説明

包装用箱

【課題】極めて簡素な構成であり、上蓋の隙間に爪先を入れて開封すると、上蓋を再度閉じた状態であっても容易に外観上開封したことが判別でき、封緘も必要がなく、意図しない方法で開封されても、外観上から開封されたことが視認できる安価な包装用箱の提供。
【解決手段】有底角筒状の箱本体の上端の一辺を基端として蓋板を開閉可能に備えてなり、蓋板の自由端部に差し込み片を備え、前記蓋板の差し込み片と当接する背面板の上端部に上開き形状のミシン目によって囲まれた開封押圧部を備え、開封押圧部の内面と差し込み片とを固着した固着部を備えた包装用箱において、上開き形状のミシン目の両端部に上縁にかけて開口するV字状の切欠部を形成し、固着部は、開封押圧部内面の左右の際部を含むことを特徴とする包装用箱を解決手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用箱に関し、特には、蓋部に開封検知手段を備えた紙製の包装用箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、収納物を包装するための種々の紙製の包装用箱が案出されている。
このような箱のうち、特に医薬品等を収納する包装用箱は、通常、医薬品が複数個収納されており、その全てを一度に使用することもないため、一旦包装用箱を開封したあとでも、再度閉蓋できる必要がある。
【0003】
一方、店頭販売されている商品の包装用箱を、悪意をもって気づき難い方法(カッターを上蓋の隙間に差し込んで開封する方法等)で開封されることがある。このような悪意による開封を検知、阻止すべく、包装用箱には様々な開封検知手段が設けられている。医薬品等を収納する包装用箱は、上記したように、一旦包装用箱を開封したあとでも、再度閉蓋できる要件を満たした上で、上記のように開封検知手段(例えば、開封口にミシン目で形成された押圧開封手段等)が設けられる。
【0004】
また、正規に購入した後、購入者の家族等が購入者に知らせずに上記したような開封検知可能な開封手段を使用せず、予定されない開封方法(例えば箸等の棒状物や指の爪先等を上蓋の隙間に差し込んで開封する等)により開封して収納物の一部を取り出して蓋を閉め、後に、購入者が開封検知可能な開封手段から開封すると、既に中の収納物の数が減少しているため、事情を知らない購入者は、製造段階の梱包不良であると誤って判断することにもなり、消費者クレームに繋がることがある。
【0005】
このような不正開封の検知や誤開封の防止を目的とするものではないが、開封の確認が行える箱としては、例えば、箱体の一部であるその前壁の上部に、前壁の上縁に達するU字上の断続線によって囲まれた押圧部を形成し、箱体の一部であるその後壁に後部折目を介して連なる蓋片を以て箱体上部の内容物取出口を閉塞し、蓋片の前縁に前部折目を介して連なる挿込み片を前壁の裏面に接するように箱体内に挿入するとともに押圧部の裏面を挿込み片の表面に貼着してなる包装用紙箱(例えば、特許文献1参照。)が公知である。
【0006】
また、開封の防止を目的としたものとして、例えば、正面板、右側板、背面板及び左側板よりなる角筒体の背面板の上下に蓋板を連接し、蓋板のそれぞれの先端の挿入片を正面板内面に差し込み、双方或いは片方を開封用ミシン目で囲った正面板の内面に挿入片を貼着し、角筒板の上限開放端を閉塞する仰開式容器において、前記蓋板と挿入片との連接折目上に端を終始する切目を挿入片に穿設して蓋板と連続する突出部を形成し、該突出部成形切目上に端を終始する前記正面板のミシン目より小さなミシン目と挿入片に穿設し、ミシン目と切目との間を貼着片とし、前記挿入片を正面板内面に差し込む際に、該装着片を開封用ミシン目内等の正面板内面に貼着したことを特徴とする仰開式剥離開封防止容器(例えば、特許文献2参照。)が公知である。
【0007】
