説明

包装袋及びその製造方法

【課題】包材が少なくとも延伸フィルム等の外層材と最内層にヒートシール性樹脂層を有する内層材の積層体からなる包装袋に、開封時に包装袋の開封ノッチから周方向に対して直線的に開封することができ、且つ、加工適性および流通適性にも優れた包材強度を保持することができる包装袋を提供することにある。
【解決手段】最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包材の両側端部を合掌状に熱接着して背貼りシール部を形成し、底部および天部をシールしてなる筒状構造を有する包装袋であって、前記背貼りシール部の所定部位に開封のきっかけとなる開封用ノッチと、包装袋の略水平方向への引裂きを誘導する開封誘導線を有し、該包材の垂直方向の破断強度が、JIS K−7161による測定で5N/15mm以上であることを特徴とする包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装袋に関し、特に軟包材フィルムの両側端部を合掌状に背貼りシールして筒状とし、底部と天部をシールしてなる包装袋において、背貼りシール部に設けた開封位置から水平方向に開封可能であり、製袋工程または流通時に必要な包材強度も確保できる易開封性の包装袋およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軟包材をシールして袋体に成形した包装袋が食品、トイレタリーを初めとした様々な用途に用いられている。包装袋としては、種々の形状のものが存在するが、最も一般的な形状として、ピロー型、ガセット型が挙げられる。これらの包装袋は、縦長にスリットした包材の両側端部を合掌状に重ね合わせてシールをし、背貼りシール部を形成して筒状に成形した後、底部と天部をシールして完成する。
【0003】
これらの包装袋を開封するには、天または底部のカット刃をギザ刃にするなどして開封用ノッチを設け、袋を包材の流れ方向に裂く様に開封するか、背貼りシール部に開封用ノッチを設けて、袋を水平方向に裂く様に開封するか何れの開封方法が一般的である。
【0004】
縦に裂く場合には、ノッチから包材の流れ方向に沿って開封することが出来るが、内容物の形状影響によっては、開封線が曲がってしまい内容物を取り出すに十分な開口が得られない、開封時の応力により内容物が変形し綺麗に取り出せない等の問題が発生する。
【0005】
横に裂く場合、いわゆる帽子切り開封をしようとすると、ノッチの両側から包材の目に対し水平方向に包材を裂いていくことから切り難く、裂け目からシーラントが伸びて開封強度が増したり、左右の裂け目位置が合わずに帽子部分を本体から綺麗に切り取ることが出来ない等の問題が発生する。
【0006】
これに対し、横一軸OPP、横一軸HDPEなど、包材の流れ方向に対し水平方向の直進開封を助けるフィルムを積層することで、包材の裂け目を水平方向に誘導し、開封強度を安定化させることが可能であるが、左右の裂け目が必ずしも合うものではなく、開封時の応力の掛け方や内容物の立体形状に影響を受け、裂け目が湾曲する。また特にHDPEは裂け目周辺にPE伸びによる毛羽立ちが目立ち、直接口に運ぶ用途からは倦厭される。そして上述の積層構成を採用した場合には、特殊フィルム使用に伴い、包材コストが増大し、汎用性が低下する等の問題がある。
【0007】
上述の問題を解決するために、特許文献1の包装袋が提案されている。具体的には、レーザー加工により引き裂きを誘導させる連続した開封誘導線を有しており、水平誘導線は水平方向に伸び、その両端から背貼りシール部の開封用ノッチを含む高さまで立ち上がった誘導線端部を持つ包装袋である。
【0008】
特許文献1に記載の包装袋は、背貼りシール部に設けられた開封用ノッチから横方向に開封する際、開封裂け目が本開封誘導線の端部と交差すると開封線に沿って誘導され、端部、中央部と誘導されることにより、裂け目が曲がることなく綺麗に誘導線に沿って開封することが出来、また確実に左右の裂け目が誘導線上で出会うことにより、帽子部を胴部から切り離すことを可能とした技術である。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の包装材には以下の問題がある。すなわち、前記開封誘導線は、印刷を施した包材原反にレーザー加工法によって開封誘導線を形成する工程、
所定巾にスリットする工程、背貼りシールを形成しながら内容物を包み込み、開封ノッチを入れながら密封する工程など、多くの工程を経て形成されるものであり、それぞれの工程において流れ方向に張力が掛かると、前記開封誘導線部が張力により伸び、それが原因で開封誘導線部にピンホールが生じ、さらにはバリア性が低下する。また包材中央部が伸びることにより包材が撓み、包材サイズが変化したり、巻取りの包材中央部に皺や凹みなどが発生するといった不具合が生じる。
【0010】
