説明

化粧料塗布容器

【課題】塗布部を屈曲させて塗布を容易にし、塗布棒の引上時、塗布部や塗布量調整部材が抜け難い化粧料塗布容器を提供する。
【解決手段】容器本体1と、その口部1c外側に着脱可能に装着されるキャップ2と、キャップ2の裏側から突出する軸部3aを有し当該軸部3aの先端に設けた塗布部3bを屈曲させてなる塗布棒3と、口部2内側を貫通する筒状部4aを有しその上端に設けたフランジ4bにより口部1c上端に保持されると共に、肩部1bの内側に突出した段部4cにより抜け止め保持され、筒状部4aを貫通して胴部1a内側に突出した塗布部3bをキャップ4の引上げにより扱いて塗布量を調整する塗布量調整部材4とを備え、調整部材4の筒状部4aを、その段部4cから延長し、当該延長部4dに、その下端4eから上方に向かって延在し、塗布棒3の引き上げに伴う塗布部3bの接触によって当該延長部4dでの変形及び拡張を生起させる薄肉部4fを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の口部に装着されるキャップに塗布棒を設け、その塗布部を軸部に対して屈曲させることで塗布のし易さを向上させる一方、容器本体の口部内側に保持した塗布量調整部材で塗布部を扱いてその付着量を好適な値に調整することができる化粧料塗布容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の化粧料塗布容器には、塗布量調整部材の筒状部上端にフランジを設けて口部上端で保持すると共に、容器本体の肩部の内側に突出した段部で抜け止め保持し、更に、当該段部に、その下端から上方に向かって延在するスリットを形成することで、塗布棒の引き上げに伴う塗布部の接触によって当該段部での変形及び拡張を生起させ、これにより、塗布量調整部材の抜けを防止しようとするものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭53−24436号公報
【特許文献2】実開昭60−126109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の化粧料塗布容器では、剛性が高い段部であって肩部との接触によって弾性変形し難い抜け止めに係る段部にスリットが形成されているため、唇等の対象物に対して内容物を塗布し易くすべく、塗布部を屈曲させた場合、塗布棒の引き上げに際し、当該塗布部が段部に接触しても、塗布量調整部材の抜けを防止するに至るまでの変形及び拡張を生起させることができないことがある。
【0005】
このため、従来の化粧料塗布容器にあっても、塗布棒の引き上げに伴い塗布部が段部の内径部分に引っ掛かることが考えられ、こうした引っ掛かりが起こったときには、当該塗布部や塗布量調整部材そのものが抜けてしまうことが憂慮される。
【0006】
本発明は、塗布部を屈曲させることで対象物に対する塗布を容易にしつつも、塗布棒の引き上げに際して、当該塗布棒の塗布部や塗布量調整部材が抜け難く耐久性に優れた化粧料塗布容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内容物を充填する胴部を有し当該胴部に通じる口部が肩部を介して繋がる容器本体と、口部外側に着脱可能に装着されるキャップと、このキャップの裏側から突出する軸部を有し当該軸部の先端に設けた塗布部を屈曲させてなる塗布棒と、口部内側を貫通する筒状部を有しその上端に設けたフランジにより口部上端に保持されると共に、肩部の内側に突出した段部により抜け止め保持され、当該筒状部を貫通して胴部内側に突出した塗布部をキャップの引き上げにより扱いて塗布量を調整する塗布量調整部材とを備える化粧料塗布容器であって、
塗布量調整部材の筒状部を、その段部から容器本体の胴部内側に向かって延長し、
当該延長部に、その下端から上方に向かって延在し、塗布棒の引き上げに伴う塗布部の接触によって当該延長部での変形及び拡張を生起させる薄肉部又はスリットを備えることを特徴とするものである。
【0008】
薄肉部は、延長部の内側を窪ませることで形作られ、その円周方向幅が外周側に向かうに従って狭くなるものであることが好ましい。また、薄肉部を備える場合、この薄肉部を形作る稜線のうち、軸線方向に延在する稜線は面取りしてなることが好ましい。
【0009】
一方、スリットは、その円周方向幅が外周側に向かうに従って狭くなるものであることが好ましい。また、スリットを備える場合、このスリットを形作る稜線のうち、延長部の内側に形作られ、軸線方向に延在する稜線を面取りすることが好ましい。
【0010】
