説明

化粧設備

【課題】洗面化粧台において、使用者が頭頂や後頭部など通常は見えにくい部位を容易に観察できるようにする。
【解決手段】洗面化粧台Kの固定鏡Mの裏面側に表示装置20を設置し、携帯鏡10に撮像装置を設ける。使用者Pが携帯鏡10を観察希望箇所と正対する位置へ配置し、撮像装置15で所望箇所を撮影し、得られた画像データを洗面化粧台K側へ無線方式により送信し、表示装置20で表示させる。観察希望箇所の拡大した映像を表示装置20に表示させることができるから、詳細な観察が可能となる。洗面化粧台Kに備えられる照明装置Lの光を携帯鏡10で反射させて撮影箇所へ投射することにより、別途光源を用意することなく、明るい映像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面化粧台や鏡台等の化粧設備の改良に関し、使用者の後頭部等、通常は見えにくい部位を容易に観察できるようにすることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、鏡を備える洗面キャビネットにおいて、小型カメラを先端に取り付けたケーブルを設けると共に、鏡の中央部をハーフミラーとしてその背面側にモニター装置を設け、カメラで撮影した映像をモニター装置に映し出せるようにした化粧設備が記載されている。この化粧設備によれば、小型カメラで口腔内等の画像をモニター画面に拡大表示することができるとされている。
【特許文献1】実願平5−15868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された化粧設備は、小型カメラで口腔内の画像表示が出来るものの、使用者が例えばヘアーメイク時に見たいと思う頭頂部や後頭部の観察には適していない。また、三面鏡を用いたり手鏡を合わせ鏡にしたりすれば頭頂や後頭部を見ることも可能であるが、この場合、鏡に映し出される影像は小さくならざるを得ないので、詳細な観察が難しいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記問題を解決するために本発明が採用した化粧設備の特徴とするところは、請求項1に記載する如く、撮像装置を設けた鏡と、前記撮像装置から送信された画像データに基づき映像を表示する表示装置とを備え、前記鏡は使用者が携帯可能であり、前記撮像装置は撮影した画像データを無線方式で送信する手段を備えていることである。
【0005】
前記化粧設備において、撮像装置が設けられる鏡については、請求項2に記載するように、鏡体内に開設した撮影窓に、前記撮像装置のレンズを臨ませる構成とすることができる。
【0006】
また本発明に係る化粧設備は、請求項3に記載するように、撮像装置を設けた可動の鏡と、前記撮像装置から送信された画像データに基づき映像を表示する表示装置とを備え、前記表示装置は、化粧設備の近傍に位置する立面に、前記撮像装置で撮影した映像を投射する投影装置から成っているものとすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る化粧設備によれば、携帯可能な鏡に撮像装置を設けると共に、撮像装置で撮影した映像を表示する表示装置を備えるので、観察したい箇所の近傍まで鏡を移動させて撮像装置で所望箇所を撮影し、その映像を表示装置に表示させることにより、通常は簡単には見ることのできない部位、例えば頭頂や後頭部などを容易に観察することが可能となる。しかも、表示装置で拡大映像を表示することも容易であるから、所望箇所の詳細な観察ができる。撮像装置を鏡に設けてあるから、室内に設置されている照明装置の光を鏡で反射させて撮影箇所に照射することにより、別に照明手段を用意することなく、明るい映像を取得できる。撮像装置は画像データを無線方式で送信するものとしたから、表示装置との間の配線が不要であり、その結果、撮像装置を設けた鏡の移動が簡単である。
【0008】
本発明が対象とする化粧設備には、化粧・ヘアーメイク・衣装合わせ・着付け等を行う際に用いられる洗面化粧台・鏡台・ドレッサー等の家具のほか、この種の家具が設置される洗面室や化粧室などの部屋自体、あるいは壁面等に前記家具と同様の機能を組み込んで洗面室や化粧室と成した部屋をも含むものとする。撮像装置は、CCDカメラやCMOSカメラ、その他これらに類する小型のカメラモジュールを使用するのが好適であるが、デジタルカメラ製品やデジタルビデオカメラ製品を利用することも妨げない。表示装置は映像表示できるものであれば特に限定されるものでなく、液晶ディスプレイ・有機ELディスプレイ・プラズマディスプレイ・CRTディスプレイ等が使用可能であり、表示面積、設置環境、価格等の条件に応じて適宜選択すればよい。また、プロジェクター等の投影装置で、壁面やスクリーンに映像を投射するものも採用可能である。
【0009】
本発明の請求項2では、鏡の鏡体内に開設した撮影窓に撮像装置のレンズを臨ませる構成としたので、撮影したい箇所に鏡を正対させるだけで、目的とする映像を確実に取得できる。従って、所望箇所の撮影に最適となるように鏡の姿勢を制御するのが直感的に行える。また、レンズを臨ませた撮影窓の周囲が鏡面であるから、照明装置の光を鏡面で反射させて、撮影箇所に効率よく光を照射することができる。