また、積層体に対し、貫通しない深さではあるが、ある程度の深さで開封誘導線を設けなければ、裂け目の誘導線追随性は得られないことは自明であるが、特に積層構成が延伸フィルムと熱可塑性シーラント樹脂の2層構成である場合、上述の開封誘導線の深さは延伸フィルム層を貫通する深さで設けなければ裂け目の追随性が得られないが、上記深さまで開封誘導線を設ける加工をレーザー加工により施す場合、延伸フィルムを昇華させる熱エネルギーにより隣接する熱可塑性シーラント層が熱ダメージを受け、より上記に述べた不具合が発生しやすい。2層以上の多層構成であっても、開封誘導線において切り残す層の材質、厚みによっては同様の問題が生じる。
【0011】
また特に外層裏面に絵柄印刷を施す場合、そのインキを構成する顔料や樹脂組成によっては、レーザーのエネルギーを吸収することで分解ガスが発生し、開封誘導線周辺のラミネート部分が浮いた状態になり、結果として誘導線の追随適性が大きく低下し、開封適性が得られないという問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特願2010−082325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、包材が少なくとも延伸フィルム等の外層材と最内層にヒートシール性樹脂層を有する内層材の積層体からなる包装袋に、開封時に包装袋の開封ノッチから周方向に対して直線的に開封することができ、且つ、加工適性および流通適性にも優れた包材強度を保持することができる包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決する為のものであり、本発明の請求項1に係る発明は、最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包材の両側端部を合掌状に熱接着して背貼りシール部を形成し、底部および天部をシールしてなる筒状構造を有する包装袋であって、前記背貼りシール部の所定部位に開封のきっかけとなる開封用ノッチと、包装袋の略水平方向への引裂きを誘導する開封誘導線を有し、該包材の垂直方向の破断強度が、JIS K−7161による測定で5N/15mm以上であることを特徴とする包装袋である。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明は、前記包材の前記開封誘導線に沿った引裂き強度が、JIS K−7125 C法による測定で、0.01N〜2Nであることを特徴とする請求項1に記載の包装袋である。
【0016】
本発明の請求項3に係る発明は、前記開封誘導線が、背貼りシール部の対面略中央位置に開封誘導線切り残し部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋である。
【0017】
本発明の請求項4に係る発明は、前記ヒートシール性樹脂層が、少なくとも融点が110℃以上の樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の包装袋である。
【0018】
本発明の請求項5に係る発明は、前記開封誘導線が、レーザー加工法により形成され、且つ、前記開封誘導線切り残し部が最内層のヒートシール性樹脂層のみであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の包装袋である。
【0019】
本発明の請求項6に係る発明は、前記積層体の外層材にウレタン樹脂および顔料からなる厚さ1μm以上のインキ層が設けられ、該インキ層を設けた領域と交差する該開封誘導線の領域が、該開封誘導線の総長さの30%以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の包装袋である。
【0020】
本発明の請求項7に係る発明は、印刷を施した包材原反にレーザー加工法によって開封誘導線を形成する工程、印刷を施した包材原反を所定巾にスリットする工程、背貼りシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程を少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装袋の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に関わる包装袋は、包材の巾方向中央に、包装袋の周方向への引裂きを誘導させる開封誘導線を有し、他方向に曲がることなく、またヒートシール性樹脂層(以下、シーラント層と記載)の伸びによる引裂き強度が過剰になることなく、適度な強度で誘導線に沿った綺麗な開封を行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係わる包装袋の一実施形態の外観を示した模式図である。
【図2】図1に示した包装袋を開封した状態を示した模式図である。
【図3】図1に示した包装袋の製袋前の包材の平面模式図である。
