説明

医用画像診断装置及び放射線量算出用制御プログラム

【課題】放射性同位元素が投与された被検体の周囲における放射線量をリアルタイムで把握する。
【解決手段】放射性同位元素が投与された被検体150に対してPET撮影を行なう際、線量算出部42の体内線量算出部は、体形モデル保管部41に予め保管された各種体形モデルの中から被検体150の体重に対応した体形モデルを抽出し、この体形モデルの内部に前記放射性同位元素が一様分布した場合の現在時刻における体内放射線量を継続的に算出する。次いで、線量算出部42の体外線量算出部は、前記体内放射線量の算出結果に基づいて被検体周囲の所定領域における体外放射線量を算出し、分布データ生成部43は、前記体外線量算出部が複数の領域において算出した体外放射線量に基づいて放射線量分布データを生成する。そして表示部5は、前記所定領域における体外放射線量の値及び前記放射線量分布データを自己のモニタに表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素により標識された薬剤が投与されている被検体の周囲における放射線量を推定することが可能な医用画像診断装置及び放射線量算出用制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置、MRI装置、X線CT装置及び核医学イメージング装置などを用いた医用画像診断は、コンピュータ技術の発展に伴って急速な進歩を遂げ、今日の医療において必要不可欠なものとなっている。
【0003】
上述のX線診断装置やX線CT装置は、臓器や腫瘍等の輪郭を描出することによって診断を行なう、所謂、形態診断を目的としているのに対し、核医学イメージング装置は、生体組織に選択的に取り込まれた放射性同位元素又はその標識化合物から放射されるγ線を体外から計測し、その線量分布を画像化することにより被検体に対する機能診断を可能としている。
【0004】
核医学イメージング装置として、ガンマカメラ、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置)、ポジトロンエミッションCT装置(PET(Positron Emission Computed Tomography)装置)等が臨床の場で使用されている。
【0005】
ガンマカメラは、放射性同位元素によって標識された薬剤(以下、放射性同位元素と呼ぶ。)が投与された被検体の内部から放出されるγ線を、前記被検体に対向させて配置した平面検出器によって測定することにより、この平面検出器に投影された放射性同位元素の分布を2次元画像データ(ガンマ画像データ)として生成する装置であり、平面検出器の前面に装着されたコリメータによってγ線の入射方向を特定している。
【0006】
SPECT装置は、放射性同位元素が投与された被検体の周囲でガンマカメラと同様の平面検出器を移動あるいは複数の平面検出器を配置し、前記被検体に対し複数の方向から検出したγ線情報に対しX線CT装置と同様の再構成処理を行なって画像データ(SPECT画像データ)を生成している。
【0007】
一方、PET装置は、陽電子(ポジトロン)を放出する核種によって標識した放射性同位元素を被検体に投与し、この陽電子が電子と結合して消滅する際に被検体の周囲に配置したリング状の検出器によって検出される一対のγ線情報を再構成処理することにより画像データ(PET画像データ)の生成を行なっている。
【0008】
又、近年では、X線CT装置とPET装置とが一体化された、所謂、X線CT組み合わせ型ポジトロンCT装置(PET−CT装置)も開発されている。このPET−CT装置によれば、同一被検体に対する形態診断及び機能診断を効率よく行なうことが可能となり、更に、PET撮影によって収集された投影データを再構成処理してPET画像データを生成する際、X線CT画像データの画素値に基づいて生成された減弱補正データ(減弱マップ)を用いて前記投影データを補正することにより良質なPET画像データを得ることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
ところで、X線CT装置やX線診断装置のようなX線を放射する医用画像診断装置を用いて被検体に対する検査を行なう医師や検査師等の医療従事者(以下では、操作者と呼ぶ。)、あるいは、上述の核医学イメージング装置を用いた検査において放射性同位元素の投与によりγ線を放射する被検体に対して各種の医療行為を行なう操作者は、放射線を検出する蛍光ガラス線量計、熱ルミネッセンス線量計、フィルムバッジ等の線量計を常時着用することにより検査中に受ける被曝量の管理を行なっている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−47602号公報
【特許文献2】特開2007−327864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
当該被検体に対してX線CT装置やX線診断装置を用いた検査を行なう操作者は、遮蔽された検査室の外部に置かれている操作卓等において被検体に対する指示や装置の操作を行なうため、検査中の操作者が法令によって定められた許容値以上の被曝量を受ける可能性は極めて少ない。一方、放射性同位元素が投与された被検体に対し上述の核医学イメージング装置やPET−CT装置等を用いた検査を行なう操作者は、検査室への誘導、天板への載置、検査内容の説明等の医療行為を放射線源である被検体の近傍で行なう必要があるため比較的大きな被曝量を受ける可能性を有している。
【0012】
このような場合、操作者は、放射線量の少ない領域において上述の医療行為を行なうことにより検査中に受ける被曝量を最小限に抑えなくてはならないが、従来のようなフィルムバッジ等の線量計によって得られる統計的な計数データでは検査室内の所定領域における放射線量をリアルタイムで把握することができないという問題点を有していた。
【0013】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、放射性同位元素が投与された被検体の周囲における放射線量をリアルタイムで把握することが可能な医用画像診断装置及び放射線量算出用制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の医用画像診断装は、放射性同位元素を投与した被検体から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて画像データを生成する医用画像診断装置において、前記被検体から放射される放射線量を推定する放射線量推定手段と、この放射線量推定手段による放射線量の推定結果を表示する表示手段とを備えたことを特徴としている。
