説明

化合物の生物との相互作用をシミュレートするための方法

1以上の有効化合物の生物との相互作用を判断する方法は、A)1以上の物質を選択し、その生化学的特徴、親脂性、溶解性、たんぱく結合、分子サイズ、酸又は塩基のpKa値、代謝分解速度、能動トランスポータの速度定数で構成される系の特徴を分析し、B)該生物のコンパートメントを、a)哺乳類は、肺、末梢器官、動脈又は静脈の血管、血液から、b)植物は、木部、師部の流れ、根、葉、茎から選択し、C)コンパートメントから/への物質の輸送、分解、作用に関し、該過程を質量保存の式及び反応速度の式によりプログラムで記述し、D)静脈、経口、皮下投与の場合、質量保存式及び反応速度式により輸送過程をプログラムで記述し、該当する場合、生物の有効化合物の分解過程を記述し、E)ステップC)、D)で選択された式の系を組合せ、得られる連立微分方程式の系を数値計算し、F)選択コンパートメントでの有効化合物の濃度‐時間曲線を決定する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば哺乳類、虫、または植物などの生物における化合物の薬物動力学的および薬力学的挙動を計算するコンピュータ・プログラムに関する。生物における化合物の摂取、分配、代謝、および排出の速度および程度は、例えば、薬用有効化合物および作物保護剤の体内での作用に関してきわめて重要であり、あるいは毒物学的リスク評価のためにきわめて重要である。生理学的薬物動力学(PB‐PK)モデリングおよび薬力学(PD)モデリングなどのコンピュータ・プログラムが、化合物の生物との相互作用プロセスを記述するために適している。本発明は、例えば生物、物質、投与の種類、または作用の種類を記述する個々にカプセル化されたモジュールが動的に相互接続される複数レベル・アーキテクチャにもとづき、そのようなモデルをきわめて簡単に生成できるようにする。これらのモジュールを統合モデルへとリンクさせることによって、連立微分方程式(質量保存の式)の系が生成され、ソルバーによって数値的に解かれる。本発明の特有の利点は、モジュール式コンピュータ・プログラムの高い柔軟性にあり、これにより、多数の複雑な生理学的および生化学的シナリオを、きわめて簡単なやり方で生成することができる。この方程式系を生成するために必要な化学的、生物学的、生理学的、および解剖学的な入力パラメータは、1つ以上のリレーショナル・データベースに存在してもよく、あるいはグラフィカル・ユーザ・インターフェイスを介して入力されてもよい。
【背景技術】
【0002】
哺乳類[非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、]、虫[非特許文献4]、または植物[非特許文献5、非特許文献6]などのさまざまな生物について、多数のPB‐PKおよびPDモデルが文献に記載されている。このようなモデルは、生理学的および解剖学的情報ならびに物質特有の物理化学的および生化学的パラメータにもとづいて、化合物の挙動を記述するために成功裏に使用されている。現在の手順は、記述しようとする生物を複数の生理学的コンパートメントへと分割することにある。頻繁には、肝臓、筋肉、または肺などの個々の器官が、これらのコンパートメントに対応する。これらのコンパートメントが、例えば血液の流速などの生理学的パラメータ、ならびにそれらの水分、脂肪、およびたんぱく質の含有量によって特徴付けられる[非特許文献7]。上記の先行技術に詳しく説明されているとおり、生理学的モデルを得るため、これらのコンパートメントが、当該生物の解剖学的パラメータに一致させるべく質量保存の式によって互いに数値的にリンクされる。
【0003】
【非特許文献1】R. Kawai, M. Lemaire, J. L. Steimer, A. Bruelisauer, W. Niederberger, M. Rowland: Physiologically based pharmacokinetic study on a Cyclosporin derivative, SDZ IMM 125. J. Pharmacokin. Biopharm. 22, 327‐365(1994);
【非特許文献2】P. Poulin, F. P. Theil: Prediction of pharmacokinetics prior to in vivo studies. 1. Mechanism‐based prediction of volume of distribution. J. Pharm. Sci. 291, 129‐156(2002);
【非特許文献3】P. Poulin, F. P. Theil: Prediction of Pharmacokinetics prior to in vivo studies. II. Generic physiologically based pharmacokinetic models of drug disposition, J. Pharm. Sci. 91, 1358‐1370(2002)
【非特許文献4】R. Greenwood, M. G. Ford, E. A. Peace, D. W. Salt: The Kinetics of Insecticide Action. Part IV: The in vivo Distribution of Pyrethroid Insecticides during Insect Poisoning. Pestic. Sci. 30, 97‐121(1990)