【図4】印刷済みの広巾原反に開封誘導線を形成した状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に従って本発明に係わる包装袋について詳細に説明する。図1は、本発明に係る包装袋の一実施形態の外観を示した模式図であり、図2は図1に示した包装袋を開封した状態を示した模式図である。また図3は、図1に示した包装袋の製袋前の包材の平面模式図であり、図4は印刷済みの広巾原反に開封誘導線を形成した状態を示した模式図である。
【0024】
本発明の包装袋1は、少なくとも外層と最内層のシーラント層との積層体で構成される包材2である。
【0025】
前記外層としては、包装袋1を構成する基本素材となることから、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系等の合成樹脂フィルムを用いることができる。この外層として使用する合成樹脂フィルムには、一般的に内層側の面に印刷が施されることが多いために、印刷適性が求められる。このため外層として使用する合成樹脂フィルムとしては、2軸方向に延伸した延伸フィルムが好ましい。
【0026】
外層フィルムの厚みとしては、基本素材としての強度、剛性などについて必要最小限に保持され得る厚さであればよく、12〜25μm程度が適当である。また、前記フィルムとしてアルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジル
コニウムなどの無機物の蒸着層が形成されたフィルムを用いることで、バリア性を付与することも可能となる。さらに、易カット性を向上させる目的で、セロファンや手切れ性の良いポリエステルフィルム等を使用しも良い。
【0027】
次に、最内層として使用するシーラント層としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、エチレンーアクリル酸共重合体樹脂、エチレンーアクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレンーメタクリル酸共重合体樹脂、エチレンープロピレン共重合体樹脂等の、熱によって溶融し相互に融着し得るものが挙げられる。これらは単体または2種以上使用しても良く、樹脂およびこれらをフィルム化したシートを使用しても良い。厚みとしては15〜100μmが望ましく、30〜50μmがより好ましい。
【0028】
本発明においては、前記外層と前記最内層の間に中間層を設けてもよい。例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫等の金属箔、あるいは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンープロピレン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニリデン樹脂等のフィルム、あるいはこれらにアルミニウムや酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物の蒸着を施したフィルムを使用することができ、これらは単体または2種以上組み合わせて使用しても良い。これらのフィルムを中間層に設けることにより、ガスバリア性、水蒸気バリア性、機械的強度、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等を向上させることが可能となる。
【0029】
以下に、開封誘導線6を形成するための方法について説明する。
【0030】
本発明に関わる包装袋1は、最内層がシーラント層である包材2の両側端部を合掌状に貼り合せて背貼りシール部3を形成し、底部および天部をシールしてそれぞれボトムシール部4とトップシール部5を形成してなる筒状構造を有する包装袋である。包装袋1は、背貼りシール部3の所定部位に、開封のきっかけとなる開封ノッチ7を有し、包材2の巾方向中央部に、包装袋1の周方向への引裂きを誘導させる開封誘導線6を有する。開封誘導線6は水平誘導線6aと、その両端から所定の角度をもって包材の側端部に向かう端部誘導線6bとからなる。
【0031】
前記水平誘導線6aは、その延長線上の略中央部に開封誘導線切り残し部6‘が設けてある。また、端部誘導線6bはその先端6cが包材2の側端9から1mm以上内側にある。さらに、開封ノッチ7が、包材2を縦にした時に開封誘導線6の最下点6eから最上点6fまでの高さhの範囲内に存在することを特徴とする包装袋である。
【0032】
本発明に係る包装袋1は、開封に当たって、開封ノッチ7から出発した包材2の裂け目が端部誘導線6bに到達し、以後は端部誘導線6b、水平誘導線6aに沿って進行するため、開封操作が容易かつ安定しており、開封面の切り口もきれいになる。このように包装袋を周方向に切断して開封するいわゆる帽子切りをする際、内容物が存在しない包装袋の最上部を切断するのであれば、鋏等の道具を用いれば、きれいに開封することも容易であるが、例えば細長い内容物が収納された包装袋の上部を、収納物の頭が露出するように切断しようとすると、鋏等の道具によってうまく開封することは、難しい。本発明に係る包装袋1は、このような帽子切りによる開封が容易に、また安定して行えるものであり、さらにその製造工程においても、安定した生産が可能なものであることを特徴とする。
