説明

医用画像処理装置

【課題】 容易な操作でパラメータの値の変更を行うことが可能な医用画像処理装置を提供する。
【解決手段】 医用画像処理装置100は、パラメータ値に応じた表示内容を表示する表示装置107と、表示装置107に表示されるマウスポインタ208の位置を移動させるポインティングデバイス(マウス108)とを備え、CPU101は、ポインティングデバイス(マウス108)により移動されるマウスポインタ208の軌跡の、基準点P0に対する回転角度θ及び回転方向に応じてパラメータ値を変更する。また、基準点P0からの距離Rやマウスポインタ208の移動速度Vに応じた重み付けをしてパラメータ値を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置におけるパラメータ値の調整操作に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(magnetic resonance imaging)装置、超音波装置といった各種医用画像撮影装置によって撮影された医用画像は一般に階調数が大きい。例えば、CT画像の濃度値(CT値)は一般に3000〜6000階調程度を有する。これに対して、モニタの表示能力は通常256階調程度であり、CT画像の階調数より小さい。このため、医用画像をモニタの階調数で表示するための範囲を決定する必要があり、この範囲の決定には、ウィンドウレベル(WL)とウィンドウ幅(WW)といったパラメータが用いられている。WLはモニタに表示するCT値範囲の中心を示し、WWはモニタに表示するCT値の幅である。
【0003】
上述のWLやWWといったパラメータの値を変更する際、従来の医用画像処理装置では、例えば、まず予め設定されているデフォルト値またはユーザ設定値を用いて医用画像をモニタに表示させ、またパラメータ値を変更するためのスクロールバー等のGUIを表示させ、操作者はモニタ上の医用画像を参照しながら、スクロールバーに沿ってマウスポインタを上下または左右に移動させることによりパラメータ値を変更する方法をとっている。しかしながら、このような操作方法では、WL値やWW値等のように値の範囲が広いパラメータ値を変更する場合にはマウス等の移動量が大きくなってしまい、十分に広い作業範囲のない場所で操作を行うと、軌跡を描いている途中で作業範囲の限界に達してしまう。この場合はマウスを元の位置に戻す必要があり手間や時間がかかっていた。これに対して、特許文献1には、タッチパネル式の表示・入力装置に円形のジョグダイヤルを模した画像を表示させ、これをソフトウエア入力装置として利用する方法が記載されている。操作者はタッチ操作によってジョグダイヤルを回転操作し、その操作量に応じて場所の制約なくWL値やWW値等を変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−11935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マウスやジョグダイヤルによるパラメータ値の変更量は、操作量に比例するものであった。そのため、パラメータ値を大幅に変更する場合には操作量を大きくする必要があった。また操作量に対するパラメータ値の変更量の比率を調整することも可能であったが、比率の調整操作を別に行う必要があったため、瞬時に調整することが難しかった。そのため、例えば操作量に対して変更量を大きくするよう比率を調整した後に、パラメータ値を微調整するような場合には、マウス等の操作量を微量とする必要があるため、操作が困難となることがあった。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な操作でパラメータの値の変更を行うことが可能な医用画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために本発明は、パラメータ値に応じた表示内容を表示する表示手段と、前記表示手段に表示されるポインタの位置を移動させるポインティングデバイスとを備えた医用画像処理装置であって、前記ポインティングデバイスにより移動される前記ポインタの軌跡の、基準点に対する回転角度及び回転方向に応じて前記パラメータ値を変更するパラメータ値変更手段を備えることを特徴とする医用画像処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、簡単な操作でパラメータの値の変更を行うことが可能な医用画像処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】医用画像処理装置1全体のハードウエアブロック図
【図2】パラメータ設定画面200の一例
【図3】任意の基準点P0に対するポインタ軌跡の回転角度θを説明する図
