説明

化学防護服

【課題】 着用者がしゃがんで前傾姿勢をとった時に頭部後面や高圧空気容器収容部下面が突っ張る違和感を覚えず、脱ぐ際に高圧空気容器が引っ掛からない、従来に比べて使い心地の良い自給式呼吸器内装形気密服を提供する。
【解決手段】 人体の頭頂から首に至る部位を覆う頭部と、胸部から腹部に至る部位を覆う胴部と、肩から手首に至る部位を覆う腕部と、腹部からふくらはぎに至る部位を覆う脚部とが一体に形成され、手首から手指先に至る部位を覆う手袋及びふくらはぎから足先に至る部位を覆う足部と協働して身体の全部を防護する化学防護服であって、自給式呼吸器を服内に装着可能な自給式呼吸器内装形気密服において、装着された自給式呼吸器の高圧空気容器に対峙する胴部後面に向けて頭部後面が斜め下方へ延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自給式呼吸器内装形気密服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、人体の頭頂から首に至る部位を覆う頭部1と、胸部から腹部に至る部位を覆う胴部2と、肩から手首に至る部位を覆う腕部3と、腹部からふくらはぎに至る部位を覆う脚部4とが一体に形成され、腕部3に予め接合されて手首から手指先に至る部位を覆う手袋α及び脚部4と一体形成され或いは脚部4に予め接合されてふくらはぎから足先に至る部位を覆う足部βと協働して、身体の全部を防護する化学防護服であって、自給式呼吸器100を服内に装着可能な自給式呼吸器内装形気密服Aが従来から使用されている。胴部2の後面が後方へ膨出して自給式呼吸器の高圧空気容器100aを収容する空間を形成している。自給式呼吸器内装形気密服Aの着用者は外部環境から遮断される。
従来の自給式呼吸器内装形気密服Aにおいては、着用時の服内空間のデッドスペースを極力少なくすべく、図1(b)に示すように、頭部1の後面1aを首の基部位置まで略鉛直に垂下させ、次いで頭部1の後面1a下端を、高圧空気容器100aの頂部に添う上方へ凸の湾曲面を介して、高圧空気容器100aに対峙する胴部後面に接続していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の自給式呼吸器内装形気密服Aには、着用者がしゃがんで前傾姿勢をとった時に、頭部1の後面1a下端と上方へ凸の湾曲面との間の縊れ部1a’が面外方向へ移動しないために、頭部後面1aと高圧空気容器収容部下面1a”とが突っ張って違和感を覚えるという問題があった。前記違和感は、容積の大きな高圧空気容器100aを使用する際に顕著であった。また、気密服Aを脱ぐ際に、高圧空気容器100aが縊れ部1a’に引っ掛かってしまうという問題もあった。
本発明は、着用者がしゃがんで前傾姿勢をとった時に頭部後面や高圧空気容器収容部下面が突っ張る違和感を覚えず、気密服を脱ぐ際に高圧空気容器が気密服に引っ掛からない、従来に比べて使い心地の良い自給式呼吸器内装形気密服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、人体の頭頂から首に至る部位を覆う頭部と、胸部から腹部に至る部位を覆う胴部と、肩から手首に至る部位を覆う腕部と、腹部からふくらはぎに至る部位を覆う脚部とが一体に形成され、手首から手指先に至る部位を覆う手袋及びふくらはぎから足先に至る部位を覆う足部と協働して身体の全部を防護する化学防護服であって、自給式呼吸器を服内に装着可能な自給式呼吸器内装形気密服において、装着された自給式呼吸器の高圧空気容器に対峙する胴部後面に向けて頭部後面が斜め下方へ延在していることを特徴とする自給式呼吸器内装形気密服を提供する。
本発明に係る自給式呼吸器内装形気密服においては、装着された自給式呼吸器の高圧空気容器に対峙する胴部後面に向けて頭部後面を斜め下方へ延在させることにより、従来頭部後面や高圧空気容器収容部下面が突っ張る原因となり、また気密服を脱ぐ際に高圧空気容器が引っ掛かる原因となっていた、頭部後面下端と上方へ凸の湾曲面との間の縊れ部を無くしたので、着用者がしゃがんで前傾姿勢をとった時に頭部後面や高圧空気容器収容部下面が突っ張る違和感を覚えず、気密服を脱ぐ際に高圧空気容器が気密服に引っ掛からない。本発明に係る自給式呼吸器内装形気密服は、従来に比べて使い心地が良い。
【0005】
本発明の好ましい態様においては、上端が頭部上面に固着され両側端が頭部両側面に固着されて、頭部の内部空間を使用者の頭部を収容する前方部と自給式呼吸器具の高圧空気容器上方に位置する後方部とに区画する縦部分隔壁が頭部内に配設されている。
縦部分隔壁が頭部内に配設されることにより、頭部の横方向への拡がりによる形崩れと、頭部の前方傾斜による型崩れとが防止される。
本発明の好ましい態様においては、前端が縦部分隔壁の下端部に固着され後端が傾斜した頭部後面の下端部に固着された横隔壁が頭部内に配設されている。
横隔壁が頭部内に配設されることにより、大寸法の高圧空気容器を装着した時に、傾斜した頭部後面と頭部両側面と縦部分隔壁とによって形成される袋状部内に前記高圧空気容器が侵入し、傾斜した頭部後面に配設される排気弁と干渉する事態の発生が防止される。
横隔壁の両側端はフリーなので、横隔壁の側端と頭部側面との間の隙間から、縦部分隔壁と横隔壁と頭部後面と頭部両側面とで囲まれた空間に手を差し入れて、頭部後面に配設される排気弁の保守を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】従来の自給式呼吸器内装形気密服の構造図である。(a)は正面図であり、(b)は(a)のb−b矢視図である。
