説明

化合物、ラジカル重合開始剤、重合性組成物、および重合物の製造方法

【課題】高感度なラジカル重合開始剤として機能しうる新規α−アミノアセトフェノン化合物およびそれを用いた硬化性組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。一般式(1)


(式中、R1〜R11は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、アルキル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、アルケニル基、アシル基、またはアミノ基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なラジカル重合開始剤、重合性組成物、および該重合性組成物を使用した重合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、エネルギー線、特に光の照射によりフリーラジカルを効率よく発生し、発生したラジカルを利用した重合反応あるいは架橋反応により重合性組成物を短時間に確実に重合させて良好な物性を有する重合物を得ることが可能な材料と方法に関し、さらには、成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合レジン、印刷インキ、インクジェットインキ、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、カラーフィルター用レジスト、ブラックマトリクス用レジスト、液晶用フォトスペーサー、リアプロジェクション用スクリーン材料、光ファイバー、プラズマディスプレー用リブ材、ドライフィルムレジスト、プリント基板用レジスト、ソルダーレジスト、半導体用フォトレジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト、エッチングレジスト、マイクロレンズアレー、絶縁材、ホログラム材料、光学スイッチ、導波路用材料、オーバーコート剤、粉末コーティング、接着剤、粘着剤、離型剤、光記録媒体、粘接着剤、剥離コート剤、マイクロカプセルを用いた画像記録材料のための組成物、各種デバイスなどの分野において良好な物性を持った重合物を得るための新規なラジカル重合開始剤、重合性組成物および該重合性組成物を使用した重合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UV光の照射によって、アクリレート等の重合を引き起こす光重合開始剤は広い分野で用いられており、市販の光重合開始剤については、フォトポリマー懇話会編、「感光材料リストブック」、55〜72頁、1996年(ぶんしん出版)などにまとめられている。
【0003】
近年、これら市販の光重合開始剤を上回る高い感度を持った光重合開始剤の研究が活発に行われており、その例として、α−アミノアセトフェノン誘導体がある(特許文献1)。上記誘導体が、フェニル基の4位にイオウ原子もしくは酸素原子を含有する置換基を有する時、該誘導体は、特に例えば、UV硬化性印刷インクのような顔料を含む光硬化系の光開始剤として適当であることが知られている(特許文献2、3)。フェニル基の4位にアミノ基を有するα−アミノアセトフェノン誘導体は芳香族カルボニル化合物類の光増感剤と合わせて使用されることも知られている(特許文献4)。上記α−アミノアセトフェノン誘導体のフェニル基がN−置換カルバゾール基であるα−アミノケトン誘導体も知られている(特許文献5)。上記α−アミノアセトフェノン誘導体を含む重合性組成物は、少ない光照射量で硬化し得る高感度な重合性組成物であることが知られている。しかし、近年のコストダウンや生産性の向上の観点から、より短時間でより少ない光照射量で硬化し得る高感度な重合性組成物が求められている中にあっては、上記α−アミノアセトフェノン誘導体と芳香族カルボニル化合物類の光増感剤とを合わせて使用した系でさえ、新しく提案される様々なプロセスに対応するには感度が十分とはいえなかった。そこで、高感度な光開始剤として、α位に少なくとも1種のアリル基もしくはアルアルキル基(アリールアルキル基)を含有するα−アミノアセトフェノンを含む重合性組成物が提案された(特許文献6)。また、高感度な光開始剤として、同一分子内に2つの官能基を含有するα−アミノアセトフェノン誘導体も提案された。同一分子内に2つの官能基を含有するα−アミノアセトフェノン誘導体は、高い活性度を示すだけでなく、さらに、揮発性物質を存在させないことも知られている(特許文献7)。しかし、これらのα位に少なくとも1種のアリル基もしくはアルアルキル基を含有するα−アミノアセトフェノン誘導体や同一分子内に2つの官能基を含有するα−アミノアセトフェノン誘導体でさえも、露光領域の大面積化に代表されるような、新しく提案される様々なプロセスに対応するには感度が十分とはいえず、重合開始剤のさらなる高感度化が求められている。
【0004】
また、近年さらなる高感度化を図るために、カルバゾール骨格を有するα−アミノアセトフェノンが提案されている(特許文献8、9)。しかし、高感度化をなし得つつ、低黄変性、種々の溶剤やモノマーに対する高い溶解性、臭気低減など、その他の特性をも高いレベルで満たす材料は未だ存在しえず、重合開始剤の多面的な開発が依然として求められている。
【0005】
【特許文献1】特開昭54−99185号公報
【特許文献2】特開昭58−157805号公報
【特許文献3】特開昭59−167546号公報
【特許文献4】特開昭60−84248号公報
【特許文献5】特開昭61−21104号公報
【特許文献6】特開昭63−264560号公報
【特許文献7】特表2002−530372号公報
【特許文献8】特開2006−206799号公報
【特許文献9】特開2008−38089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エネルギー線、特に光の照射により活性なラジカルを効率よく発生し、ラジカル重合性化合物を短時間に重合させうる高感度なラジカル重合開始剤として機能しうる新規α−アミノアセトフェノン化合物およびそれを用いた硬化性組成物を提案することにある。さらに感度だけではなく作業時の負荷を低減すべく、低臭気性かつ高溶解性を併せ持ち、なおかつ低黄変性に優れたラジカル重合開始剤及びそれを用いた重合組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の問題点を考慮し解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される化合物に関する。
【0008】
一般式(1)
【化1】

