説明

化粧用鋏及びその製造方法

【課題】色彩や光沢のコントラストをデザインに取り入れることにより、高級感を有しデザイン性に優れた化粧用鋏を提供すると同時に、そのような化粧用鋏をより効率的に製造可能な方法を提供する。
【解決手段】各鋏片2,3の柄部22,32が銀色の金属素材により一体に形成され、互いに背向する第1面22A,32A及び第2面22B,32Bと、それらの周縁に連なる外周面22C,32Cとを有する。第1面22A,32A及び第2面22B,32Bが艶消し面となっていて、外周面22C,32Cが金メッキによる金色の光沢面となっている。各鋏片2,3が、刃部21と隣接する部位で互いに第2面22B,32Bを対向させて重畳され、軸廻りに回動自在に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧の際に、例えばまつ毛や眉毛のカット、あるいは爪の甘皮を切ったりする場合等に用いられる化粧用鋏、及びその化粧用鋏の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧の際に、例えばまつ毛や眉毛のカット等に用いられる化粧用鋏は、従来から広く知られており、様々な形状のものや、例えば特許文献1に記載されたもののように、様々な機能を付加したものが提案されている。
ところで、この種の化粧用小物においては、需要者は、その機能性や使用感ばかりでなくデザイン性をも重要視する傾向にある。
しかしながら、化粧用鋏においては、形状的なデザインについては、様々なものが提案され販売されているものの、色彩や光沢を利用したデザインについては、現状では未だ十分な検討がなされていないのが実状である。
【0003】
【特許文献1】特開平11−300061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の技術的課題は、色彩や光沢のコントラストをデザインに取り入れることにより、高級感を有しデザイン性に優れた化粧用鋏を提供することにある。また同時に、そのような化粧用鋏をより効率的に製造することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る化粧用鋏は、長手方向の第1端側に刃部を備え第2端側に柄部を備えた一対の鋏片が、互いに軸廻りに回動自在に結合されて成る化粧用鋏であって、各鋏片の柄部がそれぞれ、銀色の金属素材により一体に形成されていて、互いに背向する第1面及び第2面と、これら第1面及び第2面の周縁に連なる外周面とを有しており、上記第1面及び第2面が上記金属素材を露出させた銀色の艶消し面となっていて、上記外周面が金メッキによる金色の光沢面となっており、各鋏片が、その柄部における上記刃部と隣接する部位において、互いに第2面を対向させて重畳されると共に、軸廻りに回動自在に結合されていることを特徴としている。
【0006】
そして、上記柄部が、その第1面及び第2面を貫通して、指を挿通させるための指環を有している場合には、該指環における上記第1面及び第2面に連なる内周面も、金メッキによる金色の光沢面となっている。なお、上記化粧用鋏においては、上記柄部の第1面及び第2面が、上記鋏片の長手方向に延びるヘアラインにより艶消しされていると、より好ましい。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る上記化粧用鋏の製造方法は、上記一対の鋏片における柄部の全面に、金メッキを施すメッキ工程と、このメッキ工程で金メッキが施された柄部のうち、上記第1面及び第2面のみに研磨加工を施して、該柄部を形成する銀色の金属素材を露出させることにより、該柄部の第1面及び第2面を銀色の艶消し面に仕上げると共に、該柄部の外周面を金メッキによる金色の光沢面とする仕上げ工程とを含むことを特徴としている。
【0008】
そして、特に、上記柄部が、指を挿通させるための指環を有している場合には、上記化粧用鋏の製造方法は、上記一対の鋏片における柄部の全面に、金メッキを施すメッキ工程と、このメッキ工程で金メッキが施された柄部のうち、上記第1面及び第2面のみに研磨加工を施して、該柄部を形成する銀色の金属素材を露出させることにより、該柄部の第1面及び第2面を銀色の艶消し面に仕上げると共に、該柄部の外周面及び指環の内周面を金メッキによる金色の光沢面とする仕上げ工程とを含むことができる。
【0009】
なお、上記化粧用鋏の製造方法においては、上記仕上げ工程における研磨加工を鋏片の長手方向に沿って施し、上記柄部の第1面及び第2面に該鋏片の長手方向に延びるヘアラインを形成することにより、これら第1面及び第2面を銀色の艶消し面に仕上げると、より好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各柄部における互いに背向する一対の面に配した金属素材の艶消しされた銀色と、各柄部における側面に配した金メッキによる光沢を有する金色とのコントラストにより、豪華で立体感があり、高級感と優れたデザイン性とを兼ね備えた化粧用鋏を提供することができる。また、本発明によれば、上記化粧用鋏をより効率的に製造することが可能な方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る化粧用鋏を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明するに、図1〜図3は本発明に係る化粧用鋏の一実施例を示している。
