説明

化学発光増強剤

【課題】微細固体担体の分散性を良好に保ち、安定して化学発光増強作用を発揮させるように処理した化学発光増強剤を提供する。
【解決手段】液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫測定法におけるシグナル検出に使用され、ジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光を増強するための水溶性高分子第四級アンモニウム塩、第四級スルホニウム塩又は第四級ホスホニウム塩からなる化学発光増強剤であって、酸化剤または還元剤処理により前記微細固体担体の凝集抑制処理を施したものである化学発光増強剤、該化学発光増強剤を用いた化学発光方法およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫測定法におけるシグナル検出において、化学発光基質の酵素作用による化学発光を増強する為に用いられる化学発光増強剤に関する。
【0002】
背景技術
微量成分を測定する分野、特に臨床診断学の分野では、免疫学の原理を応用した測定方法が利用され、固相に微細固体担体を用いた免疫測定方法が広く用いられている。その微細固体担体には赤血球、ゼラチン粒子、ラテックス粒子などがあり、それらの表面に、抗原または/および抗体を吸着させ、試験試料中の該抗原または/および抗体に対する抗体または/および抗原を免疫学的に反応させることにより定量的分析に供される。これらの微細固体担体を用いた免疫測定法は臨床診断以外の分野でも汎用されていることも周知である。
【0003】
1,2−ジオキセタン類のような化学発光基質にアルカリフォスファターゼのような酵素を作用させて化学発光を起こさせる化学発光反応を利用した化学発光測定は、検体中の測定対象物の存在又は濃度を迅速、高感度に測定することができ、HIV,HCV等のウイルス、その他生体内微量成分などを測定するために広く用いられている(特表平8−507694号参照)。
【0004】
液体媒体中で、特には水性媒体中で、ジオキセタンを有する化学発光基質の分解による化学発光に際して、消光反応が生じることは周知である。多くの試験試料は、概して生体試料であるから、これらによる試料の測定は、一般的には、水性媒体中で実施される。したがって、消光反応が、ジオキセタンを有する化学発光基質の分解によって実際に観測される化学発光を実質的に減少させることがある。特定の試験試料、例えば核酸、ウイルス抗体およびその他の蛋白質など、低レベルの検出が必要である測定法では、不可避的なバックグラウンドシグナルと合わせて、消光反応により減少した化学発光が測定法の感度を低下させるため、極めて低レベルのものを検出できないことがある。これらの消光反応を改善する為に、天然および合成分子の双方を包含している水溶性高分子の添加(米国特許第5,145,772号参照)、試験試料への各種の水溶性増強剤の添加(米国特許第4,978,614号参照)、または、水溶性重合第四級アンモニウム塩として、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)(TMQ)、ポリ(ビニルベンジルトリブチルアンモニウムクロライド)(TBQ)およびポリ(ビニルベンジルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)(BDMQ)のような水溶性重合第四級アンモニウム塩が用いられてきた(米国特許第5,112,960号、特表平8−507694号参照)。
【0005】
ところで、上記TMQ、TBQ及びBDMQなどの化学発光増強剤は、高分子量のポリマーであり、液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫測定法におけるシグナル検出に使用される場合、例えば免疫反応後に洗浄するために、一旦担体を物理的に凝集させると、その後に微細固体担体の分散を妨げ、被検物質の濃度に依存したジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光を阻害し、正確な測定値を得ることができないという問題が生じる場合があった。
【0006】
発明の開示
本発明の目的は、公知の化学発光増強剤において、化学発光基質による発光反応に際して微細固体担体の分散性を良好に保ち、安定して化学発光増強作用を発揮させるように処理した化学発光増強剤を提供することである。
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、酸化作用または還元作用を有する試薬で処理した水溶性高分子第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩または第四級ホスホニウム塩などの化学発光増強剤が、固相免疫測定法におけるシグナル検出において、ジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光をより安定して増強し、かつより正確な測定結果を提供することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫測定法におけるシグナル検出に使用され、ジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光を増強するための水溶性高分子第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩または第四級ホスホニウム塩からなる化学発光増強剤であって、酸化剤または還元剤処理により前記微細固体担体の凝集抑制処理を施したものである化学発光増強剤、該化学発光増強剤を用いた化学発光方法およびキットを提供する。
より詳細には、本発明は、以下の項目を提供する。
1. 液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫測定法におけるシグナル検出に使用され、ジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光を増強するための水溶性高分子第四級アンモニウム塩、第四級スルホニウム塩又は第四級ホスホニウム塩からなる化学発光増強剤であって、酸化剤または還元剤処理により前記微細固体担体の凝集抑制処理を施したものである化学発光増強剤。
2. 該増強剤が、限外ろ過法で分離される分子量において、分子量約40万ダルトンを越える成分を実質的に含有しない上記1に記載の化学発光増強剤。
3. 該化学発光基質が、一般式
【化1】