【0010】
本発明の請求項3によれば、化粧設備の近傍に位置する立面に映像を投射する投影装置を表示装置としたので、大きな映像を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、化粧設備の一種である洗面化粧台Kに本発明を適用した例を示すものである。当該洗面化粧台Kは、水栓器具R及び洗面器Sを備えるキャビネットQの上方に、比較的大型の固定鏡Mと照明装置Lとが設けられている。本発明に係る洗面化粧台Kは、キャビネットQの上面など任意の場所に置くことができ、且つ使用者が容易に持ち運べる携帯鏡10に撮像装置を設けると共に、この撮像装置で撮影した映像を表示する表示装置20を固定鏡Mに組み込むか又は裏面側に設置したところを特色とする。
【0012】
図2は、携帯鏡10の一例を示すものであり、鏡体11をグリップ12と載置部13とで起立状態に支持できるよう構成されている。本例では、鏡体11の裏面側であってグリップ12の取付箇所にハウジング14を設け、このハウジング14内に撮像装置15と電池16とを収納した。また鏡体11の中央部に、撮像装置15のレンズ15aを臨ませる撮影窓11aを開設した。撮像装置15は、例えば無線送信機構を組み込んだCCDカメラモジュール・CMOSカメラモジュールなどが用いられる。送信方式は、電波あるいは赤外線等の光線によるものが一般的である。このため、撮像装置15からデータ送信するためのアンテナ17又は赤外線の発光ポート等が、携帯鏡10の適所に必要に応じ設けられる。なお図示は省略したが、撮像装置15のON・OFFのほか、撮影倍率や感光度などの動作を制御するための操作装置は、携帯鏡10のグリップ12に設けてもよく、あるいは操作用のリモコンを独立させて設けたり、洗面化粧台Kの適所に組み込んだりすることが考えられる。
【0013】
携帯鏡10の構成は、前記の態様に限定されるものではなく、種々の変更を妨げない。鏡体11の形状は円形や、図4に示すような長方形・正方形のほか、任意の多角形が可能である。撮像装置15は鏡体11の上縁部等に配置することも可能であり、この場合、鏡体11に撮影窓を設けることが不要になる。
【0014】
表示装置20は、画像表示できるものであれば、その種類は特に制限されないが、例えば液晶ディスプレイ・有機ELディスプレイ・プラズマディスプレイ・CRTディスプレイ等を用いることができる。固定鏡Mの一部を切り欠いて、表示装置20の表示面を使用者側へ露出させることもできるが、固定鏡Mの全体又は少なくとも表示面に相当する領域をハーフミラーで形成し、その裏面側に表示装置20を配設する構成も可能である。このようにすれば、表示装置20の非使用時は、固定鏡M全面を鏡として使用することが可能となると共に、表示装置20が露出しないので美観性を損なうことがない。
【0015】
表示装置20には、撮像装置15から送信される画像データを表示装置20で表示できるように処理するための画像処理装置21が接続され、この画像処理装置21に、データを受信するためのアンテナ22又は赤外線受光器などが設けられる。また図示は省略したが、これらの装置に電力を供給するための電源装置も備えられる。表示装置20の操作装置は、別途リモコンを独立させて設けたり、洗面化粧台Kの適所に組み込んだりしてもよいが、撮像装置15の操作装置と一体に設けてもよく、さらには撮像装置15の動作と連動させるように構成することも可能である。
【0016】
上記の如く構成された化粧設備(洗面化粧台K)の使用態様を、図3を参照して説明する。使用者Pが固定鏡Mのみでは観察しにくい部位(例えばヘアーメイク時における頭頂や後頭部、着付け時における背面側、口腔内、など)を見ようとする場合、従来、手鏡を用いて合わせ鏡とし、手鏡に映し出された鏡像をさらに正面の固定鏡Mで視認するという方法を採っているため、非常に小さな影像にならざるを得ず、詳細が分かりづらかった。これに対し本発明では、使用者Pがグリップ12を把持して移動させることにより、携帯鏡10を観察希望箇所と正対する位置に配置し、撮像装置15で所望箇所を撮影し、得られた画像データを洗面化粧台K側へ無線方式により送信し、表示装置20で表示させるものである。それ故、観察希望箇所の拡大した映像を表示装置20に表示できるから、視認を所望する箇所を従来よりはるかに詳細に且つ容易に観察することが可能となる。また、洗面化粧台Kに備えられる照明装置Lの光を携帯鏡10で反射させて撮影箇所へ投射することにより、別途光源を用意することなく、明るい映像を得ることができる。
【0017】
なお表示装置20に表示させる映像は、動画でも静止画でも、さらには一定の時間間隔で撮影した連続する静止画でもよい。また撮影と同時的に表示させるだけでなく、録画装置またはバッファ装置を設けて撮像装置15で撮影した画像データを一時的に保存し、所定時間の経過後(例えば3〜10秒後、または任意の設定時間後)、表示装置20に映像を再生するように構成することも可能である。この例は、目、顔の正面側、口腔内など、通常は、撮影と同時に表示装置20を目視するのが困難となる箇所を観察する場合に適している。
【0018】
[第2の実施形態]