【0015】
又、請求項11に係る本発明の放射線量算出用制御プログラムは、放射性同位元素を投与した被検体から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて画像データを生成する医用画像診断装置に対し、前記被検体の被検体情報に基づいて体形モデルを設定する体形モデル設定機能と、前記体形モデルの内部に分布した前記放射性同位元素に基づいて前記被検体の周囲における放射線量を推定する放射線量推定機能と、前記放射線量の推定結果を表示する表示機能を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放射性同位元素が投与された被検体の周囲における放射線量を容易に把握することができる。このため、操作者は、放射線量の少ない領域において当該被検体に対する医療行為を行なうことが可能となり検査中に受ける被曝量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】同実施例の医用画像診断装置が備えるX線CT撮影部の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】同実施例の医用画像診断装置が備えるPET撮影部の具体的な構成を示すブロック図。
【図4】同実施例のPET撮影部に設けられた検出器モジュールの具体的な構成を示す図。
【図5】同実施例の分布データ生成部が生成する放射線量分布データの具体例を示す図。
【図6】同実施例の移動機構部によって移動するX線CT架台部及びPET架台部を説明するための図。
【図7】同実施例における放射線量の推定手順を示すフローチャート。
【図8】同実施例の変形例における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0019】
以下に述べる本実施例の医用画像診断装置では、放射性同位元素が投与された被検体に対してPET撮影を行なう際、前記被検体の体重に対応した体形モデルを予め保管された各種体形モデルの中から抽出し、この体形モデルの内部に前記放射性同位元素が一様分布した場合の現在時刻における体内放射線量を継続的に算出する。次いで、体内放射線量の算出結果に基づいた被検体周囲の所定領域における体外放射線量の算出と複数の領域において算出された体外放射線量に基づく放射線量分布データの生成を行ない、得られた体外放射線量の値及び放射線量分布データを表示部に表示する。
【0020】
尚、以下の実施例では、形態診断を目的としたX線CT画像データと機能診断を目的としたPET画像データを生成することが可能な医用画像診断装置について述べるが、機能診断用としてSPECT画像データやガンマ画像データ等の生成を可能とする医用画像診断装置であってもよく、又、形態診断用としてMRI画像データやX線画像データ等の生成を可能とする医用画像診断装置であってもよい。
【0021】
(装置の構成)
本発明の実施例における医用画像診断装置の構成につき図1乃至図6を用いて説明する。尚、図1は、本実施例における医用画像診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2及び図3は、この医用画像診断装置が備えるX線CT撮影部及びPET撮影部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように本実施例の医用画像診断装置100は、被検体150の周囲で高速回転するX線発生部11のX線管から放射され被検体150を透過したX線を投影データ生成部12のX線検出器により検出して投影データ(第1の投影データ)を生成するX線CT撮影部1と、放射性同位元素(RI)が投与された被検体150から放射される1対のγ線をその周囲に配列された検出器モジュール21により検出して投影データ(第2の投影データ)を生成するPET撮影部2と、X線CT撮影部1において生成された第1の投影データ及びPET撮影部2において生成された第2の投影データを再構成処理してX線CT画像データ及びPET画像データを生成する画像データ生成部3と、放射性同位元素が投与された被検体150から放射される放射線量の算出とこの算出結果に基づいた放射線量分布データの生成を行なう放射線量推定部4を備えている。
【0023】
又、医用画像診断装置100は、画像データ生成部3によって生成されたX線CT画像データ及びPET画像データや放射線量推定部4において得られた検査室内の所定領域における放射線量の値及び放射線量分布データを表示する表示部5と、図示しない寝台に据え付けられ被検体150を載置する天板6と、上述のX線管やX線検出器が搭載された回転架台部を被検体150の周囲で高速回転させ、X線CT撮影部1を有するX線CT架台及びPET撮影部2を有するPET架台を被検体150の体軸方向(z軸方向)へ移動させる移動機構部7と、被検体情報の入力、X線CT撮影及びPET撮影における撮影条件、画像データ生成条件及び画像データ表示条件の設定、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部8と、医用画像診断装置100が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部9を備えている。
【0024】
次に、医用画像診断装置100が備える上述の各ユニットの構成と機能につき更に詳しく説明する。
【0025】
図1に示すX線CT撮影部1は、図2に示すように、X線発生部11、投影データ生成部12、回転架台部13及び固定架台部14を備え、X線発生部11は、被検体150に対してX線を照射するX線管111と、X線管111の陽極と陰極の間に印加する高電圧を発生する高電圧発生器112と、X線管111から放射されたX線の被検体150に対する照射範囲を制御するX線絞り器113と、回転架台部13へ電力を供給するスリップリング114を備えている。
【0026】