本発明に係る塗布部としては、ブラシ状のものや櫛状のもの等、様々なものが挙げられるが、当該塗布部をエラストマに代表される合成樹脂製の弾性体とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、塗布量調整部材の筒状部を、その段部から延長して容器本体の内側に配置すると共に、この延長部に、その下端から上方に向かって延在する薄肉部又はスリットを設けたことで、延長部の円周方向における拘束力が弱まるため、塗布棒の引き上げに伴う塗布部の接触によって当該延長部での変形及び拡張を生起させることができる。
【0012】
即ち、本発明では、塗布のし易さから塗布部を屈曲させた場合でも、当該塗布部の引き上げ時における案内が、剛性が高く弾性変形し難い段部の内径部分ではなく、この段部から更に下方に延長した延長部下端の内径部分、即ち、薄肉部によって円周方向の拘束力が弱められた内径部分で行われることから、スリットを形成した段部に塗布部を接触する場合に比べて、塗布棒との接触に伴う変形及び拡張をさせ易い。
【0013】
従って、本発明によれば、塗布部を屈曲させることで対象物に対する塗布を容易にしつつも、塗布棒の引き上げに際して、当該塗布棒の塗布部や塗布量調整部材が抜け難く耐久性に優れた化粧料塗布容器を提供することができる。
【0014】
また、本発明では、延長部に備われる薄肉部を、延長部の内側に凹部を形成することで形作ると共に、当該凹部の円周方向幅を、延長部の外周側に向かうに従って狭くなるようにすれば、塗布量調整部材内での塗布部の引き上げがスムースに行われるので、塗布部の引っ掛かり防止に有効である。この場合、延長部の大径面に凹部を形作る稜線のうち、軸線方向に延在する稜線を面取りすれば、塗布部の引っ掛かり防止に更に有効である。
【0015】
また、本発明では、延長部に備われるスリットを、その円周方向幅が外周側に向かうに従って狭くなるようにしても、塗布量調整部材内での塗布部の引き上げがスムースに行われるので、塗布部の引っ掛かり防止に有効である。この場合も、スリットを形作る稜線のうち、延長部の内側に形作られ、軸線方向に延在する稜線を面取りすれば、塗布部の引っ掛かり防止に更に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a),(b)はそれぞれ、本発明の第1の形態であるリップグロス容器の平面図と、そのX−X断面図である。
【図2】図1(b)の領域R1を示す要部拡大図である。
【図3】図1(b)の領域R2を示す要部拡大図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、同形態に組み込まれた塗布量調整部材を示す底面図及び、そのY−Y断面図である。
【図5】(a),(b)はそれぞれ、図1のリップグロス容器に組み込み可能な他の塗布量調整部材を示す底面図及び、そのZ−Z断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好適な形態を詳細に説明する。
【0018】
図1(a),(b)はそれぞれ、本発明の第1の形態であるリップグロス容器の平面図と、そのX−X断面図であり、また、図2,3はそれぞれ、図1(b)の領域R1を示す要部拡大図及び、同図(b)の領域R2を示す要部拡大図である。更に、図4(a),(b)はそれぞれ、同形態に組み込まれた塗布量調整部材4を示す底面図及び、そのY−Y断面図である。
【0019】
符号1は、リップグロスを充填する胴部1aと、この胴部1aに繋がる肩部1bと、この肩部1bを介して繋がる口部1cとを有する容器本体である。肩部1bは、胴部1aに繋がる大径の肩部1b(1)と、この肩部1b(1)に繋がる小径の肩部1b(2)とからなる。
【0020】
符号2は、容器本体1の口部1cに着脱可能に装着されるキャップである。キャップ2は、口部1cの外周に着脱可能に螺着されるスクリューキャップである。なお、キャップ2は、スクリューキャップに限定されるものではなく、その着脱手段は適宜変更することができる。
【0021】
符号3は、キャップ2の裏側に固定され、当該キャップ2から突出する軸部3aと、この軸部3aの先端に取り付けられた塗布部3bとを有する塗布棒である。塗布部3bは、例えば、エラストマ等の弾性材料からなり、図2に示すように、軸部3aに対して屈曲している。また本形態では、塗布部3bは、連結シャフト3cを介して軸部3の先端に連結されている。
【0022】
符号4は、キャップ2の取り外しに伴う塗布棒3の引き上げにより、塗布部3bを扱いて当該塗布部3bに付着したリップグロスの付着量(塗布量)を調整する塗布量調整部材である。
【0023】