【0009】
(式中、R1〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換の複素環チオ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアシル基、または置換もしくは未置換のアミノ基を表す。)
【0010】
また、本発明は、上記化合物を含んでなるラジカル重合開始剤に関する。
【0011】
また、本発明は、上記ラジカル重合開始剤(A)とラジカル重合性化合物(B)とを含んでなる重合性組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、上記重合性組成物に250nmから450nmの波長領域の光を含むエネルギー線を照射して重合させる、重合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物は、アリールカルボニル基および、エトキシエチル基によって置換されたカルバゾール基を有することを特徴とするα−アミノアセトフェノン化合物であり、エネルギー線、特に250nmから450nmの波長領域に良好な吸収特性を有するようになるとともに、該波長領域の光照射に対して、活性なラジカルを効率よく発生する。したがって、ラジカル重合開始剤として著しく良好な効果を有する化合物を提供することができた。そのため、本発明の化合物を使用すれば、従来公知のα−アミノアセトフェノン誘導体の重合開始剤から発生するラジカルを利用した重合反応、架橋反応などをより短時間に確実に実現することが可能となり、結果としてこれらの反応を応用した各種用途の大幅な高感度化や特性の向上を実現することが可能となった。また、本発明の化合物をラジカル重合開始剤(A)として用いることで、良好な特性を持った硬化性組成物を提供することができ、例えば、インキ、塗料、感光性印刷板、プルーフ材料、フォトレジスト、ホログラム材料、封止剤、オーバーコート材、光造形用樹脂、接着剤等の分野において実用的なオリゴマーやポリマーを工業的に提供し、良好な特性を持った硬化物を得るための、ラジカル重合開始剤およびそれを用いた重合性組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、詳細にわたって本発明の実施形態を説明する。
【0015】
まず、本発明のラジカル重合開始剤(A)について説明する。本発明のラジカル重合開始剤(A)は、一般式(1)で表記される、アリールカルボニル基およびエトキシエチル基によって置換されたカルバゾール基を有するα−アミノアセトフェノン構造を有することが特徴である。また、アリールカルボニル基によって置換されたカルバゾール基を導入することにより、本発明の化合物は250nmから450nmの波長領域に好適な光の吸収特性を持つことができ、本発明の化合物は該波長領域の光照射に対して、非常に効率的に分解するため、その結果、多量のラジカルを効率的に発生する高感度な材料として機能することが可能となっている。
【0016】
さらに、エトキシエチル基を有することで、種々の溶剤やモノマーに対する高い溶解性を持つことができる。
【0017】
一般式(1)
【化2】

【0018】
(式中、R1〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換の複素環チオ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアシル基、または置換もしくは未置換のアミノ基を表す。)
本発明の、ラジカル重合開始剤(A)の具体例の1つを化合物(1)として示した。
【0019】
化合物(1)
【化3】

【0020】
また、化合物(1)のアセトニトリル中の吸収スペクトルを図1に示した。また、比較化合物として従来のα−アミノアセトフェノン誘導体、化合物(2)の吸収スペクトルも併せて図1に示した。
【0021】
化合物(2)
【化4】

【0022】
図1からわかるように、化合物(1)は、化合物(2)に比べて、250から450nmの波長領域に満遍なく吸収特性を持っている。そのため、化合物(1)は化合物(2)に比べて、250から450nmの波長領域の照射光をより多く吸収することができる。
【0023】
また、本発明のラジカル重合開始剤である化合物(1)は、例えば水銀ランプの輝線の1つに相当する365nmにおいてはモル吸光係数が約4900である比較的透明な材料であるが、該波長の光を照射した場合、α−アミノアセトフェノン誘導体(2)を単独または増感剤を併用して使用した場合を大幅に凌駕するラジカル発生剤として革新的な機能を有する材料である。
【0024】
現時点では、光照射に対する大幅な高感度化を実現している機構の詳細は明らかではないが、光照射に対する大幅な高感度化を実現している理由として、以下の2点を考えている。1点目は、ラジカル重合開始剤(A)に対して紫外線領域の光を照射すると、励起からラジカル発生へのプロセスが、公知のα−アミノアセトフェノン誘導体に比べて、高効率に行われていることである。2点目は、本発明の化合物の吸収特性である。光照射する光源の波長領域に満遍なく吸収特性を持っているため、ラジカルを発生するために必要な光エネルギーを大量に吸収できると考えている。
【0025】
本発明のラジカル重合開始剤(A)からラジカルを発生するために使用するエネルギー線源は特に限定されないが、特に好適な感度を発現する250nmから450nmの波長領域の光を照射できる光源が好ましく、上記波長領域の光と同時に他のエネルギー線を発していても良い。特に好ましい光源としては、250nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源であり、具体例としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、重水素ランプ、蛍光灯、Nd−YAG3倍波レーザー、He−Cdレーザー、窒素レーザー、Xe−Clエキシマレーザー、Xe−Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザー等の250nmから450nmの波長領域に発光波長を有するレーザーも好適なエネルギー線源として使用することができる。本発明の重合開始剤(A)はいずれも250nmから450nmの波長領域に好適な吸収を有しており置換基によって吸収特性がやや異なるが、上記した光源を適宜選択することにより、非常に高感度なラジカル重合開始剤として機能することが可能である。また、これらの光源は適宜、フィルター、ミラー、レンズ等の光学機器を介して照射することも可能である。
【0026】
次に、本発明のラジカル重合開始剤(A)の構造について詳細に説明する。
【0027】
本発明のラジカル重合開始剤(A)は、その特性を阻害しない範囲において、一般式(1)に示したように、各種の置換基を導入することが可能である。置換基の導入により、本発明のラジカル重合開始剤(A)は吸収極大波長や透過率などのエネルギー線の吸収特性、併用する樹脂や溶剤に対する溶解度を適当に調整して用いることができる。
【0028】
一般式(1)中の置換基R1からR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換の複素環チオ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアシル基、または置換もしくは未置換のアミノ基を表す。
【0029】
ここで、置換基R1からR11におけるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
【0030】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換のアルキル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基、または炭素数2から18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基が挙げられる。炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、tert−オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4−デシルシクロヘキシル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数2から18であり、場合により−O−の1個以上により中断されている直鎖状、分岐鎖状アルキル基の具体例としては、−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−(CH2−CH2−O)n−CH3(ここでnは1から8である)、−(CH2−CH2−CH2−O)m−CH3(ここでmは1から5である)、−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH3−、−CH2−CH−(OCH3)2等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
炭素数2から18であり場合により−O−の1個以上により中断されている単環状または縮合多環状アルキル基の具体例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化5】

【0033】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換のアルコキシル基としては、炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基、または炭素数2から18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基が挙げられる。炭素原子数1〜18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ボロニルオキシ基、4−デシルシクロヘキシルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数2から18であり場合により1個以上の−O−で中断されている直鎖状、分岐鎖状アルコキシル基の具体例としては、−O−CH2−O−CH3、−O−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−O−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH3、−O−(CH2−CH2−O)n−CH3(ここでnは1から8である)、−O−(CH2−CH2−CH2−O)m−CH3(ここでmは1から5である)、−O−CH2−CH(CH3)−O−CH2−CH3−、−O−CH2−CH−(OCH3)2等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
炭素数2から18であり場合により−O−の1個以上により中断されている単環状または縮合多環状アルコキシル基の具体例としては、以下のようなものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
【化6】