X線管111は、X線を発生する真空管であり、高電圧発生器112から供給される高電圧によって加速した電子をタングステンターゲットに衝突させてX線を放射する。一方、X線絞り器113は、X線管111と被検体150の間に設けられ、X線管111から放射されたX線を所定の撮影領域に絞り込む機能と被検体150に対するX線の照射強度分布を設定する機能を有している。例えば、X線管111から放射されたX線ビームを撮影領域に対応したコーンビーム状あるいはファンビーム状のX線ビームに成形する。
【0027】
次に、投影データ生成部12は、被検体150を透過したX線を検出するX線検出器121と、X線検出器121から出力された複数チャンネルの検出信号(投影データ)に対して電流/電圧変換とA/D変換を行なうデータ収集ユニット(以下、DAS(Data Acquisition System)ユニットと呼ぶ。)122と、DASユニット122の出力信号に対してパラレル/シリアル変換、電気/光/電気変換及びシリアル/パラレル変換を行なうデータ伝送回路123を備えている。
【0028】
投影データ生成部12のX線検出器121は、例えば、2次元配列された図示しない複数個のX線検出素子を備え、このX線検出素子の各々は、X線を光に変換するシンチレータと光を電気信号に変換するフォトダイオードによって構成されている。そして、これらのX線検出素子は、X線管111の焦点を中心とした円弧に沿って回転架台部13に取り付けられている。
【0029】
一方、DASユニット122は、X線検出器121から供給された投影データに対して電流/電圧変換とA/D変換を行なう。そして、データ伝送回路123は、図示しないパラレル/シリアル変換器と電気/光/電気変換器とシリアル/パラレル変換器を有し、DASユニット122から出力された投影データは、回転架台部13に取り付けられた前記パラレル/シリアル変換器において時系列的な1チャンネルの投影データに変換され、前記電気/光/電気変換器を用いた光通信により固定架台部14に取り付けられた前記シリアル/パラレル変換器に供給される。
【0030】
次いで、前記シリアル/パラレル変換器において、1チャンネルの投影データは前記複数チャンネルの投影データに戻されて画像データ生成部3へ供給される。尚、このデータ伝送方法は、回転架台部13に設けられた投影データ生成部12と固定架台部14の外部に設けられた画像データ生成部3の間の信号伝送が可能であれば他の方法に替えることが可能であり、例えば、既に述べたスリップリング等のデバイスを使用しても構わない。
【0031】
そして、X線発生部11のX線管111及びX線絞り器113と上述の投影データ生成部12のX線検出器121及びDASユニット122は、被検体150を挟むように対向して回転架台部13に装着され、移動機構部7により被検体150の体軸方向(z軸方向)に平行な軸を回転中心として高速回転する。
【0032】
次に、図1のPET撮影部2は、図3に示すように、被検体150の周囲において同心円状に配列され、放射性同位元素が投与された被検体150から放射される1対のγ線を検出する検出器モジュール21と、検出されたγ線とノイズとの弁別、γ線の検出時刻や検出位置の計測、同時計測された1対のγ線の検出位置に基づくγ線入射方向の算出、更には、所定期間におけるγ線のカウント値をγ線検出位置及びγ線入射方向に対応させて順次保存することによる投影データ(第2の投影データ)の生成等を行なう検出データ処理部22を有している。
【0033】
複数個からなる検出器モジュール21(21−1乃至21−Nm)は、天板6に載置された被検体150の周囲において同心円状に配列され、被検体150から放射されたγ線はこれらの検出器モジュール21によって一旦可視光に変換された後電気信号(検出信号)に変換される。
【0034】
図4は、検出器モジュール21の具体的な構成を示したものであり、検出器モジュール21−1乃至21−Nmの各々は、被検体150から放射されるγ線を検出して可視光に変換する短冊状のシンチレータ211と、シンチレータ211によって変換された可視光を電気信号に変換すると共に変換した微弱な電気信号を増幅する光電子増倍管212と、シンチレータ211から出力された可視光を光電子増倍管212へ伝達するライトガイド213を有している。
【0035】
シンチレータ211は、ビスマスジャーマネイド(BGO:(BiGe12))、タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))、フッ化バリウム(BaF)等の材料が用いられ、特に、PET撮影には、単位体積当たりのγ線光電吸収率が高いビスマスジャーマネイドや応答速度の速いフッ化バリウムが好適である。
【0036】
光電子増倍管212は、例えば、数百個からなる光子を10〜1010個の電子に増幅し、出力段である陽極にその電子を収集して電気信号に変換するものであり光電陰極と電子増倍器を備えている。光電陰極には、その波長特性がシンチレータ211の発光波長に略均しい多アルカリ物質、あるいは酸素やセシウムで活性化したバイアルカリ物質が用いられ、入射光子数に対する発生光電子数は通常20%乃至30%である。一方、電子増倍器は、2次電子放出現象に基づき、電子の伝搬経路に沿って配置された多段の電極と増幅された電子を収集する陽極とから構成されている。そして、管電圧が200V乃至300Vの場合の1段当たりの増幅率は約5倍であるため、上述の10の増幅率を得るためには10段程度の電極が設けられる。
【0037】
ライトガイド213は、シンチレータ211と光電子増倍管212を光学的にカップリングするためのものであり、シンチレータ211から出力された可視光を効率よく光電子増倍管212へ伝達するために光透過性に優れたプラスチック材が用いられる。
【0038】
図3へ戻って、PET撮影部2の検出データ処理部22は、上述の検出器モジュール21−1乃至21−Nmの各々に接続されているNmチャンネルのデータ処理ユニット221−1乃至221−Nmと、データ処理ユニット221−1乃至221−Nmから出力されるγ線の検出位置情報に基づいてγ線の入射方向を算出する入射方向算出部222と、検出信号のカウント値をγ線検出位置及びγ線入射方向に対応させて順次保存することにより投影データ(第2の投影データ)を生成する投影データ生成部223を備えている。尚、ここでは被検体150に投与された放射性同位元素Sから放射される1対のγ線が検出器モジュール21−a及び21−bによって検出される場合を想定し、これらの検出器モジュール21−a及び21−bに接続されているデータ処理ユニット221−a及び221−bのみを示している。