[式中、R2はX−オキシ基で置換されたアリール基であって、酸、塩基、塩、酵素、有機又は無機触媒及び電子供与体から選択した活性化剤でXを除去して反応を誘発すると不安定なオキシド中間体の1,2−ジオキセタン化合物を形成し、その不安定な1,2−ジオキセタン化合物が電子エネルギーを放出して分解し、光と一般式
【化2】


の2個のカルボニル含有化合物とを生成し、またXは酵素により除去される化学的に易反応性の基である。R1はアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリルオキシ基、アリールシリルオキシ基、アリール基、及びアリール基R2と結合して1,2−ジオキセタン環にスピロ結合するところの、X−オキシ基置換の多環式アリール基を形成するアリール基から成る群から選択されたものである。またR3,R4はそれぞれアルキル基又はヘテロアルキル基であって、R3とR4が互いに結合して1,2−ジオセタン環にスピロ結合する多環式アルキレン基を形成していてもよい。]で表される基質である上記1又は2に記載の化学発光増強剤。
4. 該増強剤が、第四級アンモニウム塩、第四級スルホニウム塩、第四級ホスホニウム塩、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる単量体から調製される、上記1〜3に記載の化学発光増強剤。
5. 該増強剤が、重合第四級アンモニウム塩、重合第四級スルホニウム塩、重合第四級ホスホニウム塩、又はそれらの共重合体である、上記1〜3に記載の化学発光増強剤。
6. 該増強剤が、ポリ[ビニルベンジル(ベンジルジメチルアンモニウムクロライド)](BDMQ)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)(TMQ)、ポリ[ビニルベンジル(トリブチルアンモニウムクロライド)](TBQ)、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド(BDMCAC)、ポリメタアクリルアミドプロピレンメチルアンモニウムクロライド(ポリMAPTAC)、ポリ[ビニルベンジル(トリエチルアンモニウムクロライド)](TEQ)、ポリ[ビニルベンジル(2−ベンジルアミノ)エチルジメチルアンモニウムクロライド](BAEDM)、ポリ[ビニルベンジルジメチル(2−ヒドロキシ)エチルアンモニウムクロライド(DME(OH)B)、ポリ[ビニルベンジル(トリメチルホスホニウムクロライド(TM)、ポリ[ビニルベンジル(トリブチルホスホニウムクロライド)](TB)、ポリ[ビニルベンジル(トリオクチルホスホニウムクロライド)](TO)およびそれらの共重合体からなる群から選ばれる、上記1〜3に記載の化学発光増強剤。
7. 該固体担体が、粒子である、上記1〜6に記載の化学発光増強剤。
8. 該粒子が、磁性粒子である、上記7に記載の化学発光増強剤。
9. 酸化作用又は還元作用を有する該試薬が、過硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムからなる群から選ばれる、上記1〜8の何れか1項に記載の化学発光増強剤。
10. 液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫反応系における化学発光増強剤の存在下、標識体の酵素として、酸ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ又はエステラーゼを反応させることからなる化学発光方法であって、前記化学発光増強剤が、上記1〜9に定義される化学発光増強剤である化学発光方法。
11. 化学発光増強剤の存在下、粒子を使用する免疫測定法の化学発光方法であって、前記化学発光増強剤が、上記1〜7、9に定義される化学発光増強剤である上記10に記載の化学発光方法。
12. 化学発光増強剤の存在下、磁性粒子を使用する免疫測定法の化学発光方法であって、前記化学発光増強剤が、上記1〜6、8、9に定義される化学発光増強剤である上記10又は11に記載の化学発光方法。
13. 液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫反応法における検出系に使用され、ジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光に基づく検出試薬キットであって、ジオキセタンを有する化学発光基質、及び上記1〜9のいずれか1項に記載の増強剤を含んでなるキット。
14. 粒子を使用する免疫測定法の試薬キットであって、ジオキセタンを有する化学発光基質、及び上記1〜9のいずれか1項に記載の増強剤を含んでなる上記13に記載のキット。
15. 磁性粒子を使用する免疫測定法の試薬キットであって、ジオキセタンを有する化学発光基質、及び上記1〜9のいずれか1項に記載の増強剤を含んでなる上記13又は14に記載のキット。
【0009】
該増強剤の好ましい態様としては、限外ろ過法で分離される分子量において、分子量約40万ダルトンを越える成分を実質的に含有しない該化学発光増強剤である。
【0010】
発明を実施するための最良の形態
上記の通り、本発明の化学発光増強剤は、水溶性高分子第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩または第四級ホスホニウム塩などを、酸化作用または還元作用を有する試薬で処理したものであり、下記一般式(I)で示される。
【0011】
【化3】

