医用画像処理装置及び医用画像処理方法
【課題】脊椎(特に椎体や椎孔)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示する医用画像処理装置等を提供する。
【解決手段】医用画像処理装置1は、各断層像に対して、被検体の前後方向に延伸し、椎孔4を通る直線Lを算出し(S2)、直線L上における椎体3の端点のY座標Ya、Ybを算出し(S3)、直線L上における腹側に位置する、椎体3の2つの端点間を外分する点αを算出し(S4)、直線L上における背側に位置する、椎体3の2つの端点間を外分する点βを算出し(S5)、α及びβの中点γを算出し(S6)、全てのαを通る基準線Lα、全てのβを通る基準線Lβ、全てのγを通る基準線Lγ、を算出し(S9)、基準線Lα、Lβ、Lγのいずれかを用いて、脊椎画像を作成する(S10)。
【解決手段】医用画像処理装置1は、各断層像に対して、被検体の前後方向に延伸し、椎孔4を通る直線Lを算出し(S2)、直線L上における椎体3の端点のY座標Ya、Ybを算出し(S3)、直線L上における腹側に位置する、椎体3の2つの端点間を外分する点αを算出し(S4)、直線L上における背側に位置する、椎体3の2つの端点間を外分する点βを算出し(S5)、α及びβの中点γを算出し(S6)、全てのαを通る基準線Lα、全てのβを通る基準線Lβ、全てのγを通る基準線Lγ、を算出し(S9)、基準線Lα、Lβ、Lγのいずれかを用いて、脊椎画像を作成する(S10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT画像、MR画像、US画像等の医用画像に対する画像処理を行う医用画像処理装置等に関する。詳細には、脊椎に関する画像を作成し、表示する画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CT(Computed Tomography)画像、MR(Magnetic Resonance)画像、US(Ultrasound)画像等の医用画像を用いた診断が行われている。また、近年、所望の組織を読影する為に好適な画像を作成し、表示する画像処理技術が開発、研究されている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎分離症・すべり症などには、背骨(脊椎骨)の中を通る神経の様子をみる検査が有効であることが記載されている。椎間板ヘルニアでは、脊椎骨の間にある椎間板の変性により、後方に突出してきた椎間板の一部(髄核や線維輪)が、神経(根)を圧迫するために痛みが出る。また脊柱管狭窄症では、いろいろな原因によって、硬膜のチューブに包まれた脊椎の椎孔の神経が通る場所(脊柱管)が狭くなってしまい、腰下肢の痛みやしびれ、歩行障害が起こる。非特許文献1に記載の医療技術(ミエログラフィーと呼ばれる。)は、脳脊椎の椎孔液の所にレントゲンに写る造影剤を入れて、陰影の変化を調べるというものである。
【0004】
また、特許文献1には、医用画像から椎体領域を抽出する画像処理装置が記載されている。特許文献1に記載の画像処理装置では、被検体の一連の断層画像からそれぞれ体領域を抽出し、抽出した体領域から椎体領域を含む関心領域を設定する。そして、関心領域内の各画素について、閾値を海綿骨のCT値とした閾値処理を行うことにより、椎体(骨)領域を抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−246662号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】成尾整形外科病院著 「ミエログラフィー(脊髄腔造影)でわかる代表的な病気」はくざん通信第20号 2001年(http://www.naruoseikei.com/hakuzan/20/20.html 2011年8月24日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のミエログラフィーにおいて撮影されるレントゲン画像では、所望の対象物以外の臓器や部位も一緒に撮影されてしまい、診断しにくいものであった。
【0008】
ここで、本願における所望の対象物は、特に、椎体や椎孔等である。椎体は、椎骨の前方(腹側)に位置する円柱状の部分である。椎孔は、人体の正面から見て、椎体の背後に位置する空間である。いくつもの椎体が連結し、椎孔が重なると管になる。この管を脊柱管といい、脊柱管の中を脊髄や馬尾神経が通っている。
【0009】
仮に、特許文献1に記載の技術を椎孔の画像作成処理に適用する場合、閾値を椎孔のCT値とした閾値処理を行うことにより、椎孔領域を抽出することになる。しかしながら、各断層画像において、椎孔領域と他の組織や部位との境界が判別できない箇所が存在する場合があり、椎孔領域を閉領域として自動的に抽出できない場合がある。
【0010】
また、脊椎(特に椎体や椎孔)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示する画像処理技術は、未だ確立されていない。
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、脊椎(特に椎体や椎孔)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示する医用画像処理装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために第1の発明は、複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理装置であって、単一の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出する手段と、前記第1直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出する手段と、前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出する手段と、複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出する手段と、前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成する手段と、を具備することを特徴とする医用画像処理装置である。
【0013】
第2の発明は、複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理装置であって、複数の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出する手段と、複数の前記第1直線群の画素からなる曲断面再構成画像において、複数の椎体の中心を通る中心線を算出する手段と、前記中心線の各点において、前記中心線の垂直方向又は被検体の前後方向に延伸する第2直線を算出する手段と、前記第2直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出する手段と、前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出する手段と、複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出する手段と、前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成する手段と、を具備することを特徴とする医用画像処理装置である。
【0014】
第3の発明は、複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理方法であって、単一の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出するステップと、前記第1直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出するステップと、前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出するステップと、複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出するステップと、前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成するステップと、を含むことを特徴とする医用画像処理方法である。
【0015】
第4の発明は、複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理方法であって、複数の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出するステップと、複数の前記第1直線群の画素からなる曲断面再構成画像において、複数の椎体の中心を通る中心線を算出するステップと、前記中心線の各点において、前記中心線の垂直方向又は被検体の前後方向に延伸する第2直線を算出するステップと、前記第2直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出するステップと、前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出するステップと、複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出するステップと、前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成するステップと、を含むことを特徴とする医用画像処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、脊椎(特に椎体や椎孔)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示する医用画像処理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】医用画像処理装置のハードウエア構成を示す図
【図2】第1の脊椎画像作成処理を示すフローチャート
【図3】第1の脊椎画像作成処理を説明する図
【図4】第2の脊椎画像作成処理を示すフローチャート
【図5】第2の脊椎画像作成処理を説明する図
【図6】最小値投影画像の作成処理を説明する図
【図7】近似投影面を用いた最小値投画影像の作成処理を説明する図
【図8】脊椎画像の例
【図9】脊椎画像の例
【図10】展開画像の作成処理を説明する図
【図11】近似投影面を用いた展開画像の作成処理を説明する図
【図12】展開画像の例
【図13】表示画面の例
【図14】基準線の表示例
【図15】基準線の表示例
【図16】第1の基準線修正処理を説明する図
【図17】第1の基準線修正処理を説明する図
【図18】第2の基準線修正処理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の医用画像処理装置1のハードウエア構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、医用画像処理装置1には、表示装置17、マウス18やキーボード19などの入力装置等が接続される。また、医用画像処理装置1には、ネットワーク20を介して画像データベース21、医用画像撮影装置22等が接続されても良い。
【0020】
医用画像処理装置1は、画像生成、画像解析等の処理を行うコンピュータである。
医用画像処理装置1は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、主メモリ12、記憶装置13、通信インタフェース(通信I/F)14、表示メモリ15、マウス18及びキーボード19等の外部機器とのインタフェース(I/F)16を備え、各部はバス10を介して接続されている。
【0021】
CPU11は、主メモリ12または記憶装置13等に格納されるプログラムを主メモリ12のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス10を介して接続された各部を駆動制御し、医用画像処理装置1が行う各種処理を実現する。
【0022】
主メモリ12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置13等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0023】
