説明

化粧シート

【課題】 耐薬品性、透明性および印刷性により優れた化粧シートを提供する。
【解決手段】 化粧シート100は、基材シート12にフッ素系樹脂含有層15を有しており、フッ素系樹脂含有層15におけるアクリル系樹脂とフッ素系樹脂の配合比がアクリル系樹脂10重量部に対してフッ素系樹脂2重量部〜4重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧シート、特にアクリル系樹脂を含む基材を備える化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装、建具の内装、車両の内装などに用いられる化粧シートが知られている。化粧シートは、基材シートとこの基材シート表面に印刷される印刷層とを含むものが一般的である。基材シートにアクリル系樹脂を用いた化粧シートが例えば下記特許文献1のように報告されている。
【特許文献1】特開2005−41174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、基材シートとしてアクリル系樹脂を用いた場合、耐薬品性に乏しい場合がある。例えば、自動車などの車内の内装用化粧シートとして用いられた場合について考える。運転者や同乗者が整髪料などを車内で使用すると揮発した整髪料成分、または、整髪料自体が整髪料用の容器などからこぼれるなどして、車内の内装用化粧シート表面に付着する。ここで、整髪料には、トルエンなどのアクリルを膨潤させる薬品が含まれていることが多い。化粧シート表面に付着したトルエンは、表面がアクリル系樹脂の基材シートである場合は直接、表面が印刷層などでありアクリル系樹脂の基材シートでない場合であっても表面層を浸透してその層下のアクリル系樹脂の基材シートに影響を与える場合がある。
【0004】
そこで、アクリル系樹脂よりも耐薬品性に優れる樹脂としてフッ素系樹脂からなる基材シートを使用することも考えられる。
【0005】
しかしながら、フッ素系樹脂からなる基材シートを使用すると、アクリル系樹脂ほどの透明性を得ることができない場合がある。このような場合、基材シートの層下に印刷層を形成した場合などでは、層下の印刷層がフッ素系樹脂からなる基材シートを通して見えづらくなる場合がある。また、フッ素系樹脂からなる基材シート表面に印刷層を形成する場合について、フッ素系樹脂からなる基材シート表面は、アクリル系樹脂からなる基材シート表面と比較して印刷層が基材シート表面と密着しにくくなり、印刷性に劣る場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決することに鑑みてなされたものであり、耐薬品性、透明性および印刷性により優れた化粧シートを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクリル系樹脂を含有する基材シートと、印刷されてなる印刷層と、を含む化粧シートであって、前記基材シートの少なくとも表面には、フッ素系樹脂を含むフッ素系樹脂含有層が含まれ、前記フッ素系樹脂含有層のおける前記アクリル系樹脂と前記フッ素系樹脂との配合比について、アクリル系樹脂10重量部に対して、フッ素系樹脂が2重量部〜4重量部含まれてなることを特徴とする。
【0008】
前記基材シート表面に前記印刷層が形成されると好適である。また、前記印刷層は、前記基材シート表面の両面に形成されると好適である。
【0009】
前記基材シートは、前記基材シートと接合される第二の基材と接合されてなると好適である。
【0010】
前記基材シートまたは前記化粧シートの最表面層について、表面の濡れ張力がJISK6768に規定される測定法で37mN/m〜44mN/mであると好適である。
【0011】
前記基材シートは、前記フッ素系樹脂含有層の下層に主としてアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂層が含まれると好適である。
【0012】
上記化粧シートは、車内内装用として用いられると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐薬品性、透明性および印刷性により優れた化粧シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者は、化粧シートにおける基材シートの表面について、その鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、前記基材シートの表面には、フッ素系樹脂を含むフッ素系樹脂含有層が含まれ、前記フッ素系樹脂含有層のおける前記アクリル系樹脂と前記フッ素系樹脂との配合比について、アクリル系樹脂10重量部に対して、フッ素系樹脂が2重量部〜4重量部であると耐薬品性、透明性および印刷性により優れた化粧シートを提供できることを見いだした。
【0015】
さらに本発明者は、この構成が前記基材シート表面に印刷層が形成される化粧シートで印刷性および透明性から好適であることを見いだした。また、印刷層は、基材シート表面の両面に形成されるとさらに好適であることも見いだした。
【0016】
さらに本発明者は、基材シートが基材シートと接合される第二の基材と接合されてなる化粧シートであるとより耐久力がある化粧シートにするなど好適であることも見いだした。
【0017】
さらに本発明者は、基材シートまたは化粧シートの最表面層について、表面の濡れ張力がJISK6768に規定される測定法で37mN/m〜44mN/mであると塗膜の密着性がよく好適であることを見いだした。
【0018】
さらに本発明者は、前記基材シートは、前記フッ素系樹脂含有層の下層に主としてアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂層が含まれるとアクリルの透明性を利用できるので好適であることを見いだした。
【0019】
さらに本発明者は、上記化粧シートが車内内装用として用いられると、上記化粧シートは、アクリルを膨潤させる薬品などの耐薬品性が含有されるフッ素系樹脂のため向上するので好適であることも見いだすことができた。