【図4】任意の基準点P0からポインタ軌跡までの距離Rを説明する図
【図5】任意の基準点P0からポインタ軌跡までの距離Rに応じた変化量の変化を説明する図
【図6】本発明によるパラメータ値変更操作に対するガイド図の例
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明は、医用画像に関する各種パラメータ値をマウス等のポインティングデバイスの操作によって設定する各種機器に適用可能である。例えば、以下の実施の形態に示す医用画像処理装置100の他、X線CT装置、MRI装置、X線診断装置、透視撮影装置、SPECT装置、PET装置等の医用画像撮影装置にも適用できる。
また、以下の実施形態では、パラメータの変更対象とする画像の一例としてCT画像を用いて説明するが、これに限定されない。本発明は、MR画像、超音波画像、核医学画像等の医用画像や医用画像以外の画像にも適用できる。
【0011】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の画像処理装置100を適用した画像処理システム1の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、画像処理システム1は、表示装置107、マウス(ポインティングデバイス)108、入力装置109を有する医用画像処理装置100と、医用画像処理装置100にネットワーク110を介して接続される画像データベース111と、医用画像撮影装置112とを備える。
【0013】
医用画像処理装置100は、例えばコンピュータにより構成され、画像生成、画像解析等の処理を行う。
医用画像処理装置100は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、主メモリ102、記憶装置103、通信インタフェース(通信I/F)104、表示メモリ105、マウス108等のポインティングデバイスとのインタフェース(I/F)106を備え、各部はバス113を介して接続されている。
【0014】
CPU101は、主メモリ102または記憶装置103等に格納されるプログラムを主メモリ102のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス113を介して接続された各部を駆動制御し、医用画像処理装置100が行う各種処理を実現する。
【0015】
また、CPU101は、医用画像に関するパラメータ値の変更操作を受け付ける。本実施の形態では、変更対象とするパラメータの好適な例として、ウィンドウ幅(WW)及びウィンドウレベル(WL)について説明する。また、ポインティングデバイスとしてマウス108を用いることとする。CPU101は、マウス108の移動操作によって表示画面上のマウスポインタ208(図2参照)を移動させたり、マウス108のクリック操作によってマウスポインタ208の位置を指定したりする。
【0016】
本発明では、CPU101は、マウス108の移動量に応じた量だけマウスポインタ208を移動させ、このとき描かれるマウスポインタ208の軌跡の、基準点に対する回転方向及び回転角度に応じてパラメータ値を変更する。
すなわち、マウス108の操作によって表示画面上のマウスポインタ208が時計回りに移動された場合はパラメータ値を増加させ、マウスポインタ208が反時計回りに移動された場合はパラメータ値を減少させる。逆に、マウスポインタ208が反時計回りに移動された場合にパラメータ値を増加させ、マウスポインタ208が時計回りに移動された場合にパラメータ値を減少させてもよい。またマウスポインタ208の軌跡の基準点からの回転角度θに応じた量だけパラメータ値を変更する。詳細は後述する。
【0017】
主メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置103等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU101が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0018】
記憶装置103は、HDD(ハードディスクドライブ)や他の記録媒体へのデータの読み書きを行う記憶装置であり、CPU101が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU101により必要に応じて読み出されて主メモリ102のRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0019】
通信I/F104は、通信制御装置、通信ポート等を有し、医用画像処理装置100とネットワーク110との通信を媒介する。また通信I/F104は、ネットワーク110を介して、画像データベース111や、他のコンピュータ、或いは、X線CT装置、MRI装置等の医用画像撮影装置112との通信制御を行う。
