化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシ
【課題】化粧料の含み具合や塗布性能が優れると共に、肌への感触も良好な化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシの提供。
【解決手段】少なくとも一部が本体部繊維軸方向に埋設され、他の部分が本体部繊維表面から突出した凸条部を、前記本体部の側面外周長手方向に連続的して２条以上有する複合モノフィラメントのブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、このブリッスルの少なくとも一端には、薬液処理によりテーパー部が形成されていて、このテーパー部の長手方向には前記凸条部が溶解することにより形成された凹条部を有することを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【解決手段】少なくとも一部が本体部繊維軸方向に埋設され、他の部分が本体部繊維表面から突出した凸条部を、前記本体部の側面外周長手方向に連続的して２条以上有する複合モノフィラメントのブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、このブリッスルの少なくとも一端には、薬液処理によりテーパー部が形成されていて、このテーパー部の長手方向には前記凸条部が溶解することにより形成された凹条部を有することを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、化粧料の含み具合や塗布性能が優れると共に、肌への感触も良好な化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、化粧用ブラシの毛材としては、山羊、リスやイタチなどの獣毛が多用されてきたが、近年獣毛の調達が困難となるに伴い、これに代わってナイロンやポリブチレンテレフタレートなどを使った合成樹脂製の化粧用ブラシ毛材が使用され、その需要が増加しつつある。
【０００３】
この合成樹脂製毛材の断面形状としては、丸断面の直線状モノフィラメントの先端をテーパー状としたものが一般的であるが、このものは、獣毛に比べ表面が平滑であるため化粧粉がブラシに付着しにくいために、化粧粉の含みが悪く、また塗布ムラを生じるなど塗布性能にも問題があるばかりか、毛材が硬く感触も劣るものとなっていた。
【０００４】
これらの問題を改善するための技術としては、合成樹脂製毛材の断面形状に凹凸部を複数形成した合成樹脂製毛材（例えば、特許文献１参照）が既に知られている。
【０００５】
しかしながら、この手段によって得られた合成樹脂製毛材は、従来のものと比べて化粧ブラシの化粧粉の含み具合や塗布性能および肌への感触については向上するものの、保持性はあるものの化粧料が離脱しにくい点や、毛腰が要求される用途などではブラシ根元の毛腰が柔らかくなりすぎる点などの問題があるため、その改善性能はいまだに十分なものとはいえず、さらに獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材の実現が求められていた。
【特許文献１】特許第１５４５６４２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【０００７】
したがって、本発明の目的は、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が良好で、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するため本発明によれば、少なくとも一部が本体部繊維軸方向に埋設され、他の部分が本体部繊維表面から突出した凸条部を、前記本体部の側面外周長手方向に連続的して２条以上有する複合モノフィラメントのブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、このブリッスルの少なくとも一端には、薬液処理によりテーパー部が形成されていて、このテーパー部の長手方向には前記凸条部が溶解することにより形成された凹条部を有することを特徴とする化粧ブラシ用毛材が提供される。
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材においては、前記複合モノフィラメントが、凸条部に薬液溶解速度の速い合成樹脂、本体部に凸条部の合成樹脂よりも薬液溶解速度の遅い樹脂を用いて構成されていることが好ましい条件として挙げられる。
【０００９】