【0020】
「化粧シート」
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態については、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。
【0021】
以下、実施形態に係る化粧シート100について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の化粧シート100の一例を示す模式的な断面図である。図1の化粧シート100は、図2に示されるように、印刷済基材シート10と印刷済基材シート10を補強する第二の基材としてのバッカー20とから構成されている。
【0022】
「印刷済基材シート」
図3に示されるように、印刷済基材シート10は、基材シート12と、基材シート12の上層側に形成された上層印刷層16、基材シート12の下層側に形成された下層印刷層18とから構成されている。
【0023】
(基材シート)
基材シート12は、図3に示されるように、主としてアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂層13と基材シート12の表層側に形成されたフッ素系樹脂含有層15とから構成されている。
【0024】
アクリル系樹脂層13は、主としてアクリル系樹脂からなり、用いられるアクリル系樹脂としてはアクリル系樹脂一般を用いることができる。例えばアクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる樹脂が挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。これらのアクリル系樹脂は、単体又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0025】
アクリル系樹脂層13、フッ素系樹脂含有層15の厚み比(アクリル系樹脂層/フッ素系樹脂含有層)は、100/5〜100/15であると透明性の確保や、コストを低減させたり、製造適性が良好である理由などから好適である。
【0026】
なお、本実施形態では、基材シート12にアクリル系樹脂層13を設けたがアクリル系樹脂層13は省略し、基材シート12について後述のフッ素系樹脂含有層15のみで構成することも可能である。
【0027】
フッ素系樹脂含有層15は、アクリル系樹脂とフッ素系樹脂を含む。フッ素系樹脂含有層15におけるアクリル系樹脂とフッ素系樹脂配合比についてアクリル系樹脂10重量部に対して、フッ素系樹脂が2重量部〜4重量部含まれている。
【0028】
フッ素系樹脂としてはポリ弗化ビニリデン(PVDF)、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、三フッ化塩化エチレン、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パーフルオロ−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂などを用いることができる。
【0029】
アクリル系樹脂層13、フッ素系樹脂含有層15はアクリル系樹脂、フッ素系樹脂以外の成分が含まれることが妨げられない。必要に応じて着色剤、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が配合されていてもよい。
【0030】
基材シート12、特にフッ素系樹脂含有層15は、本実施形態の化粧シート最表層または上層印刷層16の直下層に設けられる層であり、トップコート層またはオーバープリント層(OP層)とも呼ばれる。フッ素系樹脂含有層15は、アクリル系樹脂層13や、その表面にエンボスが形成された場合、エンボスを形成する凹陥部を被うことにより、化粧シートの表面を保護して、化粧シートに耐汚染性、耐磨耗性等の耐久性や、光沢を付与する役割を担うこともある。
【0031】
このように表面に設けられる基材シート12には、その表面保護のために、架橋性樹脂をアクリル系樹脂層13、フッ素系樹脂含有層15の少なくとも一方に含有させることもできる。そのように架橋剤が含有された層は、架橋剤含有塗工剤により形成される。
【0032】
架橋性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましい。基材シート12を電離放射線硬化性樹脂により形成し、電離放射線等の高エネルギー線で硬化させることにより、基材シート12を構成する層の架橋性が高くなるため、耐磨耗性、耐汚染性などの化粧シートの表面物性が向上したものとなる。なお、電離放射線硬化性樹脂以外の材料を用いることも可能である。
【0033】
架橋性樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルポリオール及びポリエステルアクリレートの少なくとも1種と硬化剤を用いて架橋反応して得られる樹脂、さらに後述する電離放射線硬化性樹脂をそのまま又は硬化剤を用いて架橋硬化させた樹脂が挙げられる。層を形成する塗工剤には、これらの樹脂から選ばれた少なくとも1種の架橋性樹脂を用いることができる。これらの樹脂の中で、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルポリオール及びポリエステルアクリレートより選ばれた少なくとも1種と硬化剤と架橋反応して得られる樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
架橋性樹脂を得るために用いる硬化剤としては、通常イソシアネート類又は有機スルホン酸塩が不飽和ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂に、アミン類がエポキシ系樹脂に用いられ、更にラジカル重合開始剤として、メチルエチルケトンパーオキサイドやアゾビスイソブチルニトリル等が使用される。
【0035】
