説明

包装袋およびその製造方法

【課題】本発明の課題は、背貼り部分から開封し、包装袋の上部と下部を切り離すいわゆる帽子切り動作をする際、開封ノッチから周方向に対して直線状に、かつ美麗な切り口で引裂くことができ、しかも製袋生産性に優れた包装袋を提案することである。
【解決手段】最内層にヒートシール層を有する包材の両側端部を合掌状に貼り合せて背貼りシール部を形成し、底部および天部をシールしてなる筒状構造を有する包装袋であって、背貼りシール部の所定部位に開封ノッチを有し、包材の巾方向中央部に、包装袋の周方向への引裂きを誘導させる開封誘導線を有し、開封誘導線は略水平な開封誘導線中央部と、開封誘導線中央部の両端から包材の側端部に向かう開封誘導線端部とからなり、開封誘導線端部の先端は包材の側端から1mm以上内側にあり、前記開封ノッチは、包材を縦にした時に開封誘導線の最下点から最上点までの高さの範囲内に存在することを特徴とする包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装袋に関し、特に軟包材フィルムの両側端部を合掌状に背貼りシールして筒状とし、底部と天部をシールしてなる包装袋において、背貼りシール部に設けた開封位置から水平に容易に開封可能な、易開封性の包装袋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軟包材をシールして袋状に成形した包装袋が食品、トイレタリーを初めとしたさまざまな用途に用いられている。包装袋としては、種々の形状のものが存在するが、最も一般的な形状として、ピロー型、ガセット型が挙げられる。これらの包装袋は、縦長にスリットした包材の両側端部を合掌状に重ね合わせてシールし、背貼りシール部を形成して筒状に成形した後、底部と天部をシールして完成する。これらの包装袋を開封するには、天部のシール部に開封ノッチを設けて、袋を縦に裂くように開封するか、あるいは背貼りシール部に開封ノッチを設けて、袋を水平に裂くように開封するかいずれかの開封方法が一般的である。
【0003】
縦に裂く場合には、表面側の包材と裏面側の包材がシール部から見て同じ方向にあるので、比較的容易に開封することができる。しかし背貼り部を開封開始点として、水平に開封するいわゆる帽子切りをしようとすると、背貼り部を中心として右側の包材と左側の包材とが反対方向に向かっているため、背貼り部の開封ノッチから始まった裂け目が袋本体にかかった所で止まってしまい、スムーズに開封することができないという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1に記載された包装袋は、背貼りシール部に一対の切欠きを形成して開封の際の摘み部とした包装袋において、背貼りシール部の折れ曲がり基部周辺のフィルムに粗面加工部を形成したことを特徴とする包装袋である。
【0005】
特許文献1に記載された包装袋は、フィルムの粗面加工部の脆弱性を利用して、背貼りシール部に形成した切欠き部から始まった裂け目が袋本体で止まることなく進行するようにしたものである。
【0006】
特許文献2に記載された包装用袋の開封構造は、背シール部の端縁に異なる長さの2本の切り込みを設け、さらにシート材の背シール部との境界部分に多数の微細な傷痕を設けたことを特徴とする開封構造である。
【0007】
特許文献2に記載された開封構造によれば、特許文献1に記載された包装袋と同様に、異なる長さの2本の切り込みとシート材に設けた微細な傷痕の働きにより、背シール部から始まった裂け目が袋本体で止まることなく進行するため、周方向の開封が可能となるとしている。
【0008】
特許文献3に記載された易開封性包装袋は、外面層とアルミニウム層と炭酸ガスレーザー吸収層と熱接着性樹脂層を有する積層フィルムからなる包装袋において、開封する際に引き裂く線に沿って前記炭酸ガスレーザー吸収層に炭酸ガスレーザーによる切目線を形成したことを特徴とする易開封性包装袋である。特許文献3には、ピロータイプ袋に応用した場合として、合掌熱接着部に形成された切込から両側端の方向に延びる切目線が形成された包装袋が記載されている。
【0009】
特許文献3に記載された易開封性包装袋は、積層フィルムに炭酸ガスレーザーによる切目線を設けたことにより、背貼りシール部に設けた切込から始まった裂け目が切目線に沿
って進むため、切断面がきれいな易開封性包装袋となっている。
【0010】
特許文献4に記載された包装体は、フィルム材の両側端部を合掌状に貼り合わせて背貼り部を形成して筒状体を形成し、両端部をシールした包装体であって、背貼り部の所定部位に設けられ、開封の起点となる開封起点部と、背貼り部に沿って形成されフィルム材の背貼り部に沿った方向への引き裂きを誘導する第1引き裂き誘導部と包装体の周方向に延びフィルム材の周方向への引き裂きを誘導する第2引き裂き誘導部とを有することを特徴とする包装体である。