I/F106は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器とのデータの送受信を行う。例えば、マウス108やスタイラスペン等のポインティングデバイスがI/F106を介して接続される。
【0020】
表示メモリ105は、CPU101から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置107に出力される。
表示装置107は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、表示メモリ105を介してCPU101に接続される。表示装置107はCPU101の制御により表示メモリ105に蓄積された表示データを表示する。
【0021】
入力装置109は、例えば、キーボード等の入力装置であり、操作者によって入力される各種の指示や情報をCPU101に出力する。
【0022】
マウス108は、マウス本体が操作者の操作によって移動されることにより、表示画面上に表示されるマウスポインタ208の位置を移動させる入力装置である。マウス108の底面に設けられるボールの回転量及び回転方向に応じてマウスポインタ208の移動量及び移動方向がCPU101により算出される。ボールに代えて赤外線等を用いた光学式のマウスとしてもよい。マウス108は一つ以上のボタンを備え、ボタンの押下操作と移動操作を適宜組み合わせて、各種機能が実現される。本発明におけるマウス108の操作については後述する。
【0023】
ネットワーク110は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、インターネット等の各種通信網を含み、画像データベース111やサーバ、他の情報機器等と医用画像処理装置100との通信接続を媒介する。
【0024】
画像データベース111は、医用画像撮影装置112によって撮影された画像データを蓄積して記憶するものである。図1に示す画像処理システム1では、画像データベース111はネットワーク110を介して医用画像処理装置100に接続される構成であるが、医用画像処理装置100内の例えば記憶装置103に画像データベース111を設けるようにしてもよい。
【0025】
次に、図2〜図3を参照して本発明の医用画像処理装置100におけるパラメータ値の変更動作について説明する。
医用画像処理装置100のCPU101は、表示対象とする医用画像を表示装置107に表示する際、まず、予め与えられているパラメータ値を用いて所望の医用画像を生成し、表示する。この段階でのパラメータ値は、デフォルト値としてもよいし、操作者によって予め設定されている値としてもよい。
【0026】
そして、操作者からパラメータ値の変更指示が入力されると、パラメータ値の設定画面200(図2参照)を表示し、パラメータ値の変更を受け付ける。
図2に示すパラメータ設定画面200では、変更対象とするパラメータをWW(ウィンドウ幅)及びWL(ウィンドウレベル)とするが、これに限定されない。
【0027】
図2に示すパラメータ設定画面200には、パラメータ値の変更対象とする医用画像201が表示されるとともに、WW値の入力欄202及びWL値の入力欄204が表示される。また、現在設定されているWW値及びWL値を示す数直線206や、表示装置107の階調数とCT値との関係を示すグラフ207が表示されるようにしてもよい。
【0028】
また、表示されている医用画像201は、パラメータ値が変更される都度、そのパラメータ値に応じた表示内容にリアルタイムに更新されることが望ましい。
また、表示されている数直線206やグラフ207も、パラメータ値が変更される都度、そのパラメータ値に応じた表示内容にリアルタイムに更新されることが望ましい。
【0029】
本発明では、図3に示すように、マウス108によりマウスポインタ208がある基準点P0に対して回転の軌跡を描くように操作されると、CPU101は、その軌跡の回転角度θに応じてパラメータ値の変更量を算出する。また、CPU101は、ポインタ108の軌跡の回転の方向によってパラメータ値の増減を決定する。
【0030】
ここで、回転とは、図3に示すように、マウスポインタ208の直前の位置P1と基準点P0とを結ぶ直線L1と、マウスポインタ208の現在の位置P2と基準点P0とを結ぶ直線L2が角度θを持てばよく、軌跡の形状は、円、弧、らせん等に限定されるものではない。マウスポインタ208の軌跡は直線で描かれていてもよく、基準点P0に対して上述のL1とL2とが角度θを有すれば「回転」とする。
【0031】