【0039】
検出データ処理部22のデータ処理ユニット221−a及び221−bは、検出器モジュール21−a及び21−bの光電子増倍管212から供給される複数チャンネルの検出信号を加算合成する信号合成部231と、信号合成部231において合成された検出信号を用いてγ線の放射に起因する検出信号とノイズとの弁別を各々の波高値に基づいて行なう信号弁別部232と、信号合成部231から出力された合成後の検出信号を矩形波に整形する波形整形部233と、矩形波のフロントエッジに基づいてγ線検出時刻を計測すると共に信号弁別部232において弁別された検出信号に対し前記γ線検出時刻の情報を付加する検出時刻計測部234を備えている。
【0040】
更に、データ処理ユニット221−a及び221−bは、検出器モジュール21−a及び21−bの光電子増倍管212から供給された複数チャンネルの検出信号に基づいてγ線検出位置を計測する検出位置計測部235と、検出時刻計測部234によるγ線検出時刻の情報が付加された検出信号に対し上述のγ線検出位置の情報を更に付加する検出位置設定部236を備えている。尚、データ処理ユニット221の具体的な構成とその機能については特開2007−107995号公報等において記載されているため詳細な説明は省略する。
【0041】
次に、検出データ処理部22の入射方向算出部222は、データ処理ユニット221−1乃至221−Nmの各々に設けられた検出位置設定部236から供給される検出信号の付帯情報であるγ線検出時刻の情報に基づき、予め設定された検出期間にて計測された検出信号(例えば、検出器モジュール12−a及び検出器モジュール12−bの各々から供給された放射性同位元素Sに基づく検出信号)を抽出する。そして、これらの検出信号に付加されているγ線検出位置の情報に基づいてγ線入射方向を算出する。
【0042】
一方、投影データ生成部223は、図示しない記憶回路を備え、入射方向算出部222から供給される検出信号のカウント値を上述のγ線検出位置及びγ線入射方向に対応させて前記記憶回路に保存する。そして、例えば、検出器モジュール21−aと検出器モジュール21−bによるγ線の検出が行なわれる度に、検出信号のカウント値が前記記憶回路の対応アドレスにおいて積算される。
【0043】
一方、他の検出器モジュール12において1対のγ線が検出された場合、γ線検出位置とγ線入射方向を上述と同様の方法によって計測し、検出信号のカウント値をγ線検出位置及びγ線入射方向に対応させて前記記憶回路に順次保存する。即ち、投影データ生成部223の記憶回路では、複数のγ線検出位置及びγ線入射方向に対応した検出信号のカウント値が所定期間積算されて投影データが生成される。
【0044】
次に、図1に示した医用画像診断装置100の画像データ生成部3は、投影データ記憶部31、再構成処理部32及び減弱補正データ生成部33を備え、X線CT撮影部1及びPET撮影部2の各々において生成された投影データに基づいてX線CT画像データ及びPET画像データを生成する機能を有している。
【0045】
画像データ生成部3の投影データ記憶部31には、X線CT撮影部1の投影データ生成部12において生成された投影データ(第1の投影データ)及びPET撮影部2の検出データ処理部22において生成された投影データ(第2の投影データ)が一旦保存される。
【0046】
再構成処理部32は、各種の再構成処理プログラムが予め保管されているプログラム保管部と演算部(何れも図示せず)を備えている。前記演算部は、入力部8からシステム制御部9を介して供給される画像データ生成条件を受信し、この画像データ生成条件の再構成処理条件に好適な処理プログラムを前記プログラム保管部から読み出す。そして、投影データ記憶部31から読み出した第1の投影データを前記処理プログラムに基づいて再構成処理することによりX線CT画像データを生成する。
【0047】
更に、再構成処理部32は、投影データ記憶部31から読み出した第2の投影データを減弱補正データ生成部33から供給される減弱補正データを用いて補正し、補正された第2の投影データに対する再構成処理を上述と同様の手順によって行ないPET画像データを生成する。
【0048】
一方、減弱補正データ生成部33は、図示しない補正データ記憶回路を備え、再構成処理部32によって生成されたX線CT画像データの画素値(CT値)に基づいて減弱係数を算出する。次いで、得られた減弱係数を用いて2次元の減弱補正データ(減弱マップ)を生成し、前記補正データ記憶回路に保存する。
【0049】
次に、放射線量推定部4は、体形モデル保管部41、線量算出部42及び分布データ生成部43を備えている。
【0050】
体形モデル保管部41には、被検体の形状が回転楕円体等によって近似された各種の体形モデルが、例えば、被検体の体重をパラメータとして予め保管されている。この場合、体形モデルを示す回転楕円体の極半径及び赤道半径は、被検体の体重に基づいて決定される。
【0051】
線量算出部42は、図示しない体内線量算出部と体外線量算出部を有し、前記体内線量算出部は、放射性同位元素が投与された体内局所部位の現在時刻t1における放射線量(体内放射線量)V1を次式(1)に基づいて算出する。
【数1】

【0052】
但し、式(1)におけるV0は被検体150に対する放射性同位元素の投与量、t0は放射性同位元素の投与時刻、τxは投与された放射性同位元素の半減期、Kは定数を示している。
【0053】
一方、前記体外線量算出部は、入力部8からシステム制御部9を介して供給される被検体情報を受信し、この被検体情報に含まれている被検体150の体重に対応した体形モデルを体形モデル保管部41に予め保管された各種体形モデルの中から抽出する。そして、上述の式(1)によって算出された体内放射線量V1を有する放射性同位元素が前記体形モデルの内部に一様分布していると仮定した場合の被検体周囲(即ち、体形モデルの周囲)の所定算出領域における体外放射線量を算出する。この場合、医用画像診断装置100の操作者は、体外放射線量の算出領域を任意に設定することが可能であり、例えば、被検体150に対して医療行為を行なう際に当該操作者が位置する天板6から30cmだけ離れた領域の体外放射線量が算出される。
【0054】
