説明

化粧品を塗布するための塗布装置及びその装置の使用

【課題】従来の供給装置が塗布装置の本体から分離している塗布装置は、使用するには、複雑であり、高価であり、退屈であるという欠点がある。
【解決手段】化粧品を塗布するための塗布装置であって、手で保持されるように適合された細長い本体(2)と、塗布頭部(10)と、 塗布頭部(10)に固体形状の化粧品(20)を供給するように適合された供給装置(16,17,18,19)と、塗布頭部を加熱し、化粧品を溶解させるように適合された加熱装置(21)とを備えている塗布装置。供給装置(16)は、塗布装置の本体の中に設けられ、塗布頭部の中に設けられ外側へ開口している通路(17)と連通している供給導管を備えており、加熱装置が、前記塗布頭部において前記供給導管を加熱するように適合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品を塗布するための塗布装置、及びそのような装置の使用に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は化粧品を塗布するための塗布装置に関し、塗布装置は、
・手で保持されるように適合された細長い本体と、
・使用者の身体の所定の部分の上に(特に、例えばまつ毛、まゆ毛、及び髪のようなケラチン繊維を化粧するために)化粧品を塗布するように適合された塗布頭部と、
・塗布頭部に固体形状の化粧品を供給するように適合された供給装置と、
・少なくとも塗布頭部を加熱し、化粧品を溶かすように適合された加熱装置と、
を備えている。
【背景技術】
【0003】
引用文献1には、供給装置が塗布装置の本体から分離している塗布装置のような実施例が記載されている。その装置には、使用するには、複雑であり、高価であり、退屈であるという欠点がある。
【0004】
本発明の特有の目的は、それらの欠点を軽減することである。
【特許文献1】国際公開第2006/057438号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のため、本発明により、問題になっているタイプの塗布装置は、供給装置が、塗布装置の本体の中に設けられ、塗布頭部の中に設けられ外側へ開口している通路と連通している供給導管を備えており、
加熱装置が、塗布頭部において前記供給導管を加熱するように適合されていることを特徴としている。
【0006】
これらの特徴によって、本発明の塗布装置は、上述の先行技術装置よりも簡潔で、低価格で、使いやすくなっている。
【0007】
本発明の様々な実施形態において、1以上の以下の特徴を使用することが、必要に応じて可能である。
・加熱装置は、前記供給導管を、塗布頭部において35℃〜80℃の範囲の温度へ加熱するように適合されている。
・塗布装置は、マスカラを使用者のまつ毛に塗布するように適合されており、加熱装置は、前記供給導管を、塗布頭部において40℃〜60℃の範囲の温度へ加熱するように適合されている。
・供給装置は、供給導管の内部で塗布頭部に向かって、固体の化粧品を押すよう適合された推進装置を備えている。
・推進装置は、塗布頭部から遠隔されている供給導管の端に配置されているばねを備えている。
・加熱装置は、少なくとも1つの抵抗加熱要素を備えている。
・塗布頭部には、少なくとも1列の歯が設けられ、塗布頭部の中の通路は歯の間で外側へ開口している。
・塗布装置は、駆動部材を有し、駆動部材が駆動されるたびに、加熱装置を所定の時間作動させるように適合されている制御回路を含んでいる。
・前記所定の時間は、30秒〜2分の範囲にある。
・塗布装置は更に、
前記塗布器が使用されていない場合に、塗布頭部を覆うように適合されているキャップと、
キャップの存在を検知し、次いで加熱装置が作動することを防ぐように適合されたセンサ、
を備えている。
・塗布装置は、供給導管の中に配置されている固体の化粧品を有しており、化粧品は供給導管の中に摺動自在に係合された少なくとも1本の棒の形状である。
・固体のマスカラは、供給導管の中に配置されている。
・供給導管は、化粧品を補充するために開口するように適合されている。
【0008】
加えて、本発明は、固体の化粧品(特にマスカラ)を、化粧品を溶解させることによって塗布するための、上記に定義したような塗布装置の使用を更に提供する。
【0009】
本発明の別の特徴及び有利点は、それに関する、ある実施形態の以下の記述から表わされ、非限定的実施例として挙げられ、そして添付図面を参照して表わされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
様々な図において、同様の参照指定要素は、同一であるか、又は類似している。
【0011】