また、基準点P0の指定から軌跡の描画までの一連の操作が、例えばマウス108のドラッグ操作によって行われる。例えば、ポインタ108が医用画像201の上に表示されているときに、マウス108のドラッグ操作が行われた場合にCPU101は、当該操作がパラメータ値の変更操作を開始するものと認識するようにすればよい。また、入力装置109による所定のキー操作の併用によりパラメータ値の変更操作を開始するものとしてもよい。
【0032】
具体的には、操作者は、医用画像201上の任意の位置で基準点P0をマウス108のボタンを押下し、マウス本体を動かしてポインタ108が基準点P0に対して回転角度θを持つ軌跡を描くように操作する。CPU101は、軌跡の回転角度θを検出し、回転の移動方向(時計回りまたは反時計回り)に応じてパラメータ値を増減させる。また、CPU101は回転角度θの大きさに応じて変更量δ1を決定する。
【0033】
ここで、例えば、マウス108の左ボタンを押下した状態でポインタ208を時計回りに移動する場合には、CPU101はWW値を増加する。反時計周りに移動する場合には、WW値を減少する。
同様に、マウス108の右ボタンを押下した状態でマウスポインタを時計回りに移動する場合には、CPU101はWL値を増加する。反時計周りに移動する場合には、WL値を減少する。
ここでは、左ボタンをWW値、右ボタンをWL値としたが、これとは逆に左ボタンをWL値、右ボタンをWW値としてもよい。また、時計回りを減少方向、反時計回りを増加方向としてもよい。
【0034】
また、回転角度θは、図3に示すように、直前のポインタの位置P1、基準点P0の位置、及び現在のマウスポインタの位置P2から算出される。
パラメータ値の変更量δ1は、以下の式(1)により算出される。
【0035】
変更量δ1=係数a1×回転角度θ ・・・(1)
【0036】
ここで、係数a1には、各医用画像処理装置100によって適当な値が与えられるものとする。
【0037】
変更量δ1が算出されると、CPU101は、算出された変更量δ1だけパラメータ値を変更し、パラメータ設定画面200のWW値入力欄202やWL値入力欄204に変更後の数値を表示する。またCPU101は、表示されている医用画像201を変更されたパラメータ値に応じた医用画像201に更新するとともに、数直線206やグラフ207の表示内容を更新する。
【0038】
以上説明したように、第1の実施の形態の医用画像処理装置100によれば、CPU101は、マウス108により描かれるマウスポインタ208の軌跡の、基準点P0に対する回転角度θ及び回転方向に応じてパラメータ値を変更する。
【0039】
そのため、操作者はマウス108によって場所の制約なく一連の操作でパラメータ値を上限値または下限値まで変更できるようになり、パラメータ値の変更操作中にマウスを元の位置に戻すような煩わしい操作を行う必要がなくなる。そのため、パラメータ値の変更を簡単かつ迅速に行えるようになる。また、タッチパネル式のジョグダイヤルやハードウエアとしてのジョグダイヤルを追加する必要もなく、マウス等の汎用のポインティングデバイスを用いて本発明を実現できるため、装置構成も簡易となり経済的である。
【0040】
なお、上述の第1の実施の形態では、医用画像201上でのドラッグ操作の開始を、本パラメータ変更動作の開始とし、ドラッグ操作の終了をパラメータ変更操作の終了とする例を示したが、ドラッグ操作に限らず、クリック操作とマウス本体の移動操作の繰り返しによって本実施の形態のパラメータ値の変更を行ってもよい。この場合は、パラメータ値の変更操作を行っていることをCPU101が認識できるように、操作の開始をキーまたはボタン等の操作によって指示することが望ましい。例えば、パラメータ変更操作の開始をキーまたはボタン等の操作によって指示した後、1回目のクリック操作を基準点P0の指定とし、2回目のクリック操作を軌跡の開始とし、3回目のクリック操作を軌跡の終了とすればよい。
【0041】
また、医用画像201上でドラッグ操作を行う例を示したが、表示画面上のどの位置で上述のマウスポインタ208の回転移動操作を行うようにしてもよい。この場合にも、マウス108で行っている操作がパラメータ値の変更操作であることをCPU101が認識できるように操作の開始をキーまたはボタンのクリック操作等で行うことが望ましい。
【0042】
また、パラメータ設定画面200に示すグラフ207は、設定されたWW範囲内のCT値とモニタの階調数とが線形に対応付けられている例を示しているが、この例に限定されるものではなく、非線形に対応付けられるものでもよい。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2の実施の形態の医用画像処理装置100について説明する。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態のX線CT装置1と同一の各部については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0044】