【図2】本発明の実施例に係る自給式呼吸器内装形気密服の構造図である。(a)は図1の(b)に相当する図であり、(b)は(a)のb−b矢視図であり、(c)は(b)のc−c矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施例に係る自給式呼吸器内装形気密服を説明する。
図2に示すように、自給式呼吸器内装形気密服Bは、自給式呼吸器内装形気密服Aと同様に、人体の頭頂から首に至る部位を覆う頭部11と、胸部から腹部に至る部位を覆う胴部12と、肩から手首に至る部位を覆う腕部と、腹部からふくらはぎに至る部位を覆う脚部とが一体に形成され、胴部12の後面が後方へ膨出して自給式呼吸器100の高圧空気容器100aを収容する空間を形成する構成を有している。
高圧空気容器100aに対峙する胴部12の後面に向けて、頭部11の後面11aが斜め下方へ延在し、胴部後面の上端部に接続している。
上端が頭部11の上面後端に固着され両側端が頭部11の両側面に固着されて、頭部11の内部空間を、使用者の頭部を収容する前方部と高圧空気容器100aの上方に位置する後方部とに区画する、縦部分隔壁11bが頭部11内に配設されている。
前端が縦部分隔壁11bの下端部に固着され後端が傾斜した頭部後面11aの下端部に固着された横隔壁11cが頭部11内に配設されている。
縦部分隔壁11bと横隔壁11cは、ポリエステル又はナイロン製の縦横方向共に伸縮性のある布素材で形成されていることが望ましい。また自給式呼吸器内装形気密服Bの素材と同一の柔軟な膜素材で形成されても良い。
【0008】
自給式呼吸器内装形気密服Bにおいては、装着された高圧空気容器100aに対峙する胴部12後面に向けて頭部後面11aを斜め下方へ延在させることにより、従来の自給式呼吸器内装形気密服Aにおいて頭部後面1aや高圧空気容器収容部下面1a”が突っ張る原因となり、また気密服Aを脱ぐ際に高圧空気容器100aが引っ掛かる原因となっていた、頭部後面1a下端と上方へ凸の湾曲面との間の縊れ部1a’を無くしたので、着用者がしゃがんで前傾姿勢をとった時に頭部後面11aや高圧空気容器収容部下面11a”が突っ張る違和感を覚えず、また気密服Bを脱ぐ際に高圧空気容器100aが気密服Bに引っ掛からない。従って、自給式呼吸器内装形気密服Bは自給式呼吸器内装形気密服Aよりも使い心地が良い。
頭部11両側面の互いに離隔する方向への相対移動が縦部分隔壁11bによって阻止されることにより、気密服使用時の頭部11の横方向への拡がりが防止される。縦部分隔壁11bの前方への移動が使用者の頭部によって阻止されることにより、気密服使用時の頭部11の前方への傾斜が阻止される。頭部11の横方向への拡がりや前方傾斜が阻止されることにより、気密服使用時の頭部11の形崩れが防止される。
大寸法の高圧空気容器100aを装着した時に、横隔壁11cが高圧空気容器100aの頂部に当接して、縦部分隔壁11bと傾斜した頭部後面11aと頭部11の両側面とによって形成される袋状部内に前記高圧空気容器100aが侵入するのを阻止する。前記袋状部への高圧空気容器100aの侵入が阻止されることにより、高圧空気容器100aと傾斜した頭部後面11aに配設された排気弁15とが干渉して、排気弁15が損傷する事態の発生が防止される。
横隔壁11cの両側端はフリーなので、横隔壁11cの側端と頭部11側面との間の隙間から、縦部分隔壁11bと横隔壁11cと頭部後面11aと頭部11両側面とで囲まれた空間に手を差し入れて、頭部後面11aに配設された排気弁15の保守を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明は、自給式呼吸器内装形気密服に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0010】
A、B 自給式呼吸器内装形気密服
1、11 頭部
2、12 胴部
3 腕部
4 脚部
α 手袋
β 足部
1a、11a 頭部後面
1a’ 縊れ部
1a”、11a” 高圧空気容器収容部下面
11b 縦部分隔壁
11c 横隔壁
15 排気弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の頭頂から首に至る部位を覆う頭部と、胸部から腹部に至る部位を覆う胴部と、肩から手首に至る部位を覆う腕部と、腹部からふくらはぎに至る部位を覆う脚部とが一体に形成され、手首から手指先に至る部位を覆う手袋及びふくらはぎから足先に至る部位を覆う足部と協働して身体の全部を防護する化学防護服であって、自給式呼吸器を服内に装着可能な自給式呼吸器内装形気密服において、装着された自給式呼吸器の高圧空気容器に対峙する胴部後面に向けて頭部後面が斜め下方へ延在していることを特徴とする自給式呼吸器内装形気密服。
【請求項2】
上端が頭部上面に固着され両側端が頭部両側面に固着されて、頭部の内部空間を使用者の頭部を収容する前方部と自給式呼吸器具の高圧空気容器上方に位置する後方部とに区画する縦部分隔壁が頭部内に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の自給式呼吸器内装形気密服。
【請求項3】
前端が縦部分隔壁の下端部に固着され後端が傾斜した頭部後面の下端部に固着された横隔壁が頭部内に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の自給式呼吸器内装形気密服。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−167385(P2012−167385A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26716(P2011−26716)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000145507)株式会社重松製作所 (17)
【Fターム(参考)】