一方、分布データ生成部43は、図示しないデータ記憶回路を備え、線量算出部42の体外線量算出部によって算出された複数の算出領域における体外放射線量の算出結果は、算出領域の位置情報を付帯情報として前記データ記憶回路に順次保存される。そして、分布データ生成部43は、前記データ記憶回路から読み出した複数の算出領域における体外放射線量の算出結果と算出領域の位置情報に基づいて被検体150の周囲における2次元の放射線量分布データを生成する。
【0055】
図5は、上述の分布データ生成部43によって生成された放射線量分布データの具体例であり、図5(a)は、線量算出部42の体外線量算出部において算出された体外放射線量の値に対応する濃淡あるいは色調を有した放射線量分布データを示している。一方、図5(b)は、前記体外線量算出部において算出された体外放射線量の値と複数の閾値とを比較することによって生成された等高線表示方式の放射線量分布データであり、図5(a)及び図5(b)は、何れの場合も、天板6に配置された被検体150の体形モデル151を中心とし、床面から所定距離(例えば、床面から1m)だけ離れた水平面における2次元の放射線量分布データを示している。
【0056】
再び図1へ戻って、表示部5は、図示しない表示データ生成部、変換処理部及びモニタを備えている。前記表示データ生成部は、画像データ生成部3の再構成処理部32において生成されたX線CT画像データやPET画像データを所定の表示フォーマットに変換して表示データを生成し、前記変換処理部は、表示データ生成部によって生成された表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なって前記モニタに表示する。更に、前記表示データ生成部及び前記変換処理部は、放射線量推定部4の線量算出部42において算出された体外放射線量の値や分布データ生成部43によって生成された放射線量分布データに対しても同様の処理を行なって前記モニタに表示する。
【0057】
次に、移動機構部7は、図示しない架台回転部、架台移動部及び機構制御部を備え、前記架台回転部は、前記機構制御部から供給される架台回転制御信号に従ってX線管111及びX線検出器121が搭載されたX線CT撮影部1の回転架台部13を被検体150の周囲にて高速回転させる。
【0058】
前記架台移動部は、前記機構制御部から供給される架台移動制御信号に従い、X線CT撮影部1を有するX線CT架台部及びPET撮影部2を有するPET架台部を床面に設けられたガイドレールに沿って被検体150の体軸方向へ移動させる。一方、前記機構制御部は、入力部8からシステム制御部9を介して供給されるX線CT撮影開始指示信号に従って生成した架台回転制御信号を前記架台回転部へ供給し、架台移動指示信号に従って生成した架台移動制御信号を前記架台移動部へ供給する。
【0059】
図6は、移動機構部7の架台移動部によって移動する上述のX線CT架台部及びPET架台部を説明するための図であり、この図6に示すように検査室の床面160には被検体150を載置する天板6を有した寝台161が据え付けられ、天板6の体軸方向(z軸方向)にガイドレール162が配設されている。そして、被検体150の検査対象部位がX線CT撮影部1の撮影野あるいはPET撮影部2の撮影野に配置されるようにX線CT撮影部1を有するX線CT架台部163あるいはPET撮影部2を有するPET架台164をガイドレール162に沿って体軸方向へ移動させることにより、X線CT撮影及びPET撮影における被検体150の好適な撮影位置が決定される。
【0060】
次に、図1の入力部8は、キーボード、選択スイッチ、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備え、表示部5と組み合わせて用いることによりインタラクティブなインターフェースを形成している。そして、被検体情報の入力、被検体150に投与される放射性同位元素の情報(以下では、投与薬剤情報と呼ぶ。)の入力、X線CT撮影及びPET撮影における撮影条件、画像データ生成条件及び画像データ表示条件の設定、放射線量算出条件の設定、放射線量分布データ生成条件の設定、更には、X線CT撮影及びPET撮影における撮影位置の設定を目的とした架台移動指示信号や各々の撮影を開始するための撮影開始指示信号の入力等が上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。尚、放射性同位元素の種類、投与量V0、半減期τx及び投与時刻t1等が上述の投与薬剤情報として入力される。
【0061】
一方、システム制御部9は、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部8から供給される上述の入力情報や設定情報は前記記憶回路に保存される。そして、前記CPUは、前記記憶回路から読み出したこれらの情報に基づいて医用画像診断装置100に備えられた各ユニットを統括的に制御し、X線CT撮影及びPET撮影を実行させると共に放射性同位元素が投与された被検体150から放射される放射線量の推定を実行させる。
【0062】
(放射線量の推定手順)
次に、本実施例においてX線CT撮影及びPET撮影と平行して行われる放射線量推定の手順につき図7のフローチャートに沿って説明する。
【0063】
被検体150に対するX線CT撮影及びPET撮影に先立ち、医用画像診断装置100の操作者は、被検体150に対し11C、13N,15O,18F等の陽電子(ポジトロン)放出核種で標識された化合物を放射性同位元素(RI)として投与する(図7のステップS1)。次いで、操作者は、入力部8において被検体情報の入力、投与薬剤情報(即ち、放射性同位元素の種類、投与量V0、投与時刻t0等)の入力、X線CT撮影及びPET撮影における撮影条件、画像データ生成条件及び画像データ表示条件の設定、体外放射線量の算出領域を含む放射線量算出条件の設定、放射線量分布データの位置情報を含む放射線量分布データ生成条件の設定等を行なう(図7のステップS2)。そして、これらの入力情報や設定情報は、システム制御部9の記憶回路に保存される。
【0064】
次に、操作者は、被検体150を寝台161に取り付けられた天板6に載置した後、入力部8において架台移動指示信号を入力し被検体150の診断対象部位がX線CT撮影部1の撮影野に配置されるようにX線CT架台部163をガイドレール162に沿って体軸方向へ移動させる(図7のステップS3)。そして、X線CT架台部163の移動が終了したならばX線CT撮影を開始するための撮影開始指示信号を入力部8にて入力する(図7のステップS4)。