第1の実施の形態では、基準点P0とマウスポインタ208との位置関係から回転方向と回転角度θを求め、パラメータ値の変更量δ1を算出していた。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の手法で求められるパラメータ値の変更量δ1に、更に、基準点P0とマウスポインタ208の位置との距離Rの大きさに基づいた重み付けを行う。距離Rは、現在のマウスポインタの位置Pn(軌跡の終点)と基準点P0との距離とする。
【0045】
例えば、基準点P0とマウスポインタ208の位置との距離Rが小さい位置でマウスポインタ208が回転の軌跡を描くように移動された場合には変化量が大きくなり、距離Rが大きい位置でマウスポインタ208が回転の軌跡を描くように移動された場合には変化量が小さくなるように制御する。或いは、その逆に、距離Rが小さい位置でマウスポインタ208が回転の軌跡を描くように移動された場合には変化量が小さくなり、距離Rが大きい位置でマウスポインタ208が回転の軌跡を描くように移動された場合には変化量が大きくなるように制御するようにしてもよい。
【0046】
具体的には、操作者は、医用画像201上の任意の位置で基準点P0をマウス108にて指定し、マウス本体を動かしてマウスポインタ208が基準点P0に対して回転角度θを有する軌跡を描くように操作する。CPU101は、軌跡の回転角度θを検出し、回転角度θの移動方向(時計回りまたは反時計回り)でパラメータ値を増減させる。また、CPU101は回転角度θの大きさによって変更量δ1を決定する。
【0047】
更に、図4に示すように、移動後のポインタ208の位置Pnと、基準点P0の距離Rに基づいて、変化量δ2を決定する。ここでは、距離Rが小さいほど変化量δ2が大きくなるものとするため、以下の式(2)により、パラメータ値の変化量δ2が算出される。
【0048】
変化量δ2=変更量δ1×係数a2/距離R ・・・(2)
【0049】
ここで、係数a2には、各医用画像処理装置100によって適当な値が与えられるものとする。
【0050】
例えば、図5に示すように、基準点P0が設定されており、点P1から点P2までマウスポインタが移動した場合には、距離Rが徐々に小さくなるため、回転角度θ辺りの変化量δ2は徐々に大きくなる。点P2から点P3までマウスポインタが移動した場合には、距離Rが徐々に大きくなるため、回転角度θ辺りの変化量δ2は徐々に小さくなる。
【0051】
以上説明したように、第2の実施の形態の医用画像処理装置100によれば、マウス108により描かれるマウスポインタ208の軌跡の、基準点P0に対する回転角度θ及び回転方向に応じてパラメータ値を変更するのみならず、更に、基準点P0とマウスポインタ208の位置との距離Rに応じてパラメータの変化量に強弱をつける。すなわち、回転半径を小さく操作すれば回転角度θあたりの変化量を大きくでき、回転半径を大きく操作すれば回転角度θあたりの変化量を小さくできる。
【0052】
そのため、第1の実施の形態の効果に加え、パラメータ値の大幅な変更と微調整とを基準点からの距離で簡易に決定できるため、短時間にパラメータ値を設定できるようになる。特に、上述の図5の例のように、基準点P0の遠方からマウスポインタ208を基準点P0に近づけ、その後、遠ざけるように操作する場合には、操作の初期にパラメータ値を大きく変更し、操作の後期にパラメータ値を細かく変更できる。よって、パラメータ値の大幅な変更と微細な調整とを一回の操作で簡単に行えるようになる。
【0053】
[第3の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の手法で求められるパラメータ値の変更量δ1に、基準点P0とマウスポインタ208の位置との距離Rの大きさに基づいた重み付けを行ったが、重み付けに用いるパラメータは距離Rに限定されず、操作速度Vとしてもよい。
例えば、マウス108を速く移動させた場合には変化量が大きくなり、マウス108を遅く移動させた場合には変化量が小さくなるように制御するようにしてもよい。
【0054】
具体的には、操作者は、任意の位置で基準点P0をマウス108にて指定し、マウス本体を動かしてマウスポインタ108が基準点P0に対して回転角度を持つ軌跡を描くように操作する。CPU101は、軌跡の回転角度θを検出し、回転角度θの移動方向(時計回りまたは反時計回り)でパラメータ値を増減させる。また、CPU101は回転角度θの大きさによって変更量δ1を決定する。
【0055】
更に、CPU101は、単位時間あたりのマウスポインタ108の移動量を検知し、これをマウスポインタ108の移動速度Vとし、移動速度Vに基づいて、変化量δ3を決定する。ここでは、移動速度Vが大きいほど変化量が大きくなるものとする。パラメータ値の変化量δ3は、以下の式(3)により算出される。
