説明

包装用箱

【課題】簡単な構成で視覚的に奥行き感を与える絵柄を有し、収容する商品のイメージを向上させ印象を強くすることができる包装用箱を提供する。
【解決手段】一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、互いに連接された側面14,16,18,20と、箱体形成片12の組立状態で連接された側面で形成される一開口端部を閉鎖する上蓋片40とを備える。箱体形成片12の上蓋片40と重ねられる絵柄印刷片58を有し、絵柄印刷片58には、任意の形状で描かれた第一絵柄68が印刷されている。絵柄印刷片58の表面側に重ねられた上蓋片40には、箱体形成片12の組立状態で第一絵柄68と同形の第二絵柄70が積層状態で互いに一致する位置に印刷されている。第二絵柄70には、絵柄が除去され第一絵柄68が見える複数の抜き部72が所定のパターンで設けられ、抜き部72を透過して絵柄印刷片58の第一絵柄68が視認される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絵柄やその他装飾等の印刷が施された包装用箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品を包装して店頭に陳列する包装用箱には、一枚のブランクシートを打ち抜いて設けられた箱体形成片を組み立てて作られたものがある。また包装用箱の表面には、商品名や、商品の印象を強くするためのいろいろな絵柄が印刷されている。包装用箱の表面の絵柄は、商品のイメージを向上するために色や形状が工夫されている。例えば、包装用箱にエンボス加工を施して浮き出した感覚を付与したり、いわゆる3D印刷を施して立体的に見せる方法がある。
【0003】
また特許文献1に開示されている商品の加飾方法は、モアレ模様状の3次元的な視覚効果を有するものであり、商品の外表面上に規則性を有する縞パターンを形成し、この商品を、透明な基材部分に規則的な縞パターンを形成した外装部材で外装したものである。商品と外装部材の両縞パターン間のずれによる光の干渉効果により、3次元的な視覚効果が現出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−39046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術のエンボス加工の場合、ブランクシートの素材が限定されPPシート等では浮き出しにくいものであった。3D印刷は、ブランクシートの両面に絵柄を印刷しなければならず、製造工程が複雑になるという問題がある。
【0006】
特許文献1に開示されている商品の加飾方法は、商品の外表面に、外装部材のパターンと組み合わされるパターンを印刷しなければならず、商品に印刷する絵柄に制限があった。また、購入後に外装部材を破棄して商品単体で使用するときは、不要な絵柄となるおそれがある。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で視覚的に奥行き感を与える絵柄を有し、収容する商品のイメージを向上させ印象を強くすることができる包装用箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、互いに連接された側面と、前記側面の1つに連接され前記箱体形成片の組立状態で連接された側面で形成される開口端部を閉鎖する蓋片とを備え、前記箱体形成片の一部分と重ねられる絵柄印刷片が設けられ、前記絵柄印刷片には、任意の形状で描かれた第一絵柄が印刷され、前記絵柄印刷片の表面側に重ねられた前記一部分には、前記箱体形成片の組立状態で前記第一絵柄と同形の第二絵柄が積層状態で互いに一致する位置に印刷され、前記第二絵柄には絵柄が除去され前記第一絵柄が見える複数の抜き部が所定のパターンで設けられ、前記抜き部を透過して前記絵柄印刷片の前記第一絵柄が視認され、前記絵柄印刷片の表面側に重ねられた前記一部分と前記絵柄印刷片との間に隙間が形成され、前記第二絵柄の前記抜き部から視認される前記第一絵柄は、前記第二絵柄と僅かにずれて視認される包装用箱である。
【0009】