記憶装置13は、HDD(ハードディスクドライブ)や他の記録媒体へのデータの読み書きを行う装置であり、CPU11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU11により必要に応じて読み出されて主メモリ12のRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0024】
通信I/F14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、医用画像処理装置1とネットワーク20との通信を媒介する。また通信I/F14は、ネットワーク20を介して、画像データベース21や、他のコンピュータ、或いは、X線CT装置、MRI装置等の医用画像撮影装置22との通信制御を行う。
I/F16は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器とのデータの送受信を行う。
【0025】
表示メモリ15は、CPU11から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置17に出力される。
【0026】
表示装置17は、液晶パネル等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、表示メモリ15を介してCPU11に接続される。表示装置17はCPU11の制御により表示メモリ15に蓄積された表示データを表示する。
【0027】
マウス18及びキーボード19は、操作者によって入力される各種の指示や情報をCPU11に出力する。操作者は、マウス18及びキーボード19等の外部機器を使用して対話的に医用画像処理装置1を操作する。
なお、表示装置17及び入力装置(マウス18やキーボード19)は、例えば、タッチパネル付ディスプレイのように一体となっていてもよい。この場合、キーボード19のキーボード配列がタッチパネル付ディスプレイに表示されるようにしても良い。
【0028】
ネットワーク20は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、インターネット等の各種通信網を含み、画像データベース21や他の情報機器等と医用画像処理装置1との通信接続を媒介する。
【0029】
画像データベース21は、医用画像撮影装置22によって撮影された画像データを蓄積して記憶するものである。図1に示す例では、画像データベース21はネットワーク20を介して医用画像処理装置1に接続される構成であるが、医用画像処理装置1内の例えば記憶装置13に画像データベース21を設けるようにしてもよい。
【0030】
ここで、図5(a)を参照しながら、脊椎の各部の位置関係について説明する。本発明の実施の形態では、医用画像として、CT画像を例に説明する。図5(a)は、横軸を被検体の前後方向(Y軸方向)、縦軸を体軸方向(スライス方向)としたCPR(Curved Planar Reconstruction:曲断面再構成)画像である。図5(a)では、骨(椎体、椎弓及び棘突起等を含む。)と同程度のCT値を有する画素が灰色、それ以外が白色として図示されている。尚、図5(a)に示す画像の作成処理の詳細は後述する。
【0031】
脊椎は、椎骨2が連結したものである。椎骨2は、頭側から頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個が連結し、その下に、仙椎、尾骨がある。各椎骨2は、椎体3、椎孔4、椎弓5及び棘突起(きょくとっき)6等からなる。椎体3は、椎骨2の前方(腹側)に位置する円柱状の部分である。椎孔4は、人体の前方(腹側)から見て、椎体3の背後に位置する空間である。いくつもの椎体3が連結し、椎孔4が重なると管になる。この管を脊柱管といい、脊柱管の中を脊髄や馬尾神経が通っている。椎弓5は、椎骨2の後方(背側)に位置するアーチ状の部分である。椎体3は単純な形状をしているが、椎弓5の形状は複雑である。椎弓5には上下の他の椎体3との関節面があり、左右の上関節突起、下関節突起、横突起と、一つの後下方に延びる棘突起6がある。隣接する椎体3同士の関節は5つ(椎弓5に4つ、椎体3に1つ)あり、椎体3同士の接する関節(椎間関節)には弾性に富んだ椎間板7が存在する。
【0032】
本実施の形態における医用画像処理装置1は、特に、椎体3や椎孔4とその周辺の組織読影するために好適な画像を作成するものである。以下では、主に脊椎を含む画像を「脊椎画像」と呼ぶことにする。脊椎画像には、前述した椎体3、椎孔4、椎弓5、棘突起6、椎間板7等の一部又は全部が含まれる。
【0033】
図2、図3を参照しながら、第1の脊椎画像作成処理について説明する。第1の脊椎画像作成処理では、複数の断層像に対して処理を行い、断層像ごとに基準点α、β、γを算出する。基準点とは、脊椎画像を作成する際に基準となる基準線や基準面を定義するための点である。
【0034】
以下に示す医用画像処理装置1のCPU11の処理では、各断層像において、椎体3、椎孔4、椎弓5、棘突起6などの領域を抽出する処理が含まれている。一般に、椎体3、椎弓5、棘突起6などの骨と同程度のCT値を有する部位は、周辺の組織とのCT値の差が大きい為、閉領域として抽出することが容易である。また、椎孔4は、周囲が全て骨に囲まれていれば、閉領域として抽出することができる。一方、椎孔4は、周囲の一部が骨以外に囲まれている場合、閉領域として抽出することは困難となる。
【0035】
図2に示すように、医用画像処理装置1のCPU11は、最初の画像(断層像)を決定する(S1)。そして、CPU11は、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸し、椎孔4を通る直線Lを算出する(S2)。
【0036】
図3(a)では、直線Lの一例として、直線L1(実線にて図示)及び直線L2(点線にて図示)を図示している。直線L1は、椎骨2の中心(例えば、重心位置)を通り、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸する直線である。直線L2は、椎孔4の領域の中心(例えば、重心位置)を通り、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸する直線である。いずれの場合も、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸し、椎孔4を通る直線となる。
【0037】
また、図3(b)では、直線Lの一例として、直線L3(実線にて図示)を図示している。直線L3は、椎孔4の後方(背側)に尖った部分(すなわち棘突起6)の中心(例えば、棘突起6の重心位置や棘突起6の中で最も背側に位置する点)を通り、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸する直線である。被検体が撮影時に左右に傾いていない限り、直線L3も、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸し、椎孔4を通る直線となる。
【0038】
図3(a)の画像では、椎孔4の周囲が全て骨(椎体3、椎弓5等の白い部分)に囲まれており、椎孔4を閉領域として抽出することが可能である。従って、椎孔4の領域の重心位置を算出することも可能となり、ひいては、前述した直線L2を算出することが可能となる。
【0039】
一方、図3(b)の画像では、椎孔4の周囲の一部が骨以外(灰色〜黒色の部分)に囲まれており、椎孔4を閉領域として抽出することができない。従って、椎孔4の領域の重心位置を算出することができず、ひいては、前述した直線L2を算出することもできない。
【0040】
そこで、図3(b)のような画像の場合、直線L3を算出することが望ましい。直線L3であれば、棘突起6を基準としているので、椎孔4の周囲の一部が骨以外(灰色〜黒色の部分)に囲まれている場合であっても、算出することができる。
【0041】
次に、CPU11は、直線L上における椎体3の端点のY座標Ya、Ybを算出する(S3)。図3(a)では、直線L1を例にとり、椎体3の端点を図示している。直線Y1a、Y1bが、椎体3の端点のY座標の位置を示している。また、X1が、椎体3の端点のX座標である。また、図3(b)では、直線L3を例にとり、椎体3の端点を図示している。直線Y3a、Y3bが、椎体3の端点のY座標の位置を示している。また、X3が、椎体3の端点のX座標である。
【0042】
次に、CPU11は、直線L上における腹側に位置する、椎体3の2つの端点間を外分する点αを算出する(S4)。具体的には、CPU11は、点αの座標をα(X、Ya−Ca×W)とする。ここで、Wは、2つの端点同士の距離であり、W=Yb−Yaである。また、Caは、正の定数(例えば1.2等)である。Caの値は、必要に応じて、操作者が、マウス18やキーボード19等を介して変更可能である。また、この場合、操作者は、Caの値に代えて、Ca×Wに相当する値を入力しても良い。
【0043】
次に、CPU11は、直線L上における背側に位置する、椎体3の2つの端点間を外分する点βを算出する(S5)。具体的には、CPU11は、点βの座標をβ(X、Yb+Cb×W)とする。Wは、αの場合と同様である。Cbも、αの場合におけるCaと同様であるが、Caと異なる値としても良いし、同じ値としても良い。
【0044】
図3(a)では、直線L1を例にとり、α及びβを図示している。図3(a)の場合、α(X1、Y1a−Ca×W1)、β(X1、Y1b+Cb×W1)である。また、図3(b)では、直線L3を例にとり、α及びβを図示している。図3(b)の場合、α(X3、Y3a−Ca×W3)、β(X3、Y3b+Cb×W3)である。
【0045】
次に、CPU11は、α及びβの中点γを算出する(S6)。図3(a)では、直線L1を例にとり、γを図示している。また、図3(b)では、直線L3を例にとり、γを図示している。
【0046】
次に、CPU11は、全ての画像を決定したか否か、すなわち全ての画像に対してα、β及びγを算出したか否か確認する(S7)。
【0047】
全ての画像を決定していない場合(S7のNO)、CPU11は、次の画像を決定し(S8)、S2〜S7を繰り返す。
【0048】
全ての画像を決定している場合(S7のYES)、CPU11は、断層像ごとに算出された全てのαを通る基準線Lα、全てのβを通る基準線Lβ、全てのγを通る基準線Lγ、を算出する(S9)。そして、CPU11は、操作者の指示に応じて、基準線Lα、Lβ、Lγのいずれかを用いて、脊椎画像を作成する(S10)。例えば、CPU11は、基準線Lα、Lβ、Lγのいずれかを用いて、基準面Pα、Pβ、Pγのいずれかを算出し、基準面Pα、Pβ、Pγの1つ又は複数に基づいて脊椎画像を作成する。
【0049】
脊椎画像の作成手法としては、サーフェイスレンダリング法、ボリュームレンダリング法、最小値投影法、最大値投影法、曲断面再構成法、展開画像作成法など、様々な公知の技術を用いることができる。脊椎画像の作成手法の一例は、図6以降を参照しながら後述する。
【0050】
次に、図4、図5を参照しながら、第2の脊椎画像作成処理について説明する。第2の脊椎画像作成処理では、複数の断層像に基づいてCPR画像を作成し、CPR画像から複数の基準点α、β、γ、δを算出する。基準点の定義は、第1の脊椎画像作成処理と同様である。
【0051】
図4に示すように、医用画像処理装置1のCPU11は、最初の画像(断層像)を決定する(S21)。そして、CPU11は、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸し、椎孔4を通る直線Lを算出する(S22)。S22の処理は、図2のS2と同様である。
【0052】
次に、CPU11は、全ての画像を決定したか否か、すなわち全ての画像に対して直線Lを算出したか否か確認する(S23)。
【0053】
全ての画像を決定していない場合(S23のNO)、CPU11は、次の画像を決定し(S24)、S22及びS23を繰り返す。
【0054】
全ての画像を決定している場合(S23のYES)、CPU11は、直線L群からなるCPR画像を作成する(S25)。そして、CPU11は、CPR画像を閾値処理し、2値化する(S26)。閾値処理における閾値は、骨(椎体3、椎弓5等)と、骨以外の部分(椎孔4、椎間板7等を含む)とを分けることが可能なCT値とする。図5(a)は、このようにして2値化したCPR画像を示している。骨(椎体3、椎弓5等)が灰色、骨以外の部分(椎孔4、椎間板7等を含む)が白色となっている。
【0055】