塗布量調整部材4は、図1,3に示すように、口部1cを通って容器本体1内に配置される筒状部4aを有し、その上端に設けたフランジ4bにより口部1cの上端に保持されると共に、肩部1b(2)の内側に対向するように外方に突出した環状の段部4cにより抜け止め保持されている。
【0024】
また、筒状部4aには、その下端4eを段部4cから延長させることで、延長部4dを形成し、この延長部4dが容器本体1内に配置されている。
【0025】
筒状部4aの内周面は、図4(b)に示すように、小径面f1と大径面f2とからなり、その段差部分には、軸線Oに向かって垂下する環状の舌片4tが一体に形成されている。舌片4tは、その内側に軸部3aを貫通させる孔Aを形成する。これにより、舌片4tは、キャップ2の取り外しに伴う塗布棒3の引き上げにより、塗布部3bを扱いてリップグロスの付着量を調整する。
【0026】
筒状部4aのうち、延長部4dには、図4(a)に示すように、軸線O周りに局所的に3箇所、大径面f2側に凹部Gを形成する薄肉部4fが形作られている。薄肉部4fは、同図(b)に示すように、筒状部4aの下端4eから軸線O方向に沿って上方に向かって段部4cの手前に至るまで延在する。これにより、延長部4dでは、3つの薄肉部4fの存在により、その円周方向(軸線O周り方向)における拘束力が弱まるため、径方向における変形及び拡張が容易になる。
【0027】
また、本発明によれば、図4(a)に示すように、凹部Gにおける、軸線O周りの円周方向幅W1を、延長部4dの外周側(径方向外側)に向かうに従って狭くすることができる。加えて、本発明によれば、大径面f2に凹部Gを形作る稜線のうち、軸線O方向に延在する稜線Cを面取りすることができる。本形態では、稜線Cの面取りを、同図(a)に示すように、湾曲面として構成する。
【0028】
本形態では、筒状部4aを、その段部4cから軸線Oに沿って下方に延長して容器本体1の内側に配置すると共に、この延長部4dに、その下端4eから上方に向かって延在する複数の薄肉部4fを設けたことで、延長部4dの円周方向における拘束力が弱まるため、塗布棒3の引き上げに伴う塗布部3bの接触によって当該延長部4dでの変形及び拡張を生起させることができる。
【0029】
即ち、本形態の如く、塗布のし易さから塗布部3bを屈曲させた場合でも、当該塗布部3bの引き上げ時における案内が、剛性が高く弾性変形し難い段部4cの内径部分ではなく、この段部4cから更に下方に延長した延長部4dの下端4eの内径部分、即ち、薄肉部4fによって円周方向の拘束力が弱められた内径部分で行われることから、従来のように、スリットを形成した段部4cに塗布部3bを接触する場合に比べて、塗布棒3との接触に伴う変形及び拡張をさせ易い。
【0030】
従って、本形態によれば、塗布部3bを屈曲させることで唇に対するリップグロスの塗布を容易にしつつも、塗布棒3の引き上げに際して、塗布部3bや塗布量調整部材4が抜け難く耐久性に優れた化粧料塗布容器を提供することができる。
【0031】
また、本形態の如く、延長部4dに備われる薄肉部4fを、延長部4dの内側に凹部Gを形成することで形作ると共に、当該凹部Gの円周方向幅W1を、延長部4dの外周側に向かうに従って狭くなるようにすれば、塗布量調整部材4内での塗布部3bの引き上げがスムースに行われるので、塗布部3bの引っ掛かり防止に有効である。この場合、延長部4dの大径面f2に凹部Gを形作る稜線のうち、軸線O方向に延在する稜線Cを面取りすれば、塗布部3bの引っ掛かり防止に更に有効である。
【0032】
図5(a),(b)はそれぞれ、図1のリップグロス容器に組み込み可能な他の塗布量調整部材4を示す底面図及び、そのZ−Z断面図である。
【0033】
本形態では、塗布量調整部材4の大径面f2には、図5(a)に示すように、軸線O周りに局所的に4箇所、スリット(切欠き)4sが形成されている。スリット4sは、同図(b)に示すように、その下端4eから軸線O方向に沿って上方に向かって段部4cの手前に至るまで延在する。
【0034】
また、スリット4sも、図5(a)に示すように、その円周方向幅W2が外周側に向かうに従って狭くなっている。更に、スリット4sも、同図(a)に示すように、スリット4sを形作る稜線のうち、軸線O方向に延在する稜線Cを面取りしてなる。
【0035】
本形態でも、塗布量調整部材4の筒状部4aを、その段部4cから軸線Oに沿って下方に延長して容器本体1の内側に配置すると共に、この延長部4dに、その下端4eから上方に向かって延在する複数のスリット4sを設けたことで、延長部4dの円周方向における拘束力が弱まるため、塗布棒3の引き上げに伴う塗布部3bの接触によって当該延長部4dでの変形及び拡張を生起させることができる。
【0036】