またこの発明は、透明な合成樹脂で作られた一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、互いに連接された側面と、前記側面の1つに連接され前記箱体形成片の組立状態で連接された側面で形成される一開口端部を閉鎖する上蓋片と、前記側面又は前記上蓋片の少なくとも1つの部材の裏面側に重ねられた絵柄印刷片が設けられ、前記絵柄印刷片には、任意の形状で描かれた第一絵柄が印刷され、前記絵柄印刷片の表面側に重ねられた前記部材には、前記箱体形成片の組立状態で前記第一絵柄と同形の第二絵柄が重ねられて一致する位置に印刷され、前記第二絵柄には印刷のない複数の抜き部が所定のパターンで設けられ、前記抜き部から前記ブランクシートを透視して前記絵柄印刷片の前記第一絵柄が視認され、前記絵柄印刷片と前記絵柄印刷片の表面側に重ねられた前記部材との間に隙間が形成され、前記第二絵柄の前記抜き部から視認される前記第一絵柄は、前記第二絵柄と僅かにずれて視認される包装用箱である。
【0010】
前記第二絵柄は前記上蓋片に設けられ、前記絵柄印刷片は、前記上蓋片が設けられた側面以外の側面の前記上蓋片が閉鎖する開口端部から連続して設けられているものである。前記抜き部は、一方向に長い一定幅のスリットが複数等間隔で並べられて設けられているものである。
前記抜き部の形状は、波形のスリットや、同心円のドーナツ状のスリット、ドット柄、ドット柄のネガ形状、放射状に設けられたスリット、矩形のドット柄等でもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の包装用箱は、簡単な製造工程で視覚的に3次元的な感覚を与える絵柄が設けられ、収容する商品のイメージを向上させ、消費者に強い印象を与えることができる。しかも、一枚の箱体形成片を組み立てて作られ、箱体形成片の片面のみに印刷するだけであり、コストが安価で使用しやすいものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態の包装用箱の上蓋片が開いた状態を示す斜視図(a)と、閉じた状態を示す斜視図(b)である。
【図2】この実施形態の包装用箱の展開図である。
【図3】この実施形態の包装用箱の抜き部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の包装用箱10は、透明な合成樹脂で作られた一枚のブランクシートを打ち抜いて形成された箱体形成片12を組み立てて設けられている。
【0014】
図2は箱体形成片12を表面から見た展開図であり、箱体形成片12は、側面14,16,18,20が、互いに平行に連接して形成されている。側面14,16,18,20は、連接している幅方向が同じ長さであり、連接方向の長さは側面16,20が長くて互いにほぼ等しく、側面14,18は短くて互いにほぼ等しい。さらに、側面20の側縁部には、包装用箱10の組立状態で側面14の表面に糊付けされる糊付片22が設けられている。そして、側面14,16,18,20、糊付片22は、各々折罫線24,26,28,30で区切られている。
【0015】
側面14において、側面同士の連接方向に対して直角方向の一端部には、台形状のフラップ32が、折罫線34で区切られて設けられている。側面14の、折罫線34と反対側の端部には、台形状のフラップ36が、折罫線38で区切られて設けられている。
【0016】
側面16の、側面14の折罫線34に隣接する端部には、矩形の上蓋片40が、折罫線42で区切られて設けられている。上蓋片40の、折罫線42と反対側の端部には、さらに差込片44が折罫線46で区切られて設けられている。側面16の、折罫線42と反対側の端部には、矩形の底蓋片48が折罫線50で区切られて設けられている。折罫線50の中間には、折罫線50に対して平行な切断線52が設けられ、切断線52は、底蓋片48側へ僅かに移動して設けられ、切断線52の両端部は折罫線50側へ折り曲げられて連続している。切断線52で囲まれた部分は、箱体形成片12の組立状態で側面16と面一に下方へ突出する脚部53となる。底蓋片48の、折罫線50と反対側の端部には、さらに差込片54が折罫線56で区切られて設けられている。
【0017】
側面18の、側面16の折罫線42に隣接する端部には、上蓋片40とほぼ同じ大きさの矩形の絵柄印刷片58が折罫線60で区切られて設けられている。側面18の、折罫線60と反対側の端部には、台形状のフラップ62が折罫線64で区切られて設けられている。
【0018】
箱体形成片12の、側面14,16,18,20、上蓋片40、絵柄印刷片58には、所定の絵柄が印刷されている。絵柄は、まず均一に全面に無地部66が各部材に連続して設けられ、無地部66の所定の位置に任意の絵柄が設けられている。絵柄印刷片58には、無地部66の中に、折罫線28の延長上に位置する側縁部と折罫線60で囲まれた角部に隣接して、第一絵柄68が設けられている。第一絵柄68は花のような図柄が設けられている。