また、同様に開封の確認を可能とする包装用箱として、胴部に、当該胴部の開口部を覆う上蓋部を延設し、前記上蓋部の先端部に、前記胴部の内部に差し込まれる差し込み片部を設けてある包装用箱であって、前記差し込み片部に、前記差し込み片部の他の部分よりも差し込み長さの長い差込ガイド部を形成し、前記差込ガイド部とは異なる位置に対応する前記上蓋部の位置に、孔部を形成可能な指掛部と、前記上蓋部の組立状態において、前記指掛部と前記胴部とを連結する封緘手段と、前記指掛部を操作して、前記孔部を形成することにより表示可能とする開封済み表示部とを設けてある包装用箱(例えば、特許文献3参照。)が公知である。
【0008】
更に、開封の確認を可能とする包装用箱として、上面を開放した箱本体と、箱本体の第1側板に連設されて箱本体の上面開口部を開閉する蓋体とを備え、前記第1側板に対面する第2側板に内側へ折り返して第2側板に重ね合わされる折り返し部を連設し、前記蓋体の遊端部に、折り返し部の内面に沿って箱本体内に差し込み可能な差し込み部を連設し、前記第2側板における上部に差し込み部に対面させて第1切取部を形成し、前記第1切取部に対面する位置において折り返し部に第2切取部を形成し、前記第2切取部を差し込み部に接着して閉蓋することを特徴とする開封確認可能な包装用箱(例えば、特許文献4参照。)が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公昭50−40729号公報
【特許文献2】実開昭61−146221号公報
【特許文献3】特開2005−298049号公報
【特許文献4】特開2008−120420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に係る包装用箱によれば、挿込み片を前壁の裏面に接するように箱体内に挿入するとともに押圧部の裏面を挿込み片の表面に貼着してなる構成によって、通常の開封方法によって開封したことを識別できるが、前壁の上縁と蓋片との間に、指の爪先や箸等の棒状物等を差し込む等の方法を行うと、開封検知がされることなく開封される欠点があった。
【0011】
上記特許文献2は、カッター等を上蓋の隙間に差し込んで開封する行為に対して、突出部を有することで、これを阻止しようとするものであり、一定の効果が得られるものである。しかしながら、カッターを挿入せず、上蓋に爪先等を差し込むと、突出部を回避して挿入片と正面板とを剥離できる。
この際に、同特許文献2の図5に開示されるように、貼着片が挿入片から分離されると確かに一旦開封されたことに気づき易くはなるものの、再度蓋を閉じてしまうと開封されたことが外観上判断できなくなるため、通常の方法の通り、外部から開封用ミシン目を押圧して開封すると、一旦開封されたことに全く気づかれずに開封される欠点がある。
また、同特許文献2に開示される具体的な構成によれば、カッターによる不正開封を阻止するための突出部はミシン目の両端間の寸法よりも大きく形成され、上蓋の縁部を補強する作用を伴うため、開封後蓋を閉じても、箱の変形や歪みなどが外観上に現れ難い欠点がある。
【0012】
上記特許文献3は、指掛部と胴部とを連結する封緘手段と、前記指掛部を操作して、前記孔部を形成することにより表示可能とする開封済み表示部とを設けてある包装用箱の構成であり、封緘手段が切断されると、外観上開封されたことが判断できるが、封緘テープの使用が前提であるため、製造工程の増加や材料の増加を伴い、包装のための製造コストが高価となる欠点があった。
【0013】
また、上記特許文献4によれば、開封の確認を可能とする包装用箱として、上面を開放した箱本体と、箱本体の第一側板に連設されて箱本体の上面開口部を開閉する蓋体とを備え、前記第一側板に対面する第二側板に内側へ折り返して第二側板に重ね合わされる折り返し部を連設し、前記蓋体の遊端部に、折り返し部の内面に沿って箱本体内に差し込み可能な差し込み部を連設し、前記第二側板における上部に差し込み部に対面させて第1切取部を形成し、前記第1切取部に対面する位置において折り返し部に第2切取部を形成し、前記第2切取部を差し込み部に接着して閉蓋する構成であり、封緘テープの使用を前提としない点で特許文献3よりも優れるが、結局、特許文献1と同様に、上縁と蓋片との間にカッターや爪先を差し込む等の方法を行うと、開封検知がされることなく開封される欠点は解消できないものであった。
【0014】
