説明

化粧床材

【課題】基材1上に化粧シート5を積層し、C面加工や溝加工を施した化粧床材において、C面部8や溝部7への部分着色を行う必要なく、当該部分の色に不自然さのない意匠品質に優れた製品を、簡便且つ安定的に製造可能な化粧床材を提供する。
【解決手段】基材1と化粧シート5との間に、化粧シート5との明度差ΔL(JIS Z 8730)が|ΔL|≦30である着色熱可塑性樹脂層3を設け、化粧シート5の表面からその厚みを越え着色熱可塑性樹脂層3を越えない深さのC面部8や溝部7を形成することにより、C面部8や溝部7の色を着色熱可塑性樹脂層3の色で表現する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅・店舗などの建築物の床材として使用するための化粧床材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の化粧床材は、合板や中質繊維板などの木質基材の表面に、天然木突板や木目印刷シート等の化粧シートを貼り合わせ、所望の大きさに切り出し、面取り加工、実加工等を施した後、四方のC面部を化粧シートの表面色に見合うように、類似の色で着色する場合が多い。また、上記所望の大きさに切り出した後に、デザイン上、表面部に化粧シート上から溝加工を行う場合があり、その際、化粧シートの意匠との対比で溝部の色が不自然にならないように、溝部に選択的に類似色で着色する場合が多い(特許文献1)。これらのいずれにおいても、C面部や溝部に部分的な着色を行わなくてはならず、製造工程が煩雑であった。
【0003】
これに対し、C面部や溝部の着色を省略可能な方法として、木質系基材の表面に木粉混合の合成樹脂板を介して化粧シートを貼り合わせた後、前記木粉混合の合成樹脂板に至る深さまでC面加工や溝加工を行うことにより、C面部や溝部の色を木粉混合の合成樹脂板の色で表現する方法が提案されている(特許文献2)。しかしこの方法も現実には、木粉は樹材の種類や含水率などの要因によって色安定性の制御が困難であるため、意匠品質の良好な化粧床材を安定的に製造することは困難であった。
【0004】
先行技術文献情報
【特許文献1】
特開2001−123647号公報
【特許文献2】
特開2001−191454号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記の問題点を解決するためになされたもので、C面部や溝部への部分着色を行う必要なく、当該部分の色に不自然さのない意匠品質に優れた製品を、簡便且つ安定的に製造可能な化粧床材を提供することを目的としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために、基材表面に着色熱可塑性樹脂層を介して化粧シートが積層され、該化粧シート表面から該化粧シートの厚さを越え前記着色熱可塑性樹脂層を貫通しない深さのC面加工及び/又は溝加工が施され、該C面部及び/又は溝部の色が着色熱可塑性樹脂層の色で表現される化粧床材において、前記化粧シートと前記着色熱可塑性樹脂層との明度差ΔL(JIS Z 8730)が、|ΔL|≦30であることを特徴とする化粧床材を提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の化粧床材の一例を図1に断面図で示す。この化粧床材は、基材1上に接着層2を介して着色熱可塑性樹脂層3が積層され、該着色熱可塑性樹脂層3上には接着層4を介して化粧シート5が積層され、該化粧シート5の表面には表面保護層6が施されると共に、該化粧シート5の表面から、着色熱可塑性樹脂層3の層内に至りこれを貫通しない深さに、四方外周部にはC面部8が、一般平面部内には溝部7が、それぞれ切削加工により形成されている。なお、C面部8と溝部7とは、その両方が形成される場合もあるが、C面部8のみが形成される場合や、溝部7のみが形成される場合もある。
【0008】
基材1は、本発明において特に限定されるものではなく、従来の同種の床材における基材と同様のものが使用できる。例えば、積層合板や中質繊維板等の木質系基材や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、繊維強化プラスチック等の合成樹脂系基材、鉄、アルミニウム等の金属系基材等である。厚さは、具体的な施工態様に応じて種々設計され、例えばコンクリートスラブ等の床下地上への直貼り用の場合は、通例3〜20mm程度である。
【0009】