また、本発明の化粧ブラシは、前記化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、以下に説明するとおり、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が良好で、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
以下に、本発明の化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００１２】
図１は本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示した正面図、図２（ａ）および（ｂ）は図１のＩ−Ｉ線拡大断面図およびＪ−Ｊ線拡大断面図であり、符号１は化粧ブラシ用毛材、２はモノフィラメント本体部、３は凸条部、４は凹条部、５はテーパー部、６はストレート部、ｃは本体部外径をそれぞれ示している。
【００１３】
図１に示したように、本発明の化粧ブラシ用毛材１は、少なくとも一部が本体部２の繊維軸方向に埋設され、他の部分が本体部２の繊維表面から突出した凸条部３を、本体部２の側面外周長手方向に連続的して２条以上有する複合モノフィラメントのブリッスルからなり、このブリッスルのストレート部６の少なくとも一端側にはテーパー部５が構成されている。そして、テーパー部５においては、薬液処理によりテーパー部５を形成される段階で前記凸条部３が速く溶解してできた凹条部４を有することを特徴とする。
【００１４】
つまり、テーパー部５に凸条部３が溶解してできた凹条部４を形成することで、化粧ブラシを使用した時のソフトな感触が向上すると共に、化粧料の保持性に優れ塗布性能が改善された化粧ブラシを得ることができる。一方、ストレート部６には凸条部３がそのまま残り、凸条部３の選択した樹脂性能を一部付与したことで、いままでストレート部で不足していた毛腰の問題が補強されるため、これらの性能を一挙に改善することが可能となったのである。
【００１５】
本発明の歯ブラシ用毛材１においては、モノフィラメント本体部２と凸状部３の素材選定が重要であり、凸条部３には後述の化学的薬液処理に用いる薬液に対して溶解速度の速い合成樹脂を、一方、本体部２には前記凸条部３の合成樹脂よりも薬液溶解速度が遅い合成樹脂を使用して構成された複合モノフィラメントを用いることが大切である。
【００１６】
また、凸条部３の直径は特に限定されないが、直径が０．０１〜０．０４ｍｍの範囲にあることが好ましい。これらにすることで化粧料が保持し易くなり、かつ、塗布する際は化粧料が一度に排出されることなく、均一で持続性がある塗布効果がより発揮する。
【００１７】
ここで、本発明の化粧ブラシ用毛材１の本体部の外径ｃは、化粧ブラシの種類に応じて適宣選択することができるが、化粧ブラシに要求される肌への感触などを考慮すると、０．０５〜０．２５ｍｍの範囲であることが好ましく、さらには０．０７〜０．２０ｍｍの範囲であることがより好ましい。
【００１８】
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材１に用いられる具体的な本体部２と凸条部３の合成樹脂の組み合わせとしては、化学的薬液処理に用いられる薬液が水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性薬液である場合は、本体部／凸条部の組み合わせとしては、ポリブチレンテレフタレート（以下ＰＢＴと称す）／ポリエチレンテレフタレート（以下ＰＥＴと称す）、ＰＢＴ／ポリエチレンナフタレート、ＰＢＴ／ポリエステルエラストマー、ＰＢＴ／ポリプロピレンテレフタレート（以下ＰＴＴと称す）、ＰＥＴ／ポリエステルエラストマーなどが、また、化学的薬液処理に用いられる薬液が塩酸などの酸性薬液である場合は、ポリアミド６・１０／ポリアミドエラストマー、ポリアミド６／ポリアミドエラストマーなどの組み合わせが挙げられ、これらに限定されるものではなく、適宣選定することができるが、なかでも凸条部３の合成樹脂が本体部２より硬い樹脂を選択した場合の化粧ブラシは、先端のソフトの感触を維持しつつ、ブラシ根元は毛腰がある化粧ブラシの製造が可能となる。一方、凸条部３の合成樹脂を本体部２より柔らかいものにした場合は、全体がよりソフト感触の化粧ブラシの製造が可能となることから、化粧ブラシの種類に応じて適宜に組合せを選択することができる。
【００１９】
なお、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、その目的に応じて複合モノフィラメントの本体部２および凸条部３を構成する合成樹脂に対し、耐熱剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、抗菌剤、染料および顔料などの慣用の各種添加剤を任意に含有することができる。