【0065】
この撮影開始指示信号を受信したシステム制御部9は、X線CT撮影部1に設けられた各ユニットを自己の記憶回路から読み出した撮影条件に基づいて制御し被検体150に対するX線CT撮影を行なう。そして、このとき得られた投影データ(第1の投影データ)は、回転架台部13の回転角度情報を付帯情報として画像データ生成部3の投影データ記憶部31に保存される。
【0066】
一方、画像データ生成部3の再構成処理部32は、システム制御部9から供給される画像データ生成条件を受信し、この画像データ生成条件の再構成処理条件に好適な処理プログラムを自己のプログラム保管部から読み出す。次いで、投影データ記憶部31から読み出した上述の投影データを前記処理プログラムに基づいて再構成処理することによりX線CT画像データを生成し、得られたX線CT画像データを表示部5のモニタに表示する(図7のステップS5)。
【0067】
一方、画像データ生成部3の減弱補正データ生成部33は、再構成処理部32において生成されたX線CT画像データの画素値(CT値)に基づいて減弱係数を算出する。次いで、得られた減弱係数を用いて2次元の減弱補正データ(減弱マップ)を生成し自己の補正データ記憶回路に保存する(図7のステップS6)。
【0068】
X線CT画像データの生成と表示が終了したならば、操作者は、ステップS3と同様の手順により被検体150の診断対象部位がPET撮影部2の撮影野に配置されるようにPET架台部164をガイドレール162に沿って体軸方向へ移動させ(図7のステップS7)、PET撮影を開始するための撮影開始指示信号を入力部8において入力する(図7のステップS8)。次いで、この撮影開始指示信号を受信したシステム制御部9は、PET撮影部2に設けられた各ユニットを自己の記憶回路から読み出した撮影条件に基づいて制御し被検体150に対するPET撮影を行なう。そして、このとき得られた投影データ(第2の投影データ)は画像データ生成部3の投影データ記憶部31に保存される。
【0069】
画像データ生成部3の再構成処理部32は、投影データ記憶部31から読み出した上述の投影データを減弱補正データ生成部33から供給される減弱補正データに基づいて補正する。次いで、補正後の投影データを再構成処理してPET画像データを生成し表示部5のモニタに表示する(図7のステップS9)。
【0070】
一方、上述のステップS2において被検体情報の入力や投与薬剤情報の入力等が終了したならば、放射線量推定部4の線量算出部42に備えられた体内線量算出部は、システム制御部9から供給された現在時刻t1の情報と投与薬剤情報に含まれている放射性同位元素の投与量V0、半減期τx、投与時刻t0の情報を受信し、これらの情報を上述の式(1)へ代入することにより放射性同位元素が投与された所定算出領域の現在時刻t1における体内放射線量V1を算出する(図7のステップS10)。
【0071】
次いで、線量算出部42の体外線量算出部は、システム制御部9から供給された被検体情報を受信し、この被検体情報に含まれている被検体150の体重に対応した体形モデルを体形モデル保管部41に予め保管されている各種体形モデルの中から抽出する。そして、上述の体内放射線量V1を呈する放射性同位元素が前記体形モデルの内部に一様分布していると仮定した場合の被検体周囲の所定算出領域における体外放射線量を算出し、複数の算出領域において順次得られた体外放射線量の算出結果と前記算出領域の位置情報を分布データ生成部43のデータ記憶回路に保存する(図7のステップS11)。
【0072】
一方、分布データ生成部43は、自己のデータ記憶回路から読み出した複数の算出領域における体外放射線量の算出結果と前記算出領域の位置情報に基づいて被検体150の周囲における2次元の放射線量分布データを生成する(図7のステップS12)。
【0073】
そして、表示部5は、放射線量推定部4の線量算出部42において算出された所定算出領域における体外放射線量の値や分布データ生成部43によって生成された放射線量分布データに対し所定の変換処理を行なって自己のモニタに表示する(図7のステップS13)。
【0074】
(変形例)
次に、本実施例の変形例につき図8を用いて説明する。
【0075】
上述の実施例では、形態診断を目的としたX線CT画像データと機能診断を目的としたPET画像データを生成することが可能な医用画像診断装置について述べたが、本変形例では、上述のPET画像データのみを生成する医用画像診断装置について述べる。
【0076】
尚、本変形例における医用画像診断装置の全体構成を示す図8のブロック図において、図1に示した医用画像診断装置100のユニットと同一の構成及び機能を有するユニットは同一の符号を付加し詳細な説明は省略する。
【0077】
即ち、本変形例における医用画像診断装置200は、放射性同位元素(RI)が投与された被検体150から放射される1対のγ線をその周囲に配列された検出器モジュール21により検出して投影データを生成するPET撮影部2と、PET撮影部2において生成された投影データを再構成処理してPET画像データを生成する画像データ生成部3aと、放射性同位元素が投与された被検体150から放出される放射線量の算出とこの算出結果に基づいた放射線量分布データの生成を行なう放射線量推定部4を備えている。
【0078】
又、医用画像診断装置200は、画像データ生成部3aによって生成されたPET画像データの表示や放射線量推定部4において得られた検査室内の所定領域における放射線量の値及び放射線量分布データを表示する表示部5aと、図示しない寝台に据え付けられ被検体150を載置する天板6と、PET撮影部2を有するPET架台部あるいは被検体150が載置された天板6を体軸方向(z軸方向)へ移動させる移動機構部7aと、被検体情報の入力、PET撮影における撮影条件、画像データ生成条件及び画像データ表示条件の設定、更には、各種コマンド信号の入力等を行なう入力部8aと、医用画像診断装置200が有する上述の各ユニットを統括的に制御するシステム制御部9aを備えている。
【0079】
医用画像診断装置200の画像データ生成部3aは、投影データ記憶部31a、再構成処理部32a及び減弱補正データ生成部33aを備え、PET撮影部2において生成された投影データに基づいてPET画像データを生成する機能を有している。