着色熱可塑性樹脂層3は、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の任意の熱可塑性樹脂を、適宜の着色顔料等の添加により着色してなる、シート状ないし薄板状のもので、その厚さは、一般的なC面部8や溝部7の深さを十分に吸収できる様に、0.3〜3mm程度に設計される。
【0010】
着色熱可塑性樹脂層3の色は、どの様な位置にC面部8や溝部7が形成されてもそれらの色を表現できる様に、単色が適している。そして、この単色の選定がポイントであって、表面に積層される化粧シート5の色調より測色データをとりその中から抽出された明度値Lを基準として、明度差ΔL値(JIS Z 8037)が−30≦ΔL≦30の間になるように選定する。
【0011】
この明度差の絶対値が大きく、|ΔL|>30となると、化粧シート5の色調とC面部8や溝部7の色との見た目の調和が非常に悪い。極端な例を示せば、色調が白の化粧シート5に対して黒い溝部7を設けると、ゼブラ模様の様になり、デザイン的な面白さはともかく、住環境に用いるにあたっては、目の疲れや精神的な落ち着きのなさなどをひきおこす可能性は否定できない。
【0012】
着色熱可塑性樹脂層3には、上記した着色顔料の他、その色調並びに色安定性を損なわない範囲において、例えば木粉やタルク等の充填剤やその他の添加剤が適宜添加されていても良いことは勿論である。
【0013】
化粧シート5は、従来より化粧床材の表面化粧用に使用されていたものであれば良く、例えば天然木突板や、紙基材に木目印刷を施しウレタン等の樹脂コート層を設けたプレコート化粧紙などであっても良いが、得られる化粧床材の表面の耐水性や耐汚染性、耐摩耗性などの諸物性を考慮すれば、熱可塑性樹脂製の化粧シートが最も適当である。
【0014】
具体的には、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂シートを主体とする単層又は複層のシートであり、これらシートに印刷形成される柄としては、例えば木目柄、石目柄、抽象柄、単色柄などが用いられる。木目柄としては、例えばオーク(楢)柄、チーク柄、バーチ(樺)柄、チェリー(桜)柄などが主要に用いられる。さらに、石目柄、抽象柄、単色柄などそれぞれ自由に選ぶことができる。柄の表現方法は、グラビア印刷による方法がよく用いられる。また色調においても、印刷インキの配合を変えることによる自由度が高い。但し、着色熱可塑性樹脂層との色の調和を考慮する必要がある。
【0015】
基材1、着色熱可塑性樹脂層3、化粧シート5の相互間の接着(接着層2、接着層4)に使用する接着剤の種類は特に限定されず、各々の材質に応じて任意に選定すればよい。一般的には、例えば変性酢酸ビニル樹脂系などのエマルジョン接着剤や、2液硬化型ウレタン系接着剤、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤(PUR)などがよく用いられる。
【0016】
C面部8や溝部7は、従来と同様、例えば鉋、鑿、鋸、ルーター等の切削工具を使用して形成される。その形状は、C面部8は例えば斜め平面状又は曲面状(R面)等、溝部7は例えばV字状、U字状又はそれらの斜面と一般平面部との間の角部を曲面状(R面)にしたもの等、所望により任意である。但し、それらの深さは化粧シート5の厚さを越えるものであり、着色熱可塑性樹脂層3を越えないものでなくてはならない。着色熱可塑性樹脂層3を越えて基材1に達する深さとすると、C面部8や溝部7に基材1の色が見えてしまい、意匠性を損なうからである。通例、C面部8や溝部7の幅及び深さは0.2〜2mm程度である。
【0017】
表面保護層6は、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂、熱架橋型アクリル系樹脂等の熱硬化型樹脂や、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂などがよく用いられる。この表面保護層6は、化粧シート5にプレコートしておいてもよいし、基材1と熱可塑性樹脂層3、化粧シート5を積層した後にコートしてもよい。
【0018】
【実施例】
<実施例1>
厚さ9mmの中質繊維板(MDF)からなる基材上に、着色熱可塑性樹脂層として着色ポリオレフィン系樹脂フィルム(リケンテクノス(株)製「OW5019」、明度L=91.4、色度a=−1.2、b=12.1、厚さ0.5mm)を接着し、その上に木目柄のポリオレフィン樹脂系化粧シート(凸版印刷(株)製「101シリーズ(2002年度版)セレナウォールナットW」、明度L=92.9、色度a=−0.2、b=2.5、厚さ0.16mm)を接着して化粧版を作製した。次にこの化粧版に対して、木目柄の繊維方向と平行に幅1mm、深さ0.25mmの溝を76mm間隔で、化粧シート表面よりルーターにて切削形成して、本発明の化粧床材を作製した。