【0036】
置換基R1からR11におけるアルキルチオ基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルキルチオ基が挙げられ、具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換のアリール基としては、炭素数6から24の単環または縮合多環アリール基が挙げられ、具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、9−アンスリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、1−アセナフチル基、2−フルオレニル基、9−フルオレニル基、3−ペリレニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,5−キシリル基、メシチル基、p−クメニル基、p−ドデシルフェニル基、p−シクロヘキシルフェニル基、4−ビフェニル基、o−フルオロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−カルボキシフェニル基、o−メルカプトフェニル基、p−シアノフェニル基、m−ニトロフェニル基、m−アジドフェニル基等が挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、炭素数4〜18の単環または縮合多環アリールオキシ基が挙げられ、具体例としては、フェノキシ基、1ーナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、5−ナフタセニルオキシ基、1−インデニルオキシ基、2−アズレニルオキシ基、1−アセナフチルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、アリール基と酸素原子が上記以外の位置で結合していてもよく、それらも本発明のR1、R2およびR3で表記される置換基の範疇に含まれる。
【0039】
置換基R1からR11におけるアリールチオ基としては、炭素数6〜18の単環状または縮合多環状アリールチオ基が挙げられ、具体例としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、9−アンスリルチオ基、9−フェナントリルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換の複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素原子数4〜24の芳香族あるいは脂肪族の複素環基が挙げられ、2−チエニル基、2−ベンゾチエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、3−チアントレニル基、2−チアンスレニル基、2−フリル基、2−ベンゾフリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、2−アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、3−フェニキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、チオキサントリル基、4−キノリニル基、4−イソキノリル基、3−フェノチアジニル基、2−フェノキサチイニル基、3−クマリニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換の複素環オキシ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状または縮合多環状複素環オキシ基が挙げられ、具体例としては、2−フラニルオキシ基、2−チエニルオキシ基、2−インドリルオキシ基、3−インドリルオキシ基、2−ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、2−カルバゾリルオキシ基、3−カルバゾリルオキシ基、4−カルバゾリルオキシ基、9−アクリジニルオキシ基等が挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
置換基R1からR11における複素環チオ基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、単環状または縮合多環状複素環チオ基が挙げられ、具体例としては、2−フリルチオ基、2−チエニルチオ基、2−ピロリルチオ基、6−インドリルチオ基、2−ベンゾフリルチオ基、2−ベンゾチエニルチオ基、2−カルバゾリルチオ基、3−カルバゾリルチオ基、4−カルバゾリルチオ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換のアルケニル基としては、炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状アルケニル基が挙げられ、それらは構造中に複数の炭素−炭素二重結合を有していてもよく、具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロペンタジエニル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換のアシル基としては、水素原子または炭素数1から18の直鎖状、分岐鎖状、単環状または縮合多環状の脂肪族が結合したカルボニル基、あるいは、炭素数6から18の単環状あるいは縮合多環状アリール基が結合したカルボニル基、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、炭素数4〜18の単環状あるいは縮合多環状複素環基が結合したカルボニル基が挙げられ、それらは構造中に不飽和結合を有していてもよく、具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、シンナモイル基、3−フロイル基、2−テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、9−アンスロイル基、5−ナフタセノイル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
置換基R1からR11における置換もしくは未置換のアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、sec−ペンチルアミノ基、tert−ペンチルアミノ基、tert−オクチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、シクロドデシルアミノ基、1−アダマンタミノ基、2−アダマンタミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、メチルイソブチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、アニリノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、o−トルイジノ基、m−トルイジノ基、p−トルイジノ基、2−ビフェニルアミノ基、3−ビフェニルアミノ基、4−ビフェニルアミノ基、1−フルオレンアミノ基、2−フルオレンアミノ基、2−チアゾールアミノ基、p−ターフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−フェニル−1−ナフチルアミノ基、N−フェニル−2−ナフチルアミノ基、N−メチルアニリノ基、N−メチル−2−ピリジノ基、N−エチルアニリノ基、N−プロピルアニリノ基、N−ブチルアニリノ基、N−イソプロピル、N−ペンチルアニリノ基、N−エチルアニリノ基、N−メチル−1−ナフチルアミノ基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
さらに、前述したアルキル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、アルケニル基、アシル基、アミノ基はさらに他の置換基で置換されていても良い。
【0047】
そのような置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシル基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基、メチルチオ基、tert−ブチルチオ基等のアルキルチオ基、フェニルチオ基、p−トリルチオ基等のアリールチオ基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基等の他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、トリメチルアンモニウミル基、ジメチルスルホニウミル基、トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
【0048】
以上述べたラジカル重合開始剤(A)として、特に好ましい具体例を以下に示すが、本発明の光重合開始剤の構造はそれらに限定されるものではない。
【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
【化13】