【非特許文献5】N. M. Satchivi, E. W. Stoller, L. M. Wax, D. P. Briskin: A nonlinear dynamic simulation model for xenobiotic transport and whole plant allocation following foliar application. Pestic. Biochem. Physiol. 68, 67‐84(2000);
【非特許文献6】N. M. Satchivi, E. W. Stoller, L. M. Wax, D. P. Briskin: A nonlinear dynamic simulation model for xenobiotic transport and whole plant allocation following foliar application. Pestic. Biochem. Physiol. 68, 67‐84(2000)
【非特許文献7】R. Greenwood, M. G. Ford, E. A. Peace, D. W. Salt: The Kinetics of Insecticide Action. Part IV: The in vivo Distribution of Pyrethroid Insecticides during Insect Poisoning. Pestic. Sci. 30, 97‐121(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術によれば、この数学的な結合は固定であり、すなわち微分方程式が互いにハード・ワイヤード(hard‐wired)である。これはすなわち、モデルが、ひとたび生成されると、コンパートメントの数およびそれらの生理学的回路に関して固定されたままになるということである。本発明は、個々のパラメータに従って可変数のコンパートメントおよびモジュール(例えば、生物、物質、または投与の種類に関する)を動的に相互接続して、対応する生理学的モデルを自動的に生成し、次いで数値的に解く柔軟な方法を開発するという目的にもとづいている。
【0005】
この技術的課題は、新規なモジュール式のプログラミング法によって解決される。この方法は、互いに独立であり、それ自身において閉じており、かつさまざまな機能(例えば、物質の特性または投与の種類の定義、または検討対象の生物の生理機構の記述、など)を有しているモジュールのライブラリにもとづいている。これらのモジュールが全体モデルを与えるべく動的に組み合わせられるのは、プログラムの実行時間の間だけである。このようにして、本明細書に記載の方法は、さまざまな複雑なシナリオの柔軟な取り扱いを、微分方程式のレベルにおいて変更を実行する必要なく、初めて可能にする。
【0006】
モジュール式のプログラミングの考え方は、原理的には、他の適用分野において知られている(例えば、米国特許第5,930,154号明細書または国際公開第WO00/65523号パンフレットを参照されたい。)が、それらは今までのところ、薬物動力学または薬力学の問題には使用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の主題は、1つ以上の有効化合物の生物との相互作用を判断する方法であって、
A)少なくとも1つの物質を選択し、その生理学的および/または生化学的特徴、親脂性、溶解性、たんぱく結合、分子サイズ(分子量またはモル体積で表現される)、酸または塩基の場合のpKa値、代謝分解速度、および能動トランスポータの速度定数で構成されるシリーズからの特徴を分析するステップと、
B)当該生物の解剖学的および生理学的コンパートメントを、少なくとも、a)哺乳類の場合には、肺、末梢器官、好ましくは動脈および/または静脈である血管、あるいは血液のなかから、b)植物の場合には、木部および師部の流れ、ならびに根および/または葉および/または茎のなかから選択するステップと、
C)前記コンパートメントを、コンパートメントからの物質の輸送プロセスおよびコンパートメントへの物質の輸送プロセス、分解プロセス、ならびに作用プロセスに関して、当該プロセスを記述するための質量保存の式および反応速度の式によってコンピュータ・プログラムに記述するステップと、
D)静脈、経口、または皮下投与の場合に、質量保存の式および反応速度の式によってコンピュータ・プログラムに、輸送プロセスを記述し、該当する場合には生物の有効化合物の分解プロセスを記述するステップと、
E)ステップC)およびD)において選択された式の系を組み合わせ、得られる連立微分方程式の系を数値的に計算するステップと、
F)選択されたコンパートメントにおける有効化合物の濃度‐時間曲線を決定するステップと
を含む。
【0008】
上記生物は、好ましくは、ヒト、サル、イヌ、ブタ、ラット、またはマウスで構成されるグループからの哺乳類、あるいは虫とくにはイモ虫、あるいは植物を表わしている。
【0009】
好ましい実施の形態によれば、有効化合物が、静脈、経口、塗布、皮下、腹腔ルート、鼻または肺を介する吸入ルート、あるいは脳血管内(intracerebrovascular)ルートによって投与され(哺乳類の場合)、もしくは血リンパ内(intrahaemolymphatic)、塗布、あるいは給餌または強制飼養による経口ルートによって投与され(虫の場合)、もしくは葉摂取または根経由摂取による噴霧用混合物の形態で投与される(植物の場合)。
【0010】
生物を記述する生理学的パラメータが、時間依存性のパラメータであることを特徴とする方法が好ましい。
【0011】