次に、CPU11は、被検体の体軸方向(スライス方向)に隙間を埋めて、長い方から2番目までの連結領域を残す(S27)。ここで、隙間とは、骨以外の部分であり、図5(a)の灰色の部分である。CPU11は、例えば、スライス方向に連続する画素列(例えば、10個等)を1単位として、画像全体を走査していき、画素列の最前列及び最後列が灰色、かつ、中間の画素の少なくとも1つが白色の場合、隙間と判断して、灰色に変える。例えば、画素列が10個の場合、(灰色、灰色、灰色、灰色、白色、白色、白色、白色、白色、灰色)であれば、CPU11は、白色の画素を全て灰色に変える。尚、白色の画素を全て灰色に変えることに代えて、白色の画素を除外し、スライス方向に圧縮するような処理を行っても良い。
【0056】
隙間を埋める処理を行うと、いくつかの連結領域(灰色の画素が連接している領域)に集約される。これらの連結領域に対して、CPU11は、被検体の体軸方向(スライス方向)の最大長を算出し、最大長が2番目までの連結領域のみを残し、それ以外の連結領域を白色に変える。最大長が1番目及び2番目までの連結領域は、一方が椎体3の連結領域であり、もう一方が椎弓5及び棘突起6の連結領域である。そして、腹側の連結領域が椎体3の連結領域、背側の連結領域が椎弓5及び棘突起6の連結領域である。
【0057】
次に、CPU11は、椎体3の連結領域に対して長手方向に沿った中心線(複数の椎体3の中心を通る中心線)を算出する(S28)。図5(b)には、中心線Lc(点線にて図示)が示されている。CPU11は、例えば、スライス方向の各位置において、椎体3の連結領域のY軸方向の中心点を順次算出し、これらの中心点を結ぶことによって中心線を算出する。また、CPU11は、例えば、公知の技術である管腔臓器の芯線の算出処理を用いて、中心線Lcを算出しても良い。
【0058】
次に、CPU11は、中心線Lcの各点iにおいて、中心線Lcの垂直方向に延伸する直線M(i)上における椎体3の端点のY座標Ya(i)、Yb(i)を算出し(S29)、Ya(i)とYb(i)に基づいて、α(i)、β(i)、γ(i)、δ(i)を算出する(S30)。
【0059】
S29及びS30では、中心線Lcの全ての点iに対して処理を行う。S29のYa(i)及びYb(i)の処理、並びにS30のα(i)、β(i)及びγ(i)の算出処理は、図2のS3〜S6の処理と同様である。
【0060】
また、CPU11は、δ(i)として、椎体3の端点を通る直線(=直線M(i))上における椎弓5の端点を算出する。
【0061】
尚、前述の説明における、「中心線Lcの各点iにおいて、中心線Lcの垂直方向に延伸する直線M(i)」に代えて、「中心線Lcの各点iにおいて、Y軸方向に延伸する直線M2(i)」としても良い。これは、中心線Lcがスライス方向とほぼ平行である為、中心線Lcの垂直方向もY軸方向とほぼ平行となるからである。直線M2(i)の場合、中心線Lcの垂直方向を算出する必要がない為、処理が容易である。
【0062】
また、直線M(i)の場合、iのスライス方向の座標<i+1のスライス方向の座標としたとき、β(i)のスライス方向の座標>β(i)のスライス方向の座標となってしまい、基準点のスライス方向の位置が入れ替わってしまうことがある。一方、M2(i)の場合、基準点のスライス方向の位置が入れ替わってしまうことがなく、後続の処理が容易となる。
【0063】
図5(b)では、直線30が、前述した直線M(i)の一例である。Ya及びYbは「●」、α、β及びγは「×」にて図示している。また、直線31が、前述した直線M2(i)の一例である。
【0064】
次に、CPU11は、全てのα(i)を通る基準線Lα、全てのβ(i)を通る基準線Lβ、全てのγ(i)を通る基準線Lγ、全てのδ(i)を通る基準線Lδ、を算出する(S31)。そして、CPU11は、操作者の指示に応じて、基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδのいずれかを用いて、脊椎画像を作成する(S32)。例えば、CPU11は、基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδのいずれかを用いて、基準面Pα、Pβ、Pγ、Pδのいずれかを算出し、基準面Pα、Pβ、Pγ、Pδの1つ又は複数に基づいて脊椎画像を作成する。
【0065】
図5(b)では、基準線Lα、Lβ(実線にて図示)を図示している。尚、可読性を高める為、基準線Lγ、Lδは図示していない。
【0066】
脊椎画像の作成手法としては、サーフェイスレンダリング法、ボリュームレンダリング法、最小値投影法、最大値投影法、曲断面再構成法、展開画像作成法など、様々な公知の技術を用いることができる。脊椎画像の作成手法の一例は、図6以降を参照しながら後述する。
【0067】
次に、図6〜図9を参照しながら、脊椎画像の作成手法の一例として、最小値投影法を用いる場合を説明する。
【0068】
図6では、各スライス位置の断層像40をスライス方向に積層した状態を模式的に示している。CPR画像41は、図5のS25において作成される、直線L群からなるCPR画像である。尚、図6では、視認性を高める為に、閾値処理した2値化画像を図示している。また、CPR画像41は、第2の脊椎画像作成処理によって作成されるものに限らず、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線に基づいて作成されるものであっても良い。
【0069】
基準線Lβは、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線である。基準面Pβは、基準線LβをX軸方向に引き伸ばしたものである。つまり、基準線Lβの各点の座標の集合を{(X*、Y1、Z1)、・・・・、(X*、Yn、Zn)}とすると、CPU11は、この集合に対して、X*=X1、・・・、Xn(X軸方向のサンプリング点)を代入し、{(X1、Y1、Z1)、・・・・、(X1、Yn、Zn)、・・・、(Xn、Y1、Z1)、・・・・、(Xn、Yn、Zn)}を、基準面Pβの各点の座標の集合とする。
【0070】
そして、CPU11は、最小値投影法によって、基準面Pβの各点から、各点の垂直方向に投影線を発し、投影面42に投影線上の最小値を投影する。
【0071】
図7は、図6の投影面42に代えて、近似的な投影面43を利用する場合を図示している。図6の投影面42は、Y軸に略垂直なので、演算時間の短縮等を目的として、Y軸に垂直な投影面43を利用することも好適である。
【0072】
図7も、図6と同様、各スライス位置の断層像40をスライス方向に積層した状態を模式的に示している。CPR画像41は、図5のS25において作成される、直線L群からなるCPR画像である。尚、図7でも、視認性を高める為に、閾値処理した2値化画像を図示している。
【0073】
基準線Lα、Lβは、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線である。基準面Pα、Pβは、基準線Lα、LβをX軸方向に引き伸ばしたものである。
【0074】
そして、CPU11は、最小値投影法によって、基準面Pβの各点から、基準面Pαに向かってY軸方向に投影線を発し、投影面43に、基準面Pαから基準面Pβまでの間に位置する投影線上の最小値を投影する。この場合、椎体3とその前後の組織(椎孔4を含む。)に着目した脊椎画像が得られる。
【0075】
図8は、図7に示す作成処理によって作成された脊椎画像を示している。つまり、図8に示す脊椎画像は、Pβから前方向(腹側)への最小値投影像であり、特に、基準面Pβから投影線を発して、基準面Pαまでの投影線上の最小値を投影面43に投影した演算結果である。
【0076】
円60の内部は、正常の被検者であれば椎孔4の領域であり、灰色として表示されるはずである。しかしながら、円60の内部には、白色の領域(高濃度領域)が存在しており、異常候補と考えられる。
【0077】
図9は、図8の異常候補の領域を含み、基準面に直交する断面画像である。楕円61の内部は、正常の被検者であれば椎孔4の領域であり、灰色として表示されるはずである。しかしながら、楕円60の内部には、白色の領域(高濃度領域)が存在しており、異常候補と考えられる。
【0078】
図8、図9に示すように、図2又は図4によって算出される基準線や基準面に基づいて作成される脊椎画像は、脊椎(特に椎体3や椎孔4)を読影するために好適な画像である。
【0079】
次に、図10〜図12を参照しながら、脊椎画像の作成手法の一例として、展開画像作成法を用いる場合を説明する。展開画像作成法自体は、公知の手法である為、詳細な説明を省略する。本発明の実施の形態では、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線の周囲全体にわたって最小値投影を行い、展開画像を作成する。
【0080】
図10も、図6、図7と同様、各スライス位置の断層像40をスライス方向に積層した状態を模式的に示している。CPR画像41は、図5のS25において作成される、直線L群からなるCPR画像である。尚、図10でも、視認性を高める為に、閾値処理した2値化画像を図示している。基準線Lβは、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線である。
【0081】
そして、CPU11は、最小値投影法によって、基準線Lβの周囲全体(θ=0〜360度)にわたって、基準線Lβと直交する動径45上の最小値を筒状の投影面44に投影する。投影面44に投影された演算結果は、平面に展開され、展開画像となる。
【0082】
図11は、図10の投影面44に代えて、近似的な投影面46を利用する場合を図示している。図10の投影面44は、全体としてスライス軸にほぼ平行なので、演算時間の短縮等を目的として、スライス軸に平行な筒状の投影面46を利用することも好適である。
【0083】
図11も、図10と同様、各スライス位置の断層像40をスライス方向に積層した状態を模式的に示している。CPR画像41は、図5のS25において作成される、直線L群からなるCPR画像である。尚、図11でも、視認性を高める為に、閾値処理した2値化画像を図示している。基準線Lβは、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線である。
【0084】
そして、CPU11は、最小値投影法によって、基準線Lβの周囲全体(θ=0〜360度)にわたって、スライス軸と直交する動径47上の最小値を筒状の投影面46に投影する。投影面46に投影された演算結果は、平面に展開され、展開画像となる。
【0085】
図12は、図11に示す作成処理によって作成された脊椎の展開画像を示している。展開画像であれば、図8に示す脊椎画像よりも広範囲にわたって読影が可能となる。一方、図8に示す脊椎画像は、部位や組織を把握し易いというメリットがある。
【0086】
次に、図13〜図18を参照しながら、CPU11が自動的に算出した基準線を表示し、表示された基準線を修正するためのユーザインタフェースについて説明する。
【0087】
図13は、ユーザインタフェースのメイン画面の1例を示している。図13では、画像表示領域51、画像表示領域52、基準位置指定ラジオボタン53、視線指定ラジオボタン54、画像作成手法指定ラジオボタン55、平行移動の移動量指定スライドバー56等が図示されている。
【0088】
画像表示領域51には、正中面を断面とする脊椎の断面画像に、基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδが重畳表示されている。
【0089】
基準位置指定ラジオボタン53は、画像表示領域52に表示する脊椎画像の基準位置を指定する為のラジオボタンである。図13の例では、基準位置が「β」に指定されている。基準位置が「β」の場合、CPU11は、基準線Lβ又は基準面Pβを基準として脊椎画像を作成する。基準位置が「α」、「γ」及び「δ」の場合も同様である。
【0090】
視線指定ラジオボタン54は、画像表示領域52に表示する脊椎画像の視線を指定する為のラジオボタンである。図13の例では、視線が「後方」に指定されている。視線が「後方」の場合、CPU11は、基準線又は基準面から後方(背側)に向けて投影線を発し、脊椎画像を作成する。視線が「前方」の場合、CPU11は、基準線又は基準面から前方(腹側)に向けて投影線を発し、脊椎画像を作成する。
【0091】