【0056】
本発明の一般式(1)で表される化合物およびラジカル重合開始剤(A)を得るための合成方法は特に限定されず、従来公知の化学反応、後処理方法、精製方法および分析方法を適宜、組み合わせることにより、容易に合成して構造確認することが可能である。α−アミノアセトフェノン誘導体の合成方法は、ヨーロッパ特許出願第3002号、特開昭58−157805号公報、特開昭63−264560号公報などに記載の方法などが挙げられ、これらに記載の合成に使用されている原料を適宜、置き換えることにより、本発明のラジカル重合開始剤を合成することが可能である。
【0057】
本発明のラジカル重合開始剤(A)はエネルギー線、特に250nmから450nmの波長領域の光照射により、非常に高感度なラジカル重合開始剤として機能するため、従来公知のα−アミノアセトフェノン誘導体系ラジカル重合開始剤を用いる重合反応、架橋反応などをより短時間に確実に実現することが可能となり、結果としてこれらの反応を応用した各種用途の大幅な高感度化や特性の向上を実現することが可能となる。以下に本発明のラジカル重合開始剤の利用方法について記述する。
【0058】
本発明のラジカル重合開始剤(A)とラジカル重合性化合物(B)とを含む重合性組成物はエネルギー線、特に250nmから450nmの波長領域の光の照射により、迅速かつ確実に硬化し、良好な特性を有する硬化物を得ることが可能な重合性組成物として使用することができる。
【0059】
本発明の重合性組成物に用いるラジカル重合性化合物(B)について説明する。本発明におけるラジカル重合性化合物(B)とは、分子中にラジカル重合可能な骨格を少なくとも一つ以上を有する化合物を意味する。またこれらは、いずれも常温、常圧で液体ないし固体のモノマー、オリゴマーないしポリマーの化学形態を持つものである。
【0060】
このようなラジカル重合性化合物(B)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸およびそれらの塩、エステル、酸アミドや酸無水物があげられ、さらには、ウレタンアクリレート、アクリロニトリル、スチレン誘導体、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタンなどがあげられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に、本発明におけるラジカル重合性化合物(B)の具体例をあげる。
【0061】
アクリレート類の例:
単官能アルキルアクリレート類の例:
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート。
【0062】
単官能含ヒドロキシアクリレート類の例:
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート。
【0063】
単官能含ハロゲンアクリレート類の例:
2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,6−ジブロモ−4−ブチルフェニルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチルアクリレート、2,4,6−トリブロモフェノール3EO付加アクリレート。
【0064】
単官能含エーテル基アクリレート類の例:
2−メトキシエチルアクリレート、1,3−ブチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、クレジルポリエチレングリコールアクリレート、p−ノニルフェノキシエチルアクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、グリシジルアクリレート。
【0065】
単官能含カルボキシルアクリレート類の例:
β−カルボキシエチルアクリレート、こはく酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート。
【0066】
その他の単官能アクリレート類の例:
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、モルホリノエチルアクリレート、トリメチルシロキシエチルアクリレート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性−2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート。
【0067】
二官能アクリレート類の例:
1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート、ポリエチレングリコール#300ジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジアクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールビス(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル)エーテル、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノベンゾエート、ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、水素化ビスフェノールAジアクリレート、EO変性水素化ビスフェノールAジアクリレート、PO変性水素化ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、PO変性ビスフェノールFジアクリレート、EO変性テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート。
【0068】
三官能アクリレート類の例:
グリセリンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ε−カプロラクトン変性トリアクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレートトリプロピオネート。
【0069】
四官能以上のアクリレート類の例:
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルテトラアクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)ホスフェート。
【0070】
メタクリレート類の例:
単官能アルキルメタクリレート類の例:
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート。
【0071】
単官能含ヒドロキシメタクリレート類の例:
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート。
【0072】
単官能含ハロゲンメタクリレート類の例:
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1H−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、2,6−ジブロモ−4−ブチルフェニルメタクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチルメタクリレート、2,4,6−トリブロモフェノール3EO付加メタクリレート。
【0073】
単官能含エーテル基メタクリレート類の例:
2−メトキシエチルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリプロピレングリコールメタクリレート、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレングリコールメタクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、クレジルポリエチレングリコールメタクリレート、p−ノニルフェノキシエチルメタクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、グリシジルメタクリレート。
【0074】
単官能含カルボキシルメタクリレート類の例:
β−カルボキシエチルメタクリレート、こはく酸モノメタクリロイルオキシエチルエステル、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−メタクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−メタクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−メタクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート。
【0075】
その他の単官能メタクリレート類の例:
ジメチルアミノメチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、トリメチルシロキシエチルメタクリレート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性−2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート。
【0076】
二官能メタクリレート類の例:
1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール#200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#300ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート、ポリエチレングリコール#600ジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジメタクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールビス(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)エーテル、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジメタクリレートモノベンゾエート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAジメタクリレート、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、PO変性ビスフェノールAジメタクリレート、水素化ビスフェノールAジメタクリレート、EO変性水素化ビスフェノールAジメタクリレート、PO変性水素化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、EO変性ビスフェノールFジメタクリレート、PO変性ビスフェノールFジメタクリレート、EO変性テトラブロモビスフェノールAジメタクリレート、トリシクロデカンジメチロールジメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジメタクリレート。
【0077】
三官能メタクリレート類の例:
グリセリンPO変性トリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリメタクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ε−カプロラクトン変性トリメタクリレート、1,3,5−トリメタクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレートトリプロピオネート。
【0078】
四官能以上のメタクリレート類の例:
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、オリゴエステルテトラメタクリレート、トリス(メタクリロイルオキシ)ホスフェート。