図5は、壁面又はスクリーン50に映像を投影する投影装置40を、撮影画像の表示装置とする場合の実施形態を示すものである。洗面化粧台Kが設置される洗面室1と、これに隣接する浴室2との境界に位置する仕切り壁4の一部を透明又は半透明にしてスクリーン50を配設し、洗面室1側に撮像装置を設けた可動鏡30を配設し、浴室2側にプロジェクタ等の投影装置40を配設したものである。なお仕切り壁4を半透明にする場合、仕切り壁4自体をスクリーン50として利用することも可能である。また本例では、洗面室1が、本発明の化粧設備に相当している。
【0019】
可動鏡30は携帯可能とするほか、壁面に可動ブラケットで取り付け、鏡面の角度を変更可能にしたものでもよい。可動鏡30を携帯可能とした時は、撮像装置からの画像データを無線方式により直接、または送信距離が長いときは中継器等を介して、投影装置40へ送信される。可動鏡30がブラケットで取着されている時は、撮像装置と投影装置40とを配線31で接続すればよい。
【0020】
前記化粧設備では、可動鏡30の撮像装置で撮影した映像を、浴室2側に設けた投影装置40からスクリーン50へ投射して、洗面室1側で見ることができる。本例の表示装置は、大型のスクリーン50を使用可能であるから、ディスプレイ装置を用いる場合と比べて大きな映像を提示できるので、広範囲の観察に適している。なお投影装置40から投射される映像は浴室2側からも見ることができるから、例えば映画やテレビ番組等を投影して、使用者が浴槽3に入浴しながら各種番組を鑑賞するのに利用することも考えられる。
【0021】
図6に示すように、投影装置40を、洗面室1側に設置することも可能である。この場合は、洗面室1側から仕切り壁4に映像を投射するから、仕切り壁4を透明又は半透明に形成する必要がなく、場合によっては、仕切り壁4自体をスクリーン50として利用することも考えられる。但し、浴室2側で入浴しながら映像番組を鑑賞できるようにする場合は、仕切り壁4を透明又は半透明に形成する必要がある。なお本例では、投影装置40から映像を投射する面は、洗面室1内の立面であればよく、仕切り壁4に限定されない。また本例では、可動鏡30の撮像装置と投影装置40との距離が短くなるから、画像データ送信には無線方式が採用可能である。
【0022】
本発明は前記以外に、鏡台やドレッサー及びこれらが置かれる寝室や居室等に適用することができ、その他、実施の状況に応じ適宜変更することを妨げない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであって、本発明を適用した洗面化粧台の斜視図である。
【図2】本発明の実施に利用する携帯鏡を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は側面図、図(C)は要部の側面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示すものであって、本発明を適用した洗面化粧台の利用状況を示す側面図である。
【図4】本発明の実施に利用する携帯鏡の異なる形態を示すものであって、図(A)は正面図、図(B)は側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示すものであって、本発明を適用した洗面室と、これに隣接する浴室とを簡略化して示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の異なる態様を示すものであって、本発明を適用した洗面室と、これに隣接する浴室とを簡略化して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
K…洗面化粧台 P…使用者 1…洗面室 2…浴室 3…浴槽 4…仕切り壁 10…携帯鏡 11…鏡体 11a…撮影窓 12…グリップ 13…載置部 14…ハウジング 15…撮像装置 15a…レンズ 16…電池 17…アンテナ 20…表示装置 21…画像処理装置 22…アンテナ 30…可動鏡 40…投影装置 50…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置を設けた鏡と、前記撮像装置から送信された画像データに基づき映像を表示する表示装置とを備え、前記鏡は使用者が携帯可能であり、前記撮像装置は撮影した画像データを無線方式で送信する手段を備えていることを特徴とする化粧設備。
【請求項2】
前記鏡の鏡体内に開設した撮影窓に、前記撮像装置のレンズを臨ませた請求項1に記載の化粧設備。
【請求項3】
撮像装置を設けた可動の鏡と、前記撮像装置から送信された画像データに基づき映像を表示する表示装置とを備え、前記表示装置は、化粧設備の近傍に位置する立面に、前記撮像装置で撮影した映像を投射する投影装置から成っていることを特徴とする化粧設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−209640(P2007−209640A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34719(P2006−34719)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】