【0012】
一般式[I]中、R5、R6およびR7は、それぞれ、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状非置換アルキル基、(例えばメチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基またはヘキシル基等)、1個またはそれ以上のヒドロキシル基、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基またはポリオキシエチルエトキシ基)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基)、アミノ基、置換アミノ基(例えばメチルアミノ基)、アミド基(例えばアセトアミド基)またはウレイド基(例えばフェニルウレイド基)で置換された1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基、フルオロアルカン基、フルオロアリール基(例えばヘプタフルオロブチル基)、3〜12個の環炭素原子を有する非置換モノシクロアルキル基(例えばシクロヘキシル基またはシクロオクチル基)、1個以上のアルキル基、アルコキシ基または縮合ベンゾ基で置換された3〜12個の環炭素原子を有する置換モノシクロアルキル基(例えばメトキシシクロヘキシル基または1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基)、それぞれが5〜12個の炭素原子を有する2個以上の縮合環を有する、非置換であるか1個以上のアルキル基、アルコキシ基またはアリール基で置換されたポリシクロアルキル基(例えば1−アダマンチル基または3−フェニル−1−アダマンチル基)、非置換であるか1個以上のアルキル基、アリール基、フッ素またはヒドロキシル基で置換された、少なくとも1個の環および全部で6〜20個の炭素原子を有するアリール基、アルカリール基またはアラルキル基(例えばフェニル基、ナフチル基、ペンタフルオロフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、ヒドロキシベンジル基、フェニルベンジル基またはデヒドロアビエチル基)であってもよく、R5、R6およびR7のうち少なくとも2個は、それらが結合している第四級原子とともに、飽和または不飽和の、3〜5個の炭素原子および1〜3個のヘテロ原子を有し、かつベンゼン環が縮合していてもよい窒素、リンまたは硫黄を含有する非置換であるか、または置換された環(例えば1−ピリジニウム、1−(3−アルキル)イミダゾリウム、1−(3−アラルキル)イミダゾリウム、モルホリノ、アルキルモルホリニウム、アルキルピペリジニウム、N−アシルピペリジニウム、ピペリジノ、アシルピペリジノ、ベンゾオキサゾリウム、ベンズチアゾリウムまたはベンズアミダゾリウム)を形成し得る基を意味する。
【0013】
一般式[I]中の記号Yは、単独に、または合わさって、ハロゲンイオン、すなわちフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン(例えばメチルスルホン酸イオン)、アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばアニリノナフチレンスルホン酸イオンと各種の異性体)、ジフェニルアントラセンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、アルカン酸イオン(例えば酢酸イオン)、アリールカルボン酸イオン(例えばフルオレセインまたはフルオレセイン誘導体)、ベンゼン複素環式アリールカルボン酸イオン(例えば7−ジエチルアミノ−4−シアノクマリン−3−カルボン酸イオン)のような部分を包含できる対イオンを表す。p−テレフタル酸イオンなどの有機ジアニオン類もYによって表されてよい。
【0014】
さらに記号nは、そのようなポリ(ビニルベンジル第四級塩)の分子量が、固有粘度またはLALLS法を用いて測定して約500〜約500,000(平均分子量)、好ましくは約20,000〜約70,000の範囲にわたる数を表す。Mが窒素であるこれらの重合体、関連共重合体および関連出発材料を調製する方法は、G.D.Jonesら:Journal of Polymer Science、第25巻201ページ(1958年)、米国特許第2,780,604号、第3,178,396号、第3,770,439号、4,308,335号、第4,340,522号、第4,424,326号、およびドイツ国公開特許第2,447,611号公報に開示されている。記号Mは、リンまたは硫黄でもよく、ここで、対応するホスホニウムまたはスルホニウム重合体は先行技術に記載されている(米国特許第3,236,820号および第3,065,272号参照)。
【0015】
一般式[I]で示される構造を有する化学発光増強剤としては、ポリ[ビニルベンジル(ベンジルジメチルアンモニウムクロライド)](BDMQ)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)(TMQ)、ポリ[ビニルベンジル(トリブチルアンモニウムクロライド)](TBQ)、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド(BDMCAC)、ポリメタアクリルアミドプロピレンメチルアンモニウムクロライド(ポリMAPTAC)、ポリ[ビニルベンジル(トリエチルアンモニウムクロライド)](TEQ)、ポリ[ビニルベンジル(2−ベンジルアミノ)エチルジメチルアンモニウムクロライド](BAEDM)、ポリ[ビニルベンジルジメチル(2−ヒドロキシ)エチルアンモニウムクロライド(DME(OH)B)、ポリ[ビニルベンジル(トリメチルホスホニウムクロライド)](TM)、ポリ[ビニルベンジル(トリブチルホスホニウムクロライド)](TB)及びポリ[ビニルベンジル(トリオクチルホスホニウムクロライド)](TO)並びにそれらの共重合体から選択されるものが好適である。
【0016】
本発明において特に好ましい、一般式[I]の化学発光増強剤は、ポリ[ビニルベンジル(ベンジルジメチルアンモニウムクロライド)](BDMQ)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)(TMQ)、ポリ[ビニルベンジル(トリブチルアンモニウムクロライド)](TBQ)、ポリ[ビニルベンジル(トリエチルアンモニウムクロライド)](TEQ)、ポリ[ビニルベンジル(トリメチルホスホニウムクロライド(TM)、ポリ[ビニルベンジル(トリブチルホスホニウムクロライド)](TB)及びポリ[ビニルベンジル(トリオクチルホスホニウムクロライド)](TO)並びにそれらの共重合体から選択されるものであり、さらに好ましくは、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)(TMQ)、ポリ[ビニルベンジル(トリブチルアンモニウムクロライド)](TBQ)及びポリ[ビニルベンジル(ベンジルメチルアンモニウムクロライド)](BDMQ)、ポリ[ビニルベンジル(トリエチルアンモニウムクロライド)](TEQ)、並びにそれらの共重合体から選択されるものであり、最も好ましくは、ポリ[ビニルベンジル(トリブチルアンモニウムクロライド)](TBQ)又はポリ[ビニルベンジル(ベンジルメチルアンモニウムクロライド)](BDMQ)である。
【0017】
下記一般式[II]に記載するように、2個以上の異なるオニウム側鎖を有する共重合体も、ここに述べた本発明で利用できる。記号Y、M’、R5’、R6’およびR7’は、Y、M、R5、R6およびR7として前記で説明したものと同様である。記号yおよびzは、共重合体を構成する個々の単量体のモル分率を表す。したがって、記号yおよびzの合計は常に1に等しく、個別的には0.01から0.99まで変動してよい。好適な部分として、Mは窒素またはリンであり、R5〜R7は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有する、非置換であるか、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基またはウレイド基で更に置換されたアルキル基、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基(例えばアダマンタン基)、アラルキル基またはアリール基であるか、あるいは併せて、M原子とのスピロ結合を介して複素環式の(場合により他の窒素、硫黄または酸素のヘテロ原子を含む芳香族、脂肪族もしくは混合の)オニウム基を形成する。
【0018】
【化4】

