説明

化学処理装置

【課題】極薄の長尺シートであっても欠陥を発生せずに安定した処理が可能な化学処理装置を提供する。
【解決手段】化学処理槽4へのワーク3の搬入時に少なくともワークの上端を把持する搬送クランプ9群を有し、かつ両端を搬送プーリー6によって張設されたエンドレスベルト8に等間隔で取り付けられ、定寸ごとにワークを把持して鉛直状態として搬送すると同時に、ワークの折り返し時に搬送プーリー7と同軸上に設けられ、ワークの幅方向両端を円弧状に保持し、クランプ群の位置を規制する位置規制凹部を設けたワーク支持部材10によって、ワークが位置規制されながら搬送され、化学処理槽4搬出時に搬送クランプ群が順次開放されて巻取装置に巻き取らせるワーク搬送装置を備える化学処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCOF(Chip On Flexible)等に用いられるフレキシブル回路基板のような長尺のシート(所謂ワーク)に連続しためっき、電解脱脂などの化学処理を低張力下でシートを搬送しながら施す化学処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビ、携帯電話等の電子機器には可撓性のある絶縁性基板上に配線回路を形成したいわゆるフレキシブル回路基板が用いられることが多くなってきている。
そのようなフレキシブル回路基板の製造に用いられる従来の化学処理装置、即ちめっき装置は、例えば特許文献1に記載されるような装置が用いられてきている。
【0003】
図5に示す従来から用いられてきた装置30は、リールに巻かれたワーク(長尺シート状の被めっき材料)3を供給するためのワーク供給装置1と、そのワーク3をリールに巻き取るワーク巻取装置2との間に、ワーク3にめっきなどの化学処理を施すための化学処理槽4を配置、構成した装置である。
【0004】
このような構成によるワークの化学処理方法は、まず、ワーク供給装置1から、ワーク3の処理面が鉛直面となるようにワークが鉛直状態で供給され、ワーク3が当て板5を通過する際に、エンドレスベルト8に支持されたクランプ(図示せず)によりワークの上端及び下端を把持しながら、ワークの処理面を鉛直方向として化学処理槽4を通過させる際にワークの処理面に化学処理が施される。そして、折り返し側搬送プーリー7によってワーク3が折り返され、もう一つの化学処理槽4を通過し、巻側搬送プーリー6にワーク3が到達した際に当て板5によって、クランプが開きワーク3が開放され、ワーク巻取装置2によって化学処理後のワーク3が巻き取られる。
このような構成によって、化学処理装置の小型化を達成し、かつ生産性が高く、ワークに大きな張力をかけることなく長尺シートに化学処理を施すことを可能にしている。
【0005】
図5に示す装置を用いて長尺シートに化学処理を施した場合、図6に示すように折り返し側搬送プーリー7に巻きまわされたエンドレスベルト8に支持されたクランプ9は折り返し搬送プーリー7の外周に沿って円弧を描いて移動する。この時に隣り合うクランプ9の直線距離が短くなるため、図7に示すようにクランプ9に把持されたワーク3が波打ち状態に折れ曲がってしまうという問題が発生している。
近年、電子部品の軽量、小型化が強く要望されるようになり、それに用いられる、フレキシブル回路基板も薄くなる傾向があり、化学処理時のワークの安定搬送が重要になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−120889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み成されたもので、極薄の長尺シート状基板であっても欠陥を発生せずに安定した処理が可能な化学処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況を解決するための本発明に係る化学処理装置の第1の発明は、長尺状シートのワークを供給するワーク供給装置と、そのワークを巻き取るワーク巻取り装置との間に化学処理槽が配置され、ワーク供給装置からワーク巻取装置までのワーク搬送時に少なくとも1か所、ワークの折り返しを行い、かつワークの化学処理面が鉛直状態で化学処理する化学処理装置であって、化学処理槽へのワークの搬入時に少なくともワークの上端を把持する搬送クランプ群を有し、かつクランプ群は両端を巻側搬送プーリーと折り返し側搬送プーリーによって張設されたエンドレスベルトに等間隔で取り付けられて定寸ごとにワークを把持して鉛直状態として搬送すると同時に、ワークの折り返し時に、搬送プーリーと同軸上に設けられ、ワークの幅方向両端を円弧状に保持してクランプ群の位置を規制する位置規制凹部を設けたワーク支持部材によってワークが位置規制されながら搬送され、ワークの化学処理槽搬出時に、搬送クランプ群が順次開放されて化学処理されたワークを、ワーク巻取装置に巻き取らせるワーク搬送装置が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第2の発明は、第1の発明におけるワーク支持部材が、円柱状であることを特徴とする化学処理装置である。