【0079】
アリレート類の例:
アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、イソシアヌル酸トリアリレート。
【0080】
酸アミド類の例:
アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン。
【0081】
スチレン類の例:
スチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシカルボニルスチレン、p−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン。
【0082】
他のビニル化合物の例:
酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなど。
【0083】
上記のラジカル重合性化合物(B)は、以下に示すメーカーの市販品として、容易に入手することができる。例えば、共栄社油脂化学工業(株)社製の「ライトアクリレート」、「ライトエステル」、「エポキシエステル」、「ウレタンアクリレート」および「高機能性オリゴマー」シリーズ、新中村化学(株)社製の「NKエステル」および「NKオリゴ」シリーズ、日立化成工業(株)社製の「ファンクリル」シリーズ、東亞合成化学(株)社製の「アロニックスM」シリーズ、大八化学工業(株)社製の「機能性モノマー」シリーズ、大阪有機化学工業(株)社製の「特殊アクリルモノマー」シリーズ、三菱レイヨン(株)社製の「アクリエステル」および「ダイヤビームオリゴマー」シリーズ、日本化薬(株)社製の「カヤラッド」および「カヤマー」シリーズ、(株)日本触媒社製の「アクリル酸/メタクリル酸エステルモノマー」シリーズ、日本合成化学工業(株)社製の「NICHIGO−UV紫光ウレタンアクリレートオリゴマー」シリーズ、信越酢酸ビニル(株)社製の「カルボン酸ビニルエステルモノマー」シリーズ、(株)興人社製の「機能性モノマー」シリーズ等が挙げられる。
【0084】
また、以下に示す環状化合物もラジカル重合性化合物(B)として挙げられる。
【0085】
三員環化合物の例:
ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・ケミストリー・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.)、第17巻、3169頁(1979年)記載のビニルシクロプロパン類、マクロモレキュラー・ケミー・ラピッド・コミュニケーション(Makromol.Chem.Rapid Commun.)、第5巻、63頁(1984年)記載の1−フェニル−2−ビニルシクロプロパン類、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・ケミストリー・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.)、第23巻、1931頁(1985年)およびジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・レター・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Lett.Ed.)、第21巻、4331頁(1983年)記載の2−フェニル−3−ビニルオキシラン類、日本化学会第50春期年会講演予稿集、1564頁(1985年)記載の2,3−ジビニルオキシラン類。
【0086】
環状ケテンアセタール類の例:
ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・ケミストリー・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Chem.Ed.)、第20巻、3021頁(1982年)およびジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・レター・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Lett.Ed.)、第21巻、373頁(1983年)記載の2−メチレン−1,3−ジオキセパン、ポリマー・プレプレプリント(Polym.Preprints)、第34巻、152頁(1985年)記載のジオキソラン類、ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス・ポリマー・レター・エディション(J.Polym.Sci.Polym.Lett.Ed.)、第20巻、361頁(1982年)、マクロモレキュラー・ケミー(Makromol.Chem.)、第183巻、1913頁(1982年)およびマクロモレキュラー・ケミー(Makromol.Chem.)、第186巻、1543頁(1985年)記載の2−メチレン−4−フェニル−1,3−ジオキセパン、マクロモレキュルズ(Macromolecules)、第15巻、1711頁(1982年)記載の4,7−ジメチル−2−メチレン−1,3−ジオキセパン、ポリマー・プレプレプリント(Polym.Preprints)、第34巻、154頁(1985年)記載の5,6−ベンゾ−2−メチレン−1,3−ジオセパン。
【0087】
さらに、ラジカル重合性化合物(B)は、以下に示す文献に記載のものも挙げることができる。例えば、山下晋三ら編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社)や加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」、(1985年、高分子刊行会)、ラドテック研究会編、赤松清編、「新・感光性樹脂の実際技術」、(1987年、シーエムシー)、遠藤剛編、「熱硬化性高分子の精密化」、(1986年、シーエムシー)、滝山榮一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)、ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、(2002年、シーエムシー)が挙げられる。
【0088】
本発明のラジカル重合性化合物(B)は、ただ一種のみ用いても、所望とする特性を向上するために任意の比率で二種以上混合したものを用いても構わない。
【0089】
本発明のラジカル重合開始剤(A)は、ラジカル重合性化合物(B)100重量部に対して0.01から60重量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0090】
本発明の重合性組成物は、さらに重合を促進する目的で、増感剤(C)を添加することが可能である。増感剤は、紫外から近赤外領域にかけての光に対する活性を高めるため、重合性の促進が必要な場合には、増感剤の添加が好ましい。
【0091】
本発明の重合性組成物と混合して併用可能な増感剤(C)としては、ベンゾフェノン類、カルコン誘導体やジベンザルアセトンなどに代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノンなどに代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ−ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体などが挙げられ、その他さらに具体例には大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の色素および増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す色素や増感剤が挙げられ、これらは必要に応じて任意の比率で二種以上用いてもかまわない。上記、増感剤の中でチオキサントン誘導体としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどを挙げることができ、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどを挙げることができ、クマリン類としては、クマリン1、クマリン338、クマリン102などを挙げることができ、ケトクマリン類としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
本発明の増感剤(C)は、ラジカル重合開始剤(A)100重量部に対して1から10000重量部の範囲で用いるのが好ましく、より好ましくは、2から5000重両部の範囲であり、さらに好ましくは、5から3000重両部の範囲である。
【0093】
さらに本発明の重合性組成物は、いわゆるアルカリ現像型のフォトレジスト材料として画像形成用に用いる等の目的のために、下記に示すカルボキシル基含有ポリマー(D)を添加して用いても良い。カルボキシル基含有ポリマー(D)はアルカリ水溶液に対する溶解性を有するため、本発明の光重合性組成物を用いて作成した膜を部分的に硬化すれば、アルカリ水溶液に対する溶解度の違いから、いわゆるネガ型レジストのパターンを形成することが可能である。ここでカルボキシル基含有ポリマー(D)とは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとアクリル酸との共重合体、メタアクリル酸エステルとメタアクリル酸とこれらと共重合し得るビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。これらの共重合体は単独であるいは2種以上混合しても差し支えない。
【0094】
ここで、メタアクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルへキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなどが挙げられる。
【0095】
メタアクリル酸エステルとメタアクリル酸とこれらと共重合し得るビニルモノマーとしては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、テトラヒドリフルフリルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、アクリルアミド、スチレンなどが挙げられる。
【0096】
またカルボキシル基含有ポリマー(D)は、ラジカル重合性化合物(B)100重量部に対して10から1000重量部の範囲で用いるのが好ましく、さらに10から500重量部の範囲で用いるのがより好ましい。
【0097】
また、本発明の重合性組成物はさらに感度向上の目的で他のラジカル重合開始剤と併用することが可能である。
