説明

医用三次元画像表示装置

【課題】 操作効率が良好で三次元立体構造の把握が容易な医用三次元画像表示装置を提供する。
【解決手段】 医用三次元画像を表示可能な表示手段を備えた医用三次元画像表示装置において、表示方向規制手段を備え、表示画面に対して頭頂方向1が常に上を向くようにする。また、スケール6を表示することで観察方向4や血管7の位置指定や立体構造の把握を容易にする。臨床データ10に基いて過去の表示データと同じ条件で、たとえば三次元血管表示11を行う。表示や画像操作の原点14を関心領域13に設定できるので、関心領域13を中心に画像操作ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,医用三次元画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の医用三次元画像表示装置では、表示画像の観察方向を変えるために表示座標の原点を中心とした回転を行っている。このため回転操作により例えば頭頂方向は、画像の上下左右あらゆる方向を向く可能性がある。
【0003】
また、従来の医用三次元画像表示装置では、表示画像の観察方向を変えるための角度設定手段として、たとえばマウスなどの入力装置を上下左右に動かすことにより表示された三次元画像を縦横方向に回転させている。この回転は、マウスの移動距離などによりその変化角度を決定する相対的角度設定手段である。また医用三次元画像表示装置では、三次元表示指示後最初に表示される角度は予め決められており、その殆どは人体正面方向が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願平11−283018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来これらの医用三次元画像表示装置では、画像の観察方向を変えるために原点を中心とした回転を行っていた。このため回転により例えば頭頂方向は、画像の上下左右あらゆる方向を向くため、どちらの方向を画像が向いているのか分からなくなることがある。
【0006】
これは従来の回転により表示した三次元画像を直接に画像表示装置であるモニタ上で見る場合、頭を傾けて例えば頭頂方向に向けたり、またプリントアウトした三次元画像を観察する際、同様にプリントアウトした画像を回転させて、頭頂方向が上を向くように操作する必要性が生じていた。
【0007】
このように、被検体のある一定の所定方向が常に画像上の一定の所定方向を向いていることは被撮像部位の三次元構造把握の助けになることが多いが、従来の装置ではこれはできない。この三次元構造を把握しやすい表示の方向は、操作者の個人差によって異なることがある。
【0008】
また、動脈癌のような注目する領域をいろいろな表示操作を加えて観察したいというニーズは大きい。この表示操作は例えば角度を変えて色々な方向から観察するための回転表示や、より詳細に観察するための拡大表示、全体像や他の血管との相互関係を把握するための縮小表示等である。
【0009】
しかし従来の装置では原点を中心とした表示操作のための変換を行うため、例えば回転表示の場合、注目領域が原点から離れていると、注目領域は画面上で大きく移動してしまい非常に観察し難くなってしまっていた。
【0010】
また、場合によっては画面からはみ出してしまうこともある。また医用の三次元画像では、最初に予め決められた角度からの観察画像、多くは被検体正面からの観察画像が表示され、そこから相対的な角度設定手段を複数回繰り返すことにより、所望の観察角度からの像の観察をするという表示操作手順が一般的である。
【0011】
ところが正面からの観察像に注目領域が適切に表示されている場合は実際において希であり、多くの場合はあまり観察されることなく角度変更されることが多い。この作業は複数回の繰り返し操作を伴うため、省力化のために操作回数を軽減することが望まれていた。
【0012】
本発明はこれらの課題に鑑み、三次元構造を理解し易い画像を提供することが可能な医用三次元画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために本発明においては、医用三次元画像を表示可能な表示手段を備えた医用三次元画像表示装置において、前記医用三次元画像の表示操作をするための原点位置を任意に指定可能な原点指定手段と、前記原点指定手段により指定された原点位置に表示の原点を変更する原点変更手段と、を備えること特徴とする医用三次元画像表示装置をもって解決手段とする。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明の医用三次元画像表示装置によれば、三次元構造を理解し易い画像を提供でき、また、注目領域を画像上で殆ど移動することなく回転させることができ、また、注目領域に他の部位が重なって観察し難いという事態を回避でき、また、三次元画像に関連する臨床情報を基に検査者の期待する初期表示角度を決定することで表示操作を軽減することが可能な医用三次元画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における一つの表示例を示す。