【0010】
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明おけるワーク支持部材が、円盤状であり、ワークのクランプで把持される幅より、ワーク支持部材がワークを支持する幅が小さいことを特徴とする化学処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化学処理装置によれば、極薄のフレキシブル回路基板であっても安定した搬送が可能になりワークが波打ち状態の不良となってしまうことも改善され、品質に優れたフレキシブル回路基板などの極薄の長尺シート状基板の提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の化学処理装置の実施例形態の一つを示す配置模式平面図である。
【図2】図1の化学処理装置の配置模式側面図で、(a)は、ワーク3を搬送した状態を示し、(b)はワークを取り除いた状態を示している。
【図3】本発明の化学処理装置に用いられるワーク支持部材の平面図である。
【図4】本発明の化学処理装置に用いられるワーク支持部材でワークを支持している状態を説明する模式平面図である。
【図5】従来の化学処理装置を示す配置模式平面図である。
【図6】搬送機構を説明する概略図で、折り返し側搬送プーリーにおけるエンドレスベルトとクランプとの関係を示す図である。
【図7】従来の化学処理装置の搬送機構の問題点を説明する概略図で、折り返し側搬送プーリーにおけるワークとクランプとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施する形態について図面を参照しながら、詳細に説明する。
本発明の化学処理装置は、従来の装置(図5参照)と同様にワーク3の処理面が鉛直面となるようにワークが鉛直状態で供給され、その供給されるワーク3が少なくとも一回は折り返す構造の処理装置である。
そこで、本発明の説明に際して、図1の本発明に係る化学処理装置20を、図5に示す従来の化学処理装置30と同様の形態であるとして説明する。
【0014】
すなわち、図1に示すようにリール(図示せず)に巻かれたワーク3を巻き出す為のワーク供給装置1と化学処理が終了したワークを巻き取るためのワーク巻取装置2の間に、化学処理槽4が設けられている。この化学処理槽4におけるワーク3の出入り口にはシールローラー等の公知の液漏れ防止機構が設けられていても良い。
化学処理として、電解めっき等の電解処理を行う場合は、化学処理槽4内に電解処理用の電極が設けられる。
【0015】
図1は本発明に係る化学処理装置の構成の一例を表す、配置模式平面図で図5と同様の形態を有している。図2は、その化学処理装置20をワーク巻取装置2側から見た配置模式側面図で、(a)はワーク3を搬送した状態の図で、(b)はワークを取り除いた状態で、装置を説明するための模式側面図である。
図2はワーク巻取装置2側から見たものであるが、ワーク供給装置1側から見た場合は、図中において、ワーク巻取装置2がワーク供給装置1に変更された図となる。
図2において、2はワーク巻取装置、3はワーク、3aは巻き取ったワーク(コイル状)、4は化学処理槽、5は当て板、6は巻側搬送プーリー、7は折り返し側搬送プーリー、8はエンドレスベルト、9はクランプ、10はワーク支持部材、12は折り返し側搬送プーリー回転軸、13は巻側搬送プーリー回転軸、14はワーク巻取軸、15は装置架台で、符号5当て板から符号13巻側搬送プーリー回転軸までの部品により本発明に係るワーク搬送装置を形成している。
【0016】
図2からは、ワーク供給装置(図示せず)から化学処理面を鉛直面とした状態で巻きだされたワークは、巻側搬送プーリー6の位置に達した際に、クランプ9によってワークの上端と下端を把持する。このクランプ9は、当て板5の位置を通過する際は、当て板5にクランプの片側が押され開いた状態になり、当て板5を過ぎるとクランプ9の先端がワーク3を把持するように閉じられる。
その後、エンドレスベルト8に支持され、均等な間隔で設けられた複数のクランプ9により上端および下端を把持されたワーク3は化学処理槽4に搬送され、処理に供せられる。
【0017】
巻側搬送プーリー6及び折り返し側搬送プーリー7は、それぞれ独立駆動するサーボーモータに接続され、所望の移動速度によりエンドレスベルト8を移動することが可能になっている。
エンドレスベルト8の移動量は、そのエンドレスベルトにマークを設けてセンサーで検出する方法や、搬送プーリーの回転角から求める方法等公知の方法を適宜選択することができる。
【0018】
次に、片側の化学処理槽4を通過したワーク3は、図2(a)に示すように折り返し側搬送プーリー7の位置で方向転換し、もう一方の化学処理槽4へ搬送される。