本発明の重合性組成物と混合して併用可能な他のラジカル重合開始剤としては、特公昭59−1281号公報、特公昭61−9621号公報ならびに特開昭60−60104号公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号公報ならびに特開昭61−243807号公報記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号公報、特公昭44−6413号公報、特公昭47−1604号公報ならびにUSP第3567453号明細書記載のジアゾニウム化合物公報、USP第2848328号明細書、USP第2852379号明細書ならびにUSP第2940853号明細書記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号公報、特公昭37−13109号公報、特公昭38−18015号公報ならびに特公昭45−9610号公報記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号公報、特開昭59−140203号公報ならびに「マクロモレキュルス(MACROMOLECULES)」、第10巻、第1307頁(1977年)記載のヨードニウム化合物をはじめとする各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109851号明細書、ヨーロッパ特許第126712号明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.IMAG.SCI.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の金属アレン錯体、特開昭61−151197号公報記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(COORDINATION CHEMISTRY REVIEW)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号公報記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報記載のアルミナート錯体、特開平2−157760号公報記載のホウ酸塩化合物、特開昭55−127550号公報ならびに特開昭60−202437号公報記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物、特開平5−255347号公報記載のスルホニウム錯体またはオキソスルホニウム錯体、特開昭54−99185号公報ならびに特開昭63−264560号公報記載のアミノケトン化合物、特開2001−264530号公報、特開2001−261761号公報、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特表2004−534797号公報、USP3558309号明細書(1971年)、USP4202697号明細書(1980年)ならびに特開昭61−24558号公報記載のオキシムエステル化合物等が挙げられる。
【0098】
これらのラジカル重合開始剤は本発明のラジカル重合開始剤(A)100重量部に対して、10重量部以下で含有されるのが好ましい。
【0099】
本発明の重合性組成物は有機高分子重合体等のバインダーと混合し、ガラス板やアルミニウム板、その他の金属板、ポリエチレンテレフタレート等のポリマーフィルムに塗布して使用することが可能である。
【0100】
本発明の重合性組成物と混合して使用可能なバインダーとしては、ポリアクリレート類、ポリ−α−アルキルアクリレート類、ポリアミド類、ポリビニルアセタール類、ポリホルムアルデヒド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリビニルエステル類等の重合体、共重合体があげられ、さらに具体的には、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテート、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂その他、赤松清監修、「新・感光性樹脂の実際技術」、(1987年、シーエムシー)や「10308の化学商品」、657〜767頁(1988年、化学工業日報社)記載の業界公知の有機高分子重合体が挙げられる。
【0101】
また、本発明の重合性組成物は保存時の重合を防止する目的で熱重合防止剤を添加することが可能である。
【0102】
本発明の重合性組成物に添加可能な熱重合防止剤の具体例としては、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル置換ハイドロキノン、カテコール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジンなどをあげることができ、これらの熱重合防止剤は、ラジカル重合性化合物(B)100重量部に対して0.001から5重量部の範囲で添加されるのが好ましい。
【0103】
本発明の重合性組成物は、さらに重合を促進する目的で、アミンやチオール、ジスルフィドなどに代表される重合促進剤や連鎖移動触媒を添加することが可能である。連鎖移動剤の添加は、酸素による重合阻害を抑制し、高遮光下においても均一な光硬化反応が促進されることから、重合性の促進が必要な場合には連鎖移動剤の添加が好ましい。
【0104】
本発明の重合性組成物に添加可能な重合促進剤や連鎖移動触媒の具体例としては、例えば、N−フェニルグリシン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類、USP第4414312号明細書や特開昭64−13144号公報記載のチオール類、特開平2−291561号公報記載のジスルフィド類、USP第3558322号明細書や特開昭64−17048号公報記載のチオン類、特開平2−291560号公報記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類が挙げられ、特に限定されるものではないが、チオール化合物が好ましく、特に多官能チオール化合物が好ましい。
【0105】
連鎖移動剤として用いられるチオール基を有する化合物としては、分子内に少なくとも1つ以上のチオール基を有するものであれば特に限定されず、従来から重合性組成物に用いられているものの中から任意に選択して用いることができる。そのようなチオール基を有する化合物としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト5−メトキシベンゾチアゾール、5−メチル−1、3、4−チアジアゾール−2−チオール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1、2、4−トリアゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプトチアゾリン、オクタンチオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
特に好ましい多官能チオール化合物としては、チオール基を2個以上有する化合物が挙げられ、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1、4−ジメチルメルカプトベンゼン、1、4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1、4−ブタンジオールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、2、5−ヘキサンジチオール、2、9−デカンジチオール、1、4−ビス(1−メルカプトエチルベンゼン)、フタル酸ビス(1−メルカプトエチルエステル)、フタル酸ビス(2−メルカプトプロピルエステル)、フタル酸ビス(3−メルカプトブチルエステル)、フタル酸ビス(3−メルカプトイソブチルエステル)、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、1、4−ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、1、3−ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、1、2−ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、プロピレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、1、4−ブタンジオールビス(2−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトイソブチレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、1、4−ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトイソブチレート)、1、8−オクタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、1、8−オクタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、1、8−オクタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、2、4、6−トリメルカプト−S−トリアジン、2−(N、N−ジブチルアミノ)−4、6−ジメルカプト−S−トリアジンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
本発明において、これらの連鎖移動剤は、単独もしくは2種以上組み合わせて用いることが出来る。
【0108】
また、本発明の重合性組成物はさらに目的に応じて、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト等の酸素除去剤や還元剤、重合促進剤、カブリ防止剤、退色防止剤、ハレーション防止剤、蛍光増白剤、界面活性剤、着色剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、防カビ剤、熱重合防止剤、帯電防止剤、染料、有機および無機顔料、色素前駆体、磁性体やその他種々の特性を付与する添加剤と混合して使用しても良い。
【0109】
本発明の重合性組成物は、塗工や、膜形成を行う際の作業性向上の目的で、溶剤を添加して用いることが可能である。添加した溶剤は塗工後に加熱乾燥あるいは真空乾燥することにより実質的に除去することが可能である。本発明の重合性組成物に添加可能な溶剤の具体例としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0110】
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
【0111】
酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、等のエステル類、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル類;
【0112】
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることが出来る。
【0113】
上記した溶剤は単独あるいは2種以上を適宜混合して用いることが可能である。
【0114】
本発明の重合性組成物は重合反応に際して、紫外線や可視光線、近赤外線等、電子線等によるエネルギーの付与により重合し、目的とする重合物を得ることが可能であるが、エネルギーの付与をする光源として、250nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源が好ましい。250nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源の例としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、重水素ランプ、蛍光灯、Nd−YAG3倍波レーザー、He−Cdレーザー、窒素レーザー、Xe−Clエキシマレーザー、Xe−Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザーなどの各種光源が挙げられる。なお本明細書でいう、紫外線や可視光、近赤外線などの定義は久保亮五ら編「岩波理化学辞典第4版」(1987年、岩波)によった。
【0115】
故に、バインダーその他とともに基板上に塗布して各種インキ、インクジェットインキ、オーバーコートニス、各種刷版材料、フォトレジスト、電子写真、ダイレクト刷版材料、光ファイバー、ホログラム材料等の感光材料やマイクロカプセル等の各種記録媒体、さらには接着剤、粘着剤、粘接着剤、剥離コート剤、封止剤および各種塗料に応用することが可能である。
【実施例】
【0116】
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに、なんら限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、例中、部とは重量部を示す。
【0117】
まず、実施例および比較例に用いた化合物を表1に示し、本発明の化合物(1)、化合物(3)〜(20)について合成の実施例を示す。
【0118】
表1
【表1】