【図2】本発明の実施の形態2における一つの表示例を示す。
【図3】本発明の実施の形態4における一つの表示例を示す。
【図4】本発明の実施の形態6における一つの表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
装置の動作説明を容易にするために、まず仮に三次元画像をf(x、y、z)として定義する。ここでx軸は人体右方向、y軸は人体正面方向、z軸は人体頭頂方向を示している。また同様に表示画像をg(u,v)とし、u軸は画像横軸、vは画像縦軸を示す。さらにPは表示画像作成処理として以下のように表される。ここで理解を容易にするためにPはxz面に平行な面への平行投影として考える。
【0017】
g(u,v)=P{f(x、y、z)}・・・(1)
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
<実施の形態1>
一般的に画像の観察画像の変更は、以下の式で表される座標変換と投影Pによって構成される。
【数1】

【0019】
従ってf(x、y、z)を座標変換を行った結果f(x'、y'、z')を前記(1)式に代入することにより、表示画像は回転する。ここでn=(0,0,1)を考え、これを方向ベクトルとして定義すると、θ=0,ψ=0の場合は(2)式を適用しても変化せず、方向ベクトルの投影P(n)=(0,1)=n0となるため、画像上側を向いていることが明らかである。しかしθ=30度、ψ=30度の場合、方向ベクトルn'=(√(3)/4、−1/4、√(3)/2)となり、これをPで平行投影するとP(n')=(−√(3)/4、√(3)/2)=npとなるため、方向ベクトルは表示画像上で傾いてしまっている。これを補正するために投影した方向ベクトルと表示画像上の上方向とのなす角度ηは次のように求められる。
【数2】

【0020】
ここでは内積演算を示しており、|n0|はベクトルのノルムを表す。ここで求めたηを元に作成した画像を回転させることにより、予め規定された方向ベクトルの方向は、表示画像上で常に上を向いているようになる。但しこのベクトルを通る直線上の1点から観察する場合に限りこの変換は適用できないので、その場合には特にこの変換はその前までの変換を行うこととする。
【0021】
ここで図1を参照する。図1には本発明の医用三次元画像表示装置による画像表示の一つの例を示している。
【0022】
図中の(a)は初期の観察状態を示しており、頭頂方向1は画面に対して上方向に向いて表示されている。この頭頂方向1に対して血管3、関心領域2が表示されている。操作者は観察方向4の角度から画面を観察しており、この状態において操作者は三次元画像表示における立体的な構造を把握することができる。
【0023】
この(a)の表示状態から操作者が図示しない画像表示操作手段により画像表示を操作する。この場合においては(c)に示すように回転などの操作を行ったとしても、その表示における頭頂方向1は画面の上方向に合致している。このため、操作者は常に頭頂方向1が画面に対して上方向に向いた表示画面を見ることになるので、三次元の立体的な構造の把握が容易に行える。
【0024】
もちろん、この頭頂方向1を画面の上方向に向けること無く、画像表示操作にしたがって頭頂方向1を画面の上方向に合わせないで表示することもでき、(b)に、その一つの表示例を示す。
【0025】
また、頭頂方向1の表示方向を画面の上方向以外の所定の方向に向けて表示することもでき、これらの表示の選択を行うための図示しない切替スイッチを設けても良い。
【0026】
<実施の形態2>
図2には本発明の実施の形態2による画像表示の一つの例を示している。
【0027】
図示しない操作スイッチをオンにすると、観察対象となる血管7などを画像を表示しているフレームにスケール6が表示され、画像横方向はxy面内の回転角を、画像縦方向は頭頂、足尾方向への回転角を示している。この時フレーム内の一点を図示しないマウスのような指示器でカーソル5を移動させて指示すると、その画像座標が取り込まれ、スケール6に従って実際の回転角に変換される。そしてその回転角に表示画像を一度に回転させる。そしてスイッチをオフにすると、スケール6が消え、例えば画像上でマウスを動かすとその移動距離と方向がそれぞれ回転角度と回転方向に変換され、画像の回転が実行される。
【0028】
本実施の形態2では角度設定を画像の周りに表示したスケール6と画像内の座標によって実施しているが、本発明はこれにとらわれることなく、例えば別のウィンドウにグラフのようなものを表示しても良い。
【0029】