【００２０】
次に、本発明の化粧ブラシ用毛材１の製造方法の一例について説明する。例えば、複合モノフィラメントの本体部２を構成する合成樹脂と、凸条部３を構成する合成樹脂とを、公知の複合溶融紡糸法で製造可能であり、ノズルから溶融共押し出した後、冷却および延伸工程を経て必要に応じて熱セットした後、一旦巻き取り、この複合モノフィラメントを所望な長さにカットしてカットブリッスルを作る。
【００２１】
また、得られたカットブリッスル束の少なくとも一端を、酸やアルカリ液などの薬液に浸漬する化学処理に供することにより、テーパー部５を形成する段階で、凸条部３が先に溶解してできた凹条部４を有するテーパー部５が形成され、ストレート部６とは断面形状が異なるテーパー部５を有する化粧ブラシ用毛材を得ることができる。
【００２２】
上記の製造方法により得られた化粧ブラシ用毛材１を使用した本発明の化粧ブラシは、公知の方法で製造することができ、製造方法について特に限定されない。
【実施例】
【００２３】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、実施例における毛材の評価は次の方法により行った。
【００２４】
［化粧塗布性能］
成人女性１５名に対して、獣毛使用のフェースブラシと実施例および比較例で作製したフェースブラシとを使用して、粉体化粧料（アイビー化粧品：フェースカラーパウダー）を肌に塗布してもらい、以下の判定基準を基にして、化粧ブラシへの化粧粉の含み具合と肌への塗布斑の発生について回答を得た。
判定：
◎・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が多く、塗布斑も少なかった。
○・・・獣毛使用のものと同等の化粧粉の含み具合と塗布斑であった。
△・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が少なく、塗布斑も多かった。
×・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が極めて悪く、塗布斑が著しく悪かった。
【００２５】
［肌への感触］
上記化粧料の塗布性能評価と同時に、以下の判定基準を基にして、肌への感触についても回答を得た。
判定：
１・・・獣毛使用のものよりも優れた感触であった。
２・・・獣毛使用のものと同等の感触であった。
３・・・獣毛使用のものに比べてやや劣るが、実用上問題なかった。
４・・・獣毛使用のものに比べて肌に刺激や柔軟性不足が感じられ、感触が良 くなかった。
【００２６】
［実施例１］
モノフィラメント本体部となる合成樹脂としてＰＢＴ樹脂（東レ（株）製１２００Ｓ）を、凸条部となる合成樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂（東レ（株）製Ｔ３０１Ｔ）を使用した。
【００２７】
これら合成樹脂を複合紡糸機に供給し、紡糸機内で溶融押し出し後、冷却、延伸を行うことにより、表１に示すような断面形状（本体部外径０．１０ｍｍ、凸条部の数４、凸条部の直径０．０２ｍｍ）を有するモノフィラメントを得た。そして、得られたモノフィラメントを５０ｍｍの長さにカットした後、毛材束の一端をアルカリ溶解法でテーパー加工（テーパー長１５ｍｍ）した後、化粧ブラシ用毛材を作製した。さらに、これを、基台に植毛することにより、フェースブラシを作製した。
【００２８】
［実施例２］
実施例１において、凸条部となる合成樹脂をＰＥＮ（東洋紡績社製ＰＮ５５０）に変更した以外は、実施例１と同じ方法でフェースブラシを作製した。
【００２９】
［実施例３］
実施例１において、凸条部となる合成樹脂をポリエテルエラストマー樹脂（東レ・デュポン（株）製、ハイトレル７２４７）に変更した以外は、実施例１と同じ方法でフェースブラシを作製した。
【００３０】
［比較例１］
実施例１において、本体部および凸条部となる合成樹脂をＰＢＴ樹脂（東レ（株）製１２００Ｓ）に、それぞれ変更した以外は、実施例１と同じ方法でフェースブラシを作製した。
【００３１】
［比較例２、３］
ＰＢＴ樹脂（東レ（株）製１２００Ｓ）を紡糸機に供給し、溶融押し出し後、冷却、延伸して５葉断面糸（外径０．１０ｍｍ）および丸断面糸（外径０．１０ｍｍ）のモノフィラメントを得た。そして、得られたモノフィラメントを５０ｍｍの長さにカットした後、毛材束の一端をアルカリ溶解法でテーパー加工（テーパー長１５ｍｍ）した後、化粧ブラシ用毛材を作製した。さらに、これを、基台に植毛することにより、フェースブラシを作製した。