【0080】
画像データ生成部3aの投影データ記憶部31aには、PET撮影部2の検出データ処理部22において生成された投影データが一旦保存される。
【0081】
再構成処理部32は、各種の再構成処理プログラムが予め保管されているプログラム保管部と演算部(何れも図示せず)を備えている。前記演算部は、入力部8aからシステム制御部9aを介して供給される画像データ生成条件を受信し、この画像データ生成条件の再構成処理条件に好適な処理プログラムを前記プログラム保管部から読み出す。そして、投影データ記憶部31aから読み出した前記投影データを減弱補正データ生成部32aから供給される減弱補正データを用いて補正し、補正された投影データに対し再構成処理を行なってPET画像データを生成する。
【0082】
一方、減弱補正データ生成部33aは、図示しない補正データ記憶回路を備え、検査に先立って実施される外部線源による減弱補正データの収集において、PET撮影部2の検出データ処理部22から供給される検出信号に基づいて2次元の減弱補正データ(減弱マップ)を生成し、前記補正データ記憶回路に一旦保存する。
【0083】
次に、表示部5aは、図示しない表示データ生成部、変換処理部及びモニタを備えている。前記表示データ生成部は、画像データ生成部3aの再構成処理部32aにおいて生成されたPET画像データを所定の表示フォーマットに変換して表示データを生成し、前記変換処理部は、前記表示データ生成部によって生成された表示データに対しD/A変換とTVフォーマット変換を行なって前記モニタに表示する。更に、前記表示データ生成部及び前記変換処理部は、放射線量推定部4の線量算出部42において算出された所定算出領域における体外放射線量の値や分布データ生成部43によって生成された放射線量分布データに対しても同様の処理を行なって前記モニタに表示する。
【0084】
次に、移動機構部7aは、図示しない移動機構と機構制御部を備え、前記移動機構は、前記機構制御部から供給される移動制御信号に従い、PET撮影部2を有するPET架台部あるいは被検体150を載置した天板6を体軸方向(z軸方向)へ移動させる。一方、前記機構制御部は、入力部8aからシステム制御部9aを介して供給される架台移動指示信号あるいは天板移動指示信号に従って生成した上述の移動制御信号を前記移動機構へ供給する。
【0085】
次に、入力部8aは、キーボード、選択スイッチ、マウス等の入力デバイスや表示パネルを備え、表示部5aと組み合わせて用いることによりインタラクティブなインターフェースを形成している。そして、被検体情報の入力、投与薬剤情報の入力、PET撮影における撮影条件、画像データ生成条件及び画像データ表示条件の設定、放射線量算出条件の設定、放射線量分布データ生成条件の設定、更には、PET撮影における撮影位置の設定を目的とした移動指示信号やPET撮影を開始するための撮影開始指示信号の入力等が上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。
【0086】
一方、システム制御部9aは、図示しないCPUと記憶回路を備え、入力部8aから供給される上述の入力情報や設定情報は前記記憶回路に保存される。そして、前記CPUは、前記記憶回路から読み出したこれらの情報に基づいて医用画像診断装置200に備えられた各ユニットを統括的に制御し、PET撮影を実行させると共にPET撮影において被検体150から放射される放射線量の推定を実行させる。
【0087】
尚、本変形例における放射線量の推定手順は、図7に示したステップS1乃至S2及びステップS10乃至S13の手順と同様であるため説明は省略する。
【0088】
以上述べた本発明の実施例及びその変形例によれば、放射性同位元素が投与された被検体の周囲における放射線量をリアルタイムで把握することができる。このため、操作者は、放射線量の少ない領域において当該被検体に対する医療行為を行なうことが可能となり検査中に受ける被曝量を低減させることができる。
【0089】
特に、検査室の所定領域における放射線量のみならず広範囲な領域における放射線量を分布データとして得ることができるため、操作者は、放射線量の少ない領域を容易に知ることが可能となる。又、前記所定領域における放射線量の値や放射線量分布データは医用画像診断装置が備える表示部において表示されるため、操作者は、検査室内において時々刻々変化する放射線量の情報をリアルタイムで把握しながら当該被検体に対する医療行為を行なうことができる。
【0090】
更に、放射線量の算出に用いる被検体の体重情報や投与薬剤情報は、通常のPET撮影において入力されるものであるため、操作者の負担を増大させることなく被検体周囲の放射線量を推定することができる。
【0091】
以上、本発明の実施例及びその変形例について述べてきたが、本発明は上述の実施例及びその変形例に限定されるものではなく、更に変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施例では、形態診断を目的としたX線CT画像データを生成する機能と機能診断を目的としたPET画像データを生成する機能を有した医用画像診断装置100について述べたが、必要な情報を入力しさえすれば、機能診断用としてSPECT画像データやガンマ画像データ等の他の核医学画像データの生成を可能とする医用画像診断装置であってもよく、又、形態診断用としてMRI画像データやX線画像データ等の生成を可能とする医用画像診断装置であってもよい。
【0092】
又、上述の変形例では、PET画像データを生成する機能を有した医用画像診断装置200について述べたが、必要な情報を入力しさえすればSPECT画像データやガンマ画像データ等の他の核医学画像データの生成を可能とする医用画像診断装置であっても構わない。
【0093】
一方、上述の実施例及びその変形例における放射線量推定部4の分布データ生成部43は、天板6に配置された被検体150の体形モデル151を中心とし、床面から所定距離だけ離れた水平面における2次元の放射線量分布データを生成する場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、他の断面における2次元の放射線量分布データであってもよく、3次元の放射線量分布データであってもよい。
【0094】