また、図示しない操作スイッチをオフした後、相対的角度設定を行っているが、絶対的な角度設定を一度行えば、自動的に相対的角度設定に移行しても良い。
【0030】
<実施の形態3>
任意の画像に対する三次元画像表示を表示していない状態で、表示命令を最初に受け取った場合、予め決められた複数方向への投影を作成し、その投影データのエネルギー(各画素の2乗和)を計算する。そしてこのエネルギーの中で最も低い値を示す方向を最初の表示方向として決定する。このようにして、例えば三次元立体表示された血管走向などにおいて、血管同士がもっとも重なり合うことが少ない方向からの画像表示を行うことができる。
【0031】
<実施の形態4>
図3には本発明の実施の形態4における一つの表示例を示している。
【0032】
医用三次元画像表示装置内に図示しないデータベースを構築し、そのデータベースはある事象に対する一定期間毎(例えば1週間とか1ヶ月、1年等)の観察角度の頻度を保存している。
【0033】
この事象は例えば患者氏名、患者ID、症例名、検査時間、検査名、検査医師名、主治医名等の臨床データ10として記憶されている。これらはあくまで事象の例として挙げられたものであり、それ以外の事象を導入しても良いし、ここに挙げられた事象を全て利用する必要もない。
【0034】
観察角度は例えば一定間隔毎に設定され、例えば患者の正面から左右5度までで且つ上下5度までは同じ方向としてカウントされる。そして観察角度に対する各事象の頻度に関する関数を定義し(例えば各頻度の和)、その関数を計算し、その中で最も大きな値を示した観察角度を最も望ましい観察角度として決定する。
【0035】
このようにすれば、過去に(a)にて示す三次元血管表示11を観察していた場合、この図示された方向からの観察頻度が高ければ優先順位が上がってデータベースに記憶される。血管9において認められる関心領域8の表示角度も同時に記憶される。
【0036】
臨床データ10に基いて、三次元血管表示11を後日におこなって血管9の観察をする場合は、(b)に示すように(a)における表示角度と同一の角度で表示される。このため両画像データの比較を容易に行うことができ、たとえば(a)にて認められた関心領域8が(b)においては消滅している様子を容易に把握できる。
【0037】
<実施の形態5>
表示装置内に例えばニユートラルネットワークのような学習機能のあるアルゴリズムを構築し、このアルゴリズムに対し、例えば実施の形態4に示した事象を信号として与える。そして最終的に望ましい出力(観察角度)が得られた場合は、角度を決定した後、その位置で図示しない決定スイッチを押すことにより、その角度をネットワークにフィードバックして学習させる。最初から最適な画像が得られた場合は、その位置で決定スイッチを押すことにより、ネットワークにこの選択が正しかったことを示す。
【0038】
なお、実施の形態3乃至5では、観察角度を一意に決定しているが、例えばFEP(Front End Processor)の候補表示のように、幾つか可能性の高い順に候補を表示して、そこから操作者が選択できるようにしても良い。
【0039】
<実施の形態6>
原点移動機能をオンにして、表示画像上で注目領域の該中心の1点を指定する。その1点の画像座標を読みとった後、その点を通りy軸に平行な直線を求める。その直線上を観察面から三次元画像領域をトレースし、最初に交わった対象表面と次の表面の三次元座標を求め、その中点を新たな原点として設定する。
【0040】
従って回転、拡大、縮小処理によっては、この原点の表示位置は変化しない。
【0041】
ここでは原点を1回の指定で決定しているが、1回指定した後、観察角度を変化させた時にy軸に平行な直線を表示画像上に重ねて表示し、その線上でさらにもう1点指定することにより、最初の指定の時と同じようにもう1つの直線の式が算出され、その交点若しくはその直線が最も近づく点同士の中点を原点としても良い。この方法は手順としては増えるが、原点はこの方が安定して指定できる。
【0042】
図4にこの表示例を示す。たとえば(a)にみられるように原点14を血管12および関心領域12の近傍に設定して、この原点14を表示操作の原点として行うことで、操作者は容易に三次元立体表示の立体構造を把握することができる。
【0043】
また、(b)に示すように、原点14の位置を関心領域13に設定することで関心領域13を中心として表示操作を行え、また立体的な構造の把握も容易に行える。
【0044】
また、原点中心とした回転、拡大、綽小のみについて説明しているが、注目領域のみの表示にも適用できる。原点が指定された後、原点を中心としたある範囲内のみを表示する。この時の表示範囲は、原点を中心とした円や立方体で定義される。円の半径や立方体の辺の長さは、表示画像上に重ねて表示され、そのワイヤーフレーム像のワイヤー部分をたとえばマウスカーソルなどにより引っ張ることにより領域を拡大、縮小することもできる。