【0019】
本発明の化学発光増強剤が使用される化学発光反応自体は公知である。化学発光反応を行うための酵素としては、酸ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ又はエステラーゼを挙げることができ、好ましい例としては、酸フォスファターゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ及びエステラーゼを挙げることができる。最も好ましくは、アルカリフォスファターゼである。これらの酵素は動物、植物又は細菌などから公知の方法で精製することができ、また市販もされている。市販品も好ましく用いることができる。これらの酵素は遊離の状態であってもよく、また、抗原、抗体又はハプテン等の他の物質に結合された状態にあってもよい。
【0020】
ここで用いられる化学発光反応の基質としては、下記一般式[III]で表されるジオキセタン誘導体を挙げることができる。
【0021】
【化5】


[式中、R2はX−オキシ基で置換されたアリール基であって、Xは酸、塩基、塩、酵素、有機又は無機触媒及び電子供与体から選択した活性化剤でXを除去して反応を誘発すると不安定なオキシド中間体の1,2−ジオキセタン化合物を形成し、その不安定な1,2−ジオキセタン化合物が電子エネルギーを放出して分解し、光と2個のカルボニル含有化合物とを生成し、またXは酵素により除去される化学的に易反応性の基であり、R1はアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリルオキシ基、アリールシリルオキシ基、アリール基、及びアリール基R2と結合して1,2−ジオキセタン環にスピロ結合するところの、X−オキシ基置換の多環式アリール基を形成するアリール基から成る群から選択されたものであり、またR3とR4はそれぞれアルキル基またはヘテロアルキル基であって、R3とR4が互いに結合して1,2−ジオセタン環にスピロ結合する多環式アルキレン基を形成していてもよい。]
【0022】
一般式[III]式中、R1がR2と結合していないときは、このR1は前記したようにアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリルオキシ基、アリールシリルオキシ基またはアリール基であり、好ましくは、1〜8個の炭素原子を有する低級のアルキル基またはアルコキシ基である。R1はまた、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、アリールオキシ基またはアリールシリルオキシ基であってもよい。R1がアリール基であるR2と結合して1,2−ジオキセタン環にスピロ結合する多環式アリール基を形成する場合、その多環式アリール基は炭素数30までのものであることが好ましい。この場合の多環式アリール基はキサンテニル基のように、炭素原子に代わって酸素原子を含むものであってもよく、スピロ結合多環式アリール基が、同基のC9位で1,2−ジオキセタン環にスピロ結合するフルオレニル又はキサンテニルが好ましい。
【0023】
2は、X−オキシ基(OX基)で置換されたアリール基であり、アリール基を含む基はフエニル基、ビフエニル基、結合フエニル基または他のアリール基で、6〜30個の炭素原子を含み、且つ他の置換体を含んでいてもよい。Xは、安定なジオキセタン構造を分解して化学発光(シグナル)を生じさせるために、ジオキセタンから活性化剤により除去される基である。OX基はヒドロキシ基、アルキルシリルオキシ基、アリールシリルオキシ基、無機オキシ酸塩(特にリン酸塩または硫酸塩)、ピラノシド酸素、アリールカルボキシルエステルまたはアルキルカルボキシルエステル基から選択するのが好ましい。また、OX基がヒドロキシ基である場合、同基の水素原子はカリウムt−ブトキシドのような有機塩基あるいは水酸化カリウムのような無機塩基と易反応性であって、塩基により分解させて化学発光を生じさせることができる。活性化剤が、免疫測定用またはDNAプローブ検出用に、標識として通常良く用いられる酵素である場合には、該酵素と易反応性のXを有するOX基を適宜、選択すればよい。例えば、免疫測定用またはDNAプローブ検出において、比色基質又は蛍光基質により検出させるものとして、汎用されているアルカリホスファターゼ、β−ガラクシドダーゼ、アリールまたはアセチルコリンエステラーゼなどである場合、OX基としてリン酸塩、ピラノシド酸素または酢酸エステル基を選択することができる。
【0024】