本発明は、包装用箱の誤開封を防止し、誤開封に起因する消費者クレームを防止することを目的としてなされたものであり、極めて簡素な構成でありながら、上蓋の隙間に爪先を入れて開封を試みると、上蓋を再度閉じた状態であっても容易に外観上開封したことが判別でき、封緘やシュリンク等を使用する必要がなく、意図されない方法で開封がされても、外観上から開封されたことが視認できる、安価な包装用箱の提供を、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、有底角筒状の箱本体の上端の一辺を基端として蓋板を開閉可能に備えてなり、蓋板の自由端部に差し込み片を備え、前記蓋板の差し込み片と当接する背面板の上端部に上開き形状のミシン目によって囲まれた開封押圧部を備え、開封押圧部の内面と差し込み片とを固着した固着部を備えた包装用箱において、上開き形状のミシン目の両端部に上縁にかけて開口するV字状の切欠部を形成し、固着部は、開封押圧部内面の左右の際部を含むことを特徴とする包装用箱を、課題を解決するための手段とする。尚、本発明のV字状の切欠部における「V字状」とはその両端部分が湾曲した形状となるものも含む。また、「開封押圧部内面の左右の際部を含む」とは、左右のミシン目と固着部との間隙寸法を小さくすることを意味する。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、V字状の切欠部は、開封押圧部側の一辺と非押圧部側の一辺とを有し、ミシン目のライン上に、前記各辺の交点となる頂点Kを配置し、背面板の上縁に直交し前記頂点を通過する仮想線Lに対して開封押圧部側の一辺を含む仮想線が交差する角を押圧部側切欠角とし、前記仮想線に対して非押圧部側の一辺を含む仮想線が交差する角を非押圧部側切欠角とし、非押圧部側切欠角は押圧部側切欠角よりも大きく形成したことを特徴とする包装用箱を、課題を解決するための手段とする。
【0017】
更に、本発明は、上記いずれかの発明において、背面板の上縁のうち開封押圧部の左右に設けられた非押圧部の幅寸法が5mm以上50mm以下としたことを特徴とする包装用箱を、課題を解決するための手段とする。
【0018】
また、本発明は上記発明で蓋板と差し込み片との境界ラインに突出部を形成した包装用箱において、突出部の幅寸法が開封押圧部の幅寸法よりも小さいことを特徴とする包装用箱を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、有底角筒状の箱本体の上端の一辺を基端として蓋板を開閉可能に備えてなり、蓋板の自由端部に差し込み片を備え、前記蓋板の差し込み片と当接する背面板の上端部に上開き形状のミシン目によって囲まれた開封押圧部を備え、開封押圧部の内面と差し込み片とを固着した固着部を備えた包装用箱において、上開き形状のミシン目の両端部に上縁にかけて開口するV字状の切欠部を形成し、開封押圧部内面の左右の際部を含む固着部を備えたこととしたから、V字状の切欠部の形成によって、非押圧部の上縁と開封押圧部の上縁とが切り離されて、独立した撓みを有することとなり、非押圧部の上縁が大きく撓むこととなり、ミシン目に沿って当該隙間からミシン目を破断する側へガイドさせ、ミシン目を容易に破断させることができる。また、固着部がミシン目の際部まで設けられているので、開封押圧部の押圧によらない開封が行われるに際して、固着がされていない非押圧部から爪先や棒状物等を差し込もうとすると、非押圧部の上縁の撓み量が大きくなり、容易に爪先や棒状物等がV字状の切欠部へガイドされることとなり、ミシン目を容易に破断させることができる。このため、開封操作を行ったことが外観上すぐに判別できる。
【0020】
また、上記構成によって、封緘やシュリンク等は不要であり、ミシン目、切欠部、固着部の形成だけで実現でき、更には、通常の包装用箱の製造設備に加えて新たな設備を導入することもないから、非常に安価に開封検知手段を備えた包装用箱を提供することができる。