又、線量算出部42において算出された所定の算出領域における体外放射線量の値や分布データ生成部43において生成された放射線量分布データを表示部5(5a)のモニタに表示する場合について述べたが、入力部8(8a)に設けられた表示パネルや別途設けられた専用の表示部において表示してもよい。この場合、体外放射線量の値あるいは放射線分布データの何れか一方のみを表示してもよく、又、これらのデータをX線CT画像データやPET画像データと共に表示してもよい。
【0095】
更に、放射線量の算出に用いる体形モデルは、被検体情報に含まれる被検体150の体重情報に基づいて設定する場合について述べたが、年齢や身長等の他の被検体情報に基づいて設定しても構わない。又、当該被検体に対応する体形モデルの設定は、線量算出部42が体形モデル保管部41に予め保管された各種体形モデルの中から選択することによって行なう場合について述べたが、体重等の被検体情報に基づいた体形モデルの選択あるいは生成を行なう体形モデル設定部を線量算出部42と独立させて設けてもよい。
【0096】
又、上述の実施例では、X線CT撮影及びPET撮影に際し、図6に示したようにX線CT架台部163及びPET架台部164をガイドレール162に沿って体軸方向へ移動させる場合について述べたが、被検体150が載置された天板6を体軸方向へ移動させてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…X線CT撮影部
11…X線発生部
12…投影データ生成部
2…PET撮影部
21…検出器モジュール
22…検出データ処理部
3、3a…画像データ生成部
31、31a…投影データ記憶部
32、32a…再構成処理部
33、33a…減弱補正データ生成部
4…放射線量推定部
41…体形モデル保管部
42…線量算出部
43…分布データ生成部
5、5a…表示部
6…天板
7、7a…移動機構部
8、8a…入力部
9、9a…システム制御部
100、200…医用画像診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素を投与した被検体から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて画像データを生成する医用画像診断装置において、
前記被検体から放射される放射線量を推定する放射線量推定手段と、
この放射線量推定手段による放射線量の推定結果を表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記放射線量推定手段は線量算出手段を備え、前記線量算出手段は、前記被検体の周囲に設定された1つあるいは複数の領域における放射線量を体外放射線量として算出することを特徴とする請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記被検体に対応した体形モデルを設定する体形モデル設定手段を備え、前記線量算出手段は、前記体形モデルの内部に分布した前記放射性同位元素の投与薬剤情報に基づいて前記体外放射線量を算出することを特徴とする請求項2記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記線量算出手段は、前記被検体に投与された前記放射性同位元素の少なくとも投与量、投与時刻及び半減期を前記投与薬剤情報として前記体外放射線量を算出することを特徴とする請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記線量算出手段は体内線量算出手段と体外線量算出手段を備え、前記体内線量算出手段は、前記体形モデルの内部に分布した前記放射性同位元素の投与薬剤情報に基づいて前記被検体の体内における体内放射線量を継続的に算出し、前記体外線量算出手段は、前記体内線量算出手段によって算出された前記体内放射線量に基づいて前記被検体の周囲における前記体外放射線量を算出することを特徴とする請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記放射線量推定手段は分布データ生成手段を備え、前記分布データ生成手段は、前記線量算出手段が算出した前記複数の領域における体外放射線量に基づいて2次元あるいは3次元の放射線量分布データを生成することを特徴とする請求項2記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記体形モデル設定手段は、前記被検体の被検体情報に基づいて前記体形モデルを設定することを特徴とする請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記体形モデル設定手段は、前記被検体情報に含まれた前記被検体の体重、身長あるいは年齢の少なくとも何れかに基づいて前記体形モデルを設定することを特徴とする請求項7記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記体形モデル設定手段は、前記被検体情報に基づいて予め保管された各種体形モデルの中から前記被検体に対応した体形モデルを抽出することを特徴とする請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記表示手段は、前記放射線量推定手段による放射線量の推定結果を前記画像データと共に表示することを特徴とする請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
放射性同位元素を投与した被検体から放射されるγ線を検出し、その検出データに基づいて画像データを生成する医用画像診断装置に対し、
前記被検体の被検体情報に基づいて体形モデルを設定する体形モデル設定機能と、
前記体形モデルの内部に分布した前記放射性同位元素に基づいて前記被検体の周囲における放射線量を推定する放射線量推定機能と、
前記放射線量の推定結果を表示する表示機能を
実行させることを特徴とする放射線量算出用制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−163966(P2011−163966A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27717(P2010−27717)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】