3またはR4はそれぞれアルキル基またはヘテロアルキル基であり、また互に結合して環状構造を形成し、多環式アルキレン基としていてもよい。多環式アルキレン基は6〜30個の炭素原子を含み、また異種原子(窒素、酸素、硫黄又はリン)を含んでいてもよい。好ましい多環式アルキレン基はアダマンチル基である。R3、R4はジオキセタン構造に対し安定性をもたらし、安定性を損なう置換基でない限り、置換基を有していてもよい。
【0025】
以上のような、ジオキセタン構造を有する化合物の中で、好適な化学発光基質は、3−(4−メトキシスピロ〔1,2−ジオキセタン−3,2’−トリシクロ[3.3.13.7]デカン〕―4−イル)フェニルリン酸、特にその2ナトリウム塩(AMPPD)と、3−(4−メトキシスピロ〔1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.13.7]デカン〕―4−イル)フェニルリン酸およびその2ナトリウム塩(CSPD)である(米国特許第4,962,162号、特許2552413号参照)。
【0026】
本発明で用いられる微細固体担体としては、動物赤血球、ゼラチン粒子、ラテックス粒子、磁性粒子などが挙げられる。ここで言うゼラチン粒子とは、ゼラチンに、水溶性多糖類、メタリン酸ナトリウム及びアルデヒド架橋剤などよりなる粒子を指し(特開平5−306113号、特公昭63−48021号参照)、ラテックス粒子とは、有機高分子であるポリスチレン、アクリル樹脂などの合成樹脂よりなる粒子を指し、市販もされている。市販品も好ましく用いることができる。
【0027】
本発明において用いられる微細固体担体には、核が有機高分子で表面が酸化鉄系のフェライト被覆層を有する磁性粒子を帯びるように加工したものも含まれる。磁性粒子は磁力を利用して効率良くB/F分離ができる(特許第3192149号、特許第2979414号参照)。特に好適に用いられる磁性粒子としては、例えば、マグネタイトを核としてシランを被覆した粒子(特開昭55−141670号、特開昭50−122997号参照)、磁性金属酸化物を核としてシランを被覆した粒子(特開昭60−1564号参照)、有機高分子化合物を核として、酸化鉄系のフェライト被覆層を有した磁性粒子(特許2979414号参照)、さらに、有機高分子化合物を核とした磁性粒子の表面にゼラチンを有する粒子などが挙げられる(特許3192149号参照)。
【0028】
特にこれらに限定しないが、前記の微細固体担体は、各測定の目的や測定キットの構成により、適切な担体が選択され、固相免疫測定法において使用する担体であれば、該化学発光増強剤により、発明の効果を発揮する。
【0029】
本発明に係る化学発光増強剤は、酸化作用または還元作用を有する試薬を用いた処理によって調製され得る。ここで用いられる酸化剤または還元剤としては過硫酸アンモニウム、過ヨウ素酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムなどがあげられる。特に好ましい酸化剤または還元剤としては、過硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム及びメタ過ヨウ素酸ナトリウムを挙げることができ、さらに好ましくは、亜硫酸ナトリウム及び次亜塩素酸ナトリウムを挙げることができる。
【0030】
本発明に係る化学発光増強剤を調製するに際しては、既知の方法により製造された前記一般式[I]または[II]の化学発光増強剤または市販品の該化学発光増強剤が、前記の酸化剤または還元剤により適切な条件下で処理される。処理条件としては、該化学発光増強剤の有する化学種、分子量、濃度等を考慮することにより、酸化剤又は還元剤の試薬濃度、反応時間、反応温度、使用する溶媒系等が適切に選択され得る。特に限定するものではないが、例えば、化学発光増強剤が数g〜数100g程度の量である場合、水性溶液中において、5mM亜硫酸ナトリウムでは室温にて1時間、あるいは0.1%次亜塩素酸ナトリウムでは室温にて2時間、あるいは1mM過硫酸アンモニウム及び1mMメタ過ヨウ素酸ナトリウムでは60℃にて2時間、あるいは15%過酸化水素では室温にて17時間、あるいは1mM過マンガン酸カリウム及び1mM重クロム酸カリウムでは80℃で2時間の処理により、本願発明に係る化学発光増強剤を得ることができる。なお、亜硫酸ナトリウムは条件により酸化作用又は還元作用を示すことが知られている。
【0031】