【0011】
特許文献4に記載された発明は、本発明の目的であるところの、包装体を水平方向に開封することを目的としたものではないが、この発明には、前記第2引き裂き部の開始点を背貼り部の根元線上またはその近傍で、開封起点部と略同位置となるように形成するという記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3578419号公報
【特許文献2】特開平10-35694号公報
【特許文献3】特開2001-106240公報
【特許文献4】特開2008-189324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1および2に記載された包装袋は、開封のきっかけを与えるだけのものであるため、容器本体部分において、フィルムの切断面が不規則になりやすく、開封後の外観が美しくない。またしばしば途中で裂け目が引っ掛かって円滑に開封できなくなる可能性があるという問題を内包している。
【0014】
特許文献3および4に記載された包装袋は、切目線あるいは引き裂き誘導部を設けたために、切断面が不規則になるという問題は解消したものの、切込あるいは開封起点部とこの切目線あるいは引き裂き誘導部とを厳密に一致させなければならず、実際の包装袋の製造工程を考慮すると、製造上極めて困難な問題が生じる。すなわち、切目線あるいは引き裂き誘導部は、包装フィルムの段階で形成するのが一般的であり、背シール部に設ける切込あるいは開封起点部は、背貼りシール後に形成するものであるから、この両者を厳密に位置合わせするのは、機械的に極めて困難である。
【0015】
切込あるいは開封起点部と切目線あるいは引き裂き誘導部とが少しでもずれていると、本来の開封口とは異なる部分が裂け始め、初期の目的が達成されないことになる。また別の問題として、包装フィルムに横方向の切目線を設けると、製袋工程においてフィルムが切断しやすくなるため、生産性が低下するという問題もある。
【0016】
本発明の解決しようとする課題は、上記の従来の問題点を解消し、背貼り部分から開封し、包装袋の上部と下部を切り離すいわゆる帽子切り動作をする際、開封ノッチから周方向に対して直線状に、かつ美麗な切り口で引裂くことができ、しかも製袋生産性に優れた包装袋を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包材の両側端部を合掌状に貼り合せて背貼りシール部を形成し、底部および天部をシールしてなる筒状構造を有する包装袋であって、前記背
貼りシール部の所定部位に開封のきっかけとなる開封ノッチを有し、包材の巾方向中央部に、包装袋の周方向への引裂きを誘導させる開封誘導線を有し、該開封誘導線は略水平な開封誘導線中央部と、該開封誘導線中央部の両端から包材の側端部に向かう開封誘導線端部とからなり、該開封誘導線端部の先端は包材の側端から1mm以上内側にあり、前記開封ノッチは、包材を縦にした時に前記開封誘導線の最下点から最上点までの高さの範囲内に存在することを特徴とする包装袋である。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、前記開封誘導線が、略水平な開封誘導線中央部と、該開封誘導線中央部の両端から二股に分かれ、それぞれ包材の側端部に向かう4本の開封誘導線端部からなることを特徴とする請求項1に記載の包装袋である。
【0019】
また、請求項3に記載の発明は、包材を縦にした時に前記開封ノッチの先端から水平に引いた線と、前記開封誘導線端部とが交わる角度が、10°以上80°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋である。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、前記開封誘導線端部の先端が、背貼りシール部に到達していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装袋である。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、前記開封誘導線中央部と開封誘導線端部とが、曲線によってなめらかに接続していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装袋である。
【0022】