この方法の好ましい実施の形態においては、パラメータのいくつかが、コンピュータ・システムにリンクされたデータベースから取得される。
【0012】
好ましい実施の形態においては、生理学的および解剖学的パラメータを、所定の統計的変動の範囲内で、乱数を使用して変化させることができる(集団動態(population kinetics))。
【0013】
異なる機能を有するモジュール、および物質の化学的または生物学的特徴を含んでおり、あるいは生物についての生理学的または解剖学的情報を含んでおり、あるいは投与の態様または作用の種類についての情報を含んでいる少なくとも2つのモジュールで構成される階層モデル・アーキテクチャが、コンピュータ・プログラムのために使用される方法が、とくに好ましい。
【0014】
この方法のとくに好ましい一変種は、生物についての複数のモデルが、とくには薬‐薬の相互作用、母親‐胎児モデル、または虫‐植物結合モデルをシミュレートするため、統合モデルへと組み合わせられることを特徴とする。
【0015】
本発明の核心は、微分方程式(DE)系の動的な生成およびその薬物動力学的および薬力学的問題への適用によるモジュール式シミュレーションの考え方の実現にある。この目的のためのシミュレーション・カーネルは、以下の機能を有する別個独立のモジュールのライブラリで構成される。
●化合物の物理化学特性の定義(例えば、親脂性、血漿たんぱく質との親和性、分子量)
●生物(哺乳類、虫、植物)の解剖学的および生理学的記述
●生物を構成している個々のコンパートメント(器官)の記述
●化合物の投与の種類の記述(例えば、哺乳類においては、静脈、経口、皮下、塗布、または吸入のルートによって投与され、虫の場合には、経口または塗布のルートによって投与され、植物の場合には、噴霧用混合物として投与されて葉で摂取され、あるいは根を介して摂取される)
●数値積分(numeric integration)のための時間ループの定義
●微分方程式系の数値積分(例えば、オイラー(Euler)またはルンゲ‐クッタ(Runge‐Kutta)の方法による)
●シミュレーション結果の保存(例えば、ファイルやデータベースなどに)
【0016】
これら個々のモジュールが、例えば市販のPCなどのコンピュータ・システムによって、プログラムの実行時間の間、階層的かつ所定のやり方で動的に相互接続される。その後、連立DEQ(質量保存の式)の系が自動的に生成され、数値積分によって解かれる。結果として、モデルが、当該生物の種々のコンパートメントについて各化合物の濃度‐時間曲線をもたらし、次いでこの曲線を、例えば薬理的作用を計算するといった他の目的に使用することができる。
【0017】
本発明の基となる最小のモデルは、少なくとも1つの物質モジュール、投与モジュール、生物モジュール、DEQビルダー、およびDEQ系のための数値ソルバーで構成され、例えば薬理的作用についてのモジュールなど、随意によるさらなるモジュールで構成される。
【0018】
物質モジュールは、挙動をシミュレートしようとする物質について、物理化学的および/または生化学的情報を含んでいる。例えばこの情報は、親脂性、例えば水または腸液などへの溶解性、例えば血漿タンパク質のたんぱく結合、分子サイズ(分子量またはモル体積で表現される)、酸または塩基の場合のpKa値、代謝分解速度、および能動トランスポータ(active tansporters)の速度定数(kinetic constants)、などについての値であってよい。これらのパラメータは、一般に、生体外での実験によって決定でき、あるいは例えば親脂性の場合など個々の場合において、例えばQSAR、HQSAR、またはニューロン・ネットワークを使用する公知の予測モデルによって、構造から直接計算することができる。
【0019】
生物モジュールは、物質の相互作用の対象である生物を特徴付けている生理学的および解剖学的情報を含んでいる。生物特有の情報は、とりわけ、個々のコンパートメントの体積、血流の体積流速、ならびに水、脂肪、及びたんぱく質の含有量であり(哺乳類および虫の場合)、あるいは植物の場合には、木部および師部の輸送速度、ならびにシンプラスト、アポプラスト、および液胞の体積である。これらの生理学的パラメータは、時間において一定であってよく、あるいは例えば成長プロセスまたは他の経時の生理学的変化を考慮に入れることができるよう、時間の関数であってよい。これらの生理学的および解剖学的パラメータは、多数の関連の生物について文献に公開されている。
【0020】
投与モジュールは、物質の投与の場所および時間推移についての情報を含んでいる。哺乳類について、薬学的有効化合物の投与の従来からの形態は、ボーラスまたは輸液の形態での静脈への投与、溶液、カプセル、またはタブレットの形態での経口での投与、皮下投与、腹腔内投与、皮膚または粘膜を介して吸収される塗布による投与、および鼻または吸入投与である。虫においては、化合物の吸収は、もっぱら経口または局所接触後の外皮経由の吸収である。植物においては、物質の吸収は、根または葉を介して行なわれる。
【0021】
DEQビルダーは、生体内の質量の平衡にもとづいて、微分方程式系を自動的に生成する。ソルバーは、DEQ系の数値積分を処理し、結果として、生物の各コンパートメントにおける化合物の濃度/時間の推移をもたらす。これらのデータを、例えば目標酵素における薬理的効果を記述するために、さらに利用することができる。
【0022】