【００３２】
上記の実施例および比較例で得られた化粧ブラシの評価結果を表１に示す。
【００３３】
【表１】
【００３４】
表１の結果から明らかなように、本発明の化粧ブラシ用毛材を植毛してなる化粧ブラシは、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が良好で、獣毛に十分匹敵し使用感も満足されたものである。
【産業上の利用可能性】
【００３５】
本発明の化粧ブラシ用毛材を植毛してなる化粧ブラシは、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が良好で、獣毛に十分匹敵したものであることから、従来にない合成樹脂製化粧ブラシ性能を発揮するものであり、フェースブラシ、チークブラシ、パウダーブラシ、シャドウブラシおよびアイライナーブラシなどの各種化粧ブラシへの適用が大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【００３６】
【図１】本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示した正面図。
【図２】（ａ）および（ｂ）は図１のＩ−Ｉ線拡大断面図およびＪ−Ｊ線拡大断面図。
【符号の説明】
【００３７】
１ 化粧ブラシ用毛材
２ モノフィラメント本体部
３ 凸条部
４ 凹条部
５ テーパー部
６ ストレート部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、化粧料の含み具合や塗布性能が優れると共に、肌への感触も良好な化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、化粧用ブラシの毛材としては、山羊、リスやイタチなどの獣毛が多用されてきたが、近年獣毛の調達が困難となるに伴い、これに代わってナイロンやポリブチレンテレフタレートなどを使った合成樹脂製の化粧用ブラシ毛材が使用され、その需要が増加しつつある。
【０００３】
この合成樹脂製毛材の断面形状としては、丸断面の直線状モノフィラメントの先端をテーパー状としたものが一般的であるが、このものは、獣毛に比べ表面が平滑であるため化粧粉がブラシに付着しにくいために、化粧粉の含みが悪く、また塗布ムラを生じるなど塗布性能にも問題があるばかりか、毛材が硬く感触も劣るものとなっていた。
【０００４】
これらの問題を改善するための技術としては、合成樹脂製毛材の断面形状に凹凸部を複数形成した合成樹脂製毛材（例えば、特許文献１参照）が既に知られている。
【０００５】
しかしながら、この手段によって得られた合成樹脂製毛材は、従来のものと比べて化粧ブラシの化粧粉の含み具合や塗布性能および肌への感触については向上するものの、保持性はあるものの化粧料が離脱しにくい点や、毛腰が要求される用途などではブラシ根元の毛腰が柔らかくなりすぎる点などの問題があるため、その改善性能はいまだに十分なものとはいえず、さらに獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材の実現が求められていた。
【特許文献１】特許第１５４５６４２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【０００７】
したがって、本発明の目的は、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が良好で、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するため本発明によれば、少なくとも一部が本体部繊維軸方向に埋設され、他の部分が本体部繊維表面から突出した凸条部を、前記本体部の側面外周長手方向に連続的して２条以上有する複合モノフィラメントのブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、このブリッスルの少なくとも一端には、薬液処理によりテーパー部が形成されていて、このテーパー部の長手方向には前記凸条部が溶解することにより形成された凹条部を有することを特徴とする化粧ブラシ用毛材が提供される。
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材においては、前記複合モノフィラメントが、凸条部に薬液溶解速度の速い合成樹脂、本体部に凸条部の合成樹脂よりも薬液溶解速度の遅い樹脂を用いて構成されていることが好ましい条件として挙げられる。
【０００９】