下記の実施例をもって例示するように、本発明の化学発光増強剤は次亜塩素酸ナトリウム処理後に、約14000以下の分子量をカットする透析膜を用いて精製することが望ましい。また、未処理の化学発光増強剤の多くは、分子量30万カットの限外ろ過フィルターを通過しえないが、一方で、本発明の化学発光増強剤は通過しえるようになることが判明している。さらに、酸化・還元の条件によっては、フィルターの透過率が低い化学発光増強剤であっても、透析液の条件を変更することにより、本発明の化学発光増強剤の透過率が向上することを見出している。
【0032】
下記の実施例をもって例示するように、本発明の化学発光増強剤を微細固体担体、すなわち例えば磁性粒子の分散系に添加すると、未処理の化学発光増強剤の添加と比較して、分散性が改善されていることが判明した。このような微細固体担体の良好な分散性が、ジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光(シグナル)の増強・安定化をもたらすものと考えられる。
【0033】
実施例
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1−1 未処理と酸化還元処理TBQの化学発光測定に与える影響
TBQ溶液(35.2mg/ml)2mlに、2mM亜硫酸ナトリウム溶液、0.015%(有効塩素濃度)次亜塩素酸ナトリウム溶液、2mMメタ過ヨウ素酸ナトリウム溶液又は2mM過硫酸アンモニウム溶液を2ml加え、混合後、60℃にて4時間処理した。これら処理TBQを透析膜(分子量カット12000〜14000、三光純薬社製)に分注後MilliQ水(超純水)を外液として透析を行い、処理TBQとした。次に0.8mg/mlの未処理TBQ又は処理TBQを含有した0.4mg/mlAMPPD液(0.2Mジエタノールアミン(DEA)、1mM塩化マグネシウム(MgCl2)、0.05%アジ化ナトリウム(NaN3) pH10.0)を調製した(基質液)。0.015%アルカリフォスファターゼ(ALP)結合磁性粒子を反応容器に200μl分注し、磁石を接して粒子を集磁させ上清を除き洗浄した。この反応容器に、前記の基質液200μlを加えて混合し、37℃で5分間反応させた後、フォトンカウンター(浜松フォトニクス社製)で発光(シグナル)をカウントし、2秒間の積算値を求めた。上記の磁性粒子と基質による反応を5回行った。この結果を表1に示す。未処理TBQと比較し、いずれの処理条件においても、処理TBQ添加群はシグナルが増加し、同時再現性(CV値)も向上した。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1−2 未処理と酸化還元処理TBQの粒子分散に与える影響
0.8mg/ml未処理TBQ又は処理TBQを含む0.1M DEA溶液(pH10.0)を調製した。0.03%磁性粒子を反応容器に100μl分注し、磁石を接して粒子を集磁させ上清を除いた。前記TBQを含むDEA溶液200μlを加えて30秒攪拌した。攪拌後15秒後にピペットマン(GILSON社製マイクロピペット)で液上面から150μlを吸引し、分光光度計用セルに分注し、10秒後に分光光度計(SHIMADZU社製UV−1200)で濁度(OD500)を測定した。この結果を表2に示す。処理TBQは未処理TBQにくらべて、濁度が高く、粒子の分散は向上した。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例2−1 未処理と酸化還元処理TBQの化学発光測定に与える影響
35.2mg/mlTBQ溶液2mlに、有効塩素濃度として0.005%、0.05%又は0.5%次亜塩素酸ナトリウムを含む溶液を2ml加え、混合後、25℃にて24時間放置した。次に、透析膜(分子量カット12000〜14000、三光純薬社製)に分注後MilliQ水を外液として透析を行い、処理TBQとした。0.8mg/mlの未処理TBQ又は処理TBQを含有した0.2mg/mlAMPPD液(0.1M DEA、1mM MgCl2、0.05% NaN3、pH10.0)を調製した(基質液)。次に0.015% ALP結合磁性粒子を反応容器に200μl分注し、磁石を接して粒子を集磁させ上清を除き洗浄した。前記の基質液200μlを加えて混合し、37℃で5分間反応させた後、フォトンカウンター(浜松フォトニクス社製)で発光(シグナル)をカウントし、2秒間の積算値を求めた。この結果を表3に示す。未処理TBQと比較し、いずれの処理条件においても、処理TBQ添加群はシグナルが増加し、同時再現性(CV値)も向上した。
【0039】
【表3】