即ち、本形態も、塗布のし易さから塗布部3bを屈曲させた場合、当該塗布部3bの引き上げ時における案内が、剛性が高く弾性変形し難い段部4cの内径部分ではなく、この段部4cから更に下方に延長した延長部4dの下端4eの内径部分、即ち、薄肉部4fによって円周方向の拘束力が弱められた内径部分で行われることから、従来のように、スリットを形成した段部4cに塗布部3bを接触する場合に比べて、塗布棒3との接触に伴う変形及び拡張をさせ易い。
【0037】
従って、本形態でも、塗布部3bを屈曲させることで唇に対するリップグロスの塗布を容易にしつつも、塗布棒3の引き上げに際して、塗布部3bや塗布量調整部材4が抜け難く耐久性に優れた化粧料塗布容器を提供することができる。
【0038】
また、本形態の如く、延長部4dに備われるスリット4sを、その円周方向幅W2が外周に向かうに従って狭くなるようにしても、塗布量調整部材4内での塗布部3bの引き上げがスムースに行われるので、塗布部3bの引っ掛かり防止に有効である。この場合も、スリット4sを形作る稜線のうち、延長部4dの内側、即ち、大径面f2に形作られ、軸線O方向に延在する稜線Cを面取りすれば、塗布部3bの引っ掛かり防止に更に有効である。
【0039】
上述したところは、本発明の好適な形態をしたものであるが、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、塗布部3bは、弾性材料からなるものに限定されるものではなく、合成樹脂からなる全般のものを採用することができる。また、外装部材110の蓋体115は、ヒンジキャップに限らず、スクリューキャップ等であってもよい。加えて、各形態に採用された各構成はそれぞれ、互いに適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、塗布を要する化粧料容器全般に採用することができ、その内容物も、リップグロスに限定されることなく、マスカラ等の液状の内容物であれば、様々なものが挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
1 容器本体
1a 胴部
1b 肩部
1b(1) 肩部
1b(2) 肩部
1c 口部
2 キャップ
3 塗布棒
3a 軸部
3b 塗布部
3c 連結部
4 塗布量調整部材
4a 筒状部
4b フランジ
4c 段部
4d 延長部
4e 筒状部(延長部)端面
4f 薄肉部
4s スリット
A 筒状部孔
C 面取り稜線
G 凹部
1 筒状部内周小径面
2 筒状部内周大径面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を充填する胴部を有し当該胴部に通じる口部が肩部を介して繋がる容器本体と、口部外側に着脱可能に装着されるキャップと、このキャップの裏側から突出する軸部を有し当該軸部の先端に設けた塗布部を屈曲させてなる塗布棒と、口部内側を貫通する筒状部を有しその上端に設けたフランジにより口部上端に保持されると共に、肩部の内側に突出した段部により抜け止め保持され、当該筒状部を貫通して胴部内側に突出した塗布部をキャップの引き上げにより扱いて塗布量を調整する塗布量調整部材とを備える化粧料塗布容器であって、
塗布量調整部材の筒状部に、その段部から延長する延長部を設け、
当該延長部に、その下端から上方に向かって延在し、塗布棒の引き上げに伴う塗布部の接触によって当該延長部での変形及び拡張を生起させる薄肉部又はスリットを備えることを特徴とする化粧料塗布容器。
【請求項2】
請求項1において、前記薄肉部は、延長部の内側に凹部を形成することで形作られ、当該凹部の円周方向幅は、延長部の外周側に向かうに従って狭くなるものであることを特徴とする化粧料塗布容器。
【請求項3】
請求項2において、延長部の内周面に前記凹部を形作る稜線のうち、軸線方向に延在する稜線を面取りしてなることを特徴とする化粧料塗布容器。
【請求項4】
請求項1において、前記スリットは、その円周方向幅が外周側に向かうに従って狭くなるものであることを特徴とする化粧料塗布容器。
【請求項5】
請求項4において、スリットを形作る稜線のうち、延長部の内側に形作られ、軸線方向に延在する稜線を面取りしてなることを特徴とする化粧料塗布容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172389(P2010−172389A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15913(P2009−15913)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】