また、本発明の化粧ブラシは、前記化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、以下に説明するとおり、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が良好で、獣毛に十分匹敵し得る性能を備えた合成樹脂製化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
以下に、本発明の化粧ブラシ用毛材および化粧ブラシについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００１２】
図１は本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示した正面図、図２（ａ）および（ｂ）は図１のＩ−Ｉ線拡大断面図およびＪ−Ｊ線拡大断面図であり、符号１は化粧ブラシ用毛材、２はモノフィラメント本体部、３は凸条部、４は凹条部、５はテーパー部、６はストレート部、ｃは本体部外径をそれぞれ示している。
【００１３】
図１に示したように、本発明の化粧ブラシ用毛材１は、少なくとも一部が本体部２の繊維軸方向に埋設され、他の部分が本体部２の繊維表面から突出した凸条部３を、本体部２の側面外周長手方向に連続的して２条以上有する複合モノフィラメントのブリッスルからなり、このブリッスルのストレート部６の少なくとも一端側にはテーパー部５が構成されている。そして、テーパー部５においては、薬液処理によりテーパー部５を形成される段階で前記凸条部３が速く溶解してできた凹条部４を有することを特徴とする。
【００１４】
つまり、テーパー部５に凸条部３が溶解してできた凹条部４を形成することで、化粧ブラシを使用した時のソフトな感触が向上すると共に、化粧料の保持性に優れ塗布性能が改善された化粧ブラシを得ることができる。一方、ストレート部６には凸条部３がそのまま残り、凸条部３の選択した樹脂性能を一部付与したことで、いままでストレート部で不足していた毛腰の問題が補強されるため、これらの性能を一挙に改善することが可能となったのである。
【００１５】
本発明の歯ブラシ用毛材１においては、モノフィラメント本体部２と凸状部３の素材選定が重要であり、凸条部３には後述の化学的薬液処理に用いる薬液に対して溶解速度の速い合成樹脂を、一方、本体部２には前記凸条部３の合成樹脂よりも薬液溶解速度が遅い合成樹脂を使用して構成された複合モノフィラメントを用いることが大切である。
【００１６】
また、凸条部３の直径は特に限定されないが、直径が０．０１〜０．０４ｍｍの範囲にあることが好ましい。これらにすることで化粧料が保持し易くなり、かつ、塗布する際は化粧料が一度に排出されることなく、均一で持続性がある塗布効果がより発揮する。
【００１７】
ここで、本発明の化粧ブラシ用毛材１の本体部の外径ｃは、化粧ブラシの種類に応じて適宣選択することができるが、化粧ブラシに要求される肌への感触などを考慮すると、０．０５〜０．２５ｍｍの範囲であることが好ましく、さらには０．０７〜０．２０ｍｍの範囲であることがより好ましい。
【００１８】
なお、本発明の化粧ブラシ用毛材１に用いられる具体的な本体部２と凸条部３の合成樹脂の組み合わせとしては、化学的薬液処理に用いられる薬液が水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ性薬液である場合は、本体部／凸条部の組み合わせとしては、ポリブチレンテレフタレート（以下ＰＢＴと称す）／ポリエチレンテレフタレート（以下ＰＥＴと称す）、ＰＢＴ／ポリエチレンナフタレート、ＰＢＴ／ポリエステルエラストマー、ＰＢＴ／ポリプロピレンテレフタレート（以下ＰＴＴと称す）、ＰＥＴ／ポリエステルエラストマーなどが、また、化学的薬液処理に用いられる薬液が塩酸などの酸性薬液である場合は、ポリアミド６・１０／ポリアミドエラストマー、ポリアミド６／ポリアミドエラストマーなどの組み合わせが挙げられ、これらに限定されるものではなく、適宣選定することができるが、なかでも凸条部３の合成樹脂が本体部２より硬い樹脂を選択した場合の化粧ブラシは、先端のソフトの感触を維持しつつ、ブラシ根元は毛腰がある化粧ブラシの製造が可能となる。一方、凸条部３の合成樹脂を本体部２より柔らかいものにした場合は、全体がよりソフト感触の化粧ブラシの製造が可能となることから、化粧ブラシの種類に応じて適宜に組合せを選択することができる。
【００１９】
なお、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、その目的に応じて複合モノフィラメントの本体部２および凸条部３を構成する合成樹脂に対し、耐熱剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、抗菌剤、染料および顔料などの慣用の各種添加剤を任意に含有することができる。