【0021】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明の構成を備えた上で、V字状の切欠部は、開封押圧部側の一辺と非押圧部側の一辺とを有し、ミシン目のライン上に、前記各辺の交点となる頂点Kを配置し、背面板の上縁に直交し前記頂点を通過する仮想線Lに対して開封押圧部側の一辺を含む仮想線が交差する角を押圧部側切欠角とし、前記仮想線に対して非押圧部側の一辺を含む仮想線が交差する角を非押圧部側切欠角とし、非押圧部側切欠角は押圧部側切欠角よりも大きく形成し、非押圧部側を緩やかな傾きとし、開封押圧部側をより急勾配とする傾きの相違を設けたことで、上記請求項1の作用効果に加えて、爪先等をガイドする背面板2の上縁から切欠部にかけて前記非押圧部側切欠角Qの大きな傾斜によって緩やかにミシン目に沿って、当該隙間からミシン目を破断する側へ当該爪先等をガイドさせ、その一方でより小さく形成された押圧部側切欠角Pによって爪先等が継続して隙間内へスライドすることを阻止し、より容易に指の爪先や棒状物等がV字状の切欠部へガイドされることとなり、ミシン目を容易に破断させることができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、上記請求項1又は請求項2に係る発明の構成を備えた上で、V字状の切欠部の深さ寸法(D)は1mm以上5mm以下であり、且つ、切欠部の深さ寸法(D)と切欠部の幅寸法(W5)の比率は、前記切欠部深さ寸法(D)が1であるのに対して切欠部の幅寸法が2〜4であることとしたから、上記請求項1又は2の作用効果を奏する上で、切欠部の各辺近傍が撓むこともないので、製造過程、流通過程において切欠部の各辺近傍が不用意に捲れることもなく、正常にミシン目の破断を生じさせることができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、上記請求項1、請求項2又は請求項3に係る発明の構成を備えた上で、背面板の上縁のうち開封押圧部の左右に設けられた非押圧部の幅寸法が5mm以上50mm以下としたことから、上記請求項1又は2の作用効果を奏するものとした上で、5mm以上50mm以下とした、主として爪先を差し込めるか差し込めない程度の僅かな隙間しか形成されていないため、開封押圧部の押圧によらない開封が行われるに際して、固着がされていない非押圧部から爪先や棒状物等を差し込もうとすると、非押圧部の上縁の撓み量がより大きくなり、容易に爪先や棒状物等がV字状の切欠部へガイドされることとなり、ミシン目を更に容易に破断させることができる。このため、開封操作を行ったことが外観上すぐに判別できる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、上記請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に係る発明の構成を備えた上で、蓋板と差し込み片との境界ラインに突出部を形成した包装用箱において、突出部の幅寸法が開封押圧部の幅寸法よりも小さいこととしたから、上記請求項1、2又は3記載の発明の作用効果を奏するものとした上で、従来の突出部を形成したことによるカッターでの不正開封の防止機能により複数の不正開封防止手段を備えただけでなく、突出部の幅寸法が開封押圧部の幅寸法よりも小さくしてV字状の切欠部と重ならない位置とすることで、V字状の切欠部からミシン目が破断された状態を外観上明瞭に判断できる状態を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る包装用箱を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る包装用箱の蓋板の組立段階における閉蓋前の状態を示す斜視図である。
【図3】意図されない方法での開封の試行がされた形跡を有する状態を示す本発明の実施例1にかかる包装用箱を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例1に係る包装用箱の通常の開封状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例1に係る包装用箱の展開平面図である。
【図6】本発明の実施例1に係る包装用箱の開封押圧部、非押圧部を示す一部拡大図である。