【0040】
実施例2−2
未処理と酸化還元処理TBQの粒子分散に与える影響
実施例2−1に記した方法により処理TBQを得た。0.8mg/ml未処理TBQ又は処理TBQを含む0.1M DEA溶液(pH10.0)を調製した。0.03%磁性粒子を反応容器に100μl分注し、磁石を接して粒子を集磁させ上清を除いた。前記TBQを含むDEA溶液200μlを加えて30秒攪拌した。攪拌後15秒後にピペットマンで液上面から150μlを吸引し、分光光度計用セルに分注し、10秒後に分光光度計(SHIMADZU社製UV−1200)で濁度(OD500)を測定した。この結果を表4に示す。各処理TBQは未処理TBQに比べて濁度が高く、粒子の分散は向上した。
【0041】
【表4】

【0042】
実施例3 未処理と酸化還元処理TBQの限外ろ過フィルターの透過率
0.1M又は1M塩化ナトリウム(NaCl)溶液で未処理と各処理TBQを1mg/ml以下に希釈した。この溶液を分子量30万カットの限外ろ過フィルター(ミリポア社製)で限外ろ過し、ろ液の吸光度(OD268)を測定し、透過率を算出した。その結果を表5に示す。未処理TBQと比較し、各処理TBQのフィルター透過率は上昇した。更に、0.1M NaCl溶液では低い透過率であった0.005%次亜塩素酸ナトリウム処理TBQは1M NaCl溶液に溶解した場合、フィルター透過率は向上した。
【0043】
【表5】

【0044】
実施例4 未処理と酸化還元処理TBQの化学発光免疫測定に与える影響(1)
35.2mg/mlTBQ溶液2mlに2M亜硫酸ナトリウム溶液を2ml加え、混合後、60℃にて4時間処理した。次にこれを透析膜(分子量カット12000〜14000、三光純薬社製)に分注後MilliQ水を外液として透析を行い、処理TBQとした。0.8mg/mlの未処理TBQ又は処理TBQを含有した0.2mg/mlAMPPD液(0.1M DEA、1mM MgCl2、0.05% NaN3、pH10.0)を調製した(基質液)。αフェトプロテイン(AFP) 0、10、100、800及び2000ng/mlを含む試験試料をBSA溶液で20倍希釈した。0.03%抗AFP抗体結合磁性粒子50μlを入れた反応容器中に各測定試料を各々20μl添加・混合し、37℃で8分間反応させた。この後、反応容器に磁石を接して粒子を集磁させ上清を除き洗浄した。0.1μg/ml ALP結合抗AFP抗体溶液を50μl添加・混合し、37℃で8分間反応させた。反応後この反応容器に磁石を接して粒子を集磁させ上清を除き洗浄した。この粒子に前記基質液を200μl添加・混合した。37℃で4分間反応させた後、フォトンカウンター(浜松フォトニクス社製)で発光(シグナル)をカウントし、2秒間の積算値を求めた。その結果を表6に示す。未処理TBQと比較し、亜硫酸ナトリウム処理TBQの同時再現性(CV値)は向上した。
【0045】
【表6】