画像作成手法指定ラジオボタン55は、画像表示領域52に表示する脊椎画像の作成手法を指定する為のラジオボタンである。図13の例では、作成手法が「surface 3D」に指定されている。作成手法が「surface 3D」の場合、CPU11は、サーフェイスレンダリング法によって、物体の表面が3次元的に表示される脊椎画像を作成する。作成手法が「Vol. Ren 3D」の場合、CPU11は、ボリュームレンダリング法によって、物体の表面形状及び内面形状が3次元的に表示される脊椎画像を作成する。作成手法が「最大値投影」の場合、CPU11は、最大値投影法によって、投影経路の中で最大のCT値が投影面に投影される脊椎画像を作成する。作成手法が「最小値投影」の場合、CPU11は、最小値投影法によって、投影経路の中で最小のCT値が投影面に投影される脊椎画像を作成する。
【0092】
画像表示領域52には、指定された基準位置、視線及び画像作成手法によって作成された脊椎画像が表示される。図13の例では、各ラジオボタンによって指定された通り、CPU11は、基準面Pβから後方(背側)に向けて投影線を発し、サーフェイスレンダリング法によって脊椎画像を作成し、画像表示領域52に表示している。
【0093】
平行移動の移動量指定スライドバー56は、基準線の平行移動量を指定する為のスライドバーである。ユーザが、マウス18等を介して、平行移動の移動量指定スライドバー56の位置をスライドさせると、CPU11は、その移動量に応じて基準線の平行移動量の入力を受け付けて、受け付けた平行移動量に応じて基準線の位置を平行移動して表示する。図13の例では、ユーザが、平行移動の移動量指定スライドバー56の位置をスライドさせると、CPU11は、画像表示領域51に表示されている基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδを被検体の前後方向に平行移動して表示する。また、CPU11は、基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδの移動に応じて、画像表示領域52に表示されている脊椎画像を再作成し、表示する。
【0094】
図14は、画像表示領域51に表示されている断面画像の拡大図となっている。CPU11は、後述するように、ユーザによって選択された基準線の形状変更量の入力を受け付けて、形状変更量に応じて、選択された基準線の形状を変更するとともに、他の基準線の形状も合わせて変更する。そこで、ユーザが、基準線を識別し易くすることを目的として、矩形71に示すように、CPU11は、基準線を断面画像の外部まで延長して表示する。断面画像の外部は、基準線のみが表示されていて視認し易いので、ユーザは、基準線を容易に識別することができる。
【0095】
図15は、基準線の演算結果が正しくない場合の断面画像の拡大図となっている。基準線Lα、Lβ及びLγの下部が、左側に大きく蛇行しており、異常な形状となっていることが分かる。このような場合、ユーザは、後述する画面例において、基準線の位置変更を指示する。
【0096】
図16、図17は、第1の基準線修正処理を説明する図である。ユーザは、まず、図16の画面において、基準線Lα〜Lδの中から、修正したい基準線を示すボタンと修正ボタンを押下し、表示されている基準線の一部をドラックし、所望の位置に移動する。図16の例では、基準線Lβを示すボタンと修正ボタンが押下されている。
【0097】
図17では、図16と比較して、基準線Lβの位置が変更されている。CPU11は、変更後の基準線Lβの座標から、元の座標を引き算し、基準線Lβの形状変更量として主メモリ12に記憶しておく。
【0098】
ユーザは、次に、図17の画面において、基準線Lα〜Lδ(但し、修正済の基準線を除く。)の中から、一緒に修正したい基準線を示すチェックボックスをチェックし、同修正ボタンを押下する。図1の例では、基準線α及びγを示すチェックボックスがチェックされ、同修正ボタンが押下されている。
【0099】
これに対して、CPU11は、チェックされた基準線の位置を、修正済の基準線と同じように移動する。より詳細には、CPU11は、主メモリ12に記憶されている基準線Lβの形状変更量を用いて、チェックされた基準線の位置を移動する。これによって、ユーザは、最初の基準線に対する形状変更量を、他の基準線に対する形状変更量として容易に指示することができ、便利である。
【0100】
図18は、第2の基準線修正処理を説明する図である。第1の基準線修正処理では、操作代表の基準線と、同様に修正する基準線を別々の画面にて選択する画面構成であったが、第2の基準線修正処理では、両者を同じ画面にて選択する画面構成とする。
【0101】
ユーザは、図18の画面において、基準線Lα〜Lδの中から、修正したい基準線を示すチェックボックスをチェックし、操作代表の基準線を示すボタンを押下し、修正ボタンを押下し、操作代表の基準線の一部をドラックし、所望の位置に移動する。図18の例では、「α」、「γ」、「β」が修正したい基準線としてチェックされ、操作代表の基準線として基準線Lβを示すボタンが押下され、修正ボタンが押下されている。
【0102】
図18の状態で、ユーザが、操作代表の基準線の一部をドラックし、所望の位置に移動すると、CPU11は、変更後の基準線Lβの座標から、元の座標を引き算し、基準線Lβの形状変更量として主メモリ12に記憶する。更に、CPU11は、主メモリ12に記憶されている基準線Lβの形状変更量を用いて、チェックされた基準線の位置を移動する。尚、CPU11は、操作代表の基準線の移動に追従して、その他の修正したい基準線を同時に移動するようにしても良い。これによって、ユーザは、複数の基準線に対する形状変更量として容易に指示することができ、便利である。
【0103】
以上、本発明の実施の形態における医用画像処理装置1は、脊椎(特に椎体3や椎孔4)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示することができる。
【0104】
前述した基準線Lα、Lβは、それぞれ、椎体3の2つの端点間を外分する点α、βの集合によって定義される曲線である。例えば、図14に示すように、基準線Lα及びLβは、脊椎に沿って、各椎体3を挟み込むように延伸している曲線である。このような基準線Lα及びLβに基づいて脊椎画像を作成することによって、各椎体3、各椎孔4及びその周辺の組織を読影するために好適な画像を作成することができる。
【0105】
また、前述した基準線Lγは、椎体3の2つの端点間を外分する点α及びβの中点γの集合によって定義される曲線である。例えば、図14に示すように、基準線Lγは、脊椎に沿って、ほぼ脊椎の中心線を通るように延伸している曲線である。このような基準線Lγに基づいて脊椎画像を作成することによって、各椎体3及びその周辺の組織を読影するために好適な画像を作成することができる。
【0106】
また、前述した基準線Lδは、椎体3の端点を通る直線上における椎弓5の端点を算出する。例えば、図14に示すように、基準線Lδは、椎孔4と椎弓5の境界に沿って延伸している曲線である。このような基準線Lγに基づいて脊椎画像を作成することによって、各椎孔4及びその周辺の組織を読影するために好適な画像を作成することができる。
【0107】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る医用画像処理装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0108】
1………医用画像処理装置
2………椎骨
3………椎体
4………椎孔
5………椎弓
6………棘突起
7………椎間板
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT画像、MR画像、US画像等の医用画像に対する画像処理を行う医用画像処理装置等に関する。詳細には、脊椎に関する画像を作成し、表示する画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CT(Computed Tomography)画像、MR(Magnetic Resonance)画像、US(Ultrasound)画像等の医用画像を用いた診断が行われている。また、近年、所望の組織を読影する為に好適な画像を作成し、表示する画像処理技術が開発、研究されている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎分離症・すべり症などには、背骨(脊椎骨)の中を通る神経の様子をみる検査が有効であることが記載されている。椎間板ヘルニアでは、脊椎骨の間にある椎間板の変性により、後方に突出してきた椎間板の一部(髄核や線維輪)が、神経(根)を圧迫するために痛みが出る。また脊柱管狭窄症では、いろいろな原因によって、硬膜のチューブに包まれた脊椎の椎孔の神経が通る場所(脊柱管)が狭くなってしまい、腰下肢の痛みやしびれ、歩行障害が起こる。非特許文献1に記載の医療技術(ミエログラフィーと呼ばれる。)は、脳脊椎の椎孔液の所にレントゲンに写る造影剤を入れて、陰影の変化を調べるというものである。
【0004】
また、特許文献1には、医用画像から椎体領域を抽出する画像処理装置が記載されている。特許文献1に記載の画像処理装置では、被検体の一連の断層画像からそれぞれ体領域を抽出し、抽出した体領域から椎体領域を含む関心領域を設定する。そして、関心領域内の各画素について、閾値を海綿骨のCT値とした閾値処理を行うことにより、椎体(骨)領域を抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−246662号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】成尾整形外科病院著 「ミエログラフィー(脊髄腔造影)でわかる代表的な病気」はくざん通信第20号 2001年(http://www.naruoseikei.com/hakuzan/20/20.html 2011年8月24日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のミエログラフィーにおいて撮影されるレントゲン画像では、所望の対象物以外の臓器や部位も一緒に撮影されてしまい、診断しにくいものであった。
【0008】
ここで、本願における所望の対象物は、特に、椎体や椎孔等である。椎体は、椎骨の前方(腹側)に位置する円柱状の部分である。椎孔は、人体の正面から見て、椎体の背後に位置する空間である。いくつもの椎体が連結し、椎孔が重なると管になる。この管を脊柱管といい、脊柱管の中を脊髄や馬尾神経が通っている。
【0009】
仮に、特許文献1に記載の技術を椎孔の画像作成処理に適用する場合、閾値を椎孔のCT値とした閾値処理を行うことにより、椎孔領域を抽出することになる。しかしながら、各断層画像において、椎孔領域と他の組織や部位との境界が判別できない箇所が存在する場合があり、椎孔領域を閉領域として自動的に抽出できない場合がある。
【0010】
また、脊椎(特に椎体や椎孔)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示する画像処理技術は、未だ確立されていない。
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、脊椎(特に椎体や椎孔)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示する医用画像処理装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために第1の発明は、複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理装置であって、単一の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出する手段と、前記第1直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出する手段と、前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出する手段と、複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出する手段と、前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成する手段と、を具備することを特徴とする医用画像処理装置である。
【0013】