また、請求項6に記載の発明は、印刷を施した包材原反にレーザー加工法によって開封誘導線を形成する工程、印刷を施した包材原反を所定巾にスリットする工程、背貼りシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程を少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装袋の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る包装袋は、包材の巾方向中央部に、包装袋の周方向への引裂きを誘導させる開封誘導線を有し、該開封誘導線は略水平な開封誘導線中央部と、該開封誘導線中央部の両端から包材の側端部に向かう開封誘導線端部とからなり、該開封誘導線端部の先端は包材の側端から1mm以上内側にあり、開封誘導線は、包材の側端に達していないため、包材が製造工程において開封誘導線を発端にして破断することがなく、従って安定して製造することができる。
【0024】
またこの事は、本発明に係る包装袋を製造する際に、開封誘導線を形成するに当たり、レーザー加工機を用いて広幅の状態で開封誘導線をまとめて形成し、しかる後に所定の幅にスリットして個々の包材とすることが可能なことを意味しており、従って極めて効率的に製造することができる。
【0025】
また、開封ノッチは、包材を縦にした時に前記開封誘導線の最下点から最上点までの高さの範囲内に存在するので、包装袋を開封する際に、開封ノッチから出発した包材の裂け目が開封誘導線に到達し易く、そこからは開封誘導線に沿って裂け目が走るので、包装袋は開封しやすく、また包装袋の開封面がきれいな切り口になる。
【0026】
開封誘導線が、略水平な開封誘導線中央部と、該開封誘導線中央部の両端から二股に分かれ、それぞれ包材の側端部に向かう4本の開封誘導線端部からなるものである場合には、開封ノッチから出発した裂け目が上下どちらの方向に走っても、必ず開封誘導線端部に行き当たるため、開封時の安定性がより高まる。
【0027】
また、開封ノッチの先端から水平に引いた線と、前記開封誘導線端部とが交わる角度が10°以上80°以下である場合には、開封ノッチから出発した裂け目が開封誘導線端部に沿って走る確率が高く、裂け目が開封誘導線から逸れる危険性が低い。
【0028】
またさらに、開封誘導線端部の先端が、背貼りシール部に到達している場合にあっては、開封ノッチから出発した裂け目が開封誘導線に到達し、開封誘導線に沿って走る確率が極めて高くなる。
【0029】
また、開封誘導線中央部と開封誘導線端部とが、曲線によってなめらかに接続している場合には、包材の裂け目が開封誘導線の端部から中央部に移る時に、外れてしまうことなく確実に繋がり、完全な開封ができる可能性が高い。
【0030】
また、請求項6に記載の発明においては、印刷を施した包材原反にレーザー加工法によって開封誘導線を形成する工程、印刷を施した包材原反を所定巾にスリットする工程、背貼りシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程を少なくとも含む包装袋の製造方法であるから、前述のように開封誘導線を形成するに当たり、レーザー加工機を用いて広幅の状態で開封誘導線をまとめて形成し、しかる後に所定の幅にスリットして個々の包材とすることも可能であるし、印刷を施した包材原反を所定巾にスリットした後に、レーザー加工機を用いて開封誘導線を形成してもよい。従って、製袋機や、充填包装機によって背貼りシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程の直前にレーザー加工機をもちいて開封誘導線を形成してもよい。このように、包装袋の構造や使用方法に応じて、最適な製造工程を選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る包装袋の一実施形態の外観を示した模式図である。
【図2】図1に示した包装袋を開封した状態を示した模式図である。
【図3】図1に示した包装袋の製袋前の包材の平面模式図である。
【図4】図3に示した包材における開封誘導線の説明図である。
【図5】開封誘導線の他の実施態様を示した説明図である。
【図6】開封誘導線の他の実施態様を示した説明図である。
【図7】開封誘導線の他の実施態様を示した説明図である。
【図8】従来の開封誘導線の説明図である。
【図9】比較例における開封誘導線の説明図である。
【図10】印刷済みの広幅原反に開封誘導線を形成した状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に従って、本発明に係る包装袋について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る包装袋の一実施形態の外観を示した模式図であり、図2は図1に示した包装袋を開封した状態を示した模式図である。また図3は、図1に示した包装袋の製袋前の包材の平面模式図であり、図4は、図3に示した包材における開封誘導線の説明図である。以下これらの図面を参照しながら説明する。
【0033】
