位置において、フィルムゲージ50の両サイドには切込み52a、52a、53a、53aが形成されている。これらの切込みは、保持スリット22、23と係合して、フィルムゲージ50の左右方向におけるスライド範囲を一定範囲内に規制するとともに、不用意な脱落を防止している。
【0023】
図6は、組み立てられた包装用箱と動画との関係を示している。外装体20の上面に露出したフィルムゲージ50を指で押さえて左右にスライドさせると、視覚的効果を利用した動画が現れる。図6では、3つの画素から構成される動画の一例を示しているが、具体的な図柄や画素の数は、任意に設定することができる。
収容される商品あるいは製造メーカと関連付けた動画を採用することで、宣伝効果あるいは販売促進効果を高めることができる。
【0024】
≪格子状のフィルムゲージ≫
本発明においては、ストライプ状のフィルムゲージ50に限らず、格子状のフィルムゲージ50’を採用することも可能である(図5中の円内)。勿論、その場合には、下絵26は、これに対応して動画を生じさせるものが採用される。
ストライプ状のフィルムゲージ50の場合、一方向の相対スライドによって動画が生じるが、格子状のフィルムゲージ50’の場合、タテ、ヨコ、ナナメのいずれの方向に相対スライドした場合でも動画が生じる。これは、箱の組み立て精度が高くなく、相対スライド方向が予定の一方向から逸れた場合でも動画に変化が生じるという点で有効である。
【0025】
≪壁面上の下絵とフィルムゲージとの密着性を高めるための構成≫
下絵26とフィルムゲージ50を重ねて相対スライドさせることで動画を生じさせる場合、両者の隙間が大きいと、動画がボヤケて見えることがある。動画をクリアにするためには、下絵26とフィルムゲージ50を、適度に圧接させることが好ましい。
これを実現するために、本発明では、壁面21に設けた一対のスリット22、23に対して、フィルムゲージ50の両端52、53を差し込み、これによって、フィルムゲージ50を壁面21上に固定している。その結果、フィルムゲージ50と壁面21上の下絵26が適度に密着し、相対スライドにより得られる動画がクリアなものとなる。特に、フィルムゲージ50をプラスチック材等の剛性材料で作成すると、フィルムゲージ50自体に一平面内に納まろうとする保形性があるので、これをスリット22、23に差し込んで壁面21に固定した場合に、下絵26に対する適度な圧接効果が得られる。
【0026】
≪第2実施形態:図7、図8≫
図7は、第2実施形態に係る包装用箱を示している。第1実施形態と比べて、外装体60が回動フラップ30(図5参照)を備えない点、およびフィルムゲージ70の構造が異なる。
第1実施形態では、装飾要素を覆い隠すことのできる回動フラップ30を備えていた。これには、次のような意味がある。
すなわち、包装用箱は、菓子等を収納して販売されるものであるから、商品名や内容物の情報、その他を含めた絵柄を箱体表面に表示する(印刷等)ことが好ましい。この絵柄を表示するために、装飾要素を覆い隠す面積を有する回動フラップ30を閉じることで現れる壁面(図5において紙面向こう側を向いた、回動フラップ30の裏面)を利用することができる。
しかし、本発明において回動フラップ30は任意の構成要素であり、したがって、第2実施形態では、回動フラップを省略した構成を採用している。
【0027】
フィルムゲージ70は、平板状のフレーム枠71を備える。ここで、平板状とは「1つの平面内に収まる」という意味である。フレーム枠71は、厚紙、プラスチック材等の適度な剛性を備えた材料で構成することができ、中央に開口部を備える。この開口部を、ストライプ状のゲージ模様が付されたフィルム70aで塞ぐことで、フィルムゲージ70が構成されている。
【0028】
フレーム枠両端72、73のやや内側の位置において、フレーム枠71の両サイドには切込み72a、72a、73a、73aが形成されている。これらの切込みは、保持スリット62、63と係合して、フィルムゲージ70の左右方向におけるスライド範囲を一定範囲内に規制するとともに、不用意な脱落を防止している。
このようなフレーム枠71を備えた構成を採用すると、フィルムゲージ70が一平面内に収まろうとする適度な剛性を有し、これにより、下絵26に対するフィルムゲージ70の適度な密着が達成され、クリアな動画を得ることができる。
【0029】
図8は、組み立てられた包装用箱と動画との関係を示している。外装体60の上面に露出したフィルムゲージ70を指で押さえて左右にスライドさせると、視覚的効果を利用した動画が現れる。
【0030】
≪変形例:不図示≫
本発明は、図示した具体的な形態に限定されるものではない。例えば、図示した具体例では、収容本体10は、上部全面が開口するトレー状の形態をなすが、小さな振出口を備えた箱体であってもよい。
また、収容本体10が外装体20、60に対して必ずしもスライドする必要はなく、例えば、不動の収容本体に対して別の開閉機構を設けて、適宜内容物を取り出せる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】2つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図2】2つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図3】3つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図4】3つの画素から動画を生じさせる原理を示す説明図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る包装用箱を示す分解斜視図。
【図6】図5の包装用箱の機能を説明する斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る包装用箱を示す分解斜視図。
【図8】図7の包装用箱の機能を説明する斜視図。
【符号の説明】
【0032】
10 収容本体
20 外装体
21 壁面
22、23 保持スリット
25 差込スリット
26 下絵(複合画像)
30 回動フラップ
30a 折罫
35 係止フラップ
50 フィルムゲージ
52、53 フィルムゲージの両端
52a、53a 切込み
60 外装体
61 壁面
62、63 保持スリット
70 フィルムゲージ
70a フィルム
71 フレーム枠
72、73 フレーム枠の両端
72a、73a 切込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合画像で構成される下絵(26)に対して、対応するフィルムゲージ(50、70)を相対的にスライド移動させることで、動画を生じさせる装飾要素を備える包装用箱であって、
当該包装用箱は、内容物を収容する収容本体(10)と、当該収容本体を内側に保持する外装体(20、60)とを備え、
上記下絵(26)が外装体の壁面(21、61)に表示されていて、当該壁面上の下絵(26)を挟む両側位置に平行な2つの保持スリット(22、23、62、63)が形成されており、
上記フィルムゲージ(50、70)は、その両端を当該2つの保持スリット(22、23、62、63)に差し込むことで、外装体(20、60)に対してスライド可能に保持されており、
フィルムゲージ(50、70)を外装体(20、60)上でスライドさせたとき、上記内容物と関連した動画が生じることを特徴とする、包装用箱。
【請求項2】
上記フィルムゲージ(70)は平板状のフレーム枠(71)を備えており、当該フレーム枠(71)の両端を上記2つの保持スリット(62、63)に差し込むことで、フィルムゲージ(70)が外装体(60)に対してスライド可能に保持されている、請求項1記載の包装用箱。
【請求項3】
上記外装体(20)は、下絵(26)が表示された壁面(21)に対して回動可能で上記装飾要素を覆い隠す面積を有する回動フラップ(30)を備えている、請求項1または2記載の包装用箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−13122(P2010−13122A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172085(P2008−172085)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】