【0046】
実施例5 未処理と酸化還元処理TBQの化学発光免疫測定に与える影響(2)
35.2mg/mlTBQ溶液300mlに1M亜硫酸ナトリウム−HCl溶液(pH6.0)を15ml加え、混合後、25℃にて24時間処理した。次にこれを透析膜(分子量カット12000−14000、三光純薬社製)に分注後、MilliQ水を外液として透析を行い、処理TBQとした。0.8mg/mlの未処理TBQ又は処理TBQを含有した0.2mg/mlAMPPD液(0.1M DEA、1mM MgCl2、0.05% NaN3、pH10.0)を調整した(基質液)。
【0047】
前記実施例4と同様に試験試料としてαフェトプロテインを用いて、免疫測定を行い発光(シグナル)をカウントして測定を行った。その結果を表7に示す。未処理TBQと比較し、亜硫酸ナトリウム処理TBQ同時再現性(CV値)は向上した。
【0048】
【表7】

【0049】
実施例6 未処理と酸化還元処理BDMQの化学発光免疫測定に与える影響
BDMQ溶液(25.4mg/ml)10mlに1M亜硫酸ナトリウム−HCl溶液(pH6.0)を0.5ml加え、混合後、25℃にて24時間処理した。次にこれを透析膜(分子量カット12000−14000、三光純薬社製)に分注後、MilliQ水を外液として透析を行い、処理BDMQとした。
【0050】
次に0.4mg/mlの未処理BDMQ又は処理BDMQを含有した0.2mg/mlAMPPD液(0.1Mジエタノールアミン(DEA)、1mM 塩化マグネシウム(MgCl2)、0.05% アジ化ナトリウム(NaN3)pH10.0)を調製した(基質液)。
【0051】
αフェトプロテイン(AFP)0,10,100,800および2000ng/mlを含む試験試料をBSA溶液で10倍希釈した。0.015%抗AFP抗体結合磁性粒子250μlを入れた反応容器中に各測定試料を各々20μl添加・混合し、37℃で10分間反応させた。この後、反応容器に磁石を接して粒子を集磁させ上清を除き洗浄した。0.1μg/ml ALP結合抗AFP抗体溶液を250μl添加・混合し、37℃で10分間反応させた。反応後、この反応容器に磁石を接して粒子を集磁させ上清を除き洗浄した。この粒子に前記基質液を200μl添加・混合した。37℃で5分間反応させた後、フォトンカウンター(浜松フォトニクス社製)で発光(シグナル)をカウントし、2秒間の積算値を求めた。その結果を表8示す。未処理BDMQと比較し、亜硫酸ナトリウム処理処理BDMQの同時再現性(CV値)は向上した。
【0052】
【表8】

【0053】
実施例7 未処理と酸化還元処理BDMQの粒子分散に与える影響
BDMQ溶液(25.4mg/ml)10mlに1M亜硫酸ナトリウム−HCl溶液(pH6.0)を0.5ml加え、混合後、25℃にて24時間処理した。次にこれを透析膜(分子量カット12000−14000、三光純薬社製)に分注後、MilliQ水を外液として透析を行い、処理BDMQとした。
【0054】
次に0.4mg/ml未処理BDMQ又は処理BDMQを含む0.1M DEA(pH10.0)を調製した。0.03%磁性粒子を反応容器に100μl分注し、磁石を接して粒子を集磁させ上清を除いた。前記BDMQを含むDEA溶液200μlを加えて30秒攪拌した。攪拌後、15秒後にピペットマンで液上面から150μlを吸引し、分光光度計用セルに分注し、10秒後に分光光度計(SHIMADZU社製UV−1200)で濁度(OD500)を測定した。この結果を表9に示す。処理BDMQは未処理BDMQに比べて、濁度は高く、粒子の分散性は向上した。
【0055】
【表9】

【0056】
発明の効果
上記のように、酸化剤または還元剤処理により、液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫測定法におけるシグナル検出に使用され、従来の化学発光増強剤と比較して該微細固体担体の分散性を改善し、ジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光の増強作用の優れた化学発光増強剤、該化学発光増強剤を用いた化学発光方法及びキットが提供された。また、本発明の化学発光増強剤を用いると測定値の同時再現性が向上し、より正確な定量が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体中に分散可能な微細固体担体に固定化される抗原または/および抗体を用いる固相免疫測定法におけるシグナル検出に使用され、ジオキセタンを有する化学発光基質の酵素反応による発光を増強するための水溶性高分子第四級アンモニウム塩、第四級スルホニウム塩又は第四級ホスホニウム塩からなる化学発光増強剤であって、酸化剤または還元剤処理により前記微細固体担体の凝集抑制処理を施したものである化学発光増強剤。

【公開番号】特開2010−32529(P2010−32529A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216575(P2009−216575)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【分割の表示】特願2004−515177(P2004−515177)の分割
【原出願日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【出願人】(306008724)富士レビオ株式会社 (55)
【Fターム(参考)】