【図7】本発明の実施例2に係る包装用箱を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例2に係る包装用箱の蓋板の組立段階における閉蓋前の状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例2に係る包装用箱の開封押圧部、非押圧部を示す一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、有底角筒状の箱本体の上端の一辺を基端として蓋板3を開閉可能に備えてなり、蓋板3の自由端部に差し込み片4を備え、前記蓋板3の差し込み片4と当接する背面板2の上端部に上開き形状のミシン目23によって囲まれた開封押圧部20を備え、開封押圧部20の内面と差し込み片4とを接着剤9で接着した固着部を備えた包装用箱において、上開き形状のミシン目23の両端部に上縁にかけて開口するV字状の切欠部22を形成し、背面板2の上縁のうち開封押圧部20の左右に設けられた非押圧部21の幅寸法が5mm以上50mm以下、好ましくは10mm以上30mm以下であり、開封押圧部20の内面の左右に亘り連続した固着部を備えたこととしたから、開封押圧部20の押圧によらない開封が行われるに際して、接着がされていない非押圧部21から爪先Fや棒状物等を差し込もうとすると、固着部が長手に亘ってミシン目23の際部200まで設けられおり爪先Fを差し込めるか差し込めない程度の僅かな隙間しか形成されていないため、容易に爪先Fや棒状物等がV字状の切欠部22へガイドして、ミシン目23もしくはミシン目23に連続する背面板2を容易に破断させ、開封操作を行ったことが外観上すぐに判別できる、非常に安価に開封検知手段を備えた包装用箱1を実現した。
【実施例1】
【0027】
図1は本発明の実施例1に係る包装用箱1を示す斜視図、図2は同実施例1に係る包装用箱1の蓋板3の組立段階における閉蓋前の状態を示す斜視図、図3は意図されない方法での開封の試行がされた形跡を有する状態を示す同実施例1にかかる包装用箱1を示す斜視図、図4は同実施例1に係る包装用箱1の通常の開封状態を示す斜視図、図5は同実施例1に係る包装用箱1の展開平面図である。
【0028】
本発明の実施例1に係る包装用箱1は、図1、図2、図5に示すように、直方体形状を有する紙製の包装用箱1であり、正面板7、右側板5、左側板6、背面板2、該背面板2の側面に設けた接続片25の各境界ラインを山折し、前記接続片25を前記右側板5の裏面に貼着して角筒形状とし、底板8によって包装用箱1の底面が形成されることで、箱本体を形成する。前記正面板7の上縁に山折線を介して蓋板3が連続一体に設けてあり、蓋板3の自由端部には山折線を介して差し込み片4を設けてある。
また、正面板7に対向する背面板2の上縁部に開封手段となる開封押圧部20を設けてある。右側板5の上縁には右舌片50を一体に形成し、左側板6の上縁には左舌片60を一体に形成してある。
【0029】
開封手段は背面板2の上端部に上開き形状のミシン目23によって囲まれた開封押圧部20としてある。また、上開き形状のミシン目23の両端部には、上縁にかけて開口するV字状の切欠部22を形成してある。更に、開封押圧部20の内面のうち左右のミシン目23に近接する際(きわ)の部分を際部200としている。一方、背面板2の上縁のうち開封押圧部20の左右に非押圧部21を設けている。本実施例における非押圧部21は、左右とも概ね30mm程度の幅寸法W4としている。
【0030】
差し込み片4の外面には、図1及び図2に示すように、開封押圧部20の幅寸法W1に対応する長さW2で、左右の際部200間に連続して、ホットメルト接着剤9を塗布し、該差し込み片4の外面と開封押圧部20の内面とを、前記ホットメルト接着剤9の加熱溶融により固着した固着部を形成している。固着部は、開封押圧部内面の左右の際部200を含む構成、即ち、ミシン目23と固着部との間隙寸法W6を小さくする構成としており、該間隙寸法W6は、概ね0〜3mm程度としてある。また、差し込み片4のうち当該非押圧部21に当接する部分には接着剤9を塗布しない。
【0031】