図1は、化粧品、特にマスカラを塗布するための塗布装置1を示しており、塗布装置が収容位置にあることを示している。この位置においては、塗布装置1は概して細長い形状、例えば略円筒形である形状を有している。塗布装置1は、例えばプラスティック材料で作られ、使用者によって手で保持されるよう適合された後部3を有し、塗布装置1の後部を形成している細長い本体2を有している。
【0012】
本明細書で検討される例においては、本体2の前記後部3には、特に、制御ボタン5及び2つの表示灯6,7を設けることができる
【0013】
また、塗布装置1は、塗布装置が収容位置にある場合に、本体2の形状に合わせることができるキャップ4も有しており、よって前記塗布装置の前部を形成している。
【0014】
図2に示されているように、キャップ4は、例えば、本体2の小径部8の形状に合わせることができる。前記小径部8は、前記部分8の直径よりも小さい直径のロッド9のそばで、それ自身が前方に延在し、ロッド9は、上述の部分8の付近にある基端部9aと塗布頭部10を有する遠位端9bとの間で延在している。塗布頭部10は、使用者の身体の一部分に化粧品を塗布するように適合されており、特に、使用者のまつ毛にマスカラを塗布するように適合されている。
【0015】
塗布頭部10は、1列以上の櫛11を有しており(例えば、ここに示した例において、3列の櫛11は互いに相対的に120°で配置されている)、各々の櫛11は、ロッド9の長手方向に位置決めされた歯12の一列によって構成されている。当然、塗布頭部10は、多くの櫛11を有することもでき、この多くの櫛は、例えば1,2又は4列の櫛のように3列とは異なる。互いに相対的に180°で配置されている2列の櫛を有している実施形態が、特に有利である。
【0016】
変形として、塗布頭部は、歯12の代わりに、可撓性の剛毛(bristle)を任意追加的に有することができる。
【0017】
本体2の小径部8には、以下に説明する目的のために、例えば単なる接触器であるセンサ8aを更に設けることができる。
【0018】
図3及び4に示すように、本体2の後部3は、電池14(又は複数の電池)を収容する内部空洞13を有することができる。空洞13は、例えば回して外す、又は本体2の後端に形成されている後部カバー15を取り外すことによって開けることができ、よって、電池(複数の電池)14を交換することが可能になる。
【0019】
変形として、塗布装置1には、電池を交換する必要なしに電池14を再充電することを可能にするコネクタを設けることができる。
【0020】
追加として、ロッド9の中には中央供給導管16が設けられており、この中央供給導管は前記ロッド9の長手方向に延在しており、塗布頭部10の内部の中に延在している。
【0021】
前記供給導管16は、流路の形状の通路17と連通しており、通路は供給導管16から放射状に延在しており、各々の櫛11の歯12の間で、塗布頭部10の外側に開口している。
【0022】
塗布頭部10から遠隔されて置かれている供給導管16の端においては、例えば、押出器19に作用する圧縮ばね18のような推進装置が、前記供給導管16の中に収容されている。押出器19は、固体の化粧品の棒20を、塗布頭部10に向かって押しのけている。
【0023】
問題になっている化粧品は、25℃で固体状になるような方法で調合されている。化粧品は、例えば40℃〜60℃の範囲の、特に50℃前後の融点を有することができる。25℃における化粧品の固体の硬度は、当業者であれば既知の方法で、十分な量のワックスをその中に混合することにより得られる。
【0024】
本発明の好適な実施形態においては、固体の化粧品はマスカラであり、このマスカラは、例えば、以下の混合物から調合することができ、混合物の濃度は、最終成分の重量による割合で示される。
硬化植物油(例えばヤシ油) 40%〜50%
カプリル/カプリントリグリセリド(Caprylic/capric triglyceride) 5%〜10%
ポリエチレン 3%〜7%
微結晶ワックス 1%〜5%
滑石 1%〜5%
トリパルミチン酸グリセリル 1%〜5%
シリカ 0.5%〜1%
顔料 25%〜30%
【0025】
例えば、化粧品の棒20は数センチメートル(特には約4cm〜8cmの範囲)の長さ、及び数ミリメートル(特には1mm〜4mmの範囲)の直径を有することができる。このような棒は、特に、押出法によって得ることができる。
【0026】
変形として、化粧品の棒20は、供給導管16の中で互いに前後に位置決めされた化粧品の円筒形区分の連続物、又は実際は、互いに前後に位置決めされた、一連の化粧品の固体のビーズ(beads)によって置き換えることができる。
【0027】
供給導管16は、供給導管が収容している固体の化粧品が交換可能なような所定の方法で開けられるように適合されている。例えば、塗布頭部10はロッド9の端の上にねじ込むことができ、これにより、化粧品の棒20は、塗布頭部10が回して外されている場合に、前記ロッド9の遠位端から供給導管16の中に挿入されることが可能となる。