【0019】
上蓋片40には、無地部66の中に第二絵柄70が設けられている。第二絵柄70は、包装用箱10の組立状態で絵柄印刷片58の表面側に上蓋片40が重ねられたときに第一絵柄68と一致するものであり、第一絵柄68と同形、同色であり、折罫線26の延長上に位置する側縁部と折罫線46で囲まれた角部に隣接して設けられている。上蓋片40には、無地部66と第二絵柄70を印刷するインキが取り除かれた抜き部72が一定のパターンで設けられている。抜き部72は、折罫線42に対してほぼ直角の方向に長い一定幅の矩形で形成されたスリットが、複数個互いに平行に等間隔で並べられて設けられている。抜き部72は、ブランクシートを透視して反対側を視認することができる。
【0020】
側面14,16,18,20には、それぞれ無地部66の中に側面絵柄部74が設けられている。側面14の側面絵柄部74は、折罫線24と反対側の側縁部と折罫線38の角部に連接している。側面16、18の側面絵柄部74は、折罫線26,50,64の交点を中心として設けられている。側面20の側面絵柄部74は、折罫線28と反対側の側縁部と、側面18の折罫線64の延長上に位置する端部で囲まれた角部に隣接して設けられている。
【0021】
次に、この実施形態の包装用箱10の組立方法の一例について説明する。なお、ここでは図2が包装用箱10の箱体形成片12の表面を見たものであり、箱体形成片12の表面が凸になる折り方を正折り、そして裏面が凸になる折方を逆折りと称する。
【0022】
まず、糊付片22の裏面に糊を塗布し、次に折罫線24を正折りしさらに折罫線28を正折りする。これにより側面14の表面に糊付片22の裏面が糊付けされる。これにより箱体形成片12は折り畳み状態となり、この状態で出荷される。
【0023】
次に商品を収容し包装する工場等において、折罫線24,26,28,30を各々90°に正折りして四角形の箱体にする。次に、折罫線38,64でフラップ36,62を90°に正折りし、その後、折罫線50で底蓋片48を90°に正折りし、差込片54を折罫線56で正折りし、差込片54を側面20の裏面側に差し込んで係止し、底部が形成される。このとき、折罫線50の中心部分は切断線52で底蓋片48から切り離されて脚部53となり、側面16の延長上に、下方に向かって突出し、反対側の側面20の下端縁とにより箱体を支持する。
【0024】
この後、商品を収納し、折罫線34でフラップ32を90°に正折りし、次に折罫線60で絵柄印刷片58を90°に正折りする。これで図1(a)に示す状態となる。次に、折罫線42で上蓋片40を90°に正折りし、差込片44を折罫線46で正折りし、差込片44を側面20の裏面側に差し込んで係止し、開口部が閉鎖される。この状態で、上蓋片40は絵柄印刷片58に重ねられ、抜き部72からブランクシートを透視して絵柄印刷片58の第一絵柄68が視認される。上蓋片40は、ブランクシートの弾性によって僅かに弓なりに外側へ膨らみ、絵柄印刷片58との間に隙間が形成され、抜き部72から視認される第一絵柄68は、第二絵柄70と僅かにずれて視認され3次元的な感覚を与える。なお、側面14,16,18,20には、側面絵柄部74が平面的に視認される。
【0025】
この実施形態の包装用箱10によれば、簡単な構造で視覚的に3次元的な感覚を与える絵柄が取り付けられ、商品のイメージを向上させ、消費者に強い印象を与えることができる。箱体形成片12の互いに重なる部材を利用して立体的に見せることができ、箱体形成片12のみで組み立てられ、ブランクシートの弾性を利用して上蓋片40が外側に膨らむことを利用しているだけであり、構造が簡単でコストを抑えることができる。箱体形成片12の片面にのみ印刷することで立体的に見せることができ、3D印刷やエンボス加工が不要であり、製造工程等を増やすことが無く、特別な装置が不要で、使用しやすいものである。また、収容する商品等に、立体的に見せるための絵柄を印刷する必要が無く、商品を自由なデザインで印刷することができる。
【0026】
なお、この実施形態の抜き部72の形状は、上記実施形態に限られず、自由に変更可能である。例えば、図3(a)は、波形のスリット状の抜き部72が互いに平行にほぼ等間隔で設けられている。図3(b)は、同心円のドーナツ状の抜き部72であり、各抜き部72の幅は一定であり、各抜き部72の直径がほぼ一定の長さで大きくなるものである。図3(c)は、ドット柄状に第二絵柄70を残して、ドット柄のネガ形状に抜き部72が設けられている。図3(d)は、複数個の長丸が放射状に配置された形状に第二絵柄70を残して、その周囲に抜き部72が設けられている。図3(e)は、複数個の矩形の抜き部72が縦横に互いに等間隔に配置され、その周囲に第二絵柄70が残されている。