【００２０】
次に、本発明の化粧ブラシ用毛材１の製造方法の一例について説明する。例えば、複合モノフィラメントの本体部２を構成する合成樹脂と、凸条部３を構成する合成樹脂とを、公知の複合溶融紡糸法で製造可能であり、ノズルから溶融共押し出した後、冷却および延伸工程を経て必要に応じて熱セットした後、一旦巻き取り、この複合モノフィラメントを所望な長さにカットしてカットブリッスルを作る。
【００２１】
また、得られたカットブリッスル束の少なくとも一端を、酸やアルカリ液などの薬液に浸漬する化学処理に供することにより、テーパー部５を形成する段階で、凸条部３が先に溶解してできた凹条部４を有するテーパー部５が形成され、ストレート部６とは断面形状が異なるテーパー部５を有する化粧ブラシ用毛材を得ることができる。
【００２２】
上記の製造方法により得られた化粧ブラシ用毛材１を使用した本発明の化粧ブラシは、公知の方法で製造することができ、製造方法について特に限定されない。
【実施例】
【００２３】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、実施例における毛材の評価は次の方法により行った。
【００２４】
［化粧塗布性能］
成人女性１５名に対して、獣毛使用のフェースブラシと実施例および比較例で作製したフェースブラシとを使用して、粉体化粧料（アイビー化粧品：フェースカラーパウダー）を肌に塗布してもらい、以下の判定基準を基にして、化粧ブラシへの化粧粉の含み具合と肌への塗布斑の発生について回答を得た。
判定：
◎・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が多く、塗布斑も少なかった。
○・・・獣毛使用のものと同等の化粧粉の含み具合と塗布斑であった。
△・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が少なく、塗布斑も多かった。
×・・・獣毛使用のものよりも化粧粉の含み具合が極めて悪く、塗布斑が著しく悪かった。
【００２５】
［肌への感触］
上記化粧料の塗布性能評価と同時に、以下の判定基準を基にして、肌への感触についても回答を得た。
判定：
１・・・獣毛使用のものよりも優れた感触であった。
２・・・獣毛使用のものと同等の感触であった。
３・・・獣毛使用のものに比べてやや劣るが、実用上問題なかった。
４・・・獣毛使用のものに比べて肌に刺激や柔軟性不足が感じられ、感触が良 くなかった。
【００２６】
［実施例１］
モノフィラメント本体部となる合成樹脂としてＰＢＴ樹脂（東レ（株）製１２００Ｓ）を、凸条部となる合成樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂（東レ（株）製Ｔ３０１Ｔ）を使用した。
【００２７】
これら合成樹脂を複合紡糸機に供給し、紡糸機内で溶融押し出し後、冷却、延伸を行うことにより、表１に示すような断面形状（本体部外径０．１０ｍｍ、凸条部の数４、凸条部の直径０．０２ｍｍ）を有するモノフィラメントを得た。そして、得られたモノフィラメントを５０ｍｍの長さにカットした後、毛材束の一端をアルカリ溶解法でテーパー加工（テーパー長１５ｍｍ）した後、化粧ブラシ用毛材を作製した。さらに、これを、基台に植毛することにより、フェースブラシを作製した。
【００２８】
［実施例２］
実施例１において、凸条部となる合成樹脂をＰＥＮ（東洋紡績社製ＰＮ５５０）に変更した以外は、実施例１と同じ方法でフェースブラシを作製した。
【００２９】
［実施例３］
実施例１において、凸条部となる合成樹脂をポリエテルエラストマー樹脂（東レ・デュポン（株）製、ハイトレル７２４７）に変更した以外は、実施例１と同じ方法でフェースブラシを作製した。
【００３０】
［比較例１］
実施例１において、本体部および凸条部となる合成樹脂をＰＢＴ樹脂（東レ（株）製１２００Ｓ）に、それぞれ変更した以外は、実施例１と同じ方法でフェースブラシを作製した。
【００３１】
［比較例２、３］
ＰＢＴ樹脂（東レ（株）製１２００Ｓ）を紡糸機に供給し、溶融押し出し後、冷却、延伸して５葉断面糸（外径０．１０ｍｍ）および丸断面糸（外径０．１０ｍｍ）のモノフィラメントを得た。そして、得られたモノフィラメントを５０ｍｍの長さにカットした後、毛材束の一端をアルカリ溶解法でテーパー加工（テーパー長１５ｍｍ）した後、化粧ブラシ用毛材を作製した。さらに、これを、基台に植毛することにより、フェースブラシを作製した。
【００３２】