モジュールを動的なやり方でリンクさせるためには、別個のモジュールからの種々の変数が相互依存している可能性があるため、モジュールに含まれている変数の階層的管理が必要とされる。すなわち、例えば、哺乳類の身体の血漿および末梢コンパートメントの間の平衡分配係数を計算するため、(物質モジュールからの)物質特有の物理化学的パラメータが、(生物モジュールからの)生理学的情報と一緒に使用される。同様に、同一生物の個々のコンパートメント間で依存性が存在する。例えば、肺における血流は、哺乳類の身体における血液の循環が閉じた系であるため、他のすべての器官の血流速度の合計の結果である。このような依存性が、それらを自動的に認識して考慮に入れることができるよう、全体的な階層データ構造を必要とする。このような階層データ構造は、本発明の一部である。この目的のため、モジュールは、オブジェクトのデータベースから管理される。オブジェクト・データベースは、所望のとおり動的に拡張でき、これが最大の機能性を保証する。同一または類似の機能を有する複数のモジュールも、容認される。統合モデルの数学的記述のためのデータ構造が、個々のモジュールにカプセル化される。この考え方の特徴は、モジュール間の階層的なデータの組み合わせにあり、これが次に、オブジェクト・モジュールと同様に別個のデータベースによって管理される。これは、他のモジュールからデータへのモデル決定的なアクセスを可能にする。シミュレーション・カーネルのモジュールは、マスター・プログラムによって生成されて、所望の順序に組み合わせられなければならない。
【0023】
種々の入力パラメータを管理するため、化合物および生物のパラメータのデータベースとの結び付きが、まず実現されている。さらに(あるいは、唯一の代案として)、グラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)が、関連のモデルパラメータのすべてが、(a)ユーザにとって視認可能であり、(b)ユーザによって編集可能であることを保証する。モジュールにおける個々のデータの変更は、データ階層に従い、所定のメッセージを介しての、残りのモジュールにおける依存性の検査をもたらす。モデル生成器において、データの依存性の検査は、所与のあらゆる時点においてモデルが正しいことをその生成器が保証する上で不可欠な構成要素である。結果の曲線、および随意によりそれらの曲線から導き出された典型的な薬物動力学パラメータ(例えば、曲線の下方の面積、最大濃度、最大濃度の時点、半減期、など)または薬力学パラメータ(例えば、作用の強度および持続時間)が、GUIによって表示される。
【0024】
本発明の特有の利点は、種々の複雑なモデルを簡単なやり方で生成できる柔軟性にある。以下の実施例は、この事実を、図面を参照しつつ説明しようとするものである。それらは、複雑さの異なる種々の関連のシナリオを示している。しかしながら、これらの例を、本発明の適用可能性を限定するものとして解釈すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
このセクションでは、記述しようとする生物(哺乳類、虫、および植物)について好ましい実施の形態を説明し、次いで、それらの動的シミュレーション・モデルへの取り込みを、実施例に関して示す。
【0026】
さまざまな生物モジュールの例
図1は、哺乳類の身体についてのきわめて簡略化した4コンパートメントのモデルを示している。ここでは、哺乳類の身体が、静脈血プールおよび動脈血プール、肺、ならびにさらなる末梢コンパートメントのみで構成されており、末梢コンパートメントを介して物質が代謝によって除かれる。末梢コンパートメントへと、動脈血の流れ(血流速度Qorg)によって物質(血中濃度Cinorg)が供給されている。このコンパートメントでの相互作用に続いて、静脈血(物質の濃度Coutorg)が肺へと流入し、血液の循環が完結する(Qlungs=Qorg)。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、図2に示した哺乳類モデルが、生物モジュールとして使用される。ここでも同様に、哺乳類の身体が、動脈血プールおよび静脈血プール、肺コンパートメント、ならびに以下の末梢器官、すなわち肝臓、腎臓、筋肉、骨、脂肪、脳、胃、小腸、大腸、膵臓、脾臓、胆嚢、および精巣で構成されている。この実施の形態を、以下では、「身体全体モデル」と称する。次いで、この身体全体モデルの各器官が、それぞれが血管空間(血漿および赤血球で構成されている)、間質空間、および細胞内空間を表現している複数のサブ・コンパートメントへと分割される(図3)。血漿および間質空間は、平衡にあるものとして取り扱われる。間質空間と細胞内空間との間の物質の輸送が、一次速度式(the first‐order kinetic)に従う受動拡散プロセスまたは飽和可能なミハエリス‐メンテンの式(Michaelis‐Menten kinetic)によってモデル化される能動輸送プロセスとして記述される。同様に、物質の代謝的分解(metabolic degradation)を考慮する1つ以上のミハエリス‐メンテン項が、細胞内サブ・コンパートメントのそれぞれに存在する。
【0028】
得られる連立微分方程式の系は、以下の形態を有している。すなわち、サブ・コンパートメント「血漿」(pl)、「赤血球」または「血球」(bc)、および「細胞内」(cell)についての3つの微分方程式が、各末梢器官の添え字「org」について存在する。身体全体モデルは、以下の末梢器官、すなわち肺、胃、小腸、大腸、膵臓、脾臓、肝臓、腎臓、脳、心臓、筋肉、骨、皮膚、脂肪、および精巣を含んでいる。以下の質量保存の式が、各器官の血漿および間質空間(int)についてもたらされる。
【0029】