本発明に係る包装袋1は、最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包材2の両側端部を合掌状に貼り合せて背貼りシール部3を形成し、底部および天部をシールしてそれぞれボトムシール部4とトップシール部5を形成してなる筒状構造を有する包装袋である。包装袋1は、背貼りシール部3の所定部位に、開封のきっかけとなる開封ノッチ7を有し、包材2の巾方向中央部に、包装袋1の周方向への引裂きを誘導させる開封誘導線6を有する。開封誘導線6は略水平な開封誘導線中央部6aと、開封誘導線中央部6aの両端から所定の角度をもって包材の側端部に向かう開封誘導線端部6bとからなり、開封誘導線端部6bの先端6cは包材2の側端9から1mm以上内側にあり、開封ノッチ
7は、包材2を縦にした時に開封誘導線6の最下点6eから最上点6fまでの高さhの範囲内に存在することを特徴とする包装袋である。
【0034】
本発明に係る包装袋1は、開封に当たって、開封ノッチ7から出発した包材2の裂け目が開封誘導線端部6bに到達し、以後は開封誘導線端部6b、開封誘導線中央部6aに沿って進行するため、開封操作が容易かつ安定しており、開封面の切り口もきれいになる。このように包装袋を周方向に切断して開封するいわゆる帽子切りをする際、内容物が存在しない包装袋の最上部を切断するのであれば、鋏等の道具を用いれば、きれいに開封することも容易であるが、例えば細長い内容物が収納された包装袋の上部を、収納物の頭が露出するように切断しようとすると、鋏等の道具によってうまく開封することは、難しい。本発明に係る包装袋1は、このような帽子切りによる開封が容易に、また安定して行えるものであり、さらにその製造工程においても、安定した生産が可能なものであることを特徴とする。
【0035】
図3、図4に示したように、包材2の巾方向中央部に設けられた開封誘導線6は、略水平な開封誘導線中央部6aと、開封誘導線端部6bとからなり、開封誘導線端部6bは、開封誘導線中央部6aの両端から所定の角度をもって包材の側端部に向かっている。開封誘導線端部の先端6cは、包材2の側端9から1mm以上内側にある。すなわち、図4において、開封誘導線端部の先端6cと包材の側端9との距離である開封誘導線マージン6dが1mm以上であることを意味する。
【0036】
開封誘導線6が、包材2の側端9にまで到達していると、ウェブに過大なテンションがかかった場合などに、開封誘導線6を開始点として、ウェブが破断する事故が発生する可能性がある。しかし開封誘導線マージン6dが1mm以上であれば、包材2が縦方向に繋がったウェブ状態の段階において、ウェブにかかるテンションによってウェブが開封誘導線6に沿って破断するという問題が発生しにくくなる。開封誘導線マージン6dが1mm未満であると、広幅の原反に開封誘導線をまとめて形成し、隣り合う開封誘導線の間をスリットするような場合に、スリット位置が開封誘導線に接触する危険性が増えるため好ましくない。
【0037】
次に開封ノッチ7について説明する。開封ノッチ7は、包材2を縦にした時に前記開封誘導線6の最下点6eから最上点6fまでの高さhの範囲内に存在することを特徴とする。通常開封ノッチ7は、包材2の側端部同士を背貼りシールして、背貼りシール部3を形成した後に設けられるので、図3、4の段階においては、開封ノッチ予定位置7aとして示してある。図3、4の実施形態においては、開封誘導線6が、開封誘導線中央部6aとこれよりも下向きに伸びる左右両端の開封誘導線端部6bとからなるので、開封誘導線最下点6eは、開封誘導線端部の先端6cであり、開封誘導線最上点6fは、開封誘導線中央部6aに一致する。
【0038】
開封ノッチ7が、この開封誘導線高さhの範囲に存在することにより、包装袋を開封する段階において、開封ノッチ7から出発した包材の裂け目は、開封誘導線端部6bに到達し、それ以降は、開封誘導線端部6b〜開封誘導線6aへと走る。その結果、開封操作が円滑になされ、開封後の包装袋の切り口もきれいなものとなる。
【0039】
実際の開封ノッチ7は、開封ノッチ予定位置7aに対して、多少位置がばらつくが、このばらつきを見込んだ位置に開封ノッチ予定位置7aを設定し、また開封誘導線高さhを、このばらつきの幅よりも大きくすることにより、開封ノッチ7を開封誘導線高さhの範囲内に納めることが可能となる。通常開封ノッチ7の位置のばらつきは、縦方向でプラスマイナス1mm程度である。なお、開封ノッチ7は、Iノッチ、Uノッチ、Vノッチ等のいずれでもよい。
【0040】
次に、図4に示したように、包材を縦にした時に開封ノッチ7(図では開封ノッチ予定位置7a)の先端から水平に引いた線と、開封誘導線端部6bとが交わる角度θを、10°以上80°以下とすることにより、開封ノッチ7から出発した包材の裂け目がより確実に開封誘導線端部6bに到達し、開封誘導線6に沿って裂け目が走りやすくなる。角度θの、より好ましい値としては、20°以上70°未満であり、40°以上65°未満が最も好ましい。