上記の実施例および比較例で得られた化粧ブラシの評価結果を表１に示す。
【００３３】
【表１】
【００３４】
表１の結果から明らかなように、本発明の化粧ブラシ用毛材を植毛してなる化粧ブラシは、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が良好で、獣毛に十分匹敵し使用感も満足されたものである。
【産業上の利用可能性】
【００３５】
本発明の化粧ブラシ用毛材を植毛してなる化粧ブラシは、従来の合成樹脂製化粧ブラシ用毛材に比べて、化粧料の含み具合や塗布性能に優れるとともに、肌への感触が良好で、獣毛に十分匹敵したものであることから、従来にない合成樹脂製化粧ブラシ性能を発揮するものであり、フェースブラシ、チークブラシ、パウダーブラシ、シャドウブラシおよびアイライナーブラシなどの各種化粧ブラシへの適用が大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【００３６】
【図１】本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示した正面図。
【図２】（ａ）および（ｂ）は図１のＩ−Ｉ線拡大断面図およびＪ−Ｊ線拡大断面図。
【符号の説明】
【００３７】
１ 化粧ブラシ用毛材
２ モノフィラメント本体部
３ 凸条部
４ 凹条部
５ テーパー部
６ ストレート部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
少なくとも一部が本体部繊維軸方向に埋設され、他の部分が本体部繊維表面から突出した凸条部を、前記本体部の側面外周長手方向に連続的して２条以上有する複合モノフィラメントのブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、このブリッスルの少なくとも一端には、薬液処理によりテーパー部が形成されていて、このテーパー部の長手方向には前記凸条部が溶解することにより形成された凹条部を有することを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【請求項２】
前記複合モノフィラメントが、凸条部に薬液溶解速度の速い合成樹脂、本体部に凸条部の合成樹脂よりも薬液溶解速度の遅い樹脂を用いて構成されていることを特徴とする請求項１に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項３】
請求項１または２に記載の化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする化粧ブラシ。
【請求項１】
少なくとも一部が本体部繊維軸方向に埋設され、他の部分が本体部繊維表面から突出した凸条部を、前記本体部の側面外周長手方向に連続的して２条以上有する複合モノフィラメントのブリッスルからなる化粧ブラシ用毛材であって、このブリッスルの少なくとも一端には、薬液処理によりテーパー部が形成されていて、このテーパー部の長手方向には前記凸条部が溶解することにより形成された凹条部を有することを特徴とする化粧ブラシ用毛材。
【請求項２】
前記複合モノフィラメントが、凸条部に薬液溶解速度の速い合成樹脂、本体部に凸条部の合成樹脂よりも薬液溶解速度の遅い樹脂を用いて構成されていることを特徴とする請求項１に記載の化粧ブラシ用毛材。
【請求項３】
請求項１または２に記載の化粧ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする化粧ブラシ。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００９−２４０５７３（Ｐ２００９−２４０５７３Ａ）
【公開日】平成２１年１０月２２日（２００９．１０．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−９１４８５（Ｐ２００８−９１４８５）
【出願日】平成２０年３月３１日（２００８．３．３１）
【出願人】（０００２１９２８８）東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１０月２２日（２００９．１０．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年３月３１日（２００８．３．３１）
【出願人】（０００２１９２８８）東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Ｆターム（参考）】
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