前記V字状の切欠部22は、図6に示すように、開封押圧部20側の一辺220と、非押圧部21側の一辺221とを有し、ミシン目23の終端上に、各辺220、221の交点である、切欠部22の頂点Kが配置する。背面板2の上縁に直交し前記頂点Kを通過する仮想線Lに対して開封押圧部20側の一辺220を含む仮想線Mが交差する角を押圧部側切欠角Pとし、前記仮想線Lに対して非押圧部21側の一辺221を含む仮想線Nが交差する角を非押圧部側切欠角Qとすると、非押圧部側切欠角Qは押圧部側切欠角Pよりも大きく形成してある。また、仮想線Mと背面板2の上縁ラインR1との交差部、仮想線Nと背面板2の上縁ラインR2との交差部は夫々、角を落として丸みを持たせてある。本実施例1における切欠部22の深さ寸法Dは約2mmであり、最大の幅寸法W5は約4mmとしてある。
【0032】
上記実施例1に係る包装用箱1によれば、図1に示す未開封状態から通常の操作に従って、開封押圧部20を爪先F等で押圧して背面板2のミシン目23を切断すると、一般的な開封手段と同様に、開封押圧部20と差し込み片4とが固着した状態で、差し込み片4が包装用箱1内へ落ち込んだ状態となり、当該状態から蓋板3を持ち上げることで、図4に示すように、開封することができる。
【0033】
その一方で、開封押圧部20の押圧によらない開封が行われるに際して、接着がされていない非押圧部21から爪先Fや棒状物等を差し込もうとすると、固着部がミシン目23の際部200まで設けられ、ホットメルト接着剤9が塗布されていない箇所が左右の30mmの爪先Fを差し込めるか差し込めない程度の僅かな隙間しか形成されていないため、当該箇所から強引に爪先Fや棒状物等を挿入して当該爪先Fや棒状物等をスライドさせると、爪先Fや棒状物等がV字状の切欠部22へガイドされることとなり、図3に示すように、ミシン目23を非常にたやすく破断させ、更にはミシン目23から下方など任意の方向に背面板2を破損させ、破損痕24を生じさせることができる。このため、開封操作を行ったことが外観上すぐに判別できる。
【0034】
本実施例1においては、上記したように、切欠部22の形成によって、非押圧部21の上縁と開封押圧部20の上縁とが分離され、非押圧部21の上縁は撓み易くなり、開封押圧部20の上縁は撓み難くなり、夫々が独立した撓みを有することとなり、非押圧部21の上縁が撓みながら、差し込み片4と背面板2の上縁との隙間から、切欠部22を通じて、ミシン目23に沿って、当該ミシン目23を破断する側へ案内させる。
【0035】
そして、本実施例においては、図6に示すように、非押圧部側切欠角Qは押圧部側切欠角Pよりも大きく形成してあるため、差し込み片4と接着されていない非押圧部21側の隙間から爪先F等を差し込んで長手に当該爪先Fをスライドさせると、爪先F等をガイドする背面板2の上縁から切欠部22にかけて前記非押圧部側切欠角Qの大きな傾斜によって緩やかにミシン目23に沿って、当該隙間からミシン目23を破断する側へ当該爪先F等をガイドさせ、その一方でより小さく形成された押圧部側切欠角Pによって爪先F等が継続して隙間内へスライドすることを阻止する作用を奏する。非押圧部側切欠角Qが押圧部側切欠角Pよりも大きく形成してあるため、当該切欠部22の各辺220、221のうち、非押圧部21側の一辺221をやや緩やかな傾きとし、開封押圧部20側の一辺220をより急勾配とする、傾きの相違を設けることとなり、当該構成によって、更に、ミシン目23の破断を極めて容易に行うことができる。
【0036】
また、非押圧部21と蓋板3とが重なり合う長手方向の距離(非押圧部21の幅寸法)は概ね5mm以上50mm以下とすると、爪先Fの挿入が不可能か、爪先Fを一本入れたことで非押圧部21の上縁部が大きく撓んで、容易にミシン目23を破断させる程度とすることができる。
【0037】
非押圧部21と蓋板3とが重なり合う長手方向の距離が概ね50mmを超えると、背面板2全体の撓みによって非押圧部21の上縁部の撓みが吸収され易くなり、ミシン目23の破断を起こし難くなる傾向を生じる。
また、押圧部21と蓋板3とが重なり合う長手方向の距離が5mm未満となると、爪先Fのみならず棒状物等の挿入も容易でなくなる点でより好ましいものの、開封後再度差し込み片4を背面板2の内面に当接させて蓋板3を閉じた状態において、背面板2が差し込み片4の復元力によって押圧されて撓み、背面板2から差し込み片4が外れ、不用意に蓋板3が開放される不具合を生じやすくなる。