第2の発明は、複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理装置であって、複数の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出する手段と、複数の前記第1直線群の画素からなる曲断面再構成画像において、複数の椎体の中心を通る中心線を算出する手段と、前記中心線の各点において、前記中心線の垂直方向又は被検体の前後方向に延伸する第2直線を算出する手段と、前記第2直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出する手段と、前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出する手段と、複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出する手段と、前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成する手段と、を具備することを特徴とする医用画像処理装置である。
【0014】
第3の発明は、複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理方法であって、単一の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出するステップと、前記第1直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出するステップと、前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出するステップと、複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出するステップと、前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成するステップと、を含むことを特徴とする医用画像処理方法である。
【0015】
第4の発明は、複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理方法であって、複数の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出するステップと、複数の前記第1直線群の画素からなる曲断面再構成画像において、複数の椎体の中心を通る中心線を算出するステップと、前記中心線の各点において、前記中心線の垂直方向又は被検体の前後方向に延伸する第2直線を算出するステップと、前記第2直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出するステップと、前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出するステップと、複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出するステップと、前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成するステップと、を含むことを特徴とする医用画像処理方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、脊椎(特に椎体や椎孔)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示する医用画像処理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】医用画像処理装置のハードウエア構成を示す図
【図2】第1の脊椎画像作成処理を示すフローチャート
【図3】第1の脊椎画像作成処理を説明する図
【図4】第2の脊椎画像作成処理を示すフローチャート
【図5】第2の脊椎画像作成処理を説明する図
【図6】最小値投影画像の作成処理を説明する図
【図7】近似投影面を用いた最小値投画影像の作成処理を説明する図
【図8】脊椎画像の例
【図9】脊椎画像の例
【図10】展開画像の作成処理を説明する図
【図11】近似投影面を用いた展開画像の作成処理を説明する図
【図12】展開画像の例
【図13】表示画面の例
【図14】基準線の表示例
【図15】基準線の表示例
【図16】第1の基準線修正処理を説明する図
【図17】第1の基準線修正処理を説明する図
【図18】第2の基準線修正処理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の医用画像処理装置1のハードウエア構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、医用画像処理装置1には、表示装置17、マウス18やキーボード19などの入力装置等が接続される。また、医用画像処理装置1には、ネットワーク20を介して画像データベース21、医用画像撮影装置22等が接続されても良い。
【0020】
医用画像処理装置1は、画像生成、画像解析等の処理を行うコンピュータである。
医用画像処理装置1は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、主メモリ12、記憶装置13、通信インタフェース(通信I/F)14、表示メモリ15、マウス18及びキーボード19等の外部機器とのインタフェース(I/F)16を備え、各部はバス10を介して接続されている。
【0021】
CPU11は、主メモリ12または記憶装置13等に格納されるプログラムを主メモリ12のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス10を介して接続された各部を駆動制御し、医用画像処理装置1が行う各種処理を実現する。
【0022】
主メモリ12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置13等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0023】
記憶装置13は、HDD(ハードディスクドライブ)や他の記録媒体へのデータの読み書きを行う装置であり、CPU11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU11により必要に応じて読み出されて主メモリ12のRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0024】
通信I/F14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、医用画像処理装置1とネットワーク20との通信を媒介する。また通信I/F14は、ネットワーク20を介して、画像データベース21や、他のコンピュータ、或いは、X線CT装置、MRI装置等の医用画像撮影装置22との通信制御を行う。
I/F16は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器とのデータの送受信を行う。
【0025】
表示メモリ15は、CPU11から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置17に出力される。
【0026】
表示装置17は、液晶パネル等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、表示メモリ15を介してCPU11に接続される。表示装置17はCPU11の制御により表示メモリ15に蓄積された表示データを表示する。
【0027】
マウス18及びキーボード19は、操作者によって入力される各種の指示や情報をCPU11に出力する。操作者は、マウス18及びキーボード19等の外部機器を使用して対話的に医用画像処理装置1を操作する。
なお、表示装置17及び入力装置(マウス18やキーボード19)は、例えば、タッチパネル付ディスプレイのように一体となっていてもよい。この場合、キーボード19のキーボード配列がタッチパネル付ディスプレイに表示されるようにしても良い。
【0028】
ネットワーク20は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、インターネット等の各種通信網を含み、画像データベース21や他の情報機器等と医用画像処理装置1との通信接続を媒介する。
【0029】
画像データベース21は、医用画像撮影装置22によって撮影された画像データを蓄積して記憶するものである。図1に示す例では、画像データベース21はネットワーク20を介して医用画像処理装置1に接続される構成であるが、医用画像処理装置1内の例えば記憶装置13に画像データベース21を設けるようにしてもよい。
【0030】
ここで、図5(a)を参照しながら、脊椎の各部の位置関係について説明する。本発明の実施の形態では、医用画像として、CT画像を例に説明する。図5(a)は、横軸を被検体の前後方向(Y軸方向)、縦軸を体軸方向(スライス方向)としたCPR(Curved Planar Reconstruction:曲断面再構成)画像である。図5(a)では、骨(椎体、椎弓及び棘突起等を含む。)と同程度のCT値を有する画素が灰色、それ以外が白色として図示されている。尚、図5(a)に示す画像の作成処理の詳細は後述する。
【0031】
脊椎は、椎骨2が連結したものである。椎骨2は、頭側から頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個が連結し、その下に、仙椎、尾骨がある。各椎骨2は、椎体3、椎孔4、椎弓5及び棘突起(きょくとっき)6等からなる。椎体3は、椎骨2の前方(腹側)に位置する円柱状の部分である。椎孔4は、人体の前方(腹側)から見て、椎体3の背後に位置する空間である。いくつもの椎体3が連結し、椎孔4が重なると管になる。この管を脊柱管といい、脊柱管の中を脊髄や馬尾神経が通っている。椎弓5は、椎骨2の後方(背側)に位置するアーチ状の部分である。椎体3は単純な形状をしているが、椎弓5の形状は複雑である。椎弓5には上下の他の椎体3との関節面があり、左右の上関節突起、下関節突起、横突起と、一つの後下方に延びる棘突起6がある。隣接する椎体3同士の関節は5つ(椎弓5に4つ、椎体3に1つ)あり、椎体3同士の接する関節(椎間関節)には弾性に富んだ椎間板7が存在する。
【0032】
本実施の形態における医用画像処理装置1は、特に、椎体3や椎孔4とその周辺の組織読影するために好適な画像を作成するものである。以下では、主に脊椎を含む画像を「脊椎画像」と呼ぶことにする。脊椎画像には、前述した椎体3、椎孔4、椎弓5、棘突起6、椎間板7等の一部又は全部が含まれる。
【0033】
図2、図3を参照しながら、第1の脊椎画像作成処理について説明する。第1の脊椎画像作成処理では、複数の断層像に対して処理を行い、断層像ごとに基準点α、β、γを算出する。基準点とは、脊椎画像を作成する際に基準となる基準線や基準面を定義するための点である。
【0034】
以下に示す医用画像処理装置1のCPU11の処理では、各断層像において、椎体3、椎孔4、椎弓5、棘突起6などの領域を抽出する処理が含まれている。一般に、椎体3、椎弓5、棘突起6などの骨と同程度のCT値を有する部位は、周辺の組織とのCT値の差が大きい為、閉領域として抽出することが容易である。また、椎孔4は、周囲が全て骨に囲まれていれば、閉領域として抽出することができる。一方、椎孔4は、周囲の一部が骨以外に囲まれている場合、閉領域として抽出することは困難となる。
【0035】
図2に示すように、医用画像処理装置1のCPU11は、最初の画像(断層像)を決定する(S1)。そして、CPU11は、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸し、椎孔4を通る直線Lを算出する(S2)。
【0036】
図3(a)では、直線Lの一例として、直線L1(実線にて図示)及び直線L2(点線にて図示)を図示している。直線L1は、椎骨2の中心(例えば、重心位置)を通り、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸する直線である。直線L2は、椎孔4の領域の中心(例えば、重心位置)を通り、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸する直線である。いずれの場合も、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸し、椎孔4を通る直線となる。
【0037】