この化粧用鋏1は、概略的には、長手方向の第1端側に刃部21,31を備えると共に、第2端側に柄部22,32をそれぞれ備えた平面視略対称形状をなす一対の鋏片2,3を、各鋏片2,3を結合する枢軸4によって互いに軸廻りに回動自在に結合することにより構成したものであり、上記刃部21,31は、まつげや眉毛を整えたり、爪の甘皮を切ったりする場合に都合のよい反り刃の形状に形成されている。
なお、上記鋏片2,3は、上述した平面視略対称形状に形成したものに限定されず、当該化粧用鋏1の用途に応じて、互いに異なる形状とすることもできる。また、上記刃部21,31の形状は、上述した反り刃に形成したものに限らず、当該化粧用鋏1の用途に応じて、例えば、直刃等の適宜の形状に形成することができる。
【0012】
より具体的には、上記化粧用鋏1においては、図1〜図3に示すように、各鋏片2,3における長手方向の第1端側の刃部21,31と第2端側の柄部22,32とが、それぞれ該鋏片2,3の長手方向に隣接してステンレス鋼や各種合金鋼等の銀色の金属素材により一体的に形成されている。このとき、上記各鋏片2,3の柄部22,32はそれぞれ、上記金属素材により全体的に略均一の厚さで一体に形成されていて、互いに略等しい厚さを有しており、互いに背向する第1面22A,32A及び第2面22B,32Bと、これら第1面22A,32A及び第2面22B,32Bの周縁に連なる外周面22C,32Cとを有している。また、該鋏片2,3における第2端側の端部に位置するところの上記柄部22,32の端部には、それらの第1面22A,32A及び第2面22B,32Bを貫通して、指を挿通させるための指環23,33が形成されており、該指環23,33の周囲には、上記第1面22A,32A及び第2面22B,32Bに連なる内周面22D,32Dが形成されている。
【0013】
そして、これら各鋏片2,3は、それらの柄部22,32における上記刃部21,31と隣接する部位において、互いに第2面22B,32Bを対向させて重畳されると共に、該部において各柄部22,32を貫通する軸穴22E,32E(図6参照)に挿通した枢軸4により、軸廻りに回動自在に結合されている。このとき、上記各柄部22,32は、重畳された上記軸穴22E,32E近傍から指環23,33方向(第2端方向)に沿って、互いに第2面22B,32B側に屈曲されており、該指環23,33近傍において、各柄部22,32の第1面22A,32Aと第2面22B,32Bとが互いに略面一を成すように形成されている。
なお、上記鋏片2,3の柄部22,32には、必ずしも指環23,33を設ける必要はなく、当該化粧用鋏1の用途に応じて、該指環23,33を設けないものとして構成することができ、また逆に、上記鋏片2,3の柄部22,32に複数の指環を設けた構成とすることもできる。
【0014】
ここで、上記化粧用鋏1においては、それぞれの鋏片2,3における第1面22A,32A及び第2面22B,32Bの全体が、銀色の金属素材を露出させて、その表面に長手方向に延びるヘアラインが施された艶消し面に形成されており、その一方で、これら第1面22A,32A及び第2面22B.32Bの周縁に連なる外周面22C,32C及び上記指環23,33の内周面22D,32Dの全体が、金メッキによる金色の光沢面に形成されている。
このように、ヘアラインによる銀色の艶消し面と金メッキによる金色の光沢面とを鋏片2,3の各面に配して、色彩と光沢のコントラストをデザインに取り入れることにより、特に、上記柄部22,32の外周面22C,32Cや指環23,33の内周面22D,32Dを際立たせて、当該化粧用鋏1を、豪華で立体感があり、高級感と優れたデザイン性を兼ね備えたものとすることができる。
【0015】
次に、図面を参照しながら上記化粧用鋏1の製造方法について説明する。なお、化粧用鋏1を構成する各鋏片2,3の製造方法は実質的に同様のものであるから、以下の説明においては、上記化粧用鋏1を構成する鋏片2に関連する事項について説明するものとし、上記鋏片3に関連する事項については、特に必要である場合を除き、適宜符号を読み替えるものとして、その説明を省略する。
【0016】
上記構成を有する化粧用鋏1を製造するにあたっては、先ず、図4に示すように、メッキ工程において、所定の製造工程を経て製造された化粧用鋏1を構成する上記鋏片2における刃部21及び柄部22を含めた全面に、金メッキを施す。
次いで、図5に示すように、仕上げ工程において、上記メッキ工程で金メッキが施された上記鋏片2の柄部22のうち、該柄部22の第1面22A及び第2面22Bのみに、該鋏片2の長手方向、即ち図5に示す研磨方向Xに沿って研磨加工を施して、該柄部22を形成する銀色の金属素材を露出させると同時に、該鋏片2の長手方向に延びるヘアラインを形成することにより、該第1面22A及び第2面22Bの全体を銀色の艶消し面に仕上げる。また、上記鋏片2の刃部21についてもその全体に、該鋏片2の長手方向に交叉する方向(図5に示す研磨方向Y)に沿って研磨加工を施すことにより、該刃部21を形成する金属素材を露出させる。その結果、鋏片2において、該柄部22の外周面22C及び指環23の内周面22Dに施された金メッキのみが残り、これら周面全体を金メッキによる金色の光沢面とすることができる。
なお、上記刃部21の切れ刃は、必ずしも上記メッキ工程で該鋏片2に金メッキを施す前の製造工程で形成しておく必要性はなく、該鋏片2に金メッキを施した後の仕上げ工程における上記研磨方向Yに沿った研磨加工により該切れ刃を形成してもよい。
【0017】