折り返し搬送プーリー7の位置でワーク3が方向転換する際に、折り返し搬送プーリー7を同軸にワーク3の鉛直方向の両端部が接するように設けられたワーク支持部材10(図2(b)参照)により、ワーク3は方向転換の際に波打つことなく、円弧状を描いて方向転換を行う事が可能に成る。
【0019】
このワーク支持部材10は、図3のように円盤状の部材からなり、クランプ9の先端部の位置を規制するためのクランプ位置規制凹部11が各クランプの設置間隔に合わせて設けられている。
ワーク支持部材10は、ワーク3全体を支持するような円柱状の部材の両端にクランプ位置を規制するための凹部が設けられていていれば良いが、ワーク3の化学処理部分はなるべく非接触状態とし、ワーク3に汚れや傷を発生させることを無くすためにワーク支持部材10は、ワーク両端のクランプで把持される幅以下を支持する厚みとする事が望ましい。
【0020】
ワーク支持部材10により、ワーク3は円弧状を維持しながら方向転換し、もう一方の化学処理槽4で処理された後、ワーク巻取装置2によって巻き取られる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
【実施例1】
【0022】
(円盤状ワーク支持部材)
ポリイミドフィルム上に導電性金属層を形成した幅540mm、長さ300m、その厚みが125μm、100μm、75μm、50μm、38μm、25μm、12.5μmの7種類のワーク3を、ワーク供給装置に取り付け、本発明に係る化学処理装置を用いてワークの上下端部を把持し、搬送張力を50N、搬送速度0.5m/minでワークを搬送しながら、化学処理槽4にて電流密度3A/cmでめっき処理を行った。
【0023】
使用したワーク支持部材10は、直径70cm、板厚12mmの円盤状部材に、クランプ位置規制凹部11を形成したもので、ワークの鉛直面両端の幅10mmを支持するように調整した。またクランプは、ワーク鉛直面両端の幅15mmを把持するように調整した。
その結果めっき後のワークにしわも無く良好なめっき処理を行う事ができた。
【実施例2】
【0024】
(円柱状ワーク支持部材)
使用したワーク支持部材10として、直径70cm、高さ550mmの円柱状部材の上下端にクランプ位置規制凹部11を形成したものを用いた以外は、実施例1と同じ条件でめっき処理を行った。
その結果めっき後のワークにしわは生じなかったが、所々、めっき表面に傷状の不良が発生したが、不良部分を取り除くことで製品として用いる事ができた。
【0025】
(比較例1)
図5に記載した従来の化学処理装置を用いた以外は、実施例1と同じ条件でめっき処理を行った。
その結果、ワークの厚みが薄くなるほど、めっき後のワークにしわが生じており、ワーク厚みが50μm以下では、しわがワーク全体に多数発生しており、製品として供する事ができなかった。
【符号の説明】
【0026】
1 ワーク供給装置
2 ワーク巻取装置
3 ワーク
3a 巻き取ったワーク(コイル状)
4 化学処理槽
5 当て板
6 巻側搬送プーリー
7 折り返し側搬送プーリー
8 エンドレスベルト
9 クランプ
10 ワーク支持部材
11 クランプ位置規制凹部
12 折り返し側搬送プーリー回転軸
13 巻側搬送プーリー回転軸
14 ワーク巻取軸
15 装置架台
20 化学処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状シートのワークを供給するワーク供給装置と、前記ワークを巻き取るワーク巻取り装置との間に化学処理槽が配置され、前記ワーク供給装置からワーク巻取装置までのワーク搬送時に少なくとも1か所、ワークの折り返しを行い、前記ワークの化学処理面が鉛直状態で化学処理する化学処理装置であって、
前記化学処理槽へのワークの搬入時に、少なくとも前記ワークの上端を把持する搬送クランプ群を有し、かつ前記クランプ群は両端を巻側搬送プーリーと折り返し側搬送プーリーによって張設されたエンドレスベルトに等間隔で取り付けられて定寸ごとに前記ワークを把持して鉛直状態として搬送すると同時に、ワークの折り返し時に、前記搬送プーリーと同軸上に設けられ、ワークの幅方向両端を円弧状に保持し、前記クランプ群の位置を規制する位置規制凹部を設けたワーク支持部材によって、前記ワークが位置規制されながら搬送され、前記ワークの化学処理槽搬出時に、前記搬送クランプ群が順次開放されて化学処理されたワークを、ワーク巻取装置に巻き取らせるワーク搬送装置が設けられていることを特徴とする化学処理装置。
【請求項2】
前記ワーク支持部材が、円柱状であることを特徴とする請求項1記載の化学処理装置。
【請求項3】
前記ワーク支持部材が、円盤状であり、ワークのクランプで把持される幅より、前記ワーク支持部材がワークを支持する幅が小さいことを特徴とする請求項1乃至2記載の化学処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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