イソシアネート類としては、2価以上の脂肪族又は芳香族イソシアネートが使用できるが、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
また、電離放射線硬化性樹脂としては、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有する、紫外線、電子線等の電離放射線により硬化し得る樹脂であって、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した組成物が用いられる。これらの組成物としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。このうち、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましく、基材シート12を構成する層に高い架橋性、優れた耐摩耗性、耐汚染性を付与できる。
【0037】
プレポリマー、オリゴマーの例としては不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等が挙げられる。
【0038】
エポキシ樹脂、エポキシ系又はウレタン系の各プレポリマーやオリゴマーを用いる場合には、各々の硬化に用いる硬化剤、例えばアミンやイソシアネートを混合して2液性混合物として使用することができる。
【0039】
また、単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N、N−ジベンジルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)プロピル等の不飽和酸の置換アミノアルコースエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、及び/又は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等が挙げられる。
【0040】
以上の化合物を必要に応じ1種もしくは2種以上混合して用いることができる。なお、単量体の選定に際しては、硬化物の可撓性が要求される場合には塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を少なめにしたり、1官能又は2官能アクリレート系単量体を用い比較的低架橋密度の構造とする。また、硬化物の耐熱性、硬度、耐溶剤性等を要求される場合には塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を多めにしたり、3官能以上のアクリレート系単量体を用い高架橋密度の構造とするのが好ましい。1、2官能単量体と3官能以上の単量体を混合し塗工適性と硬化物の物性とを調整することもできる。以上のような1官能アクリレート系単量体としては、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。また、2官能アクリレート系単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート等が、3官能以上のアクリレート系単量体としてはトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0041】
以上のようにして得られる電離放射線硬化性樹脂を架橋性樹脂に用いる時には、硬化剤と反応する官能基を有するのが好ましく、官能基としてOH基、SH基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられる。しかし、これらの官能基を有していない場合でも、重合性不飽和二重結合を有していれば、重合により硬化させて用いることができる。つまり、架橋性樹脂は、硬化剤を用いて架橋される樹脂と、硬化剤を用いずにラジカル重合により硬化される樹脂を含んでおり、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレートやアクリルポリオール等を用いる場合には、OH基やエポキシ基は硬化剤による架橋反応を起こして硬化が進み、さらに、アクリル基の二重結合はラジカル重合を起こして各々硬化する。従って硬化後の架橋性樹脂は、架橋反応生成物と重合生成物が別々に生成している場合があり、また、同一分子中に架橋により生じる構造と重合により生じる構造が存在する場合もある。また、架橋反応生成物と重合生成物の各々に重合性二重結合が存在すれば、両反応生成物が重合反応を起こして1分子を形成することもある。
【0042】
フッ素系樹脂含有層15、アクリル系樹脂層13などの基材シート12を形成するには、上記した架橋性樹脂に用いる官能基または/および重合性二重結合を有する樹脂、プレポリマーまたはオリゴマーを硬化剤または重合触媒等を混合した混合物として塗布することもできる。またこの混合物の硬化が進行して塗布に適宜な粘性に達したのちに塗布することもできる。
【0043】
添加剤としては、マット剤、光重合開始剤、光増感剤等が挙げられる。添加剤としてマット剤を用いることにより、形成された基材シート12の艶消しの効果が得られる。マット剤としてはシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ガラスバルーン、ポリエチレン等の無機又は有機のフィラー乃至微粉末が挙げられる。マット剤の形状は任意であるが球状又は略球状が好ましい。マット剤の粒径としては0.1〜10μm程度のものを用いることができるが、最大粒径が9〜10μmのものが好ましい。最大粒径が9〜10μmの範囲内であることにより、均一に分散して美麗なマット面(艶消し面)を形成し得ると共に、アクリル系樹脂層13、フッ素系樹脂含有層15表面に目立った凹凸を形成せず比較的表面が平滑に形成される。フッ素系樹脂含有層15にマット剤を含有させる場合には、電離放射線硬化性樹脂組成物にマット剤を混合して分散させる。
【0044】