また、図3(b)では、直線Lの一例として、直線L3(実線にて図示)を図示している。直線L3は、椎孔4の後方(背側)に尖った部分(すなわち棘突起6)の中心(例えば、棘突起6の重心位置や棘突起6の中で最も背側に位置する点)を通り、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸する直線である。被検体が撮影時に左右に傾いていない限り、直線L3も、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸し、椎孔4を通る直線となる。
【0038】
図3(a)の画像では、椎孔4の周囲が全て骨(椎体3、椎弓5等の白い部分)に囲まれており、椎孔4を閉領域として抽出することが可能である。従って、椎孔4の領域の重心位置を算出することも可能となり、ひいては、前述した直線L2を算出することが可能となる。
【0039】
一方、図3(b)の画像では、椎孔4の周囲の一部が骨以外(灰色〜黒色の部分)に囲まれており、椎孔4を閉領域として抽出することができない。従って、椎孔4の領域の重心位置を算出することができず、ひいては、前述した直線L2を算出することもできない。
【0040】
そこで、図3(b)のような画像の場合、直線L3を算出することが望ましい。直線L3であれば、棘突起6を基準としているので、椎孔4の周囲の一部が骨以外(灰色〜黒色の部分)に囲まれている場合であっても、算出することができる。
【0041】
次に、CPU11は、直線L上における椎体3の端点のY座標Ya、Ybを算出する(S3)。図3(a)では、直線L1を例にとり、椎体3の端点を図示している。直線Y1a、Y1bが、椎体3の端点のY座標の位置を示している。また、X1が、椎体3の端点のX座標である。また、図3(b)では、直線L3を例にとり、椎体3の端点を図示している。直線Y3a、Y3bが、椎体3の端点のY座標の位置を示している。また、X3が、椎体3の端点のX座標である。
【0042】
次に、CPU11は、直線L上における腹側に位置する、椎体3の2つの端点間を外分する点αを算出する(S4)。具体的には、CPU11は、点αの座標をα(X、Ya−Ca×W)とする。ここで、Wは、2つの端点同士の距離であり、W=Yb−Yaである。また、Caは、正の定数(例えば1.2等)である。Caの値は、必要に応じて、操作者が、マウス18やキーボード19等を介して変更可能である。また、この場合、操作者は、Caの値に代えて、Ca×Wに相当する値を入力しても良い。
【0043】
次に、CPU11は、直線L上における背側に位置する、椎体3の2つの端点間を外分する点βを算出する(S5)。具体的には、CPU11は、点βの座標をβ(X、Yb+Cb×W)とする。Wは、αの場合と同様である。Cbも、αの場合におけるCaと同様であるが、Caと異なる値としても良いし、同じ値としても良い。
【0044】
図3(a)では、直線L1を例にとり、α及びβを図示している。図3(a)の場合、α(X1、Y1a−Ca×W1)、β(X1、Y1b+Cb×W1)である。また、図3(b)では、直線L3を例にとり、α及びβを図示している。図3(b)の場合、α(X3、Y3a−Ca×W3)、β(X3、Y3b+Cb×W3)である。
【0045】
次に、CPU11は、α及びβの中点γを算出する(S6)。図3(a)では、直線L1を例にとり、γを図示している。また、図3(b)では、直線L3を例にとり、γを図示している。
【0046】
次に、CPU11は、全ての画像を決定したか否か、すなわち全ての画像に対してα、β及びγを算出したか否か確認する(S7)。
【0047】
全ての画像を決定していない場合(S7のNO)、CPU11は、次の画像を決定し(S8)、S2〜S7を繰り返す。
【0048】
全ての画像を決定している場合(S7のYES)、CPU11は、断層像ごとに算出された全てのαを通る基準線Lα、全てのβを通る基準線Lβ、全てのγを通る基準線Lγ、を算出する(S9)。そして、CPU11は、操作者の指示に応じて、基準線Lα、Lβ、Lγのいずれかを用いて、脊椎画像を作成する(S10)。例えば、CPU11は、基準線Lα、Lβ、Lγのいずれかを用いて、基準面Pα、Pβ、Pγのいずれかを算出し、基準面Pα、Pβ、Pγの1つ又は複数に基づいて脊椎画像を作成する。
【0049】
脊椎画像の作成手法としては、サーフェイスレンダリング法、ボリュームレンダリング法、最小値投影法、最大値投影法、曲断面再構成法、展開画像作成法など、様々な公知の技術を用いることができる。脊椎画像の作成手法の一例は、図6以降を参照しながら後述する。
【0050】
次に、図4、図5を参照しながら、第2の脊椎画像作成処理について説明する。第2の脊椎画像作成処理では、複数の断層像に基づいてCPR画像を作成し、CPR画像から複数の基準点α、β、γ、δを算出する。基準点の定義は、第1の脊椎画像作成処理と同様である。
【0051】
図4に示すように、医用画像処理装置1のCPU11は、最初の画像(断層像)を決定する(S21)。そして、CPU11は、被検体の前後方向(図3のY軸方向)に延伸し、椎孔4を通る直線Lを算出する(S22)。S22の処理は、図2のS2と同様である。
【0052】
次に、CPU11は、全ての画像を決定したか否か、すなわち全ての画像に対して直線Lを算出したか否か確認する(S23)。
【0053】
全ての画像を決定していない場合(S23のNO)、CPU11は、次の画像を決定し(S24)、S22及びS23を繰り返す。
【0054】
全ての画像を決定している場合(S23のYES)、CPU11は、直線L群からなるCPR画像を作成する(S25)。そして、CPU11は、CPR画像を閾値処理し、2値化する(S26)。閾値処理における閾値は、骨(椎体3、椎弓5等)と、骨以外の部分(椎孔4、椎間板7等を含む)とを分けることが可能なCT値とする。図5(a)は、このようにして2値化したCPR画像を示している。骨(椎体3、椎弓5等)が灰色、骨以外の部分(椎孔4、椎間板7等を含む)が白色となっている。
【0055】
次に、CPU11は、被検体の体軸方向(スライス方向)に隙間を埋めて、長い方から2番目までの連結領域を残す(S27)。ここで、隙間とは、骨以外の部分であり、図5(a)の灰色の部分である。CPU11は、例えば、スライス方向に連続する画素列(例えば、10個等)を1単位として、画像全体を走査していき、画素列の最前列及び最後列が灰色、かつ、中間の画素の少なくとも1つが白色の場合、隙間と判断して、灰色に変える。例えば、画素列が10個の場合、(灰色、灰色、灰色、灰色、白色、白色、白色、白色、白色、灰色)であれば、CPU11は、白色の画素を全て灰色に変える。尚、白色の画素を全て灰色に変えることに代えて、白色の画素を除外し、スライス方向に圧縮するような処理を行っても良い。
【0056】
隙間を埋める処理を行うと、いくつかの連結領域(灰色の画素が連接している領域)に集約される。これらの連結領域に対して、CPU11は、被検体の体軸方向(スライス方向)の最大長を算出し、最大長が2番目までの連結領域のみを残し、それ以外の連結領域を白色に変える。最大長が1番目及び2番目までの連結領域は、一方が椎体3の連結領域であり、もう一方が椎弓5及び棘突起6の連結領域である。そして、腹側の連結領域が椎体3の連結領域、背側の連結領域が椎弓5及び棘突起6の連結領域である。
【0057】
次に、CPU11は、椎体3の連結領域に対して長手方向に沿った中心線(複数の椎体3の中心を通る中心線)を算出する(S28)。図5(b)には、中心線Lc(点線にて図示)が示されている。CPU11は、例えば、スライス方向の各位置において、椎体3の連結領域のY軸方向の中心点を順次算出し、これらの中心点を結ぶことによって中心線を算出する。また、CPU11は、例えば、公知の技術である管腔臓器の芯線の算出処理を用いて、中心線Lcを算出しても良い。
【0058】
次に、CPU11は、中心線Lcの各点iにおいて、中心線Lcの垂直方向に延伸する直線M(i)上における椎体3の端点のY座標Ya(i)、Yb(i)を算出し(S29)、Ya(i)とYb(i)に基づいて、α(i)、β(i)、γ(i)、δ(i)を算出する(S30)。
【0059】
S29及びS30では、中心線Lcの全ての点iに対して処理を行う。S29のYa(i)及びYb(i)の処理、並びにS30のα(i)、β(i)及びγ(i)の算出処理は、図2のS3〜S6の処理と同様である。
【0060】
また、CPU11は、δ(i)として、椎体3の端点を通る直線(=直線M(i))上における椎弓5の端点を算出する。
【0061】
尚、前述の説明における、「中心線Lcの各点iにおいて、中心線Lcの垂直方向に延伸する直線M(i)」に代えて、「中心線Lcの各点iにおいて、Y軸方向に延伸する直線M2(i)」としても良い。これは、中心線Lcがスライス方向とほぼ平行である為、中心線Lcの垂直方向もY軸方向とほぼ平行となるからである。直線M2(i)の場合、中心線Lcの垂直方向を算出する必要がない為、処理が容易である。
【0062】
また、直線M(i)の場合、iのスライス方向の座標<i+1のスライス方向の座標としたとき、β(i)のスライス方向の座標>β(i)のスライス方向の座標となってしまい、基準点のスライス方向の位置が入れ替わってしまうことがある。一方、M2(i)の場合、基準点のスライス方向の位置が入れ替わってしまうことがなく、後続の処理が容易となる。
【0063】
図5(b)では、直線30が、前述した直線M(i)の一例である。Ya及びYbは「●」、α、β及びγは「×」にて図示している。また、直線31が、前述した直線M2(i)の一例である。
【0064】
次に、CPU11は、全てのα(i)を通る基準線Lα、全てのβ(i)を通る基準線Lβ、全てのγ(i)を通る基準線Lγ、全てのδ(i)を通る基準線Lδ、を算出する(S31)。そして、CPU11は、操作者の指示に応じて、基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδのいずれかを用いて、脊椎画像を作成する(S32)。例えば、CPU11は、基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδのいずれかを用いて、基準面Pα、Pβ、Pγ、Pδのいずれかを算出し、基準面Pα、Pβ、Pγ、Pδの1つ又は複数に基づいて脊椎画像を作成する。
【0065】
図5(b)では、基準線Lα、Lβ(実線にて図示)を図示している。尚、可読性を高める為、基準線Lγ、Lδは図示していない。
【0066】
脊椎画像の作成手法としては、サーフェイスレンダリング法、ボリュームレンダリング法、最小値投影法、最大値投影法、曲断面再構成法、展開画像作成法など、様々な公知の技術を用いることができる。脊椎画像の作成手法の一例は、図6以降を参照しながら後述する。
【0067】
次に、図6〜図9を参照しながら、脊椎画像の作成手法の一例として、最小値投影法を用いる場合を説明する。
【0068】
図6では、各スライス位置の断層像40をスライス方向に積層した状態を模式的に示している。CPR画像41は、図5のS25において作成される、直線L群からなるCPR画像である。尚、図6では、視認性を高める為に、閾値処理した2値化画像を図示している。また、CPR画像41は、第2の脊椎画像作成処理によって作成されるものに限らず、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線に基づいて作成されるものであっても良い。
【0069】
基準線Lβは、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線である。基準面Pβは、基準線LβをX軸方向に引き伸ばしたものである。つまり、基準線Lβの各点の座標の集合を{(X*、Y1、Z1)、・・・・、(X*、Yn、Zn)}とすると、CPU11は、この集合に対して、X*=X1、・・・、Xn(X軸方向のサンプリング点)を代入し、{(X1、Y1、Z1)、・・・・、(X1、Yn、Zn)、・・・、(Xn、Y1、Z1)、・・・・、(Xn、Yn、Zn)}を、基準面Pβの各点の座標の集合とする。
【0070】
そして、CPU11は、最小値投影法によって、基準面Pβの各点から、各点の垂直方向に投影線を発し、投影面42に投影線上の最小値を投影する。
【0071】
図7は、図6の投影面42に代えて、近似的な投影面43を利用する場合を図示している。図6の投影面42は、Y軸に略垂直なので、演算時間の短縮等を目的として、Y軸に垂直な投影面43を利用することも好適である。
【0072】
図7も、図6と同様、各スライス位置の断層像40をスライス方向に積層した状態を模式的に示している。CPR画像41は、図5のS25において作成される、直線L群からなるCPR画像である。尚、図7でも、視認性を高める為に、閾値処理した2値化画像を図示している。