意味:コンパートメント間の流れの項
【0030】

【0031】

意味:拡散による赤血球への質量輸送
【0032】

意味:拡散による細胞内への質量輸送
【0033】

意味:細胞内への能動輸送項(influx)
【0034】

意味:細胞内からの能動輸送項(efflux)
【0035】
以下の質量保存の式が、赤血球についてもたらされる。

意味:コンパートメント間の流れの項

【0036】

意味:拡散による赤血球への質量輸送
【0037】
細胞の内部は、下記の質量保存の式によって記述される。

意味:拡散による細胞内への質量輸送
【0038】

意味:細胞内への能動輸送項(influx)
【0039】

意味:細胞内からの能動輸送項(efflux)
【0040】

意味:代謝による分解(enzyme 1)
【0041】

意味:代謝による分解(enzyme 2)
【0042】

意味:一次分解(例えば、肝臓または腎臓における)
【0043】
肺(org=lng)は、同じように記述されるが、内部への流れが動脈血プール(art)からではなく、静脈血プール(ven)から由来する。

意味:血液の流れが、他の器官と比べて反対である!

【0044】
±・・・
意味:他の器官と同様
【0045】

意味:血液の流れが、他の器官と比べて反対である!

【0046】
±・・・
意味:他の器官と同様
【0047】
各器官から外へと流れる濃度が組み合わせられて、静脈血プールが形成される。得られる血漿濃度は、個々の器官の濃度の血流加重平均の結果である。

意味:血漿(−)と赤血球(+)との間の拡散による質量輸送
【0048】

意味:血漿クリアランス(該当する場合)
【0049】

意味:静脈血プールへの投与についての入力関数
【0050】
X={1−HCT(血漿の場合)
{HCT(赤血球の場合)
【0051】
最後に、動脈血プールは、下記質量保存の式によって記述される。

意味:血漿(−)と赤血球(+)との間の拡散による質量輸送
【0052】
X={1−HCT(血漿の場合)
{HCT(赤血球の場合)
【0053】
この方程式系において、
orgは、器官の血管(x=vas)、間質(x=int)、または細胞内空間(x=cell)の体積比を意味し、
orgは、器官の体積を意味し、
HCTは、赤血球濃度(=全血中の赤血球の体積比)を意味し、
orgは、器官における血漿(x=pl)または血球(x=bc)の血流速度を意味し、
PAbcorgは、赤血球の透過率と表面積の積を意味し、
PAorgは、器官の透過率と表面積の積を意味し、
plは、血漿と水の間の物質の平衡分配係数を意味し、
bcは、赤血球と血漿の間の物質の平衡分配係数を意味し、
orgは、器官と血漿の間の物質の平衡分配係数を意味し、
max、Kはそれぞれ、能動輸送および代謝についてのミハエリス‐メンテン定数を意味している。
【0054】
本明細書にて説明される静脈への投与に代え、あるいは本明細書にて説明される静脈への投与に加えて、経口投与に続く胃腸の粘膜を介しての摂取をシミュレートすることも可能である。この方程式系の解が、モデル中に存在するすべてのコンパートメントについて濃度‐時間の関係をもたらす。
【0055】
薬理的な作用を記述するため、有効化合物の生物学的ターゲットを含んでいるコンパートメントの濃度‐時間の関係を、薬力学的効果とリンクさせることが可能である。典型的な効果関数の例は、以下のとおりである。
【0056】
●ハイパボリックまたはシグモイダルEmaxモデル:

Effect=薬理的作用のパラメータ(時間に依存する)
=薬理的作用のパラメータのベース値
max=最大の薬理的作用
EC50=最大の効果の50%が得られる濃度
=作用場所における濃度(時間に依存する)
γ=形態パラメータ
【0057】
●べき関数:

または対数線形モデル:

Effect=薬理的作用のパラメータ(時間に依存する)
=薬理的作用のパラメータのベース値
β=濃度の関数としての効果の増大のパラメータ
=作用場所における濃度(時間に依存する)
γ=形態パラメータ
【0058】
●例えば、部分拮抗または全拮抗など、有効化合物相互作用モデル
●例えば複数の作用の中心またはレセプタ‐トランスデューサ相互作用を記述するうえで助けとなる上記モデルの組み合わせ
【0059】
本発明のさらなる好ましい実施の形態においては、生物モジュールが、虫とくにはイモ虫(caterpillar)の解剖学的構造を表現している(図4)。イモ虫の身体が、以下のコンパートメント、すなわち中央のコンパートメントとしての血リンパ、末梢コンパートメントとしての外皮、筋肉、脂肪体、神経系、および消化管壁、ならびにそれを経由して物質が周囲と交換される外皮表面および消化管中身のコンパートメントで構成されている。次に、コンパートメント間の質量の移動は、拡散による受動的な移動またはトランスポータの助けによる能動プロセスの形態を取ることができる。得られる微分方程式系は、未だ未公開である独国特許出願(出願番号第10256315.2号)の付録に記載されている。
【0060】
図5の植物モデルは、さらなる好ましい実施の形態を構成している。植物の典型的な生理機構に従い、このモデルは、植物の根、茎、および葉を記述している。次いで、これらのコンパートメントのそれぞれが、液胞(vacuole)、シンプラスト(symplast)、およびアポプラスト(apoplast)を表わす3つのサブ・コンパートメントで構成されている。これらのサブ・コンパートメントは、膜によって互いに隔てられている。上述した生物と同様、これらの膜もやはり、受動拡散または能動輸送によって透過可能である。さらに、サブ・コンパートメントは、とくに酸および塩基の分配挙動に大きく影響する異なるpH値によって特徴付けられている。植物は、コンパートメント間の転位経路を2つ有している。アポプラスト内の木部の流束が、根から葉に向かって流れる一方で、師部の流束が、シンプラスト内で物質を葉から根へと移動させる。
【0061】
モデル構造の例
●最も簡単なモデル構造(図6)
図6は、最も簡単なモデル構造を示している。モデル全体が、「化合物」、「投与」、「生物」、「DEQビルダー」、および「インテグレータ」といったモジュールで構成されている。「作用モジュール」を、随意により考慮に入れることができる。図7は、例えば化合物パラメータまたは当該生物の生理学的および解剖学的情報を含むことができる1つ以上のデータベースへのリンクを、概念的に示している。
【0062】
●複数投与(図8)
1つの同じ生物に対する有効化合物の繰り返しの投与は、例えば抗感染の有効化合物など、長い期間にわたって規則的な間隔で摂取されなければならない多数の薬用化合物にとって、現実的なシナリオである。このモデルは、例えば個々の生物における有効化合物の蓄積など、長期にわたる影響を、どのようにシミュレートできるのかについての例である。
【0063】
●腸肝循環(図9)
哺乳類へと投与された一連の化合物は、腸肝循環に入る。そのような場合、投与された化合物のいくらかが、変化することなく肝臓において胆液へと隠され、胆嚢(図9において、器官Nで表わされている)へと蓄積される。化合物の刺激が引き金となって、例えば食事の摂取などにより胆嚢が収縮し、内容物すなわち胆液が十二指腸へと放出されるが、この胆液には、とくに有効化合物が含まれている。次いで、この化合物が、消化管によって吸収され、再び全身の循環に入る可能性がある。図8に概説したモデルにおいて、このプロセスを、単に元の化合物の一部の新たな腸への投与(投与2、時間差を特徴とする)として記述することができる。
【0064】
●薬‐薬の相互作用(図10)
複数の化合物(この例では、2つの化合物)のお互いの間の相互作用は、きわめて重要である。モデルによれば、この場合を以下のように見ることができる。生物1および2が、同一の生理学的パラメータによって定義される。何故ならば、生物1および2が1つの同じ生物を表わしているためである。2つの異なる化合物が、別個に投与される。これら2つの化合物について、投与の経路、時期、および継続時間は相違してよい。2つの化合物の実際の相互作用は、生物1および2の器官Nをリンクする作用モジュールに定められる。例えば、相互作用は、競合的阻害であってよく、生じうる他の任意の生化学的相互作用であってよい。
【0065】
●母親‐胎児モデル(図11)
図11の母親‐胎児モデルは、別々であるが結合している2つの生物が同時にモデル化される例である。生物1が母親を表わす一方で、生物2が胎児を表わしている。胎児の血液循環が、胎盤(この場合では、生物1の器官Nで表わされている)を介して母親の血液循環に接続される。この例においては、母体内の胎児の妊娠週令および成長を正確に考慮に入れることができるよう、生理学的パラメータとくには胎児の器官の体積および血流速度が、時間の関数でありうる点が、きわめて重要である。
【0066】
●植物/虫の組み合わせモデル(図11)
母親‐胎児モデルと同様、植物/虫モデルも、結合された2つの生物の組み合わせであるが、この場合には、生物の生理機構が相違している。生物1が、葉の外皮または根を介して投与された例えば殺虫剤などの化合物を吸収する植物を記述している。この生物の全体への分配の後に、この化合物が、残りのコンパートメントにおいても利用可能になる。この植物の特定のコンパートメントを構成している葉からの供給によって、化合物を虫(生物2)に摂取させることが可能であり、この虫において化合物が分配され、最終的に、例えばイモ虫の神経系など目標とする器官において、殺虫の作用が達成される。
【0067】
●上述の例のさらなる組み合わせ
上述の例のさらなる組み合わせも、やはりきわめて重要である。例えば、母親‐胎児モデルにおける相互作用する2つ以上の物質の複数回の投与を、胎児に対する毒物学的リスクの早期評価に使用することが可能である。
【0068】
●哺乳類の身体全体モデルについてのシミュレーション結果
以下のテキストでは、シミュレーションの実行に必要とされるステップを、例として示す。まず、化合物依存特性を決定しなければならない。下記表1の化合物依存パラメータを有する化合物Xを例として使用する。
【0069】
【表1】