上述した電離放射線硬化性樹脂組成物を、特に紫外線で硬化させる場合には、電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、及び/又は光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。
【0045】
電離放射線のうち、紫外線の発生源としては超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。また、電子線源としてはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは直線型、ダイナミトロン型、高周波等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを持つ電子線を照射する。電子線の照射線量としては通常、0.5〜30Mrad程度である。
【0046】
(印刷層)
印刷層は、本実施形態においては、アクリル樹脂層10の上層表目面側、下層表面側にそれぞれ印刷されてなる上層印刷層16、下層印刷層18である。なお、印刷形態は、絵、図、文字、数字これらに限られず、表現される形態全てを含むものである。
【0047】
上層印刷層16は、フッ素系樹脂含有層15の上層表面側に印刷されてなる印刷層である。下層印刷層18は、基材シート12の下層表面側、本実施形態ではアクリル系樹脂層13の下層側表面に印刷されてなる印刷層である。
【0048】
上層印刷層16、下層印刷層18の印刷方法としては、所望に応じて変化させることで特に限定されないが、例えばインクジェット印刷、レーザプリンタなどによる電子写真方式、熱溶融転写方式、熱昇華型方式、などが挙げられる。例えば、インクジェットプリンタによるインクによる印刷による受像に適した印刷層を例に挙げて説明する。上層印刷層16、下層印刷層18を形成する樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、セルロース系、カゼイン系等の非塩ビ系の樹脂などが挙げられる。インクジェットプリンタに用いられるインクとしては染料インクと顔料インクとが挙げられる。例えば、顔料インクを用いた場合には、顔料インクの溶剤を吸収し、顔料粒子が脱落しないように保持される多孔質状態であると好適である。上層印刷層16、下層印刷層18は、1〜30μmの空孔寸法を有し、その空孔体積率は20〜70%であると好適である。このような多孔質のインク受像層38は、シリカ、アルミナ等の微粒子を単独または混合した混合粒子に、樹脂(アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、あるいはメチルメタクリレートとアミド樹脂の共重合体樹脂、ポリエステル樹脂等の非水溶性バインダ樹脂等)中に分散させた液を塗布乾燥して作られる。上層印刷層16、下層印刷層18はこの乾燥状態で適切な膜厚、例えば5〜40μmとすることができる。
【0049】
上層印刷層16、下層印刷層18は、上記インクジェット印刷法などによるものに限られず、エンボス加工してエンボス加工による意匠性を付与してもよい。その際の膜厚は、インク受像の容易性とエンボス加工を行う場合には凹凸模様層が適切に表現できる膜厚のバランスを比較考量して決めることができる。
【0050】
本実施形態では、印刷層が基材シートの両面に設けられているが、これに限られない。上層側、下層側いずれか一方の面にのみ形成されているものであってもよい。また、印刷層は、基材シートの面自体に設けられなくともよい。例えば、バッカー側に印刷層が設けられていてもよい。印刷層の印刷態様は、本実施形態のように、横方向に不連続的に複数の層で形成されていてもよく、横方向に連続的に単一層で形成されていてもよく特に限定されることはない。例えば印刷層が印刷層である場合にはそのパターンの形状は、原稿や印刷版の刷版時等に、コンピュータ上での公知のデジタル画像処理によって任意形状の画像を生成することで容易に対応できる。そして、パターン形状を更に変形すれば、兼用型装飾層としてや、位置同調型装飾層としての柄模様を表現したパターンにできる。装飾層が表現する柄模様は、用途に応じたものとすれば良く任意である。例えば、木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、幾何学模様、抽象絵柄模様(例えばグラデーション柄等)、文字、マイクロ文字、記号、マーク、図形等である。
【0051】
上層印刷層16、下層印刷層18の印刷方法は、印刷表面となるフッ素系樹脂含有層15およびアクリル系樹脂層13の表面物性などに応じて適宜選択することができる。上層印刷層16と下層印刷層18とで同じ印刷方法、印刷パターンなどを用いてもよいし、異なった印刷方法、印刷パターンなどを用いてもよい。
【0052】
「バッカー」
バッカー20は、バッカー基材シート24と、バッカー基材シート24の上層表面側に粘着剤が塗布された粘着層22とから構成される。
【0053】
(バッカー基材シート)
バッカー基材シート24は、熱可塑性樹脂一般、ABS樹脂(アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)の三成分からなる熱可塑性樹脂)、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド、エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマーを用いることができるが、ポリオレフィン系樹脂を用いると環境面から好適である。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエンなど一般的なポリオレフィン系樹脂が挙げられる。ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体であるホモポリマーとコポリマータイプのいずれでもよく、さらに、コポリマーのランダムコポリマーとブロックコポリマーのいずれでもよい