【0073】
基準線Lα、Lβは、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線である。基準面Pα、Pβは、基準線Lα、LβをX軸方向に引き伸ばしたものである。
【0074】
そして、CPU11は、最小値投影法によって、基準面Pβの各点から、基準面Pαに向かってY軸方向に投影線を発し、投影面43に、基準面Pαから基準面Pβまでの間に位置する投影線上の最小値を投影する。この場合、椎体3とその前後の組織(椎孔4を含む。)に着目した脊椎画像が得られる。
【0075】
図8は、図7に示す作成処理によって作成された脊椎画像を示している。つまり、図8に示す脊椎画像は、Pβから前方向(腹側)への最小値投影像であり、特に、基準面Pβから投影線を発して、基準面Pαまでの投影線上の最小値を投影面43に投影した演算結果である。
【0076】
円60の内部は、正常の被検者であれば椎孔4の領域であり、灰色として表示されるはずである。しかしながら、円60の内部には、白色の領域(高濃度領域)が存在しており、異常候補と考えられる。
【0077】
図9は、図8の異常候補の領域を含み、基準面に直交する断面画像である。楕円61の内部は、正常の被検者であれば椎孔4の領域であり、灰色として表示されるはずである。しかしながら、楕円60の内部には、白色の領域(高濃度領域)が存在しており、異常候補と考えられる。
【0078】
図8、図9に示すように、図2又は図4によって算出される基準線や基準面に基づいて作成される脊椎画像は、脊椎(特に椎体3や椎孔4)を読影するために好適な画像である。
【0079】
次に、図10〜図12を参照しながら、脊椎画像の作成手法の一例として、展開画像作成法を用いる場合を説明する。展開画像作成法自体は、公知の手法である為、詳細な説明を省略する。本発明の実施の形態では、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線の周囲全体にわたって最小値投影を行い、展開画像を作成する。
【0080】
図10も、図6、図7と同様、各スライス位置の断層像40をスライス方向に積層した状態を模式的に示している。CPR画像41は、図5のS25において作成される、直線L群からなるCPR画像である。尚、図10でも、視認性を高める為に、閾値処理した2値化画像を図示している。基準線Lβは、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線である。
【0081】
そして、CPU11は、最小値投影法によって、基準線Lβの周囲全体(θ=0〜360度)にわたって、基準線Lβと直交する動径45上の最小値を筒状の投影面44に投影する。投影面44に投影された演算結果は、平面に展開され、展開画像となる。
【0082】
図11は、図10の投影面44に代えて、近似的な投影面46を利用する場合を図示している。図10の投影面44は、全体としてスライス軸にほぼ平行なので、演算時間の短縮等を目的として、スライス軸に平行な筒状の投影面46を利用することも好適である。
【0083】
図11も、図10と同様、各スライス位置の断層像40をスライス方向に積層した状態を模式的に示している。CPR画像41は、図5のS25において作成される、直線L群からなるCPR画像である。尚、図11でも、視認性を高める為に、閾値処理した2値化画像を図示している。基準線Lβは、第1の脊椎画像作成処理又は第2の脊椎画像作成処理によって算出される基準線である。
【0084】
そして、CPU11は、最小値投影法によって、基準線Lβの周囲全体(θ=0〜360度)にわたって、スライス軸と直交する動径47上の最小値を筒状の投影面46に投影する。投影面46に投影された演算結果は、平面に展開され、展開画像となる。
【0085】
図12は、図11に示す作成処理によって作成された脊椎の展開画像を示している。展開画像であれば、図8に示す脊椎画像よりも広範囲にわたって読影が可能となる。一方、図8に示す脊椎画像は、部位や組織を把握し易いというメリットがある。
【0086】
次に、図13〜図18を参照しながら、CPU11が自動的に算出した基準線を表示し、表示された基準線を修正するためのユーザインタフェースについて説明する。
【0087】
図13は、ユーザインタフェースのメイン画面の1例を示している。図13では、画像表示領域51、画像表示領域52、基準位置指定ラジオボタン53、視線指定ラジオボタン54、画像作成手法指定ラジオボタン55、平行移動の移動量指定スライドバー56等が図示されている。
【0088】
画像表示領域51には、正中面を断面とする脊椎の断面画像に、基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδが重畳表示されている。
【0089】
基準位置指定ラジオボタン53は、画像表示領域52に表示する脊椎画像の基準位置を指定する為のラジオボタンである。図13の例では、基準位置が「β」に指定されている。基準位置が「β」の場合、CPU11は、基準線Lβ又は基準面Pβを基準として脊椎画像を作成する。基準位置が「α」、「γ」及び「δ」の場合も同様である。
【0090】
視線指定ラジオボタン54は、画像表示領域52に表示する脊椎画像の視線を指定する為のラジオボタンである。図13の例では、視線が「後方」に指定されている。視線が「後方」の場合、CPU11は、基準線又は基準面から後方(背側)に向けて投影線を発し、脊椎画像を作成する。視線が「前方」の場合、CPU11は、基準線又は基準面から前方(腹側)に向けて投影線を発し、脊椎画像を作成する。
【0091】
画像作成手法指定ラジオボタン55は、画像表示領域52に表示する脊椎画像の作成手法を指定する為のラジオボタンである。図13の例では、作成手法が「surface 3D」に指定されている。作成手法が「surface 3D」の場合、CPU11は、サーフェイスレンダリング法によって、物体の表面が3次元的に表示される脊椎画像を作成する。作成手法が「Vol. Ren 3D」の場合、CPU11は、ボリュームレンダリング法によって、物体の表面形状及び内面形状が3次元的に表示される脊椎画像を作成する。作成手法が「最大値投影」の場合、CPU11は、最大値投影法によって、投影経路の中で最大のCT値が投影面に投影される脊椎画像を作成する。作成手法が「最小値投影」の場合、CPU11は、最小値投影法によって、投影経路の中で最小のCT値が投影面に投影される脊椎画像を作成する。
【0092】
画像表示領域52には、指定された基準位置、視線及び画像作成手法によって作成された脊椎画像が表示される。図13の例では、各ラジオボタンによって指定された通り、CPU11は、基準面Pβから後方(背側)に向けて投影線を発し、サーフェイスレンダリング法によって脊椎画像を作成し、画像表示領域52に表示している。
【0093】
平行移動の移動量指定スライドバー56は、基準線の平行移動量を指定する為のスライドバーである。ユーザが、マウス18等を介して、平行移動の移動量指定スライドバー56の位置をスライドさせると、CPU11は、その移動量に応じて基準線の平行移動量の入力を受け付けて、受け付けた平行移動量に応じて基準線の位置を平行移動して表示する。図13の例では、ユーザが、平行移動の移動量指定スライドバー56の位置をスライドさせると、CPU11は、画像表示領域51に表示されている基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδを被検体の前後方向に平行移動して表示する。また、CPU11は、基準線Lα、Lβ、Lγ、Lδの移動に応じて、画像表示領域52に表示されている脊椎画像を再作成し、表示する。
【0094】
図14は、画像表示領域51に表示されている断面画像の拡大図となっている。CPU11は、後述するように、ユーザによって選択された基準線の形状変更量の入力を受け付けて、形状変更量に応じて、選択された基準線の形状を変更するとともに、他の基準線の形状も合わせて変更する。そこで、ユーザが、基準線を識別し易くすることを目的として、矩形71に示すように、CPU11は、基準線を断面画像の外部まで延長して表示する。断面画像の外部は、基準線のみが表示されていて視認し易いので、ユーザは、基準線を容易に識別することができる。
【0095】
図15は、基準線の演算結果が正しくない場合の断面画像の拡大図となっている。基準線Lα、Lβ及びLγの下部が、左側に大きく蛇行しており、異常な形状となっていることが分かる。このような場合、ユーザは、後述する画面例において、基準線の位置変更を指示する。
【0096】
図16、図17は、第1の基準線修正処理を説明する図である。ユーザは、まず、図16の画面において、基準線Lα〜Lδの中から、修正したい基準線を示すボタンと修正ボタンを押下し、表示されている基準線の一部をドラックし、所望の位置に移動する。図16の例では、基準線Lβを示すボタンと修正ボタンが押下されている。
【0097】
図17では、図16と比較して、基準線Lβの位置が変更されている。CPU11は、変更後の基準線Lβの座標から、元の座標を引き算し、基準線Lβの形状変更量として主メモリ12に記憶しておく。
【0098】
ユーザは、次に、図17の画面において、基準線Lα〜Lδ(但し、修正済の基準線を除く。)の中から、一緒に修正したい基準線を示すチェックボックスをチェックし、同修正ボタンを押下する。図1の例では、基準線α及びγを示すチェックボックスがチェックされ、同修正ボタンが押下されている。
【0099】
これに対して、CPU11は、チェックされた基準線の位置を、修正済の基準線と同じように移動する。より詳細には、CPU11は、主メモリ12に記憶されている基準線Lβの形状変更量を用いて、チェックされた基準線の位置を移動する。これによって、ユーザは、最初の基準線に対する形状変更量を、他の基準線に対する形状変更量として容易に指示することができ、便利である。
【0100】
図18は、第2の基準線修正処理を説明する図である。第1の基準線修正処理では、操作代表の基準線と、同様に修正する基準線を別々の画面にて選択する画面構成であったが、第2の基準線修正処理では、両者を同じ画面にて選択する画面構成とする。
【0101】
ユーザは、図18の画面において、基準線Lα〜Lδの中から、修正したい基準線を示すチェックボックスをチェックし、操作代表の基準線を示すボタンを押下し、修正ボタンを押下し、操作代表の基準線の一部をドラックし、所望の位置に移動する。図18の例では、「α」、「γ」、「β」が修正したい基準線としてチェックされ、操作代表の基準線として基準線Lβを示すボタンが押下され、修正ボタンが押下されている。
【0102】
図18の状態で、ユーザが、操作代表の基準線の一部をドラックし、所望の位置に移動すると、CPU11は、変更後の基準線Lβの座標から、元の座標を引き算し、基準線Lβの形状変更量として主メモリ12に記憶する。更に、CPU11は、主メモリ12に記憶されている基準線Lβの形状変更量を用いて、チェックされた基準線の位置を移動する。尚、CPU11は、操作代表の基準線の移動に追従して、その他の修正したい基準線を同時に移動するようにしても良い。これによって、ユーザは、複数の基準線に対する形状変更量として容易に指示することができ、便利である。
【0103】
以上、本発明の実施の形態における医用画像処理装置1は、脊椎(特に椎体3や椎孔4)を読影するために好適な画像を自動的に作成し、表示することができる。
【0104】
前述した基準線Lα、Lβは、それぞれ、椎体3の2つの端点間を外分する点α、βの集合によって定義される曲線である。例えば、図14に示すように、基準線Lα及びLβは、脊椎に沿って、各椎体3を挟み込むように延伸している曲線である。このような基準線Lα及びLβに基づいて脊椎画像を作成することによって、各椎体3、各椎孔4及びその周辺の組織を読影するために好適な画像を作成することができる。
【0105】
また、前述した基準線Lγは、椎体3の2つの端点間を外分する点α及びβの中点γの集合によって定義される曲線である。例えば、図14に示すように、基準線Lγは、脊椎に沿って、ほぼ脊椎の中心線を通るように延伸している曲線である。このような基準線Lγに基づいて脊椎画像を作成することによって、各椎体3及びその周辺の組織を読影するために好適な画像を作成することができる。
【0106】
また、前述した基準線Lδは、椎体3の端点を通る直線上における椎弓5の端点を算出する。例えば、図14に示すように、基準線Lδは、椎孔4と椎弓5の境界に沿って延伸している曲線である。このような基準線Lγに基づいて脊椎画像を作成することによって、各椎孔4及びその周辺の組織を読影するために好適な画像を作成することができる。