【0041】
図3に示したように、この実施態様においては、開封誘導線端部の先端6cは、背貼りシール予定部3aに到達しており、最終的には背貼りシール部3に取り込まれる位置にある。開封誘導線端部の先端6cが、背貼りシール部3に到達していると、開封ノッチ7から出発した包材の裂け目は、より確実に開封誘導線端部6bに到達し、開封誘導線6に沿って裂け目が走りやすくなる。
【0042】
図5〜7は、開封誘導線6の他の実施態様を示した説明図である。
図5に示した実施態様においては、開封誘導線6が、開封誘導線中央部6aとこの両端から斜め上向きに包材側端部に向かう開封誘導線端部6bとからなる。従ってこの実施態様においては、開封誘導線最下点6eは、開封誘導線中央部6aと一致し、開封誘導線最上部6fは、開封誘導線端部の先端6cと一致する。従って、開封ノッチ予定位置7aを、開封ノッチ7がこの最下点6eから最上点6fの間である開封誘導線高さhの範囲内になるように設定することにより、本発明の目的が達成される。このように、開封誘導線6は、上に凸の形状でも下に凸の形状でもどちらでもよい。
【0043】
図6に示した実施態様においては、開封誘導線中央部6aと開封誘導線端部6bとは、曲線によってなめらかに接続している。この実施態様においては、開封ノッチ7から出発した包材の裂け目が開封誘導線端部6bから開封誘導線中央部6aに移る時に、外れてしまうことなく確実に繋がり、完全な開封ができる可能性が高くなり、よりスムーズな開封操作が可能となる。
【0044】
図7に示した実施態様においては、開封誘導線6は、略水平な開封誘導線中央部6aと、開封誘導線中央部6aの両端から二股に分かれ、それぞれ所定の角度をもって包材2の側端部に向かう4本の開封誘導線端部6bからなることを特徴とする。この実施態様においては、開封誘導線最下点6eは、開封誘導線中央部6aから下方向にのびる開封誘導線端部6bの先端6cであり、開封誘導線最上点6fは、開封誘導線中央部6aから上方向にのびる開封誘導線端部6b’の先端6c’である。この実施態様においては、開封誘導線高さhを広くとることが容易となり、開封ノッチ7から出発した包材の裂け目がより確実に開封誘導線端部6bに補足されるため、より確実な開封が可能となる。
【0045】
本発明に係る包装袋の形式としては、図1に示したようないわゆるピロー包装袋の他、両脇部を内側に折り込んでガセット部を形成したガセット袋や、さらに底テープを用いてスタンディングパウチ形式とした包装袋等、さまざまな形式の包装袋に応用が可能である。
【0046】
本発明において、積層体からなる包材2の外層として使用するフィルムとしては、包装袋1を構成する基本素材となることから、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系等の合成樹脂フィルムを用いることができる。この外層として使用する合成樹脂フィルムには、一般的に内層側の面に印刷が施されることが多いために、印刷適性が求められる。このため外層として使用する合成樹脂フィルムとしては、2軸方向に延伸した延伸フィルムが好ましい。
【0047】
外層フィルムの厚みとしては基本素材としての強度、剛性などについて必要最低限に保持され得る厚さであればよく、12〜25μm程度が適当である。また、前記フィルムとしてアルミニウムや酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物の蒸着層が形成されたフィルムを使用した場合、包材にバリア性を付与することも可能となる。さらに、易カット性を向上させるために、セロファンや手切れ性の良いポリエステルフィルム等を使用しても良い。
【0048】
次に、最内層として使用するヒートシール性を有する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、エチレンーアクリル酸共重合体樹脂、エチレンーアクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレンーメタクリル酸共重合体樹脂、エチレンープロピレン共重合体樹脂等の、熱によって溶融し相互に融着し得るものが挙げられる。これらは単体または2種以上使用しても良く、樹脂およびこれらをフィルム化したシートを使用しても良い。厚みとしては15〜100μmが望ましく、30〜50μmがより好ましい。
【0049】