樹脂に限られず、材料として紙、織布、不織布、合成紙、チタン紙、ガラス不織布等を用いることができる。紙において好ましくは、壁紙用の難燃紙、水酸化アルミニウム紙、無機質紙、一般紙、薄葉紙、クラフト紙、リンター紙、和紙、板紙、紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工又はドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反、あるいは上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙等の紙、硝子繊維,石綿,チタン酸カリウム繊維,アルミナ繊維,シリカ繊維,炭素繊維等の無機質繊維からなるシート又はフィルム、ポリエステルやビニロン等の有機樹脂等を用いた織布又は不織布等であってもよい。
【0054】
(粘着層)
粘着層22を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤など単体又は2種以上の混合物として用いることが挙げられる。
【0055】
アクリル系粘着剤を用いると印刷済基材シートとの密着性の向上などに好適である。アクリル系粘着剤としては、例えば、ブチルアクリレート(BA)とアクリル酸(AA)とを、BA/AAの重量比が99.9/0.1〜70/30特に99.5/0.5〜80/20の範囲内で共重合させる事によって得られる共重合体を挙げることができる。
【0056】
上記アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万〜100万、より好ましくは40万〜80万であり、斯る分子量は、重合開始剤の量によって、または連鎖移動剤を添加することによって調整することができる。
【0057】
例えば、アクリル系樹脂としては、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート等のアクリル酸のC2〜C12アルキルエステルの少なくとも1種(モノマーA)とアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の官能基含有アクリル系モノマーの少なくとも1種(モノマーB)とが共重合されることにより得られるものを挙げることができる。上記モノマーAとモノマーBの共重合割合はモノマーA/モノマーBの重量比で99.5/0.1〜70/30特に99/1〜75/25の範囲内が好適である。
【0058】
必要に応じ適宜、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の公知のカップリング剤による接着強化処理を行っても良い。また、接着力強化の点で、接着層と接触する基材シート12面、本実施形態では、アクリル系樹脂層13の表面を粗面化処理しておくのが好ましい。
【0059】
「その他」
本実施形態における化粧シートにおける、アクリル系樹脂層13、フッ素系樹脂含有層15、その他の層製造方法は、例えば、印刷方式としては、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ダイコート、リップコート、キャストコート、ロールコート、エアーナイフコート、メイヤーバーコート、押し出しコート、オフセット、紫外線硬化オフセット、フレキソ、孔版、シルク、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の各種印刷方式が適用できる。下層を乾燥被膜としてから、その上にコートを行う他、下層とその上層とをウェット状態で2層重ねてから乾燥させることもできる。
【0060】
これら塗工剤として、溶媒を用いない無溶剤タイプの塗工剤を用いることも可能である。無溶剤タイプの塗工剤は、環境問題が配慮されたものであり、好ましく用いられる。
【0061】
バインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラート、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合系樹脂等が用いられる。
【0062】
水系塗工剤用のバインダー樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のニトリル系モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系モノマー、該アミド系モノマーのN−アルコキシ置換体、同N−メチロール置換体、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、ジアリルフタレート、アリルグリジジルエーテル、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系モノマー、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等の重合性二重結合を有するモノマー等の1種ないし2種以上と、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他等の不飽和カルボン酸の一種ないしそれ以上との共重合体からなるアルカリ溶液可溶性(メタ)アクリル系共重合体を使用することができる。また、ポリアルリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリウレタン系樹脂(2液硬化型ポリウレタン系樹脂)、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他等の水溶性合成樹脂、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類、等の水溶性天然高分子、その他等も使用することができる。また、その他の水系塗工剤用のバインダー樹脂としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性ないし混合樹脂、その他の樹脂を使用することができる。また、アクリル変性ウレタン樹脂、ポリエステル変性ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体変性ウレタン樹脂等のウレタン系樹脂、ポリオール系樹脂、或いは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル系樹脂との混合樹脂等が好適に用いられる。上記水系塗工剤用のバインダー樹脂は、溶解、エマルション化、マイクロカプセル化、その他の方法で水性化されて、水系塗工剤に用いられる。