【0038】
尚、図3においては、右側面側からの開封を行った場合のミシン目23の破断を示したものであるが、左側面側からの開封を同様に行った場合には、左側面側のミシン目23が同様に破断することとなる。
【0039】
このため、特に機能的な安定性を確実とするために、非押圧部21と蓋板3との隙間の範囲は再度の閉蓋状態の確実性がより優れた概ね10mm以上とし、爪先Fの挿入時にミシン目23の自動的な破断をより起こし易くする30mm以下とすれば、より一層好ましい。
【0040】
また、切欠部22については、本実施例1において、上記したように、深さ寸法Dは約2mm、最大の幅寸法W5は約4mmとしたが、深さ寸法Dは1mm以上5mm以下とし、切欠部22の深さ寸法Dに対して幅寸法W5が2〜4倍の範囲であれば、特に良好にミシン目23の破断を生じさせることができる。
深さ寸法Dに対する幅寸法W5が2倍未満の寸法であったり、深さ寸法が5mmを超える大きさとなると、製造過程や流通過程において切欠部22の各辺近傍が捲れ易くなる傾向を生じる。また深さ寸法Dに対する幅寸法が4倍を超えたり、深さ寸法Dが1mm未満であると、切欠部22の機能が十分に作用せず、指の爪先や箸等の棒状物等を差し込んだ際に、良好なミシン目23の破断を生じ難くなる傾向を生じる。
【実施例2】
【0041】
図7は本発明の実施例2に係る包装用箱1を示す斜視図、図8は同実施例2に係る包装用箱1の蓋板3の組立段階における閉蓋前の状態を示す斜視図、図9は同実施例2に係る包装用箱1の開封押圧部20、非押圧部21を示す一部拡大図である。
【0042】
本発明の実施例2に係る包装用箱1は、上記実施例1に係る包装用箱1を基本構成として、蓋板3と差し込み片4との境界部に、突出部30を形成した構成である。従って、本実施例2においては、基本的に、上記実施例1に係る包装用箱1と同様の作用効果を奏する。
【0043】
本実施例2に係る包装用箱1における突出部30は蓋板3と差し込み片4との境界部において左右二箇所に並設した構成であり、その突出部30のいずれの幅寸法W3もが、開封押圧部20の左右のミシン目23間の幅寸法W1(即ち、開封押圧部20の幅寸法)よりも小さく形成してあり、更に、二つの突出部30とその間の寸法を合わせた範囲が開封押圧部20の左右のミシン目23間の幅寸法W1よりも小さく形成してあり、更には、切欠部22に重ならない位置で、且つ、切欠部22よりも中央寄りの位置としたものである。
【0044】
上記位置に非常に限定された幅寸法W3を有する突出部30を形成することによって、従来の突出部30を設けたことによるカッターの刃を用いた切断を阻止できる付随効果を備えることができ、且つ、突出部30が操作上、爪先F等干渉することなく、V字状の切欠部22へのガイド機能を発揮させることで、ミシン目23を非常に容易に破断させ、開封操作を行ったことが突出部30に隠されることもなく、外観上すぐに判別できる効果を兼備させることができる。
【0045】
尚、上記実施例1、2においてはいずれも蓋板3に対して本発明の開封検知手段を設けたが、本発明においては、底板8の開封検知手段についても、例えば上記実施例1、2と同様の構成を上下対称とし、差し込み片4、右舌片50、左舌片60に代えて、差し込み片4a、右舌片50a、左舌片60aを同様に用いて設けることもできる。
【0046】
また、本発明に係る包装用箱1は、背面板2を正面側、正面板7を背面側に配置して使用することもでき、本発明における背面板2はこのようにして正面側に配置される場合を含む。
【0047】
また、上記実施例1、2においてはいずれも固着部の形成を接着剤9によって行ったが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、接着力の高い両面テープ等を用いることもできる。
【0048】