【0045】
以上述べたように、本発明の各実施の形態によれば、被検体の任意の一方向が常に画像上の任意の方向を向いているようにすることで、検査者が三次元構造を理解し易い画像を提供すると同時に、三次元構造を理解し易い方向の個人差に対応するために表示する方向を変更することができる。
【0046】
また、注目領域の該中心を原点として指定した上で、原点を中心とした表示操作を行うことにより、例えば観察し易い方向を探すための回転処理を行った場合、注目領域を中心とした画像回転を行うため、注目領域は画像上で殆ど移動することなく回転させることができる。
【0047】
このため観察者は視点を移動することも、また注目領域が画面からはみ出すことも防げ、さらに注目領域以外の領域を表示しないことにより、注目領域に他の部位が重なって観察し難いという事態を回避できる。
【0048】
また医用の三次元画像では、最初に表示された角度から所望の角度を表示するまでに多くの表示操作を行う必要があったが、三次元画像に関連する臨床情報を基に検査者の期待する初期表示角度を決定することで表示操作を軽減することができる。
【0049】
さらに表示角度設定手段として指示角度設定手段と任意角度設定手段を有し、まずは指示角度設定手段にて、望ましい観察角度周辺に一度の操作で移動し、そこから任意角度設定手段で最適な角度を細かく変化させながら探すことにより、操作者の省力化が実現できる。
【0050】
なお、以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0051】
1…頭頂方向
2…関心領域
3…血管
4…観察方向
5…カーソル
6…スケール
7…血管
8…関心領域
9…血管
10…臨床データ
11…三次元血管表示
12…血管
13…関心領域
14…原点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用三次元画像を表示可能な表示手段を備えた医用三次元画像表示装置において、
被検体を三次元表示するための任意の基準線に対応する変位量が画面に表示されるとき、当該変位量のうち所望とする変位量を選択して表示画面に直接入力可能な角度変位量入力手段と、
現在の表示画面に対して任意方向への変位を与えることが可能な任意変位量入力手段と、
を備えることを特徴とする医用三次元画像表示装置。
【請求項2】
前記角度変位量入力手段または前記任意変位量入力手段の両手段を任意に切替可能な角度設定手段切替手段を備えることを特徴とする請求項1記載の医用三次元画像表示装置。
【請求項3】
前記角度設定手段切替手段は、
前記角度変位量入力手段による表示の後に前記任意変位量入力手段に切替る所定切替手段を備えることを特徴とする請求項1記載の医用三次元画像表示装置。
【請求項4】
前記医用三次元画像の表示角度を当該医用三次元画像に関連した医療情報に基いて決定する表示角度決定手段を備えることを特徴とする請求項1記載の医用三次元画像表示装置。
【請求項5】
前記表示角度決定手段は、
予め設定された複数の表示角度値が所定の優先順位にて表示され、この表示角度値より任意に選択可能な角度候補表示手段を備えることを特徴とする請求項4記載の医用三次元画像表示装置。
【請求項6】
前記表示角度決定手段は、
選択される表示角度の頻度のデータベースに基いて前記優先順位が設定されることを特徴とする請求項4記載の医用三次元画像表示装置。
【請求項7】
前記表示角度決定手段は、
選択される表示角度の頻度に対し学習機能を有するアルゴリズムに基き表示角度の優先順位を決めることを特徴とする請求項4記載の医用三次元画像表示装置。
【請求項8】
前記医療情報は、
患者個有情報および/または臨床検査記録情報であることを特徴とする請求項4記載の医用三次元画像表示装置。
【請求項9】
医用三次元画像を表示可能な表示手段を備えた医用三次元画像表示装置において、
任意の医用画像に対する三次元表示をしていない状態で、表示指示を受けた場合、予め決められた複数方向への投影を作成し、その投影データのエネルギーを計算する手段と、
計算された前記エネルギーの中で、最も低い値を示す方向を最初の表示方向として決定する手段と、を備えることを特徴とする医用三次元画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−71194(P2012−71194A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6398(P2012−6398)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【分割の表示】特願2010−30548(P2010−30548)の分割
【原出願日】平成11年11月29日(1999.11.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】