【0028】
抵抗加熱要素21(金属巻き線、セラミック要素、又はいくつかの別の要素)が、塗布頭部10の中、好適には、供給導管16のすぐ近くに配置されており、抵抗加熱要素は、塗布頭部10において、初めに供給導管16の内側を例えば35℃〜80℃の範囲の温度へ、とりわけマスカラ用には40℃〜60℃の範囲の温度へ加熱しするように適合されており、化粧品を溶解させている。このように発せられた熱によって溶解させられた化粧品は、通路17を経て外側へ拡散し、各々の櫛11の歯12の間に、毛管現象による一定の方法で広げられる。例えば、加熱要素21は、塗布頭部10の中の供給導管16を取り囲むことができる。
【0029】
抵抗加熱要素は、導管16のみならず、塗布頭部10全体もまた加熱することが留意されるべきである。有利には、塗布頭部10は、熱の良導体、例えば、金属材料又は金属材料で満たされたプラスティック材料である材料で作ることができる。
【0030】
図5に示されるように、抵抗加熱要素21は、制御回路22(CC)を経て、ロッド9の中を通って延在している導体23を経て、電池14から電力を供給されている(導体23は、塗布頭部10の中にねじ込まれているロッド9の端に設けられている電気接点を経て抵抗加熱要素21に接続することができる)。
【0031】
制御回路22は、使用者が制御ボタン5を押下した場合に、所定の時間にわたって、電池14から抵抗加熱要素21へ電力を供給するように適合された電気回路である。前記所定の時間は、例えば、30秒〜2分の範囲わたらせることができる。また、制御回路22は、任意追加的に、例えば、赤色発光ダイオード(LED)によって構成された表示灯6のスイッチを入れるように適合しており、電池14の端子間の電圧の不足を検出した場合に、前記電池が電力低下していると示すことができる。
【0032】
図5に示された例において、制御回路22から抵抗加熱要素21へ電力を供給するための電源回路は、更に、
抵抗加熱要素21が加熱された場合にスイッチが入れられる上述の表示灯7を構成するLED、例えば緑色LEDと、
本体2の部分8の形状に合ったキャップ4によって、前記接触器が内側へ半径方向に押下された場合に、抵抗加熱要素21に電力を供給するための電源回路を開き、キャップ4が取り外された場合に、閉じるように適合された上述の接触器8aと、(これにより接触器8aは、塗布装置1が収容位置にある間に制御ボタン5が無意識に押下されても、抵抗加熱要素21が不注意に機能することを防いでいる)
を含んでいる。
【0033】
上述した装置は、以下のように操作される:使用者がまつ毛にマスカラを塗布したい場合は、使用者がキャップ4を取り外し、制御ボタン5を押し下げることによって、塗布頭部10において内部導管の中のマスカラ20の棒の溶解を引き起こし、これにより、この方法で溶解されたマスカラは、通路17を通過し、数分後に櫛11の歯12に広がる。
【0034】
表示灯7が直接制御回路22に接続することが可能であることは留意されるべきであり、制御回路22は、ボタン5が駆動された後(化粧品が溶解する間)、表示灯7を数秒間点滅させ、次いで、加熱要素21を加熱するための残りの時間に引き続いて表示灯を点滅させている。
【0035】
化粧品を加熱する方法によって、使用者は薄膜の形状で化粧品をこのように塗布することが可能となり、この薄膜は均一であり、よって改善された品質である。マスカラについては、使用者は特に優れた、効果的なまつ毛の被膜を得ることができる。
【0036】
次いで使用者は、塗布するための塗布器、例えば、まつ毛のためのマスカラを使用することができる。一旦、使用者が塗布器1の使用を終了させると、使用者はキャップ4を所定の位置に戻し、よって、使用者が上述の所定の操作時間の後、塗布器の使用をやめた場合に、電気加熱要素21への電力供給が自動的に遮断される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の塗布装置の実施形態の斜視図である。
【図2】塗布装置の保護キャップ無しの、図1の塗布装置の斜視図である。
【図3】図2の塗布装置の長手方向の断面図である。
【図4】塗布頭部における図3の詳細図である。
【図5】図1〜4の塗布装置の加熱装置の電気回路図である。
【符号の説明】
【0038】
1 塗布装置
2 細長い本体
3 後部
4 キャップ
5 制御ボタン
6 表示灯
7 表示灯
8 小径部
8a センサ
9 ロッド
9a 基端部
9b 遠位端
10 塗布頭部
11 櫛
12 歯
13 内部空洞
14 電池
15 後部カバー
16 供給導管
17 通路
18 圧縮ばね
19 押出器
20 棒
21 抵抗加熱要素
22 制御回路