【0033】
図3に示したように、包材2の巾方向中央部に設けられた開封誘導線6は、水平誘導線
6aと、端部誘導線6bとからなり、端部誘導線6bは、水平誘導線6aの両端から所定の角度をもって包材の側端部に向かっている。端部誘導線の先端6cは、包材2の側端9から1mm以上内側にある。
【0034】
開封誘導線6が、包材2の側端9にまで到達していると、ウェブに過大なテンションがかかった場合などに、開封誘導線6を開始点として、ウェブが破断する事故が発生する可能性がある。しかし開封誘導線マージン6dが1mm以上であれば、包材2が縦方向に繋がったウェブ状態の段階において、ウェブにかかるテンションによってウェブが開封誘導線6に沿って破断するという問題が発生しにくくなる。開封誘導線マージン6dが1mm未満であると、広幅の原反に開封誘導線をまとめて形成し、隣り合う開封誘導線の間をスリットするような場合に、スリット位置が開封誘導線に接触する危険性が増えるため好ましくない。
【0035】
次に開封ノッチ7について説明する。開封ノッチ7は、包材2を縦にした時に前記開封誘導線6の最下点6eから最上点6fまでの高さhの範囲内に存在することを特徴とする。通常開封ノッチ7は、包材2の側端部同士を背貼りシールして、背貼りシール部3を形成した後に設けられるので、図3においては、開封ノッチ予定位置7aとして示してある。図3の実施形態においては、開封誘導線6が、水平誘導線6aとこれよりも下向きに伸びる左右両端の端部誘導線6bとからなるので、開封誘導線最下点6eは、端部誘導線の先端6cであり、開封誘導線最上点6fは、水平誘導線6aに一致する。
【0036】
開封ノッチ7が、この開封誘導線高さhの範囲に存在することにより、包装袋を開封する段階において、開封ノッチ7から出発した包材の裂け目は、端部誘導線6bに到達し、それ以降は、端部誘導線6b〜開封誘導線6aへと走る。その結果、開封操作が円滑になされ、開封後の包装袋の切り口もきれいなものとなる。
【0037】
実際の開封ノッチ7は、開封ノッチ予定位置7aに対して、多少位置がばらつくが、このばらつきを見込んだ位置に開封ノッチ予定位置7aを設定し、また開封誘導線高さhを、このばらつきの幅よりも大きくすることにより、開封ノッチ7を開封誘導線高さhの範囲内に納めることが可能となる。通常開封ノッチ7の位置のばらつきは、縦方向でプラスマイナス1mm程度である。なお、開封ノッチ7は、Iノッチ、Uノッチ、Vノッチ等のいずれでもよい。
【0038】
次に、図3に示したように、包材を縦にした時に開封ノッチ7(図では開封ノッチ予定位置7a)の先端から水平に引いた線と、端部誘導線6bとが交わる角度θを、10°以上80°以下とすることにより、開封ノッチ7から出発した包材の裂け目がより確実に端部誘導線6bに到達し、開封誘導線6に沿って裂け目が走りやすくなる。角度θの、より好ましい値としては、20°以上70°未満であり、40°以上65°未満が最も好ましい。
【0039】
図3に示したように、この実施態様においては、端部誘導線の先端6cは、背貼りシール予定部3aに到達しており、最終的には背貼りシール部3に取り込まれる位置にある。端部誘導線の先端6cが、背貼りシール部3に到達していると、開封ノッチ7から出発した包材の裂け目は、より確実に端部誘導線6bに到達し、開封誘導線6に沿って裂け目が走りやすくなる。
【0040】
また、前記包材の開封誘導線を含む垂直方向の破断強度が5N/15mm以上であれば、包材の流れ方向の強度が保たれ、包材が製造工程、使用時において開封線を発端とした破断、ピンホール、バリア性低下、局所的な伸びを発することなく、安定した物性を保ちながら製造、使用することが出来る。該破断強度が5N/15mm未満であると、製袋加工時のテンションにより破断が発生する等、後加工適性が得られないという問題が生じる。
【0041】
また、前記包材の開封誘導線に沿った引裂き強度が、JIS K−7125 C法による測定で、0.01N〜2Nであれば、他方向に曲がることなく、またシーラント層の伸びによる引裂き強度過剰になることなく、適度な強度で誘導線に沿った綺麗な開封を行なうことが可能である。該引裂き強度が2Nを超えると、開封誘導線に実開封線を誘導できないという問題が生じる。また、0.01N未満であると、後加工適性、流通適性等の問題が生じる。
【0042】
また、前記開封誘導線の背貼りシール部の対面略中央位置に開封誘導線切り残し部6‘を設けることにより、更に包材の特に誘導線中央部の強度を保ち、包材が製造工程、使用時において開封誘導線を発端とした破断、ピンホール、バリア性低下、局所的な伸びを発することなく、安定した物性を保ちながら製造、使用することが出来る。
【0043】