【0056】
変化量δ3=変更量δ1×係数a3×移動速度V ・・・(3)
【0057】
ここで、係数a3には、各医用画像処理装置100によって適当な値が与えられるものとする。
【0058】
以上説明したように、第3の実施の形態の医用画像処理装置100によれば、マウス108により描かれるマウスポインタ208の軌跡の、基準点P0に対する回転角度θ及び回転方向に応じてパラメータ値を変更するのみならず、更に、ポインタの移動速度Vに応じてパラメータの変化量に強弱をつける。すなわち、速く移動させた場合は回転角度θあたりの変化量を大きくでき、遅く移動させた場合は回転角度θあたりの変化量を小さくできる。
そのため、第1の実施の形態の効果に加え、パラメータ値の大幅な変更と微調整とを一回のマウスの操作速度で簡単に決定できる、また操作速度とパラメータ値の変更幅とが連動した直感的な操作が可能となる。
【0059】
[第4の実施の形態]
上述の第1から第3の実施の形態では、表示画面に表示されている医用画像201上で、マウス108のドラッグ操作を行うことで、パラメータ値の変更を行う例を示したが、例えば、図6に示すようなマウス操作のガイド図を表示しておき、このガイド図に沿って操作するようにしてもよい。
【0060】
例えば、図2に示すようなパラメータ設定画面200内に、図6(a)に示すようなガイド図301を表示する。図6(a)に示すガイド図301では、基準点3aと、基準点指定後のマウスポインタ208の操作方向が矢印3b,3cにより明示される。これにより、操作者は、表示されているガイド図301の基準点3aにマウスポインタを移動させ、ガイド図301の矢印3bまたは3c上をドラッグするように操作すれば、回転角度θや回転方向に応じたパラメータ値の変更操作を行えるようになる。
【0061】
また、図6(b)に示すガイド図302は、上述の第2の実施の形態のように、パラメータ値の変更量δ1に基準点P0から移動後のマウスポインタ208までの距離Rに基づく重み付けを行ってパラメータ値の変更量を決定する場合に好適な例である。ガイド図302には、基準点3aからの距離が異なる位置に、マウスポインタの移動方向を示す矢印3b,3cと、矢印3d,3eと、矢印3f,3gがそれぞれ明示されるようにしている。
【0062】
これにより、操作者は、表示されているガイド図302の基準点3aにマウスポインタ208を移動させ、更に所望の変更量に応じた位置に表示された矢印上をドラッグするように操作すれば、変更量に距離Rに応じた重み付けを行う場合のパラメータ値の変更操作を容易に行えるようになる。
【0063】
また、図6(c)に示すように、基準点3aを中心とし、回転半径が徐々に大きくなるような、らせん状の矢印を有するガイド図303を表示してもよい。上述の第2の実施の形態では、回転角度θに応じた移動量に対して基準点からの距離に基づく重み付けを行うので、操作者は図6(c)のガイド図303に従ったマウスポインタ移動を行えば、操作の初期にはパラメータ値を大きく変化させ、徐々にパラメータ値の変化量を小さくさせながら微調整を行える。
【0064】
以上説明したように、パラメータ値の変更操作を受け付ける際に、CPU101は、マウス操作のガイド図を表示するようにすれば、操作者はガイド図に従ってマウスポインタ208を移動させることによりパラメータ値を変更できるため、不慣れな操作者であっても容易に回転操作によるパラメータ値の変更を行える。
【0065】
以上、第1〜第4の実施の形態において説明したように、本発明の医用画像処理装置100によれば、CPU101は、ポインティングデバイス(マウス108)により移動されるポインタ208の軌跡の、基準点P0に対する回転角度θ及び回転方向に応じてパラメータ値を変更する。
【0066】
そのため、操作者はマウス108によってマウスポインタ208が回転の軌跡を描けるような作業範囲があれば、制限なくパラメータ値を変更できるため、パラメータ値の変更操作中にマウスを元の位置に戻すような煩わしい操作を行う必要がなくなる。そのため、範囲の大きいパラメータ値でも操作場所の制約なく簡単に操作できるようになる。また、マウス108等の汎用のポインティングデバイスを用いて本発明を実現できるため、装置構成も簡易となり経済的なものとなる。
特に、ウィンドウレベル(WL)またはウィンドウ幅(WW)のように、値のとりうる範囲が大きいパラメータについて適用する場合には、マウス108を操作する場所の制約なくパラメータ値を上限値また下限値まで一度の操作で変更できるため、好適である。
【0067】
また、基準点P0からの距離に応じた重み付けをしてパラメータ値を変更するようにすれば、パラメータ値の大幅な変更と微調整とを基準点P0からの距離で簡易に決定できるため、短時間にパラメータ値を設定できるようになる。