【0070】
今や、器官分配係数を、公開済みの式[M. Harter, J. Keldenich, W. Schmitt: Estimation of physicochemical and ADME parameters, Ch. 26 in: Combinatorial Chemistry‐A Practical Handbook, Part IV. Eds. K. C. Nicolau et al., Wiley VCH, Weinheim, 2002]の助けによって、親脂性(MA=10^LogMA)および非結合血漿部分(f)から計算することができる。今回の例では、器官分配係数について以下の値がもたらされる。下記表2は、表1の値からもたらされる分配係数[8]である。
【0071】
【表2】

【0072】
さらに、器官の体積、器官の血流の速度および組成などの生理学的パラメータが、血管、間質、および細胞空間に関して、既知でなければならない。これらのパラメータは、やはり文献に記載されている。例えば、表3〜5に挙げる値を、マウス、ラット、イヌ、およびヒトの種について見つけることができる。
下記表3は、マウス、ラット、イヌ、およびヒトの器官の体積(文献データ)である。
【0073】
【表3】

【0074】
下記表4は、マウス、ラット、イヌ、およびヒトの器官の血流速度(文献データ)である。
【表4】

【0075】
下記表5は、哺乳類の器官の組成(文献データ)である。
【表5】

【0076】
以下のテキストでは、図3に示したような身体全体モデルによって実現されたシミュレーション結果を示す。最も簡単な境界線の場合として、器官への輸送が血流に限られている(すなわち、PAorg→無限大)と仮定した。
【0077】
図12は、ラットについて、ボーラスの形態で化合物Xを1mg/kgで静脈に投与した後に得られる各器官の濃度を示している。
【0078】
図13は、異なる4つの種について、ボーラスの形態で化合物Xを1mg/kgで静脈に投与した後の血漿における濃度‐時間曲線を、シミュレートして示している。
【0079】
図14は、ヒトのさまざまな器官について、ボーラスの形態で化合物Xを1mg/kgで3日間にわたって複数回静脈に投与した後の濃度‐時間曲線を示している(投与計画:6h‐6h‐12h、図8のモデルに従って計算)。
【0080】
図15は、ヒトについて、化合物Xを1mg/kgで経口投与した後の血漿における濃度‐時間曲線を、腸肝循環なしおよび腸肝循環ありについて、図9のモデルに従って計算して示している(胆液におけるクリアランスが全クリアランスの25%に相当すると仮定している)。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】4コンパートメントの哺乳類モデルの概略図である。
【図2】哺乳類の身体全体の生理学的モデルの概略図である。
【図3】身体全体モデルにおける器官の概略図である。
【図4】イモ虫についての生理学的モデルの概略図である。
【図5】生理学的植物モデルの概略図である。
【図6】最も簡単なモデル・シナリオの概略図であり、モデルが「化合物」、「投与」、「生物」、「DEQビルダー」、および「インテグレータ」の各モジュールで構成されており、随意により「作用モジュール」を考慮に入れることができる。
【図7】シミュレーション・モデルのデータベースおよびグラフィカル・ユーザ・インターフェイスへのリンクの概略図である。
【図8】複数の投与についてのモデルの概略図である。
【図9】腸肝循環へと入る物質についてのモデルの概略図である。
【図10】2つの物質間の相互作用を記述するためのモデルの概略図である。
【図11】相互作用する2つの生物についてのモデルの概略図である。
【図12】ラットの種々の器官における物質の濃度‐時間曲線である。
【図13】種々の哺乳類の血漿における物質の濃度‐時間曲線である。
【図14】ヒトの種々の器官における物質の濃度‐時間曲線である。
【図15】経口投与後のヒトの血漿における物質の濃度‐時間曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の有効化合物の生物との相互作用を判断する方法であって、