【0119】
【表1】

【0120】
【表1】

【0121】
【表1】

【0122】
【表1】

【0123】
実施例1
化合物(1)の合成
N−(2−エトキシエチル)−カルバゾールの合成
カルバゾール206.2gと、1−ブロモ−2−エトキシエタン200.0gと、40%NaOH水溶液800gと、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド11.4gとを加え、85℃に加熱して2時間撹拌した。その後、反応溶液を室温まで冷まし、酢酸エチルにて抽出した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、溶剤を溜去することで、N−(2−エトキシエチル)−カルバゾールを295.0g(収率99%)得た。
【0124】
N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−カルバゾールの合成
クロロホルム960mlと、塩化アルミニウム295.58gとを加えて0℃にて攪拌下、クロロホルム120mlにて溶解したN−(2−エトキシエチル)−カルバゾール295.0gを加えた後、クロロホルム1500mlに溶解したベンゾイルクロライド173.3gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃にて3時間攪拌した後、反応液を氷水4000g中に注ぎ、1時間攪拌した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、溶剤を溜去し、残留物をクロロホルム/酢酸エチル=20/1を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−カルバゾールを338.6g(収率80%)得た。
【0125】
N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−ブロモブタノイル)−カルバゾールの合成
クロロホルム560mlと、塩化アルミニウム210.92gとを加えて0℃にて攪拌下、クロロホルム280mlにて溶解したN−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−カルバゾール135.8gを加えた後、クロロホルム560mlに溶解した2−ブロモ−n−ブチリルブロマイド100.0gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、25℃にて3時間攪拌した後、反応液を氷水2000g中に注ぎ、1時間攪拌した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、溶剤を溜去し、残留物を、クロロホルムを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−ブロモブタノイル)−カルバゾールを182g(収率93%)得た。
【0126】
N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−ジメチルアミノブタノイル)−カルバゾールの合成
N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−ブロモブタノイル)−カルバゾール181.8gと、テトラヒドロフラン250mlと、ジメチルアミンの2mol/lテトラヒドロフラン溶液700mlとを加え、60℃で6時間攪拌した。析出固体を炉別し、溶剤を溜去した後、残留物をトルエン800mlで溶解した。このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、溶剤を溜去し、N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−ジメチルアミノブタノイル)−カルバゾールを167g(収率99%)得た。
【0127】
N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−アリルジメチルアンモニウムブロマイドブタノイル)−カルバゾールの合成
N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−ジメチルアミノブタノイル)−カルバゾール167gと、アセトニトリル630mlとを25℃にて攪拌しているところへ、アリルブロマイド80gを加えて、65℃で4時間攪拌した。その後、容量が200ml程度になるまで溶剤を溜去した後、この溶液をジエチルエーテル2500ml中に30分かけて滴下した。滴下終了後、析出物を濾取することで、N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−アリルジメチルアンモニウムブロマイドブタノイル)−カルバゾール176g(収率83%)を得た。
【0128】
化合物(1)の合成
N−(2−エトキシエチル)−3−ベンゾイル−3'−(2−アリルジメチルアンモニウムブロマイドブタノイル)−カルバゾール161gと、テトラヒドロフラン1000mlと、30%NaOH水溶液75gとを加えて、65℃で4時間攪拌した。その後トルエン200mlを加えて、30分攪拌した。このトルエン/テトラヒドロフラン溶液をイオン交換水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、乾燥剤をろ別した後、溶剤を溜去し、残留物を、トルエン/酢酸エチル=10/1を展開溶媒とするアルミナカラムクロマトグラフィーにより精製することで、化合物(1)99.9g(収率71%)を得た。
【0129】
実施例2
化合物(3)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをo−トルオイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(3)を得た。
【0130】
実施例3
化合物(4)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをp−トルオイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(4)を得た。
【0131】
実施例4
化合物(5)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをp−メトキシベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(5)を得た。
【0132】
実施例5
化合物(6)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをp−フルオロベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(6)を得た。
【0133】
実施例6
化合物(7)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをp−フェニルベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(7)を得た。
【0134】
実施例7
化合物(8)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを1−ナフトイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(8)を得た。
【0135】
実施例8
化合物(9)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをp−(n−ブチル)ベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(9)を得た。
【0136】
実施例9
化合物(10)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを3,5−ジメチルベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(10)を得た。
【0137】
実施例10
化合物(11)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを2,4,6−トリメチルベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(11)を得た。
【0138】
実施例11
化合物(12)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを3,5−ジメトキシベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(12)を得た。
【0139】
実施例12
化合物(13)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをp−シアノベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(13)を得た。
【0140】
実施例13
化合物(14)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをp−ニトロベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(14)を得た。
【0141】
実施例14
化合物(15)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(15)を得た。
【0142】
実施例15
化合物(16)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドをo−ニトロベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(16)を得た。
【0143】
実施例16
化合物(17)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを3,4,5−トリメトキシベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(17)を得た。
【0144】
実施例17
化合物(18)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを3−トリフルオロメチルベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(18)を得た。
【0145】
実施例18
化合物(19)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを3−トリフルオロメトキシベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(19)を得た。
【0146】
実施例19
化合物(20)の合成
合成例1のベンゾイルクロライドを2−ニトロ−6−メチルベンゾイルクロライドに置き替えた以外は、合成例1と同様の方法で、目的の化合物(20)を得た。
【0147】
上述の実施例1〜実施例19で合成した本発明の化合物の元素分析の結果を、表2として示した。
【0148】
表2
【表2】

【0149】
次に本発明の化合物を光重合開始剤(A)として用いた実施例を示す。
【0150】
(1)硬化性:実施例20〜38、比較例1〜16
ラジカル重合開始剤(A)を3重量部と、ラジカル重合性化合物(B)として、ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアリルフタレート樹脂)10重量部と、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート85重量部と、増感剤(C)を0または1重量部とを配合し、加熱溶融して塗工液を作製した。使用したラジカル重合開始剤(A)および増感剤(C)を表3に示す。この塗工液を、バーコーター(#3)を用いてペットフィルム上に塗工した。この塗工物に、紫外線照射後(高圧水銀灯160W/cm1灯)、綿布で擦って皮膜に傷がつかないコンベアスピードで判定した。その結果を表3に示す。尚、紫外線照射装置のコンベアスピード(m/分)の数字が大きい程、硬化性が良い。
【0151】
表3
【表3】

【0152】
本発明の化合物をラジカル重合開始剤として用いた光重合性組成物は、一般的に使用されているラジカル重合開始剤を用いた光重合性組成物と比較して、高い硬化性を有していることが明らかとなった(実施例20〜38、比較例1,2)。また、本発明と類似の化合物をラジカル重合開始剤として用いた光重合性組成物と比較して、高い硬化性を有していることも明らかとなった(比較例3〜10)。さらには、本発明の化合物をラジカル重合開始剤として用いた光重合性組成物は、一般的に使用されているラジカル重合開始剤と、増感剤とを併用したラジカル重合開始剤として用いた場合よりも、高い硬化性を有していることも明らかとなった(比較例11〜16)。
【0153】
(2)黄変性:実施例39〜57、比較例17〜32
ラジカル重合開始剤(A)を5重量部と、ラジカル重合性化合物(B)として、ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアリルフタレート樹脂)10重量部と、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート85重量部と、増感剤(C)を0または1重量部とを配合し、加熱溶融して塗工液を作製した。使用したラジカル重合開始剤(A)および増感剤(C)を表4に示す。この塗工液を、バーコーター(#3)を用いてペットフィルム上に塗工した。硬化性と同条件で硬化した塗工物をカットし、30人のパネラーが塗工物の黄変性を相対的に判定したものであり、1(不良)〜5(良好)の五段階で評価した。その結果を表4に示す。
【0154】
表4
【表4】