本発明においては、前記外層と前記内層の間に中間層を設けてもよい。例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫等の金属箔、あるいは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンープロピレン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニリデン樹脂等のフィルム、あるいはこれらにアルミニウムや酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物の蒸着を施したフィルムを使用することができ、これらは単体または2種以上組み合わせて使用しても良い。
これらのフィルムを中間層に設けることにより、ガスバリア性、水蒸気バリア性、機械的強度、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等を向上させることが可能となる。
【0050】
次に開封誘導線6を形成するための方法について説明する。
開封誘導線6は、包材を構成する積層体の少なくとも外層を切断し、最内層を残したハーフカット線とするのが好ましい。ハーフカット線を形成する方法としては、刃物による方法やレーザー加工機による方法がある。近年においては、レーザー加工機が発達、普及したために、レーザー加工機の優位性が増している。
【0051】
レーザー加工機としては、連続またはパルス発振形式を有する炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザーなどを用いたレーザー加工機が挙げられるが、食品等、内容物のガスバリア性が要求される場合には、例えば最内層のシーラント層のみを残すような選択的なカットが可能な炭酸ガスレーザーの使用がより好ましい。
【0052】
レーザー加工機を用いて開封誘導線6を形成する工程としては、印刷済みの広幅原反を所定の包材幅にスリット加工する時点で行なうこともできるし、スリット加工後に行うこともできる。図10は、印刷済みの広幅原反に開封誘導線6を形成した状態を示した模式図である。本発明に係る包装袋に用いる包材2は、先に説明した開封誘導線マージンが存在するために、隣り合う開封誘導線6同士が離れており、従って後からスリットする時に、開封誘導線6の間をねらってスリット予定位置10の位置をスリットすることができる。このように印刷済みの広幅原反をスリット加工する前に開封誘導線6を形成することが可能であるため、開封誘導線6の形成を効率的に行うことができる。開封誘導線6の形成に当たっては、印刷時点で形成したレジスターマーク11を読み取り、絵柄に合せて所定の位置に形成する。
【0053】
本発明に係る包装袋の製造工程としては、外層フィルムに所定の絵柄を印刷する印刷工程、外層フィルムに中間層、最内層を貼り合わせて包材原反を作成する工程、印刷を施した包材原反にレーザー加工法によって開封誘導線を形成する工程、印刷を施した包材原反を所定巾にスリットする工程、背貼りシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程が少なくとも含まれる。開封誘導線を形成する工程としては、スリット工程の直前あるいは直後、製袋機や充填包装機において背貼りシール部を形成する直前等に設けることが可能であるが、本発明の特徴を最も有効に発揮させるのは、スリット工程の直前である。
【0054】
一方、スリット工程後に開封誘導線を設ける場合には、レーザー加工機による開封誘導線加工工程を独立に設けてもよいし、あるいは製袋機や充填包装機上にレーザー加工機を設置して、製袋加工の直前に開封誘導線を形成してもよい。いずれの場合も、レーザー加工機としては、スリット後の狭巾に対応するものでよいため、レーザー加工機のコストは大幅に低減する。近年、製袋と同時に充填を行う充填包装機も一般化しており、このような充填包装機にレーザー加工機を設置すれば、開封誘導線の形成と製袋に加えて、内容物の充填までを一貫して一工程で実施することができる。このような充填包装機としては、一般的な横ピロー包装機、縦ピロー包装機や給袋包装機等が含まれる。
【0055】
いずれの場合であっても、レーザー加工の位置決めは、印刷工程において設けられたレジスターマーク11を読み取ることによって行われるが、レーザー加工機をソフト的に制御することにより、必ずしも包材原反が一定速度で流れている時に限らず、加減速時や、停止時にも可能である。
以下実施例に従って、本発明に係る包装袋についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
厚さ12μm、720mm幅の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと厚さ30μm、720mm幅の低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂フィルムをドライラミネーション法により貼合せ、包材を得た。