A)少なくとも1つの物質を選択し、その生理学的および/または生化学的特徴、親脂性、溶解性、たんぱく結合、分子サイズ(分子量またはモル体積で表現される)、酸または塩基の場合のpKa値、代謝分解速度、および能動トランスポータの速度定数で構成されるシリーズからの特徴を分析するステップと、
B)当該生物の解剖学的および生理学的コンパートメントを、少なくとも、a)哺乳類の場合には、肺、末梢器官、好ましくは動脈および/または静脈である血管、あるいは血液のなかから、b)植物の場合には、木部および師部の流れ、ならびに根および/または葉および/または茎のなかから選択するステップと、
C)前記コンパートメントを、コンパートメントからの物質の輸送プロセスおよびコンパートメントへの物質の輸送プロセス、分解プロセス、ならびに作用プロセスに関して、当該プロセスを記述するための質量保存の式および反応速度の式によってコンピュータ・プログラムで記述するステップと、
D)静脈、経口、または皮下投与の場合に、質量保存の式および反応速度の式によってコンピュータ・プログラムで輸送プロセスを記述し、該当する場合には生物の有効化合物の分解プロセスを記述するステップと、
E)ステップC)およびD)において選択された式の系を組み合わせ、得られる連立微分方程式の系を数値的に計算するステップと、
F)選択されたコンパートメントにおける有効化合物の濃度‐時間曲線を決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記生物は、ヒト、サル、イヌ、ブタ、ラット、又はマウスで構成されるグループからなる哺乳類、あるいはイモ虫を含む虫、あるいは植物を表わすことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有効化合物が、哺乳類の場合には、静脈、経口、塗布、皮下、腹腔ルート、鼻または肺を介する吸入ルート、あるいは脳血管内ルートによって投与され、もしくは虫の場合には、血リンパ内、塗布、あるいは給餌または強制飼養による経口ルートによって投与され、もしくは植物の場合には、葉摂取または根経由摂取による噴霧用混合物の形態で投与されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物を記述する生理学的パラメータは、時間依存性のパラメータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記パラメータのいくつかが、当該コンピュータ・システムにリンクされているデータベースから取得されること特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記生理学的および解剖学的パラメータが、所定の統計的変動の範囲内で、乱数によって変化させられること(集団動態)を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
異なる機能を有するモジュール、および物質の化学的または生物学的特徴を含んでおり、あるいは生物についての生理学的または解剖学的情報を含んでおり、あるいは投与の態様または作用の種類についての情報を含んでいる少なくとも2つのモジュールで構成される階層モデル・アーキテクチャが、前記コンピュータ・プログラムのために使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生物についての複数のモデルが、とくには薬‐薬の相互作用、母親‐胎児モデル、または虫‐植物結合モデルをシミュレートするため、統合モデルへと組み合わせられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図10a】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−507774(P2007−507774A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530004(P2006−530004)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010607
【国際公開番号】WO2005/033982
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】