【0107】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る医用画像処理装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0108】
1………医用画像処理装置
2………椎骨
3………椎体
4………椎孔
5………椎弓
6………棘突起
7………椎間板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理装置であって、
単一の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出する手段と、
前記第1直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出する手段と、
前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出する手段と、
複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出する手段と、
前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成する手段と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理装置であって、
複数の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出する手段と、
複数の前記第1直線群の画素からなる曲断面再構成画像において、複数の椎体の中心を通る中心線を算出する手段と、
前記中心線の各点において、前記中心線の垂直方向又は被検体の前後方向に延伸する第2直線を算出する手段と、
前記第2直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出する手段と、
前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出する手段と、
複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出する手段と、
前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成する手段と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第1直線として、棘突起の中心を通り、被検体の前後方向に延伸する直線を算出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記基準点として、前記第1端点及び前記第2端点の間を外分する点を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記基準点として、前記第1端点及び前記第2端点の間を外分する第1の点と、前記第1の点と異なり、前記第1端点及び前記第2端点の間を外分する第2の点との中点を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記基準点として、前記第1端点及び前記第2端点を通る直線上における椎弓の端点を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
複数の前記第1直線群の画素からなる断面画像を作成する手段と、
前記基準線を前記断面画像に重ねて表示する手段と、
前記基準線の平行移動量の入力を受け付けて、前記平行移動量に応じて前記基準線の位置を平行移動して表示する手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記基準線を複数本算出し、前記断面画像に重ねて表示する場合において、
選択された前記基準線の形状変更量の入力を受け付けて、前記形状変更量に応じて、選択された前記基準線の形状を変更するとともに、他の前記基準線の形状も合わせて変更する
ことを特徴とする請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記基準線を前記断面画像の外部まで延長して表示する
ことを特徴とする請求項8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理方法であって、
単一の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出するステップと、
前記第1直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出するステップと、
前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出するステップと、
複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出するステップと、
前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成するステップと、
を含むことを特徴とする医用画像処理方法。
【請求項11】
複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理方法であって、
複数の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出するステップと、
複数の前記第1直線群の画素からなる曲断面再構成画像において、複数の椎体の中心を通る中心線を算出するステップと、
前記中心線の各点において、前記中心線の垂直方向又は被検体の前後方向に延伸する第2直線を算出するステップと、
前記第2直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出するステップと、
前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出するステップと、
複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出するステップと、
前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成するステップと、
を含むことを特徴とする医用画像処理方法。
【請求項1】
複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理装置であって、
単一の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出する手段と、
前記第1直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出する手段と、
前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出する手段と、
複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出する手段と、
前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成する手段と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理装置であって、
複数の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出する手段と、
複数の前記第1直線群の画素からなる曲断面再構成画像において、複数の椎体の中心を通る中心線を算出する手段と、
前記中心線の各点において、前記中心線の垂直方向又は被検体の前後方向に延伸する第2直線を算出する手段と、
前記第2直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出する手段と、
前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出する手段と、
複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出する手段と、
前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成する手段と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第1直線として、棘突起の中心を通り、被検体の前後方向に延伸する直線を算出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記基準点として、前記第1端点及び前記第2端点の間を外分する点を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記基準点として、前記第1端点及び前記第2端点の間を外分する第1の点と、前記第1の点と異なり、前記第1端点及び前記第2端点の間を外分する第2の点との中点を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記基準点として、前記第1端点及び前記第2端点を通る直線上における椎弓の端点を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
複数の前記第1直線群の画素からなる断面画像を作成する手段と、
前記基準線を前記断面画像に重ねて表示する手段と、
前記基準線の平行移動量の入力を受け付けて、前記平行移動量に応じて前記基準線の位置を平行移動して表示する手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記基準線を複数本算出し、前記断面画像に重ねて表示する場合において、
選択された前記基準線の形状変更量の入力を受け付けて、前記形状変更量に応じて、選択された前記基準線の形状を変更するとともに、他の前記基準線の形状も合わせて変更する
ことを特徴とする請求項7に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記基準線を前記断面画像の外部まで延長して表示する
ことを特徴とする請求項8に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理方法であって、
単一の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出するステップと、
前記第1直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出するステップと、
前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出するステップと、
複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出するステップと、
前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成するステップと、
を含むことを特徴とする医用画像処理方法。
【請求項11】
複数の断層像から脊椎画像を作成する医用画像処理方法であって、
複数の断層像において、被検体の前後方向に延伸し、椎孔を通る第1直線を算出するステップと、
複数の前記第1直線群の画素からなる曲断面再構成画像において、複数の椎体の中心を通る中心線を算出するステップと、
前記中心線の各点において、前記中心線の垂直方向又は被検体の前後方向に延伸する第2直線を算出するステップと、
前記第2直線上における椎体の第1端点及び第2端点を算出するステップと、
前記第1端点及び前記第2端点に基づいて基準点を算出するステップと、
複数の断層像において前記基準点を算出し、全ての前記基準点を通る基準線を算出するステップと、
前記基準線を用いて、前記脊椎画像を作成するステップと、
を含むことを特徴とする医用画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−52121(P2013−52121A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192567(P2011−192567)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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