【0063】
溶剤系塗工剤用のバインダー樹脂として、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を混合して用いられる。
【0064】
溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の非水溶性有機溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール等の水溶性有機溶剤、水、またはこれらの混合溶剤等が用いられる。
【0065】
水系塗工剤の溶媒としては、水やアルコール等の水溶性有機溶剤を用いることができる。水としては、通常の工業用水を使用することができる。また、水とアルコール等からなる水溶性有機溶剤として、水のほかにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等を使用して調整することができる。なお、該低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等は、5〜20重量%位の割合で含有していることが望ましい。なお、これら低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等の溶剤は、インキの流動性改良、被印刷体である基材シートへの濡れの向上、乾燥性の調整等の目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量等が決定されるものである。
【0066】
溶剤系塗工剤の溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の非水溶性有機溶剤、またはこれらの混合溶剤等が用いられる。
【0067】
化粧シート100を構成する各層は、例えば耐擦過性を阻害しない程度に、ワックス成分を混合し使用することもできる。ワックスとしては例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルバナワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャー−トロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木蝋、密蝋、イボタロウ、羊毛蝋、セラックスワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種種のワックス等が挙げられる。
【0068】
化粧シート100を構成する各層、例えば樹脂層は、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%の紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤としては、従来公知のものであれば特に制限されないが、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾ−ル系及びシアノアクリレ−ト系のものが好ましい。上記ベンゾフェノン系のものとしては、例えば、2,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンを挙げることができる。
【0069】
また上記ベンゾトリアゾ−ル系のものとしては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾ−ル)、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)、ベンゾトリアゾ−ル、2−(2′−ヒドロキシ−3′−メチル−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロル−ベンゾトリアゾ−ル及び2−(2′−ヒドロキシ−5′−フェニルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾ−ル、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−{2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル}ベンゾトリアゾ−ル、2−{2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)フェニル}−2−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。上記シアノアクリレ−ト系のものとしては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレ−ト、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレ−ト等を挙げることができる。
【0070】
上記ワックス成分、紫外線吸収剤の他に、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、レベリング剤、カップリング剤等の添加剤、改質剤を必要に応じ、添加する層あるいは化粧シート全体の特性を損なわない範囲で添加することもできる。
【0071】
添加剤として用いられる着色剤は、化粧シートとして必要な色彩を化粧シート100に持たせる役割を果たす。用途に応じて着色剤を選択し、化粧シートを有色透明に着色したり、有色不透明に着色することができる。バッカー基材シート24に用いられる一般的には被着体の表面を隠蔽することが必要であるため、バッカー基材シート24を着色剤によって有色不透明とすることが好ましい。