23 導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で保持されるように適合された細長い本体(2)と、
使用者の身体の所定の部分の上に前記化粧品を塗布するように適合された塗布頭部(10)と、
該塗布頭部(10)に固体形状の化粧品(20)を供給するように適合された供給装置(16,17,18,19)と、
少なくとも前記塗布頭部(10)を加熱し、前記化粧品を溶解させるように適合された加熱装置(21)と、
を備える化粧品を塗布するための塗布装置であって、
前記供給装置が、前記塗布装置の本体(2)の中に設けられ、前記塗布頭部(10)の中に設けられ外側へ開口している通路(17)に連通している供給導管(16)を備えており、
前記加熱装置(21)が、前記塗布頭部(10)において前記供給導管(16)を加熱するように適合されていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記加熱装置(21)は、前記供給導管(16)を、前記塗布頭部(10)において35℃〜80℃の範囲の温度へ加熱するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
マスカラを使用者のまつ毛に塗布するように適合されており、前記加熱装置(21)が、前記供給導管(16)を、前記塗布頭部(10)において40℃〜60℃の範囲の温度へ加熱するように適合されていることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記供給装置は、前記供給導管(16)の内部で、塗布頭部(10)に向かって固体の化粧品(20)を押すよう適合された推進装置(18,19)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記推進装置は、前記供給導管の端に配置されているばね(18)を備えており、前記供給導管は前記塗布頭部(10)から遠隔されていることを特徴とする請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記加熱装置は、少なくとも1つの抵抗加熱要素(21)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記塗布頭部(10)には、少なくとも1列の歯(12)が設けられ、前記塗布頭部(10)の中の前記通路(17)は前記歯の間で外側へ開口していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項8】
駆動部材(5)を有し、前記駆動部材(5)が駆動されるたびに、前記加熱装置(21)を所定の時間作動させるように適合されている制御回路(22)を含んでいることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記所定の時間は、30秒〜2分の範囲にあることを特徴とする請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記塗布装置が使用されていない場合に、前記塗布頭部(10)を覆うように適合されているキャップ(4)と、
該キャップの存在を検知し、次いで前記加熱装置(21)が作動することを防ぐように適合されたセンサ(8a)と、
を更に備えていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記供給導管(16)の中に配置されている固体の化粧品(20)を有しており、前記化粧品は前記供給導管(16)の中に摺動自在に係合された少なくとも1本の棒(20)の形状であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項12】
前記供給導管(16)の中に配置されている固体のマスカラ(20)を有していることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項13】
前記供給導管(16)は、前記化粧品を補充するために開口されるように適合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗布装置。
【請求項14】
固体の化粧品を、化粧品を溶解させることによって塗布するための請求項1〜13のいずれか1項に記載の塗布装置の使用。
【請求項15】
前記化粧品はマスカラであることを特徴とする請求項14に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−253768(P2008−253768A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−87804(P2008−87804)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】