前記開封誘導線切り残し部6‘を誘導線中央部に配置する意味合いは、背貼りシール部の開封用ノッチから開封する際、裂け目誘導途中に開封誘導線切り残し部6’を設けた場合、誘導線から外れてしまう。これに対し、開封最終点では切り目を誘導する必要はない為、開封誘導線のその延長線上の略中央部に開封誘導線切り残し部6’を配置するものである。但し、帽子部を包材本体から切り取る際、開封最終点に設けた開封誘導線切り残し部の巾を底辺とする2等辺三角形状の切り残し片が包材本体に残ることから、特に口を直接近づけて喫食するスティック状食品の場合は、開封誘導線切り残し部の片が口に入る等の不具合が発生する。このことから、開封誘導線切り残し部6’の巾は15mm以下、望ましくは5mm以内であることが望ましい。
【0044】
また、包材2が少なくとも外層と最内層にシーラント層を有する積層体からなる包装袋1に、該外層をレーザー加工(アブレーション)にて前記開封誘導線を形成することにおいて、特に最内層のみを切り残すことにより、開封時の切れ性がよくなる。
【0045】
しかしながら、最内層のみを切り残すことは、該外層に隣接するシーラント層が熱ダメージを受け、開封誘導線部の強度が低下する問題が発生する。この問題に対しては、最内層の前記シーラント層として、融点が110℃以上の樹脂を用いることで、熱ダメージを低減することが出来、開封誘導線部の強度の低下を改善することができる。
【0046】
なお、最内層のシーラント層にアルミ等の金属層を積層した構成では、金属層がレーザー光を反射することから、最内層のシーラント層が熱ダメージを受けることがないので、シーラント層に融点の制約はなく、加工上適性なヒートシール性を有するものが使用できる。
【0047】
また、前記開封誘導線をレーザー加工法により形成することにおいて、そのインキが含有する顔料や樹脂組成によっては、レーザー吸収時、インキ成分の昇華によるCOガスが発生し、誘導線周辺のラミネート部分が局所的に浮いた結果、誘導線の追随適性が大きく低下する。ガスの発生量については、特にCOレーザーの波長を吸収し易いウレタン樹脂や、熱エネルギーを吸収し易く炭素を多く含むカーボンブラック顔料を含むインキ層で上記の問題が発生する。これに対し、該インキ積層領域と交差する該開封誘導線を総長さの30%以下に限定することで、追随適性を改善するものである。該インキ積層領域と交差する該開封誘導線の総長が30%を越えると、誘導不適の問題が生じる。この交差する長さ比率について、望ましくはベタ刷り等インキ積層領域が一箇所に結集して誘導線と交差するのではなく、エンドレス柄の様に全域に渡り細かいインキ積層領域が分布していることが望ましい。より望ましくは交差する長さの比率は10%以下である。
【0048】
ここで表現される主要な成分とは、インキ層重量%において50%以上含むことであり、特に顔料%が50%以上含まれる隠蔽用白インキ等では、無機顔料として使用される酸化チタンの耐熱性が高い為、昇華ガスが発生しにくく、誘導線とインキ層の交差長さの限定はない。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例をもってより具体的に本発明を説明する。
【0050】
<実施例1>
厚さ12μm、720mm巾の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、黒色顔料の含有率が20%の墨インキを用いて、交差比率が10%になるようにグラビア印刷を施した。また、絵柄の製品ピッチは175mmとした。その後、上記PETフィルムの印刷面と、厚さ20μm、720mm巾、融点120℃の無延伸ポリプロピレン(CPP)とを、ドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介してドライラミネーション法により積層し包材を得た。
【0051】
次に、上記包材に炭酸ガスレーザー加工機を用いて巾方向に、図4のように開封誘導線を、略中央部に巾5mmの開封誘導線切り残し部を設けて形成した。その後、140mm巾となるようにスリット加工を施した。開封誘導線の詳細は、図3に示した通りである。
【0052】
次に、背貼りシール部の巾が10mm、天地サイズが175mmとなる、図1に示したようなピロー包装袋を作製し、ピローに対して巾方向に略水平に延びた水平誘導線と端部誘導線先端の間、
すなわち開封誘導線高さの範囲内に位置するよう、開封きっかけの為のIノッチを設けた。
【0053】
<実施例2>
厚さ12μm、720mm巾の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、白色顔料の含有率が40%の白インキを用いて、交差比率が60%になるようにグラビア印刷を施した。その後、上記PETフィルムの印刷面と、厚さ30μm、720mm巾、融点120℃の無延伸ポリプロピレン(CPP)とを、ドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介してドライラミネーション法により積層し包材を得た。