【0027】
また、各絵柄は、第二絵柄70と抜き部72が反対でも良い。さらに、抜き部72の形状は、第一絵柄、第二絵柄の色や形状に合わせて、適宜設定し得るものである。
【0028】
さらに、この発明の包装用箱は、上記実施形態に限定されるものではなく、各部材の形状は、自由に変更可能である。樹脂製の透明なシート以外に紙や合成紙製のシートを利用して抜き部を形成しても良く、抜き部を覆う透光性のフィルムやシートを重ねても良い。また、上蓋片に第二絵柄と抜き部が設けられているもの以外に、側面に第二絵柄と抜き部を設けこの側面の裏面側に絵柄印刷片を重ねて設けても良い。側面に重ねる絵柄印刷片は、中仕切り等の部材に第一絵柄を印刷することにより中仕切りと兼用としても良い。箱体と一体に設けられている二つ折りの吊下片に第一絵柄と第二絵柄、抜き部を設けても良い。また、絵柄の色や形状は自由にデザインすることができる。抜き部の数や形状も適宜変更可能であり、第一絵柄、第二絵柄の色や形状に合わせて、より効果的に立体的に見えるものを選択する。包装用箱の大きさや構造は、中に入れる商品等に合わせて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 包装用箱
12 箱体形成片
14,16,18,20 側面
22 糊付片
40 上蓋片
58 絵柄印刷片
66 無地部
68 第一絵柄
70 第二絵柄
72 抜き部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、互いに連接された側面と、前記側面の1つに連接され前記箱体形成片の組立状態で連接された側面で形成される開口端部を閉鎖する蓋片とを備え、前記箱体形成片の一部分と重ねられる絵柄印刷片が設けられ、前記絵柄印刷片には、任意の形状で描かれた第一絵柄が印刷され、前記絵柄印刷片の表面側に重ねられた前記一部分には、前記箱体形成片の組立状態で前記第一絵柄と同形の第二絵柄が積層状態で互いに一致する位置に印刷され、前記第二絵柄には絵柄が除去され前記第一絵柄が見える複数の抜き部が所定のパターンで設けられ、前記抜き部を透過して前記絵柄印刷片の前記第一絵柄が視認され、前記絵柄印刷片の表面側に重ねられた前記一部分と前記絵柄印刷片との間に隙間が形成され、前記第二絵柄の前記抜き部から視認される前記第一絵柄は、前記第二絵柄と僅かにずれて視認されることを特徴とする包装用箱。
【請求項2】
透明な合成樹脂で作られた一枚のブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成り、互いに連接された側面と、前記側面の1つに連接され前記箱体形成片の組立状態で連接された側面で形成される一開口端部を閉鎖する上蓋片と、前記側面又は前記上蓋片の少なくとも1つの部材の裏面側に重ねられた絵柄印刷片が設けられ、前記絵柄印刷片には、任意の形状で描かれた第一絵柄が印刷され、前記絵柄印刷片の表面側に重ねられた前記部材には、前記箱体形成片の組立状態で前記第一絵柄と同形の第二絵柄が重ねられて一致する位置に印刷され、前記第二絵柄には印刷のない複数の抜き部が所定のパターンで設けられ、前記抜き部から前記ブランクシートを透視して前記絵柄印刷片の前記第一絵柄が視認され、前記絵柄印刷片と前記絵柄印刷片の表面側に重ねられた前記部材との間に隙間が形成され、前記第二絵柄の前記抜き部から視認される前記第一絵柄は、前記第二絵柄と僅かにずれて視認されることを特徴とする包装用箱。
【請求項3】
前記第二絵柄は前記上蓋片に設けられ、前記絵柄印刷片は、前記上蓋片が設けられた側面以外の側面の前記上蓋片が閉鎖する開口端部から連続して設けられていることを特徴とする請求項2記載の包装用箱。
【請求項4】
前記抜き部は、一方向に長い一定幅のスリットが複数等間隔で並べられて設けられていることを特徴とする請求項2記載の包装用箱。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−235162(P2010−235162A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86089(P2009−86089)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(391019500)朝日印刷株式会社 (70)
【Fターム(参考)】