【0019】
<比較例1−1>
上記実施例1において、着色熱可塑性樹脂層を上記とは色の異なる着色ポリオレフィン系樹脂フィルム(リケンテクノス(株)製「OW9099」、明度L=56.2、色度a=7.8、b=27.5、厚さ0.5mm)に変更し、その他は上記実施例1と同一条件で化粧床材を作製した。
【0020】
<比較例1−2>
上記実施例1において、着色熱可塑性樹脂層を上記とは色の異なる着色ポリオレフィン系樹脂フィルム(リケンテクノス(株)製「OW9094」、明度L=57.1、色度a=8.6、b=24.8、厚さ0.5mm)に変更し、その他は上記実施例1と同一条件で化粧床材を作製した。
【0021】
<実施例2>
上記実施例1において、化粧シートを上記とは柄の異なる木目柄のポリオレフィン樹脂系化粧シート(凸版印刷(株)製「101シリーズ(2002年度版)リッチモンドオークM」、明度L=42.6、色度a=12.1、b=21.2、厚さ0.16mm)に変更すると共に、着色熱可塑性樹脂層を上記とは色の異なる着色ポリオレフィン系樹脂フィルム(リケンテクノス(株)製「OW9091」、明度L=54.4、色度a=6.9、b=22.1、厚さ0.5mm)に変更し、その他は上記実施例1と同一条件で本発明の化粧床材を作製した。
【0022】
<比較例2−1>
上記実施例2において、着色熱可塑性樹脂層を上記とは色の異なる着色ポリオレフィン系樹脂フィルム(リケンテクノス(株)製「OW2037」、明度L=85.2、色度a=1.2、b=7.6、厚さ0.5mm)に変更し、その他は上記実施例2と同一条件で化粧床材を作製した。
【0023】
<比較例2−2>
上記実施例2において、着色熱可塑性樹脂層を上記とは色の異なる着色ポリオレフィン系樹脂フィルム(リケンテクノス(株)製「OW5019」、明度L=91.4、色度a=−1.2、b=12.1、厚さ0.5mm)に変更し、その他は上記実施例2と同一条件で化粧床材を作製した。
【0024】
<比較・評価>
上記のようにして得られた各化粧床材に関して、無作為に抽出した20歳代〜50歳代の男女各5名ずつ合計10名に、見た目の印象で床材として柄と溝の色調が調和しているかどうかの判断をアンケート調査したところ、結果は下記表1のとおりであった。
【0025】
【表1】



【0026】
上記表1に示されているアンケート結果の通り、|ΔL|が30以下のものと30を越えるものとでは見た目に大きな差がある。これにより、本発明の化粧床材は、床材の溝の色が柄と調和し、溝加工後の着色工程を省略して製造工程を短縮できる優れた特性を有していることがわかる。
【0027】
【発明の効果】
本発明の化粧床材は、C面加工や溝加工の後の着色の必要なく簡便に製造可能であり、しかも、C面部や溝部と柄との色調が見た目に調和がとれているという特性を有し、優れた実用上の効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧床材の実施の形態を示す断面図。
【符号の説明】
1  基材
2  接着層
3  着色熱可塑性樹脂層
4  接着層
5  化粧シート
6  表面保護層
7  溝部
8  C面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に着色熱可塑性樹脂層を介して化粧シートが積層され、該化粧シート表面から該化粧シートの厚さを越え前記着色熱可塑性樹脂層を貫通しない深さのC面加工及び/又は溝加工が施され、該C面部及び/又は溝部の色が着色熱可塑性樹脂層の色で表現される化粧床材において、前記化粧シートと前記着色熱可塑性樹脂層との明度差ΔL(JIS Z 8730)が、|ΔL|≦30であることを特徴とする化粧床材。

【図1】
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【公開番号】特開2004−132121(P2004−132121A)
【公開日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−299977(P2002−299977)
【出願日】平成14年10月15日(2002.10.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】