また、上記実施例1、2においてはいずれも固着部の形成について、左右の際部200間に連続して接着剤9を塗布するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、左右の際部200を含むのであれば、間欠的且つ線状に(即ち、点線状に)接着剤9を塗布することもできるし、上下左右へ広範囲に亘って点状に塗布する等の構成とすることもできる。
また、本発明における固着部は、左右の際部200についてその上下方向に亘って全て含む必要はなく、固着部に左右双方の際部200の一部が含まれていればよい趣旨である。
左右のミシン目23と固着部との間隙の寸法(即ち、際部200で許容するミシン目からの固着部までの距離)を小さくする点については、実施例1、2においては、上記したように、概ね0mmから3mm程度としているが、ミシン目23の破断容易性の確保と不用意な破断の防止が実現できる範囲であれば、これに限定するものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 包装用箱
2 背面板
20 開封押圧部
200 際部
21 非押圧部
22 切欠部
220 一辺(開封押圧部側)
221 一辺(非押圧部側)
23 ミシン目
24 破損痕
3 蓋板
30 突出部
4 差し込み片
5 右側板
50 右舌片
6 左側板
60 左舌片
7 正面板
8 底板
9 接着剤
D 深さ寸法(切欠部の深さ寸法)
F 爪先
K 頂点
L 仮想線
M 仮想線
N 仮想線
P 押圧部側切欠角
Q 非押圧部側切欠角
R1 上縁ライン
R2 上縁ライン
W1 幅寸法(左右ミシン目間の幅寸法)
W2 長さ(ホットメルト接着剤の長さ)
W3 幅寸法(突出部の幅寸法)
W4 幅寸法(非押圧部の幅寸法)
W5 幅寸法(切欠部の幅寸法)
W6 間隔寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底角筒状の箱本体の上端の一辺を基端として蓋板を開閉可能に備えてなり、蓋板の自由端部に差し込み片を備え、前記蓋板の差し込み片と当接する背面板の上端部に上開き形状のミシン目によって囲まれた開封押圧部を備え、開封押圧部の内面と差し込み片とを固着した固着部を備えた包装用箱において、
上開き形状のミシン目の両端部に上縁にかけて開口するV字状の切欠部を形成し、
固着部は、開封押圧部内面の左右の際部を含むことを特徴とする包装用箱。
【請求項2】
V字状の切欠部は、開封押圧部側の一辺と非押圧部側の一辺とを有し、ミシン目のライン上に、前記各辺の交点となる頂点を配置し、背面板の上縁に直交し前記頂点を通過する仮想線に対して開封押圧部側の一辺を含む仮想線が交差する角を押圧部側切欠角とし、前記仮想線に対して非押圧部側の一辺を含む仮想線が交差する角を非押圧部側切欠角とし、非押圧部側切欠角は押圧部側切欠角よりも大きく形成したことを特徴とする請求項1記載の包装用箱。
【請求項3】
V字状の切欠部の深さ寸法(D)は1mm以上5mm以下であり、且つ、切欠部の深さ寸法(D)と切欠部の幅寸法(W5)の比率は、前記切欠部深さ寸法(D)が1であるのに対して切欠部の幅寸法が2〜4であることを特徴とする請求項1又は2記載の包装用箱。
【請求項4】
背面板の上縁のうち開封押圧部の左右に設けられた非押圧部の幅寸法が5mm以上50mm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の包装用箱。
【請求項5】
蓋板と差し込み片との境界ラインに突出部を形成した包装用箱において、突出部の幅寸法が開封押圧部の幅寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の包装用箱。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−201596(P2011−201596A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73649(P2010−73649)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【出願人】(501140304)ホシエヌ製薬株式会社 (2)
【Fターム(参考)】