【0068】
また、ポインタ208の移動速度に応じた重み付けをしてパラメータ値を変更するようにすれば、パラメータ値の大幅な変更と微調整とを一回のマウスの操作速度で簡単に決定でき、また操作速度とパラメータ値の変更幅とが連動した直感的な操作が可能となる。
【0069】
また、ポインティングデバイスとして、複数のボタンを備えたマウス108を用いる場合に、マウス108のボタンのドラッグ操作に連動して基準点の設定及びポインタの移動を行わせ、CPU101はドラッグ操作中に押下されるボタンによって異なるパラメータ値を変更するようにしているので、一般に行われているマウス操作で本発明のパラメータ変更操作を実現できる。またボタン毎に異なるパラメータを割り当てることができるため、パラメータの変更操作が更に容易となる。
【0070】
また基準点P0の位置及び回転操作の方向についてのガイド図を表示するようにすれば、不慣れな操作者であっても容易に回転操作によるパラメータ値の変更を行えるようになる。
【0071】
なお、上述の実施の形態では、マウス108の右ボタン操作でWW、左ボタン操作でWLのように、ボタン操作によって変更対象とするパラメータを切り替える例を示したが、マウス108のボタン数が2つ以上ある場合には、WW及びWL以外のパラメータを各ボタンにそれぞれ割り当てるようにしてもよい。また、1つのボタンにて複数のパラメータを変更する場合には、変更対象パラメータの切り替え操作を行った後に第1から第3の実施の形態のマウス操作を行うようにしてもよい。
【0072】
以上、本発明に係る医用画像処理装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0073】
1・・・・・画像処理システム
100・・・・・医用画像処理装置
101・・・・・CPU
102・・・・・主メモリ
103・・・・・記憶装置
104・・・・・通信I/F
105・・・・・表示メモリ
106・・・・・I/F
107・・・・・表示装置
108・・・・・マウス(ポインティングデバイス)
109・・・・・入力装置
200・・・・・パラメータ設定画面
201・・・・・医用画像
202・・・・・WW値入力欄
204・・・・・WL値入力欄
206・・・・・数直線
207・・・・・グラフ
208・・・・・マウスポインタ
P0・・・・・・基準点
P1・・・・・・マウスポインタの位置
Pn・・・・・・マウスポインタの位置
R・・・・・・・基準点とマウスポインタの位置Pnとの距離
301,302,303・・・・ガイド図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータ値に応じた表示内容を表示する表示手段と、前記表示手段に表示されるポインタの位置を移動させるポインティングデバイスとを備えた医用画像処理装置であって、
前記ポインティングデバイスにより移動される前記ポインタの軌跡の、基準点に対する回転角度及び回転方向に応じて前記パラメータ値を変更するパラメータ値変更手段を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記パラメータ値変更手段は、更に、前記基準点から前記ポインタまでの距離に応じた重み付けをして前記パラメータ値を変更することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記パラメータ値変更手段は、更に、前記ポインタの移動速度に応じた重み付けをして前記パラメータ値を変更することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記ポインティングデバイスが、複数のボタンを備えたマウスであり、前記ボタンのドラッグ操作に連動して前記基準点の設定及び前記ポインタの移動を行わせる場合に、前記パラメータ値変更手段は、前記ドラッグ操作中に押下されるボタンによって異なるパラメータ値を変更することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記基準点の位置及び回転操作の方向についてのガイドを前記表示手段に表示するガイド表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記パラメータは、ウィンドウレベルまたはウィンドウ幅であることを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177200(P2011−177200A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41389(P2010−41389)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】