【0054】
次に、上記包材に炭酸ガスレーザー加工機を用いて巾方向に、図4のように開封誘導線を、略中央部に巾8mmの開封誘導線切り残し部を設けて形成した以外は、実施例1と同様にしてピロー包装袋を作製した。
【0055】
<実施例3>
厚さ15μm、720mm巾の二軸延伸ポリアミド(Ny)フィルムと、アルミ蒸着を施した厚さ12μm、720mm巾の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとを、ドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介してドライラミネーション法により積層し外層材を得た。
【0056】
次に、上記外層材のPET側と、厚さ100μm、巾720mm,融点110℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムとを、ドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介してドライラミネーション法により積層し包材を得た。
【0057】
次に、上記包材に炭酸ガスレーザー加工機を用いて巾方向に、図4のように開封誘導線を、略中央部に巾2mmの開封誘導線切り残し部を設けて形成した以外は、実施例1と同
様にしてピロー包装袋を作製した。
【0058】
<実施例4>
厚さ12μm、720mm巾の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、白色顔料の含有率が40%の白インキと赤色顔料の含有率が20%の赤色インキを用いて、100%重ね合わせてグラビア印刷を施した。
【0059】
次に、上記PETフィルムの印刷面と、厚み12μm、巾720mmのアルミ箔とを、ドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介して積層し、更にその後、前記アルミ箔面と厚さ30μm、巾720mm、融点102℃の低密度ポリエチレン(LDPE)とをドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介して積層し包材を得た。
【0060】
次に、上記包材に炭酸ガスレーザー加工機を用いて巾方向に、図4のように開封誘導線を、中央部の切り残し部なしで形成した以外は、実施例1と同様にしてピロー包装袋を作製した。
【0061】
<比較例1>
実施例1と同様にして包材を得た。
【0062】
次に、上記包材に炭酸ガスレーザー加工機を用いて巾方向に、図4のように開封誘導線を、開封誘導線切り残し部なしで形成した。その後、140mm巾となるようにスリット加工を施した。開封誘導線の詳細は、図3に示した通りである。
【0063】
次に、背貼りシール部の巾が10mmとなる、図1に示したようなピロー包装袋を作製し、ピローに対して巾方向に略水平に延びた水平誘導線と端部誘導線先端の間、すなわち開封誘導線高さの範囲内に位置するよう、開封きっかけの為のIノッチを設けた。
【0064】
<比較例2>
厚さ12μm、720mm巾の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、黒色顔料の含有率が20%の墨インキを用いて、交差比率が10%になるようにグラビア印刷を施した。その後、上記PETフィルムの印刷面と、厚さ30μm、720mm巾、融点100℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムとを、ドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介してドライラミネーション法により積層し包材を得た。
【0065】
次に、上記包材に炭酸ガスレーザー加工機を用いて巾方向に、図4のように開封誘導線を、略中央部に巾5mmの開封誘導線切り残し部を設けて形成した以外は、実施例1と同様にしてピロー包装袋を作製した。
【0066】
<比較例3>
厚さ12μm、720mm巾の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、黒色顔料の含有率が20%の墨インキを用いて、交差比率が50%になるようにグラビア印刷を施した以外は、実施例1と同様にしてピロー包装袋を作製した。
【0067】
<比較例4>
厚さ12μm、720mm巾の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、白色顔料の含有率が40%の白インキと赤色顔料の含有率が20%の赤色インキを用いて、100%重ね合わせてグラビア印刷を施した。
【0068】
次に、上記PETフィルムの印刷面と、厚み12μm、巾720mmのアルミ箔とを、
ドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介して積層し、更にその後、前記アルミ箔面と厚さ30μm、巾720mm、融点100℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムとをドライラミネート接着剤A616(三井化学社製)を介して積層し包材を得た。
【0069】
次に、上記包材に炭酸ガスレーザー加工機を用いて巾方向に、図4のように開封誘導線を、開封誘導線切り残し部なしで形成した以外は、実施例1と同様にしてピロー包装袋を作製した。
【0070】
<包装袋の評価>
実施例1〜4および比較例1〜4で得られたピロー包装袋について、破断強度、引裂強度、開封誘導線加工部の外観および開封適性を以下の方法で測定、評価し、その結果を表1に示した。
【0071】
[破断強度の測定] JIS K−7161
【0072】
[引裂強度の測定] JIS K−7125
【0073】
[開封誘導線加工部の外観評価]
ピンホール :ピンホールチェック液を誘導線加工部に塗布して液のしみ出しを確認。
○はしみ出しなし、×はしみ出しありで評価判定。
ピッチ伸び :製袋前の状態で、製品ピッチ当りの長さを測定。
○は175mm±1mm以内、×は±1mm以外で評価判定。
【0074】
[開封適性評価] :ピロー包装袋をIノッチ(I形の切り口)より開封し、
○は開封誘導線に沿って開封、×は開封誘導線から大きく外れる。
【0075】
【表1】

【0076】
<比較結果>
以下に、実施例と比較例の比較的結果について説明する。
実施例1〜4で得られた実施例品は、比較例1〜4で得られた比較例品に比べて、開封誘導線加工部の外観及び開封適性評価においていずれも良好な結果を示した。
【符号の説明】
【0077】
1・・・・包装袋
2・・・・包材
3・・・・背貼りシール部
3a・・背貼りシール予定部
4・・・・ボトムシール部
5・・・・トップシール部
6・・・・開封誘導線
6a・・水平誘導線
6b・・端部誘導線
6c・・端部誘導線の先端
6d・・開封誘導線マージン
6e・・開封誘導線最下点
6f・・開封誘導線最上点
6‘・・・開封誘導線切り残し部
h・・・・開封誘導線高さ
θ・・・・開封ノッチの先端から水平に引いた線と端部誘導線とが交わる角度
7・・・・封ノッチ
7a・・開封ノッチ予定位置
8・・・・包材巾
9・・・・包材側端
10・・・スリット予定位置
11・・・レジスターマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体からなる包材の両側端部を合掌状に熱接着して背貼りシール部を形成し、底部および天部をシールしてなる筒状構造を有する包装袋であって、前記背貼りシール部の所定部位に開封のきっかけとなる開封用ノッチと、包装袋の略水平方向への引裂きを誘導する開封誘導線を有し、該包材の垂直方向の破断強度が、JIS K−7161による測定で5N/15mm以上であることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記包材の前記開封誘導線に沿った引裂き強度が、JIS K−7125 C法による測定で、0.01N〜2Nであることを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記開封誘導線が、背貼りシール部の対面略中央位置に開封誘導線切り残し部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記ヒートシール性樹脂層が、少なくとも融点が110℃以上の樹脂から構成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記開封誘導線が、レーザー加工法により形成され、且つ、前記開封誘導線切り残し部が最内層のヒートシール性樹脂層のみであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の包装袋。
【請求項6】
前記積層体の外層材にウレタン樹脂および顔料からなる厚さ1μm以上のインキ層が設けられ、該インキ層を設けた領域と交差する該開封誘導線の領域が、該開封誘導線の総長さの30%以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の包装袋。
【請求項7】
印刷を施した包材原反にレーザー加工法によって開封誘導線を形成する工程、印刷を施した包材原反を所定巾にスリットする工程、背貼りシール部を形成し、開封ノッチを設ける工程を少なくとも含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装袋の製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−131524(P2012−131524A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284562(P2010−284562)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】