【0072】
着色剤としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、バンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4A、フタロシアニンブルー等の有機顔料あるいは染料、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。また、必要に応じて、無機充填剤を添加してもよく、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が挙げられる。着色剤の添加量は、通常、樹脂材料100重量部に対し、1〜50重量部程度であるがこれに限られない。
【0073】
また、化粧シート100を構成する各層は、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理などを施すことができる。
【0074】
本実施形態では、基材シート12の少なくとも表面にフッ素系樹脂含有層15が形成され、フッ素系樹脂含有層15のフッ素系樹脂の配合比から耐薬品性に十分な量のフッ素系樹脂が含有されているので耐薬品性に優れた化粧シートを提供できる。
【0075】
また、本実施形態では、基材シート12の少なくとも表面にフッ素系樹脂含有層15が形成され、フッ素系樹脂含有層15のアクリル系樹脂の配合比から透明性および密着性を主とした印刷性に、より優れた化粧シートを提供できる。
【0076】
なお、本実施形態では、補強などのためにバッカーを設けたが、補強しなくても酔い場合など、設けなくともよい場合がある。また、バッカー表面に粘着層を設けたがこれに限られず、粘着層を設けなくともよい場合がある。
【実施例】
【0077】
下記のようにして製造された化粧シートのフッ素系樹脂含有層のアクリル系樹脂とフッ素系樹脂の配合比を変化させて耐薬品性、透明性、印刷性を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
耐薬品性の評価は整髪料を化粧シート表面に付着させ一定時間後の表面状態の荒れが少ないことを良好として評価した。透明性は目視により表面の濁り状態としてその濁り状態が少ないことを良好として評価した。印刷性は印刷によるインキの密着性として評価した。評価基準は◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良である。
【0079】
【表1】

【0080】
「製造方法」
評価の対象となる化粧シートは、上記実施形態の図1に示される構成の化粧シートとして製造し、実施例1〜3、比較例1、2において、表層のフッ素樹脂含有層のアクリル系樹脂:フッ素系樹脂の配合比のみを変化させ、他の層構成や材料、製造方法は同一として試験した。
【0081】
「考察」
表1から、アクリル系樹脂とフッ素系樹脂との配合比について、アクリル系樹脂10重量部に対して、フッ素系樹脂が2重量部〜4重量部であると耐薬品性、透明性および印刷性により優れた化粧シートを提供できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施形態における化粧シートの模式的な断面図である。
【図2】本実施形態における化粧シートの分解断面図である。
【図3】本実施形態における基材シートの構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0083】
100 化粧シート
10 印刷済基材シート
12 基材シート
20 バッカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂を含有する基材シートと、印刷されてなる印刷層と、を含む化粧シートであって、
前記基材シートの少なくとも表面には、フッ素系樹脂を含むフッ素系樹脂含有層が含まれ、
前記フッ素系樹脂含有層のおける前記アクリル系樹脂と前記フッ素系樹脂との配合比について、
アクリル系樹脂10重量部に対して、フッ素系樹脂が2重量部〜4重量部含まれてなる化粧シート。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧シートであって、
前記基材シート表面に前記印刷層が形成される化粧シート。
【請求項3】
請求項2に記載の化粧シートであって、
前記印刷層は、前記基材シート表面の両面に形成される化粧シート。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の化粧シートであって、
前記基材シートは、前記基材シートと接合される第二の基材と接合されてなる化粧シート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の化粧シートであって、
前記基材シートまたは前記化粧シートの最表面層について、
表面の濡れ張力がJISK6768に規定される測定法で37mN/m〜44mN/mである化粧シート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の化粧シートであって、
前記基材シートは、前記フッ素系樹脂含有層の下層に主としてアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂層が含まれる化粧シート。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の化粧シートであって、
車内内装用として用いられる化粧シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−281563(P2006−281563A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103553(P2005−103553)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】