当該化粧用鋏1を構成する上記鋏片3についても、上述した鋏片2と同様の工程により、該鋏片3における柄部32の第1面32A及び第2面32Bを銀色の艶消し面に仕上げることができると共に、該柄部32の外周面32C及び指環33の内周面32Dを金メッキによる金色の光沢面とすることができる。
【0018】
上述のように一連の工程を経て形成された一対の鋏片2,3は、図6に示すように、それらの柄部22,32における上記刃部21,31と隣接する部位において、互いに第2面22B,32Bを対向させて重畳したうえで、該部において各柄部22,32を貫通する軸穴22E,32Eに枢軸4を挿通することにより、軸廻りに相互に回動自在に結合され、図1〜3に示すような化粧用鋏1として組み立てられる。
【0019】
以上に詳述した上記化粧用鋏1の製造方法によれば、鋏片2,3の外周面22C,32C及び指環23,33の内周面22D,32Dに金メッキを施すにあたり、その他の刃部21,31や、柄部22,32の第1面22A,32A及び第2面22B,32Bにマスキング等の処置をする必要性が無く、しかも、この金メッキを施した後、上記第1面22A,32A及び第2面22B,32Bの金メッキを除去する研磨加工により、これらの面にヘアラインによる艶消し仕上げをも同時に施すことができるため、上記化粧用鋏1をより効率的に製造することが可能となる。
【0020】
ここで、本発明に係る化粧用鋏及びその製造方法は、上述した実施例において説明した形態に限定されず、特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の修正及び変更ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の化粧用鋏の実施例を示す平面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】同化粧用鋏を開いた状態を示す斜視図である
【図4】メッキ工程において、鋏片の全面に金メッキを施した状態を示す斜視図である。
【図5】仕上げ工程において、鋏片の柄部と刃部を研磨加工した状態を示す斜視図である。
【図6】仕上げ工程後の一対の鋏片を組み立てて、化粧用鋏を構成する態様を説明する分解斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 化粧用鋏
2,3 鋏片
21,31 刃部
22,32 柄部
22A,32A 第1面
22B,32B 第2面
22C,32C 外周面
22D,32D 内周面
23,33 指環
X,Y 研磨方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の第1端側に刃部を備え第2端側に柄部を備えた一対の鋏片が、互いに軸廻りに回動自在に結合されて成る化粧用鋏であって、
各鋏片の柄部がそれぞれ、銀色の金属素材により一体に形成されていて、互いに背向する第1面及び第2面と、これら第1面及び第2面の周縁に連なる外周面とを有しており、
上記第1面及び第2面が上記金属素材を露出させた銀色の艶消し面となっていて、上記外周面が金メッキによる金色の光沢面となっており、
各鋏片が、その柄部における上記刃部と隣接する部位において、互いに第2面を対向させて重畳されると共に、軸廻りに回動自在に結合されている、
ことを特徴とする化粧用鋏。
【請求項2】
上記柄部が、その第1面及び第2面を貫通して、指を挿通させるための指環を有しており、
該指環における上記第1面及び第2面に連なる内周面が、金メッキによる金色の光沢面となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧用鋏。
【請求項3】
上記柄部の第1面及び第2面が、上記鋏片の長手方向に延びるヘアラインにより艶消しされている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧用鋏。
【請求項4】
請求項1に記載の化粧用鋏を製造する方法であって、
上記一対の鋏片における柄部の全面に、金メッキを施すメッキ工程と、
このメッキ工程で金メッキが施された柄部のうち、上記第1面及び第2面のみに研磨加工を施して、該柄部を形成する銀色の金属素材を露出させることにより、該柄部の第1面及び第2面を銀色の艶消し面に仕上げると共に、該柄部の外周面を金メッキによる金色の光沢面とする仕上げ工程とを含む、
ことを特徴とする化粧用鋏の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の化粧用鋏を製造する方法であって、
上記一対の鋏片における柄部の全面に、金メッキを施すメッキ工程と、
このメッキ工程で金メッキが施された柄部のうち、上記第1面及び第2面のみに研磨加工を施して、該柄部を形成する銀色の金属素材を露出させることにより、該柄部の第1面及び第2面を銀色の艶消し面に仕上げると共に、該柄部の外周面及び指環の内周面を金メッキによる金色の光沢面とする仕上げ工程とを含む、
ことを特徴とする化粧用鋏の製造方法。
【請求項6】
上記仕上げ工程における研磨加工を鋏片の長手方向に沿って施し、上記柄部の第1面及び第2面に該鋏片の長手方向に延びるヘアラインを形成することにより、これら第1面及び第2面を銀色の艶消し面に仕上げる、
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の化粧用鋏の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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