続いて、炭酸ガスレーザー加工機を用いて幅方向に図10のように開封誘導線を形成した後、140mm幅となるようにスリット加工を施した。開封誘導線の詳細は、図4に示した通りである。次に、背貼りシール部の幅が10mmとなる、図1に示したようなピロー包装袋を作製し、ピローに対して幅方向に略水平に延びた開封誘導線中央部と開封誘導線端部先端の間すなわち開封誘導線高さの範囲内に位置するよう、開封きっかけの為のIノッチを設けた。
【実施例2】
【0057】
炭酸ガスレーザー加工機を用いて、図7のような形状の開封誘導線を施した以外は実施例1と同様にして、包装袋を作製した。
【実施例3】
【0058】
開封誘導線の形成をスリット加工前に実施せず、レーザー加工機を製袋機の巻出部に設置して、製袋加工の直前に開封誘導線の形成を行った以外は、実施例1と同様にして、包装袋を作成した。
<比較例1>
【0059】
炭酸ガスレーザー加工機を用いて、図8のような形状の開封誘導線を施した以外は実施例1と同様にして、包装袋を作製した。
<比較例2>
【0060】
炭酸ガスレーザー加工機を用いて、図9のような形状の開封誘導線を施し、Iノッチ位
置を幅方向に略水平に延びた開封誘導線上と開封誘導線端部の先端との間すなわち開封誘導線高さの範囲に存在しないように設けた以外は実施例1と同様に包装袋を作製した。
上記で得られた各包装袋について、開封テストを実施した結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
この結果からも分るように、本発明に係る包装袋は、開封操作を安定して行うことができ、開封後の切り口も美麗である。また製造工程においても安定した生産が実施できる。
【符号の説明】
【0063】
1・・・包装袋
2・・・包材
3・・・背貼りシール部
3a・・・背貼りシール予定部
4・・・ボトムシール部
5・・・トップシール部
6・・・開封誘導線
6a・・・開封誘導線中央部
6b・・・開封誘導線端部
6c・・・開封誘導線端部の先端
6d・・・開封誘導線マージン
6e・・・開封誘導線最下点
6f・・・開封誘導線最上点
h・・・開封誘導線高さ
θ・・・開封ノッチの先端から水平に引いた線と開封誘導線端部とが交わる角度
7・・・開封ノッチ
7a・・・開封ノッチ予定位置
8・・・包材幅
9・・・包材側端
10・・・スリット予定位置
11・・・レジスターマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包材の両側端部を合掌状に貼り合せて背貼りシール部を形成し、底部および天部をシールしてなる筒状構造を有する包装袋であって、前記背貼りシール部の所定部位に開封のきっかけとなる開封ノッチを有し、包材の巾方向中央部に、包装袋の周方向への引裂きを誘導させる開封誘導線を有し、該開封誘導線は略水平な開封誘導線中央部と、該開封誘導線中央部の両端から包材の側端部に向かう開封誘導線端部とからなり、該開封誘導線端部の先端は包材の側端から1mm以上内側にあり、前記開封ノッチは、包材を縦にした時に前記開封誘導線の最下点から最上点までの高さの範囲内に存在することを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記開封誘導線は、略水平な開封誘導線中央部と、該開封誘導線中央部の両端から二股に分かれ、それぞれ包材の側端部に向かう4本の開封誘導線端部からなることを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
包材を縦にした時に前記開封ノッチの先端から水平に引いた線と、前記開封誘導線端部とが交わる角度は、10°以上80°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記開封誘導線端部の先端は、背貼りシール部に到達していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記開封誘導線中央部と開封誘導線端部とは、曲線によってなめらかに接続していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項6】
印刷を施した包材原反にレーザー加工法によって開封誘導線を形成する工程、印刷を施した包材原反を所定巾にスリットする工程、背貼りシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程を少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−148546(P2011−148546A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82325(P2010−82325)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】