【0155】
本発明の化合物をラジカル重合開始剤として用いた光重合性組成物は、一般的に使用されているラジカル重合開始剤を用いた光重合性組成物と比較して、黄変性に優れることが明らかとなった。さらには、本発明の化合物をラジカル重合開始剤として用いた光重合性組成物は、一般的に使用されているラジカル重合開始剤と、増感剤とを併用したラジカル重合開始剤として用いた場合よりも、黄変性に優れることも明らかとなった。
【0156】
(3)臭気性:実施例58〜76、比較例33〜48
ラジカル重合開始剤(A)を5重量部と、ラジカル重合性化合物(B)として、ダップトートDT170(東都化成(株)製ジアリルフタレート樹脂)10重量部と、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート85重量部と、増感剤(C)を0または1重量部とを配合し、加熱溶融して塗工液を作製した。使用したラジカル重合開始剤(A)および増感剤(C)を表5に示す。この塗工液を、バーコーター(#3)を用いてペットフィルム上に塗工した。硬化性と同条件で硬化した塗工物を細かくカットしてガラス瓶に詰めて臭気を収集し、30人のパネラーが臭気性を相対的に判定し、1(不良)〜5(良好)の五段階で評価した。その結果を表5に示す。
【0157】
表5
【表5】

【0158】
本発明の化合物をラジカル重合開始剤として用いた光重合性組成物は、一般的に使用されているラジカル重合開始剤を用いた光重合性組成物と比較して、臭気性に優れることが明らかとなった。本発明の光重合性組成物が臭気性に優れる理由は、硬化後のラジカル重合開始剤やその分解物の揮発などが少ないためではないかと推測している。
【0159】
(4)溶解性:実施例77〜95、比較例49〜58
ラジカル重合開始剤(A)を10重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート90重量部とを配合し、80℃で24時間加熱溶融した。この溶融物を22℃で1週間保存した後、ラジカル重合開始剤(A)が析出していないかどうか、目視で確認した。その結果と使用したラジカル重合開始剤(A)および増感剤(C)を表6に示す。
【0160】
表6
【表6】

【0161】
本発明の化合物は、アクリルモノマーに対して、非常に溶解性に優れた化合物であることが明らかとなった。
【0162】
(5)総合評価
表7に、硬化性、黄変性、臭気性、溶解性に関する総合評価を示す。
【0163】
以下に、各評価項目の評価基準を示す。
(1)硬化性
○:コンベアスピード(m/分)が40以上。
×:コンベアスピード(m/分)が40未満。
(2)黄変性
○:相対的な判定値が4以上。
×:相対的な判定値が3以下。
(3)臭気性
○:相対的な判定値が5。
×:相対的な判定値が4以下。
(4)溶解性
○:析出物なし。
×:析出物あり。
【0164】
表7
【表7】

【0165】
本発明の化合物をラジカル重合開始剤として用いた光重合性組成物は、一般的に使用されているラジカル重合開始剤または、ラジカル重合開始剤と増感剤とを併用した光重合性組成物と比較して硬化性に優れることが明らかとなった。また、本発明の化合物をラジカル重合開始剤として用いた光重合性組成物は、一般的な光重合性組成物と比べて重合性組成物硬化後の着色や臭気を抑えることが可能であり、従来のラジカル重合開始剤を用いた光重合性組成物では困難であった、高硬化性、低黄変性、低臭気性、高溶解性、これら全ての要求を満たすことが明らかとなった。さらに、本発明の化合物に類似した構造を有する化合物を使用したとしても、これら全ての要求を満たすことはできないことも明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の化合物は、アリールカルボニル基および、エトキシエチル基によって置換されたカルバゾール基を有することを特徴とするα−アミノアセトフェノン化合物であり、エネルギー線、特に250nmから450nmの波長領域に良好な吸収特性を有するようになるとともに、該波長領域の光照射に対して、活性なラジカルを効率よく発生する。したがって、ラジカル重合開始剤として著しく良好な効果を有する化合物を提供することができた。そのため、本発明の化合物を使用すれば、従来公知のα−アミノアセトフェノン誘導体の重合開始剤から発生するラジカルを利用した重合反応、架橋反応などをより短時間に確実に実現することが可能となり、結果としてこれらの反応を応用した各種用途の大幅な高感度化や特性の向上を実現することが可能となった。本発明により、高感度化や特性向上が期待できる用途の例としては、重合あるいは架橋反応を利用した成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合レジン、印刷インキ、インクジェットインキ、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、カラーフィルター用レジスト、ブラックマトリクス用レジスト、液晶用フォトスペーサー、リアプロジェクション用スクリーン材料、光ファイバー、プラズマディスプレー用リブ材、ドライフィルムレジスト、プリント基板用レジスト、ソルダーレジスト、半導体用フォトレジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト、エッチングレジスト、マイクロレンズアレー、絶縁材、ホログラム材料、光学スイッチ、導波路用材料、オーバーコート剤、粉末コーティング、接着剤、粘着剤、離型剤、光記録媒体、粘接着剤、剥離コート剤、マイクロカプセルを用いた画像記録材料のための組成物、各種デバイスなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、本発明の化合物(1)と、従来のα−アミノアセトフェノン誘導体である化合物(2)のアセトニトリル中での吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
【化1】



(式中、R1〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシル基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換の複素環基、置換もしくは未置換の複素環オキシ基、置換もしくは未置換の複素環チオ基、置換もしくは未置換のアルケニル基、置換もしくは未置換のアシル基、または置換もしくは未置換のアミノ基を表す。)
【請求項2】
請求項1記載の化合物を含んでなるラジカル重合開始剤(A)。
【請求項3】
請求項2記載のラジカル重合開始剤(A)とラジカル重合性化合物(B)とを含んでなる重合性組成物。
【請求項4】
さらに増感剤(C)を含んでなる請求項3記載の重合性組成物。
【請求項5】
請求項4記載の重合性組成物に250nmから450nmの波長領域の光を含むエネルギー線を照射して重合させる、重合物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−143837(P2010−143837A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320377(P2008−320377)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】